説明

タイヤ取付位置判定システム

【課題】タイヤ空気圧検出器から送信される重力情報によってタイヤの取付位置を特定可能とすることにより、システム構成を簡素化することができるタイヤ取付位置判定システムを提供する。
【解決手段】通常、車両1においては、駐停車後、一定時間走行し、再度駐停車したとき、各タイヤ2a〜2dでタイヤの回転位置が異なる。これを踏まえ、回転数検出センサ20a〜20dから出力される回転数信号(パルス信号)Splと、タイヤ空気圧検出器4a〜4dから送信される重力分力値(重力分力値データDgx)とで、各々タイヤ回転位置を算出する。そして、回転数信号Splから求まるタイヤ位置と、重力分力値データDgxから求まるタイヤ位置とを比較することにより、各タイヤ2a〜2dの取付位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの取付位置を特定するタイヤ取付位置判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、走行車両の安全確保を目的として、各タイヤのタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムが搭載される傾向にある。タイヤ空気圧監視システムは、各タイヤにタイヤ空気圧検出器を取り付け、このタイヤ空気圧検出器にて検出したタイヤ空気圧を、タイヤ空気圧信号として車体に無線送信する。車体は、このタイヤ空気圧信号を受信機で受信すると、タイヤ空気圧信号内の圧力データを参照することによりタイヤ空気圧を把握し、低圧タイヤが存在することを確認すると、低圧警報を運転者に通知する。
【0003】
ところで、この種のタイヤ空気圧監視システムにおいて、低圧タイヤの警報を出力する際、タイヤ位置も併せて通知するには、どの位置にどのタイヤIDのタイヤ空気圧検出器が取り付けられているのかを車体に登録しておく必要がある。このため、タイヤ空気圧監視システムの種類によっては、走行中において、タイヤIDとタイヤ取付位置とを関連付けて受信機に登録するタイヤ取付位置判定機能、いわゆるオートロケーション機能を備えたものもある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−312342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のタイヤ空気圧監視システムにおいては、タイヤ取付位置判定機能の構成を、できるだけ簡素化したいニーズがあった。即ち、各タイヤの取付位置を、別の部品(例えばイニシエータ等)を使用することなく特定することができる技術の開発ニーズがあった。
【0006】
本発明の目的は、タイヤ空気圧検出器から送信される重力情報によってタイヤの取付位置を特定可能とすることにより、システム構成を簡素化することができるタイヤ取付位置判定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明では、各タイヤに設けられたタイヤ空気圧検出器でタイヤ空気圧を検出し、そのタイヤ検出信号を車体に送信してタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムに使用され、当該タイヤの取付位置を判定するタイヤ取付位置判定システムにおいて、前記タイヤ空気圧検出器にかかる重力の分力を重力情報として検出する重力情報取得手段と、前記タイヤの車軸の回転を監視することにより、前記タイヤにおいて実際に発生する回転角度を車体にて検出するタイヤ回転角度監視手段と、ある駐停車時と以降のある駐停車時との間で、前記重力情報取得手段と前記タイヤ回転角度監視手段とで各々求められる前記タイヤの回転角度を比較し、各タイヤの取付位置を特定するタイヤ取付位置特定手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
本発明の構成によれば、ある駐停車時において、重力情報取得手段とタイヤ回転角度監視手段とで各タイヤの回転角度を求め、これ以降のある駐停車時においても、同様に各タイヤの回転角度を求める。そして、これら回転角度を比較することにより、各タイヤの取付位置を特定する。なお、例えばタイヤが氷上を回転するとき、滑って回転しない状況も想定されるので、タイヤ回転角度監視手段は、タイヤの回転を滑りに影響を受けないよう車軸にてタイヤ回転を監視するのが好ましい。
【0009】
ところで、タイヤ回転角度監視手段は、どの位置に取り付くタイヤがどれだけ回転したのかを検出するものである。よって、タイヤ回転角度監視手段にて求まるタイヤの回転位置の変化は、どの取付位置のタイヤが、どの程度回転したのかを表すことになる。一方、タイヤ空気圧検出器から送信される重力情報は、各タイヤに取り付くタイヤ空気圧検出器から送信される固有の値である。このため、重力情報取得手段により求まるタイヤの回転位置の変化を、タイヤ回転角度監視手段により求まるタイヤの回転位置の変化と照らし合わせ、変化が合致する組み合わせを確認すれば、各タイヤ空気圧検出器の取付位置、つまりタイヤの取付位置を特定することが可能となる。
【0010】
以上のように、本構成は、タイヤ空気圧検出器から得られる重力情報と、それぞれの車軸ごとに求まるタイヤの回転位置とを基に、各タイヤの取付位置を特定する技術である。よって、タイヤ空気圧検出器から得られる重力情報によって各タイヤの取付位置が特定可能となるので、タイヤの取付位置の特定に際して、別の情報を別途必要としない。このため、タイヤ空気圧検出器や車体などに新たな部品を別途追加する必要なく、各タイヤの取付位置を簡素な構成で判定することが可能となる。
【0011】
なお、定義として、「駐停車」とは、タイヤが回転した状態から止まるとき(走行停止)、又は止まった状態から回転するとき(走行開始)のことを言う。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記タイヤ空気圧検出器に設けられた重力検出センサは、前記重力情報として、前記タイヤ空気圧検出器の車軸方向における重力の分力を検出し、前記タイヤ取付位置特定手段は、前記重力検出センサが検出した重力分力値を基に、前記タイヤ空気圧検出器のタイヤ回転方向における位置を求め、当該位置を用いて前記タイヤの取付位置を特定することを要旨とする。この構成によれば、重力検出センサとして、1軸を検出するのみの安価なセンサを使用することが可能となるので、センサにかかるコストを低く抑えることが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記タイヤ取付位置特定手段は、ある駐停車時のタイヤ回転位置を基準として、以降の1駐停車時に前記タイヤがとる回転位置を、前記重力情報取得手段と前記タイヤ回転角度監視手段との各々で求め、これらを基にタイヤ取付位置を特定することを要旨とする。この構成によれば、回転数情報から求めたタイヤの回転角度と、重力情報から求めたタイヤの回転角度とを比較することにより、タイヤの取付位置を判定する。よって、それぞれの角度を比較するという簡素な処理で、かつ短時間に、タイヤの取付位置を判定することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記タイヤ空気圧検出器内の重力検出センサは、少なくとも前記タイヤ空気圧検出器がタイヤ回転方向における最上点付近又は最下点付近のいずれにあるのかを検出し、前記タイヤ空気圧検出器は、前記重力情報として、前記タイヤ空気圧検出器がタイヤ回転の最上点付近又は最下点付近のいずれにあるのかを通知し、前記タイヤ取付位置特定手段は、前記タイヤ回転角度監視手段の回転数情報を基に、前記タイヤが最上点付近又は最下点付近のいずれに位置するのかを求め、この判定結果と前記重力情報とを用いてタイヤ取付位置を特定することを要旨とする。この構成によれば、重力検出センサとして、例えばタイヤ空気圧検出器が上下方向のいずれにあるのかを出力するだけの簡易的なセンサを使用することが可能となる。このため、システム構成の簡素化に一層寄与し、部品コスト削減にも効果が高い。
【0014】
請求項5では、請求項1又は2に記載の発明において、前記タイヤの位置特定の処理の前に前記タイヤの左右を判別する左右タイヤ判別手段を備え、前記タイヤ取付位置特定手段は、前記左右タイヤ判別手段によって当該タイヤの左右位置が既に特定されたものとして、タイヤ取付位置特定の処理を実行することを要旨とする。この構成によれば、タイヤの左右判別は既に特定できているものとしてタイヤ取付位置の判定を行うので、タイヤ位置特定に必要なセンサ数を減らすことが可能となる。よって、システム構成の簡素化に効果が高くなる。
【0015】
