説明

スライド式アタッチメント

【課題】レールとホルダのスライドにともない摩耗するブシュにより生じるレールとホルダとの間におけるがたつきを抑えるための、ブシュの調整が容易であるスライド式アタッチメントの提供。
【解決手段】ホルダ部材12B、12Cの間に挿入されスライド自在に支持されるレール26Lには、ホルダ部材12Cに向かって開口する貫通孔28が設けられる。ホルダ部材12Cに当接するブシュ30は、貫通孔28に挿入される。ブシュ30は、押し螺子31により、貫通孔28内で位置決め固定される。レール26Lがホルダ部材12C上をスライドすることでブシュ30が摩耗し、レール26Lとホルダ部材12B、12Cとの間にがたつきが生じると、貫通孔28内の押し螺子31を螺子溝28Cに沿って押し込み、ブシュ30の位置を調整することでがたつきを解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォークリフトにおけるスライド式アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直方体形状のワークなどを搬送する際に、スライド式アタッチメントを備えたフォークリフトが用いられている。例えば、図12に示すクランプ装置10を備えたフォークリフト1がある。フォークリフト1は、車両前部にマスト2を有している。マスト2の下部前面には、取り付け部6を介してクランプ装置10がマスト2と一体に昇降自在に設けられている。取り付け部6は、後面がマスト2に固定され、前面は、クランプ装置10の基部11と固定されている。基部11には、ホルダ12が接続されている。図13に示すようにホルダ12は、上下方向にそれぞれ間隔を有したホルダ部材12A、12B、12C、12D、12E、12D、12Fにより構成されている。図13、図14に示すようにクランプ装置10のクランプアーム13は、右のクランプアーム13Rと左のクランプアーム13Lとの左右一対で構成されている。クランプアーム13は、ホルダ部材12Cとホルダ部材12Dの間に設けられた2つのクランプシリンダ14R、14Lにより左右に開閉自在である。
【0003】
クランプアーム13の後端部には、上下に間隔を空けて2つのレール16、17が設けられている。クランプアーム13Rは、上側のレール16Rと下側のレール17Rをそれぞれ備えている。また、クランプアーム13Lは、上側のレール16Lと下側のレール17Lをそれぞれ備えている。左右のクランプアーム13に設けられるレール16、17は、各ホルダ部材12A、12B、12C、12D、12E、12D、12Fが形成する間隔に挿入される。レール16、17の上面には、回転自在なローラ18が2個ずつ設けられている。レール16、17の上面には、2つのローラ18の間に樹脂製のスライドブシュ19が設けられている。スライドブシュ19は、レール16、17の下面にも上面と同じ位置にスライドブシュ19がそれぞれ設けられている。クランプアーム13は、クランプシリンダ14R、14Lによりレール16、17はホルダ12に接触するローラ18およびスライドブシュ19を滑らせて円滑に開閉する構成である。
【0004】
また、特許文献1にもスライド式アタッチメントを備えたフォークリフトが開示されている。特許文献1のスライド式アタッチメントは、ホルダの長溝内に内部ライナーおよびライナーを設けている。そして、クランプアームのレールが、長溝内の内部ライナーおよびライナーに摺動自在に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−315788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図12のクランプ装置10は、スライドブシュ19が摩耗してレール16、17とホルダ12との間にがたつきが発生した場合におけるスライドブシュ19の高さ調整が難しいという問題がある。通常、レール16、17がホルダ12内をスライドするクランプ作業を繰返し行うと、スライドブシュ19はホルダ12に摺接することで摩耗する。スライドブシュ19が摩耗してレール16、17とホルダ12との間にがたつきが生じた場合には、シムを挿入してがたつきが小さくなるように調整している。このとき、シムの厚さの選択や挿入作業に多くの工数がかかる。また、スライドブシュ19はレール16、17に沿って延びるように配置されているため、クランプ作業時に偏荷重がかかることがある。これにより、スライドブシュ19に偏摩耗が発生する。そのため、スライドブシュ19の左右の向きを入れ換えたり、上下のスライドブシュ19を入れ換えて偏摩耗に対応する必要がある。このようにしてスライドブシュ19の寿命の延長を図っているが、入れ換えの向きや入れ換えのタイミングなど調整が難しい。
