説明

スーパーヒト化抗体

【課題】ヒト抗体遺伝子由来の可変領域フレームワーク配列を選択することに基づいて抗体をヒト化するための方法が、本明細書中で開示される。
【解決手段】この選択は、非ヒト抗体の可変領域のCDRについての正準CDR構造型を、ヒト抗体配列(好ましくは、生殖系列抗体遺伝子セグメント)のライブラリー由来の対応するCDRについての正準CDR構造型と比較することによる。非ヒトCDRと類似する正準CDR構造型を有するヒト抗体可変領域は、ヒトフレームワーク配列を選択するためのメンバーヒト抗体配列の部分集合を形成する。これらの部分集合のメンバーは、ヒトCDR配列と非ヒトCDR配列との間のアミノ酸類似性によって、さらに順位付けされ得る。上位の順位であるヒト配列が、キメラ抗体を構築するためのフレームワーク配列を提供するために選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2001年7月12日に出願した米国仮出願番号60/305,111に対する優先権を主張する。
【0002】
(政府の関心についての陳述)
本発明の開発は、部分的は、米国国立衛生研究所からの助成金(助成金番号CA−18029)によって支援された。
【0003】
(技術分野)
本発明は抗体をヒト化する方法に関連し、特に、非ヒト化抗体由来のCDR配列とヒト抗体のフレームワーク配列とを含むキメラ抗体を生成することによって抗体をヒト化することに関し、より特に、そのヒト化を実施するために適切なヒト抗体フレームワーク配列を選択する方法に関し、なおより特には、ヒト化抗体のために適切なヒトフレームワーク配列を選択するための基礎として、ヒト抗体の生殖系列正準CDR構造型と比較して非ヒト抗体の正準CDR構造型を使用することに関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
抗体は、主に感染に対する防御のために、脊椎動物免疫系が外来物質(抗原)に応答して形成する、天然タンパク質である。1世紀を超えて、抗体は、人工条件下で動物において誘導され、そして疾患状態の治療もしくは診断における使用のため、または生物学的研究のために、採集された。個々の抗体生成細胞各々は、化学的に規定された組成を有する単一の型の抗体を生成するが、抗原接種に応答して動物血清から直接得られた抗体は、実際には、個々の抗体生成細胞の集合から生成された非同一分子の集合(すなわち、ポリクローナル抗体)を含む。
【0005】
ハイブリドーマ技術は、特定の抗原と反応する抗体を生成する細胞のクローンを同定するためのスクリーニング方法を用いて、無限の数の世代の間、単一の抗体生成細胞を増殖するための方法を提供した。この技術の開発によって、本質的にあらゆる望ましい抗原特異性を有する構造的に同一の抗体を無限量で生成することが可能になった。このような抗体は、一般的にモノクローナル抗体と呼ばれ、ほとんどが、齧歯類に由来する。モノクローナル抗体遺伝子の配列決定によって、その抗体の一次アミノ酸構造を規定することが可能になった。
【0006】
組換えDNA技術の進歩によって、抗体遺伝子の構造的操作、およびハイブリドーマ技術により得られない特性を有する改変抗体分子の生成が、可能になった。治療分野において、この方法の一目的は、齧歯類モノクローナル抗体の一次アミノ酸構造を改変することによって、ヒトにおける齧歯類モノクローナル抗体の免疫原性を減少することであった。治療抗体の免疫原性の減少は、望ましい。なぜなら、免疫応答の誘導は、患者において一連の有害な影響を引き起こし得るからであり、この有害な影響は、治療抗体の加速された排除と結果的な効力の喪失から、最終的には致死的アナフィラキシーまでの範囲に及ぶ。
【0007】
外来モノクローナル抗体の免疫原性を減少するための一ストラテジーは、そのモノクローナル抗体の軽鎖定常ドメインおよび重鎖定常ドメインを、ヒト起源の同様のドメインで置換して、外来抗体の可変領域ドメインをインタクトなままにすることであった。軽鎖および重鎖の可変領域ドメインは、その抗体と抗原との間の相互作用を担う。可変ドメインを定常ドメインに結合する結合ドメインは、抗原結合部位から離れた領域中に位置し、従って、可変ドメインと定常ドメインとの間の結合ドメインは、一般的には、抗原結合に干渉しない。ヒト定常ドメインに結合したマウス可変ドメインを有するキメラ抗体分子は、そのキメラが由来したマウス抗体と同じ親和性定数で、通常は抗原に結合する。そのようなキメラ抗体は、その完全なマウス対応物よりもヒトにおいて免疫原性が小さい。それにも関わらず、マウス可変ドメイン全体を保存する抗体は、かなりの割合の患者において、免疫応答を惹起する傾向がある。例えば、INFLIXIMABTM(安全であると考えられる広範に処方されるキメラ抗体)は、47人のクローン病患者のうちの7人において、ヒト抗キメラ抗体応答を誘導した(Rutgeerts,P.ら(1999)Efficacy and safety of retreatment with anti−tumor necrosis factor antibody(INFLIXIMAB) to maintain remission in Crohn’s disease,Gastroenterology 117,761〜769)。
【0008】
ヒトが全マウス可変ドメインに対して免疫応答を惹起することは、予測可能であった。従って、よりヒトの特徴を有する可変ドメインを得る努力が、そのような標準的キメラ抗体の臨床試験が報告される前でさえ、始まった。「ヒト化」としばしば呼ばれる方法の一カテゴリーは、マウスモノクローナル抗体の可変ドメインを、マウス特徴およびヒト特徴の両方を有する抗体可変ドメインを組換え構築することによって、よりヒト形態へと変換することを目的とする。ヒト化ストラテジーは、抗体構造データのいくつかの合意的理解に基づく。第1に、可変ドメインは、ある種において保存されるが進化的に遠縁の種(例えば、マウスとヒト)の間では異なる、一連のペプチド配列領域を含む。第2に、他の連続領域は、ある種において保存されないが、同じ個体中の抗体生成細胞間でさえ異なる。第3に、抗体と抗原との間の接触は、主に可変ドメインの非保存領域を介して生じる。第4に、抗体可変ドメインの分子構造は、種間の対応アミノ酸残基位置が、実験データを用いずに位置だけに基づいて同定され得るに十分に種間で類似する。
【0009】
ヒト化ストラテジーは、マウス配列に特徴的であるアミノ酸残基を、ヒト抗体の対応位置において見出される残基で置換すると、ヒトにおける生じる抗体の免疫原性が減少するという前提を共有する。しかし、種間での配列の置換は、通常は、その抗原に対する抗体結合の減少をもたらす。従って、ヒト化の技術は、元のマウス配列を置換して免疫原性を減少することと、治療的に有用であるに十分な抗原結合を保持するためのヒト化分子の必要性とを釣り合わせることにある。この釣り合いは、2つのアプローチを使用して解決された。
【0010】
1つのアプローチ(Studnickaに対する米国特許第5,869,619号およびPadlan(1991)A possible procedure for reducing the immunogenicity of antibody variable domains while preserving their ligand binding properties,Molecular Immunology 28:489〜498によって例証される)において、特徴的に、ヒト残基は、(i)抗原との相互作用において何の有意な化学的役割も果たさないと決定または推定され、かつ(ii)側鎖を溶媒中に突出して配置されることが決定または推定されているマウス可変ドメイン残基の代わりとなる。従って、抗原結合部位から遠い外部残基が、ヒト化され、一方、内部残基、抗原結合残基、および可変ドメイン間の境界面を形成する残基は、マウスのままである。このアプローチの一つの利点は、残基が抗原結合において何の有意な化学的役割も果たさないか否かを決定するため、または残基が特定の3次元抗体構造において溶媒中に位置するか否かを決定するためには、幾分広範な実験データが必要であることである。
【0011】
より一般的な別のアプローチ(Winterに対する米国特許第5,225,539号およびJonesら(1986)Replacing the complementarity determining regions in a human antibody with those from a mouse,Nature 321:522〜525により例証される)において、保存されると考えられる一連のマウス可変ドメインペプチド配列領域が、ヒト抗体由来の対応領域で置換される。このより一般的なアプローチにおいて、すべての可変ドメイン残基は、抗原結合に関与する非保存領域以外は、ヒト化されている。置換のために適切な連続領域を決定するために、WinterおよびJonesら(1986)は、WuおよびKabat(1970)により以前に開発された抗体可変ドメイン配列の分類を利用した。
【0012】
WuおよびKabatは、抗体ペプチド配列の整列を開拓した。そして、この点における彼らの寄与は、数倍であった。第1。可変ドメイン間の配列類似性の研究を通して、彼らは、類似する3次元構造を採用し、類似する機能的役割を果たし、近隣残基と同様に相互作用し、そして同様の化学的環境中に存在する限り、すべての脊椎動物種におけるすべての抗体にわたって大なり小なり相同であった対応残基を同定した。第2に、彼らは、相同な免疫グロブリン残基が同じ位置番号を割当てられたペプチド配列番号付けシステムを考案した。当業者は、現在一般的にKabat番号付けと呼ばれているものを、配列自体を超えるいかなる実験データにも基づかずに、あらゆる可変ドメイン配列に明確に割当て得る。第3に、Kabat番号付けされた配列位置各々について、KabatおよびWuは、変動性を計算した。変動性によって、可変ドメイン配列が整列された場合に可能な少数または多数のアミノ酸の発見が意味される。彼らは、4つのあまり可変的ではない連続領域内に埋没している高変動性である3つの連続領域を同定した。他の研究者らは、ほぼこれらの領域(超可変領域)における変動性を以前に気付き、この高度に可変的な領域が、抗原結合に使用されるアミノ酸残基を示すと仮定した。KabatおよびWuは、これらの可変領域を構成する残基を公式に定め、これらの「相補性決定領域」(CDR)を命名した。これは、抗体と抗原との間の化学的相補性を指す。この可変ドメインの3次元折畳みにおける役割(しかし、抗原認識においての役割ではない)は、残りのあまり変動性ではない領域(これは、ここで、「フレームワーク領域」である)に帰せられた。第4に、KabatおよびWuは、抗体のペプチド配列および核酸配列の公のデータベースを確立した。これは、維持され続けており、当業者に周知である。
【0013】
