説明

スリッパ及びその製造方法

【課題】 低コストで製造可能で、廃棄の際にも環境への負荷が小さい、使い捨てのスリッパと、その製造方法を提供すること。
【解決手段】 片側のみにライナーを有する段ボール紙5a、5bを、三角形と長方形を接合した、互いに線対称の五角形の形状に切断し、ライナー面を貼り合わせて、スリッパの底部1とする。この底部1に、紙製で、内部補強糸3を配置した甲部2を接合してスリッパとする。甲部2は、中央部の重ね継ぎ構造とすることで、甲部2の幅及び高さを調整可能とすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部に段ボールシートを用いた、使い捨てのスリッパとその製造方法に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
スリッパは室内履として家庭や職場で用いられている。また、ホテルなどの宿泊施設においても、宿泊者用の室内履として、各部屋に常備されている。家庭などのように、各使用者毎に専用のスリッパが決まっている場合は、特に問題にならないが、宿泊施設などのように、不特定多数の利用者が、同じものを使い回す場合は、衛生の問題から消毒などの維持作業が必要となる。
【0003】
このような作業を省き、宿泊者が抵抗なく使用できるように、使い捨てのスリッパが提案されている。例えば特許文献1には、紙と布を用いた使い捨てスリッパが開示されている。また、特許文献2には、紙またはプラスチックシートを用いたスリッパが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているスリッパは部品点数や製造工程が、通常のスリッパと殆ど変わりなく、コスト高となり、実用的な価値は必ずしも高くないと考えられる。また、特許文献2に開示されているスリッパは、素材としてプラスチックを用いているため、廃棄する際に、環境への負荷が大きいという問題がある。
【0005】
【特許文献1】 特開平11−164702号公報
【特許文献2】 特開2004−255137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、低コストで製造可能で、廃棄の際にも環境への負荷が小さい、使い捨てのスリッパと、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題解決のため、スリッパの構造と、構成部品の調製方法を検討した結果なされたものである。
【0008】
即ち、本発明は、波形加工を施された中芯の片側にライナーを貼り付けた段ボール紙のからなる底部と、紙製の甲部を有するスリッパであって、前記底部は、長方形及び前記長方形の長辺と同じ長さの底辺を有する三角形の、前記長方形の長辺と前記三角形の底辺を接合した五角形の形状に切断してなり、互いに線対称の形状の2枚の段ボール紙のライナー側を貼り合わせてなることを特徴とするスリッパである。
【0009】
また、本発明は、前記甲部が、前記底部の長さ方向と垂直の方向に設けられた補強糸を有することを特徴とする、前記のスリッパである。
【0010】
また、本発明は。前記甲部が、前記底部と平行方向に切断線を有する重ね継ぎ構造を有し、前記甲部の幅が調整可能であることを特徴とする、前記のスリッパである。
【0011】
また、本発明は、前記甲部の幅方向の両端が、2枚の前記段ボール紙の間に挟まれた状態で接着されてなることを特徴とする、前記のスリッパである。
【0012】
また、本発明は、前記三角形が二等辺三角形であることを特徴とする、前記のスリッパである。
【0013】
また、本発明は、波形加工を施された中芯の片側にライナーを貼り付けた段ボール紙に、直線とジグザグの切断線を交互に設けることにより、長方形と三角形を接合した形状の五角形を、長方形の短辺部分で接合した形状の帯状体を作製し、前記帯状体を形成する長方形の短辺に相当する部分を切断することにより、底部を構成する段ボール紙素材を得る工程を有することを特徴とする、前記のスリッパの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスリッパは、基本的に段ボール紙を貼り合わせた底部と、補強材としての糸を有する紙製の甲部のみからなる簡単な構造が特徴であり、部品点数が少ないので、低コストで得ることができる。しかも底部の段ボール紙や甲部の紙自体をリサイクル材により調達可能で、使用後はさらにリサイクル材として使用できるので、環境への負荷が極めて少ないという特長がある。
【0015】
また、底部の特徴的な形状と、それに起因するダンボール紙の取り回しにより、段ボール紙の切断の際に、屑が実質的に発生しないという利点も、環境への負荷低減へ寄与する。
