説明

セルフクライミングステージ

【課題】構築する建築物の幅が小さくなるとともに外面が内側に変化するような躯体の変化に追従できるセルフクライミングステージを提供する。
【解決手段】建築物Tの周囲に沿って配置されるユニットフレーム2により構成され、建築物Tの構築の上昇に伴い上昇するセルフクライミングステージ1であって、建築物Tに対し上昇駆動され、両側部からユニットフレーム2の端部が夫々挿入されるガイドフレーム4を備える。ガイドフレーム4の内部において、ユニットフレーム2の端部ユニット2aが分解され上方に引き抜いて撤去される。なお、ユニットフレーム2及びガイドフレーム4の外周を覆う防護シート5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフクライミングステージに関する。
【背景技術】
【0002】
中高層の建築物の構築において、縦フレーム、水平フレーム及び筋交いからなる構造フレームに足場を取り付けた足場ユニットを、吊り上げ手段により吊り上げるセルフクライミング足場が用いられる(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−263480号公報
【特許文献2】特開2006−299559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば鉄塔や高層タワーなど、高くなるにつれて躯体の幅が小さくなるとともに外面が内側に変化するような建築物の構築において、セルフクライミング足場の使用が考えられる。
しかし、躯体の幅が小さくなるとともに外面が内側に変化することから、従来のセルフクライミング足場では躯体の変化に追従できなかった。
【0004】
本発明の課題は、構築する建築物の幅が小さくなるとともに外面が内側に変化するような躯体の変化に追従できるセルフクライミングステージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、建築物の周囲に沿って配置されるユニットフレームにより構成され、建築物の構築の上昇に伴い上昇するセルフクライミングステージであって、建築物に対し上昇駆動され、両側部から前記ユニットフレームの端部が夫々挿入されるガイドフレームを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のセルフクライミングステージであって、前記ガイドフレームの内部において、前記ユニットフレームの端部ユニットが分解され上方に引き抜いて撤去されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のセルフクライミングステージであって、前記ユニットフレームを外周側で互いに連結するピンと、前記ユニットフレームを内周側で互いに間隔調整可能に連結する調整ジャッキと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セルフクライミングステージでありながら、構築する建築物の幅が小さくなるとともに外面が内側に変化するような躯体の変化に追従できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、Tは超高層塔状建築物、1はセルフクライミングステージ1であり、図示例では、地上付近における初期高さのセルフクライミングステージ1sから最上部における最終高さのセルフクライミングステージ1tまでを示している。
【0010】
図2及び図3は初期高さのセルフクライミングステージ1sを拡大したもので、図4は最終高さのセルフクライミングステージ1tを拡大したものであり、2はユニットフレーム、3は定着フレーム、4はガイドフレーム、5は防護シートである。
すなわち、セルフクライミングステージ1は、超高層塔状建築物Tの周囲に沿って配置されるユニットフレーム2を、超高層塔状建築物Tに対し定着フレーム3及びガイドフレーム4を介して支持し、これらユニットフレーム2、定着フレーム3及びガイドフレーム4の外面に沿って防炎メッシュシートによる防風機能を具備する防護シート5を貼り付けたものである。従って、このセルフクライミングステージ1は、防護シート5により周囲を囲まれた防風環境の下で、資機材の搭載及び荷揚げが行えるとともに、超高層塔状建築物Tの構築作業が行える足場兼用の防護設備でもある。
【0011】
ユニットフレーム2は、図5に拡大して示したように、縦フレーム、水平フレーム及びブレース(引張材)からなるユニット単体21を横方向に連結したものである。ユニット単体21は、平面視台形状でその短辺側を、図3及び図4に示したように、超高層塔状建築物T側に向けて、反対の長辺側でピン結合部22により互いに連結されるとともに、短辺側で調整ジャッキ23を介して互いに連結されている。この調整ジャッキ23は電動式で自動制御される。