請求項6では、請求項1又は2に記載の発明において、前記タイヤ取付位置特定手段は、駐停車時における前記タイヤ空気圧検出器にかかる重力分力値の増加減を基に、前記タイヤの取付位置を特定することを要旨とする。この構成によれば、タイヤ回転方向平面で、かつ車軸の位置を原点とするXY座標系において、タイヤ空気圧検出器が第1、第4象限にあるのか、又は第2、第3象限にあるのかを判別することが可能となる。よって、タイヤ取付位置の判別精度の向上に繋がり、結果、判定時間の短縮化に効果が高くなる。
【0016】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の発明において、前記タイヤ取付位置特定手段は、前記した以降の1駐停車時、全ての前記タイヤにおいて取付位置を特定することができなければ、以降の駐停車時において、位置未特定のタイヤ取付位置に関して位置特定の処理を行い、この処理を、全てのタイヤで取付位置が特定されるまで繰り返し実施することを要旨とする。この構成によれば、タイヤの取付位置判定の際、そのときの駐停車時において、全てのタイヤにおいて取付位置を特定することができなければ、処理を一旦終了し、別の機会に処理を再実行して、全タイヤの取付位置を特定する。即ち、全タイヤ位置を特定することができるまで、位置特定の処理を繰り返す。このため、全てのタイヤの取付位置を、漏れなく特定することが可能となる。
【0017】
請求項8に記載の発明では、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の発明において、前記タイヤ取付位置特定手段は、前記した以降の1駐停車時において前記重力情報の取得を待つ際、一定時間内に当該重力情報を取得することができなければ、処理を終了し、以降の停車時において該処理を再実行することを要旨とする。この構成によれば、タイヤの取付位置判定において、重力情報の取得を待つ際、一定時間内に重力情報を取得することができなければ、処理を一旦終了し、別の機会に処理を再実行する。よって、重力情報の取得を無駄に待つ必要がないので、タイヤの取付位置判定を効率よく実施することが可能となる。
【0018】
請求項9では、請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の発明において、前記タイヤ取付位置特定手段は、前記タイヤが回転した状態から止まるとき、又は前記タイヤが止まった状態から回転するときに、タイヤ取付位置特定の処理を実行することを要旨とする。この構成によれば、例えばタイヤが止まった状態から回転するときにタイヤ取付位置の判定を行うようにすれば、タイヤは回転をし始めるときであれば単に一方向にのみ回転する動きをとるので、タイヤ取付位置の特定を精度よく行うことが可能となる。
【0019】
請求項10に記載の発明では、請求項1〜9のうちいずれか一項に記載の発明において、前記タイヤ空気圧検出器に電波送信を実行させるトリガ信号を無線送信するトリガ手段を前記車体に備え、前記トリガ手段は、車両が駐停車すると、前記トリガ信号を前記タイヤ空気圧検出器に送信し、前記タイヤ空気圧検出器は、前記トリガ信号の受信を契機に、自身の重力検出センサで検出した前記重力情報の送信を開始することを要旨とする。この構成によれば、車両が駐停車した際、トリガ手段にてタイヤ空気圧検出器に電波送信を開始させるので、タイヤの取付位置の判定を直ぐに行うことが可能となる。よって、位置判定にかかる時間の短縮に効果が高くなる。
【0020】
請求項11に記載の発明では、請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の発明において、前記タイヤ空気圧検出器は、車両が駐停車すると、重力検出センサで検出した前記重力情報を、一時的にフレームを増やして送信することを要旨とする。この構成によれば、タイヤ空気圧検出器から送信される重力情報を車体において受け取れる確率が高くなるので、タイヤ位置判定にかかる時間の短縮に一層効果が高くなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タイヤ空気圧検出器から送信される重力情報によってタイヤの取付位置を特定可能とすることにより、システム構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態のタイヤ空気圧監視システムの構成図。
【図2】(a),(b)は、パルス演算角度の説明図。
【図3】(a),(b)は、重力演算角度の説明図。
【図4】タイヤの取付位置を判定する際に実行するフローチャート。
【図5】(a),(b)は、第2実施形態のタイヤ空気圧検出器が送信する重力情報の概略図。
【図6】(a)〜(c)は、第3実施形態のタイヤ空気圧検出器が送信する重力情報のパターンを示す概略図。
【図7】タイヤの取付位置特定の算出原理を説明する際に用いる概念図。
【図8】第4実施形態のタイヤ空気圧監視システムの概略図。
【図9】タイヤの取付位置を判定する際に実行するフローチャート。
【図10】図9の続きのフローチャート。
【図11】第5実施形態の重力分力値の変化を説明する図であり、(a)〜(c)は重力分力値が単調減少するときの動きの説明図。
【図12】(a)〜(c)は重力分力値が単調増加するときの動きの説明図。
【図13】(a)は車両の外観図、(b)はタイヤ回転方向平面のXY座標系。
【図14】タイヤ回転位置と計算式とをまとめた表。
【図15】別例のタイヤ空気圧監視システムの構成図。
【図16】他の別例のタイヤ空気圧検出器の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したタイヤ取付位置判定システムの第1実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、車両1には、各タイヤ2(2a〜2d)のタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)3が設けられている。タイヤ空気圧監視システム3は、各タイヤ2a〜2dに取り付けられたタイヤ空気圧検出器4(4a〜4d)でタイヤ空気圧等を検出し、その検出結果をタイヤ空気圧信号Stpとして車体5に無線送信する。車体5は、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dから送信されたタイヤ空気圧信号Stpを受信し、このタイヤ空気圧信号Stpを基に各タイヤ2a〜2dの空気圧を監視する。なお、タイヤ空気圧検出器4(4a〜4d)は、通称、タイヤバルブとも呼ばれる。
【0025】
タイヤ空気圧検出器4には、タイヤ空気圧検出器4を統括管理するコントローラ6が設けられている。コントローラ6のメモリ7には、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dの固有IDとしてタイヤIDが登録されている。タイヤ空気圧検出器4には、タイヤ空気圧を検出する圧力センサ8、タイヤ温度を検出する温度センサ9、タイヤ2の回転を検出する加速度センサ10が設けられ、これらがコントローラ6に接続されている。コントローラ6には、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送信可能な送信部11が接続されている。なお、加速度センサ10が重力情報取得手段及び重力検出センサを構成する。
【0026】
車体5には、タイヤ空気圧検出器4から受信したタイヤ空気圧信号Stpによってタイヤ2の空気圧を監視する受信機(以降、TPMS受信機12と記す)が設けられている。TPMS受信機12には、TPMS受信機12の動作を統括管理するタイヤ空気圧監視ECU(Electronic Control Unit)13と、UHF電波を受信可能な受信部14とが設けられている。タイヤ空気圧監視ECU13のメモリ15には、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dのタイヤIDが登録されている。受信部14は、アンテナ16と、受信電波を復調及び増幅する受信回路17からなる。TPMS受信機12には、例えば車内インストルメントパネル等に設置された表示部18が接続されている。
【0027】
コントローラ6は、加速度センサ10から出力される加速度信号を基に、タイヤ2が回転状態(車両1が走行状態)に入ったことを検出すると、タイヤ空気圧信号Stpの送信を開始する。即ち、本例のタイヤ空気圧監視システム3は、車両走行中にタイヤ空気圧検出器4が自らタイヤ空気圧信号Stpを車体5に送信する直接式となっている。タイヤ空気圧信号Stpには、タイヤIDの他に、圧力センサ8から入力した圧力データや、温度センサ9から入力した温度データ等が含まれている。タイヤ空気圧検出器4は、他のタイヤ空気圧検出器4と電波送信が重ならないように、時間差をもって電波を送信する。
【0028】