【0016】
また、甲部に用いる紙は比較的低強度であり、歩行に伴う変形に追随できず、簡単に破損してしまうが、強度向上のために紙の厚さを増加すると、使用感が著しく低下するので、これに対処するために、本発明のスリッパにおいては、甲の部分に長さ方向とは垂直方向に、補強材として糸を配置する。この糸も環境への負荷を考慮すると、天然の素材が望ましく、木綿などを用いることができる。
【0017】
また、甲部のほぼ中央部に、底部の長さ方向と平行な方向の切断線を有する重ね継ぎの構造を導入すると、利用者の足の甲の幅や高さに合わせて、甲部の幅及び高さを調整できるので、利便性が向上する。なお、重ね継ぎの部分の接合には、フックやマジックテープ(登録商標)を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明に係るスリッパの一例を示す図で、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図、図1(c)は底面図である。図1において、1は底部、2は甲部、3は補強糸、4は印刷表示。5a、5bは段ボール紙、6は貼り合わせ面である。
【0019】
図2は、段ボール紙の原反から、本実施の形態のスリッパ底部を作製するための、素材を切り出す状態を示す図である。図2において、7は段ボール紙原反、実線で示した8a,8b,8cは切断線、破線で示した9は折線である。図3は、段ボール紙原反を切断して得られる、スリッパ底部作製用の素材を示す図である。図3において、10は素材、11は波形加工を施した中芯、12はライナーである。
【0020】
本実施の形態においては、図2に示したように、段ボール紙原反7を直線の切断線8a、8c及びジグザグの切断線8bに従って切断し、スリッパ底部の素材10を切り出す。スリッパの底部1の形状を、長方形と二等辺三角形を組み合わせた形状としておくことにより、ジグザグ側の切断線8bが隣接する素材と共通になるので、切断屑がまったく発生しないことになる。
【0021】
図2に示したように、段ボール紙原反7を切断すると、図3に示したスリッパ底部1の素材10が得られる。本発明では、中芯11の片側にだけライナー12を貼り付けた段ボール紙を用いるので、中芯11の側が山になるように折り曲げ加工を施すのは容易である。
【0022】
素材10に折り曲げ加工を施す際に、ライナー12側に接着剤を塗布することにより、スリッパの底部1が得られる。接着剤には、やはり環境への負荷を考慮して、天然の素材を用いることが望ましい。具体的にはデンプン系の糊、膠などが挙げられる。
【0023】
そして、ライナー12側を貼り付けることにより、図1(b)に示したように、中芯11の波形加工が足裏と床面に対向するので、床面に対しては滑り止め効果を奏し、足裏に対しては、マッサージ効果を奏するので、スリッパの有用性が向上する。また、補強糸3の取り付けは、甲部2を構成する紙の、図1における左端の部分を折り返し、その中に補強糸3を配置して、折り返し面を接着すればよい。
【0024】
なお、印刷表示4には、スリッパを提供する宿泊施設名を用いてもよいが、スポンサーを募り、その宣伝に供することもできる。以上に説明したように、本発明によれば、段ボール紙を素材とした、使い捨てのスリッパを低価格で提供することができる。
【0025】
図4は、甲部の幅方向の両端を、2枚の前記段ボール紙の間に挟んだ状態で接着した構造のスリッパの例を示す図で、図4(a)は側面図、図4(b)は底面図である。図4において、13は甲部、14は補強糸、15a、15bは段ボール紙、16は貼り合わせ面、17は底部である。この図に示したように、甲部13の両端の底部への接合の部位を、底部17の貼り合わせ面16に設定することで、接合の強度を向上することができる。
【0026】
図5は、甲部のほぼ中央部に、底部の長さ方向と平行な方向の切断線を有する重ね継ぎの構造を導入したスリッパの例を示す図で、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図である。図5において、18は重ね継ぎ部、19a、19bは接合面である。図5に示した例においては、接合部19a、19bにマジックテープを用いていて、甲部をこのような構造にすることにより、一定範囲内で、甲部の幅と高さの調整が可能となる。
【0027】
図6は、段ボール紙の原反から、本発明のスリッパ底部を作製するための、素材を切り出す状態の他の例を示す図である。また、図7は図6のように切り出した、底部の素材を示す図で図7(a)は平面図、図7(b)は側面図である。図6において、20a、20bは切断線、21は折り線である。また、図7において、22は素材、23は中芯、24はライナーである。
