説明

セラミックス焼結体、ロールクリーニング装置、および、ロールクリーニング方法

【課題】本発明は、高温腐食ガス雰囲気下にあって、耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性に優れたセラミックス焼結体、および、この焼結体をブレードに用い安定かつ長期の使用が可能なロールクリーニング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のセラミックス焼結体は、Xvol%のSiと、(100−X)vol%のTi0.9Me0.1(Me=Zr、Hf、Cr、Niの少なくとも1種以上)とからなり、X=5〜35となる組成を有することを特徴とする。本発明のロールクリーニング装置は、400〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気下で使用されるロールクリーニング装置において、前記セラミックス焼結体が耐熱鋼中に埋め込まれて構成されたブレードと、該ブレードを支持する支持体とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱・耐摩耗性に優れたセラミックス焼結体、および、この焼結体をブレードに用いたロールクリーニング装置、すなわち先端が高温腐食性ガス雰囲気で使用されるロールに直接接触し、操業中のロールを連続クリーニングするブレードを備えたロールクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄圧延工程の連続生産ラインにおいて、鋼板を搬送するロール等には、通常、ロール表面の異物(金属のスケールや耐火物屑など)を除去するロールクリーニング装置が付設される。ここで、ロール表面に異物が付着すると、この異物のために鋼板表面に疵が付きやすくなる。そして、当該表面疵が形成された製品は不良品となり商品価値を失う。そこで、上記ロールに対してロールクリーニング装置を設置し、該装置に設けられたブレードにてロールの外周面を連続的に払拭することで、上記問題の発生を防止できる。
【0003】
このようなロールクリーニング装置として、従来、先端部がロールに接触可能な耐熱性の金属ブレードと、このブレードを交換可能に保持する保持手段と、この保持手段を支持する支持体を備えたロールクリーニング装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に記載の構成では、支持体は中空部を有しており、その中空部を通じて冷却媒体が連続供給できるようになっている。これにより、加熱炉等の400〜1000℃の高温雰囲気下でも使用可能とされている。
また、従来、金属ブレードの接触圧補正装置を、ロール長手方向に分割して設置した構造のロールクリーニング装置も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
ところで、焼鈍や溶融金属めっきラインなどの加熱炉中においては、鋼板を上下に搬送する複数のロールのうち上側のロールは、400℃〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気に曝される。このため、当該ロールに対して設置されるロールクリーニング装置にあっては、当該ロールの外周面に接するブレードの先端に、特に高度な耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性が要求される。
【0005】
【特許文献1】特開2000−218311号公報
【特許文献2】特開2000−8292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2には、ロールクリーニング装置が400℃〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気で使用される場合について示されておらず、また、ブレードに使用される具体的な材料も示されていない。つまり、高温腐食性ガス雰囲気下での使用時にはブレードに高耐熱性・高耐摩耗性・耐腐食性が要求される点について十分な検討がなされていない。このため、これら従来のロールクリーニング装置を高温腐食性ガス雰囲気下で使用した場合、ブレードの状態を安定に維持できず、長期使用に耐えられないおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、高温腐食ガス雰囲気下にあって、耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性に優れたセラミックス焼結体、この焼結体をブレードに用い安定かつ長期の使用が可能なロールクリーニング装置、および、このロールクリーニング装置を用いたロールクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、高温腐食ガス雰囲気下で使用されるロールのクリーニング装置として、ロールに先端部が接触するブレードを高温に耐えることができる耐熱性材料とし、そして簡便に交換可能なように本体を保持できるようにした。