説明

セサミン類とγ−オリザノールとを含有する組成物

【課題】セサミン類の持つ生理作用を効率良く発揮させ、セサミン類の作用を増強させるための方法及びその目的を達成するために併用できる有効な化合物を提供する。
【解決手段】セサミン類(ゴマ種子中に0.1〜0.5%含まれている、好ましくはセサミンおよび/またはエピセサミンである)とγ−オリザノールとを併用することで、セサミン類の生理作用、例えば、抗疲労作用が相乗的に増強され、ヒトや動物等に対して安全で、したがって、継続摂取が可能である組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、セサミン類とγ−オリザノールとを含有する組成物に関し、より詳細には、セサミン類の生理作用を高めた組成物、およびこれを含有した飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
セサミンはゴマの主要なリグナン化合物の一つであり、ゴマ種子中に0.1〜0.5%含まれている。これに対して、エピセサミンは本来ゴマ種子には存在しておらず、ゴマ油からサラダ油などの精製処理(脱色、脱臭)工程において、セサミンがエピマー化を受け副次的に生成してくるものであり(非特許文献1)、このゴマ油から精製されるセサミン類は、セサミンとエピセサミンとをほぼ1:1(重量比)の割合で含有することが知られている(非特許文献2)。
【0003】
これらの化合物を含むセサミン類について、以下の生理作用が開示されている。例えば、腸内でのコレステロール又は胆汁酸の代謝阻害作用、アルコール中毒や禁断症状の緩和作用、肝機能改善作用、高度不飽和脂肪酸の生体内安定化作用(特許文献1)、Δ5−不飽和化酵素阻害作用、片頭痛の抑制作用、ヒト白血病細胞に対するアポトーシス誘導作用、メラトニンの酸化分解抑制作用、炎症性疾患(筋萎縮性側索硬化症)の改善作用、抗炎症及び感染防護作用、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸うち少なくとも1種類を含有する油脂との併用によるアレルギー予防又は改善作用(特許文献2)、活性酸素消去作用、悪酔防止作用、オメガ6系・オメガ3系不飽和脂肪酸のバランス調節作用(特許文献3)、過酸化脂質生成抑制、乳癌抑制作用、抗高血圧作用、体脂肪低減作用、ノコギリヤシ油との併用による前立腺肥大抑制効果等が明らかとなっている。
【0004】
セサミン類とγ−オリザノールとの組合せに関しては、セサミン類を再結晶させる際の溶剤として米胚芽油を用いる旨を記載する文献が存在する。(特許文献4)
【特許文献1】特開平11−269456号公報
【特許文献2】特開平5−58902号公報
【特許文献3】特許第3512196号
【特許文献4】WO2007/037385
【非特許文献1】Geriant.med. 19, 1812-1840, 1981
【非特許文献1】並木ら、「ゴマその科学と機能性」、丸善プラネット株式会社(1998)
【非特許文献2】Fukuda, Y., et al., J. Am. Oil. Chem. Soc., 63, 1027-1031 (1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、セサミン類については種々の生理作用が報告されているが、セサミン類と併用することによりセサミン類の生理作用を増強することができる物質についてはほとんど報告がない。
【0006】
本発明は、生理作用が増強されたセサミン類配合組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、セサミン類を有効成分として含む、高い生理作用を有する剤を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、セサミン類とともにγ−オリザノールを併用することで、セサミン類の生理作用、例えば、抗疲労作用について、セサミン類単独の作用とγ-オリザノール単独の作用とから予想される範囲を超えて顕著に高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は下記の通りの飲食物を含む組成物に関するものである。
1.セサミン類と、γ−オリザノールとを含有する組成物;
2.セサミン類の総量1に対して、γ−オリザノールの総量の割合(重量比)が0.4以上である、1記載の組成物;
3.セサミン類の含量が、組成物全重量に対して1重量%以上である、1または2記載の組成物;
