説明

スープ抽出用圧力鍋、およびそれを用いた圧力鍋装置、ならびにそれら利用のスープ抽出方法

【課題】 業務用として一般的に使用されている食材に、特殊な加工や添加物などを一切施さず、そのまま利用して、非乳化スープ液や乳化スープ液を各段に効率的に製造可能とする新たなスープ抽出技術を提供する。
【解決手段】 抽出鍋11上端開口13に耐圧蓋15を開閉自在に装着して圧力鍋となし、該抽出鍋11の上端開口13寄りとなる外周壁14に送液バルブ40を設け、同送液バルブ40には、同抽出鍋11内底壁12直上付近から上向き延伸した上昇管5の上端を接続し、該送液バルブ40の外端がわに、送液管6の供給端がわが接続された送液機構4を組み込んだスープ抽出用圧力鍋10に、スープ鍋16を隣接配置状に組み合わせてなる圧力鍋装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力鍋に関するものであり、特に営業用ラーメンの希釈スープなどを効率的に抽出可能とする圧力鍋装置を製造する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
一般的な業務用ラーメンの希釈スープの製造は、例えば、図22の非乳化スープ抽出作業のフローチャートに示すように、豚骨や鶏ガラなどを茹でて、アクや血液などを除去、洗浄してから豚骨を割ったり、煮干しの内臓部分を除去したり、野菜を洗って刻んだりして1ないし2時間を掛けて食材の下処理Aを行い、それら下拵えした各食材と適量の水とを寸胴型の抽出鍋に投入して仕込みBを行った上、そのまま2ないし12時間に渡って加熱し、旨み成分の抽出Cを行った後、約1時間ほど掛け、該抽出鍋から別のスープ鍋にスープ液のみを小さな柄杓などを用い、手作業で静かに移し換えDをしてようやく完成となるものであり、また、豚骨ラーメンなどのように、乳化したスープを製造する場合には、例えば、図23の乳化スープの抽出作業のフローチャートに示すように、基本的に前記非乳化スープの製造と同様に食材の下処理Aおよび抽出鍋への仕込みBを行った後、旨み成分の抽出Cの工程で8ないし12時間に渡って最大火力で煮出した上、別のスープ鍋にスープ液のみを移し替えDして、さらに、最大火力で3ないし8時間を掛けて煮沸、対流させてスープの乳化Eを促進させて完成となるが、何れの場合にも、バナーに点火して旨み成分の抽出Cを開始してから完成するまで、12ないし24時間の長時間に亘って加熱調理を行わなければならず、それだけ燃料消費量も多くを必要とし、しかも厨房の室内環境が高温、多湿状態となって劣悪を極め、過酷な労働環境となっていた。
【0003】
(従来の技術)
こうした状況を憂慮し、例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、乳化させたスープ液に天然由来のゼラチンからなる乳化剤を添加して油分を拡散すると共に、スープ液中に混在する油成分の分離を阻止して乳化状態を安定化させる技術や、同特許文献1(2)および特許文献1(3)などに見られるような、洗浄後に解砕または圧縮加工した豚骨や鶏ガラなどを透液性パックに収納、冷凍しておき、使用のときに冷凍のままか、または、必要に応じて肉汁がパックから出ない程度に解凍してから湯中に浸すだけで骨髄を短時間で抽出することができるようにする食材解砕用の装置や、それを用いた調理技術などが散見される。
【0004】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような、乳化安定剤などは、従来と同様に製造した豚骨ラーメン用の希釈用スープ液などに添加して用いるものであり、スープ液の製造工数自体を短縮することができないものであり、また、後者の特許文献1(2)および(3)に代表されるような解砕または圧縮加工した豚骨や鶏ガラなどの透液性パックは、専用の解砕装置や圧縮加工装置、および、パック装置などの設備を必要とすることになり、また、こうしたパック製品を購入してスープ液の製造に使用する場合には、豚骨や鶏ガラなどの食材の選択が、解砕パックの製造業者に委ねられるものとなってしまうことから、例えば、パック製造業者に食材の選択基準を指定して特別仕様で生産してもらうとなると、価格の高騰を招いてしまうというような欠点を生じていた。
【特許文献1】(1)特開平5−3772号公報 (2)特開2003−135032号公報 (3)特開2004−121100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種乳化安定剤などは、何れも製造された乳化スープ液の安定化を図るものであって、非乳化スープ液および乳化スープ液の製造工程を簡素化したり、製造工数を短縮したりすることは不可能であって、しかも乳化安定剤の添加によってスープ液の味や風味に変化を及ぼしてしまう虞があるという欠点があり、また、解砕または圧縮加工した豚骨や鶏ガラなどの透液性パックによるものでは、スープ液の製造工数を短縮できるという利点は得られるものの、それら食材パックを製造する工数や経費の点に問題があり、特にスープ液を生産する度毎に経費が発生してしまうという欠点なども抱えており、これまでのところでは、従来と同様の食材を利用し、味や風味に影響を与えずに効率の良いスープ液の製造を可能とする技術については、未だ存在していないという状況にある。
【0006】
(発明の目的)
そこで、この発明は、業務用として一般的に使用されている食材に特殊な加工や添加物などを一切施さず、そのまま利用して非乳化スープ液や乳化スープ液を各段に効率良く製造可能とする新たなスープ抽出技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造のスープ抽出用圧力鍋、およびそれを用いた新規な構造の圧力鍋装置、ならびにそれら利用の新規なスープ抽出方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明のスープ抽出用圧力鍋は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、有底容器型の抽出鍋上端開口に対し、適所に調圧弁が設けられた耐圧蓋を、密閉機構を介して開閉自在に装着し、該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に送液バルブの一端がわを貫通状に設けると共に、同抽出鍋周壁に貫通した送液バルブ一端がわには、同抽出鍋内底壁直上付近に配したフィルターから上向き延伸した上昇管の上端を接続した上、該送液バルブの外端がわに、当該抽出鍋とは別のスープ鍋などの移送先へ送液可能な長さ寸法に設定した配管であって、その送出端に給液ノズルを装備した送液管の供給端がわが接続された送液機構を組み込んでなるものとした構成を要旨とするスープ抽出用圧力鍋である。
【0008】
この基本的な構成からなるスープ抽出用圧力鍋を、より具体的なものとして示すと、有底容器型の抽出鍋上端開口に対し、適所に調圧弁が設けられた耐圧蓋を、密閉機構を介して開閉自在に装着し、該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に送液バルブの一端がわを貫通状に設け、同抽出鍋周壁に貫通した送液バルブ一端がわには、同抽出鍋内底壁直上付近に配したフィルターから上向き延伸した上昇管の上端を接続すると共に、該送液バルブの外端がわに、当該抽出鍋とは別のスープ鍋などの移送先へ送液可能な長さ寸法に設定した配管であって、その送出端に給液ノズルを装備した送液管の供給端がわが接続された送液機構を組み込んだ上、該抽出鍋内がわ適所に熱交換回路を収容し、同熱交換回路の冷媒流入管および冷媒流出管を、該抽出鍋周壁の適宜間隔を隔てた適所夫々に貫通して抽出鍋外がわに導出し、同冷媒流入管外端には、他端がわから冷媒を供給可能とした冷却バルブの一端が接続された冷却機構を配設してなるものとした構成からなるスープ抽出用圧力鍋となる。
【0009】
当該基本的な構成からなるスープ抽出用圧力鍋を換言すれば、有底容器型の抽出鍋上端開口に対し、適所に調圧弁が設けられた耐圧蓋を、密閉機構を介して開閉自在に装着し、該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に送液バルブの一端がわを貫通状に設け、同抽出鍋周壁に貫通した送液バルブ一端がわには、同抽出鍋内底壁直上付近に配したフィルターから上向き延伸した上昇管の上端を接続すると共に、該送液バルブの外端がわに、当該抽出鍋とは別のスープ鍋などの移送先へ送液可能な長さ寸法に設定した配管であって、その送出端に給液ノズルを装備した送液管の供給端がわが接続された上、当該上昇管および/または送液管の適所に液密型の乳化容器を接続し、該乳化容器の流入口に、同乳化容器内に乱流を発生して流入スープ液の混合促進用とする乳化ノズルが装着された送液機構を組み込んでなるものとした構成からなるスープ抽出用圧力鍋となる。
