説明

タッチパネル装置

【課題】液晶表示装置から輻射されるノイズによる静電容量式タッチパネルの誤動作を防止する。
【解決手段】初期補正用画像データ26を表示した後、タッチパネル制御部11はタッチパネル2の初期補正を実施し、容量検出部13は、電極12から検出した寄生容量を基準値として、基準値保持部に保持する(ステップS2)。制御部1は、LCD21に起動時に表示する起動用画像を表示部3に表示し(ステップS3)、バックライト23を点灯する(ステップS4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式タッチパネルを用いたタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルを用いたPDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話が多く見られるようになった。なかでも静電容量式タッチパネルを搭載した携帯電話が注目されている。この種の携帯電話に用いられるタッチパネル装置として、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたタッチパネル付き液晶表示装置は、パワーセーブ時、LCD(Liquid Crystal Display)を消灯することによる寄生容量の変化を防ぐため、所定の時間接触を検出せずパワーセーブモードに移行するとき、LCDはつけたままバックライトのみを消すことが記載されている。
他方、特許文献2には、静電容量式タッチパネルの電極の信号をサンプリングするタイミングで、電極直下の表示をある固定した色にする。それにより、スキャン時の寄生容量のばらつきを抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4237741号公報
【特許文献2】特許第4453710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量式タッチパネルは、透明なセンサー電極と電極周辺の物体との間に存在する寄生容量を基準として、指などの導体が近接したときに発生する静電容量の増加分を算出することで、操作を検出するセンサーである。静電容量式タッチパネルは接触する指の幅より十分に小さい幅の電極を複数並べ、各電極で検出される静電容量の変化量の分布から接触位置を算出する方式である。検出した寄生容量をセンサー電極の基準容量に設定することを初期補正と呼ぶ。
【0005】
初期補正する際に、寄生容量の基準値に最も大きな影響を与えるのは、タッチパネル直近に配置されているLCDなどの表示装置との間に生じる寄生容量である。LCDの画像表示は、画素毎に配置されたトランジスタをON/OFFして液晶分子に電圧を供給することで行うが、トランジスタをONにしたとき、LCDのトランジスタの寄生容量が増加する。
【0006】
図4は、従来のタッチパネル装置で初期補正した場合の検出した寄生容量のグラフである。初期補正では、第1から第nの電極の寄生容量を取得し、その値をセンサー容量の基準とする。各電極の寄生容量はばらつきを持つが、ここでは1つの電極に着目して説明する。
【0007】
図4のとおり、LCDが点灯していない状態ではLCDのトランジスタがONしていないため、検出される寄生容量は小さい。そのためセンサー電極の静電容量も小さい値となり、基準容量として初期補正される。ここでLCDを点灯すると、TFTがONになり、寄生容量が増加する。それによって、タッチパネルに触れていないにもかかわらず電極の静電容量は増加する。この容量変化が指の接触判定閾値を超えた場合、操作していないにもかかわらず動作してしまうという不具合が生じる。接触判定値を超えない場合でも、各センサー電極の基準容量のプロファイルが変化してしまう。その場合、指の接触による静電容量の増加分を正しく取得できず、座標精度の誤差につながってしまう。そのため、LCD画像表示によって生じる寄生容量の増加が、指の接触による静電容量の増加と判定されてしまい、誤動作に繋がるという課題があった。
【0008】
ところで、上述した特許文献1に記載された静電容量型タッチスイッチ装置は、LCDの駆動による誤動作を防止できるものの、待ち受け状態などの省電力制御時でもLCDを表示しつづけるため消費電力が増加するという課題を有している。
【0009】
特許文献2に記載されたタッチスイッチ検出装置は、LCDの表示とタッチパネルの信号検出の同期を取る必要があり、装置が複雑になるという課題を有している。
【0010】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、構成を複雑化することなく、消費電力を増加させずにLCD駆動による誤動作を防止することができるタッチパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のタッチパネル装置は、静電容量式タッチパネルと、透過型LCDとバックライトからなる表示部と、前記静電容量式タッチパネルと前記表示部を制御する制御部と制御部を起動する起動手段とを備え、前記制御部は前記起動手段により起動されたとき、前記透過型LCDに初期用画像を表示した後に、前記静電容量式タッチパネルの初期補正を実行し、次に前記バックライトを点灯する制御を行うものである。
【0012】
上記構成によれば、実使用時に近い表示でセンサー電極の寄生容量を基準容量として取得することができ、かつタッチパネル装置の利用者には基準容量を取得する初期補正用の画面を見せずに、実使用状態と同等の初期補正が可能となる。
さらに、本発明のタッチパネル装置は、前記初期用画像が、白画面、または、前記透過型液晶の一画素毎に白と黒を交互に表示する画面であることにより、もっとも寄生容量が大きい表示状態で初期補正値を取得することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、静電容量式タッチパネルにおいて、従来技術と比べて簡素は構成で、消費電流を増加させずにLCDの寄生容量変化による誤動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置で、LCDを点灯した状態で初期補正を実施した場合の検出された寄生容量のグラフ
【図3】本発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置の制御フローチャート
【図4】従来のタッチパネル装置で初期補正を実施した場合の検出された寄生容量のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