【0007】
また、特許文献1のスライド式アタッチメントにおいても、内部ライナーおよびライナーの摩耗によるがたつきが発生した場合に、がたつきを抑える調整を行うことが難しい。さらに、特許文献1のスライド式アタッチメントでは、内部ライナーの調整のために工数がかかるという問題もある。内部ライナーを交換する作業や、向きを変える作業には、クランプアームのレールをホルダから外してから内部ライナーを抜き出す作業が必要であり、作業性も悪く多くの工数が必要であった。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、レールとホルダのスライドにともない摩耗するブシュにより生じるレールとホルダとの間におけるがたつきを抑えるための、ブシュの調整が容易であるスライド式アタッチメントの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、ホルダと、一端にアームを有し、ホルダにスライド可能に支持されるレールとを備え、レールには、ホルダと対向する部分に開口する第1開口部を有する複数の貫通孔を設け、ホルダの当接面に当接する当接部が貫通孔の第1開口部から突出するように貫通孔に挿入されるブシュと、貫通孔の第1開口部から突出するブシュの突出長さを調整可能であるとともに、当接部がホルダの当接面に当接する状態にブシュを固定可能な固定部材とを備えることを特徴とする。これにより、レールの貫通孔から突出するブシュをホルダに当接する状態に固定でき、レールをホルダに対して円滑にスライドさせることができる。また、ブシュの突出長さを調整し固定部材で固定することでホルダとレールの間隔を容易に調整することができる。
【0010】
また、本発明のレールは、ホルダに対向しない部分を有しており、貫通孔は、レールのホルダと対向しない部分に開口する、ブシュを挿入可能な第2開口部を有することを特徴とする。ブシュが挿入される貫通孔は、レールのホルダと対向しない部分に第2開口部を有するため、レールをホルダから取り外すことなく第2開口部からブシュを挿入することができる。そのため、ブシュの挿入作業が容易となる。
【0011】
また、本発明の貫通孔は、レール内をホルダの当接面に対し傾斜する向きに延びており、ブシュの当接部は、ホルダの当接面に平行な面を有することを特徴とする。ブシュの当接部がホルダの当接面に平行な面を有することで、ブシュとホルダとは面接触するため、両部材の接触面積が十分に確保される。従って、ブシュによりレールのスライド動作を円滑に支持できる。また、貫通孔はホルダの当接面に傾斜しているので、貫通孔がホルダの当接面に垂直である場合に比べ、よりブシュとホルダとの接触面積を増加させることができる。
【0012】
また、本発明のホルダは、前記レールの荷重を受ける荷重受側支持部を備えており、貫通孔の第1開口部は、レールの荷重受側支持部と対向する部分に開口していることを特徴とする。一般に、レールの荷重受側でホルダと当接するブシュは、荷重受側以外の部分でホルダに当接する場合と比較して摩耗が激しくなるため、頻繁に突出長さを調整する必要があるが、本発明では、その頻繁に突出長さを調整する必要がある部分に突出長さの調整および交換が容易なブシュを設けているので、がたつきを防止するための工数を抑えることができる。
【0013】
また、本発明の固定部材は、ブシュを位置決めする第一固定螺子と、第一固定螺子が貫通孔から外れないようにする第二固定螺子とを備えることを特徴とする。第一固定螺子は、貫通孔内で螺子を回すことにより、ブシュの位置を微調整することが容易である。さらに、第二固定螺子により第一固定螺子を貫通孔から外れないように固定するので、スライド式アタッチメントの作業中に振動が加わっても、ブシュを微調整した位置に保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、レールとホルダのスライドにともない摩耗するブシュにより生じるレールとホルダとの間におけるがたつきを抑えるための、ブシュの調整が容易であるスライド式アタッチメントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るクランプ装置を示す斜視図である。