WinterおよびJonesにより開示されたKabat分類を使用するヒト化方法は、1つの抗体由来のCDRと、種起源、特異性、サブクラス、または他の特徴が異なる別の抗体由来のフレームワーク領域とを含むキメラ抗体を生じる。しかし、何の特定の配列も特性も、フレームワーク領域に帰せられず、実際、Winterは、任意のフレームワークの組が、任意のCDRの組と合わされ得ると教示した。以来、フレームワーク配列は、良好な抗原結合を保持するために必要な抗体可変領域の3次元構造を付与するために重要であると認識されている。従って、WinterおよびJonesにより記載される一般的なヒト化方法は、不活性な抗体をしばしばもたらすという不利点を有する。なぜなら、これらの参考文献は、多くの可能なヒトフレームワーク配列から、非ヒト抗体由来の特定のCDR領域により必要とされる抗原結合を支持する可能性が最も高い配列を、合理的に選択するために必要な情報を提供していないからである。この分野におけるその後の発展は、対応するマウス抗体のアビディティと比較していくつかのヒト化抗体を用いて観察された、抗原に対するアビディティの喪失を処理するための、Winterの範囲における改良である(アビディティとは、遊離形態と抗原結合形態との間の化学平衡を近似する条件下における、抗原の存在下での、抗体の分配の定量的尺度である。多価結合効果に供されない溶液中の反応について、アビディティは、生化学的平衡定数である親和性と同じである)。
【0014】
Queenらに対する米国特許第5,693,761号は、抗体をヒト化するためのWinterに基づくある改良を開示する。これは、立体的不適合性または他の化学的不適合性が原因で、CDRがマウス抗体において見出される結合可能な立体構造へとフォールディングするのを妨げる、ヒト化フレームワーク中の構造モチーフにおける問題にアビディティ損失を帰する前提に基づく。この問題に取り組むために、Queenは、ヒト化されるべきマウス抗体のフレームワーク配列に対して、直鎖状ペプチド配列において密接に相同なヒトフレームワーク配列を使用することを教示する。従って、Queenの方法は、種間でフレームワーク配列を比較することに焦点を当てる。代表的には、すべての利用可能なヒト可変ドメイン配列は、特定のマウス配列に比較され、対応するフレームワーク残基間の同一性パーセントが、計算される。最も高いパーセンテージを有するヒト可変ドメインが、ヒト化計画のためのフレームワーク配列を提供するために選択される。Queenはまた、ヒト化フレームワーク中に、結合可能な立体構造にてCDRを支持するために重要なマウスフレームワーク由来の特定のアミノ酸残基を保持することが、重要であることを教示する。潜在的な重要性は、分子モデルから評価される。保持のための候補残基は、代表的には、直鎖状配列においてCDRに隣接する残基、または任意のCDR残基の物理的に6Å内にある残基である。
【0015】
他のアプローチにおいて、特定のフレームワークアミノ酸残基の重要性は、Riechmannら(1988)により記載されるように、単一残基群をマウス配列へと戻し、抗原結合をアッセイすることによって、一旦低アビディティのヒト化構築物が得られた後に、実験的に決定される。フレームワーク配列中のアミノ酸の重要性を同定するための別の例示的アプローチが、Carterらに対する米国特許第5,821,337号、およびAdairらに対する米国特許第5,859,205号により開示される。これらの参考文献は、フレームワーク中の特定のKabat残基位置を開示し、これは、ヒト化抗体において、アビディティを保存するために対応するマウスアミノ酸で置換することを必要とし得る。Queenによる改良およびRicechmannのアプローチ、CarterのアプローチおよびAdairのアプローチの不利点の1つは、非常に多数のヒトフレームワーク配列が、比較のために必要であり、そして/または重要なアミノ酸残基を保存するための指針が、機能性を推定するためには完全には十分でないことである。従って、部分的にはヒトであり部分的にはマウスである構築されて得られるフレームワークは、なお頻繁に、ヒト免疫原性または低下した抗原結合を示し、それにより、治療用途のために適切なフレームワークを得るために、フレームワーク構築において多数の反復を必要とする。
【0016】
Winterに対する第2の型の改良は、Padlanら(1995)Identification of specificity−determining residues in antibodies、FASEB J.9:133〜139;およびTamuraら(2000)Structural correlates of an anti−carcinoma antibody:identification of specificity−determining residues(SDR) and development of a minimally immunogenic antibody variant by retention of SDRs
only,J.Immunol.164:1432〜1441により例証される。これらの参考文献は、ヒト化抗体における特徴的にヒトの配列の比率を増加すると、抗体の免疫原性が減少するという前提を共有し、従って、部分的CDR配列を移植するための方法を開示する。抗体−抗原複合体の3次元構造の決定は、KabatおよびWuにより規定されたCDRに割り当てられた多くの残基位置が、抗原結合に直接関与したことを示した。これらの参考文献は、CDR残基の部分集合を移植すると、ヒト化抗体に抗原結合を十分に移すことを示した。しかし、ヒト化フレームワーク配列は、なお必要とされる。これらの参考文献は、所定のマウスCDRの組を用いて使用するための十分なヒトフレームワーク配列を選択するための方法を教示しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、非ヒトCDR領域を支持するため、およびヒトにおいて低免疫原性で高い抗原結合を保持するヒト化抗体を提供するために、フレームワークを直接比較する必要なく、フレームワーク中の臨界的に重要なアミノ酸残基を決定する必要もなく、かつ適切な治療特性を有するヒト化抗体を得るために構築を複数回反復する必要もなく、適切なヒトフレームワーク配列を信頼できるように同定する、抗体をヒト化するための方法について、当該分野で必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
本発明は、非ヒト抗体とヒト抗体との間でフレームワーク配列を比較する必要なく、高親和性かつ低免疫原性のヒト化抗体を生成するための方法を提供することによって、この必要性を満たす。本発明はまた、それにより生成されるヒト化抗体も提供する。分析点としてヒトフレームワーク配列に基づくのではなく、本明細書中に提供される方法は、非ヒト抗体の正準CDR構造型を、(特に、ヒト生殖系列配列によりコードされる)ヒト抗体のCDR構造型と比較して、適切なヒトフレームワーク配列を得るための候補ヒト抗体配列を同定することに基づく。
【0019】
より特に、ヒト化抗体を生成する方法が提供され、この方法は、非ヒト成熟抗体遺伝子によりコードされる主体(subject)可変領域のペプチド配列を得る動作、および非ヒト抗体可変領域内の少なくとも2つのCDRについて第1組の正準CDR構造型を同定する動作を包含する。その後、ヒト抗体のヒト抗体可変領域のペプチド配列のライブラリーもまた、得られる。好ましい実施形態において、このライブラリーは、生殖系列核酸セグメントによりコードされるヒト生殖系列可変領域の配列を含む。しかし、他の実施形態において、このライブラリーは、成熟ヒト抗体配列を含み得る。いずれの場合にも、この方法は、ヒト可変領域配列のライブラリー中の各配列について、少なくとも2つのCDRについて正準CDR構造型(すなわち、第2組の正準CDR構造型)を同定する工程を包含する。このライブラリーから、第1組の正準CDR構造型を第2組の正準CDR構造型と比較すること(すなわち、マウス正準CDR構造型を、可変領域内の対応する位置において、ヒト正準CDR構造型と比較すること)、そしてその第2組の正準CDR構造が、それぞれ、非ヒト可変領域およびヒト可変領域内の対応する位置におけるCDR配列について、第1組の正準CDR構造型と同じであるヒト配列を選択することによって、候補配列の部分集合が選択される。この方法は、これらの候補ヒト可変領域配列を、(例えば、マウスCDRの)非ヒト可変領域由来のCDR配列のうちの少なくとも2つを、候補ヒト可変領域配列由来のフレームワーク領域と合わせて含む、キメラ分子を構築するための基礎として使用する。この構築の結果は、キメラ抗体が、可変領域中の対応する位置にあるヒトCDR配列の各々の代わりである非ヒトCDR配列各々を含み、その結果、キメラ抗体中のフレームワーク配列が、候補ヒトフレームワーク配列とは10アミノ酸残基以下異なることである。特定の実施形態において、キメラ抗体のフレームワーク配列は、ヒトフレームワーク配列と5アミノ酸残基以下だけ異なる。他の実施形態において、キメラ抗体のフレームワーク配列は、ヒトフレームワーク配列と2アミノ酸残基以下だけ異なる。ほとんどの実施形態において、キメラ抗体分子を構築する動作は、キメラ抗体配列をコードする核酸配列を構築する工程を包含する。
【0020】
代表的な実施形態において、この方法は、対応するヒトCDR配列に対する非ヒトCDR配列のアミノ酸残基の位置ごとの類似性を、順位付けの基準に従って、比較することによって、候補ヒト配列の部分集合のメンバーを順位付けする工程をさらに包含する。特定の実施において、ヒト配列の候補は、順位付けされたメンバーのうちの上位25%だけを含む。いくつかの実施形態において、順位付けの基準は、少なくとも1つのCDRもしくは少なくとも2つのCDR(または最も代表的には、対応する各々のCDR)の対応する残基位置における非ヒトCDR配列とヒトCDR配列との間のアミノ酸同一性のスコアを含む。他の実施形態において、順位付けの基準は、対応するCDRのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または各々の、対応する位置における非ヒトCDRとヒトCDRとの間のアミノ酸相同性のスコアを包含する。なお他の実施形態において、順位付けの基準は、対応するCDRのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または各々についての、アミノ酸同一性のスコアおよびアミノ酸相同性のスコアの両方を包含する。この方法は、異なるシステムによって規定されるCDRを使用して、実施され得る。例えば、特定の実施形態において、CDRは、Kabatにより規定されたCDRであり、他の実施形態において、CDRは、Chothiaにより規定されたCDRループである。
【0021】
この方法は、非ヒト供給源の正確なCDR配列またはメンバーセットからのヒトフレームワークの正確な配列を、厳密に使用することには限定されない。特定の実施形態において、この方法はまた、非ヒトCDR配列のうちの少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸で置換する工程を包含し得、但し、4残基以下が、非ヒト軽鎖CDR1、非ヒト軽鎖CDR2、非ヒト軽鎖CDR3、非ヒト重鎖CDR1、または非ヒト重鎖CDR3のいずれかにおいて置換され、10アミノ酸以下が、非ヒト重鎖CDR2において置換される。他の実施形態において、この方法はまた、ヒトフレームワーク配列のうちの少なくとも1アミノ酸残基であるが10アミノ酸残基以下を、異なるアミノ酸残基で置換する工程を包含し得る。
【0022】
この方法はまた、特定の状況において、非ヒト可変領域が、ヒト可変領域には存在しない正準型を有するCDR配列を含み得ることを認識する。3つの非ヒトCDRの各々が軽鎖CDRである場合、3つの非ヒトCDR配列のうちの1つがヒト可変領域配列のライブラリーには存在しない正準構造型である場合、ヒト配列を選択する動作は、対応する位置にあるこの存在しない非ヒトCDR型とは異なる正準型のCDRを有するヒト可変領域配列を選択する工程を包含し、但し、異なる正準ヒトCDR型は、非ヒトCDRのこの存在しない正準CDR構造型の長さよりも2アミノ酸残基以下だけ小さいかまたは大きい長さを有する。代表的には、上記の存在しないCDR配列が正準型1である場合、この動作は、対応する位置において正準型2のCDRを有するヒト配列を選択する工程を包含するか、または非ヒトCDR配列が正準型5である場合、この動作は、対応する位置において正準型4もしくは3のCDRを有するヒト配列を選択する工程を包含する。
