説明

セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及びその低減装置

【課題】セメント製造設備から排出される排ガス中に含まれる水銀等の揮発性重金属の含有量を効果的に低減するための新規な低減方法及び低減装置を提供する。
【解決手段】排ガス中の重金属低減方法及び装置は、プレヒータ2から排出した燃焼排ガスを二経路に分岐させ、原料粉砕装置6が稼働中の時には、該プレヒータ2から排出した該排ガスを沈降室4、該原料粉砕装置6、集塵装置7、バグフィルタ装置8及び外部排気手段11を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出された該排ガスの一部をセラミックフィルタ装置9を通過させた後、前記原料粉砕装置6の手前で前記沈降室4からの排気と合流させる経路を有し、また原料粉砕装置6が停止中の時にも処理可能なセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及び装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及びその低減装置に関し、詳細にはセメント製造設備から排出される排ガスに含まれる水銀等の揮発性重金属の含有量を低減する方法及び該排ガス中の揮発性重金属を低減する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セメント製造設備においては、建設発生土、汚泥、煤塵、食品系廃棄物、廃プラスチックなどの廃棄物の有効利用を図るため、これらを原燃料として活用しているが、セメント製造原単位に占める廃棄物系原燃料の増加に伴い、これらの廃棄物に含まれる微量成分により、セメント製造設備の操業状態の不安定化やセメント組成がJIS規格から逸脱したりするという問題を生じている。
【0003】
水銀や亜鉛等の重金属を含む産業廃棄物などをセメント原燃料として利用する場合、セメント製造設備内で循環濃縮する重金属、特に揮発性重金属の量が増大する傾向にある。
このように、セメント設備内で水銀や亜鉛等の重金属が蓄積され、セメント製造設備外に、排ガス中に含まれて排気される重金属量が増加し、重大な大気汚染の問題を生じる。
従って、セメント製造設備からの排ガス中の水銀や亜鉛等の重金属を低減する必要が生じている。
【0004】
セメントを製造する際に、該設備内に蓄積する水銀やダイオキシン等の有害物質を蓄積することを防止する方法として、特開2005−97005号公報(特許文献1)には、セメント原料焼成用のロータリーキルンで発生する燃焼排ガスを、該セメント原料を予熱するためのプレヒータ、該セメント原料を乾燥せしめるためのドライヤーおよび集塵機を経て煙突より排出するようにしたセメントの製造方法において、プレヒータより排出された後、煙突に至るまでの間の配管又は装置内を流通する温度350℃以上の排ガスの一部を抽気して、抽気した排ガスよりダストを分離後、ガスを温度100℃以下に冷却して含有する気化物を凝縮せしめる、セメントの製造方法が記載されている。
しかし、かかるセメントの製造方法は、セメント原燃料の持ち込み水銀量と抽気ガスからの水銀除去量がバランスするように、抽気ガス量を決定する必要があるが、廃棄物原燃料の使用量増加により、抽気ガス量が増加傾向にあり、セメント原料粉砕装置の運転時にセメント製造設備の安定運用に支障をきたしている。
【0005】
特開2002−284550号公報(特許文献2)には、セメント製造工程の排ガスからダストを捕集し、この捕集した集塵ダストを、セメント焼成後のクリンカ粉砕工程に投入し、またはクリンカ粉砕物に投入することにより、外部に放出される排ガス中の揮発性金属成分の濃度を低減することを特徴とするセメント製造排ガスの処理方法が記載されている。
しかし、かかる処理方法は、セメント製造設備の電気集塵機灰(EP灰)などの排ガスダストをクリンカ粉砕工程に送り、水銀を低減する方法であるが、セメント原料粉砕装置が稼動している時(ON)と稼動していない時(OFF)、生原料に含まれる有害成分、低沸点成分の吸着等によって、ダスト性状の変動が大きく、セメント品質に与える影響が大きい。
【0006】
更に特開2002−355531号公報(特許文献3)には、セメント製造工程の排ガスから捕集した集塵ダストを加熱炉に導き、集塵ダストに含まれる揮発性金属成分の揮発温度以上に加熱して上記揮発性金属成分をガス化して除去し、揮発性金属成分を除去した集塵ダストをセメント原料の一部に用いることを特徴とするセメント製造排ガスの処理方法が記載されている。
【0007】
また、特開2009−30883号公報(特許文献4)には、重金属を含むセメント原料を予熱するプレヒータと、前記プレヒータにて予熱されたセメント原料を焼成するキルンと、前記プレヒータから排出される排ガス中のダストを捕集する集塵装置と、特定の重金属除去装置と、前記プレヒータ又は前記キルンの窯尻部と前記第1の分離装置とを接続し、前記プレヒータ又は前記キルンの窯尻部から抽気した抽気ガスを前記第1の分離装置に供給するダクトとを備え、前記集塵装置にて捕集されたダストを、前記ダクトの途中に導入し、前記第1の分離装置及び前記第2の分離装置にて分離されたダストを、前記プレヒータに投入することを特徴とするセメント製造システムが記載されている。
【0008】
しかし、上記特許文献3や4に記載された処理方法やシステムは、集塵器の特性により、水銀が高濃度に濃縮したダストが回収できる場合には、水銀低減に必要なダスト処理量が少なく有効な方法であるが、バグフィルタを採用している設備では、ダスト粒子径の選択性がないことから、水銀が高濃度に濃縮した数ミクロンオーダーの濃縮灰を選択的に回収できず、分級・濃縮設備が必要となりシステムが複雑になる。また、電気集塵機(EP)を採用している設備は、電機集塵機(EP)の定格性能付近では、ガス流れ下流側の集塵板で濃縮灰が回収できるが、セメント製造設備の運転負荷を90%以下に低減すると、濃縮灰が殆ど回収できなくなるといった技術的な課題がある。