まず静電容量式タッチパネルの初期補正について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
図1において、本実施の形態のタッチパネル装置は、制御部1と、静電容量式のタッチパネル2と、表示部3と、起動部4と、記憶部5を備える。更に、静電容量式のタッチパネル2は、タッチパネル制御部11と、n本のセンサー電極12からなるセンサー部とを備え、表示部3は透過型LCD21と表示駆動回路22とバックライト23とバックライト駆動回路24を備える。
【0018】
タッチパネル制御部11は、容量検出部13と、補正部14と、基準値保持部15と、座標算出部16とを備える。
【0019】
起動部4はタッチパネル装置を起動させるためのものであり、具体的には、起動ボタンの押下や電源の投入などである。タッチパネル装置が起動すると、制御部1は透過型LCD21にタッチパネルの初期補正用画像データ26を表示させる。
初期補正用画像データ26とは、初期補正を実施する際に透過型LCD21に表示する画像のデータである。初期補正用画像データ26を表示するときは、バックライトは点灯していないため、利用者には初期補正用画像データ26が表示されているようには見えない。この状態で、制御部1はタッチパネルの初期補正の実行をタッチパネル制御部11に指示する。
【0020】
制御部1は、タッチパネル装置を構成する静電容量式タッチパネルや表示部の点灯制御を行うものである。センサー電極12は、表示部の前面に配置され、指をはじめとする導体が近接した場合に静電容量が変化する必要があるため導電体で構成される。容量検出部13は、センサー電極12に接続し、センサー電極12の静電容量を電圧として取得し、デジタル値に変換する。補正部14は、容量検出部13で取得した各センサー電極の静電容量値を、基準値として取得し、基準値保持部に記録するブロックである。座標算出部16は、容量検出部13で取得した各センサー電極12の静電容量と基準値とを比較し、基準値に対して所定の値以上の変化量があった場合、物体の接触があったと判定するブロックである。指があると判断した場合、センサー電極12の容量分布から接触位置の座標を算出する。
【0021】
図2はLCD21を点灯した状態で初期補正を実施した場合の検出容量のグラフである。初期補正では、第1から第nの電極の寄生容量を取得し、その値をセンサー容量の基準とする。各電極の容量の寄生容量はばらつきを持つが、図2では、簡略化のため、1つの電極に着目している。
【0022】
図2のとおり、LCD21が点灯している状態で、初期補正を実施すると、容量検出部13は、LCD21のトランジスタがONになっているときの寄生容量を検出し、基準値保持部15は基準値として保持する。これによって、指の接触による静電容量の増加分を正しく取得でき、正常な接触検出が可能となる。
【0023】
図3に本発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置の制御フローチャートを示す。図3を用いて、本実施の形態1のタッチパネル装置の動作について説明する。起動部4によってタッチパネル装置が起動した場合、まず制御部1はLCD21にタッチパネルの初期補正用画像データ26を表示する(ステップS1)。この段階では、バックライト23は点灯せず、ユーザーには表示内容は一切見えない。初期補正用画像データ26は、LCD21から寄生容量が最も大きく検出されやすい表示状態となるものが好ましい。LCDの駆動方式によって最も寄生容量が大きくなる表示パターンは異なるが、一例としては、一画素毎に白黒交互表示等がある。
【0024】
初期補正用画像データ26を表示した後、タッチパネル制御部11はタッチパネル2の初期補正を実施し、容量検出部13は、電極12から検出した寄生容量を基準値として、基準値保持部に保持する(ステップS2)。制御部1は、LCD21に起動時に表示する起動用画像を表示部3に表示し(ステップS3)、バックライト23を点灯する(ステップS4)。
【0025】
このように、本実施の形態のタッチパネル装置によれば、実使用時に近い表示でセンサー電極の寄生容量を基準容量として取得することができ、かつタッチパネル装置の利用者には基準容量を取得する初期補正用の画面を見せずに、実使用状態と同等の初期補正が可能となる。
【0026】
バックライト23の点灯タイミングは、所定のWait時間(待ち時間)を設けてもよいし、タッチパネル制御部1からの初期補正完了通知を受けて点灯させてもよい。
【0027】
また、はじめに起動用画像データ27を表示させた後、一度バックライトを消して補正用画像の表示と初期補正処理を行い、再びバックライトを点灯させる制御順序でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、消費電力を増加させずに、構成を複雑化することなく、LCDによる誤動作を防止することができるといった効果を有し、PDAや携帯電話等のタッチパネルを用いる電子機器への適用が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 制御部
2 タッチパネル
3 表示部
4 起動部
5 記憶部
11 タッチパネル制御
12 センサー電極
13 容量検出部
14 補正部
15 基準値保持部
16 座標算出部
21 透過型LCD
22 表示駆動回路
23 バックライト
24 バックライト駆動回路
26 初期補正用画像データ
27 起動用画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー電極を有する静電容量式タッチパネルと、
透過型液晶とバックライトからなる表示部と、
前記静電容量式タッチパネルと前記表示部を制御する制御部と
制御部を起動する起動手段とを備え、
前記制御部は、前記起動手段により起動されたとき、前記透過型液晶に初期補正用画像を表示した後に、前記静電容量式タッチパネルの前記センサー電極の寄生容量を取得する初期補正を実行し、次に前記バックライトを点灯する制御を行うことを特徴とするタッチパネル装置
【請求項2】
前記初期補正用画像が、白画面、または、前記透過型液晶の一画素毎に白と黒を交互に表示する画面であること特徴とする請求項1記載のタッチパネル装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243232(P2012−243232A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115488(P2011−115488)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】