説明

スプリンクラヘッド用保護具

【課題】従来のスプリンクラヘッド用保護具は、火災により落下して動作信号を電線に出力するカバーを備えた設置工事後のスプリンクラヘッド取り付けようとするときは、動作信号出力用の電線を一旦切り離す必要があった。火災により落下して動作信号を電線に出力するカバーを備えたスプリンクラヘッドを設置工事した後であっても、動作信号出力用の電線を切り離すことなく、スプリンクラヘッドに取り付けることができるスプリンクラヘッド用保護具を得ることを目的とする。
【解決手段】スプリンクラヘッド用保護具1において、スプリンクラヘッドへ固定する略円筒状の固定部1dと、その固定部1dの下部に設けられ、天井板下面に接して設置されてスプリンクラヘッド本体とともに天井板の貫通口を覆い隠す円盤部1cと、円盤部1cの下面に立設された支柱1bの下端に設けられる略リング状のガード部1aとに、電線を通す為の切り欠き部1eを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備のスプリンクラヘッド用保護具に関し、特に、火災により落下して動作信号を出力するカバーを備えたスプリンクラヘッド用の保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラ消火設備のスプリンクラヘッドを、物や人が衝突する虞があるような場所に設置する場合、スプリンクラヘッドが破損して漏水事故を起こさぬように、スプリンクラヘッド用ガード等と呼ばれる保護具をスプリンクラヘッド先端部に設ける場合がある。このようなスプリンクラヘッド用保護具は、概して、スプリンクラヘッドへ取り付ける為の円筒状固定部と、該固定部の下部に設けられて天井板下面に接して設置されることによって天井板の貫通部を覆う円盤部と、該円盤部下面に立設される複数の支柱と、該支柱の下端に連結されるリング状ガード部とで構成されている。(例えば非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】http://www.senjusp.com/items/guard.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特開2003−275337号公報に開示したような、火災により落下して動作信号を電線に出力するカバーを備えたスプリンクラヘッドがある。このようなコンシールド型と呼ばれるカバー付きのスプリンクラヘッドは、物や人がぶつかってもカバーがスプリンクラヘッド本体を保護するので、スプリンクラヘッドの破損による漏水事故が起き難いが、火災によりカバーが落下して動作信号を出力するものは、火災でない場合でも衝突によってカバーが落下して動作信号を出力してしまうことがあり、設置する場所によってはスプリンクラヘッド用保護具で保護したい場合がある。ところが、このようなスプリンクラヘッドは動作信号出力用の電線を有するので、設置工事後のスプリンクラヘッドに従来のスプリンクラヘッド用保護具を取り付けようとするときは、結線工事された動作信号出力用の電線を一旦切り離す必要があり、電線を取り外す作業を伴うスプリンクラヘッド保護具の設置工事が面倒であった。
【0005】
本発明は、スプリンクラヘッド保護具の設置工事における上記面倒を解決するためになされたものであり、火災により落下して動作信号を電線に出力するカバーを備えたスプリンクラヘッドに、設置工事した後であっても動作信号出力用の電線を切り離すことなく、取り付けることができるスプリンクラヘッド用保護具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスプリンクラヘッド用保護具は、略円筒状の固定部と、該固定部の下部に設けられ、天井板下面に接して設置されてスプリンクラヘッド本体とともに天井板の貫通口を覆い隠す円盤部と、該円盤部下面に立設される複数の支柱と、該支柱の下端に設けられる略リング状のガード部と、を備え、火災により落下して動作信号を電線に出力するカバーを備えたスプリンクラヘッドに取り付けて該スプリンクラヘッドを保護するスプリンクラヘッド用保護具であって、前記固定部と、前記円盤部と、前記ガード部とに、前記電線を通す切り欠き部を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るスプリンクラヘッド用保護具は、前記円盤部の切り欠き部は、前記円盤部の上端と下端からその円周方向へそれぞれ立設される上下の突出片を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るスプリンクラヘッド用保護具は、請求項1に記載の構成によれば、火災により落下して動作信号を電線に出力するカバーを備えたスプリンクラヘッドを設置工事した後であっても、結線工事された動作信号出力用の電線を切り離すことなく、スプリンクラヘッドに取り付けることができる。また、請求項2に記載の構成によれば、天井面に設置した後のスプリンクラヘッドおよびスプリンクラヘッド用保護具をその下方から見上げても、切り欠き部を通して天井板の貫通口が見えることがないので美観に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係るスプリンクラヘッド用保護具の構成図である。
