説明

セメント混和材及びセメント組成物

【課題】少ない添加率で効果的にアルカリシリカ反応を抑制できるため経済性に富み、また、塩害の抑制にも効果的であるセメント混和材及びセメント組成物を提供する。
【解決手段】リチウム型ゼオライトとカルシウムアルミネート化合物を含有してなるセメント混和材であり、前記リチウム型ゼオライトが、EDI型、ABW型あるいはこれらの加熱処理物である前記セメント混和材であり、前記リチウム型ゼオライトのリチウムの含有量が、LiO換算で5%以上である前記セメント混和材であり、前記リチウム型ゼオライトのNaOとKOの含有量の合計が、0.5%未満である前記セメント混和材であり、前記カルシウムアルミネート化合物10〜90部、リチウム型ゼオライト10〜90部である前記セメント混和材であり、セメントと、前記セメント混和材とを含有するセメント組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界で使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリートの耐久性について、この分野の技術者のみならず、一般の人々からも大きな関心が寄せられるようになっている。モルタルやコンクリートの劣化要因は多様である。その中のひとつ、骨材の品質に由来するアルカリシリカ反応、いわゆるアルカリ骨材反応はコンクリートの癌とも呼ばれ、有効な抑制方法が見いだされていないのが現状である。
【0003】
アルカリシリカ反応を抑制する方法としては、アルカリ骨材反応抑制剤を添加する方法やコンクリートに含浸する方法、塗布する方法が提案されている(特許文献1〜特許文献5)。
【0004】
しかしながら、従来のアルカリ骨材反応抑制剤は効果が十分でない上に、コンクリートに混和するため、使用量が多く、経済性の観点から実用的ではなかった。
【0005】
また、コンクリート構造物の劣化要因の1つとして、塩化物イオンの存在によって鉄筋腐食が顕在化する塩害があり、その塩害を抑制するための方法として、コンクリート構造物に塩化物イオン浸透抵抗性を与える手法がある。
【0006】
コンクリート硬化体の内部への塩化物イオン浸透を抑制し、塩化物イオン浸透抵抗性を与える方法としては、水/セメント比を小さくする方法が知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、水/セメント比を小さくする方法では、施工性が損なわれるだけでなく、抜本的な対策とはならないという課題があった。
また、セメントコンクリートに早強性を付与し、かつ、鉄筋の腐食を防止するなどの目的で、CaO・2Alとセッコウを主体とし、ブレーン比表面積値が8000cm/gの微粉を含有するセメント混和材を使用する方法(特許文献6参照)や、CaO/Alモル比が0.3〜0.7のカルシウムアルミネートを含有するセメント混和材を用いて塩化物イオン浸透抵抗性を向上させる方法(特許文献7参照)が提案されている。
【0007】
一方、シリカフュームやフライアッシュ等の活性シリカは比較的少ない添加量で初期強度を低下させないで塩素イオンの浸透抵抗性を向上させることができる。しかしながら、活性シリカを用いた場合でもポゾラン反応は長期にわたって起こるため、若材齢で海水に浸漬されると塩素イオンの浸透抵抗性が低下し、コンクリートが劣化するという課題があった。
【0008】
さらに、鉄筋の防錆を目的として、亜硝酸塩や亜硝酸型ハイドロカルマイトを添加する方法も提案されている(特許文献8〜特許文献10参照)。しかしながら、亜硝酸塩は、防錆効果を発揮するものの、外部から侵入する塩化物イオンの遮蔽効果を発揮するものではなく、また、亜硝酸型ハイドロカルマイトは、防錆効果を発揮するものの、これを混和したセメント硬化体が多孔質になりやすく、むしろ、外部からの塩化物イオンの浸透を許容しやすいという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−278151号公報
【特許文献2】特開平10−167781号公報
【特許文献3】特開昭63−274644号公報
【特許文献4】特開2006−62892号公報
【特許文献5】特開2006−89334号公報
【特許文献6】特開昭47−035020号公報
【特許文献7】特開2005−104828号公報
【特許文献8】特開昭53−003423号公報
【特許文献9】特開平01−103970号公報