【0023】
ほとんどの実施形態において、この非ヒト可変領域は、マウス可変領域である。同様に、ほとんどの実施形態において、ヒト可変領域配列のライブラリーは、ヒトフレームワーク供給源として、ヒトV配列、ヒトVλ配列、ヒトV配列、ヒトJ配列、ヒトJ配列またはヒトJλ配列を含む。ほとんどの実施形態において、この方法は、キメラ可変軽鎖およびキメラ可変重鎖の両方を有するキメラ抗体を、代表的には、V配列およびV配列由来のヒトフレームワークと合わせる工程を包含する。代表的な実施形態において、このキメラ可変軽鎖およびキメラ可変重鎖は、Fabフラグメント、もしくは(Fab)分子、もしくは単鎖Fv分子になるように形成されるか、またはこのキメラ可変軽鎖およびキメラ重鎖は、ヒト抗体定常領域と集合されて、完全抗体を形成する。
【0024】
この方法は、任意の主体種の主体抗体配列を、客体(object)種における使用のために適切である、より免疫原性が小さい形態に変換することに適用可能であり、これは、その客体種のフレームワーク配列を、主体種由来のCDRと組み合わせて含むキメラ抗体を生成することによる。このような場合において、上記の方法は、実施する動作が同じであり、可変領域は、任意の主体種由来であり得、そして客体可変領域は、その抗体が使用される任意の客体種由来であり得る。従って、例えば、種々の実施形態において、主体抗体は、ウシ供給源、ブタ供給源、マウス供給源、またはウマ供給源由来のフレームワーク配列を用いてキメラ形成されて、それぞれ、ウシ化抗体、ブタ化抗体、マウス化抗体、またはウマ化抗体を形成し得る。
【0025】
別の局面において、本発明は、開示される方法に従って生成されるキメラ抗体分子を含む組成物を提供する。この方法は、主体CDR配列と組み合わせるために適切な客体フレームワーク配列を同定する新規な方法を使用するので、生成されて生じるキメラ抗体もまた、新規である。従って、本明細書中において、ヒト可変領域フレームワーク配列に隣接して融合された少なくとも2つの非ヒトCDR配列を含むキメラ抗体可変領域を含む、ヒト化抗体が提供される。このヒトフレームワーク配列は、10アミノ酸残基以下を有することにより特徴付けられるフレームワーク配列の部分集合から選択され、この10アミノ酸残基以下は、キメラ抗体の可変領域とヒト抗体の可変領域との間で少なくとも2つの対応するCDR位置について非ヒトCDR配列と同じ正準構造型を有する少なくとも2つのヒトCDR配列を有するヒト抗体可変領域中のフレームワーク配列と異なる。
【0026】
この非ヒト可変領域CDRは、代表的には、マウス由来である。このヒト可変領域配列は、代表的には、V配列、Vλ配列、V配列、J配列、J配列またはJλ配列である。最も代表的には、キメラ抗体は、可変軽鎖および可変重鎖の各々についてキメラ抗体配列を含む。代表的な実施形態において、キメラ可変軽鎖およびキメラ可変重鎖は、Fabフラグメント、もしくは(Fab)’分子、もしくは単鎖Fv分子へと形成されるか、またはキメラ可変軽鎖およびキメラ重鎖は、完全抗体の形態にてヒト抗体定常領域と集合される。最も代表的には、ヒト可変領域配列は、ヒト生殖系列可変領域フラグメント由来の配列である。他の実施形態において、ヒト可変領域配列は、ヒト成熟抗体由来の配列である。
【0027】
好ましい実施形態において、ヒト化抗体は、その抗原に対して、少なくとも10−1、好ましくは少なくとも10−1、そしてより好ましくは少なくとも10−1の解離定数を有する。代表的には、このヒト化抗体は、ヒトに投与された場合に、免疫応答を惹起しない。本発明を例証する特定の実施形態は、サソリ毒抗原に結合するヒト化抗体、ヒトCD28レセプターに結合するヒト化抗体、ヒトリゾチームに結合するヒト化抗体、またはヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65)に結合するヒト化抗体が、包含された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、ヒト生殖系列V遺伝子セグメントのライブラリーを示す。
【図2】図2は、ヒト生殖系列V遺伝子セグメントのライブラリーを示す。
【図3】図3は、マウスD1.3(抗ニワトリリゾチーム)抗体可変軽鎖配列の一部と、対応する位置でマウスDL.3軽鎖配列と同じ型の正準CDRを有するヒト生殖系列V可変領域配列の選択された部分集合とを示す。この部分集合は、DL.3 CDRとヒトCDRとの間でアミノ酸配列の類似性により順位付けされ、最高に順位付けされた配列が、最初に示される。
【図4】図4は、マウスD1.3抗体可変重鎖配列の一部と、そのDL.3と同じ型の正準CDRを有するヒト生殖系列V可変領域配列の選択された部分集合とを示す。この部分集合は、図3と同様に対応するCDRのアミノ酸配列の類似性により順位付けされる。
【図5】図5は、キメラV可変領域のアミノ酸配列およびヒト化D1.3抗体のV可変領域のアミノ酸配列を示し、これは、本発明の一局面を示す。
【図6A】図6は、図5のヒト化キメラD1.3抗体をコード(しそして発現)するDNA構築物の核酸配列を示し、これは、本発明の別の局面を示す。
【図6B】図6は、図5のヒト化キメラD1.3抗体をコード(しそして発現)するDNA構築物の核酸配列を示し、これは、本発明の別の局面を示す。
【図7】図7は、ヒト化D1.3抗体による抗原結合を示すグラフである。これは、10−1より大きい親和性定数を有し、本発明の一実施形態を示す。
【図8】図8は、9.3と名付けられた抗ヒトCD28抗体のマウス可変軽鎖配列の一部と、対応する位置でマウス9.3可変軽鎖配列と同じ型のヒト正準CDRを有するヒト生殖系列V可変領域配列の選択された部分集合とを示し、これは、図3と同様にアミノ酸配列の類似性により順位付けされる。
【図9】図9は、9.3抗体のマウス可変重鎖配列の一部と、対応する位置でこのマウス可変重鎖配列と同じ型のヒト正準CDRを有するヒト生殖系列V可変領域配列の選択された部分集合とを示し、これもまた、アミノ酸配列の類似性により順位付けされる。
【図10】図10は、キメラ可変重鎖および可変軽鎖を有するヒト化抗ヒトCD28(Hu9.3)Fabフラグメントを示し、これは、本発明の別の実施形態を示す。
【図11】図11は、Hu9.3フラグメントによる抗原結合を示すグラフである。これは、10−1より大きい親和性定数を有し、本発明の一実施形態を示す。
【図12】図12は、キメラ可変重鎖および可変軽鎖を有するヒト化抗サソリ毒素Fabフラグメントを示し、これは、本発明の別の実施形態を示す。
【図13】図13は、キメラ可変重鎖および可変軽鎖を有するヒト化抗ヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65)Fabフラグメントを示し、これは、本発明の別の実施形態を示す。
【図14】図14は、ヒト化抗GAD65 Fabフラグメントによる抗原結合を示すグラフである。これは、1011−1より大きい親和性定数を有し、本発明の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
以下の説明において、当業者が本発明を完全な程度まで理解および実施することを補助し得る種々の参考文献に対して、引用がなされる。従って、以下の説明において引用される各参考文献は、その全体が参考として本明細書中に援用される。本発明の種々の実施形態を理解することをより良好に補助するために、本明細書中で使用される特定の用語の意味を説明することが、有用であり得る。
【0030】
「成熟抗体遺伝子」とは、免疫グロブリンをコードする遺伝子配列であって、その遺伝子配列は、その特定の免疫グロブリンが発現されるように成熟プロセスを経験した、例えば、ハイブリドーマ中のリンパ球(例えば、B細胞)で発現されるかまたは抗体産生細胞において発現される。この用語は、そのような成熟遺伝子をコードする成熟ゲノム配列、成熟cDNA配列、または成熟した他の核酸配列を包含し、それらは、単離され、そして/または他の細胞型における発現のために組換え操作されている。成熟抗体遺伝子は、リンパ球以外の全ての細胞においてコードされる抗体遺伝子とこれらの成熟抗体遺伝子とを構造的に区別する、種々の成熟および再構成を経験している。ヒト、齧歯類、および他の多くの哺乳動物における成熟抗体遺伝子は、抗体軽鎖の場合にはV遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントの融合によって、そして抗体重鎖の場合にはV遺伝子セグメント、D遺伝子セグメント、およびJ遺伝子セグメントの融合によって、形成される。多くの成熟抗体遺伝子は、点変異およびその後の融合を必要とし、そのうちのいくつかは、特定の抗原に対する抗体タンパク質の親和性を増加する。
【0031】
「生殖系列抗体遺伝子」または生殖系列抗体遺伝子フラグメントとは、特定の免疫グロブリンの発現のための遺伝子再構成および変異をもたらす成熟プロセスを経験していない、非リンパ球細胞によりコードされる免疫グロブリン配列である。本発明の種々の実施形態により提供される利点のうちの1つは、生殖系列抗体遺伝子が、成熟抗体遺伝子よりも、動物種における個体に特徴的である必須アミノ酸配列構造を保存する可能性が高く、従って、その種において治療的に使用した場合に、異種供給源由来と認識される可能性が低いという認識に由来する。図1および図2は、ヒト可変重鎖領域(V)および可変軽鎖領域(V)抗体(すなわち、免疫グロブリン)をコードするヒト生殖系列抗体遺伝子のペプチド配列を示す。これらの配列リストの各々は、ヒト抗体遺伝子のライブラリー、特にヒト生殖系列抗体遺伝子のライブラリーを、例証する。
【0032】
「CDR」とは、抗体可変配列内の相補性決定領域である。可変領域の各々について、可変重鎖配列および可変軽鎖配列の各々において、3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3と命名される)が存在する。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムによって異なって規定されているが、すべてが、可変配列内にいわゆる「超可変領域」を構成するものの中に重複する残基を有する。Kabat(CITE)により記載されるシステムは、抗体のあらゆる可変領域に適用可能な明確な残基番号付けシステムを提供するだけではなく、これらのCDRを規定する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ばれ得る。Chothiaおよび共同研究者(CITE)は、カバットCDR内の特定のsub部分が、アミノ酸配列レベルで大きな多様性を有するにも関わらず、ほぼ同一のペプチド骨格構成を採用することを見出した。これらのsub部分は、L1、L2およびL3またはH1、H2、およびH3と命名され、ここで「L」および「H」は、それぞれ、軽鎖領域および重鎖領域を示す。これらの領域は、Chothia CDRと呼ばれ得、これらは、Kabat CDRと重複する境界を有する。表Iは、Kabatの残基番号付けシステムによるChotia CDRとKabat CDRとの重複を示す。
【0033】
(表I)
【0034】
【表1−1】