タイヤ空気圧監視ECU13は、タイヤ空気圧信号Stpを受信部14で受信すると、タイヤ空気圧信号Stp内のタイヤIDを基にID照合を実行する。タイヤ空気圧監視ECU13は、ID照合が成立することを確認すると、同じ信号内に含まれる圧力データと低圧閾値とを比較することによりタイヤ空気圧を確認し、タイヤ空気圧が定圧閾値未満であれば、表示部18に低圧警報を表示する。
【0029】
タイヤ空気圧検出器4は、加速度センサ10から入力する加速度信号を基に、タイヤ空気圧信号Stpの送信間隔を切り換える。例えば、タイヤ空気圧検出器4は、タイヤ2の無回転時(走行停止時)、タイヤ空気圧信号Stpを1回/1分の間隔で送信し、タイヤ2の回転時(走行時)も、タイヤ空気圧信号Stpを1回/1分の間隔で送信する。
【0030】
本例のタイヤ空気圧監視システム3には、タイヤ2の回転軸である車軸19の回転数情報と、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dから取得する重力情報とを基に、各タイヤ2a〜2bの取り付け位置を判定するタイヤ取付位置判定機能(オートロケーション機能)が設けられている。本例のタイヤ取付位置判定機能は、ある地点で車両1が停車(駐車も含む)したとき(以降、1回目の停車と記す)と、次のある地点で車両1が停車(駐車も含む)したとき(以降、2回目の停車と記す)とで、それぞれのタイヤ2a〜2dの回転位置が異なることに着目し、このときに発生する回転角度を、車軸19の回転数情報と、タイヤ空気圧検出器4からの重力情報とで各々求め、これらの値を比較することにより、タイヤ2a〜2dの取付位置を特定する。
【0031】
図1に示すように、タイヤ2a〜2dの各車軸19には、車軸19(タイヤ2)の回転数を検出する回転数検出センサ20(20a〜20d)が取り付けられている。回転数検出センサ20a〜20dは、例えばABS(Anti−lock Brake System)センサが使用され、検出した回転数信号(パルス信号)SplがTPMS受信機12に出力される。なお、回転数検出センサ20(20a〜20d)がタイヤ回転角度監視手段を構成し、回転数信号Splが回転数情報に相当する。
【0032】
回転数検出センサ20a〜20dは、各タイヤ2a〜2dに対応付けて取り付けられるものである。よって、各回転数検出センサ20a〜20dの回転数信号Splは、タイヤ2a〜2dの各取付位置と対応することになる。そして、この回転数信号Splのパルスのカウント数を確認すれば、図2に示すように、1回目の停車時にタイヤ2がとる回転位置を基準として2回目の停車時にタイヤ2がとる回転角度(パルス演算角度θa)を演算することが可能である。
【0033】
ところで、車両1は、カーブ走行したり、凹凸のある路面を走行したりするので、各タイヤ2a〜2dは、独立して回転する構造をとる。このため、各車軸19(各タイヤ2a〜2d)は各々異なる回転数をとるので、各回転数検出センサ20a〜20dから出力されるそれぞれの回転数信号Splもタイヤ位置に応じて異なる値をとるはずである。よって、タイヤ2a〜2dごとに算出したパルス演算角度θaを確認すれば、前後左右の4つのタイヤ2a〜2dが、それぞれどの程度回転したのかを割り出すことが可能である。
【0034】
図3に示すように、本例の加速度センサ10は、タイヤ空気圧検出器4にかかる重力として、重力の分力を複数軸(本例は2軸)で検出するセンサが使用されている。加速度センサ10は、車軸方向の重力分力値Gxと、タイヤ接線方向の重力分力値Gyを検出する。このように、加速度センサ10が2軸対応であれば、タイヤ2の車軸19の中心から鉛直方向に延びる線を基準線Lkとした場合、加速度センサ10が基準線Lkの左右どちらにあるのかが分かる。
【0035】
そして、加速度センサ10は、車軸方向の重力分力値Gxと、基準線Lkの左右どちらに位置するかの位置情報とを含む重力分力値データDgxを車体5に無線送信する。同図に示すように、重力分力値Gxは、タイヤ2の回転方向における位置に応じて一義的に決まる値であり、これが分かれば、タイヤ2の回転角度θを求めることが可能である。ここで、タイヤ空気圧検出器4に発生する重力をGとすると、基準線Lkに対するタイヤ2の回転角度θ(0°≦θ≦180°)は、次式(a)によって求まる。なお、重力分力値Gxが重力情報に相当する。
【0036】
【数1】

ここで、図3(a)に示すように、車両1が1回目の停車(駐車も含む)をとる際、タイヤ空気圧検出器4内の加速度センサ10は、このときのタイヤ2の回転位置θ1に準じた重力分力値Gx1を検出する。回転位置θ1は、重力分力値Gx1を上式に代入することによって算出可能である。また、図3(b)に示すように、車両1が2回目の停車(駐車も含む)をとる際、タイヤ空気圧検出器4内の加速度センサ10は、このときのタイヤ2の回転位置θ2に準じた重力分力値Gx2を検出する。回転位置θ2は、重力分力値Gx2を上式に代入することによって算出可能である。
【0037】
なお、回転位置θ1,θ2は、重力分力値データDgx内の位置情報によって、基準線Lkの左右どちらにあるのかが区別されて算出される。具体的には、図3(a)のGyの方向を正、図3(b)のGyの方向を負とした場合、Gyが正ならば、基準線Lkより左で負のとき右と区別される。
【0038】
よって、重力分力値Gx1から求めた回転位置θ1と、重力分力値Gx2から求めた回転位置θ2とを用いて角度を計算すれば、1回目の停車時にタイヤ2がとる回転位置を基準として2回目の停車時にタイヤ2がとる回転角度(重力演算角度θb)を算出することが可能である。そして、各タイヤ2a〜2dは各々異なる回転数をとるので、それぞれのタイヤ空気圧検出器4a〜4dごとに算出される重力演算角度θbは各タイヤ2a〜2dの回転数に応じた角度をとる。
【0039】
そして、各タイヤ2a〜2dにおいては、同一タイヤであれば、パルス演算角度θaと重力演算角度θbとが同じ値をとるはずである。よって、本例のタイヤ位置特定機能では、この原理を用い、パルス演算角度θaと重力演算角度θbとを比較することにより、各タイヤ2a〜2dの取付位置、つまり各タイヤ空気圧検出器4a〜4dの各タイヤIDの取付位置を特定する。
【0040】
図1に示すように、タイヤ空気圧監視ECU13には、各回転数検出センサ20a〜20dから出力される回転数信号Splを取得する回転数情報取得部21が設けられている。回転数検出センサ20a〜20dは、車両1がエンジン稼働中、車軸19の回転を検出する。よって、回転数情報取得部21は、車両1がエンジン稼働中の際、回転数検出センサ20a〜20dから出力される回転数信号Splを逐次取得する。なお、回転数情報取得部21がタイヤ回転角度監視手段を構成する。
【0041】
タイヤ空気圧監視ECU13には、TPMS受信機12がタイヤ空気圧信号Stpを受信した際、タイヤ空気圧信号Stp内に含まれる重力分力値データDgxを取得する重力情報取得部22が設けられている。重力情報取得部22は、停車中においてTPMS受信機12がタイヤ空気圧信号Stpを受信した際、タイヤ空気圧信号Stpから重力分力値データDgxを読み取ることにより、重力分力値Gxを取得する。なお、重力情報取得部22が重力情報取得手段を構成する。
【0042】
タイヤ空気圧監視ECU13には、停車中において4輪全てのタイヤ空気圧検出器4a〜4dから一定時間内に重力情報(タイヤ空気圧信号Stp)を受信できたか否かを確認する重力情報取得判定部23が設けられている。重力情報取得判定部23は、車両1が停車中の際、タイヤ空気圧検出器4a〜4dの電波送信間隔から決まる一定時間内に、全てのタイヤ空気圧検出器4a〜4dから重力分力値Gxを取得することができたか否かを判定する。なお、重力情報取得判定部23がタイヤ取付位置特定手段を構成する。
【0043】
本例の重力情報取得判定部23は、1回目の停車の際、一定時間内に全タイヤ空気圧検出器4a〜4dから重力情報を取得できれば、TPMS受信機12における回転数信号Splのパルスカウントを開始させるとともに、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dから取得した重力分力値Gxをメモリ15に保持する。また、重力情報取得判定部23は、2回目の停車の際、一定時間内に全タイヤ空気圧検出器4a〜4dから重力情報を取得できれば、パルス演算角度θa及び重力演算角度θbの計算を実施させ、一定時間内に全タイヤ空気圧検出器4a〜4dから重力情報を取得できなければ、処理を強制終了する。
【0044】
タイヤ空気圧監視ECU13には、回転数検出センサ20a〜20dから出力された回転数信号Splを基に、各タイヤ2a〜2dのパルス演算角度θaを演算する回転数演算部24が設けられている。回転数演算部24は、1回目の停車と2回目の停車の間、車両走行時において回転数検出センサ20から出力される回転数信号Splのパルス数を、自身のカウンタ25にてカウントし、このカウント値を基に各タイヤ2a〜2dのパルス演算角度θaを算出する。なお、回転数演算部24がタイヤ取付位置特定手段を構成する。