また、装置の本体部分に大掛かりな冷却機能を必要とする構造を必要としない耐熱・高耐摩耗・耐腐食セラミックス材質とした。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) Xvol%のSiと、(100−X)vol%のTi0.9Me0.1(Me=Zr、Hf、Cr、Niの少なくとも1種以上)とからなり、X=5〜35となる組成を有することを特徴とする耐熱・耐摩耗性に優れたセラミックス焼結体。
(2) 400〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気下で使用されるロールクリーニング装置において、上記(1)に記載された組成のセラミックス焼結体が耐熱鋼中に埋め込まれて構成されたブレードと、該ブレードを支持する支持体とを備えることを特徴とするロールクリーニング装置。
(3) 前記ブレードが、ロールの幅方向において複数に分割されていることを特徴とする上記(2)に記載のロールクリーニング装置。
(4) 上記(2)または(3)に記載のロールクリーニング装置を用いて、400〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気下で、前記ブレードをロールに押し付けることにより、ロール表面に付着した異物を除去することを特徴とするロールクリーニング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセラミックス焼結体は、1500℃程度の使用温度での硬度(Hv)が200以上で、かつ、常温強度の維持温度も1500℃以上と高く、耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性に優れている。このため、当該セラミックス焼結体を例えばロールクリーニング装置のブレード等に用い、高温腐食ガス雰囲気下に曝した場合でも、安定かつ長期の使用が実現できる。
また、ブレードが、ロールの幅方向において複数に分割しているため、摩耗、損傷の度合いに応じて、分割された各区間単位で部分的な交換補修が容易に行うことができるので、それだけ補修費の節約ができる。
さらに、大掛かりな冷却機能を必要としない簡単な構成とすることができるため、省スペース化及び低コスト化が図れ、高温雰囲気下で安定に長期使用が可能なロールクリーニング装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明者は、例えば、ロールクリーニング装置のブレード等が曝される様な400〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気下においても、優れた耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性を示すセラミックス焼結体について鋭意研究したところ、Xvol%のSiと、(100−X)vol%のTi0.9Me0.1(Me=Zr、Hf、Cr、Niの少なくとも1種以上)とからなり、X=5〜35となる組成を有するセラミックス焼結体が、上記各特性に優れていることを新たに見出し、本発明に至った。
【0011】
ここで、当該セラミックス焼結体は、Xが5vol%未満である場合、硬度が高過ぎてSiの組成割合が低いため、ブレードに適用した場合、ロールに疵が発生する場合があり好ましくない。また、Xが35vol%を超える場合、強度が低く構造部材として耐久性に劣るため好適ではない。
Ti0.9Me0.1は、TiCにZr、Hf、Cr、Niの少なくとも1種以上の金属炭化物を固溶させた固溶体であり、TiC単体に比べて硬度や破壊靭性値が上昇する。しかしTi0.9Me0.1において、Tiが0.9、Meが0.1の組成から大きく外れると、その総合的な強度の上昇効果が減少する傾向が認められる。
【0012】
このような本発明のセラミックス焼結体は、98%以上の高い対理論密度、200以上のビッカース硬度、5MPa・m1/2以上の破壊靭性値という優れた特徴を有する。また、JIS−R1601に準拠する抗折曲げ強さは、常温で500MPa以上と高く、400〜1500℃でも常温の場合と同程度である。また、耐腐食性においても、高い対理論密度を有しているため、腐食の進行が極めて起こり難い。
