説明

ソープディスペンサー

【課題】カウンタ部上に脱着可能に設けられた本体部を、作業性良くカウンタ部の下側のタンクに対し繋ぎ材にて繋ぐことのできるソープディスペンサーを提供する。
【解決手段】カウンタ部12に取り付けられる取付管16と、水石けん液Lのタンク18と、カウンタ部12に脱着可能に固定された本体部14と、カウンタ部12を貫通して本体部14とタンク18とを繋ぐワイヤ170とを備えてソープディスペンサー10を構成する。そのワイヤ170の下端部には、タンク18の小径の口部32を通過可能で且つ一旦口部32を通過した後においては、タンク18内部で口部32に係止し、抜け防止される抜止部材184を取り付けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水石けん液とエアとを混合して水石けん液をムース状として吐出するソープディスペンサーに関し、詳しくはポンプ作用をなす機構部を内蔵した本体部の盗難防止のための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水石けん液をタンクから吸い上げるとともに、これにエアを混合し、水石けん液をムース状として吐出管から吐出するソープディスペンサーが手洗所等において広く用いられている。
この種ソープディスペンサーとして、液ポンプとエアポンプとを有し、カウンタ部等の取付基体の下側のタンクから水石けん液を吸入チューブを通じて吸い上げるとともに、エアとの混合によりムース状化して吐出管に押し出す機構部を内蔵した本体部を、取付基体の上側に設けたものが公知である。
例えば下記特許文献1に、この種のソープディスペンサーの一例が開示されている。
【0003】
ところでこの種のソープディスペンサー、即ちポンプ作用を行う機構部を内蔵した本体部をカウンタ等の取付基体上に据置状態に設置するソープディスペンサーでは、本体部を脱着可能としてこれを取付基体から取り外せるようになしておけば、液ポンプやエアポンプ等を有する機構部の掃除その他のメンテナンス作業が行い易くなり好都合である。
【0004】
そこで本出願人は、かかる本体部がカウンタ部等の取付基体上に据置状態に設置されるソープディスペンサーにおいて、本体部を容易に取り外し或いはまた取付可能となしたソープディスペンサーを先の特許願において提案している(特願2008−9877:未公開)。
【0005】
ところでこのように本体部を取付基体上に設け、且つこれを容易に脱着し得るようになしたソープディスペンサーにあっては、上記のように内部のメンテナンス作業を容易に行える利点が得られる一方で、ソープディスペンサーを公共の手洗所等に設置した場合、悪戯等によって本体部が持ち去られてしまう恐れがある。
【0006】
そこで先の特許願に開示したソープディスペンサーでは、取付基体上の本体部と取付基体の下側に位置する、取付基体に固定の部材とを玉鎖やワイヤー等の可撓性の線状の繋ぎ材で繋いでおき、本体部が持ち去られてしまうのを防ぐようにしたものを一例として開示している。
【0007】
しかしながらその場合、繋ぎ材の下端部をカウンタ部等の取付基体の下側で、取付基体に固定の部材に対し締結ビス等にて締結固定するようにすると、同作業を作業者が取付基体の下側に潜り込んで行わなければならず、特に取付基体の下側の空間が狭い空間であったりすると作業が行いづらく、ひいてはソープディスペンサーの設置の際の作業性が悪くなってしまう。
【0008】
尚、下記特許文献2にはソープディスペンサーの、洗面台の上側に位置している操作部を兼用したキャップにおけるキャップカバーをキャップ本体にチェーンで連結し、キャップカバーの紛失や盗難を防止するようになした点が開示されている。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは、本発明の課題を解決することのできないものである。
またその他のソープディスペンサーにおいて、本発明の課題を解決することのできる従来技術は、本発明者の知る限り提案されていない。
【0009】
【特許文献1】特開平9−103387号公報
【特許文献2】特開平7−178000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような事情を背景とし、取付基体上に脱着可能に設けられた本体部を繋ぎ材にて作業性良く取付基体の下側のタンクに繋ぐことのできるソープディスペンサーを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