【図2】(a)レールの斜視図である。(b)レールの側面図である。
【図3】(a)右のクランプアームの斜視図である。(b)左のクランプアームの斜視図である。
【図4】(a)右のクランプアームの正面図である。(b)左のクランプアームの正面図である。
【図5】図1のクランプ装置の側面図である。
【図6】図4(b)のA−A断面を示す断面図である。
【図7】図4(b)のA−A断面を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態に係る図4(b)のA−A断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る図4(b)のA−A断面図である。
【図10】本発明の変更例1を示す断面図である。
【図11】本発明の変更例2を示す断面図である。
【図12】フォークリフト示す側面図である。
【図13】従来のクランプ装置の概要を示す斜視図である。
【図14】(a)右のクランプアームの正面図である。(b)左のクランプアームの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る図に基づいて説明する。
図12に示すフォークリフト1は、車両前部にマスト2を有している。マスト2はリフトシリンダ3により昇降可能である。マスト2の下部前面には、取り付け部6を介して図1に示すクランプ装置20がマスト2と一体に昇降自在に設けられる。クランプ装置20は、本発明のスライド式アタッチメントに相当する。取り付け部6は、後面がマスト2に固定され、前面は、クランプ装置20の基部11と固定されている。基部11には、ホルダ12が接続されている。図2に示すように、基部11は、左右方向に並列に配置された4枚の矩形板である。ホルダ12は、上下方向にそれぞれ間隔を有したホルダ部材12A、12B、12C、12D、12E、12D、12Fにより構成されている。各ホルダ部材12A、12B、12C、12D、12E、12D、12Fは、4枚の基部11にそれぞれ固定されている。ホルダ部材12A、12B、12D、12E、12Dは、断面コ字型であり、凹みが下方を向くよう所定間隔を設け上下に並んでいる。ホルダ部材12Cおよびホルダ部材12Fは、断面矩形型である。
【0017】
図3、図4に示すように、クランプ装置20には、左右一対のクランプアーム13が設けられている。クランプアーム13は、右のクランプアーム13Rと左のクランプアーム13Lとで構成されている。図2、図5に示すように、クランプアーム13は、ホルダ部材12Cとホルダ部材12Dの間のブラケット14Aに支持された2つのクランプシリンダ14R、14Lにより左右に開閉自在である。クランプシリンダ14Rは、クランプアーム13の後端部に設けられたブラケット15Rに繋がっている。クランプシリンダ14Lは、クランプアーム13の後端部に設けられたブラケット15Lに繋がっている。またクランプアーム13の後端部には、ブラケット15R、15Lの上下に間隔を空けて2つのレール26、27が設けられている。右のクランプアーム13Rには、レール26R、27Rが設けられている。左のクランプアーム13Lには、レール26L、27Lが設けられている。左右のクランプアーム13に設けられるレール26、27は、ホルダ12のホルダ部材12A、12B、12C、12D、12E、12D、12Fが形成する間隔に挿入される。なお、ホルダ12では、図5に示すように上からホルダ部材12A、レール26R、ホルダ部材12B、レール26L、ホルダ部材12C、ホルダ部材12D、レール27R、ホルダ部材12E、レール27L、ホルダ部材12Fの順に上下一列に重なるよう配置されている。
【0018】