従って、本発明のセラミックス焼結体は、例えば400〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気下においても優れた耐熱性・耐摩耗性・耐腐食性を示し、特に、900〜1500℃でも適用できる点で、他の材料系に比して優れた効果を奏することができる。
【0013】
なお、本発明のセラミックス焼結体は、400℃未満でも使用は可能であるが、コストの点で、従来の耐熱鋼材だけで十分なため、使用温度範囲には含めていない。また、1500℃超の温度領域ではロールクリーニング装置等の使用温度範囲を超えているため、本発明のロールクリーニング装置への用途としては考え難い。
また、腐食性ガス雰囲気とは、例えば、HガスやCOガスが過半数を占め、残分はNガスや水蒸気等のガス雰囲気を意味している。
【0014】
ここで、本発明のセラミックス焼結体の製造方法を説明する。
原料として、Si、TiCおよびZr、Hf、Cr、Niの少なくとも1種以上の金属炭化物を用いて、所定の配合量で混合し、成形後、焼成することで得ることができる。
【0015】
焼結原料としてのSi、TiCおよびZr、Hf、Cr、Niの少なくとも1種以上の金属炭化物には、平均粒径が1〜10μm、より好ましくは3〜7μmのセラミックス粉体を使用することができる。平均粒径が1μm未満では靭性が増大する効果が得られ難くなり、また10μmを越えると緻密化が進行せず、硬さや靭性の低下を招くばかりでなく、空孔が増え、耐腐食性も損なうことになる。
【0016】
焼結温度は1950℃以上2150℃以下が好ましく、保持時間は2時間以上が好適である。焼結時の雰囲気は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、もしくは真空雰囲気とすることが好ましく、これにより焼結体を高純度化することができる。焼結方法は、例えば無加圧雰囲気焼結、雰囲気ガス加圧焼結、ホットプレス焼結など、いずれの焼結方法をも採用できる。また、複数の焼結方法を組み合わせることも可能である。
さらに、上述の一次焼結後に、熱間静水圧加圧(HIP)処理を行うことが好ましく、これにより、より一層の高密度化が可能である。なお、焼結後は、粒界相の結晶化制御等を目的とした降温過程での温度制御は特に必要ない。
【0017】
次に、上記セラミックス焼結体をブレードに適用した本発明のロールクリーニング装置について詳細に説明する。図1に、本発明の一実施形態に係るロールクリーニング装置の模式的構成を示す。
【0018】
図1において、ロールクリーニング装置の本体1は、中空部または貫通孔を有する軸状の支持体2を備えており、支持体2の端部は軸受により回動可能に支持されている。支持体2の下面には、ブレード4の保持手段としてのベースプレート3が、ロール7に向けて取り付けられている。このベースプレート3の支持体2への取り付けは、例えば溶接やネジ、ボルト等による機械的な接合手法によって行うことができる。そして、ベースプレート3の先端側には、ブレードホルダ5がボルト6を介して取り付けられている。さらに、このブレードホルダ5の先端部には、例えばボルトなどの固定手段(図示しない)により、ロール7の表面に付着した異物を除去するための耐熱性のブレード4が取り付けられている。なお、このブレード4の具体的な構成については後述する。
【0019】
ロール7とブレード4との接触について説明する。支持体2には、支持体2を回動させることができるレバー8が取り付けられていて、このレバー8を上方あるいは下方に動かすことにより、支持体2を回動させることができる。この支持体2の回動に応じて、ブレード4の先端が上方あるいは下方に移動し、ブレード4の先端とロール7とが接触状態あるいは非接触状態となる。クリーニングを可能とするため、通常は、ベースプレート3及びブレード4の自重等により、ブレード4の先端部がロール7を圧下するように装置各部材の重さを調整してある。
さらに、レバー8の中間部には、重り9がレバー8に沿って移動可能に取り付けられており、この重り9の位置を移動させることによりロール7に対するブレード4の先端部の接触圧を制御することができる。なお、レバー8に加える力(即ち、ブレード4のロール7に対する圧下あるいは開放)を油圧や空気圧を利用して制御することやモーターを用いて電気的に制御することも可能である。これらは重り9と同じ作用を有するものである。
【0020】
次に、ブレード4の具体的な構成について説明する。
ブレード4の形状としては、図1に示すように、ロール7の幅方向に略沿う長手板状のものを用いることが一般的である。ブレード4の厚みは特に規定するものではなく、適宜、設定すれば良いが、例えば、製造時の歩留りや一般的な使用条件からの目安から、厚みは約0.2〜10mmとすることが好ましい。但し、この厚みは、使用するロール径や通板速度に応じて柔軟に変更することができ、例えば0.1mm厚さでも15〜50mm厚さでも本発明の効果を損なうものではない。