4.セサミン類が、セサミンおよび/またはエピセサミンである1〜3のいずれかに記載の組成物;
5.γ−オリザノールが、米胚芽油として配合される、1〜4のいずれかに記載の組成物;
6.経口用である、1〜5のいずれかに記載の組成物;
7.飲食物である、1〜6のいずれかに記載の組成物;
8.セサミン類とγ−オリザノールとを有効成分として含有する抗疲労剤。
【発明の効果】
【0009】
セサミン類とγ-オリザノールとを配合することにより、組成物の生理作用、例えば抗疲労作用がセサミン類単独およびγ-オリザノール単独から予想される範囲を超えて相乗的に高まり、優れた生理作用を有する組成物が得られる。
【0010】
また、本発明の抗疲労剤は、優れた疲労軽減、疲労回復の促進作用を有し、しかも、胡麻由来の成分であるセサミン類や、米由来の成分であるγ−オリザノールは、長年に渡って飲食品として摂取されている安全な物質であり、中期、長期にわたって経口摂取しても安全であることから、本発明の組成物は、機能性食品又は医薬組成物として、広く適用可能である。
【発明の実施するための最良の形態】
【0011】
(セサミン類)
本発明のセサミン類とは、セサミン及びその類縁体を含む一連の化合物の総称である。前記のセサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がある。セサミン類の具体例としては、セサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン等を例示でき、これらの立体異性体又はラセミ体を単独で、または混合して使用することができるが、本発明においては、セサミン及び/又はエピセサミンを好適に用いることができる。また、セサミン類の代謝体(例えば、特開2001−139579号公報に記載)も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。
【0012】
本発明に用いるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミンを選択した場合には、通常、ゴマ油から公知の方法(例えば、特開平4−9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または濃縮物という)を用いることもできるが、市販のゴマ油(液状)をそのまま用いることもできる。しかしながら、ゴマ油を用いた場合には、セサミン含量が低い(通常、1%未満)ため、セサミンの生理作用を得るのに必要なセサミンを配合しようとすると、処方されるγ-オリザノール含有組成物の単位投与当りの体積が大きくなり過ぎるため、摂取に不都合を生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合は、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり過ぎて摂取に支障が生じる。したがって、摂取量が少なくてよいという観点からもゴマ油からのセサミン抽出物(又はセサミン濃縮物)を用いることが好ましい。なお、ゴマ油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、セサミン抽出物(又はセサミン濃縮物)を公知の手段、例えば活性白土処理等により無味無臭としてもよい。
【0013】
このように、セサミン類としては、ゴマ油等の食品由来の素材から抽出及び/又は精製によりセサミン類の含有濃度を向上させて得られるセサミン類濃縮物を用いるのが好ましい。濃縮の度合いは、用いるセサミン類の種類や配合する組成物の形態により適宜設定すればよいが、通常、セサミン類が総量で1重量%以上となるように濃縮されたセサミン類濃縮物を用いるのが好ましい。セサミン類濃縮物中のセサミン類総含量は、20重量%以上がより好ましく、さらに50重量%以上が好ましく、さらにまた70重量%以上が好ましく、90重量%以上まで濃縮(精製)されたものが最適である。
【0014】
(γ−オリザノール)