図3、図4に示すようにレール26、27の上面には、回転自在なローラ18が各2個ずつ設けられている。ローラ18は、レール26、27がクランプアーム13R、13Lに接続される基端とは逆の端部付近に設けられている。レール26、27に設けられる2つのローラ18は、所定間隔を空けて配置されている。ローラ18は、レール26、27がホルダ12に対しフォークリフト1の左右方向にスライドするのを円滑にするものである。また、ローラ18は、レール26、27がホルダ12に対しフォークリフトの前後方向に外れないよう規制する部材でもある。レール26、27の上面には、2つのローラ18の間に樹脂製のスライドブシュ19が設けられている。スライドブシュ19は、レール26、27がホルダ12に対しスライドする際に、レール26、27を接触支持しつつ円滑にスライドさせるための摩耗部品である。図4に示すように、レール26、27には、クランプアーム13の伸びる前面にそれぞれ3個の貫通孔28が設けられている。貫通孔28は、ローラ18およびスライドブシュ19の下に等間隔になるよう配置されている。
【0019】
図6には、レール26Lに設けられた貫通孔28を示している。なお、貫通孔28は、各レール26、27において全て同一の構造である。以下、図6を例にレール26Lの貫通孔28の構造を説明する。レール26Lは、長手方向に直交する断面が矩形の棒状部材である。レール26Lの上面には、回転軸18Aを介してローラ18が回転自在に設けられている。ローラ18はホルダ部材12Bに当接し、レール26Lの前後方向の移動を規制する。レール26Lは、上面がホルダ部材12Bに対向し、下面がホルダ部材12Cに対向するようホルダ12に挿入されている。レール26Lの前面および後面は、ホルダ部材12Cに対向しない部分である。貫通孔28は、一端が第1開口部28Aとしてレール26の下面に位置している。貫通孔28の他端は、第2開口部28Bとしてレール26Lの前面に開口している。なお、レール26の矩形断面の下面は、レール26の荷重を受ける荷重受側である。そして、貫通孔28は、円孔であり、レール26の断面において、隣り合う2面(前面および下面)を斜めに貫通している。貫通孔28の一端には、螺子溝28Cが設けられている。螺子溝28Cは、貫通孔28の前面側の一端から貫通孔28の途中まで設けられている。
【0020】
貫通孔28には、ブシュ30が挿入されている。ブシュ30は、ホルダ12の当接面であるホルダ部材12Cの上面12C1に平行な当接部30Aを有している。当接部30Aは、円柱部材であるブシュ30をホルダ部材12Cの上面12C1に平行になるよう貫通孔28の傾きに合わせた面である。つまり、貫通孔28は、ホルダ12の上面12C1に対し傾斜する向きに延びている。また、当接部30Aは、ホルダ部材12Cの上面12C1に面接触する。なお、ホルダ部材12の上面12C1は、レール26の荷重を受ける荷重受側支持部である。そして、ブシュ30の当接部30Aがレール26Lの下面から突出する状態に固定するための固定部材として押し螺子31が貫通孔28に挿入されている。押し螺子31の周面には、螺子溝28Cに嵌合する螺子溝が設けられており、押し螺子31を回転させるための六角穴31Aが設けられている。そして、ブシュ30に当接する部分には、貫通孔28よりも径の小さい当接部31Bが設けられている。当接部31Bは、ブシュ30に当接しつつ動かないように位置決めを行うものである。なお、押し螺子31は、螺子溝28Cが設けられている貫通孔28の途中までしか押し込めない構成である。
【0021】
次に、本実施形態におけるクランプ装置20の組付けについて説明する。
クランプ装置20は、図2に示すように基部11にホルダ12を固定する。また、クランプシリンダ14R、14Lも基部11にブラケット14Aを介して固定する。このとき、クランプシリンダ14R、14Lは、ホルダ部材12Cの下でありホルダ部材12Dの上に配置される。そして、クランプアーム13R、13Lは、図3に示すように、レール26R、26L、27R、27Lを所定高さに固定する。また、クランプアーム13R、13Lには、それぞれクランプシリンダ14R、14Lを接続するブラケット15R、15Lも取り付けておく。さらに、クランプアーム13R、13Lには、各レール26、27にローラ18およびスライドブシュ19を設けておく。なお、各レール26、27には、貫通孔28も形成しておく。そして次に、基部11およびホルダ12をフォークリフト1の取り付け部6に取り付けて固定する。
【0022】