なお、ユニットフレーム2は、例えば20数mの高さで予め足場を組み込んで構築されている。
【0012】
定着フレーム3は、図6に拡大して示したように、縦フレーム、水平フレーム及びブレース(引張材)からなる支柱状で、ユニットフレーム2よりも長いものである。この定着フレーム3は、下端にブラケット31が備えられて、その上方に傾斜するガイドレール32がレールホルダ33を介して備えられている。以上の定着フレーム3は超高層塔状建築物Tの周囲に沿って等間隔に3本配置されて、その左右両側面に、ユニットフレーム2がピン結合部25により夫々連結されている。
【0013】
また、超高層塔状建築物Tの外面上部には上昇駆動装置6が備えられている。この上昇駆動装置6として実施形態ではリンクを一枚ずつに巻き上げていくパワーリンクが使用され、そのリンク61の下端が定着フレーム3下端のブラケット31に連結されている。
以上の上昇駆動装置6は、超高層塔状建築物Tの外面上部に突出した調整ジャッキ62に吊り下げられている。そして、超高層塔状建築物Tの外面には、リンク61をガイドするガイドローラ63が設けられている。
【0014】
図7はガイドレール32のガイド構造を示したもので、図8にその要部を拡大して示している。すなわち、超高層塔状建築物Tを構築する鉄骨T1の外面には、左右一対の取り合いプレート65が設けられて、この取り合いプレート65に対し取り付け位置が3段階に変化する水平支持材66が取り付けられている。この水平支持材66には、図示のように、H形鋼によるガイドレール32をガイドする左右一対のガイドローラ67及びその間の滑動板68が設けられている。
【0015】
ガイドフレーム4は、縦フレーム、水平フレーム及びブレース(引張材)から構成されて、ユニットフレーム2よりも長くて厚みが大きく、ユニット単体21より幅が十分に大きいものである。このガイドフレーム4は、定着フレーム3の間に等間隔に配置されて、両側部からユニットフレーム2の端部ユニット2aが夫々挿入されている。
【0016】
図9及び図10はガイドフレーム4を拡大して示したもので、41は下面ガイドローラ、42は外面ガイドローラ、43はブラケット、44はガイドレール、7は上昇駆動装置、72はブラケット、74はガイドローラである。すなわち、ガイドフレーム4の内部には、ユニットフレーム2を載せる下面ガイドローラ41と、ユニットフレーム2の外面を支える外面ガイドローラ42が設けられている。なお、ユニットフレーム2の下面には、下面ガイドローラ41に載るH形鋼によるガイドレール24が設けられている。
【0017】
そして、ガイドフレーム4の超高層塔状建築物T側の外面左右にブラケット43が備えられている。
また、超高層塔状建築物Tの外面上部には上昇駆動装置7が備えられている。この上昇駆動装置7として、前記上昇駆動装置6と同様に実施形態ではリンクを一枚ずつに巻き上げていくパワーリンクが使用され、そのリンク71の下端がガイドフレーム4のブラケット43に連結されている。
以上の上昇駆動装置7は、超高層塔状建築物Tの外面上部に突出した調整ジャッキ72に吊り下げられている。
【0018】
さらに、ガイドフレーム4の超高層塔状建築物T側の外面左右に上下方向のガイドレール44が備えられており、このガイドレール44は鋼管で、超高層塔状建築物Tの外面に設けたガイドローラ74に夫々ガイドされる。
【0019】
次に、セルフクライミングステージ1を用いた超高層塔状建築物Tの構築作業について説明する。
先ず、地上付近における初期高さのセルフクライミングステージ1sにおいて、内部の足場を利用して資機材の搭載及び荷揚げを行い、超高層塔状建築物Tを構成する鉄骨の構築作業を行い、さらに、塗装等の仕上げ作業を行う。このような作業は、防護シート5により周囲を囲まれた防風環境の下で有利に行える。
【0020】
所定の構築作業を終えると、セルフクライミングステージ1を次の構築作業ゾーンに上昇させる。すなわち、上昇駆動装置6・7を自動制御により同期駆動制御して、定着フレーム3のH形鋼によるガイドレール32を、超高層塔状建築物Tを構築する鉄骨T1の外面に設けた左右一対のガイドローラ67及びその間の滑動板68に沿って上昇させるとともに、ガイドフレーム4の鋼管によるガイドレール44を、超高層塔状建築物Tの外面に設けたガイドローラ74に沿って上昇させる。
【0021】
この場合、セルフクライミングステージ1の各所の荷重バランスを常時検出し、上昇駆動装置6・7が吊り下げられた調整ジャッキ62・72を個別の自動制御しながら、バランス良くセルフクライミングステージ1を上昇させる。
【0022】
以上による上昇過程において、ユニットフレーム2のユニット単体21間を連結する調整ジャッキ23を、予め定められた超高層塔状建築物Tの外面形状の変化に基くプログラム制御により自動制御して、ユニット単体21が互いにピン結合部22を支点として屈曲角度を変化させることで、セルフクライミングステージ1の上昇に伴ってユニットフレーム2が超高層塔状建築物Tの外面形状に沿うように形状変化させる。