而して請求項1のものは、(イ)カウンタ部等の取付基体を上下に貫通する状態に該取付基体に取り付けられる取付管と、(ロ)該取付基体の下側で該取付管に連結される水石けん液のタンクと、(ハ)該取付基体の上側で該取付管に連結状態で該取付基体に脱着可能に固定され、液ポンプとエアポンプとを有してポンプ作用で吸入チューブを通じて前記タンク内の水石けん液を吸い上げるとともに、エアとの混合によりムース状化して吐出管に押し出す機構部を内蔵した本体部と、(ニ)前記取付基体を貫通して前記本体部と前記タンクとを繋ぐ繋ぎ材と、を有し、該繋ぎ材の下端部には、前記タンクの上部の小径の口部を該タンク内に向って通過可能且つ一旦該口部を通過した後においては、該タンク内部の被係止部に係止して抜け防止される抜止部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2のものは、請求項1において、前記抜止部材は、前記繋ぎ材に向きが可変状態に結合される中央部の環状部と、該環状部から互いに逆向きに延び出した、一端から他端までの全体の長さが少なくとも前記口部の径よりも長い一対の棒状のアームとを有するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記吸入チューブの下端部には異物除去のためのストレーナが取り付けられているとともに、上端部が前記本体部に接続され、該ストレーナが前記取付管の内部を通じて該吸入チューブとともに前記取付基体上に取出可能とされていることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0014】
以上のように本発明は、機構部を内蔵した本体部が取付基体上に脱着可能に設けられて成るソープディスペンサーにおいて、その本体部を繋ぎ止めておく繋ぎ材の下端部に、水石けん液のタンクの上部の小径の口部をタンク内に向って通過可能且つ一旦口部を通過した後においては、タンク内部の被係止部に係止して抜け防止される抜止部材を取り付けたものである。
【0015】
本発明では、この抜止部材をタンクの口部を通じてタンク内に繋ぎ材の下端部とともに挿入するだけで、簡単に取付基体の下側のタンクと取付基体の上側の本体部とを繋ぎ材にて連携し、本体部を取付基体側に繋ぎ止めておくことができる。
【0016】
即ち、本発明によれば取付基体の下側に作業者が潜り込んで、その狭い空間で繋ぎ材の下端部を取付基体の下側の部材に対してドライバー等の工具を用いて締結ビスを何回も回転操作し、固定作業をするといったことは必要でなく、単に抜止部材をタンクの中に挿入するだけで、繋ぎ材の下端部とタンクとを抜止状態に結合することができる。
従って本発明によれば、繋ぎ材によって本体部を取付基体の側に繋ぎ止めるための作業を極めて簡単に行うことができ、ひいてはソープディスペンサーの設置作業を作業性良く良好に行うことができる。
ここで抜止部材は、タンクの口部を被係止部として係止するものとなしておくことができる。
また上記繋ぎ材は非可撓性のものであっても良いが、この繋ぎ材は線状且つ可撓性のものを用いるのが好適である。
このようにしておくと、抜止部材をタンクの口部を通過して挿入する際の挿入性が良好である利点が得られる。
【0017】
次に請求項2は、上記抜止部材を、繋ぎ材と向きが可変状態に結合される中央部の環状部と、環状部から互いに逆向きに延び出した一対の棒状のアームとを有するものとなしたものである。
【0018】
この抜止部材は、これを例えば手に持ってその向きをタンクの口部を通過できる向きとなしておくことで、簡単に抜止部材を口部を通過してタンクの中に挿入することができる。
而して口部を通過した抜止部材は、その中央部が繋ぎ材で吊持されることによって、タンクの中で一対の棒状のアームを水平方向の向きとするように姿勢が変化し、その後はその姿勢の下で抜止部材がタンクの口部を出側には通過できなくなり、ここにおいて取付基体の下側のタンクと取付基体の上側の本体部とが、繋ぎ材によって繋がれた状態となる。
【0019】
本発明では、タンク内の水石けん液を吸入する吸入チューブの下端部に、異物除去のためのストレーナを取り付けておくとともに、吸入チューブの上端部を上記の本体部に接続し、そのストレーナを吸入チューブとともに取付管の内部を通じて取付基体上に取出可能となしておくことができる(請求項3)。
【0020】
このようにしておけば、タンク内のストレーナの掃除等のメンテナンスの必要が生じたときに、タンクと繋ぎ材の下端部との結合状態を解き、タンクを取付管から分離した上でタンクからストレーナを取り出すといったことを行わなくても、即ちタンクを取り付けた状態のままでストレーナを吸入チューブとともに取付基体上に取り出して、ストレーナの掃除等のメンテナンス作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態のソープディスペンサー、12はその取付基体としてのカウンタ部である。