次に、ホルダ部材12Aとホルダ部材12Bとの間にレール26Rを、ホルダ部材12Dとホルダ部材12Eとの間にレール27Rを配置するようクランプアーム13Rをホルダ12の右側から挿入する。このとき、レール26R、27Rに設けたローラ18が、ホルダ部材12A、12Dの凹みに回転接触自在に挿入される。また、スライドブシュ19もローラ18と同様にホルダ部材12A、12Dの凹みに挿入される。そして、ホルダ部材12Bとホルダ部材12Cとの間にレール26Lを、ホルダ部材12Eとホルダ部材12Fとの間にレール27Lを配置するようにクランプアーム13Lをホルダ12の左側から挿入する。このときレール26L、27Lに設けたローラ18がホルダ部材12Bとホルダ部材12Eの凹みに回転自在に挿入される。また、スライドブシュ19もホルダ部材12B、12Eの凹みに挿入される。そして、右のクランプシリンダ14Rのロッド先端は、右のクランプアーム13Rに設けられたブラケット15Rに固定する。左のクランプシリンダ14Lのロッド先端は、左のクランプアーム13Lに設けられたブラケット15Lに固定する。なお、クランプシリンダ14R、14Lは、図示しない油圧装置に接続しておく。
【0023】
次に、レール26、27の各貫通孔28には、図6に示すようにブシュ30を挿入する。ブシュ30は、車両前面側の貫通孔28の第2開口部28Bから当接部30Aを先に挿入される。そして、ブシュ30を挿入した貫通孔28には、押し螺子31を挿入する。押し螺子31は、六角穴31Aに六角レンチを差し込み回転させる。押し螺子31の螺子溝は、貫通孔28の螺子溝28Cに噛み合い、徐々に貫通孔28の奥へと挿入されている。そして、押し螺子31の当接部31Bがブシュ30の端部に当接したら、ブシュ30の位置を調整する。このとき図6に示す貫通孔28では、ブシュ30の当接部30Aが貫通孔28の第1開口部28Aから突出して、レール26Lの下面よりも下方に位置まで押し螺子31を挿入する。そして、突出したブシュ30の当接部30Aがホルダ部材12Cの上面12C1に当接し、レール26Lの下面とホルダ部材12Cの間にわずかな隙間を形成する。これを他の貫通孔28も同様に行い、クランプ装置20の組付けを終了する。
【0024】
次に、本実施形態におけるブシュ30の調整作業について説明する。
クランプ装置20は、クランプアーム13を左右に開閉してワークをクランプ又はアンクランプする。そしてワークをクランプし所望の搬送先へと移送する。このとき、クランプアーム13は、ブラケット15R、15Lに接続されたクランプシリンダ14R、14Lを伸縮させることで開閉される。クランプアーム13を開閉することで、レール26、27は、ホルダ12に対し左右にスライドする。レール26、27の上面に設けたローラ18は、ホルダ部材12A、12B、12D、12Eの凹みに当接し、レール26、27を車両の前後方向に外れることなくスライドさせる。また、レール26、27のスライドブシュ19は、レール26、27がホルダ12に対しスライドするときに、ホルダ部材12A、12B、12D、12Eの凹みに当接し、レール26、27の上方位置を規制しレール26、27の振動することを防止する。また、レール26Lにおけるブシュ30は、図6に示すようにホルダ部材12Cの上面12C1に当接部30Aを面接触させた状態である。そして、クランプアーム13およびワークの荷重は、レール26、27およびブシュ30を介してホルダ12、基部11により支えられる。
【0025】
レール26、27がホルダ12に対しスライドすると、図6のブシュ30は、ホルダ部材12Cとの摩擦により摩耗していく。ブシュ30が摩耗して磨り減っていくと、ホルダ部材12B、12Cに対しブシュ30が磨り減った分だけ上下方向の隙間が発生する。すると、レール26Lは、ホルダ部材12B、12Cに対してがたつくようになる。このがたつきが大きくなってきたら、ブシュ30の位置を調整する。ブシュ30は、図7に示すように、磨り減ったブシュ30を貫通孔28の第1開口部28Aから突出し、レール26Lの下面より下方に位置するように貫通孔28内を奥へ深く挿入する。このとき、六角レンチを押し螺子31の六角穴31Aに挿入し回転させると、押し螺子31が貫通孔28の螺子溝28Cに沿って徐々に貫通孔28の奥へと進む。そして、押し螺子31の当接部31Bでブシュ30をレール26Lの下面から突出させ、がたつきがない位置で押し螺子31の回転を止めて調整を終了する。
【0026】