【0010】
より具体的には、有底容器型の抽出鍋上端開口に対し、適所に調圧弁が設けられた耐圧蓋を、密閉機構を介して開閉自在に装着し、該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に送液バルブの一端がわを貫通状に設け、同抽出鍋周壁に貫通した送液バルブ一端がわには、同抽出鍋内底壁直上付近に配したフィルターから上向き延伸した上昇管の上端を接続すると共に、該送液バルブの外端がわに、当該抽出鍋とは別のスープ鍋などの移送先へ送液可能な長さ寸法に設定した配管であって、その送出端に給液ノズルを装備した送液管の供給端がわが接続された上、当該上昇管の該抽出鍋内となる適所に、液密型の乳化容器を接続し、該乳化容器の流入口に、同乳化容器内に乱流を発生して流入スープ液の混合促進用とする乳化ノズルが装着された送液機構を組み込んでなるものとした構成からなるスープ抽出用圧力鍋となる。
【0011】
(関連する発明1)
上記したスープ抽出用圧力鍋に関連し、この発明には、それを用いた圧力鍋装置も包含している。
即ち、この発明の基本をなす前記何れか記載のスープ抽出用圧力鍋に、当該抽出鍋と同等の容量に設定した有底容器型のスープ鍋を隣接配置状に組み合わせたものにすると共に、当該送液機構の送液管を硬質パイプ製のものとし、同送出端がわを、該スープ鍋上端開口縁を乗り越えるよう逆U字型に折曲、延伸し、同スープ鍋内底壁直上付近に配した該送出端給液ノズルの噴射孔を下向き開口状に姿勢維持してなるものとした構成からなる圧力鍋装置である。
【0012】
上記圧力鍋装置の構成は、その表現を変えて示すと、この発明の基本をなす前記何れか記載のスープ抽出用圧力鍋に、当該抽出鍋と同等の容量に設定した有底容器型のスープ鍋を隣接配置状に組み合わせたものとすると共に、当該送液機構の送液管を湾曲自在且つ配管姿勢維持可能なフレキシブルパイプ製のものとし、同送出端がわを、該スープ鍋上端開口縁を乗り越えるよう逆U字型に折曲、延伸し、同スープ鍋内底壁直上付近に配した該送出端給液ノズルの噴射孔を下向き開口状に姿勢維持可能なものとした構成からなる圧力鍋装置となる。
【0013】
(関連する発明2)
上記したスープ抽出用圧力鍋、およびそれを利用した圧力鍋装置に関連し、この発明には、それらを利用したスープ抽出方法も包含している。
即ち、この発明の基本をなす前記何れか記載のスープ抽出用圧力鍋、および、それを利用した圧力鍋装置を利用するもので、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行い、耐圧蓋で密閉して水が蒸気を発生して抽出鍋内圧が所定圧力に達するまで1時間以内の加熱を行った上、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱した後、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用して送液機構を通じ、スープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対して30分未満の間に静かに移送し、乳化が無いか、殆ど進まないスープ液を製造するようにした構成からなるスープ抽出方法である。
【0014】
この基本的な構成に依るスープ抽出方法を、より具体的に示すと、この発明の基本を成すスープ抽出用圧力鍋、または、それらスープ抽出用圧力鍋を採用してなる圧力鍋装置を利用し、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行い、耐圧蓋で密閉して水が蒸気を発生して抽出鍋内圧が所定圧力に達するまで1時間以内の加熱を行った上、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱した後、冷却機構の冷却バルブを開放して熱交換回路に冷媒を供給し、スープ液を乳化し難い温度以下で、しかも送液機構を通じて自動的に排出可能な抽出鍋内圧を確保可能な温度以上の条件を満たす温度範囲まで冷却してから、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用して送液機構を通じ、スープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対して30分未満の間に静かに移送し、乳化が無いか、殆ど進まないスープ液を製造するようにしたスープ抽出方法となる。
【0015】
これを換言すると、この発明の基本をなす前記何れか記載のスープ抽出用圧力鍋、および、それを利用した圧力鍋装置を利用し、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行い、耐圧蓋で密閉して水が蒸気を発生して抽出鍋内圧が所定圧力に達するまで1時間以内の加熱を行った上、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱した後、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用し、送液機構を通じてスープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対し、30分未満の間に移送すると同時に、乳化容器および乳化ノズル通過に伴う乳化促進操作を自動的に行うようにし、移送スープ液中の油分を微細化、攪拌して所望のスープ液を製造するようにした構成のスープ抽出方法である。
【0016】
更に、このスープ抽出方法の構成を、他の表現に依って示すと、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行い、耐圧蓋で密閉して水が蒸気を発生して抽出鍋内圧が所定圧力に達するまで1時間以内の加熱を行った上、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱した後、一時的に減圧バルブを開放して当該抽出鍋の内圧を減圧機構によって減圧し、抽出鍋内スープ液の沸騰と対流とを促進してスープ液を攪拌、乳化した上、減圧バルブを閉鎖し、再加熱して抽出鍋内圧力を高めてから、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用し、送液機構を通じてスープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対し、30分未満の間に移送すると同時に、乳化容器および乳化ノズル通過に伴う乳化促進操作を自動的に行い、移送スープ液中の油分を微細化、攪拌して乳化処理を行い、所望のスープ液を製造するようにしたスープ抽出方法ということができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり、この発明のスープ抽出用圧力鍋によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、営業用ラーメンの希釈用スープ液などは、本来12ないし24時間という長時間に亘って大気圧の下で十分な燃料を費やして加熱調理し、且つ、品質を維持するため、完成したスープ液を手作業によって別のスープ鍋などに移し替えなければならなかったが、当該耐圧蓋を装着可能として圧力鍋の機能を付与した抽出鍋の適所に、送液バルブおよび送液管からなる送液機構を組み込んでなるものとしてあるから、その圧力鍋機能を利用した高温、高圧によって通常の1/4以下の加熱時間で済み、しかも高品質のスープ液を効率的に抽出することができると共に、完成したスープ液は、当該抽出鍋の内圧を利用し、該送液バルブを開放操作するだけで送液機構を通じて別のスープ鍋などへ自動的に圧送可能となることから、モーターやポンプなど動力源を使っても通常ならば十分1時間程度を覚悟しなければならないスープの移し替え作業を、それら動力源を一切要さずに、その要処理時間を1/2以下まで大幅に短縮することが可能となってスープ液の製造工程を大巾に効率化できるという特筆すべき効果を発揮するものである。
【0018】
加えて、当該抽出鍋内に熱交換回路を収容し、その冷媒流入管および冷媒流出管を、当該抽出鍋周壁の適宜間隔を隔てた適所夫々に貫通して抽出鍋外がわに導出した上、当該冷媒流入管外端には、他端がわから冷媒を供給可能とした冷却バルブの一端が接続された冷却機構を組み込んでなるものは、抽出鍋内で加熱抽出工程を終えたスープ液を、送液機構を通じて別のスープ鍋などに移動する前段階にて、一旦、冷却バルブを開放して抽出鍋内スープ液が、乳化し難い温度になるまで短時間の中に強制的に熱交換冷却した後、送液機構による別のスープ鍋などへ移動することが可能となり、スープ液移し替え工程の工数を各段に短縮できると共に、一段と高い乳化防止効果を達成することができる。
