説明

スピーカ

【課題】周波数特性及び耐入力特性に優れるとともに、信頼性に優れた、小型化可能なスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカのダンパー100は、ボイスコイルボビンの内側に設けられている。ダンパー100は、環状のボビン固定部110と、ボビン固定部110の内側に位置し磁気回路のセンターポールに固定されるセンターポール固定部120と、ボビン固定部110とセンターポール固定部120とに接続された可動部130a,130b,130cとを備えている。各可動部130a,130b,130cは、スピーカの正面方向から見て円弧状に湾曲した形状を有しており、それぞれの曲率中心は、互いに同じ位置に位置するように配置されている。スピーカを小型化しつつ、センターポール固定部120と可動部130とを共に大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカに関し、特に、ボイスコイルボビンの内側にダンパーが配置されているスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカは、家庭用音響機器や車載用音響機器だけでなく、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ゲーム機など、様々な電子機器に広く使用されている。このような電子機器の軽薄短小化が進展する中で、スピーカに対しても、高性能化と、さらなる小型化、薄型化とを両立させることが求められている。すなわち、音響機器や電子機器の小型化に伴い、機器内部のスピーカの設置スペースが狭くなることから、スピーカの小型化が必要になっている。他方、スピーカにおいて、高性能であるといえるためには、音質が優れていることの他に、高耐入力であることが必要である。
【0003】
スピーカが高耐入力であるためには、ボイスコイルボビンの外径が比較的大きいことが必要である。しかしながら、例えばボイスコイルボビンの円筒外側にダンパーを設けたスピーカでは(例えば、特許文献3参照)、高耐入力とするためにボイスコイルボビンの外径を大きくすると、ダンパーの可動部が小さくなり、ダンパーのスティフネスが大きくなる。ダンパーのスティフネスが大きくなると、最低共振周波数が上昇するため、スピーカの再生周波数帯域が狭くなるおそれがある。ここでダンパーの可動部とは、スピーカの不動部分に固定された端部とボイスコイルボビン側の端部との間において変形可能な部位のことをいう。可動部が設けられていることで、磁気回路に対してボイスコイルボビンが変位可能となるように、ダンパーによってボイスコイルボビンが支持される。
【0004】
このような問題に対して、下記特許文献1には、ボイスコイルボビンの内部にダンパーが配されたスピーカが開示されている。このスピーカでは、ダンパーの内周端が磁気回路に固定されている。ダンパーの外周端は、ドーム部の外周端及びボイスコイルボビンの円筒内面に接合されている。ダンパーをボイスコイルボビンの円筒内側に設けることで、スピーカの小型化と、周波数特性及び耐入力特性の向上とが図られている。
【0005】
下記特許文献2には、ボイスコイルボビンの円筒内面にダンパーが配置されたスピーカの上述とは別の構造が開示されている。
【0006】
下記特許文献3には、ボイスコイルボビンの円筒外周側にダンパーが配置されたスピーカの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−221691号公報
【特許文献2】特開2006−211469号公報
【特許文献3】特許4178717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載されているようなスピーカでは、ダンパーと磁気回路との接着面積が大きく確保されており、ダンパーと磁気回路とが強固に固定されている。これにより、入力時において振動系で問題となることがあるローリング現象が抑えられる。しかしながら、特許文献1に記載されているような構造では、ダンパーと磁気回路との接着面積が大きく確保されていることにより、ダンパーがダンパーとして機能するのに必要な可動部分が小さく、ダンパーのスティフネスが大きくなっている。そのため、スピーカの最低共振周波数が上昇し、再生周波数帯域が狭くなる可能性がある。
【0009】
これとは反対に、ダンパーと磁気回路との接着面積を少なくすれば、ダンパーの可動部を大きく確保できるため、ダンパーのスティフネスを低減させることができる。しかしながら、ダンパーと磁気回路との接触面積を少なくすると、振動系においてローリング現象が発生しやすくなり、かつダンパーと磁気回路の間の接着強度が弱くなり、信頼性が低下する。
【0010】