ブシュ30は、押し螺子31を挿入できる限界位置にて使用され、摩耗により磨り減ってがたつきが発生すると、押し螺子31を貫通孔28から外してブシュ30を新品と交換する。そして、押し螺子31にてレール26Lががたつかないよう交換された新しいブシュ30をレール26Lの下面から突出させる状態に固定して使用する。
【0027】
本実施形態では、以下の効果を奏する。
(1)貫通孔28には螺子溝28Cを設け、押し螺子31を嵌め合わせて挿入するため、押し螺子31を容易に位置決めして固定することができる。
(2)レール26、27がホルダ12に対し隙間が生じがたついてもブシュ30を押し螺子31により押し込むだけで、ブシュ30の位置調整ができ、作業が容易である。
(3)レール26、27の断面は矩形であり、ホルダ12に上下2面を対向するようスライド自在に挿入され、貫通孔28は隣り合う2面(前面および下面)を連通するよう斜めに設けられている。そのため、貫通孔28の一端はホルダ12に干渉しない位置に開口しており、ブシュ30の挿入作業のためにレール26、27をホルダ12から取り外す必要が無く、作業が容易である。
【0028】
(4)貫通孔28は、レール26、27に斜めに設けられ、円柱状のブシュ30は貫通孔28に挿入されてホルダ12に傾斜して接触する。そのため、ブシュ30の当接部30Aを楕円形として十分な当接面積を確保することができる。
(5)貫通孔28は、レール26、27のクランプアーム13から遠い側に設けられており、クランプアーム13およびワークの荷重が大きく加わる箇所にブシュ30により支持することができる。
(6)貫通孔28は、各レール26、27にそれぞれ3個ずつ設けたので、3つのブシュ30で1つのレール26、27を支持でき、摩耗による磨り減りを遅らせることができる。
【0029】
(7)貫通孔28には、螺子溝28Cを設け、押し螺子31を挿入するだけで押し螺子31およびブシュ30を位置決めした状態に固定することができる。
(8)貫通孔28の螺子溝28Cは、ブシュ30が使用限界の長さでの位置まで螺子溝28Cを設けている。そのため、ブシュ30の位置調整において、押し螺子31を押し込むことができるまで回転させて、図7に示すように押し込み限界位置になったときに、ブシュ30を交換すれば良い。よって、作業者がブシュ30の交換タイミングを把握することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係るクランプ装置を図8に基づいて説明する。
本実施形態では、第1の実施形態におけるブシュ30および押し螺子31の形状を変更したものである。同じ部材については、同一の部材番号を用いて説明する。図8に示すレール26Lには、貫通孔28が設けられている。貫通孔28には、ブシュ40が挿入されている。ブシュ40は、円柱部材を加工したものであり、ホルダ部材12Cの上面に当接する当接部40Aと、ブシュ40の上端に当接部40Aに平行な当接部40Bを形成している。そして、貫通孔28に挿入した押し螺子41によりブシュ40の位置を固定している。押し螺子41は、貫通孔28の螺子溝28Cに嵌め合っている。押し螺子41には、六角穴41Aが設けられ、六角レンチを挿入して回転可能である。押し螺子41には、六角穴41Aと反対側にブシュ40に当接する当接部41Bが設けられている。当接部41Bは、円柱形状の先端にブシュ40の当接部40Bと平行になる円錐面が形成されている。
【0031】
次に、本実施形態におけるブシュ40の位置調整作業について説明する。
クランプ装置20を組付けたときに、レール26Lは、ホルダ部材12Bとホルダ部材12Cとの間に挿入される。そして、レール26Lの貫通孔28にはブシュ40を挿入する。このとき、当接部40Aがホルダ部材12Cの上面12C1と平行な向きに挿入される。次に貫通孔28に押し螺子41を螺子溝28Cに沿って挿入する。そして、ブシュ40がレール26Lの下面から突出し、ホルダ部材12Cと当接してレール26Lの下面とホルダ部材12Cの上面12C1との間にわずかに隙間を形成する状態になるよう押し螺子41をねじ込んでいく。図8のような状態にブシュ40を押し螺子41により固定する。そして、クランプアーム13を開閉してワークを移送する。ブシュ40の当接部40Aが摩耗により磨り減っていき、レール26Lとホルダ部材12Cとの間に大きながたつきが発生してきたら、六角レンチを押し螺子41の六角穴41Aに挿入して押し螺子41を回転させる。すると押し螺子41は螺子溝28Cに沿って貫通孔28内を奥へと挿入する。押し螺子41の円錐面が回転しつつブシュ40を奥へ移動させる。そして、ブシュ40をレール26Lからがたつきが無くなる位置まで再び突出させて固定する。