ソープディスペンサー10は、カウンタ部12上に据置状態に設けられ、ポンプ作用で水石けん液を吸い上げた上、これにエアを混合して水石けん液をムース状とし、吐出管82に押し出す機構部を内蔵した本体部14と、取付管16と、カウンタ部12の下側に配置される水石けん液のタンク18と、タンク18内の水石けん液を吸い上げる吸入チューブ20とを有している。
ここで吸入チューブ20の下端部には異物除去のためのストレーナ22が取り付けられている。
【0022】
取付管16は、カウンタ部12に設けられた貫通の取付穴24に下向きに挿通されている。
取付管16は、カウンタ部12の上側において取付穴24への挿通部よりも大径をなす円形のカップ状部26を一体に有しており、また挿通部には外周面に雄ねじが設けられていて、その雄ねじに対し、カウンタ部12の下側で固定ナット28が螺合されている。
そして固定ナット28の締付けにより、取付管16が台座部を兼ねたカップ状部26をカウンタ部12に対して下向きに押し付ける状態に、ゴム製の三角パッキン30を介してカウンタ部12に固定されている。
【0023】
タンク18は、全体として有底の円筒状をなしており、その上部の小径の口部32において、袋ナット34及び金属製のリング36を介して取付管16に連結されている。
詳しくは、図3に示しているようにタンク18の口部32の外周面には環状溝が形成されていて、そこに金属製のリング36が保持されている。
【0024】
一方袋ナット34は、下端部に径方向内向きの環状のフランジ状の係合部38を有しており、この係合部38をリング36に対し上向きに係合させる状態で、袋ナット34の内周面の雌ねじが取付管16の外周面の雄ねじに螺合されることで、口部32の上端をパッキン40を介して取付管16の下端に当接させる状態に、タンク18の口部32が連結管16に水密に連結されている。
【0025】
この実施形態において、カウンタ部12上の本体部14は、その全体が取付管16から、即ちカウンタ部12から取外し可能とされている。
図2に、その本体部14の構成が拡大して具体的に示してある。
【0026】
図中42は本体部14におけるボデーで、このボデー42は下端部に円筒形状をなす嵌合部44を有し、この嵌合部44が、取付管16のカップ状部26に外嵌状態に嵌合され、押ボタン式のストッパ52を有する連結機構54にて、取付管16に脱着可能に連結されている。
図4にこの連結機構54の構成が具体的に示してある。
【0027】
図4において、70は押ボタン式のストッパ52の、断面L字状をなす取付部材で、ビス58にて取付管16のカップ状部26に固定されており、そしてこの取付部材56にてガイドピン60が嵌合状態に保持されている。
このガイドピン60には、ストッパ52を径方向外方に付勢する付勢部材としてのコイルスプリング62が外挿されている。
【0028】
コイルスプリング62は、その一端(図中右端)を取付部材56に当接させ、また他端(図中左端)をストッパ52に当接させ、ストッパ52を径方向外方に押し出す向きに付勢している。
ストッパ52は円筒形状をなしていて、その底部にコイルスプリング62の一端を当接せしめている。
ストッパ52は、カップ状部26に形成された円形の嵌合孔64に図中左右方向に摺動可能に嵌合している。
ストッパ52は、図中右端に外向きのフランジ状の掛止部66を有しており、その掛止部66がカップ状部26の嵌合孔64周りの部分に掛止することで、カップ状部26から抜け防止されている。
【0029】
押ボタン式のストッパ52は、コイルスプリング62の図中左向きの付勢力によって、通常時には掛止部66がカップ状部26に掛止する状態に図中左向きに突出した状態にある。
この状態でストッパ52は、ボデー42の円筒部64に形成された嵌合孔70に対しても嵌合しており、そしてストッパ52と嵌合孔70との嵌合に基いて、ボデー42が取付管16に対し抜止状態に連結されている。
一方でこのストッパ52を図中右向きに押し込むと、ストッパ52によるストッパ作用が解除され、ここにおいてボデー42が、即ち本体部14が図中上方に取付管16から取外し可能となる。
【0030】
図3にも示しているようにボデー42には、その中心部に下向きに突出する円筒部68が一体に形成されており、そこに筒状をなす接続部材72がねじ結合にて取り付けられている。
この接続部材72には、下向きに突出する細径の円筒形状の挿込口74が一体に構成されており、そしてそこに可撓性を有する水石けん液Lの吸入チューブ20の上端部が挿込接続されている。