【0035】
【表1−2】

【0036】
Kabat CDRと重複するCDRを規定する他の境界は、Padlan(1995)またはMacCallum(1996)によって記載されている。なお他のCDR境界の定義は、上記のシステムのうちの1つに厳密には従わないかもしれないが、それにも関わらず、Kabat CDRと重複するが、それらは、特定の残基もしくは残基群もしくはCDR全体さえもが抗原結合に有意には影響を与えないという予測または実験的知見を考慮して、短くされても、長くされてもよい。本明細書中において使用される方法は、これらのシステムのいずれかに従って規定されたCDRを利用し得るが、好ましい実施形態は、Kabatにより規定されるCDRまたはChonthiaにより規定されるCDRを使用する。
【0037】
「フレームワーク」または「フレームワーク配列」は、可変領域からCDRを引いた残りの配列である。CDR配列の正確な定義は、異なるシステムによって決定され得るので、フレームワーク配列の意味は、それに従って、異なる解釈の影響を受ける。本明細書中で使用される意味を明確にするために、フレームワーク配列とは、CDR配列であると規定されるもの以外の抗体の可変領域内配列を意味し、その結果、フレームワークの正確な配列は、どのようにCDRが規定されるかにのみ依存する。例えば、本明細書中で提供される方法において使用されるCDRは、通常は、Kabat CDRと考えられるものの部分集合であるが、例えば、重鎖のCDR1の場合は、Kabatシステムにおいてフレームワーク残基として分類される残基も包含する。
【0038】
「正準(canonical)CDR構造型」とは、Chothia(CITE)により命名された構造型である。Chothiaおよび共同研究者は、多くの抗体のCDRの臨界的位置が、アミノ酸配列レベルでの大きな多様性にも関わらず、ほぼ同一のペプチド骨格構成を採用することを見出した。従って、Chothiaは、各鎖中の各CDRについて、1つまたは少数の「正準構造」を規定した。各正準構造は、ループを形成するアミノ酸残基の連続セグメントについて、主に、一組のペプチド骨格れじれ角を特定する。Chothiaにより規定される正準CDR構造型が、表IIに列挙される。
【0039】
(表II)
【0040】
【表2】