また、抽気ガス量はセメント製造設備の制約から限られており、水銀の除去量が制約され、セメント製造設備内を循環濃縮する水銀総量を効果的に低減できず、結果として煙突より排出される排ガス中の水銀量を要求する濃度、例えばEUの水銀排出規制値である50μg/m(標準状態)まで迅速に低減させることができないという問題がある。
【0009】
今後、セメント製造設備において廃棄物のリサイクルがますます進められ、廃棄物からの重金属量も増加する傾向にあり、かかる廃棄物系資源の有効利用の拡大を図るためには、重金属含有量の高い産業廃棄物等の原燃料の受入に対応した、新規なセメント製造設備の重金属低減技術の確立が望まれているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−97005号公報
【特許文献2】特開2002−284550号公報
【特許文献3】特開2002−355531号公報
【特許文献4】特開2009−30883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決し、セメント製造設備から排出される排ガス中に含まれる水銀等の揮発性重金属の含有量を効果的に低減するための新規な低減方法及び低減装置を提供することである。
具体的には、セメント製造設備の熱的なバランスや操業負荷に影響されることなく、セメント製造設備内で循環濃縮される水銀等の重金属量の大幅な削減を簡潔に図ることができ、セメント製造設備から排出される排ガス中に含まれる水銀等の揮発性重金属を効果的に低減する新規な方法及び低減装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法は、セメント原料焼成用ロータリーキルンで発生する燃焼排ガスをプレヒータから排出させた後に2経路に分岐させ、
セメント原料粉砕装置が稼働中の時には、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスを、沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置及び外部排気手段を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスの一部を、セラミックフィルタ装置を通過させた後、前記セメント原料粉砕装置の手前で前記沈降室からの排気と合流させて、該セメント原料粉砕装置、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出し、
セメント原料粉砕装置が停止中の時には、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスを、該沈降室、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスの一部を、該セラミックフィルタ装置、重金属除去装置を通過させた後、該バグフィルタの下流で、前記バグフィルタからの排気と合流させて、該外部排気手段より外部に排出する
ことを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法である。
【0013】
好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該原料粉砕装置が停止中の時には、該沈降室から排出した該燃焼排ガスを、スタビライザに通過させた後、該集塵機に導入することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法である。
【0014】
更に好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属除去装置は排ガス洗浄手段を備え、該排ガス洗浄手段においては、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法である。
【0015】
また好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属除去装置は減温手段と重金属吸着手段とを備え、該減温手段では該排ガスを200℃以下に減温し、次いで重金属吸着手段にて該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法である。
【0016】
さらにまた好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属は水銀である。
【0017】
本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置は、セメント原料焼成用ロータリーキルン及びプレヒータを備える原料焼成装置、沈降室、原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置、セラミックフィルタ装置、重金属除去装置及び外部排気手段を備えるとともに、該原料粉砕装置は稼動又は停止し、該原料焼成装置のプレヒータから排出された該燃焼排ガスが分岐する2経路を備え、
該原料粉砕装置が稼動中の時には、該原料焼成装置のプレヒータから排出された該燃焼排ガスが、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置及び外部排気手段を通過して外部から排出されるように、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置および外部排気手段が設置される、原料粉砕装置稼働中の第1の経路を備えるとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスの一部が、セラミックフィルタ装置を通過した後、該第1の経路の前記セメント原料粉砕装置の手前で前記沈降室からの排気と合流するように、セラミックフィルタ装置が設置される、原料粉砕装置稼働中の第2の経路とを備え、