吸入チューブ20は、図2に示しているように下端をタンク18内部の水石けん液Lに浸漬させており、タンク18内の水石けん液Lは、この吸入チューブ20の内部を図中上向きに吸い上げられる。
【0031】
上記の接続部材72には、図2にも示しているように水石けん液Lの吸上方向の流れのみを許容し、逆方向の流れを阻止するボール弁から成る逆止弁76が、水石けん液Lの液通路上に設けられている。
接続部材72にはまた、逆止弁76の上昇端を規定するストッパ78がねじ結合により取り付けられている。
このストッパ78は、ボール弁から成る逆止弁76が一定距離上昇したところで、これを当接させて更なる上昇を阻止するもので、このストッパ78には、図2に示しているようにこれを上下に貫通する複数の(ここでは3つの)貫通孔80が、ストッパ78の中心から径方向に離れた位置に且つ周方向に120°ごと隔たった3個所に設けられている。
【0032】
従って逆止弁76が上昇してストッパ78に当接しても貫通孔80は逆止弁76にて閉鎖されることはなく、吸入チューブ20を通じて上向きに吸い上げられた水石けん液Lは、この貫通孔80を通じて上方に流通可能である。
【0033】
図2に示しているように、ボデー42には吐出管82が固定状態に取り付けてある。
この吐出管82は、ムース状の水石けん液Lを先端の吐出口84から吐出するもので、図2に示すようにその基端部には円筒状の嵌込部86が設けられており、その嵌込部86を、ボデー42の嵌込穴88に嵌め込む状態にボデー42に脱着可能に取り付けてある。
ここで嵌込部86は止ねじ90にてボデー42に固定されており、従って止ねじ90を緩めることで、嵌込部86をボデー42の嵌込穴88から抜出可能である。
その嵌込部86の外周面には凹部92が形成されており、止ねじ90は、先端部をその凹部92に挿入させるようになっている。
この実施形態において、吐出管82は、ボデー42を取付管16から図中上向きに切り離した後、止ねじ90を雌ねじ孔94の下端の開口を通じて緩めることで、ボデー42から抜出可能である。
【0034】
この嵌込部86の内周側には、円筒状のメッシュ部材96が保持されている。
メッシュ部材96は、軸方向の両端にメッシュ98を保持しており、水石けん液Lとエアとがここを通過する過程で、そのメッシュ98により水石けん液Lとエアとの混合が促進される。
【0035】
図2に示しているようにボデー42は、中心部に断面円形の上下方向の貫通穴を有しており、そしてその下部に、吸入チューブ20を通じて吸い上げられた水石けん液Lを所定量一時的に貯留する液室100を内部に形成する、水石けん液L用の液シリンダ102が一体に構成され、またその上部に、内部にエア室104を形成するエアシリンダ106が一体に構成されている。
そしてその液シリンダ102に、水石けん液L用の液ピストン108が上下に摺動可能に嵌合され、またエアシリンダ106に、逆カップ状をなすエアピストン110が上下に摺動可能に嵌合されている。
【0036】
この液ピストン108の下端部の外周面には、液ピストン108と液シリンダ102との間をシールするシール部材としてのOリング112が、液ピストン108と一体移動する状態に保持されており、またその上側において、液ピストン108の外周面とボデー42の内周面との間には、円筒状の隙間が形成されていて、その円筒状の隙間が水石けん液Lとエアとを混合する混合室114を成している。
【0037】
そして液ピストン108には、上記の液室100とこの混合室114とを連通させ、液室100内の水石けん液Lを混合室114に流出させる液流出通路118が、液ピストン108を貫通して形成されている。
ここで液流出通路118は、図中上下方向の軸方向の通路と、その上端から径方向に直角に折れ曲った径方向の通路とからなっている。
この液流出通路118上には、液室100から混合室114に向う水石けん液Lの流れのみを許容し逆方向の流れを阻止する、ボール弁から成る一方向性の逆止弁120が設けられている。
ここで円筒状をなす混合室114は、ボデー42に形成された連通路122を介して、上記の吐出管82の内部に連通せしめられている。
【0038】
図2において、124は液ピストン108の駆動軸であって図中上下方向に延びており、下部に断面円形の大径部126を有している。
この大径部126の外周面にはシール部材としてのOリング(又はUパッキン)128が保持されており、このOリング128を介して大径部126の外周面がボデー42の内周面に摺動可能に嵌合されている。
【0039】
この駆動軸124の下端部は、液ピストン108の上部に下向きに嵌入されており、そしてその嵌入部分が、液ピストン108に対して結合ピン130にて結合され、液ピストン108と駆動軸124とが図中上下に一体移動するようになしてある。