なお、上記特許文献のそれぞれには、このような問題点に対して有効な解決策は何ら開示されていない。
【0011】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、周波数特性及び耐入力特性に優れるとともに、信頼性に優れた、小型化可能なスピーカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、スピーカは、ダンパーをボイスコイルボビンの内側に設けたスピーカであって、ダンパーは、ボイスコイルボビンに固定された略環状のボビン固定部と、スピーカの正面方向から見てボビン固定部の内側に位置し、磁気回路のセンターポールに固定されたセンターポール固定部と、それぞれボビン固定部とセンターポール固定部とに接続された複数の可動部とを備え、複数の可動部のそれぞれのセンターポール固定部側の接合部の位置は、センターポール固定部のうち、その可動部のボビン固定部側の接合部に最も近い部位から離れた位置にあり、複数の可動部のそれぞれは、スピーカの正面方向から見て円弧状に湾曲した形状を有し、複数の可動部は、スピーカの正面方向から見て、それぞれの曲率中心が互いに同じ位置に位置するように配置されている。
【0013】
好ましくはボイスコイルボビンは、円筒形状を有し、ボビン固定部は、スピーカの正面方向から見て、その中心が可動部の曲率中心と同位置にある円環形状を有しており、センターポール固定部をスピーカの正面方向から見た外周形状は、その中心が可動部の曲率中心と同位置にある円形状である。
【0014】
好ましくはボビン固定部とセンターポール固定部とは、互いにスピーカの前後方向に離れている。
【0015】
好ましくは可動部は、ボビン固定部側の接合部からセンターポール固定部側の接合部に向かって傾斜している。
【0016】
好ましくは可動部は、スピーカの側方から見て湾曲している。
【0017】
好ましくは可動部のセンターポール固定部側の接合部とボビン固定部側の接合部との少なくとも一方には、フィレット部が形成されている。
【0018】
好ましくはセンターポール固定部は、スピーカの正面方向から見てセンターポール固定部の内側に設けられた複数の架橋部を有し、複数の架橋部は、スピーカの正面方向から見てセンターポール固定部の中央部で互いに接合されている。
【0019】
好ましくは可動部は、スピーカの側方から見てS字状を成すように湾曲している。
【発明の効果】
【0020】
これらの発明に従うと、ダンパーの可動部の、センターポール固定部側の接合部の位置は、センターポール固定部のうち、その可動部のボビン固定部側の接合部に最も近い部位から離れた位置にある。したがって、周波数特性及び耐入力特性に優れるとともに、信頼性に優れた、小型化可能なスピーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおけるスピーカの構成を示す側断面図である。
【図2】ダンパーを示す平面図である。
【図3】ダンパーを示す側面図である。
【図4】ダンパーを図2の矢印V1方向から見た図である。
【図5】本実施の形態の一変型例に係るダンパーを示す平面図である。
【図6】ダンパーを図5の矢印V2方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるスピーカについて説明する。
【0023】
[実施の形態]
【0024】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるスピーカ1の構成を示す側断面図である。
【0025】
本実施の形態において、スピーカ1は、逆ドーム型スピーカであって、内磁型の磁気回路10を有する小型なものである。スピーカ1において、ダンパー100は、ボイスコイルボビン5の内側に設けられている。
【0026】
[スピーカ1の構造の説明]
【0027】
図1に示されるように、スピーカ1は、振動板2と、エッジ3と、フレーム4と、ボイスコイルボビン5と、ボイスコイル6と、磁気回路10と、ダンパー100とを有している。
【0028】
磁気回路10は、センターポール(ポールピース)11と、マグネット12と、ポットヨーク13とで構成されている。ポットヨーク13の内側略中央部には、マグネット12が配置され、マグネット12の上部に、センターポール11が配置されている。センターポール11の周囲とポットヨーク13の上端周縁部との間には、磁気ギャップが設けられている。本実施の形態において、ポットヨーク13は、平面視で、すなわち図1の上方向から見て、円形の椀形状を有しており、センターポール11は、略円柱形状に形成されている。磁気ギャップは、平面視で略円周形状に形成されている。フレーム4は、ポットヨーク13の周囲に位置するように、ポットヨーク13に固定されている。