【0019】
また、上昇管および/または送液管の適所に液密型の乳化容器を接続し、該乳化容器の流入口に、同乳化容器内に乱流を発生して流入スープ液の混合促進用とする乳化ノズルが装着された送液機構を組み込んでなるものは、送液バルブを開放操作するだけで、抽出を終えたスープ液を、当該抽出鍋から別のスープ鍋などへ、該送液機構を通じて自動的に移送可能であると共に、該乳化容器内で強制的に攪拌、混合して均質且つ充分に乳化することが可能であり、一段と品質に秀れた乳化スープ液を各段に効率的に製造することができ、さらに、当該乳化容器を抽出鍋内に配してなるものは、抽出鍋内の高温下でスープ液を攪拌、混合するものとなるから、スープ液中の油分をより細かく微粒子化して各段に均質で、しかも、該スープ液を使用したラーメンが店頭に運ばれ、室温下で顧客が食事を終えるまでの間であっても、油分が分離し難く安定で高品質なスープ液を一層効率良く製造可能にするという特徴を有している。
【0020】
さらにまた、当該乳化ノズルの上流がわ管路断面積を、噴射孔断面積よりも小さく、同噴射孔の吐出端面に、同噴射孔の開口巾よりも狭い一文字状または十字状などの放射状の拡散溝を、同噴射孔に直交するよう刻設してなるものは、スープ液を放出するときに、一段と効率的に攪拌、混合を促すものとなり、また、当該上昇管および/または送液管の適所に、複数基の液密型の乳化容器を連続的または不連続的、且つ、1基単位での追加および削減が可能な状態に接続してなるものは、送液機構を通じた1回のスープ液位相操作によって、複数回の乳化操作を繰り返し行ったのと同様の効果を奏するものとなり、一層高品質のスープ液を非常に効率的に製造することができるようにするという効果を奏するものとなる。
【0021】
そして、当該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に減圧機構を組み込んでなるものは、抽出鍋内で加熱抽出工程を終えたスープ液を、送液機構を通じて別のスープ鍋などに移動する前段階にて、一旦、減圧バルブを開放して抽出鍋内を減圧し、同抽出鍋内のスープ液を沸騰、対流可能な状態として乳化を促進することが可能となり、この減圧機構を利用した乳化操作の後に、減圧バルブを閉鎖して抽出鍋を再加熱すると、再び抽出鍋内の圧力が高まって支障無く送液機構による別のスープ鍋などへの移動が可能となり、更に一層均質な乳化の促進を達成可能なものとなるという効果が得られる。
【0022】
この発明のスープ抽出用圧力鍋を利用した圧力鍋装置によれば、スープ鍋を隣接配置状に組み合わせ、送液機構の送液管を硬質パイプ製のものとし、同スープ鍋内底壁直上付近に配した該送出端給液ノズルの噴射孔を下向き開口状に姿勢維持してなるものとしてあるから、強固に支持された給液ノズルの支持姿勢が、スープ液の噴射力で変化してしまうのを確実に防止して、特に、非乳化のスープ液をスープ鍋内底壁直上付近に固定状となって静かに移送、放出できるものとなり、さらに、乳化、非乳化を問わず良質のスープ液を製造可能なものとすることができる。
【0023】
更には、当該送液機構の送液管を湾曲自在且つ配管姿勢維持可能なフレキシブルパイプ製のものとしたこの発明の圧力鍋装置によれば、給液ノズルの支持姿勢が、自らの噴射力によって変化してしまうのを確実に防止できるようにした上、それら送液管の給液ノズルをスープ鍋外へ移動する場合や、スープ鍋を移動する場合には、当該送液管を自在に湾曲、変形させることが可能となり、煩雑な作業を軽快且つ簡便に行えるようにすることができるという効果を奏するものとなる。
【0024】
一方、この発明のスープ抽出方法によれば、当該抽出鍋の圧力鍋機能を利用するときに、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱を行うことが可能であり、未経験者であっても、試行錯誤を繰り返す必要もなく、熟練者と同等の品質のスープ液を短時間の中に、失敗無く抽出することができるものとなり、しかも、送液機構を通じて抽出したスープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対し、30分未満の短時間の中に移送することができ、従前までであれば長時間に渡って過酷な労働を強いられていた営業用ラーメンのスープ造りを、より負担が少なくなるよう、短時間で終えることのできる厨房作業へと大巾な改善を可能にするという非常に秀れた効果を発揮するものとなる。
【0025】
また、当該スープ抽出方法の旨み成分抽出加熱を終えた段階で、冷却機構の冷却バルブを開放して熱交換回路に冷媒を供給し、スープ液を乳化し難い温度以下であって、しかも送液機構を通じて自動的に排出可能な抽出鍋内圧を確保可能な温度以上の条件を満たす温度範囲まで冷却してから、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用して送液機構を通じ、スープ液だけを移動するようにしたものでは、スープ液の乳化を、より一層効果的に防止することができるものとなり、しかも乳化防止のためのスープ液の冷却時間を大幅に短縮化して非常に効率の良いスープ液の製造作業を進めることができるようにするという利点が得られる。
【0026】
そして、抽出鍋からスープ鍋に、抽出したスープ液だけを移送する過程で、乳化容器および乳化ノズルに通過させるようにすると、従前までであれば、スープ鍋に移したスープ液を、更に3ないし8時間煮沸する必要があったが、この煮沸時間を無くしたした場合であっても充分に乳化することが可能になるという秀れた特徴が得られるものとなり、そして、抽出鍋からスープ鍋に、抽出したスープ液だけを移送する直前の段階で、一時的に減圧バルブを開放して当該抽出鍋の内圧を減圧機構によって減圧し、抽出鍋内スープ液の沸騰と対流とを促進してスープ液を攪拌、乳化した上、減圧バルブを閉鎖し、再加熱して抽出鍋内圧力を高めてから、前述のように、送液機構を通じてスープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に移送するようにしたものでは、より一段と濃度の高い乳化を達成できるものとなり、同じ乳化スープ液であっても、その濃度を巾広く調整可能にするという非常に秀れた効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
抽出鍋は、下処理した食材を投入して適量の水を張り、耐圧蓋で施蓋して加熱することで、スープ液を抽出可能とする機能を果たすものであり、有底容器型のものとし、上端開口に耐圧蓋を開閉自在に装着可能とする密閉機構の一部を設けたものとし、充分な耐圧性および耐久性を有するものとし、上端開口寄りとなる外周壁適所に送液機構を組み込んでなるものとしなければならず、実用性を考慮すると、後述する実施例に示すような、従来型の業務用寸胴鍋と同等、もしくはそれ以上の寸法、形状のものとし、外側の複数適所に運搬用の持ち手を設けたものとするのが望ましい。
【0028】
耐圧蓋は、抽出鍋上端開口に対し、密閉機構を介して圧力鍋を形成するよう開閉自在に装着可能とするものであり、適所に調圧弁や安全弁などの安全装置を有し、高い耐圧強度および耐久強度を有するものとしなければならず、実用性を考慮すると、外がわ適所に一個または複数個の、開閉操作用の耐熱性ハンドルを設けたものとすべきである。
【0029】
密閉機構は、抽出鍋上端開口と耐圧蓋周縁とを密閉状に閉鎖および離脱、開放可能とするものであり、基本的に従来型の圧力鍋と同様の構造をもつものとすべきであって、例えば、後述する実施例に示すように、抽出鍋上端開口に沿って一周する環状平滑面からなるパッキン当接面、および同上端開口に沿って所定間隔置き毎に遠心方向に突設された複数の掛止爪と、耐圧蓋の周縁下がわのパッキン装着溝に装着したパッキン、および同周縁に沿って適宜間隔置き毎に求心方向に突設し、当該抽出鍋開口の各掛止爪に噛合、離脱可能とした複数の係合爪とからなるものとするのが望ましい。
【0030】