【特許文献10】特開平04−154648号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】岸谷孝一、西澤紀昭他編、「コンクリートの耐久性シリーズ、塩害(I)」、技報堂出版、pp.49−54、1986年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、少ない添加率で効果的にアルカリシリカ反応を抑制できるため経済性に富み、また、塩害の抑制にも効果的であるセメント混和材及びセメント組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、(1)リチウム型ゼオライトとカルシウムアルミネート化合物を含有してなるセメント混和材、(2)リチウム型ゼオライトが、EDI型、ABW型あるいはこれらの加熱処理物である(1)のセメント混和材、(3)リチウム型ゼオライトのリチウムの含有量が、LiO換算で5%以上である(1)または(2)のセメント混和材、(4)リチウム型ゼオライトのNaOとKOの含有量の合計が、0.5%未満である(1)〜(3)のいずれかのセメント混和材、(5)カルシウムアルミネート化合物10〜90部、リチウム型ゼオライト10〜90部である(1)〜(4)のいずれかのセメント混和材、(6)カルシウムアルミネート化合物が、CaO/Alモル比0.15〜0.7、ブレーン比表面積値2000〜7000cm/gである(1)〜(5)のいずれかのセメント混和材、(7)セメントと、(1)〜(6)のいずれかのセメント混和材とを含有するセメント組成物、である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセメント混和材及びセメント組成物は、少ない添加率で効果的にアルカリシリカ反応を抑制できるため経済性に富み、また、塩害の抑制にも効果的であるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準で示す。
【0015】
リチウム型ゼオライトについて説明する。
リチウム型ゼオライトの中でも、Si/Al原子比が1であるリチウム型ゼオライトが、アルカリシリカ反応の抑制効果が大きいことから好ましい。Si/Al原子比が1であるリチウム型ゼオライトとしては、EDI型、ABW型及びLTA型が存在する。
このうち、EDI型とABW型はアロフェンやカオリナイトを原料とし、水酸化リチウム水溶液を100℃未満で作用させることにより簡便に合成できる。一方、LTAの合成は100℃を超える加圧条件下での水熱処理が必要であり、また、直接的にリチウムを含有するLTAを合成することが難しく、一般的には、ナトリウムを含有するA型ゼオライトを水熱合成により得た後、イオン交換反応によりリチウムを担持させることが行われている。このため、ナトリウムを完全にリチウムに置換することが難しく、LTAでは十分なアルカリシリカ反応の抑制効果が得られない場合もある。したがって、本発明では、EDI型とABW型を選定することが好ましい。
【0016】
リチウム型ゼオライトの合成方法としては、これまでに、シリカゾルとアルミナゾルとを出発原料とする方法(T.Matsumoto et al., Journal of the European Ceramic Society,26,pp.455−458, 2006)が知られている。また、アロフェンを原料として、水酸化リチウムと反応させる方法も知られている(興野雄亮ほか、無機マテリアル学会第112回学術講演会講演要旨集、pp.8−9、2006)。
【0017】
本発明では、いかなる方法で合成されたリチウム型ゼオライトも使用可能である。本発明のリチウム型ゼオライトには、リチウム型ゼオライトを加熱処理したものも含まれる。
加熱処理温度は、ゼオライトにより異なる。例えば、EDI型の場合は、200〜700℃であることが好ましい。リチウム含有EDI型ゼオライトを200〜700℃で加熱処理すると、非晶質物質に変化する。すなわち、200℃まではEDI型ゼオライトの結晶構造を保ち、200℃以上になると結晶から非晶質に変化する。そして、700℃までは非晶質の状態にあるが、700℃を超えると結晶化してユークリプタイトへと変化する。
ABW型の場合は300〜650℃が好ましい。リチウムを含有するABW型ゼオライトを300℃〜650℃で加熱処理すると、無水のABW型ゼオライトに変化する。すなわち、300℃まではABW型ゼオライトの結晶構造を保ち、300℃以上になると、全く異なる結晶構造に変化して無水のABW型ゼオライトになる。そして、650℃までは無水のABW型ゼオライトの状態にあるが、650℃を超えるとγ−ユークリプタイトへと変化する。そして、さらに加熱すると、900〜1000℃でβ−ユークリプタイトへと変化する。
加熱処理条件が上記の温度範囲にないと、十分なアルカリ−シリカ反応による膨張抑制効果や塩害抑制効果が得られない場合がある。
【0018】