【0032】
レール26Lがホルダ12に対しスライドすると、ブシュ40は摩耗により磨り減っていく。押し螺子41で突出量を調整して使い続けると、ブシュ40は図9に示すように薄くなっていく。そして、ブシュ40の使用限界位置で押し螺子41が螺子溝28Cの溝の端部まで来るとブシュ40を調整できなくなる。そこで、ブシュ40を新品に交換して再度、ブシュ40をレール26Lから突出させ、レール26Lとホルダ12との間にわずかな隙間が生じる状態に調整して使用する。
【0033】
本実施形態は、第1の実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
(9)ブシュ40は、ホルダ部材12Cの上面に対し平行な当接部40Aおよび40Bを有するよう円柱の端部を加工している。そのため、ブシュ40が摩耗で磨り減っていき、薄くなるまで使用することができる。
【0034】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のように変更しても良い。
○貫通孔28に挿入するブシュ30、40は1個に限定されない。図10に示す変更例1のように、ブシュ50を2個(複数)を一度に挿入しても良い。この場合、でもブシュ50の位置調整は、第1の実施形態および第2の実施形態と同様である。これにより、ブシュ50を交換する必要や補充する手間を軽減することができる。また、下側のブシュ50上側のブシュ50で固定でき、下側のブシュ50を最後まで使い切ることができる。
○貫通孔28には、押し螺子31、41に加え、さらに別の螺子を挿入しても良い。図11に示す変更例2ように、ブシュ30の位置決めをしている第一固定螺子としての押し螺子31に加え、押し螺子31が貫通孔28から外れないように塞ぐ第二固定螺子として外れ止め螺子32を挿入すると良い。外れ止め螺子32は、押し螺子31の当接部31Bが無い形状である。押し螺子31と同様に六角レンチを六角穴32Aに挿入し回転させることで貫通孔28の螺子溝28Cに沿って挿入する。外れ止め螺子32は、押し螺子31に当接するまで貫通孔28内に挿入される。押し螺子31に加え、外れ止め螺子32を設けることで、クランプ装置20に作業中の振動などが加わったとしても、押し螺子31が外れることをより確実に防止することができる。
【0035】
○貫通孔28の断面は円筒状に限らない。貫通孔28の断面は螺子溝28C以外の部分を多角形としても良い。貫通孔28の断面が多角形の場合、ブシュ30、40、50の断面も貫通孔28と同様の多角形にすると良い。例えば、貫通孔28の螺子溝28Cはそのままに、貫通孔28およびブシュ30、40の断面を六角柱状に形成すると、押し螺子31、41が貫通孔28に挿入するため回転しても、ブシュ30、40は、貫通孔28の断面と嵌め合うため、回転することがない。よって、ホルダ12に当接する当接部30A、40Aを常にホルダ12の上面12C1に平行に維持でき、接触面積を確保することができる。なお、ブシュ30、40、50の断面は、円柱形状のときが最も接触面積が多くなり好ましい。
○実施形態では、貫通孔28は斜め下側に傾斜しており、レール26、27の下側の面だけをスライド支持するように構成したが、これだけに限らない。斜め上方へ延び、レール26、27の上面へ貫通する貫通孔を設け、レール26、27の上側に設けたスライドブシュ19の代わりに、その貫通孔に挿入したブシュによりレール26、27の上面をスライド支持しても良い。また、レール26、27の上下を同様に貫通孔およびブシュによりスライド支持しても良いし、上側のみ貫通孔およびブシュによりスライド支持しても良い。
【0036】
○貫通孔28は、レール26、27における荷重負荷が大きく摩耗が激しい部分に多く設けても良い。レール26、27において、ローラ18やスライドブシュ19を設けた端部側はクランプアーム13およびワークの荷重負荷が多くかかる。その部分に貫通孔28を複数設けることで、各貫通孔28に挿入されるブシュ30、40、50が均一に摩耗させることができる。そのため、がたつきを均一化できるとともに、ブシュ30、40、50の調整量が均一となり、作業がより容易になる。
