説明

タイル施工構造

【課題】床スラブ上にタイルを張り付け施工したタイル施工構造であって、遮音性に優れると共に、タイルの割れや亀裂発生が防止されたタイル施工構造を提供する。
【解決手段】コンクリート製の床スラブ1上にタイルユニット2が敷設されている。このタイルユニット2は、底部に配置された緩衝材層3と、該緩衝材層3の上側に配置された下地材4と、該下地材4の上に接着剤層5を介して接着された複数のタイル6と、タイル6間の目地に充填された目地材7とを有する。下地材4の下面には、一定間隔をおいて多数の溝4aが平行に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床スラブ上にタイルを施工したタイル施工構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床スラブ上にタイルを直に張り付け施工すると階上の歩行音などが階下に伝播して階下の居住性が損なわれる。
【0003】
特開昭58−69959号には、床スラブ上に、発泡ポリエチレン等の遮音材が設けられ、その上にタイルが施工された構造が記載されている。
【特許文献1】特開昭58−69959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開昭58−69959号公報のように床スラブ上に敷設された発泡ポリエチレン等の上にタイルを張り付け施工した場合、タイルに対し上方から荷重が負荷されたときにタイルに発生する曲げ応力が大きなものとなり、タイルに割れや亀裂が生じ易くなる。
【0005】
本発明は、床スラブ上にタイルを張り付け施工したタイル施工構造であって、遮音性に優れると共に、タイルの割れや亀裂発生が防止されたタイル施工構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)のタイル施工構造は、床スラブ上に緩衝材層が設けられ、該緩衝材層上にタイル張付用下地材が設けられ、該下地材上にタイルが接着剤で張り付けられたタイル施工構造であって、該下地材の下面に複数の溝が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2のタイル施工構造は、請求項1において、前記接着剤は、高剛性接着剤であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3のタイル施工構造は、請求項1又は2において、前記下地材の上に複数のタイルが張り付けられており、タイル間の目地の下方に前記溝が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイル施工構造にあっては、床スラブ上に緩衝材層が設けられているので、階上から階下に伝播する騒音や振動が小さくなる。
【0010】
本発明では、この緩衝材層の上にタイル張付用下地材を配置し、その上にタイルを張り付け施工しているので、タイルに対し上方から荷重が加えられたときにタイルに生じる曲げ応力が小さくなり、タイルの割れや亀裂が防止される。
【0011】
本発明では、このタイル張付用下地材の下面に溝を設けており、この溝内のスペースが吸音ないし防振作用を奏することにより、階下へ伝播する騒音や振動が極めて小さなものとなる。
【0012】
上記のタイル張り付け用の接着剤として、エポキシ系接着剤など、硬化後の剛性が高い高剛性接着剤を用いた場合には、タイルに対し上方から荷重が加えられたときのタイルの曲げ変形がタイル張付用下地材によっても対抗されるようになり、タイルに生じる曲げ応力がさらに小さくなり、タイルの割れや亀裂が十分に防止される。
【0013】
また、タイル同士の間の目地の下方にタイル張付用下地材裏面の溝を配置した場合、上方からの荷重によってタイル張付用下地材が曲げ変形する場合、この曲げ変形が目地付近に集中するようになり、タイルに生じる曲げ応力がさらに小さなものとなり、タイルの割れや亀裂がより十分に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係るタイル施工構造を示す縦断面図、図2は図1のタイル施工構造に用いられているタイル張付用下地材の下側(底面側)から見た斜視図である。
【0015】
集合住宅等におけるコンクリート製の床スラブ1上にタイルユニット2が敷設されている。このタイルユニット2は、底部に配置された緩衝材層3と、該緩衝材層3の上側に配置されたタイル張付用下地材4と、該下地材4の上に接着剤5を介して接着された複数のタイル6と、タイル6間の目地に充填された目地材7とを有する。下地材4の下面には、一定間隔をおいて多数の溝4aが平行に設けられている。
【0016】
緩衝材層3を構成する材料としては、ポリオレフィン発泡体、不織布吸音材、アスファルト系吸音材などが例示される。この緩衝材層の厚さは1〜15mm特に2〜6mmとりわけ3〜5mm程度が好適である。
【0017】
下地材4の厚さは5〜20mm特に9〜15mm程度が好適である。下地材4を構成する材料としては合板、硬質樹脂板、硬質発泡体など各種のものを用いることができる。