本発明で言う加熱処理とは、特に限定されるものではないが、通常、乾燥や焼成などの処理を行うことを意味する。その具体的方法としては、例えば、アロフェンを水酸化リチウム水溶液中で反応させてリチウム型ゼオライトを生成した後、乾燥操作の段階で、所定の加熱処理を行っても良いし、一度、200℃未満の条件で乾燥した後に、再度、所定の条件で熱処理を行っても良い。加熱処理の時間は、特に限定されるものではないが、5分から24時間程度が好ましく、10分から12時間がより好ましい。5分未満ではEDI型ゼオライトが非晶質物質に変化する反応や、ABW型ゼオライトが無水ABWに変化する反応が十分に進行しない場合があり、24時間を超えて熱処理してもエネルギーコストの無駄になる場合がある。
乾燥装置としては、特に限定されるものではなく、ドラムドライヤー、棚段乾燥機、筒型乾燥機、ロータリーキルン、電気炉などを使用することができる。
【0019】
本発明のリチウム型ゼオライトのリチウム含有量は、特に限定されるものではないが、通常、LiO換算で5%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。リチウム含有量は、Si/Alモル比が1となる理論値から担持できる最大量が13.5%と算出できる。リチウム含有量が5%未満では、十分なアルカリシリカ反応による膨張の抑制効果が得られない場合がある。
【0020】
本発明のリチウム型ゼオライトのナトリウムやカリウムの含有量は特に限定されるものではないが、通常、NaOとKOの合計量が0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下がより好ましい。NaOとKOの合計量が0.5%を超えると、十分なアルカリ−シリカ反応による膨張の抑制効果が得られない場合がある。
【0021】
本発明のリチウム型ゼオライトの比表面積は、一義的に決定されるものではなく、特に限定されるものではないが、通常、BET比表面積で2〜200m/gの範囲にある。
【0022】
本発明で使用するカルシウムアルミネート化合物(以下、CA化合物という)とは、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や電気炉での溶融等の熱処理をして得られる、CaOとAlを主成分とする化合物を総称するものであり、CA化合物のCaO/Alモル比は0.15〜0.7であり、0.4〜0.6が好ましい。CaO/Alモル比が0.15未満では、塩化物イオンの遮蔽効果が充分に得られない場合があり、逆に、0.7を超えると急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。CA化合物に、例えば、SiOやRO(Rはアルカリ金属)が含有していても、本発明の目的を損なわない限り使用可能である。
【0023】
CA化合物の粉末度は、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で2000〜7000cm/gが好ましく、3000〜6000cm/gがより好ましく、4000〜5000cm/gが最も好ましい。CA化合物が粗粒では充分な塩化物イオンの遮蔽効果が得られない場合があり、7000cm/gを超える微粉では急硬性が現れるようになり、可使時間が確保できない場合がある。
【0024】
セメント混和材中のリチウム型ゼオライトとCA化合物の配合割合は、特に限定されるものではないが、通常、リチウム型ゼオライトとCA化合物の合計100部中、リチウム型ゼオライト10〜90部が好ましく、20〜80部がより好ましい。CA化合物は10〜90部が好ましく、20〜80部がより好ましい。リチウム型ゼオライトやCA化合物の配合割合が前記範囲にないと、十分なアルカリシリカ反応の抑制効果や塩害抑制効果が得られない場合がある。
【0025】
本発明のセメント混和材の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、1〜15部が好ましく、3〜10部がより好ましい。1部未満では、本発明の効果、すなわち、アルカリシリカ反応による膨張の抑制効果や塩害の抑制効果が十分に得られない場合があり、15部を超えてもさらなる効果の増進が期待できない。また、強度発現性が低下する場合がある。
【0026】
セメントは、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、またはシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、ならびに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)などのポルトランドセメントが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が使用可能である。
【0027】
本発明のセメント混和材やセメント組成物はそれぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