【0041】
「対応するCDR」とは、2つの異なる可変配列内で位置が対応する2つの異なる可変配列間のCDRを相対的に指す。従って、例えば、マウス軽鎖CDR1は、ヒト軽鎖CDR1に対応し、逆もまたそうである。なぜなら、各々は、そのCDRの実際の境界がKabatにより規定されようが、Chothiaにより規定されようが、または他のいくつかのシステムにより規定されようが、Kabat番号付けシステムにおいて規定された位置に位置するからである。同様に、「対応する」残基、「対応する」配列、または「対応する」アミノ酸は、Kabat番号付けシステムにより位置付けされた2つの異なるペプチド配列間の残基位置を相対的にさす。
【0042】
CDR移植法と呼ばれ得る本明細書中に提供される方法の目的は、主体非ヒト抗体をヒト化するために適切なヒトフレームワーク配列に到達するための処方を提供することである。すべての以前のCDR移植法において、ヒト化フレームワーク配列の選択は、ヒトフレームワークを主体(マウス)フレームワークと比較することに基づいた。対照的に、本明細書中に記載される方法の基礎は、そのCDRと主体抗体のCDRとの類似性に基づいて、その2つの抗体間でフレームワーク配列を比較することなく、ヒト化フレームワークを提供するためにヒト抗体を選択することである。
【0043】
候補ヒト抗体配列の主体CDRに対する類似性は、2つのレベルで各ドメインについて割当てられる。主に、CDRペプチド骨格の同一の3次元構造が、探索される。主体CDRの実験的に決定された原子座標は、めったに利用可能ではない。従って、3次元的類似性は、主体CDRのChothia正準構造型を決定すること、そして異なる正準構造を保有する候補をさらなる考慮から排除することによって、近似される。第二に、主体CDRと残りのヒト候補CDRとの間の残基ごとの相同性が考慮され、最も高い相同性を有する候補が、選択される。
【0044】
最高の相同性を選択することは、主体非ヒト可変領域と同じ正準構造を有する候補ヒト可変領域を順位付けするために使用される種々の基準に基づく。選択された組のメンバーを順位付けするための基準は、アミノ酸配列同一性もしくはアミノ酸配列相同性またはその両方によってであり得る。アミノ酸同一性は、アミノ酸残基の位置ごとの一致の単純なスコアである。アミノ酸相同性による類似性は、特徴的な残基構造における位置ごとの類似性である。相同性は、例えば、HenikoffおよびHenikoff(1992)Amino acid substitution matrices from protein blocks,Proc.Natl.Acad.Sci 89:10915〜10919により記載される表および手順に従って、またはHenikoffおよびHenikoff(1996)により記載されるBLOSUMシリーズによって、スコア付けされ得る。
【0045】
これらの方法の工程は、以下の通りである:
主体抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのペプチド配列を決定する。これらは、いくつかの方法(例えば、従来のcDNAクローニング後に個々の遺伝子をDNA配列決定すること;主体ハイブリドーマの逆転写物もしくはDNAからポリメラーゼ連鎖反応により増幅されたクローニング産物のDNA配列決定;または精製された抗体タンパク質のペプチド配列決定)のいずれかによって、決定され得る。
【0046】
Kabat番号付けシステム(Kabatら、1991)を、主体非ヒト抗体の重鎖配列および軽鎖配列に適用する。
【0047】
主体非ヒト抗体のCDRの各々について、正準構造型を決定する。この決定は、ChothiaおよびLesk(1987)、Chothiaら(1992)、Tomlinsonら(1995)、MartinおよびThornton(1996)、ならびにAl−Lazikaniら(1997)において考察された指針を考慮して、ペプチド配列の試験からなされる。CDRの各々についての正準構造決定の顕著な特徴は、以下の通りである。
【0048】
重鎖CDR1について、3つの正準構造型が、現在公知である。新規な配列の割り当ては、簡単である。なぜなら、各々の正準構造型は、異なる数の残基を有するからである。Al−Lazikaniら(1997)において記載されるように、Kabat番号付けがこの配列に割当てられる場合、残基31〜35についての番号付けは、個々の正準構造に付いて、以下の通りである。
【0049】
正準構造型1:31、32、33、34、35
正準構造型2:31、32、33、34、35、35a
正準構造型3:31、32、33、34、35、35a、35b。
【0050】
重鎖CDR2について、4つの正準構造型が、現在公知である。いくつかは、独特の数の残基を有し、位置52〜56のその独特のKabat番号付け、つまり
正準構造型1:52、53、54、55、56
正準構造型4:52:52a、52b、52c、53、54、55、56
から容易に区別される。
【0051】
重鎖CDR2についての正準構造型2および3は、等しい数の残基を有し、従って、Chothiaら(1992)により考察されるように、その配列内の手がかり(clue)によって区別されなければならない。これらの手がかりを含むセグメントのKabat番号付けは、52、52a、53、54、55である。正準構造型2は、位置52aにProまたはSerを有し、位置55にGlyまたはSerを有し、他の位置に制限はない。正準構造型3は、位置54にGly、Ser、Asn、またはAspを有し、他の位置に制限はない。これらの基準は、ほとんどの場合において正確な割り当てを解決するために十分である。さらに、フレームワーク残基71は、正準構造型2について、共通して、Ala、Val、Leu、Ile、またはTheであり、正準構造型3について、共通してArgである。
【0052】
重鎖CDR3は、CDRすべてのうちで最も多様である。これは、リンパ球に独特な遺伝的プロセス(いくつかはランダムな性質である)により生成される。結果的に、CDR3の正準構造は、推定することが困難であった。いずれの場合においても、ヒト生殖系列V遺伝子セグメントは、CDR3のいずれの部分もコードしない。なぜなら、このV遺伝子セグメントは、Kabat位置94にて終結し、一方、位置95〜102は、CDR3をコードする。これらの理由によって、CDR3の正準構造は、候補ヒト配列を選択するためには考慮されない。
【0053】
軽鎖CDR1について、6つの正準構造型が、κ鎖におけるCDR1について現在公知である。各正準構造型は、異なる数の残基を有し、従って、新規な配列への正準構造型の割り当ては、残基位置27〜31のKabat番号付けから明らかである。
【0054】
正準構造型1:27、29、30、31
正準構造型2:27、28、29、30、31
正準構造型3:27、27a、27b、27c、27d、27e、27f、28、29、30、31
正準構造型4:27、27a、27b、27c、27d、27e、28、29、30、31
正準構造型5:27、27a、27b、27c、27d、28、29、30、31
正準構造型6:27、27a、28、29、30、31。
【0055】
軽鎖CDR2について、単一の正準構造型のみが、κ軽鎖中のCDR2について公知である。従って、例外的な主体抗体配列を除いて、割り当ては自動的である。
【0056】
軽鎖CDR3について、6つまでの正準構造型が、κ鎖中のCDR3について記載されているが、これらのうちの3つは、稀である。この3つの共通する型は、残基位置91〜97のKabat番号付けにおいて反映されるその長さによって区別され得る:
正準構造型1:91、92、93、94,95、96、97(位置95の必須のPro、および位置90のGln、AsnもしくはHisもまた伴う)
正準構造型3:91、92、93、94、95、97
正準構造型5:91、92、93、94、95、96、96a、97。
【0057】
主体非ヒト抗体の正準CDR構造型を同定した後、主体抗体と同じ正準構造型の組み合わせを有する同じ鎖型(重鎖または軽鎖)のヒト遺伝子が、ヒト配列の候補組を形成するように同定される。好ましい実施形態において、ヒト生殖系列免疫グロブリンVH遺伝子フラグメントおよびVk遺伝子フラグメントのペプチド配列のみが、比較のために考慮される。これらの遺伝子フラグメントのうちのほとんどが、発見されており、そしてすでに、正準構造型に割当てられている(Chothiaら、1992、Tomlinsonら、1995)。これらの参考文献により開示されないさらなるV遺伝子フラグメントは、本明細書中に提供され、図1および図2に列挙される配列間に存在するようである。重鎖について、マウス正準構造型に対するCDR1およびCDR2の整合が、評価され、整合しない遺伝子が、排除される。軽鎖について、主体抗体の正準構造型への各ヒト配列のCDR1およびCDR2の整合性が、第一に評価される。候補Vk遺伝子の残基89〜95が主体抗体と同じ正準構造型のCDR3を形成する可能性が、評価され、この評価は、その遺伝子とJ領域との融合を仮定し、そしてCDR3正準CDR構造型決定のための基準を融合配列に適用することによる。整合しない配列が、排除される。
【0058】
主体抗体の可変ドメインが、ヒトゲノム中で利用可能ではない正準構造型である場合に適切な別の実施形態において、3次元的に類似するが同一ではない正準構造型を有するヒト生殖系列V遺伝子が、比較のために考慮される。そのような状況は、しばしば、マウス抗体におけるκ鎖CDR1にて生じ、下記の2つの例を含む。可能な6つすべての正準構造型が、マウス抗体におけるこのCDRにおいて観察され、一方、ヒトゲノムは、正準型2、3、4、および6のみコードする。これらの状況において、主体非ヒト配列のアミノ酸残基の長さのうちの2つに入るアミノ酸残基の長さを有する正準CDR構造型が、比較のために選択され得る。例えば、型1の正準構造が、主体抗体において見出される場合、正準構造型2を有するヒトVk配列が、比較のために使用されるべきである。型5の正準構造が、マウス抗体において見出される場合、正準構造型3または4のいずれかを有するヒトVk配列が、比較のために使用されるべきである。
【0059】
別の実施形態において、再構成された成熟ヒト抗体配列が、配列比較のために考慮され得る。そのような比較は、種々の状況下で保証され得、その状況としては、成熟ヒト配列が、(1)生殖系列に非常に近い場合;(2)ヒトにおいて免疫原性でないことが公知である場合、または(3)主体抗体の正準構造型と同一の正準構造型を含むがヒト生殖系列においては見出されない場合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
好ましい実施形態において、一致する正準構造型を有する候補V遺伝子の各々について、主体配列との残基ごとの配列同一性および/または配列相同性もまた、候補ヒト配列を順位付けするために評価される。特定の実施形態において、評価される残基は、以下の通りである:
鎖 CDR 残基位置
κ 1 26〜32
κ 2 50〜52
κ 3 91〜96
重 1 31〜35
重 2 50〜60
好ましい実施形態において、残基ごとの相同性が、まず、主体配列と候補ヒト配列との間の同一のアミノ酸残基数によって、スコア付けされる。その後の変換された抗体(converted antibody)の構築のために使用されるヒト配列は、最高スコアを有する候補の25%から選択される。いくつかの候補配列が類似する同一性スコアを有する場合に適切な他の実施形態において、非同一アミノ酸残基間の類似性が、さらに考慮され得る。主体残基と客体残基との間での、脂肪族と脂肪族、芳香族と脂肪族、または極性と極性の適合が、スコアに付加される。別の実施形態において、配列相同性の定量的評価が、HenikoffおよびHenikoff(1992)のBLOSUM62マトリックスのようなアミノ酸置換マトリックスを使用して実施され得る。
【0061】
CDR3配列のC末端側にあるフレームワーク領域についての客体配列が、公知のヒト生殖系列Jセグメントの組から選択される。好ましいJペプチド配列は、上記のような候補V遺伝子の評価のために特定されたスコアリング基準を使用して、CDR3とJとが重複する配列位置について各々のJセグメントの残基ごとの相同性を評価することによって、選択される。その後の変換された抗体の構築のために使用されるJ遺伝子セグメントペプチド配列が、最高スコアを有する候補の25%から選択される。
【0062】
1つの実施形態において、キメラ可変鎖は、主体非ヒト配列由来の少なくとも2つのCDRと、候補ヒト配列由来のフレームワーク配列とを含む。他の実施形態において、キメラ軽鎖は、主体非ヒト配列由来の3つのCDRと、候補ヒト配列由来のフレームワーク配列とを含む。他の実施形態において、キメラ重鎖は、主体重鎖の少なくとも2つのCDRと、候補ヒト重鎖のフレームワーク配列とを含む。別の実施形態において、キメラ重鎖は、主体重鎖由来のCDR各々と、候補ヒト重鎖のフレームワーク配列とを含む。なお別の実施形態において、キメラ抗体重鎖は、主体非ヒト配列由来のCDR1およびCDR2と、候補ヒト重鎖由来のCDR3についての残基50〜60およびCDR4についての残基61〜65とを、候補ヒト配列のフレームワーク配列とともに含む。別の実施形態において、キメラ重鎖配列は、主体非ヒト配列由来の各CDRと、主体配列由来のフレームワーク配列27〜30と、候補配列由来のフレームワーク配列とを含む。しかし、すべての場合において、キメラ抗体分子は、候補ヒト可変領域のフレームワーク配列中のアミノ酸残基とは異なる、上記フレームワーク配列中の10アミノ酸残基以下を含む。
【0063】
ヒト化抗体の親和性増加が望ましい場合に適切な別の実施形態において、変換された抗体のCDR内の残基は、さらに、他のアミノ酸で置換され得る。代表的には、CDR中の4アミノ酸残基以下が、変化され、最も代表的には、CDR中の2残基以下が、変化される(重鎖CDR2以外)一方、10個程度の多さの残基が、変化され得る。同様に、特定の実施形態において、フレームワーク配列中のアミノ酸のうちのいくつかが、変化され得る。すべての実施形態において、10アミノ酸残基以下が、変化される。
【0064】
その後、ヒト化抗体配列が、当業者により公知の遺伝子合成方法および組換えタンパク質発現方法によって物理的に集合される。本明細書中で開示される方法により生成されるキメラ可変鎖を有するヒト化配列の最終形態は、多くの形態を採り得る。最も代表的には、キメラ抗体は、適切な細胞型において組換え発現される、キメラ可変鎖をコードする核酸配列の構築によって、生成される。そのキメラ抗体の最も代表的な形態のうちの1つは、Fab抗体フラグメントである。キメラ抗体の他の適切な形態としては、(Fab)’分子、または単鎖Fv分子が挙げられる。なお他の形態としては、完全抗体を形成するようなヒト抗体の定常ドメインへのさらなる融合物が挙げられ得る。好ましい実施形態において、可変軽鎖および可変重鎖の両方が、ヒト化される。しかし、他の実施形態において、可変軽鎖および可変重鎖が、混合され得る(すなわち、一方は、完全にマウス可変鎖(重鎖もしくは軽鎖)であり、他方は、ヒト化可変鎖である)。
【0065】
ほとんどの実施形態において、この方法は、意図される使用に適切な抗原に対するある解離定数を有する抗体を選択するために、候補キメラ抗体をスクリーニングする工程を包含する。ほとんどの実施形態において、これらの方法に従って生成されたヒト化抗体は、少なくとも10−1、少なくとも10−1、または少なくとも10−1の解離定数を有する。少なくとも約10−1の解離定数が、ほとんどの治療用途のために好ましい。
【0066】
以下の実施例は、例示目的のために、種々の型の抗原に結合するヒト化抗体についての具体的実施形態を示すことによって、本発明を例証する。当業者は、他の多くの具体的実施形態が、本明細書中に開示される方法を使用して生成され得ること、および本発明が、具体的な実施形態により限定されないことを、理解する。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
(ヒト化抗ニワトリリゾチーム)
マウス抗体D1.3は、ニワトリリゾチーム抗原に結合する。D1.3の可変ドメインのペプチド配列は、Protein Data Bank登録番号1VFAから得た。その軽鎖に、Kabatに従って番号付けした。マウスCDRに、以下の通りに正準構造型を割当てた:
Kabatに従って番号付けした軽鎖CDR1は、配列:
【0068】
【化1】