セサミン類の生理作用を増強しうるのに有効な成分はγ-オリザノールである。γ−オリザノールには血中中性脂質低下作用(Geriant.med. 19, 1812-1840, 1981)や、内分泌・自律神経調節作用(日薬理誌、75(4)、399-403, 1979)、胃粘膜保護作用(日薬理誌、84(6)、537-542, 1984)などの様々な生理作用が知られており、精製されたものは高脂血症治療剤や心身症(更年期障害、過敏性大腸症候群)治療剤などの医薬品として認可されている。本発明におけるγ−オリザノールは、フェルラ酸にトリテルペンアルコールまたはステロールがエステル結合したものの総称をさす。前記のトリテルペンアルコールとしては、例えば、シクロアルテノール、24-メチレンシクロアルタノール、シクロアルタノール、シクロプラノール等を挙げることができ、ステロールとしては、カンペステロール、スチグマステロール、β-シトステロール等を例示することができる。本発明においては、これらの化合物を単独で用いることもできるし、混合物として使用することもできる。γ-オリザノールの定量法としては、UV吸光度法やHPLC法等の公知の方法を適宜用いることができる。例えば、「医薬部外品原料規格」や「化学的合成品以外の食品添加物 自主規格」に記載されている通り、サンプルをヘプタンに溶解し、315nm付近における吸収の極大波長で吸光度を測定することにより、定量することができる。
【0015】
本発明に用いるγ−オリザノールは、その由来や形態、製造方法等によって、何ら制限されるものではない。γ−オリザノールは、玄米、コーン、大麦等に含まれることが知られているが、本発明においては、特に玄米から抽出された米糠油や米胚芽油を用いることが好ましい。市販の米糠油や米胚芽油等をそのまま用いることもできるが、上述のとおり、セサミン類の生理作用を増強する有効成分はγ-オリザノールであるから、γ-オリザノール含量の高いものを用いるのが好ましく、例えば米糠油や米胚芽油等からのγ−オリザノール濃縮物を用いることが好ましい。γ−オリザノールの濃縮物を用いる場合、γ−オリザノール濃縮物中のγ−オリザノール含量としては、総量として、1重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。このようなγ−オリザノールの濃縮物は、工業的には、米糠油や米胚芽油から有機溶剤で抽出、あるいは樹脂処理後に精製して得られており、例えば、米胚芽油ガンマ30(築野食品工業株式会社)や、γ-オリザノール、オリザドリムV−50、コメヌカ油、玄米胚芽油(オリザ油化株式会社)として入手可能である。
【0016】
(セサミン類とγ−オリザノールとを含有する組成物)
本発明の組成物は、上記のセサミン類とγ-オリザノールとを併用することにより、セサミン類の生理作用の相乗的な増強が得られる。また、本発明の組成物は高い抗疲労作用を有する健康食品として利用することができる。
【0017】
本発明におけるセサミン類とγ−オリザノールとを含有する組成物の摂取形態は特に制限されないが、本発明においては健康増進を図ることを目的として摂取する場合、経口用組成物として摂取することが好ましい。本発明における経口用組成物とは、医薬用組成物または飲食物が含まれる。
【0018】
本発明のセサミン類とγ-オリザノールとを含有する組成物中におけるセサミン類の総配合割合は1重量%以上であり、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。組成物中におけるγ-オリザノールの総配合割合は、上記のセサミン類の生理作用の相乗的な増強効果が発揮される範囲であれば特に制限されず、組成物の形態や対象となる病態等の条件によって適宜選択すればよいが、組成物全量に対し、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%で配合するのがよい。
【0019】
通常、セサミン類は、成人1日当たり1〜200mgとなるように摂取することが好ましく、好ましくは5〜100mg程度となるように配合する。また、通常、γ−オリザノールは、成人1日当たり1〜200mgとなるよう摂取することが好ましく、より好ましくは5〜100mg程度である。
【0020】
本発明の組成物には、組成物の全重量にもよるが、例えばセサミン類を1〜100mg、好ましくは1〜50mg、より好ましくは3〜30mg程度の量で配合することができる。また、γ−オリザノールを1〜100mg、好ましくは1〜60mg、より好ましくは3〜30mg程度の量で配合することができる。一般的に、γ−オリザノールを200mgより多く配合しても、抗疲労作用の増強の相乗効果が期待できないので経済的に不利である。
【0021】
以下に詳細に説明するが、本発明者らによる疲労動物モデルを用いた実験では、セサミン類50mg/kg(動物モデルの体重1kg当りのセサミン類の量(mg))に加えて米胚芽油200mg/kg(γ−オリザノールとして60mg/kg)を投与することにより、セサミン類50mg/kgのみの投与の場合およびγ−オリザノール60mg/kgのみの投与の場合に比べて、抗疲労作用が顕著に増強された。セサミン類50mg/kgに加えて米胚芽油50mg/kg(γ−オリザノールとして15mg/kg)を投与した場合には、抗疲労作用の増強が得られなかった(図1参照)。すなわち、セサミン類の生理作用の相乗的な増強効果を発揮しうるγ−オリザノールのセサミン類に対する特定比率とは、セサミンの総重量を1として、γ−オリザノールを0.4以上、好ましくは1.2以上である。