【0045】
ところで、タイヤ2が1回転した際の回転数信号Splのパルス数は、予め決まっている。よって、カウンタ25のカウント値を、タイヤ1回転のパルス数で割ったときの余りは、1回目の停車時にタイヤ2がとる回転位置を基準として2回目の停車時にタイヤ2がとる回転角度に相当する。例えば、タイヤ1回転のパルス数が36で、カウント値が36012の場合、36012を36で割ったときに求まる余り12、つまり360°×(12/36)→120°がパルス演算角度θaとして求まる。
【0046】
タイヤ空気圧監視ECU13には、タイヤ空気圧検出器4a〜4dから取得した重力分力値Gxを基に、タイヤ空気圧検出器4a〜4dごとに重力演算角度θbを算出する重力位置演算部26が設けられている。重力位置演算部26は、1回目の停車時に受信した重力分力値Gx1を基にタイヤ回転位置θ1を求め、2回目の停車時に受信した重力分力値Gx2を基にタイヤ回転位置θ2を求め、これらの和をとることにより、重力演算角度θbを算出する。なお、重力位置演算部26がタイヤ取付位置特定手段を構成する。
【0047】
タイヤ空気圧監視ECU13には、パルス演算角度θa及び重力演算角度θbを基に、各タイヤ2a〜2d(即ち、タイヤ空気圧検出器4a〜4d)の取付位置を特定するタイヤ取付位置特定部27が設けられている。ところで、パルス演算角度θaは、取付位置が分かっている回転数検出センサ20a〜20dから求まる角度である。よって、タイヤ取付位置特定部27は、演算した重力演算角度θbが、どのパルス演算角度θaに合致するのかを確認することにより、タイヤ空気圧検出器4a〜4d付位置を判定する。なお、タイヤ取付位置特定部27がタイヤ取付位置特定手段を構成する。
【0048】
タイヤ空気圧監視ECU13には、全てのタイヤ2a〜2dにおいて取付位置を特定できたか否かを確認する位置特定完了確認部28が設けられている。位置特定完了確認部28は、全てのタイヤ2a〜2dにおいて取付位置を特定できていれば、各タイヤIDを、タイヤ取付位置を紐付けしてメモリ15に登録する。一方、位置特定完了確認部28は、全てのタイヤ2a〜2dにおいて取付位置を特定できなければ、処理を強制終了する。なお、位置特定完了確認部28がタイヤ取付位置特定手段を構成する。
【0049】
次に、本例のタイヤ取付位置判定機能(オートロケーション機能)の動作を、図4のフローチャートを用いて説明する。
ステップ101において、タイヤ空気圧監視ECU13は、例えばメータECU(図示略)等から取得する車速データを基に、車両1が停車中(1回目の停車中)にあるか否かを判定する。タイヤ空気圧監視ECU13は、車両1が停車中であれば、ステップ102に移行し、車両1が停車中でなければ、ステップ101で待機する。
【0050】
ステップ102において、タイヤ空気圧監視ECU13は、1回目の停車時に、自車のタイヤ空気圧検出器4a〜4dから送信されたタイヤ空気圧信号Stpを受信部14で受信する。即ち、重力情報取得部22は、1回目停車時にタイヤ空気圧検出器4a〜4dから送信されるタイヤ空気圧信号Stp内の重力分力値データDgx1を読み取ることにより、1回目の停車時における重力分力値Gx1を収集する。
【0051】
ステップ103において、重力情報取得判定部23は、一定時間内に全てのタイヤ空気圧検出器4a〜4dから1回目停車時の重力分力値Gx1を取得できたか否かを判定する。このとき、一定時間内に全タイヤ空気圧検出器4a〜4dから1回目停車時の重力分力値Gx1を取得できれば、ステップ104に移行する。ところで、停車中、その時のタイヤ回転位置によっては、タイヤ空気圧検出器4が電波のヌル点に位置している可能性があるので、電波受信を一定時間待ち、4輪分の電波を受信できないのであれば、別の停車タイミングで処理を行うべく、ステップ101に戻る。また、ステップ103で待機時間を一定時間としているのは、タイヤ空気圧検出器4は一定周期で電波送信することから、電波受信を一定時間待てば、それで足りるからである。
【0052】
ステップ104において、回転数演算部24は、各車軸19の回転数検出センサ20a〜20dのカウンタ25をクリアする。即ち、回転数演算部24は、車両1が1回目の停車の後に走り始めた際、回転数検出センサ20a〜20dから出力されるパルスの計数を開始する。
【0053】
ステップ105において、重力位置演算部26は、ステップ102で各タイヤ空気圧検出器4a〜4dから受信した重力分力値Gx1を、1回目の停車時における各タイヤ空気圧検出器4a〜4dの重力分力値として、メモリ15に一時記憶する。
【0054】
ステップ106において、タイヤ空気圧監視ECU13は、メータECU等から取得する車速データを基に、車両1が一定距離走行後、車両1が停車中(2回目の停車中)にあるか否かを判定する。なお、このときの一定距離とは、各タイヤ2a〜2dに回転角度差を発生させるために、車両1がカーブを伴う走行を行ったであろう距離に設定されている。
【0055】
ステップ107において、タイヤ空気圧監視ECU13は、2回目の停車時に、自車のタイヤ空気圧検出器4a〜4dから送信されたタイヤ空気圧信号Stpを受信部14で受信する。即ち、重力情報取得部22は、2回目停車時にタイヤ空気圧検出器4a〜4dから送信されるタイヤ空気圧信号Stp内の重力分力値データDgx2を読み取ることにより、2回目の停車時における重力分力値Gx2を収集する。
【0056】
ステップ108において、重力情報取得判定部23は、一定時間内に全てのタイヤ空気圧検出器4a〜4dから2回目停車時の重力分力値Gx2を取得できたか否かを判定する。このとき、一定時間内に全タイヤ空気圧検出器4a〜4dから2回目停車時の重力分力値Gx2を取得できれば、ステップ109に移行し、一定時間内に全タイヤ空気圧検出器4a〜4dから2回目停車時の重力分力値Gx2を取得できなければ、処理を強制終了する。ここで、電波受信を一定時間待つのは、ステップ103と同じ理由であり、一定時間内に重力分力値Gx2を取得することができなければ、処理を強制終了して、別の機会に処理を再実行させる。
【0057】
ステップ109において、回転数演算部24は、各車軸19の回転数検出センサ20a〜20dにおいて、それぞれカウンタ25の余りを求め、回転数検出センサ20a〜20dごとにパルス演算角度θaを算出する。パルス演算角度θaは、回転数検出センサ20a〜20dごとに各々異なる値をとる。よって、これらパルス演算角度θaを確認すれば、1回目の停車から2回目の停車にかけて、どの取付位置のタイヤ2a〜2dが、どれだけ回転しているかが分かる。
【0058】
ステップ110において、重力位置演算部26は、タイヤ空気圧検出器4a〜4dから取得した重力分力値Gx1,Gx2を基に、それぞれのタイヤIDごとに重力演算角度θbを算出する。このとき、重力位置演算部26は、ステップ102で取得した重力分力値Gx1を基に、上記式(a)を用いて、1回目停車時のタイヤ回転位置θ1を算出する。また、重力位置演算部26は、ステップ107で取得した重力分力値Gx2を基に、上記式(a)を用いて、2回目停車時のタイヤ回転位置θ2を算出する。そして、重力位置演算部26は、タイヤ回転位置θ1,θ2の和をとることにより、重力演算角度θbを算出する。
【0059】
ステップ111において、タイヤ取付位置特定部27は、ステップ109で求めたパルス演算角度θaと、ステップ110で求めた重力演算角度θbとを用い、各タイヤ2a〜2dの取付位置を特定する。本例のタイヤ取付位置特定部27は、重力演算角度θbがどのパルス演算角度θaと一致するかを確認することにより、各タイヤ2a〜2dの取付位置、つまり各タイヤIDの取付位置を特定する。このとき、パルス演算角度θaと重力演算角度θbとが一対一で対応していれば、4輪全ての取付位置が特定される。
【0060】
ステップ112において、位置特定完了確認部28は、一定時間内に全てのタイヤ2a〜2dの取付位置を特定できたか否かを判定する。このとき、一定時間内に全てのタイヤ取付位置を特定できれば、ステップ113に移行し、一定時間内に全てのタイヤ取付位置を特定できなければ、処理を強制終了する。
【0061】
ここで、ステップ112のとき、一定時間内に全てのタイヤ取付位置を特定できない理由は、次の(i),(ii)が要因となる。
(i)2輪以上が全く同じ回転角度をとった場合
(ii)走行の途中でバックした場合
ここで、車両1がバックした場合は、バックもカウンタ25でカウントされるため、バックした分も進んで見えてしまうことが理由である。
【0062】