【0040】
この実施形態において、上記円筒状をなす混合室114は、この大径部126に保持されたOリング128と、液ピストン108の下端部に保持されたOリング112との間の位置に形成されている。
尚132は、ボデー42の中心の貫通孔の上端を閉鎖するキャップで、ボデー42に対して下向きにねじ結合され、取り付けられている。
【0041】
134は、ボデー42に対して図中上下方向に移動可能に設けられた押ボタン式の操作部で、円形の逆カップ状をなしている。
操作部134は、周壁部136と上壁部138とを有していて、その上壁部138に対し、上記の駆動軸124の上端部が固定ねじ140にて固定されている。
ここで駆動軸124の上端部には、周方向に沿って円形の環状溝142が形成されていて、そこに固定ねじ140の先端部が係入されている。
【0042】
操作部134は、周壁部136とボデー42との間に円形の環状の隙間を形成しており、その隙間が、外部の空気を内部に吸入するための吸気部144とされている。
操作部134にはまた、上記のエアピストン110が図示を省略する固定ねじ146にて固定されており、かかるエアピストン110が駆動軸124、即ち液ピストン108とともに操作部134と一体に図中上下方向に移動するようになしてある。
【0043】
上記エアシリンダ106と、このエアピストン110との内側に形成されるエア室104には、付勢手段としてのコイルスプリング148が収容されている。
コイルスプリング148は、下端をボデー42に当接させ、また上端をエアピストン110に当接させて、その付勢力をエアピストン110を介して操作部134に上向きに及ぼしている。
従って操作部134は、通常時はそのコイルスプリング148の上向きの付勢力によって、上向きに押し上げられた状態にある。
【0044】
エアピストン110は、下端部且つ外周側にシール部材としてのゴム製の断面U字形状をなすUパッキン150を保持しており、このUパッキン150を介して、エアピストン110がエアシリンダ106に図中上下方向に摺動可能に嵌合されている。
【0045】
エアシリンダ106とエアピストン110との内側に形成される上記のエア室104は、断面L字状をなす形態でボデー42に設けられたエア流出通路152を介して、上記の円筒状をなす混合室114と連通せしめられている。
エア室104内のエアは、エアピストン110の押込みによりこのエア流出通路152を通じて混合室114へと流出せしめられる。
【0046】
尚、エア流出通路152の末端のエア流出口154はボデー42の内周面で開口しており、エア流出通路152を通じて押し出されたエアは、このエア流出口154から液ピストン108の外周面に突き当たった後、その液ピストン108の外周面に沿って周方向に向きを変化しながら混合室114へと流れ込む。
【0047】
図2の部分拡大図に示すようにこのエア流出通路152上には、エア室104から混合室114へのエアの流通を許容し、逆方向の流れを阻止する逆止弁156が設けられている。
逆止弁156はダックビル弁と称するもので、くちばし形状の弁部158を有しており、エア室104から混合室114へとエアが流れるときにはくちばし状の弁部158を開いてエアの通過を許容し、また逆方向の流れに対しては、くちばし状の弁部158を閉じてその逆方向の流れを阻止する。
この逆止弁156は、取付部材160にてボデー42に取り付けられている。
ここで取付部材160は円筒状をなしていて、外周面の雄ねじにおいてボデー42の雌ねじにねじ結合されている。
【0048】
上記エアピストン110には、図2の部分拡大図に示しているようにその上壁部にエア通路の一部をなす貫通孔162が形成されており、吸気口144から吸入されたエアが、この貫通孔162を通じてエア室104へと流入するようになしてある。
そしてこのエアピストン110の上壁部には、エア室104に向うエアの流れのみを許容し、逆方向の流れを阻止する逆止弁164が設けられている。
【0049】
ここで逆止弁164はアンブレラ弁と称されるもので軸部 165にてエアピストン110の上壁部に取り付けられ、エアがエア室104に向うときには傘状の弁部166を図5の部分拡大図に示すように下向きに開いてエアの流れを許容し、また逆方向の流れに対しては弁部166が貫通孔162を閉じてエアの流れを阻止する。
【0050】
尚、図2において168は、液シリンダ102,液ピストン108,エアシリンダ106,エアピストン110を要素として含み、ポンプ作用でタンク18内の水石けん液Lを吸い上げるとともに、ムース状化して吐出管82側へと押し出し、また同じくポンプ作用で外部の空気をエア室104に吸入し且つ吐出管82側へと押し出す機構部を表しており、かかる機構部168が本体部14内に組み込まれている。