安全装置は、圧力鍋内を所望気圧に自動的に調節可能とすると共に、異常高圧状態となったときには、自動的に減圧可能とする機能を果たすものであり、基本的に一般的な圧力鍋と同様の、錘式またはバネ式などの調圧弁、および同調圧弁より高圧で、しかも圧力鍋の安全圧力内で作動する安全弁を有するものとすべきであり、双方とも耐圧蓋の適所に夫々独立して設けたものとするのが望ましく、該調圧弁および安全弁が作動不良を生じたい場合に、パッキンが破裂して自動的に減圧可能とするよう、該耐圧蓋のパッキン装着溝の一部を外がわに貫通した非常用の減圧窓を開口した、この発明と同一人に依る発明で、既に出願済みとなっている登録実用新案第3145786号考案「圧力鍋の逃圧構造」によるものを採用するようにすると、なお一層望ましいものとすることができる。
【0031】
送液機構は、耐圧蓋で密閉状に閉鎖した抽出鍋の加熱によって上昇した内部気圧を利用し、同抽出鍋内に収容されたスープ液などの液体を自動的に同抽出鍋外へ送出可能とするものであり、抽出鍋内底壁付近から液体を上昇させ、同抽出鍋上端がわの周壁を貫通して外がわに誘導可能とする上昇管と、該上昇管を通じて外がわに誘導された液体をスープ鍋などの別に準備された容器類などに誘導可能とする送液管とを有し、当該抽出鍋の外がわ適所に、上昇管から送液管への液体の流通を手動によって任意に開閉操作可能な送液バルブを設けたものとしなければならず、上昇管の適所に食材などを除去可能なフィルターを設け、また、送液管の送出端には、液体を攪拌せずに放出可能な給液ノズルを設けたものとすることができ、該給液ノズルは、放出するスープの乳化を抑制するよう、上流がわ管路断面積と噴射口断面積とを同じとするか、噴射口断面積が上流がわ管路断面積よりも小さく設定したものとすることが可能である外、流出する液体を攪拌する機能を有する乳化ノズルに置き換え可能であり、必要に応じて上昇管および/または送液管の適所に、1個または複数個の乳化容器を接続したものとすることができる。
【0032】
フィルターは、抽出鍋内の食材を除去してスープ液だけを上昇管がわに通過可能とするものであり、食品衛生の確保が可能で、しかも耐熱性に秀れたものを選択すべきであって、後述する実施例に示すように、上昇管の下端に接続可能なフィルターケースの内部に濾過用のメッシュ状部品や連続発泡体、網目シート体などとすることが可能である外、ケースを設けずに、硬質なフィルター自体を、上昇管の下端に直接的に接続可能としたものなどとすることができる。
【0033】
冷却機構は、抽出鍋内に冷却液などの冷媒を循環可能としていて、同抽出鍋内に収容したスープ液などの抽出液類を所望の温度まで冷却可能とするものであり、スープ液の冷却機構管路内への滲入や、冷媒の抽出鍋内への漏出などを確実に防止可能な液密構造のものとしなければならず、抽出鍋の外がわ適所に、冷媒流路の開閉操作、および、冷媒流量の増減制御などが可能な冷却バルブを設けたものとすべきであり、熱交換回路は、ラジエータ型の熱交換面積を大幅に拡大したものとすることができる外、渦巻き型や蛇腹型など複雑に屈曲させた管路や、後述する実施例に示すように、前記乳化容器と同じものをそのまま冷媒流入管および冷媒流出管間に1基または複数基連続させたものとすることが可能であり、1基単位で追加、削減して冷却性能を調整可能としたものとすることができ、冷媒には、気体、液体などの流体を用いたものとし、経済的かつ衛生的で、熱交換効率に秀れた水を用いるのが望ましい。
【0034】
乳化容器は、送液機構の適所で、流通する液体を攪拌して、液体中の油分などの(混合し難い物質)を微細化、混合化して乳化促進可能とする機能を果たすものであり、送液機構管路の密閉を確保可能であると共に、分解洗浄可能なものとしなければならず、管路断面積を一時的に拡大し、且つ、流体の流れ方向を90°以上大きく変更するものとすべきであって、乳化容器流入口に、乱流を発生して液体の混合を促進可能とする乳化ノズルを装着したものとすべきであり、必要に応じて、攪拌用のスクリューなどを内蔵したものとすることが可能であり、後述する実施例に示すように、当該上昇管および/または送液管の適所に、乳化容器複数基を連続的または不連続的、且つ、1基単位での追加および削減が可能な状態に接続してなるものとすることができる。
【0035】
乳化ノズルは、通過する液体中の油分を微細化および攪拌して瞬時に乳化を促進可能とする機能を果たし、液体がフィルターや多数の微細孔などを通過するように形成したものや、内蔵したスクリューや攪拌棒などが流体の流動力で自動的に回転し、通過する流体を攪拌可能とするものなどとすることができる外、後述する実施例に示すように、その上流がわ管路断面積を噴射孔断面積よりも小さく設定してなるものや、または、上流がわ管路断面積を噴射孔断面積よりも大きく設定し、同噴射孔の吐出端面に、同噴射孔の開口巾よりも狭い一文字状または十字状などの放射状の拡散溝を、同噴射孔に直交するよう刻設してなるものなどとすることができる。
【0036】
減圧機構は、耐圧蓋で密閉状に閉鎖し、加熱することによって上昇した抽出鍋の内圧を、耐圧蓋の開放を要さずとも安全に減圧可能とし、この減圧化によって該抽出鍋内の液体に、沸騰および対流を発生させ、乳化を強制的且つ短時間の中に促進可能とするものであり、抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に、任意に手動操作可能な減圧バルブの一端がわを貫通状に設けたものとすべきであり、同減圧バルブの外端に、該抽出鍋外周壁に沿って下向きに延伸した減圧管を接続したものとすることができ、該減圧管の下端には、放出口径を拡大したり、フィルターを内蔵するなどして排出蒸気の噴出力を減圧可能な排気ノズルを設けたものとすることができる。
【0037】
乳化容器、送液機構および/または減圧機構の適所夫々には、工具類を用いないでも着脱操作可能とするワンタッチカプラー(商品名)を組み込んでなるものとすることができ、また、送液機構および/または減圧機構の配管適所が、湾曲自在且つ配管姿勢維持可能なフレキシブルパイプからなるものとすることができる。
【0038】
圧力鍋装置は、当該抽出鍋で製造したスープ液などの抽出液を、一緒に煮込んでいた食材から分離して、別のスープ鍋で加熱、調理可能とする機能を有するものであり、有底容器型のスープ鍋を隣接配置状に組み合わせてなるものとしなければならず、同スープ鍋は、当該抽出鍋と同等の容量に設定してなる寸胴鍋とすることが可能であり、送液機構の送液管を湾曲自在且つ配管姿勢維持可能なフレキシブルパイプ製のものとし、同送出端がわを、該スープ鍋上端開口縁を乗り越えるよう逆U字型に折曲、延伸し、同スープ鍋内底壁直上付近に配した該送出端給液ノズルの噴射孔を下向き開口状に姿勢維持可能なものとすることができる。
【0039】
スープ抽出方法は、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行うが抽出鍋に下処理した食材を投入してから、適量の水を張ることもでき、食材および水を同時に投入、または複数回に渡って交互に投入することも可能であり、乳化スープを製造する場合には、乳化容器の抽出鍋内外などの設置位置や、設置個数などを予め自由に設定しておくことが可能であり、また、冷却機構冷却バルブや減圧機構減圧バルブなどの各バルブ類の操作タイミングや操作時期も必要に応じて自由に変更することが可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0040】
図1の断面化した非乳化スープ用圧力鍋装置1の正面図、図2の旨み成分抽出C中の圧力鍋装置1の正面図、図3の非乳化スープ移し替えD中の圧力鍋装置1の正面図、図4の給液ノズルの断面図、図5の断面化した冷却機構を装備する抽出鍋の正面図、および、図6の断面化したスープ液を冷却する抽出鍋の正面図に示す事例は、抽出鍋11上端開口13に耐圧蓋15を装着し、該抽出鍋11の上端開口13寄りとなる外周壁14に送液バルブ40を設け、同送液バルブ40には、同抽出鍋11内底壁12直上付近から上向き延伸した上昇管5の上端を接続し、該送液バルブ40の外端がわに、送液管6の供給端がわが接続された送液機構4を組み込んだスープ抽出用圧力鍋10に、スープ鍋16を隣接配置状に組み合わせてなるものとした、この発明の圧力鍋装置における代表的な一実施例を示すものである。
【0041】
図1中に示すように、この発明の圧力鍋装置1スープ抽出用圧力鍋10は、その抽出鍋11が、業務用サイズの寸胴鍋型のものであって、上端開口13に沿って円環型平滑面状に形成したパッキン当接面20、および、そのパッキン当接面20直下となる外周壁14に、周回り方向に沿って所定間隔置き毎に一体化形成した複数の掛止爪21,21,……を有しており、また、抽出鍋11を施蓋可能とする耐圧蓋15は、適所に釣鐘型錘利用の調圧弁30およびコイルバネ利用の安全弁(図示せず)を設け、下向きに折曲した周縁の内壁に沿ってパッキン装着溝22を刻設して耐熱性軟質合成樹脂製のパッキン24を着脱、交換自在に装着すると共に、該パッキン装着溝22直下に、当該抽出鍋11の各掛止爪21,21,……に嵌合可能、且つ、各掛止爪21,21,……間を通じて離脱可能な複数の係合爪23,23,……を一体化形成し、また、該パッキン24の遠心がわに対峙するパッキン装着溝22壁部分の適所には、外がわに非常用減圧窓(図示せず)を貫通状に穿設したものであり、当該パッキン当接面20、パッキン装着溝22、パッキン24、各掛止爪21,21,……および各係合爪23,23,……によって密閉機構2を構成し、さらに、調圧弁30、安全弁(図示せず)および非常用減圧窓(図示せず)が安全装置3を形成するものとしてある。