【0023】
また、以上において、セルフクライミングステージ1の所定の上昇ストロークで超高層塔状建築物Tの外面形状の変化によりユニットフレーム2のユニット端部2aだけ余るようになる場合は、ガイドフレーム4において予めユニット単体21を一本だけ撤去しておく。
すなわち、ガイドフレーム4内の左右いずれか一方において、ピン結合部22を外すとともに、調整ジャッキ23も外して、ユニットフレーム2からユニット端部2aを外しておく。そして、図2及び図9に示すように、タワークレーンを用いてユニット端部2aを上方に引き抜いて撤去する。
【0024】
これにより、ガイドフレーム4内には、撤去したユニット端部2aの分だけ空間が生じるので、次のセルフクライミングステージ1の所定の上昇ストロークで超高層塔状建築物Tの外面形状の変化によりユニットフレーム2の端部がガイドフレーム4内を前進する。このとき、ユニットフレーム2下面のH形鋼によるガイドレール24が下面ガイドローラ41によりガイドされるとともに、ユニットフレーム2の外面が外面ガイドローラ42によりガイドされながら夫々支えられる。
【0025】
以上のように、実施形態のセルフクライミングステージ1によれば、超高層塔状建築物Tの足場兼防護設備として用いながら、その構築する超高層塔状建築物Tの幅が小さくなるとともに外面が内側に変化するような躯体の変化に追従することができる。
【0026】
なお、以上の実施形態においては、超高層塔状建築物に適用したが、本発明は超高層や塔状に限定されるものではなく、高くなるにつれて躯体の幅が小さくなるとともに外面が内側に変化するような建築物であっても良い。
また、実施形態では、上昇駆動装置としてパワーリンクを使用したが、他にケーブルを巻き上げるウインチやチェーンを巻き上げる巻き上げ装置等であっても良い。
さらに、各種フレームの構成等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、セルフクライミングステージの初期高さから最終高さまでの一例を示した概略側面図である。
【図2】図1の初期高さのセルフクライミングステージを説明する拡大側面図である。
【図3】図2のセルフクライミングステージの平面図である。
【図4】図1の最終高さのセルフクライミングステージの拡大平面図である。
【図5】図2のユニットフレームの部分拡大図(a)と、その平面図(b)である。
【図6】図3の矢印A−A線に沿って定着フレーム部分を示した断面図である。
【図7】図6のガイドレールのガイド構造の拡大図(a)と、その平面図(b)である。
【図8】図7の拡大側面図(a)と、その横断平面図(b)である。
【図9】図3の矢印B−B線に沿ってガイドフレーム部分を示した拡大断面図である。
【図10】図3のガイドフレーム部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
T 建築物
1 セルフクライミングステージ
2 ユニットフレーム
2a 端部ユニット
21 ユニット単体
22 ピン結合部
23 調整ジャッキ
24 ガイドレール
25 ピン結合部
3 定着フレーム
31 ブラケット
32 ガイドレール
4 ガイドフレーム
41 ガイドローラ
42 ガイドローラ
43 ブラケット
44 ガイドレール
5 防護シート
6 上昇駆動装置
62 調整ジャッキ
63 ガイドローラ
67 ガイドローラ
68 滑動板
7 上昇駆動装置
72 調整ジャッキ
74 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の周囲に沿って配置されるユニットフレームにより構成され、建築物の構築の上昇に伴い上昇するセルフクライミングステージであって、
建築物に対し上昇駆動され、両側部から前記ユニットフレームの端部が夫々挿入されるガイドフレームを備えることを特徴とするセルフクライミングステージ。
【請求項2】
前記ガイドフレームの内部において、前記ユニットフレームの端部ユニットが分解され上方に引き抜いて撤去されることを特徴とする請求項1に記載のセルフクライミングステージ。
【請求項3】
前記ユニットフレームを外周側で互いに連結するピンと、
前記ユニットフレームを内周側で互いに間隔調整可能に連結する調整ジャッキと、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のセルフクライミングステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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