【0029】
ダンパー100は、大まかに、環状のボビン固定部110と、環状のセンターポール固定部120と、それらの間を接続する可動部130とを有している。センターポール固定部120は、センターポール11の上面に接着されて固着されている。ボビン固定部110は、ボビン固定部110の側周部に設けられた固定部111(図2に示す。)がボイスコイルボビン5の円筒部内周面に接着されて、ボイスコイルボビン5に固着されている。すなわち、ダンパー100は、ボイスコイルボビン5の内側に配置されている。ダンパー100の詳細な構造は、後述する。
【0030】
ボイスコイルボビン5は、円筒形状を有している。ボイスコイルボビン5の上端部には、振動板2が配置されている。ボイスコイルボビン5の下部には、ボイスコイル6が設けられている。ボイスコイルボビン5は、ボイスコイル6が磁気ギャップ内に位置するように、磁気ギャップにはめ込まれた状態で配置されている。
【0031】
振動板2は、エッジ3を介して、フレーム4に支持されている。振動板2は、平面視で略円形に形成されている。エッジ3は、振動板2の周縁部に張り付けられている。振動板2とボイスコイルボビン5とは、エッジ3及びダンパー100により、フレーム4や磁気回路10に対して上下方向(図1において上下方向)に振動可能に支持されている。
【0032】
[ダンパー100の構造の説明]
【0033】
図2は、ダンパー100を示す平面図である。
【0034】
ダンパー100は、ボビン固定部110と、センターポール固定部120と、可動部130とを有している。ダンパー100は、樹脂の射出成形により、一体に形成されている。図2に示されるように、ボビン固定部110と、センターポール固定部120とは、それぞれ円環状に形成されている。センターポール固定部120は、平面視で、すなわちスピーカ1の正面方向から見て(ボイスコイルボビン5の高さ方向から見て)、ボビン固定部110の内側に位置している。
【0035】
ボビン固定部110の側周面には、側周面から突出するように形成された複数の固定部111が設けられている。ボビン固定部110は、固定部111がボイスコイルボビン5の円筒部内周面に固定されるようにして、ボイスコイルボビン5に取り付けられる。
【0036】
ボビン固定部110は、図2に一点鎖線で示される円周C1に沿う円環形状を有している。また、センターポール固定部120は、図2に一点鎖線で示され、円周C1よりも半径が小さい円周C2に沿う円環形状を有している。円周C2と円周C1とは、同一の中心CTRを共有する同心円である。すなわち、ボビン固定部110とセンターポール固定部120とは、平面視で互いに同一の中心CTRを有している。
【0037】
ダンパー100には、3つの可動部130(可動部130a,130b,130c)が設けられている。各可動部130は、ボビン固定部110とセンターポール固定部120とに接続されており、ボビン固定部110とセンターポール固定部120とを連結している。可動部130は、ボビン固定部110とセンターポール固定部120との間で変形可能な部位である。可動部130が設けられていることで、磁気回路10に対してボイスコイルボビン5が変位可能となるように、ダンパー100によってボイスコイルボビン5が支持される。
【0038】
可動部130は、平面視で、ボビン固定部110より内側であって、センターポール固定部120よりも外側に位置している。すなわち、各可動部130は、ボビン固定部110とセンターポール固定部120との間に配置されている。3つの可動部130は、互いに同型状を有している。3つの可動部130は、それぞれ、円周C3上に配置されている。円周C3は、円周C1,C2と同心円であって、円周C1より半径が小さく、円周C2より半径が大きいものである。
【0039】
ボビン固定部110には、それぞれ可動部130a,130b,130cのボビン固定部110側の端部が接続される第1の接合部(ボビン固定部110側の接合部)115a,115b,115cが設けられている。第1の接合部115a,115b,115cは、平面視で、ボビン固定部110の内側に、センターポール固定部120に向け、円周C3で示される位置辺りまで突出するようにして設けられている。また、センターポール固定部120には、それぞれ可動部130a,130b,130cのセンターポール固定部120側の端部が接続される第2の接合部(センターポール固定部120側の接合部)125a,125b,125cが設けられている。第2の接合部125a,125b,125cは、平面視で、センターポール固定部120の外側に、ボビン固定部110に向け、円周C3で示される位置辺りまで突出するようにして設けられている。
【0040】