ステップ113において、タイヤ取付位置特定部27は、タイヤ取付位置の特定結果を、タイヤ空気圧監視ECU13のメモリ15に記憶する。即ち、タイヤ取付位置特定部27は、どのタイヤIDが、前後左右の4輪のどのタイヤ2a〜2dのものであるのかをメモリ15に保持する。
【0063】
なお、ステップ108においては、2回目の停車時、一定時間内に全輪のタイヤ空気圧検出器4a〜4dからタイヤ空気圧信号Stpを受信できたときにのみステップ109に移行するようにしているが、全輪のタイヤ空気圧検出器4a〜4dからタイヤ空気圧信号Stpを受信できなくても、ステップ109に移行してもよい。即ち、2回目の停車時、電波受信できたタイヤ空気圧検出器4のみ位置特定し、残りは、別の機会に処理を再実行してもよい。
【0064】
また、ステップ112においては、一定時間内に全てのタイヤ2a〜2で取付位置を特定できたときのみ、ステップ113に移行するようにしているが、1輪でも取付位置が分かれば、ステップ113に移行してタイヤ2の取付位置を記憶しておき、残りの3輪については、別の機会に処理を再度実行してもよい。
【0065】
以上により、本例においては、回転数検出センサ20a〜20dから取得する回転数情報と、タイヤ空気圧検出器4a〜4dから取得する重力情報とを基に、タイヤ2a〜2dの取付位置を判定するので、他の別部品を別途使用することなく、各タイヤ2a〜2dの取付位置を特定することが可能となる。よって、タイヤ空気圧監視システムのタイヤ取付位置判定機能を、簡素な構成で済ませることが可能となる。また、タイヤ取付位置の登録に際して、特別な操作も不要であるので、利便性の確保にも効果が高いと言える。
【0066】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)回転数検出センサ20a〜20dから出力される回転数信号(パルス信号)Splを基にパルス演算角度θaを演算し、タイヤ空気圧検出器4a〜4dから送信される重力分力値Gxを基に重力演算角度θbを演算し、パルス演算角度θaと重力演算角度θbとを比較することにより、各タイヤ2a〜2dの取付位置を特定する。このため、重力情報を使用してタイヤ2a〜2dの取付位置を判定することが可能であるので、タイヤ2a〜2dの取付位置の特定に際して、別の情報を別途必要としない。よって、タイヤ取付位置判定機能の構成を簡素化することができる。
【0067】
(2)重力分力値Gxを用いてタイヤ2の回転角度θを算出するので、精度よくタイヤ2の回転有無を判定することができる。
(3)パルス演算角度θaと重力演算角度θbとを照らし合わせるという角度比較によって、タイヤ2a〜2dの取付位置を判定する。このため、それぞれの角度を比較するという簡素な処理で、かつ短時間に、タイヤ2a〜2dの取付位置を判定することができる。
【0068】
(4)ステップ112において、全てのタイヤ2a〜2dの取付位置を特定することができなかったと判定すれば、処理を強制終了し、別の機会に処理を再実行して、全タイヤ2a〜2dの取付位置を特定する。即ち、全タイヤ2a〜2dの取付位置を特定することができるまで、判定処理を繰り返し実行する。このため、全タイヤ2a〜2dの取付位置を、漏れなく特定することができる。
【0069】
(5)ステップ108において、2回目の停車時、一定時間内に全タイヤ2a〜2dからタイヤ空気圧信号Stpを受信することができなければ、処理を強制終了し、別の機会に処理を再実行して、全タイヤ2a〜2dの取付位置を特定する。よって、タイヤ空気圧信号Stp(重力分力値Gx)の受信を無駄に待つ必要がないので、タイヤ2a〜2dの取付位置判定を効率よく実施することができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図5に従って説明する。なお、第2実施形態は、タイヤ取付位置の判定方法を変更したのみの構成であって、他の基本的な構成は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0071】
図5(a),(b)に示すように、本例の加速度センサ10は、重力分力を1軸のみ検出可能な簡易的なセンサであって、タイヤ空気圧検出器4にかかる重力分力として、タイヤ2の車軸方向の分力(重力分力値Gx)を検出し、これを重力分力値データDgxとして車体5に無線送信する。そして、重力位置演算部26は、車軸方向の重力分力値Gxのみを用いてタイヤ回転位置を算出する。
【0072】
ここで、本例におけるステップ112のとき、一定時間内に全てのタイヤ取付位置を特定できない理由は、第1実施形態に記載の(i),(ii)と、以下の(iii)が要因となる。
(iii)重力演算角度θbがいずれのパルス演算角度θaにも合致しない場合
重力演算角度θbがいずれのパルス演算角度θaにも合致しない状況は、1回目停車時のタイヤ回転位置θ1と2回目停車時のタイヤ回転位置θ2とは基準線Lkに対して対称であるので、単純にθ1とθ2の和を回転角度とできないことが理由である。そして、ステップ112において、全てのタイヤ2a〜2dの取付位置を特定することができなかったと判定されれば、処理を強制終了し、別の機会に処理を再実行して、全タイヤ2a〜2dの取付位置を特定する。
【0073】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1),(2),(4),(5)に加え、以下の効果を得ることができる。
(6)加速度センサ10として重力分力を1軸のみ検出する簡易的なセンサを使用することが可能となるので、システム構成の簡素化に一層寄与する。また、部品コストも低く抑えることができる。
【0074】
(7)本例のように加速度センサ10として簡易センサを使用した場合、重力演算角度θbがいずれのパルス演算角度θaにも合致しない状況の発生確率が高くなるが、ステップ112において時間内にタイヤ位置を特定できなければ、処理を強制終了して別の機会にトライする。よって、センサコスト抑制と効率のよい位置特定とを両立することができる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図6及び図7に従って説明する。なお、第3実施形態も、第1及び第2実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0076】
図6に示すように、本例の加速度センサ10は、上下方向のみをセンシング可能な簡易的なセンサ(安価なセンサ)が使用されている。即ち、本例の加速度センサ10は、図6(a)に示すようにタイヤ空気圧検出器4がタイヤ2の回転円弧軌跡の最上点付近(頂点付近)の角度θの範囲に位置することと、図6(b)に示すようにタイヤ空気圧検出器4がタイヤ2の回転円弧軌跡の最下点付近の角度θの範囲に位置することとの2位置を検出する。
【0077】
このため、本例のタイヤ空気圧検出器4は、重力分力値データDgxとして、図6(a)〜(c)に示す3種類のデータを送信する。即ち、重力分力値データDgxには、タイヤ空気圧検出器4がタイヤ回転の最上点付近(頂点付近)に位置することを示すデータ(最上点付近通知データDgxa)と、タイヤ空気圧検出器4がタイヤ回転の最下点に位置することを示すデータ(最下点付近通知データDgxb)と、最上点及び最下点のどちらにも位置しないことを示すデータ(位置不明通知データDgxc)とがある。
【0078】
重力位置演算部26は、タイヤ空気圧検出器4から取得する重力分力値データDgxを基に、タイヤ空気圧検出器4がタイヤ2の回転円弧軌跡の最上点付近、最下点付近又はそれ以外のどこに位置するのかを確認する。重力位置演算部26は、1回目の停車時と、2回目の停車時との両方で、タイヤ空気圧検出器4の配置位置を確認する。
【0079】
タイヤ取付位置特定部27は、2値の重力分力値Gxから求まるタイヤ空気圧検出器4の上下方向の位置と、カウンタ25から求まる余りとを基に、各タイヤ2a〜2dの取付位置を特定する。本例のタイヤ取付位置特定部27は、タイヤ空気圧検出器4a〜4dが1回目停車時と2回目停車時との各々で上下どちらに位置しているのかを確認するとともに、回転数信号Splから求まる余りが「0」又は「半分」のどちらをとるのかを確認することにより、タイヤ2a〜2dの取付位置を確認する。なお、余りの「半分」とは、タイヤ2の1回転当たりのパルス数を「n」としたときの「n/2」に相当する値である。
【0080】
タイヤ取付位置特定部27は、重力分力値データDgxから求まるタイヤ空気圧検出器4の1回目停車時と2回目停車時との位置が同じで、かつ余りが「0」となる組み合わせを確認すると、これらを対応付けてタイヤ2の取付位置を特定する。また、タイヤ取付位置特定部27は、重力分力値データDgxから求まるタイヤ空気圧検出器4の1回目停車時と2回目停車時とで位置が上下方向逆であり、かつ余りが「半分」となる組み合わせを確認すると、これらを対応付けてタイヤ2の取付位置を特定する。
【0081】