【0042】
送液機構4は、該抽出鍋11の上端開口13寄りとなる周壁14に水平に貫通した管路を下向きに折曲形成すると共に、該管路の下向き開口に送液バルブ40の一端を接続したブロック型エルボ41を結合し、同抽出鍋11周壁14に貫通し、同抽出鍋11内がわに開口した(送液バルブ40一端がわの)該ブロック型エルボ41の水平管路端には、同抽出鍋11内底壁12直上付近に配したフィルター50から鉛直上向きに延伸した上昇管5の水平に折曲した上端を、ワンタッチカプラー(商品名)Pを介して着脱自在に接続したものであり、当該フィルター50は、短尺な水平直管の中央上壁に上昇管5の下端を接続し、該上昇管5下端の直下に対応する管路内に、食材片などの固形物を分離可能な濾過膜を交換自在に内蔵したものである。
【0043】
また、送液バルブ40の外端には、ワンタッチカプラー(商品名)Pを介して、送液管6の上流端を着脱自在に接続してあり、該送液管6は、当該抽出鍋11に隣接状に配したスープ鍋16がわに水平に延伸すると共に、その下流がわ管路を該スープ鍋16上端開口18縁を乗り越えるよう逆U字型に折曲、延伸し、同スープ鍋16内底壁17直上付近に配した該送出端に、放出孔を下向き開口状とした給液ノズル60の基端を接続したものであり、また、該送液管6は、その中途箇所であって、当該スープ鍋16上端開口18縁に対峙するよう組み合わせられる箇所当たりを切断状に分離し、ワンタッチカプラー(商品名)Pを介して着脱自在に接続可能なものとし、図4中に示すように、当該送液管6送出端に接続した給液ノズル60は、放出液流に乱流や攪拌が発生しないよう、その管路基端がわ内径d1が、放出孔内径d2よりも大きく設定してある。
【0044】
さらに、図5および図6中に示すように、当該抽出鍋11に冷却機構Rを設けたものとすることが可能であり、該冷却機構Rは、当該抽出鍋11内がわの抽出スープ液S中に一部または全部が没する位置に熱交換回路R0を内蔵し、その冷媒流入管R1および冷媒流出管R2の各端部がわが、当該抽出鍋11周壁14の適宜間隔を隔てた適所に夫々貫通するようにし、当該抽出鍋11外に導出した冷媒流入管R1の外端が、冷媒となる水Wの供給原となる水道管に、冷却バルブR3を介して接続されたものとし、該熱交換回路R0は、図16中に示した、複数基(図中には3基)連続、接続するようにした、後述する乳化容器7,7,7と同一構造のものを、冷却という別用途に利用したものであって、該熱交換回路R0の各乳化容器7,7,7は、1基単位で個別に取り外して個数を削減するようにしたり、追加して増加させたりすることが可能であり、しかも、熱交換回路R0、冷媒流入管R1、冷媒流出管R2および冷却バルブR3の間には、適宜ワンタッチカプラー(商品名)P,P,……を配設し、夫々を当該抽出鍋11から簡単に離脱して装着することが可能なものとしてある。
【実施例2】
【0045】
図7の断面化した乳化スープ用圧力鍋装置1の正面図、図8の断面化した他の乳化スープ用圧力鍋装置1の正面図、図9の旨み成分抽出C中の圧力鍋装置1の正面図、図10の減圧機構8作動中の圧力鍋装置1の正面図、図11の乳化スープ移し替えD中の圧力鍋装置1の正面図、図12の乳化ノズルの断面図、図13の他の乳化ノズルの断面図、図14の乳化容器7を変更した圧力鍋装置1の正面図、図15の断面化した乳化容器7の正面図、および、図16の複数基接続した乳化容器7,7,7の正面図に示す事例は、前記圧力鍋装置1の抽出鍋11上昇管5および/または送液管6の適所に液密型の乳化容器7を接続し、該乳化容器7の流入口に、同乳化容器7内に乱流を発生して流入スープ液Sの混合促進用とする乳化ノズル70が装着された送液機構4を組み込んでなるものとしたことを特徴とするスープ抽出用圧力鍋10に、スープ鍋16を隣接配置状に組み合わせてなるものとした、この発明の圧力鍋装置における代表的な他の一実施例を示すものである。
【0046】
図7中に示すように、当該圧力鍋装置1は基本的にその主要部分が、前記実施例1の図1中に示したものと共通のものであり、説明の重複を避けて、以下には、相違点についてだけを示すこととする。
同図中に示すとおり、該スープ抽出用圧力鍋10抽出鍋11内上昇管5上端がわのワンタッチカプラー(商品名)P付け根直前部分に乳化容器7を設け、該乳化容器7内に貫通状に接続した上昇管5上端には、図12中に示すように、噴射孔71内径d2を上流がわ管路内径d1よりも大きく設定してなる乳化ノズル70か、または、図13中に示すように、噴射孔71内径d2を上流がわ管路内径d1よりも小さく設定した上、同噴射孔71の吐出端面に、同噴射孔71内径d2よりも狭い一文字型放射状の拡散溝72を、同噴射孔71軸心に直交するよう刻設してなる乳化ノズル70かの何れか一方を、希望する乳化状態の違いに応じて適宜選択し、接続したものとすることが可能であり、さらにまた、図8中に示すように、乳化容器7は、当該抽出鍋11の外がわとなる送液機構4送液管6の中途適所に接続したものとすることが可能であり、該乳化容器7前後の送液管6中途適所の夫々に適宜、ワンタッチカプラー(商品名)P,Pを介在させて着脱自在に接続可能なものとすることができる。
【0047】
また、図7および図8中に示すように、当該抽出鍋11には、その上端開口13寄りであって、しかも当該送液バルブ40とは垂直軸心回りに180°反対がわとなる周壁14に、エルボの上流端を貫通状に接続すると共に、同エルボの下向き姿勢とした下流端に、減圧バルブ80の一端を接続した上、該同減圧バルブ80の下向き姿勢とした外端には、ワンタッチカプラー(商品名)Pを介して、該抽出鍋11外周壁14に沿って下向きに延伸し、下端に排気ノズル90を装着した減圧管9を着脱自在に接続し、減圧機構8を組み込んでなるものとしている。
【0048】
そして、図7および図8中に示した、当該乳化容器7は、図14ないし16中に示すように、上昇管5の上端を、ワンタッチカプラー(商品名)Pを介して着脱自在に接続可能であり、且つ、当該抽出鍋11周壁14に貫通したブロック型エルボ41内端に、ワンタッチカプラー(商品名)Pを介して着脱自在に接続可能な肉厚円盤型の円柱ベース73の中央から植込みボルト74を同心状上向きに立設し、該植込みボルト74上端がわには、該円柱ベース73の上端外径に一致する内径とした無底の円筒キャップ75天壁76下面壁中央に穿設した雌ネジ穴を螺着し、該円筒キャップ75下端縁内周壁と円柱ベース73上端外周壁との間に無端状シール77を介在させて着脱自在に密閉状装着可能としたものに置き換え可能であり、図14中に示すよう、抽出鍋11内に設けたものや、図示にはしていないが、抽出鍋11外に設けたものとすることができる外、図16中に示すように、複数基の乳化容器7,7,7を、互いにワンタッチカプラー(商品名)P,P,……を介して1個単位で増減して組み立て可能とするような組み込みを可能にし、また、当該上昇管5上端に接続するワンタッチカプラー(商品名)Pに対応する該円柱ベース73上面壁の開口には、図4、図12または図13に示す中の、何れかの給液ノズル60または乳化ノズル70,70を自由に選択して着脱自在に接続したものとすることができる。
【0049】
(実施例1の作用)
前記実施例1に示すとおりの構成からなるこの発明のスープ抽出用圧力鍋10、およびそれを用いた圧力鍋装置1は、図1中に示すように、乳化容器7を設けずに組み立てたものを用いて、この発明に包含する非乳化スープの抽出方法を実施可能であり、予め実験で得た、抽出鍋に投入する[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、下記表1の食材量およびスープ濃度と、加熱時間との関係、ならびに、図17の煮沸時間/スープ濃度の関係のグラフ、あるいは、それらによって導き出された煮沸時間/スープ濃度の相関関係式(特に示していない。)などに基づき、旨み成分抽出加熱に要する時間を決定し、図18に示してある非乳化スープ抽出のフローチャートに従って非乳化スープ液を製造可能である。
【表1】



【0050】