【0028】
本発明では、砂などの細骨材、砂利などの粗骨材、急硬材、減水剤やAE減水剤や高性能減水剤や高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、凝結調整剤、ベントナイトなどの粘土鉱物やハイドロタルサイトなどのアニオン交換体などの各種添加剤、高炉水砕スラグ微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末や石灰石微粉末やフライアッシュやシリカフュームなどの混和材料などからなる群のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【実施例】
【0029】
「実験例1」
表1に示す各種のリチウム型ゼオライト50部と、各種のCA化合物50部を配合してセメント混和材を調製した。セメントとセメント混和材の合計100部中、セメント混和材を7部配合しセメント組成物を調製し、さらに、砂を225部、水を50部配合してモルタルを作製した。このモルタルを用いて、アルカリシリカ反応性試験を実施した。また、疑似海水に浸漬した際の塩化物イオンの浸透深さや、曲げ強度の測定も併せて行った。また、比較例として市販のアルカリシリカ反応抑制剤を同量使用した場合についても試験を行った。その結果を表1に示す。
【0030】
<使用材料>
セメント:市販普通ポルトランドセメント
砂:サヌカイト質輝石安山岩、JIS A 1145(化学法)に準じて測定。溶解シリカ量が750mmol/l、アルカリ濃度減少量が200mmol/lで、無害でないものと判定する。
リチウム型ゼオライトA:リチウムを含有するEDI型ゼオライト(Li−EDI)、LiO含有量7.1%、BET比表面積50m/g。
リチウム型ゼオライトB:リチウムを含有するABW型ゼオライト(Li−ABW)、LiO含有量9.0%、BET比表面積40m/g。
リチウム型ゼオライトC:リチウムを含有するEDI型ゼオライト(Li−EDI)を400℃で加熱処理して得られた非晶質物質、LiO含有量9.0%、BET比表面積30m/g。
リチウム型ゼオライトD:リチウムを含有するABW型ゼオライト(Li−ABW)を400℃で加熱処理して得られた無水のLi−ABW、LiO含有量10.8%、BET比表面積20m/g。
市販のアルカリシリカ反応抑制剤(1):Ca型ゼオライト
市販のアルカリシリカ反応抑制剤(2):亜硝酸リチウム水溶液(濃度30%)
【0031】
CA化合物イ:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定の割合で配合し、電気炉で1650℃焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.1、ブレーン値4000cm/g
CA化合物ロ:CA化合物Aと同様に合成、CaO/Alモル比0.15、ブレーン値4000cm/g
CA化合物ハ:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定の割合で配合し、電気炉で1550℃焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.4、ブレーン値4000cm/g
CA化合物ニ:CA化合物ハと同様に合成、CaO/Alモル比0.5、ブレーン値4000cm/g
CA化合物ホ:CA化合物ハと同様に合成、CaO/Alモル比0.6、ブレーン値4000cm/g
CA化合物ヘ:試薬1級の炭酸カルシウムと試薬1級の酸化アルミニウムを所定の割合で配合し、電気炉で1450℃焼成した後、徐冷して合成。CaO/Alモル比0.7、ブレーン値4000cm/g
CA化合物ト:CA化合物Fと同様に合成、CaO/Alモル比0.9、ブレーン値4000cm/g
膨張材:膨張物質、遊離石灰−カルシウムシリケート(3CaO・SiO)−カルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al・Fe)−カルシウムアルミネート(3CaO・Al)−無水セッコウ系、遊離石灰含有量55%、カルシウムシリケート含有量25%、カルシウムアルミノフェライト含有量5%、カルシウムアルミネート含有量5%、無水セッコウ含有量10%、ブレーン値3000cm/g、市販品
水:水道水
【0032】
<測定方法>
アルカリシリカ反応性試験(モルタルバー法):JIS A 1146に準じて測定。0.100%以上の膨張を示したものは、無害でないと判定する。
化学組成:JIS R 5201に準じて測定。
塩化物イオンの浸透深さ:材齢28日まで20℃の水中養生を行った後、疑似海水に供試体を4週間浸漬し、塩化物イオンの浸透深さを調べた。塩化物イオンの浸透深さは硝酸銀−フルオロセイン法にて確認した。