ここで、本実施の形態において、各可動部130のそれぞれのセンターポール固定部120側の接合部(第2の接合部125a,125b,125c)の位置は、センターポール固定部120のうち、その可動部130のボビン固定部110側の接合部(第1の接合部115a,115b,115c)に最も近い部位から離れた位置に設けられている。
【0041】
例えば、可動部130aの両端部が接続される第1の接合部115aと第2の接合部125aとは、互いに、円周C3に沿って離れた位置に設けられている。すなわち、第2の接合部125aは、センターポール固定部120のうち第1の接合部115aに最も近い位置(図2において可動部130cについての第2の接合部125cの周辺位置に相当)から、円周C3に沿って反時計回りに離れた位置に配置されている。同様に、可動部130bについて互いに対応する第1の接合部115bと第2の接合部125bとも、互いに離れた位置に設けられている。可動部130cについて互いに対応する第1の接合部115cと第2の接合部125cとも、互いに離れた位置に設けられている。
【0042】
可動部130は、平面視で、円周C3に沿うように湾曲した帯形状を有している。換言すると、可動部130は、ボビン固定部110とセンターポール固定部120との間で、円周C3方向に伸長し、円弧状に形成されている。3つの可動部130a,130b,130cは、それぞれの曲率中心が互いに同じ中心CTRに位置するように配置されている。すなわち、3つの可動部130a,130b,130cは、ボビン固定部110及びセンターポール固定部120の中心CTRを曲率中心とするように配置されている。
【0043】
可動部130としては3つが設けられており、第1の接合部115a,115b,115cのそれぞれとそれに対応する第2の接合部125a,125b,125cとは、互いに、円周C3上で、中心CTR回りに120度弱ほど回転してずれた位置に配置されている。換言すると、図2に示されるように、3つの可動部130は、円周C3上で互いにわずかな隙間を設けて、全体として略円環状を成すように配置されている。
【0044】
上記のように、各可動部130は、その幅方向(平面視で長手方向に対し垂直な方向)に所定の幅寸法を有する帯形状を有しており、主に上下方向に可撓性を有している。すなわち、可動部130は弾性体として機能する。可動部130が可撓性を有していることにより、ボビン固定部110は、センターポール固定部120に対して、各可動部130をたわませながら変位可能である。可動部130が主に上下方向に可撓性を有していることにより、ボビン固定部110は、主に上下方向に変位可能である。
【0045】
ここで、本実施の形態において、センターポール固定部120は、3つの架橋部127を有している。3つの架橋部127は、平面視で、センターポール固定部120の内側に配置されている。各架橋部127は、センターポール固定部120のうち、第2の接合部125a,125b,125cが設けられている部位の内側に接続されている。各架橋部127は、センターポール固定部120側の接続部から中心CTR方向に略直線状に伸長するように設けられている。中心CTR付近すなわちセンターポール固定部120の中央部では、3つの架橋部127が互いに接合されている。3つの架橋部127の接合部は、ゲート129とされている。
【0046】
このように架橋部127が形成されており、ゲート129が設けられていることで、射出成形によりダンパー100を成形する際、樹脂の流れがスムーズになり、ショートモールドなどの成形不良の発生を防止することができる。また、架橋部127は、センターポール固定部120の内側に配置されることで、センターポール固定部120の補強リブとして機能する。すなわち、架橋部127が設けられることで、センターポール固定部120の剛性を高くすることができ、センターポール固定部120の変形を防止することができる。したがって、より高い精度でボイスコイルボビン5などを支持させることができ、スピーカ1をより高性能化できる。各架橋部127は、ダンパー100において比較的力が加わる部位である第2の接合部125a,125b,125cが設けられている部位の内側に接続されているので、スピーカ1の使用時などにおけるセンターポール固定部120の変形防止効果をより効果的に得ることができる。
【0047】
図3は、ダンパー100を示す側面図である。図4は、ダンパー100を図2の矢印V1方向から見た図である。
【0048】
図4において、ダンパー100は、図2において一点鎖線D1で囲まれた部位を除いて示されている。
【0049】