該原料粉砕装置が停止中の時には該原料焼成装置のプレヒータから排出された排ガスが、
該沈降室、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出されるように、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置および外部排気手段が設置される、原料粉砕装置停止中の第1の経路を備えるとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスが、該セラミックフィルタ装置、該重金属除去装置を通過して外部に排出されるように、該セラミックフィルタ装置、該重金属除去装置が設置される、原料粉砕装置停止中の第2の経路とを備えることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置である。
【0018】
好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該原料粉砕装置が停止中の時に、該沈降室から排出した該燃焼排ガスを通過させるスタビライザを、該沈降室と該集塵装置の間に設置することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置である。
【0019】
さらに好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該重金属除去装置は、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去する、排ガス洗浄手段であることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置である。
【0020】
また好適には、上記本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該重金属除去装置は、減温手段と重金属吸着手段とを備え、該排ガスを200℃以下に減温する減温手段と、該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去する重金属吸着手段とを備えることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置である。
またさらに好適には、上記本発明のセメント製造設備からの重金属低減装置において、重金属は水銀である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及び低減装置により、セメント製造設備装置内を循環する水銀等の重金属、特に揮発性重金属の濃度及び量を簡潔に低減することが可能となる。
特に、セメント製造原料に重金属を多量に含む場合であっても、排ガス中に含まれる揮発性重金属を迅速に応答性よく、簡潔に除去することが可能となる。
【0022】
また、本発明の方法及び装置を用いることで、セメント製造設備において、廃棄物系資源の有効利用の拡大を図ることができ、水銀等の重金属の含有量が高い産業廃棄物等の原燃料の受入に対応した、セメント製造設備の確立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のセメント製造設備装置の一例を模式的に表す図である。
【図2】本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属の低減方法を実施するための低減装置の一例を模式的に表す図である。
【図3】従来のセメント製造設備の煙突から排出される水銀濃度の変化の一例を示す図である。
【図4】本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法を適用した場合の煙突から排出される水銀濃度の変化の一例を示す図である。
【図5】従来のセメント製造設備の煙突から排出される水銀濃度の変化の他の一例を示す図である。
【図6】本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法を適用した場合の煙突から排出される水銀濃度の変化の他の一例を示す図である。
【図7】従来のセメント製造設備の煙突から排出される水銀濃度の変化の他の一例を示す図である。
【図8】本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法を適用した場合の煙突から排出される水銀濃度の変化の他の一例を示す図である。
【図9】水銀を燃焼排ガス中に少量しか含まれない場合の従来のセメント製造設備の煙突から排出される水銀濃度の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
従来のセメント製造設備の代表的な一例を図1を参照しながら概略説明する。
図1は、従来のセメント製造設備の代表的な一例を示す図である。
プレヒータ2に供給された、セメント原料は、セメントロータリーキルン1からの排ガスにより予熱され、仮焼炉3での脱炭酸後、ロータリーキルン1に送られ焼成されている。
セメント原燃料に含まれる水銀等の揮発性の重金属は、プレヒータ2内でそのほとんどが揮発し、セメントロータリーキルン1の排ガスとともにプレヒータ2の外に排出される。
一例として、プレヒータ2内の原料の水銀濃度を測定した結果を、次の表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