図18中に示すように、1ないし2時間掛けて食材の下処理Aを行い、図2中に示してあるように、食材Fおよび水Wの各適量を抽出鍋11中に仕込みB、耐圧蓋15を装着して密閉状に施蓋すると共に、送液バルブ40を閉鎖して該抽出鍋11中の水Wが沸騰するまで40分間に渡り、2.2kg/cm3、134℃まで加熱Fした後、前述の如く決定した加熱時間である例えば80分間に渡って旨み成分抽出加熱Cを行い、これによって、前記表1および図17からも明らかなように、食材30kg、水60Lの場合に、濃度3.7%の非乳化スープ液が得られ、また、食材14kg、水70Lの場合には濃度2%の非乳化スープ液を得ることとなり、続いて送液バルブ40を開放し、図3中の実線矢印に示すように、抽出鍋11の内圧によって、フィルター50、上昇管5および送液管6を通じて給液ノズル60から、スープ鍋16内底壁17直上付近に、スープ液Sだけが静かに移送、放出Dされることになる。
【0051】
そして、同図3のとおり、送液管6をスープ鍋16底壁17直上付近まで延伸してあるから、該スープ鍋16内に放出するスープ液Sが静かに流動して、落下に伴う攪拌を抑えると共に、該送液管6に接続した給液ノズル60が、図4に示すように、管路基端がわ内径d1が放出孔内径d2よりも大きく設定してあり、放出するスープ液Sの拡散を防止して激しい流動を抑制し、スープ液Sの乳化を確実に阻止する。
【0052】
また、図5および図6に示すように、この実施例1のスープ抽出用圧力鍋10に、冷却機構Rを組み込んだ抽出鍋11を用いて非乳化スープ液Sを製造する場合には、図18中に示すのと同様に、食材の下処理Aおよび食材F、水Wを抽出鍋11中に仕込みB、冷却機構R冷却バルブR3および送液機構4送液バルブ40を閉鎖状態にしてから、所望のスープ濃度に応じた時間に渡って旨み成分抽出加熱Cを行なった上、図19の冷却によって乳化を防止可能とした非乳化スープ抽出のフローチャート、ならびに図6中に示すように、冷却機構Rの冷却バルブR3を開放して抽出鍋11内の熱交換回路R0に冷媒である水道水を循環させ、スープ液Sを乳化し難い温度であり、しかも送液機構4を通じて同スープ液Sを送出可能な抽出鍋11内圧を確保可能な温度範囲内まで冷却Gし、その後、冷却バルブR3を閉じると共に、送液機構4送液バルブ40を開放してスープ液Sだけを静かにスープ鍋16に移送Dすることが可能となる。
【0053】
さらに、図1および図5中に示してあるとおり、当該圧力鍋装置1抽出鍋11は、送液機構4および冷却機構Rの各所にワンタッチカプラー(商品名)P,P,……を設けているから、各配管部分の着脱、洗浄および部品交換が容易な上、当該冷却機構R熱交換回路R0は、実施例2で利用する複数基の乳化容器7,7,7を直列状(並列状も可能)に接続したものを、そのまま流用するようにしたものであり、冷却専用部品の新設計および新規製造が一切不要になる。
【0054】
(実施例2の作用)
前記実施例2に示すとおりの構成からなるこの発明の圧力鍋装置1は、図7中に示すように、抽出鍋11内の送液機構4上昇管5上端がわに乳化容器7を組み込んだスープ抽出用圧力鍋10を用いて、この発明に包含する乳化スープの抽出方法を実施可能であり、図20の乳化スープ抽出のフローチャートに従って乳化スープ液Sを製造可能であって、図9中に示すように、食材の下処理A(1ないし2時間)、抽出鍋への仕込みB、および所定圧力(134℃、2.2kg/cm3)まで加熱F(40分)した後、旨み成分の抽出C(80分)までの作用を、前記実施例1と同様の条件で行った後、送液機構4送液バルブ40を開放し、図11中の実線矢印に示すように、抽出鍋11の内圧によって、フィルター50、上昇管5、乳化容器7および送液管6を通じて給液ノズル60から、スープ鍋16内底壁17直上付近に、スープ液Sだけを21分間で移送、放出Dするものとなる。
【0055】
図20中に示す、スープ液S移送Dの過程で、同図9および図11中に示すように、当該乳化容器7の乳化ノズル70から乳化容器7内に噴射したスープ液Sは、同スープ液Sの流動圧力および抽出鍋11内の高温という条件下によって、通常の大気圧条件下では達成不可能な程度にまで微細化されると共に拡散状となって攪拌し、白濁状に乳化されたものとなって送液管6へと流通し、さらに、給液ノズル60から拡散状に噴出して乳化を促進するものとなり、しかも、該当該乳化容器7の乳化ノズル70や給液ノズル60を、図4の給液ノズル60や、図12または図13の乳化ノズル70,70の中から何れか選択したものを装着することで、乳化促進の作用を自在に調整することが可能であり、図12の乳化ノズル70では、下流がわほど拡大した円筒形噴射孔71によって円錐状の拡散が促進されるものとなり、また、図13中に示す乳化ノズル70は、噴射孔71先端面の一文字状拡散溝72によって扇状の拡散を促進するものとなる外、図4の給液ノズル60を装着した場合には、拡散を抑えて乳化を抑制することができ、それらを各所に組み合わせて利用することで様々な乳化作用を実現化可能となり、図11中に示すように、乳化された状態でスープ鍋16に移送したスープ液Sは、さらに、図20中に示すように、煮沸Hすること無しに完成となる。
【0056】
前記実施例2に示したこの発明の圧力鍋装置1は、図21の減圧機構利用の乳化スープ抽出のフローチャートに従うような、この発明に包含する乳化スープの抽出方法の実施にも利用可能であり、食材の下処理A、抽出鍋への仕込みB、および、旨み成分の抽出Cまでを前述と同様に行った後、図10中に示すように、減圧機構8減圧バルブ80を5分間にわたって開放J(図21)し、抽出鍋11内圧を低下させてスープ液Sの沸騰(気泡の発生)および対流を促進して強制的に拡散、乳化を生じさせるようにした上で、同減圧バルブ80を閉鎖してから、抽出鍋11を再加熱して内圧を充分に高めると共に送液機構4送液バルブ40を開放して21分間でスープ液Sだけをスープ鍋16に移送し、以降は前述同様に、30分間にわたってスープ鍋16を加熱し、煮沸Hして乳化させた後に完成となる。
【0057】
図7および図8に示すように、当該圧力鍋装置1スープ抽出用圧力鍋10の乳化容器7は、抽出鍋11内外の何れにも、内外双方にも装着(図示せず)することが可能であって、抽出鍋11内の乳化容器7は、乳化し易い高温に保つことが可能で、抽出鍋11外の乳化容器7は、乳化し難い低温になり易いという違いがあるから、より高い乳化促進作用を望む場合には、図7中に示すように、抽出鍋11内に乳化容器7を配したもののほうが、より高い乳化作用を得易いものとなり、さらに、図14ないし図16に示すように、形成した乳化容器7は、ワンタッチカプラー(商品名)P,P,……を介して複数基接続することが可能であり、1基単位で加減することで乳化作用の強さを簡単に調節可能であり、しかも各乳化容器7円筒キャップ75の上端に設けた円弧棒状の持ち手78を把持して、植込みボルト74から螺解、離脱して簡単に分解、洗浄することが可能であり、メンテナンス性が高く、しかも耐圧性に秀れているという特性をもっている。
【0058】
(実施例1の効果)
以上のような構成からなる実施例1のスープ抽出用圧力鍋10、およびそれを利用した圧力鍋装置1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、図22のフローチャートに示すように、一般的な業務用寸胴鍋を用いた非乳化スープの調理方法に従えば、通常5時間ないし24時間必要となるのに比較して、図18のフローチャートに示すように、食材の下処理Aからスープの移し替えDの完了まで、4時間21分ないし5時間21分まで短縮することが可能となり、さらに、図19のフローチャートに示すように、スープの移し替え工程Dの直前に、冷却機構Rを利用したスープの冷却工程G(10分間)を実施することにより、スープの移し替え工程Dの段階で、送液バルブ40を全開してもスープ液Sの乳化を防止できるものとなり、食材の下処理Aからスープの移し替えDの完了まで2時間51分ないし4時間51分まで短縮することができる外、一段と透明度の高いスープ液Sを製造することが可能となるという大きな特徴を備えている。
【0059】
(実施例2の効果)
また、この実施例2のスープ抽出用圧力鍋10、およびそれを利用した圧力鍋装置1は、前記したこの発明の効果の項で記載の特徴に加え、図23のフローチャートに示すように、一般的な業務用寸胴鍋を用いた乳化スープの調理方法に依るならば、通常時間13時間ないし23時間必要となるのに比較し、図20のフローチャートに示すように、食材の下処理Aからスープの移し替えDおよびスープの乳化Eが完了するまでの時間を、大巾に改善して2時間41分ないし4時間20分に短縮することが可能であり、しかも、図21のフローチャート、および図10中に示すように、スープの移し替え工程Dの直前に、減圧機構8を利用した減圧による乳化Jを行うことによって、スープの移し替えDの後に行うスープの乳化Hを短縮するか、または、スープ液Sの濃度をさらに高めることが可能となるという極めて実用的な効果が期待できるものとなる。