【0022】
本発明の組成物は、その効果を損なわない限り、セサミン類およびγ−オリザノールの他に、任意の所望成分を配合してもよい。例えば、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、ミネラル類、ホルモン、栄養成分、香料などの生理活性成分のほか、製剤化において配合される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等を適宜配合することができる。
【0023】
本発明の組成物は、セサミン類とγ−オリザノールとを配合することにより相乗的に増強された抗疲労作用が得られるから、健康食品としても好適に利用できる。本明細書における健康食品としては、例えばカプセル剤や錠剤のように、本発明のセサミン類とγ−オリザノールとを含有する組成物そのものを有効成分とする製剤又は食品、ならびに一般の食品に上記本発明組成物を1つの成分として配合して、生体に対する抗疲労作用等の種々の機能をその食品に付加してなる機能性食品(特定保健用食品や条件付き特定保健用食品が含まれる)を挙げることができる。さらに、生体の疲労を軽減する旨の表示または疲労回復を促進する旨の表示を付してなる抗疲労作用を有することを特徴とする食品等も本発明の組成物に含まれる。
【0024】
セサミン類とγ−オリザノールとを含有する健康食品の形態は特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;溶液状、乳液状、分散液状等の液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製される。
【0025】
本発明の組成物は医薬組成物として利用することもできる。その場合には、例えば、本発明の組成物を液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、または丸剤等の剤形へと調製して経口投与してもよいし、注射剤等へと調製して投与してもよい。投与形態は、病態やその進行状況、その他の条件によって適宜選択することができる。
(抗疲労作用及び抗疲労剤)
本発明の組成物は、ヒトおよび非ヒト動物の抗疲労剤としても有用なものである。ここで、非ヒト動物とは、抗疲労の対象となる動物をいうが、中でも本発明の抗疲労剤は、疲労を知覚するヒト、産業動物、ペットおよび実験動物に用いられ、特にヒトに対して好適に用いられる。ここで、産業動物とは、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等の家畜や競争馬、猟犬等を表し、ペットとはイヌ、ネコ、マーモセット、ハムスター等を表し、実験動物とはマウス、ラット、モルモット、ビーグル犬、ミニブタ、アカゲザル、カニクイザル等の医学、生物学、農学、薬学等の分野で研究に供用される動物を表す。本発明の抗疲労剤は、疲労を知覚するヒト、産業動物、ペットおよび実験動物に用いられ、特にヒトに対して好適に用いられる。
【0026】
疲労とは、身体的あるいは精神的負荷を連続して与えたときにみられる一時的な身体的および精神的パフォーマンスの低下現象であり、パフォーマンスの低下は、身体的および精神的作業能力の質的あるいは量的な低下を意味する。また、本発明の「疲労」には、慢性疲労症候群や過労死をも含まれる。
【0027】
本発明の抗疲労剤とは、上記疲労を減弱させる作用や疲労を回復させる作用をいい、具体的には、運動や作用した部位(脳を含む)の働きの持続時間を向上させること、および同じ運動量や作用量での疲労物質の増加を抑制すること(持久力向上・体力増強)、運動や作用した部位が疲労していないにもかかわらず脳や神経などが疲労感知状態になっていることを改善すること、ならびに運動や作用した部位の疲労状態を通常状態に回復することを促進する効果をいう。
【0028】