【0069】
からなる。残基27と残基31との間に挿入も欠失も存在しないので、CDR1は、正準構造型2を有する。
【0070】
Kabatに従って番号付けした軽鎖CDR2は、配列:
【0071】
【化2】

【0072】
からなる。これは、例外的な配列ではなく、その正準構造型は、型1である。
【0073】
Kabatに従って番号付けした軽鎖CDR3は、配列:
【0074】
【化3】

【0075】
からなる。長さおよび位置95におけるProに起因して、この配列は、正準構造型1と一致する。
【0076】
図2における編集およびTomlinsonら(1995)において、21個の重複しないト生殖系列Vk遺伝子が、(1)正準構造型2を有するCDR1、(2)正準構造型1を有するCDR2、および(3)CDR3にて正準構造型1を形成する能力を有する配列をコードする。これらは、図3においてD1.3Vk配列の下に列挙される。Chothia正準構造型を含む残基位置におけるそれらの配列もまた、示され、図3におけるヒトVk遺伝子を、これらの配列における残基ごとの同一性の数に従って階層化する。L23は、7つの同一性を有し、一方、このリスト上の次の3つの項目は、6つを有する。さらに、L23は、保存残基位置91および92をCDR3内に有し、これは、その次の3つの候補よりも優れる。従って、L23を、ヒト化構築物のために選択する。
【0077】
図3におけるヒトJkセグメントのうち、位置96においてD1.3中のArgに一致するものはなく、すべてが、次の3つの位置において同一である。D1.3の位置99〜101にあるGGGモチーフを重複するJk4が、Jセグメントについて最高の適合であり、これをヒト化構築のために使用する。
【0078】
D1.3の重鎖可変ドメインを、Kabatに従って番号付けし、これもまた図4に示す。CDRに、以下のように正準構造型を割当てた。
【0079】
重鎖CDR1の領域中の配列は
【0080】
【化4】

【0081】
である。この配列は、挿入された残基を欠き、従って、正準構造型1に割当てる。
【0082】
D1.3のKabat CDR2は、配列
【0083】
【化5】

【0084】
を有する。残基52と残基56との間に挿入が存在しないので、CDR2に、正準構造型1を割当てる。ヒト生殖系列V遺伝子は、CDR1にて正準構造型1を有すると推定した。CDR2における正準構造型1は、Chothiaら(1992)および図1から得た。これを、図4に列挙する。
【0085】
相同性評価のために選択したセグメントは、27〜35(Kabat CDR1+Chothia正準構造を形成するさらなる残基に対応する)、および50〜60(残基61〜65を欠くKabat CDR2に対応する)であった。これらは、めったに抗原結合に直接関与しない。最初の2つの項目は、マウス配列と比較した場合にこれらのセグメントにおいて8つの同一性を有し、次の5つは、7つの同一性を有する。従って、類似性順位付けにおける項目の上位25%は、8つの同一性を有する2つの遺伝子と、7つを有するもののうちのいずれもである。これらの7つの遺伝子のいずれもが、ヒト化構築のための適切な候補であるが、いくつかが好ましい。それは、非同一残基における保存に起因する。残基50にあるMetを置換するGluまたはArgを有する3つが、排除される。なぜなら、疎水性セグメントの中央にある荷電側鎖を埋没させることによって、変化した3次元構造が得られる可能性がある。従って、V71−4を残りの4つのために選択した。
【0086】
JH4は、明らかに、CDR3のC末端に対する最良の適合である。
【0087】
キメラヒト化抗体を、D1.3のKabat CDRとV71−4、JH4、L23およびJk4によりコードされるKabatフレームワークと合わせることによって、設計した。この抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの配列が、図5に示される。
【0088】
ヒト化VkおよびVHをコードする合成可変ドメイン遺伝子は、Yeら(1992)(参考として本明細書中に援用される)の方法によって、合成オリゴヌクレオチドから調製した。その後、これらの遺伝子を、Carterら(1992)(参考として本明細書中に援用される)により記載されるFab発現ベクターpAK19に移した。合成遺伝子のDNA配列およびpAK19のFab発現カセットのDNA配列が、図6に示される。組換えFabを、E.coliにおいて発現させ、浸透圧ショックによってペリプラズムから放出させ、そしてリゾチーム−Sepharoseにおけるクロマトグラフィーによって精製した。
【0089】
リゾチームに対するSHuD1.3の親和性を、FooteおよびWinter(1992)により記載される蛍光クエンチ方法によって決定した。この方法は、複合体形成の際の、抗体および抗原の固有のトリプトファン蛍光の変化に依存する。図7の実験において、200nMのヒト化D1.3 Fabを、少量の濃縮リゾチーム溶液を用いて滴定した。蛍光データを、最小二乗法によって滴定式にフィットさせて、解離定数についての値および標準誤差23±5nMを得た。比較によって、D1.3 IgGのKdは、Kd 4nMを有することが公知である(FooteおよびWinter、1992)。従って、実施例1におけるヒト化抗体は、主体マウス抗体と同一の抗原特異性を有し、主体抗体と比較して6分の1未満に減少した親和性で抗原に結合する。
【0090】
(実施例2)
(ヒト化抗ヒトCD28)
9.3と名付けられたマウス抗ヒトCD28抗体を、非ヒト主体抗体として使用した。マウス9.3ハイブリドーマ株を、単離した。これは、Hansenら(1980)により記載される。
【0091】
9.3の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応によってクローニングした。グアニジニウムイソチオシアネート手順(ChomczynskiおよびSacchi、1987)およびその後のオリゴ−dTカラムでのクロマトグラフィーによって単離した、メッセンジャーRNAを用いて開始した。増幅は、定常領域と相補的なオリゴヌクレオチドと、シグナルペプチド領域またはN末端フレームワーク配列の領域に対応するオリゴヌクレオチドとを使用して、プライムした。
【0092】
軽鎖に、Kabatに従って番号付けし、CDRに、図8を参照して、以下のような正準構造型を割当てた。
【0093】
Kabatにより番号付けた軽鎖CDR1は、配列
【0094】
【化6】

【0095】
からなる。27と31との間の挿入残基に起因して、CDR1は、正準構造型5を有する。
【0096】
Kabatにより番号付けた軽鎖CDR2は、配列
【0097】
【化7】

【0098】
からなる。これは、例外的配列ではない。その正準構造型は、1である。
【0099】
Kabatにより番号付けた軽鎖CDR3は、配列
【0100】
【化8】

【0101】
からなる。その長さおよび位置95におけるProに起因して、この配列は、正準構造型1に一致する。
【0102】
CDR1において正準構造型5を有するVk配列は、ヒト生殖系列において示されないが、構造3および構造4は、正準構造型5と類似する。これらをさらに考慮した。
【0103】
図2における編集物において、8つの非重複ヒト生殖系列Vk遺伝子が、正準構造型3もしくは4を有するCDR1、(2)正準構造型1を有するCDR2、および(3)CDR3において正準構造型1を形成する能力を有する配列をコードする。これらは、図8において9.3Vk配列の下に列挙される。Kabat CDRにおけるそれらの配列もまた、示される。図3におけるヒトVk遺伝子を、Chothia正準構造を形成する残基位置における残基ごとの同一性の数に従って、順位付ける。B3遺伝子は、これらの位置において7つの同一性を有し、一方、このリスト上の次の3つは、5つを有する。従って、B3を、ヒト化構築のために選択した。このスコア付けは、Chothiaではなく、Kabat CDR位置に基づいたので、B3は、なお、第一候補である。ヒトJk2の5’にコードされるTyr残基は、9.3の対応する位置に正確に適合した。従って、この生殖系列フラグメントを使用した。
【0104】
9.3の重鎖可変ドメインに、Kabatにより番号付けした。これもまた、図9に示す。CDRに、以下のように正準構造型を割当てた。
【0105】
重鎖CDR1の領域中の配列は、
【0106】
【化9】

【0107】
である。この配列は、いかなる挿入残基も欠く。従って、正準構造型1を割り当てる。
【0108】
9.3のKabat CDR2は、配列
【0109】
【化10】