【0028】
図6に示した例では、底部となる素材22の形状が長方形と三角形の組み合わせであり、かつ、前記三角形の部分が二等辺三角形ではないので、段ボール紙の原反の切断屑が極力生じないようにするために、このような切断方法となる。また、ライナー24の面の貼り合わせを折り曲げて行うに際しては、折り線21が中芯の波形と垂直方向となるので、図3に示した例に比較すると、作業性が低下する。従って貼り合わせの前に、折り線21の部分を切断するのが望ましい。
【0029】
以上に説明したように、本発明によれば、紙製の使い捨てスリッパを、低価格で提供することが可能になる。なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含み、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】 本発明に係るスリッパの一例を示す図、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図、図1(c)は底面図。
【図2】 段ボール紙の原反から、本発明のスリッパ底部を作製するための、素材を切り出す状態を示す図。
【図3】 段ボール紙原反を切断して得られる、スリッパ底部作製用の素材を示す図。
【図4】 甲部の幅方向の両端を、2枚の前記段ボール紙の間に挟んだ状態で接着した構造のスリッパの例を示す図、図4(a)は側面図、図4(b)は底面図。
【図5】 甲部のほぼ中央部に底部の長さ方向と平行な方向の切断線を有する重ね継ぎの構造を導入したスリッパの例を示す図、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図。
【図6】 段ボール紙の原反から、本発明のスリッパ底部を作製するための、素材を切り出す状態の他の例を示す図。
【図7】 底部の素材を示す図、図7(a)は平面図、図7(b)は側面図。
【符号の説明】
【0031】
1,17 底部
2,13 甲部
3,14 補強糸
4 印刷表示
5a,5b,15a,15b 段ボール紙
6,16 貼り合わせ面
7 段ボール紙原反
8a,8b,8c,20a,20b 切断線
9,21 折線
10,22 素材
11,23 中芯
12,24 ライナー
18 重ね継ぎ部
19a、19b 接合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形加工を施された中芯の片側にライナーを貼り付けた段ボール紙のからなる底部と、紙製の甲部を有するスリッパであって、前記底部は、長方形及び前記長方形の長辺と同じ長さの底辺を有する三角形の、前記長方形の長辺と前記三角形の底辺を接合した五角形の形状に切断してなり、互いに線対称の形状の2枚の段ボール紙のライナー側を貼り合わせてなることを特徴とするスリッパ。
【請求項2】
前記甲部は、前記底部の長さ方向と垂直の方向に設けられた補強糸を有することを特徴とする、請求項1に記載のスリッパ
【請求項3】
前記甲部は、前記底部と平行方向に切断線を有する重ね継ぎ構造を有し、前記甲部の幅が調整可能であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のスリッパ。
【請求項4】
前記甲部の幅方向の両端は、2枚の前記段ボール紙の間に挟まれた状態で接着されてなることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスリッパ。
【請求項5】
前記三角形は二等辺三角形であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のスリッパ。
【請求項6】
波形加工を施された中芯の片側にライナーを貼り付けた段ボール紙に、直線とジグザグの切断線を交互に設けることにより、長方形と三角形を接合した形状の五角形を長方形の短辺部分で接合した形状の帯状体を作製し、前記帯状体を形成する長方形の短辺に相当する部分を切断することにより、底部を構成する段ボール紙素材を得る工程を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項5に記載のスリッパの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−29617(P2010−29617A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214667(P2008−214667)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(598162609)
【Fターム(参考)】