また、ブレード4の先端部の断面形状は、ロール7の全体形状や表面形状、温度等の使用環境に合わせて、例えば直角形状や刃形状等とすることができるが、これに限らず、ロール7表面の異物を好適に除去できるいずれの形状をも採用できる。
【0021】
ブレード4は、本発明のセラミックス焼結体を耐熱鋼中に埋め込んで構成されている。このようにセラミックス焼結体を耐熱鋼中に埋め込むことにより、所定形状に加工することが困難な当該セラミックス焼結体を、耐熱鋼を介してブレードホルダ5で容易に支持することが可能とされている。この場合、当該セラミックス焼結体は、ブレード4のうち少なくともロール7と接触する先端部において露出した状態で、耐熱鋼中に埋め込まれることが好ましい。これにより、ブレード4の先端部がロール7表面に当接した際、当該セラミックス焼結体が優れた耐熱性等を発揮するので、ブレード4の状態を安定に維持でき、かつ、長期使用に耐え得る強度をブレード4に付与することができる。
ここで、耐熱鋼としては、Ni−Cr系が代表例として挙げられるが、他の系としてHi−Cr系、Ni系、SUS310S系などであっても構わない。
また、埋め込みの方法としては、鋳込み時の砂型に、本発明のセラミックス焼結体を固定しておき、砂型へ溶融状態の耐熱鋼を流し込むことによって、鋳包み構造化することなどが挙げられる。
【0022】
そして、ブレード4は、ロール7の幅方向において複数に分割された構造とすることが好ましい。例えば、板状の耐熱鋼の一端から本発明のセラミックス焼結体を露出させた状態の複数のブレード片(図示しない)を、ロール7の幅方向に沿って並列させて、ブレードホルダ5の先端部に取り付けた構造などが例示できる。
このように、ブレード4をロール7の幅方向に分割した構造とすることにより、異物付着が顕著な部分や、著しく損耗した部分のみを交換することができ、その他の比較的摩耗の進み難い部分等はそのまま再度利用に供することができる。したがって、効率的な使用が可能で、製造面でも大型設備が不要なだけでなく、交換時の低コスト化にも有効である。
【0023】
さらに、ブレード4のブレードホルダ5への取り付けは、熱膨張による幅方向の伸びを許容できる取り付け方法が望ましい。すなわち、例えばブレード4に設けられるボルトの貫通孔を、直円形状ではなく、長手方向がブレード4の幅方向に略沿う楕円形または長穴形とした方が良い。なお、取付手段としてボルトを使用することにより、ブレード4の交換を容易に行うことができる。
【0024】
次に、上記したロールクリーニング装置を用いたロールクリーニング方法について説明する。
ロールクリーニング装置は、製鉄圧延工程の連続生産ラインにおけるロールや、焼鈍や溶融金属めっきラインなどの加熱炉中における上側のロール等に対して設けられる。そして、ブレード4の先端部をロール7に押し付けることにより、ロール7の表面に付着した異物を除去する。
この際、当該ロールに接触するブレード4は、400℃〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気下に曝される。この点、本発明のセラミックス焼結体は、耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性に優れていることから、この様な環境で用いても損耗が少なく、ブレード4の安定かつ長期の使用が実現できる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の一実施例を比較例と共に説明する。
(実施例1〜5)
原料セラミックス粉体として、窒化ホウ素(Si)粉末(純度99%、平均粒径4.1μm)に、炭化チタン(TiC)粉末(平均粒径3.5μm)、炭化ジルコニウム(ZrC)粉末(平均粒径5.4μm)、炭化ハフニウム(HfC)粉末(平均粒径6.2μm)、炭化ニッケル(NiC)粉末(平均粒径4.1μm)、炭化クロム(CrC)粉末(平均粒径4.7μm)、炭化チタンと炭化ジルコニウムの複合炭化物(Ti0.9Zr0.1)粉末(平均粒径2.9μm)を用いた。
所定の上記セラミックス粉体を、全量100gとなるように以下の表1に示す割合(質量%)で調整し、これに分散媒として精製水またはアセトンを100g添加した。そして、これら原料をSiCタイルを内壁及び蓋に内貼りしたボールミルで48時間混練した。なお、混練の際、混合用ボールとして直径10mmのSiCボールを、セラミックス全粉末原料100gに対し2倍の200gの割合で用いた。
次いで、得られた混合粉末を成形後、焼結した。成形条件としては冷間静水圧による加圧130MPaとし、幅80mm×長さ250mm×厚さ8mmの板材を成形した。焼結条件としては、アルゴンガスの常圧流通中にて、表1中に示す温度で8時間保持の焼結を行った。