【0051】
次に本実施形態の作用を以下に説明する。
ソープディスペンサー10は、液シリンダ102の内側の液室100に所定量の水石けん液Lを一時的に貯留した状態で、操作部134を下向きに押し込むと、液ピストン108が駆動軸124を介して下向きに押し込まれ、これにより液室100内の水石けん液Lが、液ピストン108を貫通して形成された液流出通路118を通じ、逆止弁120を押し開いて混合室114へと流出する。
【0052】
一方エアピストン110は、操作部134の下向きの押込みにより、液ピストン108と一体に下向きに移動し、これによりエア室104内のエアが、エア流出通路152を通じて逆止弁156の弁部158を押し開きながら、混合室114へと勢い良く流出する。
【0053】
このときエア流出通路152の末端のエア流出口154から混合室114へと勢い良く流出したエアは、先ず液ピストン108の外周面に突き当った後、その外周面に沿って周方向及び軸方向に流れ、そのときの流れの向きの変化によって混合室114内で不規則なエアの流れを生ぜしめ、そしてそのことによって、更には混合室114が広い混合空間を有していることによって、混合室114内で水石けん液Lに対してエアが十分に撹拌混合され、そこで水石けん液Lが良好にムース状化される。
【0054】
この実施形態では、混合室114が同じ上下方向長を保ちながら、その全体が液ピストン108の移動に連れて下向きに移動する。即ち位置固定状態に設けられたエア流出口154が、混合室114に対して図中下側から上側に向って相対移動し、エアの流出位置を、混合室114に対し下端から上端に向って相対的に漸次変化させて行く。
【0055】
そしてこのようにしてムース状化された水石けん液Lが吐出管82へと押し出され、更にその内部の吐出通路を通じ流通した上で、先端の吐出口84から手洗器のボウル部等の外部に吐出される。
【0056】
尚混合室114内部の水石けん液Lとエアとの混合体が吐出管82へと流れ込む際、その途中に設けられたメッシュ部材96のメッシュ98によって、即ちそこを水石けん液Lとエアとの混合体が通過することで気液混合、即ち水石けん液Lのムース状化がより一層促進される。
【0057】
以上のようにして操作部134を押込端まで一杯に押し込み、所定量のムース状化した水石けん液Lを吐出した後、操作部134に加えていた力を除くと、ここにおいて操作部134がコイルスプリング148の付勢力によって図中上向きに押し上げられ、そしてこれと一体に液ピストン108及びエアピストン110が上昇せしめられる。
【0058】
このとき、吸気口144から外部の空気が逆止弁164を押し開きながらエア室104へと流入し、新たな空気がエア室104に供給される。
また同時に、液ピストン108の上昇により発生した負圧によって、タンク18内の水石けん液Lが吸入チューブ20を通じ逆止弁76を押し開きながら、液シリンダ102の内側の液室100に吸い上げられ、そこに一時的に貯留される。
【0059】
図1,図2に示しているように、この実施形態では液シリンダ102,液ピストン108,エアシリンダ106,エアピストン110,駆動軸124,吸入チューブ20,円筒状を成す混合室114,操作部134がすべて同軸状に配置されており、また駆動軸124,液ピストン108,接続部材72,吸入チューブ20がすべて上下の同一直線上に設けられ、そして更にその直線上において逆止弁120,76が設けられている。
尚この実施形態では、本体部14を取り外し、取付管16のカップ状部26に水石けん液を注ぎ込むことで、タンク18内に水石けん液を補給することができる。
【0060】
本実施形態では、カウンタ部12の上側に位置する本体部14が吐出管82とともに取付管16から、即ちカウンタ部12から取外し可能であることから、悪戯等により本体部14が持ち去られないように、カウンタ部12の上側の本体部14と、カウンタ部12の下側のタンク18とが繋ぎ材によって互いに結合されている。
【0061】
図5において、170はその繋ぎ材としての可撓性の線状をなす金属製のワイヤである。
ワイヤ170には、上端部に固定用のリング部172が設けられ、このリング部172においてワイヤ170が締結ビス174によって、本体部14におけるボデー42の嵌合部44と中心部の円筒部68との間の上部の壁部176に締結固定されている。
【0062】
詳しくは、ボデー42の壁部176には凹部178に続いて雌ねじ孔180が設けられ、この雌ねじ孔180にリング部172を挿通した締結ビス174がねじ込まれることで、ワイヤ170の上端部即ちリング部172がボデー42に締結固定されている。