次に、本例のタイヤ2a〜2dの取付位置の算出原理を、図6及び図7を用いて説明する。
図6に示すように、タイヤ空気圧検出器4の加速度センサ10は、最上点付近及び最下点付近の各θのみ重力を検出可能である。ここで、タイヤ空気圧検出器4が最上点付近のθに入る確率P1、タイヤ空気圧検出器4が最下点付近のθに入る確率P2は、それぞれ次式(1),(2)により算出される。
【0082】
【数2】

【0083】
【数3】

そして、タイヤ空気圧検出器4が1回目の停車時に上下どちらかのθに入り、2回目の停車時もどちらかのθに入る確率P3は、次式(3)により算出される。
【0084】
【数4】

一方、回転数検出センサ20a〜20dの回転数信号Splから求まる余りが「0」又は「n/2」となる確率P4は、次式(4)により求まる。
【0085】
【数5】

ここで、例えばn=36、θ=20°のように(360°/n)<θの場合、つまり1パルス時に取り得る角度に比べてθが広い場合、以下の(i)〜(iii)の3パターンの状況が発生し得る。
(i)式(2)を満たしたときに、式(4)を満たす場合
(ii)式(2)を満たしたときに、式(4)を満たさない場合
(iii)式(2)を満たさずに、式(4)を満たす場合
ところで、条件(iii)が発生する確率P5は、他の3輪で式(4)を満たす場合の総和に相当するので、以下の式(5)により求まる。式(5)から求まる確率P5は、タイヤ2の取付位置の判別不能な確率に相当する。
【0086】
【数6】

続いて、条件(i)が発生する確率P6と、条件(ii)が発生する確率P7とを、図7を用いて考える。ところで、回転数信号Splの1パルスは、360°/nごとに発生するので、以下の条件(k)を満たす必要がある。
条件(k):式(4)を条件としたパルスの余り「0」と「n/2」は、タイヤ中心の点対称位置(余り「n/2」)か、或いは全く同じ位置(余り「0」)であること。
【0087】
ここで、式(2)の条件を満たすには、(θ/180°)が必要であるが、条件(i)を満たすには、条件(k)も合わせて満たす必要がある。
タイヤ空気圧検出器4が点対称(図7のハッチング箇所)で止まる通り数R1は、次式(6)式により求まる。
【0088】
【数7】

また、タイヤ空気圧検出器4が同じ位置(図7のハッチング箇所)で止まる通り数R2は、次式(7)により求まる。
【0089】
【数8】

そして、式(6),(7)から求まる総組み合わせ数R3は、次式(8)により求まる。
【0090】
【数9】

以上により、条件(i)が発生する確率P6は、次式(9)により求まる。
【0091】
【数10】

また、条件(ii)が発生する確率P7は、次式(10)により求まる。
【0092】
【数11】

よって、仮にnが36、θが30°とすると、確率P6が(1/36)×(1/4)→(1/144)となり、確率P7が(1/36)×(3/4)→(3/144)となり、確率P5が1/6となる。また、仮にnが36、θが40°とすると、確率P6が(4/81)×(3/16)→(1/108)となり、確率P7が(4/81)×(13/16)→(13/324)となり、確率P5が1/6となる。
【0093】
ところで、条件(i)を満足したとき、各タイヤ2a〜2dの取付位置を特定することができるが、実際には条件(iii)のパターンも生じるため、正確に位置特定を行おうとすると、最終的な位置特定の確率Pkは、次式(11)に示すように、(iii)の発生の確率分だけ目減りすることになる。
【0094】
【数12】

従って、nが36、θが30°の場合、確率Pkは(1/144)×(5/6)→(5/864)となる。また、nが36、θが40°の場合、確率Pkは、(1/108)×(5/6)→(5/648)となる。さらに、実際であれば、複数輪同時に(i)の条件を満たす場合も考慮しなくてはならないが、2輪同時発生としても、(P6)2の確率となるので、充分小さい値として無視する。
【0095】
従って、nが36、θが30°の場合、確率Pkが(5/864)、つまり約173回に1回成立することが分かる。また、nが36、θが40°の場合、確率Pkが(5/648)、つまり約130回に1回成立することが分かる。このため、停車間隔を約5分とすると、100回の停車に約8.3時間要することとなり、タイヤ交換後のタイヤ摩耗に対して、充分に短い時間でタイヤ2a〜2dの取付位置を特定できることが分かる。
【0096】
即ち、タイヤ2a〜2dの取付位置を特定するには、位置判定の処理(即ち、位置判定のフローチャート)を何度も繰り返し実行させる必要があるが、位置判定に必要な総時間はタイヤ摩耗によるタイヤ交換サイクルに比べれば充分に短いと言える。従って、本例の取付位置の判定処理は、位置判定にかかる時間的な不都合を生じさせずに、各タイヤ2a〜2dの取付位置を特定することが可能であると言える。
【0097】
本実施形態の構成によれば、前述の実施形態の(1),(2),(4),(5),(7)に加え、以下の効果を得ることができる。
(8)加速度センサ10として単に上下2位置のみ検出可能な簡易センサを使用しても、タイヤ2a〜2dの取付位置を特定することができる。よって、システム構成の簡素化に一層寄与し、部品コストも更に低く抑えることができる。
【0098】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を図8〜図10を用いて説明する。なお、第4実施形態は、第1実施形態の1変更例に相当し、本例も第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0099】
図8に示すように、本例のタイヤ取付位置判定機能の場合、回転数検出センサ20は、車体左右にそれぞれ1つずつ(計2つ)設けられている。また、TPMS受信機12には、タイヤ位置特定の前に予めタイヤ2を左右判定する左右タイヤ判定部35が設けられている。左右タイヤ判定部35は、タイヤ位置を特定する前提として、例えば重力情報から求まるタイヤ回転方向や、地磁気等により、タイヤ2a〜2dを予め左右判定する。本例のように、回転数検出センサ20が左右2でよいのは、タイヤ回転方向や地磁気等によりタイヤ左右判定が既に済んでいるものとしており、後は前後の区別が付けば4輪全てを特定できるからである。なお、左右タイヤ判定部35が左右タイヤ判別手段に相当する。
【0100】
ちなみに、図8の場合、左右の前輪に回転数検出センサ20が配置されているが、左右2輪であればどの組み合わせでもよい。例えば、後輪の左右に回転数検出センサ20を2つ配置してもよいし、車体の左右対角線上に回転数検出センサ20を2つ配置してもよい。
【0101】
次に、本例のタイヤ取付位置判定機能(オートロケーション機能)の動作を、図9及び図10のフローチャートを用いて説明する。ここでは、回転数検出センサ20からタイヤ1回転当たり12パルスが出力されることとし、事前にタイヤ2の左右が分かっている(「右:ID1,ID2」、「左:ID3,ID4」)ものとする。
【0102】
ステップ201において、左右タイヤ判定部35は、例えばタイヤ回転方向や地磁気等により、タイヤIDの左右が判別できているか否かを確認する。なお、左右判定方法は、タイヤ回転方向や地磁気以外に種々の方式が採用可能である。そして、左右判別ができていればステップ202に移行し、左右判別ができていなければ待機する。
【0103】
ステップ202において、タイヤ空気圧監視ECU13は、車両1の停車(1回目の停車)を検出したか否かを判断する。このとき、停車を検出すればステップ203に移行し、停車を検出しなければ待機する。
【0104】
ステップ203において、重力位置演算部26は、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dから受信した重力分力値データDgxを基に、1回目停車時のタイヤ回転位置θ1を算出する。ここでは、例えば右側タイヤであるID1,ID2がそれぞれθ11,θ12として求まり、左側タイヤであるID3,ID4がそれぞれθ13,θ14として求まったとする。
【0105】
ステップ204において、回転数演算部24は、自身のカウンタ25をリセットする。
ステップ205において、タイヤ空気圧監視ECU13は、車両1の停車(2回目の停車)を検出したか否かを判断する。このとき、停車を検出すればステップ206に移行し、停車を検出しなければ待機する。
【0106】
ステップ206において、重力位置演算部26は、各タイヤ空気圧検出器4a〜4dから受信した重力分力値データDgxを基に、2回目停車時のタイヤ回転位置θ2を算出する。ここでは、例えば右側タイヤであるID1,ID2がそれぞれθ21,θ22として求まり、左側タイヤであるID3,ID4がそれぞれθ23,θ24として求まったとする。
【0107】