【0060】
表2は、乳化スープ液Sの製造に要する所用時間、および、図21および図22中に示す、旨み成分の抽出Cを終えたスープ液Sを、図11中に示すように、抽出鍋11からスープ鍋16に移送する時間とを示すものである。
【表2】



【0061】
同表2は、食材Fが14kg、水Wが70L(初期水量)を夫々使用して濃度2%のスープ液Sを得るまでの時間であり、投入食材や希望スープ濃度(測定に使用したスープ濃度計は、SHIMADZU製の透過率計:MultiSpec−1500)に応じて所要時間は異なるものであり、図21および図22を参照して示すように、抽出鍋11内が所定圧力(2.2kg/cm3)まで加熱Fするのに要する時間は40分、旨み成分の抽出Cの時間は80分、抽出鍋11からスープ鍋16に移送Dする時間が21分、その所要時間は2時間21分となり、従来の製造方法では12ないし24時間掛かっていたものを大巾に短縮可能なことが確認できる。
【0062】
表3の前記実施例1の圧力鍋装置1で製造した非乳化スープ液Sと、実施例2の圧力鍋装置1で製造した乳化スープ液Sとの比較に示すように、完成後の濃度2%のスープ液Sは、旨み成分の抽出C後の抽出鍋11中での光透過率が、0.73%であり、図1ないし図6中に示す送液機構4を通じてスープ鍋16に移動した場合の非乳化スープ液Sの光透過率が0.1%、図7ないし図16中に示す乳化容器7を有する送液機構4を通じてスープ鍋16に移動した場合の乳化スープ液Sの光透過率が0.05%であった。
【表3】



【0063】
(測定に使用したスープ濃度計は、SHIMADZU製の透過率計:MultiSpec−1500)
非乳化スープ液Sと乳化スープ液Sとの光透過率測定値に、然程大きな数値差は認められないが、目視による色調は、非乳化スープ液Sが、薄い茶色(僅かに白色を含む)を呈する一方、乳化スープ液Sでは、乳白色(牛乳と同等)を呈し、両者の目視による色調の差異は明確であり、業務用ラーメンの希釈スープ液として充分に利用できる高品質なものであった。
【0064】
(結 び)
叙述の如く、この発明のスープ抽出用圧力鍋、およびそれを用いた圧力鍋装置、ならびにそれら利用のスープ抽出方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの寸胴鍋型の圧力鍋に開閉バルブを有する配管設備を装着するだけで、軽量且つ低廉にて経済的に生産、販売可能なものとすることができる上、従前まで各店舗毎の厨房にて毎日のように多大な労力と長時間とを費やして製造してきたラーメン希釈用スープを、短時間の中に簡便且つ高品質に製造できるものとして、調理者の過大な負担を大巾に削減すると共に、表やグラフまたは計算式などに依って、その食材量、初期水量および所望スープ濃度を特定すれば、加熱調理時間を誰でも簡単に知ることができるものとしてあるから、未経験者であっても失敗無く高品質の営業用スープ液を安定的に製造可能となり、従業員不足を嘆く個人経営のラーメン店者はもとより、熟練者の不足や調理者の違いによる風味や品質のバラツキなどを解決できずにいた外食チェーン業界や、各種外食業界に厨房設備を提供する厨房設備業界などからも高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図面は、この発明のスープ抽出用圧力鍋、およびそれを用いた圧力鍋装置、ならびにそれら利用のスープ抽出方法の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】断面化した非乳化スープ用圧力鍋装置を示す正面図である。
【図2】旨み成分抽出中の圧力鍋装置を断面化して示す正面図である。
【図3】非乳化スープ移し替え中の圧力鍋装置を断面化して示す正面図である。
【図4】給液ノズルを示す断面図である。
【図5】冷却機構を組み込んだ抽出鍋を断面化して示す正面図である。
【図6】非乳化スープ冷却中の冷却機構を断面化して示す正面図である。
【図7】断面化した乳化スープ用圧力鍋装置を示す正面図である。
【図8】断面化した他の乳化スープ用圧力鍋装置を示す正面図である。
【図9】旨み成分抽出中の圧力鍋装置を示す正面図である。
【図10】減圧機構作動中の圧力鍋装置を示す正面図である。
【図11】乳化スープ移し替え中の圧力鍋装置を示す正面図である。
【図12】乳化ノズルを示す断面図である。
【図13】他の乳化ノズルを示す断面図である。
【図14】乳化容器を変更した圧力鍋装置を示す正面図である。
【図15】断面化した乳化容器を示す正面図である。
【図16】複数基接続した乳化容器を示す正面図である。
【図17】煮沸時間/スープ濃度の関係を示すグラフである。
【図18】非乳化スープ抽出方法を示すフローチャートである。
【図19】冷却で乳化防止する非乳化スープ抽出方法を示すフローチャートである。
【図20】乳化スープ抽出方法を示すフローチャートである。
【図21】減圧で乳化促進する乳化スープ抽出方法を示すフローチャートである。
【図22】従来の非乳化スープ抽出方法を示すフローチャートである。
【図23】従来の乳化スープ抽出方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 圧力鍋装置
10 同 スープ抽出用圧力鍋
11 同 抽出鍋
12 同 底壁
13 同 開口
14 同 周壁
15 同 耐圧蓋
16 同 スープ鍋
17 同 底壁
18 同 開口
2 密閉機構
20 同 パッキン当接面
21 同 掛止爪
22 同 パッキン装着溝
23 同 係合爪
24 同 パッキン
3 安全装置
30 同 調圧弁
4 送液機構
40 同 送液バルブ
41 同 ブロック型エルボ
5 上昇管
50 同 フィルター
6 送液管
60 同 給液ノズル
7 乳化容器
70 同 乳化ノズル
71 同 噴射孔
72 同 拡散溝
73 同 円柱ベース
74 同 植込みボルト
75 同 円筒キャップ
76 同 天壁
77 同 無端状シール
78 同 持ち手
8 減圧機構
80 同 減圧バルブ
9 減圧管
90 同 排気ノズル
R 冷却機構
R0 同 熱交換回路
R1 同 冷媒流入管
R2 同 冷媒流出管
R3 同 冷却バルブ
P ワンタッチカプラー(商品名)
S スープ液
F 食材
W 水
A 食材の下処理工程
B 抽出鍋への仕込み工程
C 旨み成分の抽出工程
D スープの移し替え工程
E スープの乳化工程
F 所定圧力までの加熱する工程
G スープの冷却工程
H スープの乳化工程
J 減圧による乳化工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底容器型の抽出鍋上端開口に対し、適所に調圧弁が設けられた耐圧蓋を、密閉機構を介して開閉自在に装着し、該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に送液バルブの一端がわを貫通状に設けると共に、同抽出鍋周壁に貫通した送液バルブ一端がわには、同抽出鍋内底壁直上付近に配したフィルターから上向き延伸した上昇管の上端を接続した上、該送液バルブの外端がわに、当該抽出鍋とは別のスープ鍋などの移送先へ送液可能な長さ寸法に設定した配管であって、その送出端に給液ノズルを装備した送液管の供給端がわが接続された送液機構を組み込んでなるものとしたことを特徴とするスープ抽出用圧力鍋。
【請求項2】
有底容器型の抽出鍋上端開口に対し、適所に調圧弁が設けられた耐圧蓋を、密閉機構を介して開閉自在に装着し、該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に送液バルブの一端がわを貫通状に設け、同抽出鍋周壁に貫通した送液バルブ一端がわには、同抽出鍋内底壁直上付近に配したフィルターから上向き延伸した上昇管の上端を接続すると共に、該送液バルブの外端がわに、当該抽出鍋とは別のスープ鍋などの移送先へ送液可能な長さ寸法に設定した配管であって、その送出端に給液ノズルを装備した送液管の供給端がわが接続された送液機構を組み込んだ上、該抽出鍋内がわ適所に熱交換回路を収容し、同熱交換回路の冷媒流入管および冷媒流出管を、該抽出鍋周壁の適宜間隔を隔てた適所夫々に貫通して抽出鍋外がわに導出し、同冷媒流入管外端には、他端がわから冷媒を供給可能とした冷却バルブの一端が接続された冷却機構を配設してなるものとしたことを特徴とするスープ抽出用圧力鍋。