【0063】
尚このリング部172は、ワイヤ170の上端側をリング状に回曲させ、その状態でワイヤ170をかしめ具182でかしめることによって形成されている。
【0064】
ワイヤ170にはまた、下端側に同様にしてリング部172が設けられている。
図5において、184は太さが一様の金属製の棒材を中央部で円形に1回転曲げ変形させて構成した抜止部材で、中央部の円形の環状部186と、この環状部186から互いに逆向きに延び出した一対の棒状のアーム188とを有している。
ここで一対のアーム188は、それぞれ突出し長さが同じ長さとされている。
【0065】
この抜止部材184は、ワイヤ170にて中央部の環状部186を吊持した状態で、一対の棒状のアーム188がワイヤ170による吊持部位を支点として、バランスを取るように回転し、一対のアーム188が水平向きとなるように自身の姿勢を調節し保持する。
尚、一対のアーム188の一端から他端までの長さは、タンク18における口部32の内径よりも長くしてある。
【0066】
この実施形態では、抜止部材184を手等にもってその向きを変えることで、詳しくは図6(A)に示すように一対の棒状のアーム188がワイヤ170の向きに沿った向きとなるようにその向きを変えることで、抜止部材184をタンク18の内部に挿入可能である。そのように抜止部材184の寸法が予め定められている。
【0067】
而して抜止部材184をタンク18の口部32を通過してタンク18の内部に挿入すると、ワイヤ170によって環状部186の部分で吊持された抜止部材184は、自身のバランス作用によって図6(B)に示しているように一対のアーム188が水平向きとなるようにその向き,姿勢を変える。
【0068】
このように抜止部材184がタンク18の内部で水平向きになると、この状態でワイヤ170を上向きに引張っても、抜止部材184の一対のアーム188が、タンク18の口部32に対して係止した状態となり(尚一対のアーム188がタンク18の口部32直下の肩部に係止したものと考えることもできる)、ここにおいてワイヤ170を上向きに引張っても、抜止部材184はタンク18から抜けることはなく、ワイヤ170の下端部とタンク18とが連結された状態となる。
【0069】
即ちカウンタ部12の上側の本体部14と、カウンタ部12の下側のタンク18とが、ワイヤ170で繋がれ結合された状態となる。
従って本体部14は、ワイヤ170の長さに応じた一定距離だけはカウンタ部12から持上げ可能であるが、それ以上には本体部14をカウンタ部12から引き離すことはできなくなる。
【0070】
尚、抜止部材184をタンク18の内部に挿入することによって、ワイヤ170の下端部とタンク18とを連結する作業は、タンク18を連結管16から分離した状態で行っても良いし、或いは図7に示しているようにタンク18を袋ナット34で取付管16に連結した状態の下で、抜止部材184を垂直に近い姿勢に傾け、取付管16の内部を通じてタンク18内部に挿入するようになすこともできる。
【0071】
以上のような本実施形態によれば、抜止部材184をタンク18の口部32を通じてタンク18内にワイヤ170の下端部とともに挿入するだけで、簡単にカウンタ部12の下側のタンク18と、カウンタ部12の上側の本体部14とをワイヤ170にて連繋し、本体部14をカウンタ部12側に繋ぎ止めておくことができる。
【0072】
従って本実施形態によれば、カウンタ部12の下側に作業者が潜り込んで、その狭い空間でワイヤ170の下端部をカウンタ部12の下側の部材に対してドライバー等の工具を用いて締結ビスを何回も回転操作し、固定作業をするといったことは必要でなく、単に抜止部材184をタンク18の中に挿入するだけで、ワイヤ170の下端部とタンク18とを抜止状態に結合することができる。
それ故本実施形態によれば、ワイヤ170によって本体部14をカウンタ部12の側に繋ぎ止めるための作業を極めて簡単に行うことができ、ひいてはソープディスペンサー10の設置作業を作業性良く良好に行うことができる。
【0073】
また本実施形態では、タンク18内の水石けん液Lを吸入する吸入チューブ20の下端部に取り付けた異物除去のためのストレーナ22を吸入チューブ20とともに取付管16の内部を通じてカウンタ部12上に取り出すことが可能であり、タンク18内のストレーナ22の掃除等のメンテナンスの必要が生じたときに、タンク18とワイヤ170の下端部との結合状態を解き、タンク18を取付管16から分離するといったことを行わなくても、即ちタンク18を取り付けた状態のままで、ストレーナ22を吸入チューブ20とともにカウンタ部12上に取り出し、ストレーナ22の掃除等のメンテナンス作業を行うことができる。