ステップ207において、回転数演算部24は、各車軸19の回転数検出センサ20a〜20dにおいて、パルスの余り(12で割った余り)を求めることにより、パルス演算角度θaを算出する。このθaがモジュロ計算結果である。
【0108】
ステップ208において、タイヤ取付位置特定部27は、右側タイヤIDの前後を特定するために、θa=|θ21−θ11|/30(なお、θ21−θ11=θb)が成立するか否かを判断する。この式が成立すればステップ209に移行し、この式が不成立であればステップ210に移行する。
【0109】
ステップ209において、タイヤ取付位置特定部27は、ID1が右前輪タイヤであると認識し、ID2が右後輪タイヤであると認識する。
ステップ210において、タイヤ取付位置特定部27は、右側タイヤIDの前後を特定するために、θa=|θ22−θ12|/30(なお、θ22−θ12=θb)が成立するか否かを判断する。この式が成立すればステップ211に移行し、この式が不成立であれば位置判定のやり直しのため、ステップ202に戻る。
【0110】
ステップ211において、タイヤ取付位置特定部27は、ID2が右前輪タイヤであると認識し、ID1が右後輪タイヤであると認識する。
ステップ212において、タイヤ取付位置特定部27は、左側タイヤIDの前後を特定するために、θa=|θ23−θ13|/30(なお、θ23−θ13=θb)が成立するか否かを判断する。この式が成立すればステップ213に移行し、この式が不成立であればステップ214に移行する。
【0111】
ステップ213において、タイヤ取付位置特定部27は、ID3が左前輪タイヤであると認識し、ID4が左後輪タイヤであると認識する。
ステップ214において、タイヤ取付位置特定部27は、左側タイヤIDの前後を特定するために、θa=|θ24−θ14|/30(なお、θ24−θ14=θb)が成立するか否かを判断する。この式が成立すればステップ215に移行し、この式が不成立であれば位置判定やり直しのため、ステップ202に戻る。
【0112】
ステップ215において、タイヤ取付位置特定部27は、ID4が左前輪タイヤであると認識し、ID3が左後輪タイヤであると認識する。
ステップ216において、タイヤ取付位置特定部27は、タイヤ取付位置の特定結果を、タイヤ空気圧監視ECU13のメモリ15に記憶する。これにより、タイヤ位置の登録が完了する。
【0113】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1)〜(5)に加え、以下の効果を得ることができる。
(9)タイヤ2a〜2dの左右位置は既に判別できているものとしてタイヤ取付位置の判定を行うので、タイヤ取付位置判定に必要な回転数検出センサ20が左右1つずつの計2つで済む。よって、システム構成の簡素化に効果が高くなる。
【0114】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態を図11〜図14を用いて説明する。なお、第5実施形態は、第2及び第3実施形態の1変更例に相当し、本例もこれら実施例と異なる部分についてのみ説明する。
【0115】
図11(a)〜(c)は、タイヤ2が紙面時計回りに回転するときの動きを示した図であり、図12(a)〜(c)は、タイヤ2が紙面反時計回りに回転するときの動きを示した図である。第1実施形態でも述べたように、タイヤ空気圧検出器4が鉛直方向の線(基準線Lk)に対して左右方向に対称の図11(c)の状態と図12(c)の状態とにおいては、重力Gの車軸方向(タイヤ半径方向)の重力分力値Gxが同じ値をとるので、これらの重力情報を区別することができない現状がある。
【0116】
しかし、タイヤ2が停止する直前の重力分力値Gxの変化が増加又は減少のどちらをとるのかを確認すれば、図11(c)と図12(c)とを区別することが可能である。例えば、タイヤ回転が図11(b)→図11(c)への動きをとる場合、重力分力値Gxは単調減少をとる。一方、タイヤ回転が図12(b)→図12(c)への動きをとる場合、重力分力値Gxは単調増加をとる。よって、本例の場合は、タイヤ停止直前における重力分力値Gxの変化を確認することにより、左右線対称の位置にある重力情報を区別する。
【0117】
図13(a)に示すように、車両1を右側から見たとき、全てのタイヤ2は紙面時計回りに回転する。このとき、図13(b)の車軸19を原点とするタイヤ回転方向平面のXY座標系において、タイヤ空気圧検出器4が時計回りで第1象限、第4象限に位置する場合、重力分力値Gxは単調減少をとり、タイヤ空気圧検出器4が時計回りで第2象限、第3象限に位置する場合、重力分力値Gxは単調増加をとる。換言すれば、増加減の具合が同じ場合は鉛直方向の基準線Lkに対して線対称でない位置にあり、増加減の具合が異なる場合は線対称の位置にあると言える。
【0118】
図14に、タイヤ回転位置θ1,θ2の組み合わせと、角度計算に使用する計算式との関係をまとめた表を示す。例えば、1度目の停車時にタイヤ空気圧検出器4が第1,第4象限に位置し、2度目の停車時にタイヤ空気圧検出器4が第2,第3象限に位置したとき、タイヤ2の回転角度は360°×n+θ1+(360°−θ2)で求まる。ここで、車軸19の回転数はモジュロ値であるので、360°×nは無視できるので、θ1+(360°−θ2)に相当する角度分だけ車軸19が回っていれば、車軸19に取り付くタイヤ2がθ1及びθ2で止まったタイヤ2となり、位置判定が可能である。
【0119】
続いて、実際にどの程度早く4輪の位置を特定できるのかを試算する。ここでは、タイヤ1回転当たり車軸19のパルス信号が36パルス出力されるとする。
・4輪のうち2輪が同じになる組み合わせ数 … 36×35×34=42840
・4輪のうち3輪が同じになる組み合わせ数 … 36×35=1260
・4輪のうち4輪が同じになる組み合わせ数 … 36
よって、4輪のうち少なくとも2輪が同じ組合せになる総数は、合計44136通りとなる。ここで、4輪の総組み合わせ数は、36の4乗=1679616である。従って、4輪がそれぞれ別の値をとらない確率は、44136/1679616=2.63%となる。ところで、2回目の停車で2.63%は判定不可となる可能性があるが、更にもう一度停車したときに判定不可能な確立は0.1%以下に下がる。よって、読み取り誤差等の他の要因を考慮しても、数回の停車があれば、タイヤ位置の特定は可能であることが分かる。
【0120】
本実施形態の構成によれば、前述の実施形態の(1)〜(8)に加え、以下の効果を得ることができる。
(10)タイヤ回転方向平面のXY座標系において、仮にタイヤ空気圧検出器4が1回目停車時と2回目停車時とで、鉛直方向の基準線Lkに対し左右対称に位置したとしても、これらの位置を区別することができる。よって、タイヤ取付位置の判別精度の向上に繋がり、結果、判定時間の短縮化に効果が高くなる。
【0121】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・各実施形態において、図15に示すように、車体5にイニシエータ(トリガ手段)41を搭載するとともに、タイヤ空気圧検出器4に受信部42を設ける。そして、イニシエータ41から送信されるUHF帯のトリガ信号Strによって、タイヤ空気圧検出器4に直ぐに電波応答させるようにしてもよい。この場合、タイヤ2a〜2dの取付位置特定に要する時間を短くすることができ、第3実施形態に述べた簡易型センサの場合、安価なセンサでも短時間でタイヤ位置を特定できるという点で特に効果が高い。なお、イニシエータ41がトリガ手段を構成する。
【0122】
・各実施形態において、車体5にイニシエータ41を設けた場合、図16に示すように、受信部42に受信信号強度測定部43を設け、トリガ信号Strを受信部42で受信した際の受信信号強度を受信信号強度測定部43で測定し、この受信信号強度データを併せてTPMS受信機12に送信してもよい。イニシエータ41は、各タイヤ2a〜2dに対し、各々距離が異なるように配置される。この場合、受信信号強度が大きければイニシエータ41に近いタイヤ2であると判定できるので、受信信号強度データをタイヤ2の取付位置特定に利用することができる。
【0123】
・各実施形態において、車両1の駐停車時、一時的にタイヤ空気圧信号Stp(重力分力値データDgx)のフレーム数を増やして送信してもよい。例えば、走行時は1分間に1フレームのところ、加速度センサ10で車両1が駐停車に入ったことを検出したとき、送信フレーム数を一時的に増やす。また、例えば停車を検出した後の30秒間は、タイヤ空気圧信号Stpの送信を5秒間隔とする。こうすれば、停車後、5秒間あればタイヤ空気圧検出器4から情報を得ることができ、タイヤ2の位置判定にかかる時間の更なる短縮化に効果が高くなる。また、第3実施形態に述べた簡易型センサの場合、安価なセンサでも短時間でタイヤ位置を特定できるという点で特に効果が高い。