図3に示されるように、ボビン固定部110とセンターポール固定部120とは、自然状態において、スピーカ1の前後方向(ボイスコイルボビン5の軸方向,図3において左右方向)に離れている。換言すると、ボビン固定部110とセンターポール固定部120とは、自然状態において、互いにボイスコイルボビン5の軸方向にずれた位置にあり、同一平面上にはない。ボビン固定部110は、センターポール固定部120よりも、上方(図3において左方向)に位置している。
【0050】
ここで、スピーカ1の前後方向のボビン固定部110とセンターポール固定部120とのずれ(段差)の寸法は、ボイスコイル6の巻き幅の1/2以上に設定されている。このようにボビン固定部110とセンターポール固定部120とのずれ量が設定されているので、スピーカ1への高入力時において、ボビン固定部110とセンターポール(ポールピース11など)とが干渉することを防止できる。
【0051】
本実施の形態において、ボビン固定部110とセンターポール固定部120とがスピーカ1の前後方向に離れているので、各可動部130は、ボビン固定部110側の第1の接合部115a,115b,115cからセンターポール固定部120側の第2の接合部125a,125b,125cに向かって傾斜している。すなわち、図4に示されるように、例えば可動部130aは、第1の接合部115aから第2の接合部125aに向けて、徐々に高さが低くなるように(図4において下方になるように)、傾斜している。他の可動部130b,130cも同様に、ボビン固定部110側からセンターポール固定部120側に向けて、徐々に高さが低くなるように、傾斜している。このように可動部130が緩やかに傾斜しているので、ボビン固定部110とセンターポール固定部120との距離にかかわらず、可動部130は、安定した復元力を発生する。
【0052】
可動部130は、側周面側(スピーカ1の側方すなわちボイスコイルボビン5の高さ方向に直交する方向)から見て、上下方向(図4において上下方向)に湾曲している。すなわち、図4に示されるように、例えば可動部130aは、上記のようにボビン固定部110側からセンターポール固定部120側にかけて傾斜している部分が、上に凸となるように若干湾曲している。このように、可動部130の表面が長手方向(伸長方向)に湾曲しているので、ボビン固定部110がセンターポール固定部120に対し変位するとき、可動部130の全体に負荷が分散され、可動部130の疲労を軽減することができる。センターポール固定部120に対してボビン固定部110が変位しやすいようにしつつ、可動部130の復元力を増加させることができる。
【0053】
図4に示されるように、本実施の形態において、可動部130aのうち、第2の接合部125aにおいてセンターポール固定部120に接続される部分の下面側(図4において下方側)には、フィレット部135が設けられている。可動部130aは、第2の接合部125a部分から可動部130aにかけて、表面がなだらかに接続されるように、すなわち可動部130aの断面積が徐々に変化するように、形成されている。また、可動部130aのうち、第1の接合部115aにおいてボビン固定部110に接続される部位の下面側には、フィレット部145が設けられている。可動部130aは、第1の接合部115a部分から可動部130aにかけて、表面がなだらかに接続されるように、すなわち可動部130aの断面積が徐々に変化するように、形成されている。このようなフィレット部135,145は、可動部130aだけでなく、他の可動部130b,130cについても、センターポール固定部120やボビン固定部110との間に設けられている。
【0054】
このように、フィレット部135,145が設けられていることにより、センターポール固定部120に対してボビン固定部110が変位したとき、可動部130の接続部位への応力の集中を緩和させることができる。したがって、可動部130の接続部位における破断などのダンパー100の破損トラブルを防止することができる。
【0055】
なお、フィレット部は、可動部130のセンターポール固定部120側の接合部とボビン固定部110側の接合部とのいずれか一方にのみ形成されていてもよい。また、各可動部130の上面側に形成されていてもよい。
【0056】
このように、本実施の形態において、ダンパー100がボイスコイルボビン5の内側に設けられているため、ボイスコイルボビン5の外側にダンパー100を設けたスピーカに比べてボイスコイルボビン5を大径化できる。したがって、スピーカ1を高耐入力化できる。
【0057】
各可動部130のそれぞれのセンターポール固定部120側の接合部の位置は、センターポール固定部120のうち、その可動部130のボビン固定部110側の接合部に最も近い部位から離れた位置に設けられている。したがって、可動部130の可動領域(可撓領域)と、センターポール固定部120の半径方向の寸法とを、比較的自由に大きく確保することができる。