曲げ強度:JIS R 5201に準じて測定した。
【0033】
<リチウム型ゼオライトの合成>
アロフェンと水酸化リチウムを原料として水中で反応させてリチウム型ゼオライトを合成した。この際、LiO/Alモル比を2.0とし、SiO/Alモル比は1.73とし、反応温度を60または90℃とし、反応時間を24時間とし、攪拌を行いながら反応させた。得られた合成物を固液分離後、60℃の温水で洗浄し、70℃で乾燥した。アロフェンは10kgを使用し、水酸化リチウムは水に溶解させて使用した。水酸化リチウムの溶液は100kgとした。合成物を粉末X線回折法(XRD)にて同定した結果、反応温度を60℃とした場合にはEDI型ゼオライトであった。また、反応温度が90℃の場合にはABW型ゼオライトであった。
【0034】
<使用材料>
アロフェン:栃木県産のものを水ひ精製したもの、市販品、SiO含有量33.6%、Al含有量33.1%、Fe含有量2.3%、CaO含有量0.4%、MgO含有量0.1%、NaO含有量0.03%、KO含有量0.02%、強熱減量30.1%
水酸化リチウム:市販品
水:水道水
【0035】
【表1】

【0036】
表1から、本発明のセメント混和材を配合したモルタルの膨張率は、何れも0.100%以下を示し無害と判定され、本発明のセメント混和材を配合していない比較例のモルタルの膨張率は、0.100%を超え無害でないと判定される。また、本発明のセメント混和材を配合したモルタルは、塩化物イオン浸透深さが小さく、曲げ強度が高いことが分かる。
【0037】
「実験例2」
リチウム型ゼオライトCとCA化合物ニを使用し、セメント混和材中のリチウム型ゼオライトCとCA化合物の配合割合を表2に示すように変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0038】
【表2】

【0039】
表2より、本発明のセメント混和材を使用した場合には、アルカリシリカ反応による膨張が効果的に抑制されている。また、塩化物イオンの浸透も効果的に抑制されていることが分かる。
【0040】
「実験例3」
セメント混和材として、リチウム型ゼオライトC50部とCA化合物ロ50部からなるセメント混和材を使用し、セメント組成物100部中のセメント混和材の使用量を表3に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0041】
【表3】

【0042】
表3より、本発明のセメント混和材を使用した場合には、アルカリシリカ反応による膨張が効果的に抑制されている。また、塩化物イオンの浸透も効果的に抑制されていることが分かる。その効果は、セメント混和材の使用量が多いとより顕著となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のセメント混和材は、少ない添加率で効果的にアルカリシリカ反応を抑制できるため、経済性に富んでいる。さらに、塩害の抑制にも効果的である。したがって、土木、建築分野で広範に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム型ゼオライトとカルシウムアルミネート化合物を含有してなるセメント混和材。
【請求項2】
リチウム型ゼオライトが、EDI型、ABW型あるいはこれらの加熱処理物であることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和材。
【請求項3】
リチウム型ゼオライトのリチウムの含有量が、LiO換算で5%以上である請求項1または2に記載のセメント混和材。
【請求項4】
リチウム型ゼオライトのNaOとKOの含有量の合計が、0.5%未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメント混和材。
【請求項5】
カルシウムアルミネート化合物10〜90部、リチウム型ゼオライト10〜90部である請求項1〜4のいずれか1項に記載のセメント混和材。
【請求項6】
カルシウムアルミネート化合物が、CaO/Alモル比0.15〜0.7、ブレーン比表面積値2000〜7000cm/gである請求項1〜5のいずれか1項に記載のセメント混和材。
【請求項7】
セメントと、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセメント混和材とを含有するセメント組成物。

【公開番号】特開2012−87000(P2012−87000A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233959(P2010−233959)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】