【0124】
・各実施形態において、タイヤ空気圧検出器4は、加速度センサ10の検出信号に変化が一定時間なくなった場合、直ちに電波送信する型としてもよい。この場合、タイヤ2a〜2dの取付位置特定に要する時間を短くすることができる。
【0125】
・各実施形態において、タイヤ空気圧信号Stp内の圧力データは、検出した温度データによって補正された値でもよい。
・各実施形態において、加速度センサ10は、車軸方向の重力分力を検出するセンサに限定されず、例えば路面平行方向の分力を検出するセンサでもよい。
【0126】
・各実施形態において、重力演算角度θbは、θ1とθ2の和をとった1値で算出されることに限定されない。例えば、0°〜360°の範囲で重力演算角度θbが取り得る角度
を全て抽出し、どれがパルス演算角度θaと合致するのかを確認することにより、タイヤ2a〜2dの取付位置を特定することも可能である。
【0127】
・各実施形態において、重力検出センサは、加速度センサに限定されず、タイヤ空気圧検出器4に生じる重力を検出できるものであれば、他のセンサを用いてもよい。
・各実施形態において、タイヤ回転数検出センサ20は、ABSセンサに限定されず、タ
イヤ2の回転を検出できるセンサであれば他のセンサに変更可能である。
【0128】
・各実施形態において、重力分力値データDgxは、タイヤ空気圧信号Stpに含まれて送信されることに限定されず、タイヤ空気圧信号Stpとは別の独立した信号として送信されてもよい。
【0129】
・各実施形態において、重力情報の収集は、車両1が停車したときに実施されることに限定されず、車両1が駐車したときに実施してもよい。
・各実施形態において、タイヤ位置特定の判定は、車両停止時に実施することに限らず、走行開始時に実施してもよい。この場合、停止時に生じ得ると想定されるタイヤ2の逆回転について考慮せずに済むので、タイヤ位置特定の精度向上に効果が高くなる。
【符号の説明】
【0130】
1…車両、2(2a〜2d)…タイヤ、3…タイヤ空気圧監視システム、4(4a〜4d)…タイヤ空気圧検出器、5…車体、10…重力情報取得手段及び重力検出センサを構成する加速度センサ、19…車軸、20(20a〜20d)…タイヤ回転角度監視手段を構成する回転数センサ、21…タイヤ回転角度監視手段を構成する回転数情報取得部、22…重力情報取得手段を構成する重力情報取得部、23…タイヤ取付位置特定手段を構成する重力情報取得判定部、24…タイヤ取付位置特定手段を構成する回転数演算部、26…タイヤ取付位置特定手段を構成する重力位置演算部、27…タイヤ取付位置特定手段を構成するタイヤ取付位置特定部、28…タイヤ取付位置特定手段を構成する位置特定完了確認部、38…タイヤ取付位置特定手段及び左右タイヤ判別手段を構成する左右タイヤ判定部、41…トリガ手段としてのイニシエータ、Stp…タイヤ空気圧信号、G…重力、Gx(Gx1,Gx2)…重力情報としての重力分力値、Spl…回転数情報としての回転数信号、θ…回転角度、θ1,θ2…タイヤ回転位置、Str…トリガ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各タイヤに設けられたタイヤ空気圧検出器でタイヤ空気圧を検出し、そのタイヤ検出信号を車体に送信してタイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムに使用され、当該タイヤの取付位置を判定するタイヤ取付位置判定システムにおいて、
前記タイヤ空気圧検出器にかかる重力の分力を重力情報として検出する重力情報取得手段と、
前記タイヤの車軸の回転を監視することにより、前記タイヤにおいて実際に発生する回転角度を車体にて検出するタイヤ回転角度監視手段と、
ある駐停車時と以降のある駐停車時との間で、前記重力情報取得手段と前記タイヤ回転角度監視手段とで各々求められる前記タイヤの回転角度を比較し、各タイヤの取付位置を特定するタイヤ取付位置特定手段と
を備えたことを特徴とするタイヤ取付位置判定システム。
【請求項2】
前記タイヤ空気圧検出器に設けられた重力検出センサは、前記重力情報として、前記タイヤ空気圧検出器の車軸方向における重力の分力を検出し、
前記タイヤ取付位置特定手段は、前記重力検出センサが検出した重力分力値を基に、前記タイヤ空気圧検出器のタイヤ回転方向における位置を求め、当該位置を用いて前記タイヤの取付位置を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項3】
前記タイヤ取付位置特定手段は、ある駐停車時のタイヤ回転位置を基準として、以降の1駐停車時に前記タイヤがとる回転位置を、前記重力情報取得手段と前記タイヤ回転角度監視手段との各々で求め、これらを基にタイヤ取付位置を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項4】
前記タイヤ空気圧検出器内の重力検出センサは、少なくとも前記タイヤ空気圧検出器がタイヤ回転方向における最上点付近又は最下点付近のいずれにあるのかを検出し、
前記タイヤ空気圧検出器は、前記重力情報として、前記タイヤ空気圧検出器がタイヤ回転の最上点付近又は最下点付近のいずれにあるのかを通知し、
前記タイヤ取付位置特定手段は、前記タイヤ回転角度監視手段の回転数情報を基に、前記タイヤが最上点付近又は最下点付近のいずれに位置するのかを求め、この判定結果と前記重力情報とを用いてタイヤ取付位置を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項5】
前記タイヤの位置特定の処理の前に前記タイヤの左右を判別する左右タイヤ判別手段を備え、
前記タイヤ取付位置特定手段は、前記左右タイヤ判別手段によって当該タイヤの左右位置が既に特定されたものとして、タイヤ取付位置特定の処理を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項6】
前記タイヤ取付位置特定手段は、駐停車時における前記タイヤ空気圧検出器にかかる重力分力値の増加減を基に、前記タイヤの取付位置を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項7】
前記タイヤ取付位置特定手段は、前記した以降の1駐停車時、全ての前記タイヤにおいて取付位置を特定することができなければ、以降の駐停車時において、位置未特定のタイヤ取付位置に関して位置特定の処理を行い、この処理を、全てのタイヤで取付位置が特定されるまで繰り返し実施する
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項8】
前記タイヤ取付位置特定手段は、前記した以降の1駐停車時において前記重力情報の取得を待つ際、一定時間内に当該重力情報を取得することができなければ、処理を終了し、以降の停車時において該処理を再実行する
ことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか一項に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項9】
前記タイヤ取付位置特定手段は、前記タイヤが回転した状態から止まるとき、又は前記タイヤが止まった状態から回転するときに、タイヤ取付位置特定の処理を実行する
ことを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか一項に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項10】
前記タイヤ空気圧検出器に電波送信を実行させるトリガ信号を無線送信するトリガ手段を前記車体に備え、
前記トリガ手段は、車両が駐停車すると、前記トリガ信号を前記タイヤ空気圧検出器に送信し、前記タイヤ空気圧検出器は、前記トリガ信号の受信を契機に、自身の重力検出センサで検出した前記重力情報の送信を開始する
ことを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか一項に記載のタイヤ取付位置判定システム。
【請求項11】
前記タイヤ空気圧検出器は、車両が駐停車すると、重力検出センサで検出した前記重力情報を、一時的にフレームを増やして送信する
ことを特徴とする請求項1〜10のうちいずれか一項に記載のタイヤ取付位置判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−82436(P2013−82436A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202243(P2012−202243)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】