上記表1より、プレヒータ2中のサイクロン2dにおいて、セメント原料中の水銀の90%が排ガス側に揮発していることがわかる。
かかる排ガス中の水銀等の重金属は、原料ミル等の原料粉砕装置6でセメント原料に吸着し、原料混合・供給装置10内を介して、セメント原料として、プレヒータ2に供給されてセメント製造設備X内を循環濃縮する。
また、排ガス中の水銀等の重金属は、排ガス中のダストに含まれる未燃カーボンにも吸着し、電気集塵機等の集塵装置7でダストと共に捕集され、原料混合・供給装置10内でフレッシュなセメント原料と混合されて、セメント原料・燃料として、プレヒータ2に供給されてセメント製造設備X内を再循環する。
かかる水銀等の重金属の循環濃縮量の増大とともに、煙突11等より外気に排出される排ガス中に含まれる水銀等の重金属量が徐々に増加し、最終的には定常状態に達してしまう。
【0027】
また、図1のセメント製造設備Xにおいては、セメントプレヒータ2から排出される排ガス中に含まれる水銀等の重金属は、ガス温度の低下とともに排ガス中のダストに含まれる未燃カーボンに吸着する。かかるダストを集塵装置7で捕集し、バグフィルタ等のダスト分離装置8を経て排ガスから分離し、ダストを重金属の沸点以上に加熱することにより、ダスト中の重金属を揮発させ、ダストの重金属を除去し、かかるダストをセメント原料として再利用する方法も提案されているが、ダストの加熱熱源をあらたに確保する必要があり、多量のダストの加熱も必要であり、更にセメント製造設備の運転負荷を90%以下に低減すると、電機集塵機(EP)で水銀の濃縮灰が殆ど回収できなり、さらに大量のダストの加熱が必要となるといった技術的な課題がある。
【0028】
従って、本発明は、水銀等の重金属を排ガス中から応答性良く除去して、該重金属のセメント設備内での循環濃縮量等を減少させるものである。
本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法は、セメント原料焼成用ロータリーキルンで発生する燃焼排ガスをプレヒータから排出させた後に2経路に分岐させ、
セメント原料粉砕装置が稼働中の時には、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスを、沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置及び外部排気手段を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスの一部を、セラミックフィルタ装置を通過させた後、前記セメント原料粉砕装置の手前で前記沈降室からの排気と合流させて、該セメント原料粉砕装置、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出し、
セメント原料粉砕装置が停止中の時には、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスを、該沈降室、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスの一部を、該セラミックフィルタ装置、重金属除去装置を通過させた後、該バグフィルタの下流で、前記バグフィルタからの排気と合流させて、該外部排気手段より外部に排出する、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法である。
好適には、該原料粉砕装置が停止中の時には、該沈降室から排出した該燃焼排ガスを、スタビライザに通過させた後、該電気集塵機に導入する。
【0029】
また、本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置は、セメント原料焼成用ロータリーキルン及びプレヒータを備える原料焼成装置、沈降室、原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置、セラミックフィルタ装置、重金属除去装置及び外部排気手段を備えるとともに、該原料粉砕装置は稼動又は停止し、該原料焼成装置のプレヒータから排出された該燃焼排ガスが分岐する2経路を備え、
該原料粉砕装置が稼動中の時には、該原料焼成装置のプレヒータから排出された該燃焼排ガスが、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置及び外部排気手段を通過して外部から排出されるように、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置および外部排気手段が設置される、原料粉砕装置稼働中の第1の経路を備えるとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスの一部が、セラミックフィルタ装置を通過した後、該第1の経路の前記セメント原料粉砕装置の手前で前記沈降室からの排気と合流するように、セラミックフィルタ装置が設置される、原料粉砕装置稼働中の第2の経路とを備え、
該原料粉砕装置が停止中の時には該原料焼成装置のプレヒータから排出された排ガスが、
該沈降室、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出されるように、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置および外部排気手段が設置される、原料粉砕装置停止中の第1の経路を備えるとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスが、該セラミックフィルタ装置、該重金属除去装置を通過して外部に排出されるように、該セラミックフィルタ装置、該重金属除去装置が設置される、原料粉砕装置停止中の第2の経路とを備えることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置である。