また、本発明の抗疲労剤が目的とする慢性疲労症候群とは、日常生活に支障を来すほどの長期的な全身疲労感、倦怠感、微熱、リンパ節腫脹、筋肉痛、関節痛、精神神経症状などの基本的な症状を意味する。本発明の抗疲労剤は、この慢性疲労症候群を処理、すなわち慢性疲労症候群の各症状を緩和し、正常な状態に移行させることができる。さらに、本発明の抗疲労剤が目的とする過労死とは、重度の過労状態にあり、身体的活力を保つことができないにも関わらず、疲労を十分に感じることができなくなり、その結果、脳血管疾患や心疾患を発症して永久的労働不能や死亡に至った状態を意味する。本発明の抗疲労剤は、慢性疲労症候群を処置することができ、それにより過労死を予防しうるものである。
【0029】
本発明の抗疲労作用、すなわち「抗疲労剤」としての効果は、例えば水浸断眠試験における遊泳時間の測定のような試験により確認することができる。水浸飼育のように、十分な睡眠や休息姿勢をとることができず、肉体的にも精神的にも休息できない環境で飼育されたマウスを用い、おもりを負荷させた状態で遊泳させ、限界水泳時間(例えば10秒以上鼻が水没した場合、その水没する時までの時間、又は、最終的に(再浮上しなくなるまで)鼻先が水没した場合、その水没する時までの時間)を測定することにより、その疲労度を確認するものである。この動物モデルは肉体的及び精神的疲労モデルであるから、被験物質を投与することにより遊泳時間が延長されれば、肉体的及び精神的疲労やそれに伴う筋肉痛等の苦痛を予防または改善できたこと、体力が増強され疲労困憊に至るまでの時間が延長されたこと、疲労状態のもとで身体的活力が維持されたこと等、疲労に対する抵抗性があることが確認される。
【0030】
本発明の抗疲労剤は、これを摂取することにより疲れにくくなり、また疲労回復にも効果がある。すなわち、スポーツなどの筋肉運動に際して肉体疲労を感じたときや計算作業等の連続作業に際して精神疲労を感じたときに摂取して疲労の回復を図ることができるし、予め摂取してから労働、スポーツなどを行うと疲労を予防することもできる。また、スポーツを行う前や途中で摂取することにより、持久力向上が期待できる。さらに、日常的に摂取することにより、精神的な疲労やそれに伴う疾患をも予防することができる。
【0031】
本発明の抗疲労剤の投与形態は、液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、丸剤等の形態で経口投与してもよいし、注射剤等の形態で投与してもよく、病態やその進行状況、その他の条件によって適宜選択することができる。
【0032】
なお、セサミン類とγ−オリザノールを含有する製剤を個別に調製し、それらをほぼ同時に、または、一方の製剤を服用後、その効き目が持続している間に他方の製剤を服用すれば、本発明の意図するセサミン類の抗疲労作用の増強作用が得られる。よって、セサミン類含有製剤とγ−オリザノール含有製剤のキット等も本発明の抗疲労剤の範囲に含まれる。
【実施例】
【0033】
以下、試験例および実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.セサミン類とγ−オリザノールによる抗疲労作用
被験物質となるセサミン類およびγ−オリザノールとしては、セサミン/エピセサミン混合物(セサミン:エピセサミン(重量比)=5:5)及び米胚芽油(米胚芽油ガンマ30:γ−オリザノール30%含有、築野食品工業株式会社)を用いた。
【0034】
水浸断眠試験により、疲労に対する効果を評価した。評価は、Tanakaらの方法(Neuroscience, Let.352, 159−162, 2003)を一部改変した方法で実施した。Balb/c系雄性マウス(8週齢)を日本エスエルシー株式会社より購入し、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。平均体重が均等になるように1群10匹で表1のようにマウスを5群に群分けした。そのうち、4群は水浸断眠ストレス群として、床敷(ペーパーチップ)のかわりに水温23℃の水道水を水深7mmになるように飼育ケージに入れて飼育することにより、マウスを水浸断眠させた。一方、対照群のマウスは、床敷(ペーパーチップ)を飼育ケージに入れて飼育した。米胚芽油ガンマ30、セサミン類共にオリブ油に溶解し、被験サンプルとした。2日間の水浸断眠中にそれぞれの被検サンプルを1日1回、2日間強制経口投与した。なお、表1における「米胚芽油ガンマ30」の投与量50mg/kg、200mg/kgは、γ−オリザノールとしてそれぞれ15mg/kg、60mg/kgに相当する。
【0035】
飼育2日後、マウスの尾に体重の8%相当の重りをつけて遊泳させ、限界水泳時間(10秒以上鼻が水没した場合、その水没する時までの時間)を測定した。水浸飼育群(水浸断眠ストレス群)のマウスは通常飼育群のマウスよりも遊泳時間が短縮するが、被検サンプル投与群のマウスによって遊泳時間の短縮をどれだけ抑制できるかにより、疲労に対する効果を判定した。