【図2】実施の形態1に係るスプリンクラヘッド用保護具のスプリンクラヘッドへの取り付け方を説明する図である。
【図3】実施の形態1に係るスプリンクラヘッド用保護具を取り付けたスプリンクラヘッドの外観を示す図である。
【図4】実施の形態1に係るスプリンクラヘッドに取り付けたスプリンクラヘッド用保護具を天井面に設置した状態を示す図である。
【図5】実施の形態1に係るスプリンクラヘッド用保護具を取り付けたスプリンクラヘッドを天井面に設置した状態を示す天井部断面図である。
【図6】実施の形態2に係るスプリンクラヘッド用保護具の構成図である。
【図7】実施の形態3に係るスプリンクラヘッド用保護具の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1乃至図4に基づいて、本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッド用保護具について説明する。
【0011】
まず図1を用いて、スプリンクラヘッド用保護具の構成について説明する。
【0012】
本実施の形態1のスプリンクラヘッド用保護具1は、スプリンクラヘッドへ固定する略円筒形の固定部1dと、固定部1dの下部に設けられた円盤部1cと、円盤部1cの下面に立設された複数の支柱1bと、各支柱1bの下端に設けられた略リング状のガイド部1aと、で構成され、これらは堅牢な素材(例えば、合成樹脂、マグネシウム合金、亜鉛ダイキャスト、等)を用いて、一体的に形成され、内部のスプリンクラヘッドを保護する。
【0013】
固定部1dおよび円盤部1cは、その内部に取り付けるスプリンクラヘッドを貫通させるスプリンクラヘッド貫通口1gを有する。また、スプリンクラヘッドへ固定する為の複数の取付口1fを固定部1dの側部に有し、この複数の取付口1fを用いて、スプリンクラヘッド保護具1をスプリンクラヘッド貫通口1g内のスプリンクラヘッドへ固定する。例えば、取付口1fを螺穴とし、取付口1fに取り付けた螺子によって、スプリンクラヘッド貫通口1g内のスプリンクラヘッドを挟持して固定しても良い。
【0014】
固定部1d、円盤部1c、および、ガイド部1aは、スプリンクラヘッドの動作信号出力用電線を通すための切り欠き部1eを、その周縁の同一方向に各一箇所ずつ備え、設置工事後のスプリンクラヘッドであっても、結線工事後の前記電線を切り離すことなく、切り欠き部1eを通すことができる。
【0015】
なお、円盤部1cにおける切り欠き部1eは、円盤部1cの上端と下端から円盤部1cの円周方向へそれぞれ立設される上側突出片1euと下側突出片1elとが設けられる。本実施の形態においては、切り欠き部1eの円盤部1c部分の断面両側から、異なる高さで円周方向に各1枚立設され、円盤部1cを離間させている切り欠き部1eの中間点を超えて突出させた2枚の略平行な突出片1euおよび1elとで、クランク状の溝を形成することによって、実現している。このように構成することによって、切り欠き部1eの下方からその背面を見通すことが出来ないようになる。したがって、スプリンクラヘッド保護具1を設置したときに、スプリンクラヘッドを設置するために設けた天井板の貫通口が露出しないようにすることができる。
【0016】
次に、図2および図3を用いて、本実施の形態におけるスプリンクラヘッド保護具1を、保護しようとするスプリンクラヘッドに取り付ける方法を説明する。
【0017】
保護しようとする、火災により落下して動作信号を電線に出力するカバーを備えたスプリンクラヘッドは、スプリンクラヘッド本体3と、動作信号出力部付きコンシールド部2とで構成され、これらは互いに取り外すことが可能となっている。また、動作信号出力部付きコンシールド部2は、カバー2aと、動作信号出力部2bとを有し、さらに動作信号出力部2bは動作信号出力用の電線2cを有する(図2参照)。
【0018】
保護しようとするスプリンクラヘッドが設置工事済であった場合、スプリンクラヘッド保護具1を取り付ける前に、スプリンクラヘッド本体3から動作信号出力部付きコンシールド部2を、まず分離する。このとき、電線2cは結線工事後であるので、天井板の貫通口から動作信号出力部付きコンシールド部2が電線2cでぶら下がった状態となる。この電線2cをスプリンクラヘッド保護具1の切り欠き部1eを通し、動作信号出力部付きコンシールド部2とともに、スプリンクラヘッド保護具1内のスプリンクラヘッド貫通部1gへ挿入する(図2参照)。
【0019】
そして、円盤部1cの内側に形成された台座部分に動作信号出力部付きコンシールド部2を着座させ、螺穴であるスプリンクラヘッド保護具の複数の取付口1fへ螺子を挿入し、これで動作信号出力部付きコンシールド部2を挟持して固定する。さらに、これをスプリンクラヘッド本体3へ取り付けて、スプリンクラヘッドへのスプリンクラヘッド保護具1の取り付けが完了する(図3参照)。
【0020】
次に、図4および図5を用いて、本実施の形態におけるスプリンクラヘッド保護具1をスプリンクラヘッドに取り付けた状態を説明する。
【0021】