【0074】
図8は、抜止部材184の他の形態例を示したものである。
この例の抜止部材184は、円形のリング状をなす上端の基部190から周方向の複数個所、ここでは周方向に90°ごと隔たった4個所から弾性脚192を垂下させ、それぞれの下端部に、タンク18の口部32を被係止部としてそこに上向きに係止する係止爪194を設けたものである。
ここで各係止爪194には、抜止部材184を口部32を通過してタンク18内に挿入する際の挿入性を高めるための傾斜形状のカム面196が設けてある。
尚、ワイヤ170の下端部は固定具198によって抜止部材184に固定されている。
【0075】
この抜止部材184の場合、各弾性脚192を径方向内向きに弾性変形させることで、口部32を通過してタンク18の内部に挿入することができる。
而して一旦抜止部材184をタンク18の内部に挿入した後においては、各係止爪194が口部32に係止して抜止めされ、かかる抜止部材184の抜止作用によって、ワイヤ170がタンク18に抜止状態に結合される。
【0076】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示である。
例えば本発明では繋ぎ材として玉鎖その他のものを用いることも可能であるし、またタンク18の形状を変えることで抜止部材をタンク18内部の、口部32以外の被係止部に係止させるようになすことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態のソープディスペンサーの全体構成を示す断面図である。
【図2】同実施形態における本体部の構成を拡大して示した断面図である。
【図3】同実施形態における本体部及びタンクを取付管から取り外した状態を示した図である。
【図4】同実施形態における連結機構の構成を示した図である。
【図5】同実施形態における盗難防止の構造部分を示した図である
【図6】同実施形態の作用説明図である。
【図7】同実施形態の図6とは異なる作用説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態の要部を示した図である。
【符号の説明】
【0078】
10 ソープディスペンサー
12 カウンタ部(取付基体)
14 本体部
16 取付管
18 タンク
20 吸入チューブ
22 ストレーナ
32 口部
82 吐出管
168 機構部
170 ワイヤ(繋ぎ材)
184 抜止部材
186 環状部
188 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)カウンタ部等の取付基体を上下に貫通する状態に該取付基体に取り付けられる取付管と、
(ロ)該取付基体の下側で該取付管に連結される水石けん液のタンクと、
(ハ)該取付基体の上側で該取付管に連結状態で該取付基体に脱着可能に固定され、液ポンプとエアポンプとを有してポンプ作用で吸入チューブを通じて前記タンク内の水石けん液を吸い上げるとともに、エアとの混合によりムース状化して吐出管に押し出す機構部を内蔵した本体部と、
(ニ)前記取付基体を貫通して前記本体部と前記タンクとを繋ぐ繋ぎ材と、
を有し、
該繋ぎ材の下端部には、前記タンクの上部の小径の口部を該タンク内に向って通過可能且つ一旦該口部を通過した後においては、該タンク内部の被係止部に係止して抜け防止される抜止部材が取り付けられていることを特徴とするソープディスペンサー。
【請求項2】
請求項1において、前記抜止部材は、前記繋ぎ材に向きが可変状態に結合される中央部の環状部と、該環状部から互いに逆向きに延び出した、一端から他端までの全体の長さが少なくとも前記口部の径よりも長い一対の棒状のアームとを有するものであることを特徴とするソープディスペンサー。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記吸入チューブの下端部には異物除去のためのストレーナが取り付けられているとともに、上端部が前記本体部に接続され、該ストレーナが前記取付管の内部を通じて該吸入チューブとともに前記取付基体上に取出可能とされていることを特徴とするソープディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−88820(P2010−88820A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264537(P2008−264537)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】