【0110】
を有する。残基52と56との間に挿入はないので、CDR2に、正準構造型1を割当てる。
【0111】
ヒト生殖系列VH遺伝子は、CDR1において正準構造型1を有すると推定した。CDR2における正準構造型1は、Chothiaら(1992)および図1から得た。これを図9に列挙する。
【0112】
相同性評価のために選択したセグメントは、27〜35(Kabat CDR1+Chothia正準構造を形成するさらなる残基に対応する)、および50〜60(残基61〜65を欠くKabat CDR2に対応する)であった。これらは、めったに抗原結合に直接関与しない。配列を、9.3と比較した場合に同一の残基の数についてスコア付けし、図9におけるスコアによって順位付けする。遺伝子DP−45は、最高数の同一性10を、9.3との残基ごとの比較において有し、次の6つの項目は、すべて9つを有する。DP−45を、ヒト化構築のために選択した。
【0113】
ヒトJHセグメントのうち、JH4は、9.3中のCDRのC末端に対して最も密接な相同性を有したので、これをこの構築において使用した。
【0114】
キメラヒト化抗体可変ドメインを、以下のように配列を合わせることによって、設計した。軽鎖可変ドメインは、9.3軽鎖のKabat CDR配列(抗原認識にとって重要でないと考えられた残基34を除く。従って、その位置においてB3中の残基と同一のAlaになった)と、残基88までB3と同一および位置98〜108でJk2と同一のフレームワーク配列(残基70および72を除く。これらは、残基71と組み合わせてこれらの残基が形成するグリコシル化モチーフを保存するように、9.3と同一のままにした)とからなった。重鎖可変ドメインは、9.3重鎖のKabat CDR配列(残基60〜65を除く。これらは、抗原認識にとって重要でないと考えられたので、それらの位置ではDP−45の配列と同一にした)と、残基94までDP−45と同一であり残基103〜113にてJH4と同一であるKabatフレームワーク配列とからなった。
【0115】
この抗体の重鎖可変ドメインの配列および軽鎖可変ドメインの配列が、図10に示される。これらの配列の可変ドメインを含む組換えFabフラグメントを、実施例1に記載される通りに調製したが、但し、精製のためにプロテイン−G Sepharoseにおけるアフィニティクロマトグラフィーを使用した。コントロールとして、マウス可変ドメインとヒト定常ドメインとから構成されるFabフラグメントを、同様の方法によって調製した。同様に、ヒト定常ドメインと、マウス9.3重鎖可変ドメインと、ヒト化軽鎖可変ドメインとから構成されるハイブリッドFabフラグメントも、調製した。
【0116】
これらの3つのFabがCD28に結合する能力を、ELISAによって試験した。CD28Igコートプレートを、1pM〜10mMの範囲の濃度のFab溶液とともにインキュベートした。その後、結合を、抗ヒトκ免疫結合体を用いてアッセイした。作成した結合等温線を処理して、Jinら(1992)(本明細書中で参考として援用される)に記載されるように、CD28Igに対するその抗体の最大結合半値(EC50)について、等価な濃度を決定した。図11に示されるこの分析は、マウスFabが、20nMのEC50を有し、Hu9.3のEC50が630nMであること、およびハイブリッドFabのEC50が30nMであることを、示した。このハイブリッドFabおよびマウスFabのアビディティの類似性は、ヒト化9.3による結合の減少は、弱くなった重鎖を含む相互作用に帰せられ得、従って、軽鎖のみのヒト化は、最小限のアビディティ損失を引き起こした。
【0117】
(実施例3)
(ヒト化抗サソリ毒素)
BCF2と名付けられたマウス抗サソリ毒素抗体を、ヒト化抗サソリ毒素の非ヒト主体抗体として使用した。マウスBCF2ハイブリドーマ株は記載されており、マウスモデルにおけるBCF2の効力は、Liceaら(1996)により示された。BCF2の可変ドメインの配列は、Seliskoら(1999)により開示された。これを、図12に示す。
【0118】
その軽鎖の正準構造型は、以前に記載されたように決定した。それらは、CDR1について型5であり、CDR2について型1であり、CDR3について型1であった。重鎖CDRの正準構造型は、CDR1について型1であり、CDR2について型2である。BCF2のヒト化形態を、ヒト生殖系列V遺伝子配列およびJ遺伝子配列の選択について上記で考察された考慮事項を使用して、設計した。
【0119】
軽鎖可変ドメインは、BCF2軽鎖のKabat CDR配列と、残基88までヒト遺伝子A2/DPK12と同一であり位置98〜108にてJk4と同一であるフレームワーク配列とからなった。重鎖可変ドメインは、BCF2重鎖のKabat CDR配列(残基62〜65を除く。これらは、抗原認識にとって重要でないと考えられた。従って、それらの位置で1−f/DP3の配列と同一にした)と、残基94まで1−f/DP3と同一であり残基103〜113にてJH6と同一であるKabatフレームワーク残基とからなった。
【0120】
ヒト化BCF2抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの配列が、図12に示される。これらの配列を有する可変ドメインを含む組換えFabフラグメントを、実施例2に記載された通りに調製した。コントロールとして、(Fab)’フラグメントを、ハイブリドーマ細胞から得たマウスBCF2 IgGのペプシン消化で調製した。
【0121】
この2つのFabがCD28に結合する能力を、BIAcoreバイオセンサー機器を使用し、センサーチップ表面上に固定した毒素および上清中の抗体を用いて、試験した。この方法は、Joenssonら(1991)(本明細書中に参考として援用される)により記載されている。その後、少なくとも10倍の範囲にわたって変化する濃度のFab溶液を、このチップに通して、解離相を観察した。そのセンサーグラムを、液相中で緩衝液単独を用いて継続して、解離を観察した。解離平衡定数Kdとしての親和性を、速度論的速度定数kon/koffの比率から決定した。個別の親和性は、マウス(Fab)’について10nMであり、ヒト化形態について140nMであった。
【0122】
(実施例4)
(ヒト化抗ヒトGAD65)
ヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ65kDaアイソフォームに対する抗体であるNGAD65。
【0123】
マウスNGAD65ハイブリドーマ株およびその抗体可変領域の配列は、Hampeら(2001)により記載された。それらの配列が、図13に示される。その軽鎖の最初の2つの残基は、除去する。なぜなら、それらの残基は、クローニングのために使用したオリゴヌクレオチドに由来したからである。
【0124】
軽鎖CDRの正準構造型は、CDR1について型4、CDR2について型1、CDR3について型1であることを決定した。重鎖CDRの正準構造型は、CDR1について型1であり、CDR2について型2であることを決定した。
【0125】
NGAD65のヒト化形態を、ヒト生殖系列V遺伝子配列およびJ遺伝子配列の選択について上記で考察された考慮事項を使用して設計した。軽鎖可変ドメインは、NGAD65軽鎖のKabat CDR配列と、残基88までヒトVk遺伝子A17/DPK18と同一であり位置98〜108にてJk3と同一であるフレームワーク配列とからなった。重鎖可変ドメインは、BCF2重鎖のKabat CDR配列(残基61〜65を除く。これは、抗原認識にとって重要ではないと考えられたので、それらの位置において1−vの配列と同一にした)と、残基94まで1−f/DP3と同一であり残基103〜113においてJH4と同一であるKabatフレームワーク配列とからなった。
【0126】
ヒト化NGAD65抗体の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの配列が、図13に示される。これらの配列を含む組換えFabフラグメントを、実施例2に記載される通りに調製した。コントロールとして、マウスNGAD65の可変ドメインと定常ドメインとから構成されるFabフラグメントを、同様の方法によって調製した。
【0127】
これらの2つのFabが抗原に結合する能力を、免疫沈降アッセイによって試験した。放射性ヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼを、35S−メチオニンを用いるインビトロ翻訳によって調製した。この標識抗原を、種々の濃度のこれらの2つのFabフラグメントのうちのいずれかとともに一晩インキュベートした。その後、プロテインG−Sepharoseビーズを、Fabおよびあらゆる結合抗原を封鎖するために添加した。放射能を、シンチレーション計数によって決定し、EC50を、Fabフラグメントの濃度に対する結合放射能のプロットの中点から視覚的に決定した。EC50の値(マウスFabについて0.36pMおよびヒト化Fabについて9pM)を得た。マウス抗体に対するヒト化抗体の親和性の25分の1への損失を考慮してさえ、このヒト化抗体は、なお、治療においてヒトにおいてしようされるに十分に抗原に結合し、親和性の25分の1への損失について補償するためにこの配列をさらに変異する必要はない。
【0128】
本明細書中に提供される方法は、第1のChothia正準CDRの供給源としてマウス成熟抗体遺伝子を使用し、そして第2のChothia正準CDRについての供給源としてヒト抗体遺伝子を使用することによって、例証された。これらの実施例は、特に、ヒト治療適用における使用のためのヒト化抗体の構築に適切である。そのようなヒト化抗体は、強力な抗原結合に必要な3次元構造を保持するために十分なマウスアミノ酸配列を含むのみならず、ヒトにおける望ましくない免疫原性を防止するために十分なヒト抗体配列も含む。しかし、本明細書中に開示される方法が、任意の2つの異なる脊椎動物種由来のキメラ超可変領域を含む変換された抗体を調製するために等しく適用可能であることを、当業者は認識する。
【0129】
より一般的な意味において、第1抗体配列(これは、もともと、抗原に対するその結合によって選択される)は、「主体(subject)」抗体配列と呼ばれ得る。代表的には、この主体抗体配列は、マウス起源またはラット起源である。第2抗体配列(これは、標的動物の抗体配列から選択される)は、「客体(object)」抗体配列と呼ばれる。この目的抗体配列は、代表的には、治療処置の対象であるヒトまたは家畜に由来する。本発明の方法に従うキメラ超可変領域を含む抗体組成物は、「変換された」抗体配列と一般的に命名され得る第3抗体配列を生じる。この変換された抗体配列は、上記主体抗体配列および客体抗体配列の各々からの特定の規定された構造的特徴において異なり、上記主体抗体配列および客体抗体配列の各々からの他の特定の規定された構造的特徴において同一である。
【0130】
(参考文献)
【0131】
【表3−1】