好適には、該原料粉砕装置が停止中の時に、該沈降室から排出した該燃焼排ガスを通過させるスタビライザを、該沈降室と該集塵装置の間に設置する。
【0030】
図2は、本発明のセメント製造設備Xからの排ガス中の重金属低減方法を実施するための低減装置を模式的に示す一例の図であり、図2を参照して本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
なお、図1及び図2中、実線はガスの流れ、点線は原料等の材料の流れを表す。
セメント製造原料は、原料粉砕装置6で粉砕混合されて、原料混合・供給系装置10を経由してプレヒータ2の上部、プレヒータ2dに供給される。
ここでセメント原料としては、例えば石灰石、粘土、珪石、鉄滓、スラッジ・都市ごみの焼却で発生する主灰等の廃棄物を使用することができる。特に原料では石灰石や廃棄物が、また燃料では石炭が、セメント製造設備内に水銀を多く供給する。
【0031】
プレヒータ2は、複数のサイクロン2a、2b、2c、2dから構成されており、その数は限定されない。
前記セメント原料は、プレヒータ2内を、上部のサイクロン2dから下部方向へサイクロン2c、サイクロン2b、サイクロン2aへと順次移動しながら予熱されて、最下部のサイクロン2aに導入された後、ロータリーキルン1へと供給される。
【0032】
さらに、プレヒータ2とロータリーキルン1の間に仮焼炉3を設けてもよく、セメント原料の仮焼を効率的に促進させるために設けられるものである。
該仮焼炉3としては、任意の公知の仮焼炉を用いることができ、例えば、SF仮焼炉、MFC仮焼炉、RSP仮焼炉、KSV仮焼炉、DD仮焼炉、SLC仮焼炉等が例示できる。
仮焼炉3が設けられている場合には、仮焼成されたセメント原料はロータリーキルン1へ供給される。
本発明においては、セメントロータリーキルン1、プレヒータ2、仮焼炉3を原料焼成装置という。
【0033】
ロータリーキルン1内に供給されたセメント原料は、焼成されてクリンカを製造する。
該ロータリーキルン1で上記セメント原料が加熱焼成される際に発生する排ガスは、ロータリーキルン1から排出されてプレヒータ2aに流入する。
また図2に示すように、仮焼炉3が設けられている場合には、該ロータリーキルン1から排出された高温の排ガスは、仮焼炉3中でのセメント原料の仮焼成に利用され、仮焼炉3に流入する。該仮焼炉3で発生した排ガスもプレヒータ2aに流入する。
またロータリーキルン1からの排出される排ガスは、一部抽気されて脱塩バイパス処理される。
【0034】
該サイクロン2aに流入した排ガスは、サイクロン2b、サイクロン2c、サイクロン2dに順次流入して、プレヒータ2内を上方へと移動し、最上部のサイクロン2dから排出される。その際の排ガスの温度は通常、400℃前後である。
該プレヒータ内における排ガスは、供給された原料と接触して原料を予備加熱する。
該排ガス中に含まれる水銀等の重金属及びその化合物、特に揮発性重金属及びその化合物は、該排ガス中に含まれた状態でプレヒータ2から排出される。
【0035】
プレヒータ2(最上部のサイクロン2d)から排出した排ガスは、2経路に分岐される。
第1の経路としては、該プレヒータ2から排出した排ガスを沈降室4に導入する経路であり、第2の経路としては、該プレヒータから排出した排ガスをセラミックフィルタ9に導入する経路である。即ち、原料粉砕装置6に稼動(オン)または停止(オフ)にかかわらず、該プレヒータからの排ガスは、2経路に分岐、即ち該沈降室4及び該セラミックフィルタ装置9の双方に分かれて導入される。
【0036】
まず、第1の経路では、該プレヒータからの排ガスは沈降室4に導入される。該沈降室4に該プレヒータからの排ガスが導入されることで、プレヒータ2から排出される排ガス中に含まれるダストを沈降させて回収することができる。
回収されたダスト等は、原料混合・供給装置10に導入されて、原料粉砕装置6から導入される原料と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン2dに循環供給される。ここで、該沈降室4には、原料粉砕装置6が稼働中か否かに拘らず、排ガスは導入される。
【0037】
次いで、第1の経路の沈降室4から排出された排ガスは、原料粉砕装置6がオンの場合とオフの場合には、排ガスの流れは異なる。
ここで原料粉砕装置6には、原料ミル及び/又は原料乾燥機及び/又はインパクトドライヤーが含まれる。
まず、原料粉砕装置6がオンの場合について説明する。図2中、白抜きの矢印で示す流れが、原料粉砕装置6がオンの場合の排ガスの流れである。
沈降室4から排出された排ガスは、原料粉砕装置6、集塵装置7、バグフィルタ装置8に送られ、煙突等の外気排気手段11によって大気に放出される(原料粉砕装置稼働中の排気経路1)。
ここで、集塵装置7としては、通常、電気集塵機(EP)が用いられるが、それ以外の集塵機(例えば、重力集塵装置、慣性力集塵装置、遠心力集塵装置、濾過集塵装置等)を用いてもよい。
【0038】
まず、沈降室4から排出された排ガスは原料粉砕装置6に導入されて、原料粉砕装置6中での原料の乾燥に利用される。
排ガス中の水銀等の重金属は、原料ミル等の原料粉砕装置6で原料と接触して捕集されて、また排ガス中のダストに含まれる未燃炭素に吸着して集塵装置7やバグフィルタ装置8で捕集されて、原料混合・供給装置10に導入され、原料粉砕装置6から導入される原料と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン2dに循環供給されて、セメント製造設備内で循環濃縮する。ここで排ガスはバグフィルタ装置8により、より微細なダスト等を捕捉する。
一方、該バグフィルタ8を通過した排ガスは、排気外部手段11の煙突より大気中に放出される。
【0039】