得られた焼結体からJIS規格の曲げ試験片を切り出し、機械的特性を評価した。抗折強さは、JIS-R1601により、大気中、常温および1500℃にて測定した。硬さも、大気中、常温および1500℃にて、押込荷重98Nのビッカース硬さとして測定した。靭性についてはJIS-R1607のSEPB法により常温にて破壊靭性値KICを測定した。また、耐熱衝撃性としては、曲げ試験片を大気中にて所定の温度に加熱後、水中急冷し、抗折強さの劣化が始まる急冷温度差ΔTで評価した。焼結体密度は、アルキメデス法により相対密度として測定した。得られた各焼結体の諸特性を以下の表2に示す。
【0026】
(比較例1,2)
比較例1,2は実施例1〜5と同一原料を用いるが、ポットの内壁や蓋もボールもSiC材を用いずアルミナ(Al)材を用い、同じく精製水またはアセトンで調製したが、それぞれ異常粒成長により相対密度が98%を下回った場合(比較例1)、Siの一部がAlに固溶し、低融点の結晶相が生成した場合(比較例2)の各比較例である。これらを併せて表1に示す。これら比較例1,2の材料も実施例1〜5と同様の条件で特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
その結果、表2に示すように、本発明の実施例1〜5によるものは、比較例1,2よりも、常温及び高温の強度も高く、耐熱衝撃性が極めて優れることが確認された。
【0030】
次に、実施例1〜5、比較例1,2の板材を用いて、図1に示す、上記実施形態のブレード4を備えたロールクリーニング装置を構成した。この装置を、製鉄圧延工程の連続生産ラインにおけるロールや、焼鈍や溶融金属めっきラインなどの加熱炉中における上側のロールに対して設置した。そして、実際に操業を6ヶ月以上行った後の、耐久性を確認した。
なお、ブレード4については、すべての板材について、Ni−Cr鋼中に埋め込んで構成したものを用いた。また、この操業条件でブレード4が曝される環境としては、無酸化条件ではあるが、HガスやCOガスが過半数を占め、残分はNガスや水蒸気の900〜1500℃の高温雰囲気であった。
【0031】
その結果、実施例1〜5の板材を用いたものは、質量変化や反応層が確認できなかったため、高い耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性を実証することができた。
これに対し、比較例1,2の板材を用いたものは、実機搭載時も2ヶ月以内に破損、摩耗、腐食層の形成による表面の凹凸、スケール等の付着が観測された。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るロールクリーニング装置の模式的構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1…本体
2…支持体
3…ベースプレート
4…ブレード
5…ブレードホルダー
6…ボルト
7…ロール
8…圧下・開放レバー
9…重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Xvol%のSiと、(100−X)vol%のTi0.9Me0.1(Me=Zr、Hf、Cr、Niの少なくとも1種以上)とからなり、X=5〜35となる組成を有する
ことを特徴とする耐熱・耐摩耗性に優れたセラミックス焼結体。
【請求項2】
400〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気下で使用されるロールクリーニング装置において、
請求項1に記載された組成のセラミックス焼結体が耐熱鋼中に埋め込まれて構成されたブレードと、
該ブレードを支持する支持体とを備える
ことを特徴とするロールクリーニング装置。
【請求項3】
前記ブレードが、ロールの幅方向において複数に分割されている
ことを特徴とする請求項2に記載のロールクリーニング装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のロールクリーニング装置を用いて、
400〜1500℃の高温腐食性ガス雰囲気下で、前記ブレードをロールに押し付けることにより、ロール表面に付着した異物を除去する
ことを特徴とするロールクリーニング方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−302529(P2007−302529A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134098(P2006−134098)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】