【請求項3】
有底容器型の抽出鍋上端開口に対し、適所に調圧弁が設けられた耐圧蓋を、密閉機構を介して開閉自在に装着し、該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に送液バルブの一端がわを貫通状に設け、同抽出鍋周壁に貫通した送液バルブ一端がわには、同抽出鍋内底壁直上付近に配したフィルターから上向き延伸した上昇管の上端を接続すると共に、該送液バルブの外端がわに、当該抽出鍋とは別のスープ鍋などの移送先へ送液可能な長さ寸法に設定した配管であって、その送出端に給液ノズルを装備した送液管の供給端がわが接続された上、当該上昇管および/または送液管の適所に液密型の乳化容器を接続し、該乳化容器の流入口に、同乳化容器内に乱流を発生して流入スープ液の混合促進用とする乳化ノズルが装着された送液機構を組み込んでなるものとしたことを特徴とするスープ抽出用圧力鍋。
【請求項4】
有底容器型の抽出鍋上端開口に対し、適所に調圧弁が設けられた耐圧蓋を、密閉機構を介して開閉自在に装着し、該抽出鍋の上端開口寄りとなる外周壁に送液バルブの一端がわを貫通状に設け、同抽出鍋周壁に貫通した送液バルブ一端がわには、同抽出鍋内底壁直上付近に配したフィルターから上向き延伸した上昇管の上端を接続すると共に、該送液バルブの外端がわに、当該抽出鍋とは別のスープ鍋などの移送先へ送液可能な長さ寸法に設定した配管であって、その送出端に給液ノズルを装備した送液管の供給端がわが接続された上、当該上昇管の該抽出鍋内となる適所に、液密型の乳化容器を接続し、該乳化容器の流入口に、同乳化容器内に乱流を発生して流入スープ液の混合促進用とする乳化ノズルが装着された送液機構を組み込んでなるものとしたことを特徴とするスープ抽出用圧力鍋。
【請求項5】
乳化ノズルが、その上流がわ管路断面積を噴射孔断面積よりも小さく、同噴射孔の吐出端面に、同噴射孔の開口巾よりも狭い一文字状または十字状などの放射状の拡散溝を、同噴射孔に直交するよう刻設してなるものとした、請求項3または4何れか一方記載のスープ抽出用圧力鍋。
【請求項6】
当該上昇管および/または送液管の適所に、複数基の液密型の乳化容器を連続的または不連続的、且つ、1基単位での追加および削減が可能な状態に接続してなるものとした、請求項3ないし5何れか一項記載のスープ抽出用圧力鍋。
【請求項7】
抽出鍋が、その上端開口寄りとなる外周壁に減圧バルブの一端がわを貫通状に設け、同減圧バルブの外端には、該抽出鍋外周壁に沿って下向きに延伸した減圧管が接続された減圧機構を組み込んでなるものとした、請求項ないし6何れか一項記載のスープ抽出用圧力鍋。
【請求項8】
請求項1ないし7何れか一項記載のスープ抽出用圧力鍋に、当該抽出鍋と同等の容量に設定した有底容器型のスープ鍋を隣接配置状に組み合わせたものにすると共に、当該送液機構の送液管を硬質パイプ製のものとし、同送出端がわを、該スープ鍋上端開口縁を乗り越えるよう逆U字型に折曲、延伸し、同スープ鍋内底壁直上付近に配した該送出端給液ノズルの噴射孔を下向き開口状に姿勢維持してなるものとしたことを特徴とする圧力鍋装置。
【請求項9】
請求項1ないし7何れか一項記載のスープ抽出用圧力鍋に、当該抽出鍋と同等の容量に設定した有底容器型のスープ鍋を隣接配置状に組み合わせたものとすると共に、当該送液機構の送液管を湾曲自在且つ配管姿勢維持可能なフレキシブルパイプ製のものとし、同送出端がわを、該スープ鍋上端開口縁を乗り越えるよう逆U字型に折曲、延伸し、同スープ鍋内底壁直上付近に配した該送出端給液ノズルの噴射孔を下向き開口状に姿勢維持可能なものとしたことを特徴とする圧力鍋装置。
【請求項10】
請求項1記載のスープ抽出用圧力鍋、および、請求項1記載のスープ抽出用圧力鍋を用いた請求項8または9何れか一方記載の圧力鍋装置を利用し、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行い、耐圧蓋で密閉して水が蒸気を発生して抽出鍋内圧が所定圧力に達するまで1時間以内の加熱を行った上、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱した後、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用して送液機構を通じ、スープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対して30分未満の間に静かに移送し、乳化が無いか、殆ど進まないスープ液を製造するようにしたことを特徴とするスープ抽出方法。
【請求項11】
請求項2記載のスープ抽出用圧力鍋、および、請求項2記載のスープ抽出用圧力鍋を用いた請求項8または9何れか一方記載の圧力鍋装置を利用し、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行い、耐圧蓋で密閉して水が蒸気を発生して抽出鍋内圧が所定圧力に達するまで1時間以内の加熱を行った上、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱した後、冷却機構の冷却バルブを開放して熱交換回路に冷媒を供給し、スープ液を乳化し難い温度以下で、しかも送液機構を通じて自動的に排出可能な抽出鍋内圧を確保可能な温度以上の条件を満たす温度範囲まで冷却してから、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用して送液機構を通じ、スープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対して30分未満の間に静かに移送し、乳化が無いか、殆ど進まないスープ液を製造するようにしたことを特徴とするスープ抽出方法。
【請求項12】
請求項3ないし7何れか一項記載のスープ抽出用圧力鍋、および、請求項3ないし7何れか一項記載のスープ抽出用圧力鍋を用いた請求項8または9何れか一方記載の圧力鍋装置を利用し、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行い、耐圧蓋で密閉して水が蒸気を発生して抽出鍋内圧が所定圧力に達するまで1時間以内の加熱を行った上、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱した後、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用し、送液機構を通じてスープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対し、30分未満の間に移送すると同時に、乳化容器および乳化ノズル通過に伴う乳化促進操作を自動的に行うようにし、移送スープ液中の油分を微細化、攪拌して所望のスープ液を製造するようにしたことを特徴とするスープ抽出方法。
【請求項13】
請求項7記載のスープ抽出用圧力鍋、または、請求項7記載のスープ抽出用圧力鍋を用いた請求項8または9何れか一方記載の圧力鍋装置を利用し、当該抽出鍋に適量の水を張り、下処理した食材を投入して仕込みを行い、耐圧蓋で密閉して水が蒸気を発生して抽出鍋内圧が所定圧力に達するまで1時間以内の加熱を行った上、所望のスープ濃度を得るために事前に準備してある、抽出鍋に投入した[食材重量+水重量]に応じて変化するところの、当該圧力鍋装置による抽出時間とスープ濃度との相関関係グラフや相関関係表、または相関関係式の何れかに基づいて得られる抽出時間に渡って旨み成分抽出加熱した後、一時的に減圧バルブを開放して当該抽出鍋の内圧を減圧機構によって減圧し、抽出鍋内スープ液の沸騰と対流とを促進してスープ液を攪拌、乳化した上、減圧バルブを閉鎖し、再加熱して抽出鍋内圧力を高めてから、送液バルブを開放し、当該抽出鍋の内圧を利用し、送液機構を通じてスープ液だけを、隣接配置するようにしたスープ鍋に対し、30分未満の間に移送すると同時に、乳化容器および乳化ノズル通過に伴う乳化促進操作を自動的に行い、移送スープ液中の油分を微細化、攪拌して乳化処理を行い、所望のスープ液を製造するようにしたことを特徴とするスープ抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−56142(P2011−56142A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211145(P2009−211145)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(508236387)株式会社 鋳物屋 (4)
【Fターム(参考)】