原料粉砕装置6が稼働中の第2の経路としては、該プレヒータ2dから排出された排ガスは、まず、セラミックフィルタ9へ導入される。プレヒータ2からの水銀等の重金属を含む排ガスは、360〜430℃程度の高温のままセラミックフィルタ9に送られ、排ガス中のダストを捕捉する。ここで、前記したように、該排ガスは、原料装置がオンの場合もオフの場合もセラミックフィルタ9へ導入されるものである。
これにより該排ガスは、セラミックフィルタを暖機し、水の発生を防止して、装置の酸腐食を抑制することができる
原料粉砕装置6がオンの場合には、該セラミックフィルタからの排気は、上記第1の経路のセメント原料粉砕装置6の手前で沈降室4の排気と合流される。セラミックフィルタ9からの排気と、沈降室4からの排気は合流して、上記第1の経路での処理と排気がなされる。具体的には、合流した該排ガスは、前記集塵装置7、前記バグフィルタ装置8に送られ、煙突等の外気排気手段11によって大気に放出される。
該セラミックフィルタ9で回収されたダスト等は、原料混合・供給装置10に導入されて、原料粉砕装置6から導入される原料と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン2dに循環供給される。
【0040】
原料粉砕装置6がオフの場合には、図2の黒塗り矢印で示す流れが、排ガスの流れである。
該原料粉砕装置がオフ(停止中)の場合には、該原料焼成装置のプレヒータ2から排出された排ガスは、上記沈降室4を通過して、次いで、前記集塵装置7、前記バグフィルタ装置8の順に導入され、煙突等の前記外気排気手段11によって大気に放出される(原料粉砕装置停止中の排気経路1)。ここで排ガスは該バグフィルタ装置8により、より微細なダスト等を捕捉する。
また必要に応じて、沈降室4と該集塵装置7との間にスタビライザ5を設置して、沈降室4からの排ガスをスタビライザに導入し、次いで該集塵装置7に導入することができる。
該スタビライザ5、集塵装置7やバグフィルタ8で回収されたダスト等は、原料混合・供給装置10に導入されて、原料粉砕装置6から導入される原料と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン2dに循環供給される。
【0041】
原料粉砕装置6が停止中の第2の排気経路としては、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスを、該セラミックフィルタ装置9、該重金属除去装置12、外部排出手段11を通過させて外部に排出する。
まず、該プレヒータ2dから排出された排ガスは、セラミックフィルタ9へ導入され、該排ガスは、該セラミックフィルタ9を暖機することは、上述したように、原料粉砕装置6がオンの場合と同様である。
該セラミックフィルタ9にて回収されたダスト等は、原料混合・供給装置10に導入されて、原料粉砕装置6から導入される原料と混合されて、セメント製造原料としてプレヒータ2の上部のサイクロン2dに循環供給される。
【0042】
即ち、プレヒータ2を出た水銀等の重金属を含む排ガスは、360〜430℃程度の高温のままセラミックフィルタ9に送られ、排ガス中のダストを捕捉する。
この時、例えば、水銀(沸点:356℃)を例にすると、フィルタ分離温度が300℃以上、特に、360℃以上の場合であれば、水銀はダストに含まれる未燃炭素にほとんど吸着されず、排ガスと共にセラミックフィルタ8を通過する。従って、排ガス中のダストを媒介として原料混合・供給装置10によって供給される原料中に含まれる水銀による、セメント製造設備内の水銀の循環濃縮量は、大幅に削減される。ここで、セラミックフィルタ側に分岐する予熱器を出た排ガスの量は、セメント製造原料や燃料の持ち込む水銀の総量に応じ調整が出来るよう、セラミックフィルタの排気側ダクトにコントロールダンパやインバータ制御方式のファン等のガス量の調整機器を設置する。
【0043】
次いで、該セラミックフィルタ8を排出した排ガスは、重金属除去装置12に導入されて、水銀等の重金属を除去する。必要に応じて、重金属除去装置12に排ガスが導入される前に、熱交換器(図示せず)を設けてもよい。
該重金属除去装置12は、排ガス洗浄手段や、減温手段及び重金属吸着手段とすることができる。
【0044】
重金属除去装置12が排ガス洗浄手段の場合、該排ガス洗浄手段としては湿式方式を採用でき、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去する。
なお、ガス洗浄水としては、薬液調製・給水装置13からの水、酸化剤溶液、酸・アルカリ剤によりpH調整された吸収液などを使用することができ、ガス洗浄塔の洗浄液は、例えばポンプを用いてガス洗浄塔内を循環噴霧させて、排ガスと接触させる。水としては、上水道水、工業用水、セメント製造工程等から排出される2次排水等が利用できる。
【0045】
また、重金属除去装置12が減温手段及び重金属吸着手段を備える場合、該減温手段では該排ガスを200℃以下に減温し、次いで重金属吸着手段にて該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去する。
重金属吸着手段としては、活性炭やゼオライト等の吸着材による固定層処理、移動層処理、煙道噴霧処理などの乾式方式が例示できる。
【0046】
水銀が除去された排ガスは、煙道の腐食、煙突11の排ガスの拡散力などを考慮し、必要に応じて熱交換器(図示せず)で昇温し、煙突11より大気へ排出する。
【0047】
例えば、上記排ガス洗浄手段から排出された、水銀等の重金属が溶解しているガス洗浄水を廃水処理装置14に送り、該重金属を回収する。