天井板CPに設置された、動作信号出力部付きコンシールド部2を備えたスプリンクラヘッドに、スプリンクラヘッド保護具1を取り付けると、動作信号出力部付きコンシールド部2のカバー2aは、スプリンクラヘッド保護具1によって、保護される。また、電線2cを通す為に設けた切り欠き部1eは、切り欠き部両側から突設させた上下2枚の板状部材である突出片1euと1elとが互いに相手側の切り欠き部を覆い隠すので、その背後にある天井面が見えないようになる(図4参照)。
【0022】
天井板CPの上方に設けられる給水配管(立ち下がり配管)Pに接続するスプリンクラヘッドを設置する為に、天井板CPに開口させた天井板貫通口Hが、スプリンクラヘッド本体のコンシールド部2とスプリンクラヘッド保護具1の円盤部1cとによって覆い隠される(図5参照)。したがって、切り欠き部1eの背後を見通せないようにしたことによって、天井板貫通口Hが天井板CP下方の室内に露呈することがなく、美観を損なわないようにすることができる。
[実施の形態2]
図6に基づいて、本発明の実施の形態に係るスプリンクラヘッド用保護具について説明する。実施の形態1と同じものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
本実施の形態に係るスプリンクラヘッド用保護具10が、実施の形態1に係るスプリンクラヘッド用保護具1と異なる点は、実施の形態1における円盤部1cの切り欠き部1eに相当する、円盤部10cの切り欠き部10eの形状にある。
【0024】
実施の形態1と同様に、円盤部10cにおける切り欠き部10eは、円盤部10cの上端と下端から円盤部10cの円周方向へそれぞれ立設される上側突出片10euと下側突出片10elとが設けられる。本実施の形態においては、切り欠き部10eの円盤部10c部分の断面両側から円周方向に各1つ立設され、円盤部10cを離間させている切り欠き部10eの中間点を超えて突出させた2つの部材が、異なる高さに頂点を結び、切り欠き部10eの下方から上方に向かって直線的に斜めの溝を形成することによって、実現している。このように構成することによって、切り欠き部10eの下方からその背面を見通すことが出来ないようになる。したがって、スプリンクラヘッド保護具1を設置したときに、スプリンクラヘッドを設置するために設けた天井板の貫通口が露出しないようにすることができる。
【0025】
その他は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
[実施の形態3]
図7に基づいて、本発明の実施の形態に係るスプリンクラヘッド用保護具について説明する。実施の形態1と同じものは同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
本実施の形態に係るスプリンクラヘッド用保護具100が、実施の形態1に係るスプリンクラヘッド用保護具1と異なる点は、実施の形態1における取付口1fが、円盤部1cに相当する円盤部100cに設けられた取付口100fとなった点にある。
【0027】
すなわち、実施の形態1および2では、スプリンクラヘッド保護具1および10は、保護しようとするスプリンクラヘッドに取り付けるのであるが、本実施の形態では、スプリンクラヘッド保護具100は、保護しようとするスプリンクラが設置された天井板CPに取り付ける。このように構成することによって、天井裏での作業が困難であっても、スプリンクラヘッド保護具100を設置することが可能となる。
【0028】
その他は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【符号の説明】
【0029】
1、10、100 スプリンクラヘッド用保護具、 1a ガード部、
1b 支柱、 1c、10c、100c 円盤部、1d 固定部、
1e、10e 切り欠き部、 1eu、1el、10eu、10el 突出片、
1f、10f、100f 取付口、 1g スプリンクラヘッド貫通部、
2 動作信号出力部付きコンシールド部、 2a カバー、
2b 動作信号出力部、 2c 電線、 3 スプリンクラヘッド本体、
CP 天井板、 P 給水管(立ち下がり配管)、
H 天井板貫通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状の固定部と、該固定部の下部に設けられ、天井板下面に接して設置されてスプリンクラヘッド本体とともに天井板の貫通口を覆い隠す円盤部と、該円盤部下面に立設される複数の支柱と、該支柱の下端に設けられる略リング状のガード部と、を備え、火災により落下して動作信号を電線に出力するカバーを備えたスプリンクラヘッドに取り付けて該スプリンクラヘッドを保護するスプリンクラヘッド用保護具であって、
前記固定部と、前記円盤部と、前記ガード部とに、前記電線を通す切り欠き部を設けたことを特徴とするスプリンクラヘッド用保護具。
【請求項2】
前記円盤部の切り欠き部は、前記円盤部の上端と下端からその円周方向へそれぞれ立設される上下の突出片を備えることを特徴とする請求項1記載のスプリンクラヘッド用保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−5863(P2013−5863A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139307(P2011−139307)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】