【0036】
【表1】

【0037】
結果を図1に示す。図1より明らかなとおり、水浸飼育対照群の遊泳時間は、通常飼育対照群にくらべて短縮した。被験サンプルとしてセサミン類を50mg/kg投与した群で遊泳時間の短縮抑制効果がみられた。一方、米胚芽油200mg/kg(γ-オリザノールとして60mg/kg)だけを投与した群では、遊泳時間の短縮抑制効果が認められなかった。しかし、セサミン類50mg/kgと米胚芽油ガンマら米胚芽油200mg/kgとを投与した群においては、セサミン類単独での短縮抑制効果が顕著に増強された。以上のことから本発明の組成物に相乗的な抗疲労作用があることが確認された。
【0038】
実施例2.処方例
(製剤例1)顆粒剤
セサミン 10g
γ‐オリザノール含有米糠抽出物(50%含有) 10g
酢酸トコフェロール 50g
無水ケイ酸 20g
トウモロコシデンプン 110g
以上の粉体を均一に混合した後に10%ハイドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100mlを加え、常法通り練和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得た。
【0039】
(製剤例2)カプセル剤
ゼラチン 60.0%
グリセリン 30.0%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒360mgのソフトカプセルを得た。
セサミン 3.5mg
グリセリン脂肪酸エステル 15.0mg
ミツロウ 15.0mg
γ‐オリザノール高含有油(30%含有) 11.5mg
小麦胚芽油 245mg
(製剤例3)錠剤
セサミン 10g
γ‐オリザノール 100g
デンプン 172g
ショ糖脂肪酸エステル 9.0g
酸化ケイ素 9.0g
これらを混合し、単発式打錠機にて打錠して経9mm、重量300mgの錠剤を製造した。
【0040】
(製剤例4)ドリンク剤
呈味料: DL−酒石酸ナトリウム 0.1g
コハク酸 0.009g
甘味料:液糖 800g
酸味料:クエン酸 12g
ビタミン:ビタミンC 10g
セサミン 1g
γ‐オリザノール 2g
ビタミンE 10g
シクロデキストリン 5g
乳化剤 10g
香料 15ml
塩化カリウム 1g
硫酸マグネシウム 0.5g
上記成分を配合し、水を加えて10リットルとした。このドリンク剤は、1回あたり約100mlを飲用する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、水浸断眠ストレス下での遊泳時間に対するセサミン類及び/又はγ−オリザノールの影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン類と、γ−オリザノールとを含有する組成物。
【請求項2】
セサミン類の総量1に対して、γ−オリザノールの総量の割合(重量比)が0.4以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
セサミン類の含量が、組成物全重量に対して1重量%以上である、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
セサミン類が、セサミンおよび/またはエピセサミンである請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
γ−オリザノールが、米胚芽油として配合される、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
経口用である請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
飲食物である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
セサミン類とγ−オリザノールとを有効成分として含有する抗疲労剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−73749(P2009−73749A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243144(P2007−243144)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】