重金属の該回収方法は特に限定されず、公知の任意の方法及び装置を適用することができ、例えば、比重分離法、pH調整剤を添加して高分子凝集剤や、キレート剤、硫化剤等を添加し、重金属を沈殿させ、濾過装置を用いて固液分離して回収する。また、必要に応じて、電解工程を設けてもよい。このようにして回収された重金属は、再利用に供される。
【0048】
重金属を除去した後に該濾液を、廃水処理装置14で放流基準を満足するまでの処理、好ましくは水処理を行い、公共水域、あるいは下水道へ放流する。または、該処理水を薬液調整・給水装置へ返送し、再利用する。
また、必要に応じて、精密濾過工程を設けることにより、微細な浮遊物質を除去して、その後放流してもよい。
【0049】
本発明の方法及び装置により、原料ミルOFFの時に排ガスから除去される水銀等の重金属量が、セメント製造設備内を循環する重金属濃縮量をはるかにしのぐため、セメント製造設備内で循環する水銀等の重金属総量は急激に減少し、結果として煙突から排出される水銀量も急激に減少することができる。即ち、原料ミル等の原料粉砕装置が稼働していない時だけ、ガス洗浄装置等の重金属除去装置を運転すれば排ガスに含まれる水銀量を急激に減少させることができ、重金属除去装置の運転を間欠運転とすることにより、ランニングコストの削減も図ることができる、極めて優れた重金属低減装置及び低減方法である。例えば、原料ミル等の原料粉砕装置が停止している約9時間/日の間、ガス洗浄塔等の重金属除去装置を運転すれば、排ガス中に含まれる水銀量を急激に減少させることができ、ガス洗浄塔等の重金属除去装置の運転時間を24分の9に削減可能とすることができる。
また、セメント設備からの排ガス中の重金属がセメント製造系外に排出されることとなり、セメント設備で循環濃縮する水銀等の重金属濃度及び量を有効に低減させることが可能となる。
従って、セメント設備における操業の安定性を確保できることも可能となる。
【実施例】
【0050】
(実施例1〜3、比較例1〜3、参考例1)
実施例においては図2に示すセメント製造設備の排ガス中の重金属低減装置を用いて、また比較例及び参考例においては図1に示すセメント製造設備を用いて、外部排気手段11である煙突から排出される排ガス中の水銀濃度(図3〜9)を測定し、セメント製造設備の運転時間による変化で表した。
【0051】
但し、下記表2に示す条件で実施した。
表2に記載されている条件以外の条件はすべての実施例及び比較例で同様にして行なった。
なお、参考例1は、セメント製造原料中の水銀濃度が0.08ppmである以外は、比較例1と同様の条件で実施した。
【0052】
【表2】

【0053】
その結果を図3〜9に示す。
図3は比較例1、図4は実施例1、図5は比較例2、図6は実施例2、図7は比較例3、図8は実施例3の各煙突から排出される排ガス中の水銀濃度の測定結果(初期値(1日目)からの週単位の測定値)である。
【0054】
図4、図6、図8より、実施例1、実施例2及び実施例3では、処理開始後、急激に煙突から排出される排ガス中の水銀濃度が低下しており、目標とする水銀濃度50μg/Nm以下に3週間で到達した。また、実施例3の結果より、水銀含有量の多い原料に対しても応答性が早く、水銀除去に有効であることがわかる。
【0055】
一方、図3、図5、図7より、比較例1、比較例2及び比較例3では、煙突から排出される排ガス中の水銀濃度は、16週経過後も、50μg/Nm以下に到達しない状態でほとんど変化せず、運転を継続しても水銀濃度は低下しない。
従って、セメント製造設備に、別途水銀低減装置を設置する必要があると考えられる。
【0056】
また、参考例1からは、従来のセメント製造設備を用いる場合、セメント製造原料中の水銀濃度が0.08ppmと、0.1ppmより少ない場合であれば、煙突から排出される排ガス中の水銀濃度を50μg/Nm以下に維持することが可能であるが、上記比較例より、セメント製造原料中の水銀濃度が0.1ppmを超えると、即ち、セメント原料中に水銀等の重金属が多量に含まれる場合には、有効に水銀の除去を実施することが難しくなることが明らかである。
【0057】
このように、本発明のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法及び低減装置を適用することにより、排ガス中に含まれる水銀等の重金属を有効に低減することができることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の排ガス中の重金属低減方法及び低減装置は、廃棄物を原料として利用するセメント製造設備に有効に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・ロータリーキルン
2・・・プレヒータ
3・・・仮焼炉
4・・・沈降室
5・・・スタビライザ
6・・・原料粉砕装置
7・・・集塵装置
8・・・バグフィルタ装置
9・・・セラミックフィルタ装置
10・・・原料混合・供給装置
11・・・煙突
12・・・重金属除去装置
13・・・薬液調製・給水装置
14・・・廃水処理装置
X・・・セメント製造設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料焼成用ロータリーキルンで発生する燃焼排ガスをプレヒータから排出させた後に2経路に分岐させ、
セメント原料粉砕装置が稼働中の時には、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスを、沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置及び外部排気手段を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスの一部を、セラミックフィルタ装置を通過させた後、前記セメント原料粉砕装置の手前で前記沈降室からの排気と合流させて、該セメント原料粉砕装置、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出し、