【0058】
可動部130の可動領域を大きく確保できるので、ダンパー100のスティフネスを低減させることができる。したがって、スピーカ1の最低共振周波数を低減することができ、スピーカ1の再生周波数帯域をより広くできる。
【0059】
また、センターポール固定部120の寸法を大きく確保できる。そのため、センターポール固定部120とセンターポール11との接着領域を大きくし、ダンパー100と磁気回路10とを強固に固着させることができる。また、振動系のローリング現象をより抑制することができ、スピーカ1の信頼性を向上させることができる。
【0060】
ここで、可動部130は、円周C3方向に伸長した円弧形状を有している。したがって、平面視でボビン固定部110とセンターポール固定部120との間に、効率的に、可撓領域が大きい複数の可動部130を配置することができ、スピーカ1の小型化と高性能化を高い次元で両立させることができる。特に、センターポール固定部120のスピーカの正面方向から見た外周形状は、中心が可動部130の曲率中心及び円環状のボビン固定部110の中心と同位置にある円形状となっている。したがって、これにより、可動部130の可撓領域をより大きく確保でき、かつ、センターポール固定部120とセンターポール11との接着領域をより大きくできる。
【0061】
[ダンパーの変型例の説明]
【0062】
ダンパーの可動部の形状は、上述のようなものに限られない。
【0063】
図5は、本実施の形態の一変型例に係るダンパー200を示す平面図である。
【0064】
ダンパー200は、上述のダンパー100の可動部130とは異なる形状の可動部230(可動部230a,230b,230c)を有している。図5に示されるように、ダンパー200において、各可動部230は、平面視で、ボビン固定部110やセンターポール固定部120と同心の円周C3に沿うような円弧状で、所定の幅を有する帯形状を有している。
【0065】
図6は、ダンパー200を図5の矢印V2方向から見た図である。
【0066】
図6において、ダンパー200は、図5において一点鎖線D2で囲まれた部位を除いて示されている。また、ダンパー200の3つの可動部230のうち、可動部230aのみが示されており、可動部230b,230cの図示は省略されている。以下、可動部230aについて説明する事項は、他の可動部230b,230cにおいても同様である。
【0067】
図6に示されるように、可動部230aは、側周面側(スピーカ1の側方)から見て、上下方向(図6において上下方向)に湾曲している。本変型例においては、可動部230aは、上下方向に緩やかなS字を描くように、傾斜している。すなわち、可動部230aは、センターポール固定部120側の第2の接合部125aから、可動部230aの中央部にかけて、上に凸になるように湾曲した部分231aを有している。また、可動部230aは、可動部230aの中央部から、ボビン固定部110側の第1の接合部115aにかけて、下に凸になるように湾曲した部分232aを有している。すなわち、可動部230aは、側周面側から見て、その中央部付近に変曲点を有する曲線状に湾曲している。本変型例では、可動部230がこのような構造を有することにより、上述のダンパー100と同様の効果に加えて、より高い、応力の分散効果や、復元力の増加効果を得ることができる。可動部230が上下方向に緩やかなS字を描くような形状に形成されていることにより、ボビン固定部110がセンターポール固定部120に対して自然状態より上方に変位しても下方に変位しても、略同様に復元力が発生する。したがって、スピーカ1の性能をより高くすることできる。
【0068】
[その他]
【0069】
上述の各特徴について部分的に適宜組み合わせて構成されたダンパーが用いられてもよい。例えば、ダンパーにおいて、架橋部は設けられていなくてもよいし、ゲートも異なる部分に設けられていてもよい。
【0070】
ダンパーの可動部の数や形状は、上述に限られない。例えば、各可動部は、平面視で、楕円弧状に湾曲するように形成されていてもよい。また、各可動部は、平面視で、多角形の辺の一部分をなすような複数の直線部分で構成され、全体として湾曲しているように形成されていてもよい。各可動部は、スピーカの側方から見て湾曲していなくてもよい。
【0071】
ボビン固定部やセンターポール固定部は、連続する環状に形成されているものに限られず、例えば部分的に途切れていてもよい。センターポール固定部は、例えば環状でなく、板形状を有していてもよい。例えばセンターポール固定部が板形状である場合、センターポール固定部のスピーカの正面方向から見た外周形状を、中心が可動部の曲率中心及び円環状のボビン固定部の中心と同位置にある円形状とすることができる。これにより、可動部の可撓領域を大きく確保し、かつ、センターポール固定部とセンターポールとの接着領域を大きくでき、スピーカの小型化と高性能化を高い次元で両立させることができる。このようにセンターポール固定部が板状である場合、その一部に上方に凸の窪み部を設けることができる。これにより、センターポール固定部の下面とセンターポール上面との間に塗布した接着剤のうち余分なものを、窪み部内に導入し、磁気ギャップ側にはみ出さないように保持することができる。