○荷重負荷が大きく摩耗が激しい部分では、貫通孔28の径を大きくし、ブシュ30、40、50の径も大きくしても良い。ブシュ30、40、50の径を大きくすることでホルダ12との接触面積を増加させ、複数のブシュ30、40、50に加わる荷重負荷を均一化して摩耗も均一にさせることができる。
○レール26、27の断面は角を面取り、もしくは丸めても良い。その場合でも、断面が略矩形であれば、隣り合う2面を実施形態と同様に決定して貫通孔28を設けることができる。
【0037】
○固定部材として押し螺子31、41を示したが、これに限らない。レール26、27の前面側にボルトなどで固定される部材と、その部材に支持されて貫通孔28内に挿入され、ブシュ30、40に当接して位置を固定できる部材を用いても良い。
○ブシュ30、40の当接部30A、40Aは、平面のみで構成される場合に限定されない。ホルダ部材12Cの上面12C1と平行な面を有した凹凸形状などに形成しても良い。
○本発明のクランプ装置20は、ベールクランプアタッチメントを示しているが、これに限定されない。サイドシフトアタッチメントにも本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 フォークリフト
2 マスト
3 リフトシリンダ
5 制御装置
7 昇降レバー
10、20 クランプ装置
11 基部
12 ホルダ
13 クランプアーム
16、17、26、27 レール
18 ローラ
18A 回転軸
19 スライドブシュ
28 貫通孔
28A 第1開口部
28B 第2開口部
28C 螺子溝
30、40、50 ブシュ
30A、40A、40B 当接部
31 押し螺子
31A、32A 六角穴
31B 当接部
32 外れ止め螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダと、
一端にアームを有し、前記ホルダにスライド可能に支持されるレールとを備え、
前記レールには、前記ホルダと対向する部分に開口する第1開口部を有する複数の貫通孔を設け、
前記ホルダの当接面に当接する当接部が前記貫通孔の第1開口部から突出するように前記貫通孔に挿入されるブシュと、
前記貫通孔の第1開口部から突出する前記ブシュの突出長さを調整可能であるとともに、前記当接部が前記ホルダの当接面に当接する状態に前記ブシュを固定可能な固定部材とを備えることを特徴とするスライド式アタッチメント。
【請求項2】
前記レールは、前記ホルダに対向しない部分を有しており、
前記貫通孔は、前記レールの前記ホルダと対向しない部分に開口する、前記ブシュを挿入可能な第2開口部を有することを特徴とする請求項1記載のスライド式アタッチメント。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記レール内を前記ホルダの当接面に対し傾斜する向きに延びており、
前記ブシュの当接部は、前記ホルダの当接面に平行な面を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスライド式アタッチメント。
【請求項4】
前記ホルダは、前記レールの荷重を受ける荷重受側支持部を備えており、
前記貫通孔の前記第1開口部は、前記レールの前記荷重受側支持部と対向する部分に開口していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のスライド式アタッチメント。
【請求項5】
前記固定部材は、前記ブシュを位置決めする第一固定螺子と、前記第一固定螺子が前記貫通孔から外れないようにする第二固定螺子とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のスライド式アタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−103804(P2013−103804A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249198(P2011−249198)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】