セメント原料粉砕装置が停止中の時には、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスを、該沈降室、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出するとともに、該プレヒータから排出した該燃焼排ガスの一部を、該セラミックフィルタ装置、重金属除去装置を通過させた後、該バグフィルタの下流で、前記バグフィルタからの排気と合流させて、該外部排気手段より外部に排出する
ことを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
【請求項2】
請求項1記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該原料粉砕装置が停止中の時には、該沈降室から排出した該燃焼排ガスを、スタビライザに通過させた後、該電気集塵機に導入することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属除去装置は排ガス洗浄手段を備え、該排ガス洗浄手段においては、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属除去装置は減温手段と重金属吸着手段とを備え、該減温手段では該排ガスを200℃以下に減温し、次いで重金属吸着手段にて該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
【請求項5】
請求項1〜4記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法において、該重金属は水銀であることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減方法。
【請求項6】
セメント原料焼成用ロータリーキルン及びプレヒータを備える原料焼成装置、沈降室、原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置、セラミックフィルタ装置、重金属除去装置及び外部排気手段を備えるとともに、該原料粉砕装置は稼動又は停止し、該原料焼成装置のプレヒータから排出された該燃焼排ガスが分岐する2経路を備え、
該原料粉砕装置が稼動中の時には、該原料焼成装置のプレヒータから排出された該燃焼排ガスが、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置及び外部排気手段を通過して外部から排出されるように、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置および外部排気手段が設置される、原料粉砕装置稼働中の第1の経路を備えるとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスの一部が、セラミックフィルタ装置を通過した後、該代1の経路の前記セメント原料粉砕装置の手前で前記沈降室からの排気と合流するように、セラミックフィルタ装置が設置される、原料粉砕装置稼働中の第2の経路とを備え、
該原料粉砕装置が停止中の時には該原料焼成装置のプレヒータから排出された排ガスが、
該沈降室、該集塵装置、該バグフィルタ装置及び該外部排気手段を経て外部に排出されるように、該沈降室、該セメント原料粉砕装置、集塵装置、バグフィルタ装置および外部排気手段が設置される、原料粉砕装置停止中の第1の経路を備えるとともに、該プレヒータから排出された該燃焼排ガスが、該セラミックフィルタ装置、該重金属除去装置を通過して外部に排出されるように、該セラミックフィルタ装置、該重金属除去装置が設置される、原料粉砕装置停止中の第2の経路を備えることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
【請求項7】
請求項5記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該原料粉砕装置が停止中の時に、該沈降室から排出した該燃焼排ガスを通過させるスタビライザを、該沈降室と該集塵装置の間に設置することを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、該重金属除去装置は、該排ガス中の非水溶性揮発性重金属及びその化合物を洗浄液と接触させて、該揮発性重金属を該洗浄液で酸化して可溶性とし、該洗浄液に溶解させて該重金属を除去する、排ガス洗浄手段であることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
【請求項9】
請求項6又は7記載のセメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置において、
該重金属除去装置は、減温手段と重金属吸着手段とを備え、該排ガスを200℃以下に減温する減温手段と、該排ガス中の揮発性重金属及びその化合物を吸着させて重金属を除去する重金属吸着手段とを備えることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。
【請求項10】
請求項6〜9記載のセメント製造設備からの重金属低減装置において、重金属は水銀であることを特徴とする、セメント製造設備からの排ガス中の重金属低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−206883(P2012−206883A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73254(P2011−73254)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】