【0072】
また、ボイスコイルボビンは、円筒でなく、例えば楕円筒形や角筒形を有していてもよい。このとき、ボビン固定部やセンターポール固定部は、楕円形形状や多角形形状を有する環状に形成されていてもよい。
【0073】
スピーカとしては、外磁型のものであってもよい。
【0074】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 スピーカ
5 ボイスコイルボビン
10 磁気回路
11 センターポール
12 マグネット
100,200 ダンパー
110 ボビン固定部
115a,115b,115c 第1の接合部(ボビン固定部側の接合部)
120 センターポール固定部
125a,125b,125c 第2の接合部(センターポール固定部側の接合部)
127 架橋部
130,130a,130b,130c,230,230a,230b,230c 可動部
135,145 フィレット部
CTR 中心(可動部の曲率中心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパーをボイスコイルボビンの内側に設けたスピーカであって、
前記ダンパーは、
前記ボイスコイルボビンに固定された略環状のボビン固定部と、
前記スピーカの正面方向から見て前記ボビン固定部の内側に位置し、磁気回路のセンターポールに固定されたセンターポール固定部と、
それぞれ前記ボビン固定部と前記センターポール固定部とに接続された複数の可動部とを備え、
前記複数の可動部のそれぞれの前記センターポール固定部側の接合部の位置は、前記センターポール固定部のうち、その可動部の前記ボビン固定部側の接合部に最も近い部位から離れた位置にあり、
前記複数の可動部のそれぞれは、前記スピーカの正面方向から見て円弧状に湾曲した形状を有し、
前記複数の可動部は、前記スピーカの正面方向から見て、それぞれの曲率中心が互いに同じ位置に位置するように配置されている、スピーカ。
【請求項2】
前記ボイスコイルボビンは、円筒形状を有し、
前記ボビン固定部は、前記スピーカの正面方向から見て、その中心が前記可動部の曲率中心と同位置にある円環形状を有しており、
前記センターポール固定部を前記スピーカの正面方向から見た外周形状は、その中心が前記可動部の曲率中心と同位置にある円形状である、請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記ボビン固定部と前記センターポール固定部とは、互いに前記スピーカの前後方向に離れている、請求項1又は2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記可動部は、前記ボビン固定部側の接合部から前記センターポール固定部側の接合部に向かって傾斜している、請求項1から3のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記可動部は、前記スピーカの側方から見て湾曲している、請求項1から4のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記可動部の前記センターポール固定部側の接合部と前記ボビン固定部側の接合部との少なくとも一方には、フィレット部が形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記センターポール固定部は、前記スピーカの正面方向から見て前記センターポール固定部の内側に設けられた複数の架橋部を有し、
前記複数の架橋部は、前記スピーカの正面方向から見て前記センターポール固定部の中央部で互いに接合されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項8】
前記可動部は、前記スピーカの側方から見てS字状を成すように湾曲している、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−12830(P2013−12830A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142877(P2011−142877)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】