【0132】
【表3−2】

【0133】
【表3−3】

【0134】
【表3−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト化抗体を生成する方法であって、
非ヒト成熟抗体遺伝子によりコードされる主体可変領域のペプチド配列を得る工程;
該非ヒト抗体可変領域内の少なくとも2つのCDRについて第1組の正準CDR構造型を同定する工程;
ヒト生殖系列遺伝子によりコードされるヒト抗体セグメントおよび成熟抗体からなる群より選択されるヒト抗体についてヒト抗体可変領域のペプチド配列ライブラリーを得る工程;
該ヒト可変領域配列のライブラリー中の各ペプチド配列について少なくとも2つのCDRについて第2組の正準CDR構造型を同定する工程;
該第1組の正準CDR構造型を該第2組の正準CDR構造型と比較すること、および該第2組の正準CDR構造がそれぞれ該非ヒト可変領域内および該ヒト可変領域内の対応する位置にあるCDR配列について該第1組の正準CDR構造型と同じであるヒトペプチド配列を選択することによって、該ライブラリーからメンバーペプチド配列の部分集合を選択する工程;ならびに
非ヒト可変領域由来のCDR配列のうちの少なくとも2つと、該選択されたヒト可変領域ペプチド配列の部分集合の少なくとも1つのメンバー由来のフレームワーク領域とを含むキメラ分子を構築する工程であって、その結果、該キメラ抗体は、該可変領域における対応する位置において該ヒトCDR配列のうちの少なくとも2つの代わりに該非ヒトCDR配列の各々を含み、該キメラ抗体のフレームワーク配列は、該選択されたメンバーペプチド配列のヒトフレームワーク配列とは10アミノ酸残基以下だけ異なる、工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記キメラ抗体のフレームワーク配列は、前記選択されたメンバーペプチド配列のヒトフレームワーク配列と5アミノ酸残基以下だけ異なる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記キメラ抗体のフレームワーク配列は、前記選択されたメンバーペプチド配列のヒトフレームワーク配列と2アミノ酸残基以下だけ異なる、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記非ヒトCDR配列のアミノ酸残基の、対応するヒトCDR配列に対する位置ごとの類似性を、順位付け基準に従って比較することによって、前記選択された部分集合のメンバーを順位付けする工程をさらに包含する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記選択された部分集合は、前記順位付けされたメンバーのうちの上位25%だけを含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記順位付け基準は、少なくとも1つのCDRの対応する残基位置における、前記非ヒトCDR配列とヒトCDR配列との間のアミノ酸同一性のスコアを含む、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記順位付け基準は、少なくとも2つのCDRの対応する残基位置における、前記非ヒトCDR配列とヒトCDR配列との間のアミノ酸同一性のスコアを含む、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、前記順位付け基準は、各CDRの対応する残基位置における、前記非ヒトCDR配列とヒトCDR配列との間のアミノ酸同一性のスコアを含む、方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、前記順位付け基準は、少なくとも1つのCDRの対応する残基位置における、前記非ヒトCDRとヒトCDRとの間のアミノ酸相同性のスコアをさらに含む、方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法であって、前記順位付け基準は、少なくとも2つのCDRの対応する残基位置における、前記非ヒトCDRとヒトCDRとの間のアミノ酸相同性のスコアをさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、前記順位付け基準は、各CDRの対応する残基位置における、前記非ヒトCDRとヒトCDRとの間のアミノ酸相同性のスコアをさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、前記キメラ抗体配列を構築する工程は、該キメラ抗体配列をコードする核酸配列を構築する工程を包含する、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、前記CDRは、Kabatにより規定されたCDRである、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記CDRは、Chothiaにより規定されたCDRループである、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記キメラ抗体配列を構築する動作は、前記非ヒトCDR配列の少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸で置換することをさらに包含し、但し、4残基以下が、非ヒト軽鎖CDR1、非ヒト軽鎖CDR2、非ヒト軽鎖CDR3、非ヒト重鎖CDR1、または非ヒト重鎖CDR3のいずれかにおいて置換され、10アミノ酸以下が、非ヒト重鎖CDR2において置換される、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記キメラ抗体配列を構築する動作は、前記ヒトフレームワーク配列のうちの少なくとも1アミノ酸残基であるが10アミノ酸残基以下を、異なるアミノ酸残基で置換する工程をさらに包含する、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、3つの非ヒトCDRの各々が、軽鎖CDRであり、そして3つの非ヒトCDR配列のうちの1つが、ヒト可変領域配列のライブラリーに存在しない正準構造型である場合には、前記選択する動作は、前記対応する位置にある該存在しない非ヒトCDR型とは異なる正準構造型のCDRを有するヒト可変領域配列を選択する工程をさらに包含し、但し、該異なるヒト正準構造型は、該存在しない非ヒト正準構造型より2アミノ酸残基以下だけ小さいかまたは大きい長さを有する、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記存在しないCDR配列が、正準型1である場合、前記動作は、前記対応する位置にて正準型2のCDRを有するヒト配列を選択する工程を包含するか、または前記非ヒトCDR配列が正準型5である場合、前記動作は、前記対応する位置にて正準型4もしくは正準型3のCDRを有するヒト配列を選択する工程を包含する、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、前記非ヒト可変領域は、マウス可変領域である、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、前記ヒト可変領域配列のライブラリーは、V配列、Vλ配列、V配列、J配列、J配列およびJλ配列のライブラリーからなる群より選択される、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記キメラ抗体を構築する動作は、可変軽鎖および可変重鎖の各々についてキメラ抗体配列を構築する工程を包含する、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記キメラ抗体配列は、ヒトV配列由来のフレームワークおよびヒトV配列由来のフレームワークを含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記キメラ可変軽鎖およびキメラ重鎖は、Fabフラグメント、(Fab)’分子、および単鎖Fv分子からなる群より選択される分子を形成するように集合される、方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、前記キメラ可変軽鎖およびキメラ重鎖は、完全抗体を形成するようにヒト抗体定常領域ドメインとさらに集合される、方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、前記ヒト可変領域配列は、生殖系列可変領域フラグメントの配列である、方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法であって、前記ヒト可変領域配列は、成熟ヒト抗体由来の配列である、方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法であって、前記ヒト化抗体のその抗原に対する解離定数を決定し、そして少なくとも10−1、少なくとも10−1、または少なくとも10−1の解離定数を有する抗体を選択する動作をさらに包含する、方法。
【請求項28】
変換された抗体を生成する方法であって、
主体種成熟抗体遺伝子によりコードされる主体可変領域のペプチド配列を得る工程;
該主体可変領域内の少なくとも2つのCDRについて第1組の正準CDR構造型を同定する工程;
生殖系列抗体遺伝子および成熟抗体遺伝子によりコードされる抗体からなる群より選択される客体種抗体についての客体抗体可変領域のペプチド配列ライブラリーを得る工程;
該客体可変領域配列ライブラリー内の各ペプチド配列について少なくとも2つのCDRについて第2組の正準CDR構造型を同定する工程;
該第1組の正準CDR構造型を該第2組の正準CDR構造型と比較すること、および該第2組のCDR構造がそれぞれ該主体可変領域および該客体可変領域内の対応する位置にあるCDR配列について該第1組の正準CDR構造型と同じである客体ペプチド配列を選択することによって、該ライブラリーからメンバーペプチド配列の部分集合を選択する工程;
該主体可変領域由来のCDR配列のうちの少なくとも2つと、該選択された客体可変領域ペプチド配列の部分集合の少なくとも1つのメンバー由来のフレームワーク領域とを含むキメラ分子を構築する工程であって、その結果、該キメラ抗体は、該可変領域中の対応する位置で該客体CDR配列の各々の代わりに該主体CDR配列の各々を含み、該キメラ抗体のフレームワーク配列は、該選択されたメンバーペプチド配列の客体フレームワーク配列とは10アミノ酸残基以下だけ異なる、工程;
を包含する、方法。
【請求項29】
ヒト化抗体であって、
ヒト可変フレームワーク配列と隣接して融合した少なくとも2つの非ヒトCDR配列を含むキメラ抗体可変領域を含み、該ヒトフレームワーク配列は、該キメラ抗体可変領域 の可変領域と該ヒト抗体の可変領域との間の少なくとも2つの対応するCDR位置の非ヒトCDR配列と同じ正準構造型を有する少なくとも2つのヒトCDR配列を有するヒト抗体可変領域中のフレームワーク配列とは異なる10アミノ酸残基以下を有することによって特徴付けられる、フレームワーク配列の部分集合から選択される、ヒト化抗体。
【請求項30】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、前記非ヒト可変領域が、マウス可変領域である、ヒト化抗体。
【請求項31】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、前記ヒト可変領域配列は、V配列、Vλ配列、V配列、J配列、J配列およびJλ配列からなる群より選択される、ヒト化抗体。
【請求項32】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、前記キメラ抗体は、可変軽鎖および可変重鎖の各々についてのキメラ抗体配列を含む、ヒト化抗体。
【請求項33】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、前記キメラ可変軽鎖およびキメラ重鎖は、Fabフラグメント、(Fab)’分子、および単鎖Fv分子からなる群より選択される分子を形成するように集合される、ヒト化抗体。
【請求項34】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、前記キメラ分子は、完全抗体を形成するようにヒト抗体定常領域ドメインをさらに含む、ヒト化抗体。
【請求項35】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、前記ヒト可変領域配列は、ヒト生殖系列可変領域フラグメント由来の配列である、ヒト化抗体。
【請求項36】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、前記ヒト可変領域配列は、ヒト成熟抗体由来の配列である、ヒト化抗体。
【請求項37】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、該ヒト化抗体の抗原に対して、少なくとも10−1、少なくとも10−1、または少なくとも10−1の解離定数を有する、ヒト化抗体。
【請求項38】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、ヒトに投与された場合に免疫応答を惹起しない、ヒト化抗体。
【請求項39】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、サソリ毒抗原に結合する、ヒト化抗体。
【請求項40】
請求項39に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、配列番号_から構成される、ヒト化抗体。
【請求項41】
請求項40に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、リゾチーム抗原に結合する、ヒト化抗体。
【請求項42】
請求項41に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、配列番号_から構成される、ヒト化抗体。
【請求項43】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、ヒトCD28抗原に結合する、ヒト化抗体。
【請求項44】
請求項43に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、配列番号_から構成される、ヒト化抗体。
【請求項45】
請求項29に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、ヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ抗原に結合する、ヒト化抗体。
【請求項46】
請求項45に記載のヒト化抗体であって、該ヒト化抗体は、配列番号_から構成される、ヒト化抗体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−115175(P2011−115175A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−33486(P2011−33486)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2004−521391(P2004−521391)の分割
【原出願日】平成14年7月12日(2002.7.12)
【出願人】(505015370)
【Fターム(参考)】