【0018】
この下地材4と緩衝材層3とは同一大きさとされるのが好ましい。
【0019】
下地材4の底面の溝4aは、幅が0.5〜3.0mm特に1.0〜2.0mmであり、深さが下地材4の厚みの30〜80%特に50〜75%程度であることが好ましい。溝4aのピッチは10〜30mm特に15〜20mm程度であることが好ましい。
【0020】
この実施の形態では、下地材4は長方形状であり、各溝4aは下地材4の短手幅方向と平行方向に延設されている。
【0021】
接着剤5としては、エポキシ系接着剤、変成シリコン又はウレタン系接着剤など、硬化後の剛性(ヤング率)が高いものが好適である。接着剤5の層厚さは0.3〜3.0mm特に0.5〜1.5mm程度が好適である。
【0022】
タイル6は、この実施の形態では陶磁器質であるが、石材や、人工大理石等の人造石よりなるものであってもよい。タイル6は、一辺が150〜600mmであり、厚さが8.0〜15mm程度の方形のものが好適である。
【0023】
タイル6間の目地幅は2.0〜10.0mm特に3.0〜5.0mm程度が好適である。
【0024】
目地材7は、シリコン系、アクリル系などの弾性目地材が好適である。タイルユニット2としては、緩衝材層3と下地材4とが接着剤や粘着剤によって結合されて一体化されているものが、施工し易く、好適であるが、緩衝材層3と下地材4とが別体であってもよい。後者のように別体である場合、緩衝材層3は下地材4より大きくてもよい。
【0025】
このタイルユニット2は、複数個、各々の下地材4の側端面を突き合わせるようにして床スラブ1上に敷設される。その後、各タイルユニット2のタイル6同士の間の隙間に目地材を充填する。
【0026】
なお、緩衝材層3と床スラブ1とは接着剤や粘着剤で付着されてもよい。
【0027】
この実施の形態では、タイル6の配列ピッチが溝4aのピッチの整数倍となっており、タイル6間の各目地の下方にそれぞれ溝4aが存在している。
【0028】
このように構成されたタイル施工構造にあっては、床スラブ1上に緩衝材層3が設けられているので、階下へ伝播する騒音や振動が小さい。特に、この実施の形態では、下地材4の底面に溝4aを設けており、この溝4a間のスペースが吸音や防振作用を奏するようになり、階下へ伝播する騒音や振動が極めて小さなものとなる。
【0029】
なお、下地材の下面の溝は格子状に設けられていてもよい。
【0030】
この実施の形態では、比較的柔らかい緩衝材層3の上に、それよりも剛性の高い下地材4を配置し、この下地材4にタイル6を接着しているため、上からタイル6に載ったりして荷重が加えられたときでもタイル6の曲げ変形が小さく、タイル6の割れや亀裂が防止される。特に、この実施の形態では、接着剤5として硬化後の剛性(ヤング率)が高いものを用いているため、タイル6に上方から荷重が加えられたときのタイル6の曲げ変形が下地材4によっても拘束される。このため、タイル6の曲げ変形量が小さくなり、タイル6の割れや亀裂が十分に防止される。
【0031】
また、この実施の形態では、目地の下方に溝4aが存在するため、タイルユニット2が上方からの荷重によって反るように変形しようとする場合、タイルユニット2の変形は目地部分に集中するようになり、タイル6の変形は小さいものとなる。これによっても、タイル6の割れや亀裂が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態に係るタイル施工構造を示す縦断面図である。
【図2】図1のタイル施工構造に用いられている合板の下側(底面側)から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 床スラブ
2 タイルユニット
3 緩衝材層
4 タイル張付用下地材
5 接着剤
6 タイル
7 目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブ上に緩衝材層が設けられ、該緩衝材層上にタイル張付用下地材が設けられ、該下地材上にタイルが接着剤で張り付けられたタイル施工構造であって、
該下地材の下面に複数の溝が設けられていることを特徴とするタイル施工構造。
【請求項2】
請求項1において、前記接着剤は、高剛性接着剤であることを特徴とするタイル施工構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記下地材の上に複数のタイルが張り付けられており、
タイル間の目地の下方に前記溝が配置されていることを特徴とするタイル施工構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−9554(P2007−9554A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192189(P2005−192189)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】