説明

タンパク質の不活化方法および不活化処理装置

【課題】本発明は、望ましくないタンパク質を効果的に不活化しうる方法を提供することを課題とする。詳しくは、例えば実験において望ましくないタンパク質を不活化する条件において、実験器具等の素材に対して可能な限り影響を及ぼすことなく、望ましくないタンパク質のみを効果的に不活化する方法を提供することを課題とする。さらには、このようなタンパク質を不活化するためのタンパク質不活化装置を提供することを課題とする。
【解決手段】タンパク質の不活化条件として高飽和水蒸気条件下で処理を行うことによる。従来のオートクレーブ処理や乾熱滅菌処理では十分に不活化されなかったタンパク質を、高飽和水蒸気条件下で処理することで、従来の処理方法に比べて圧力や温度に関し、マイルドな条件でも酵素等の不活化すべきタンパク質を不活化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高飽和水蒸気条件下で処理することを特徴とするタンパク質および/またはポリペプチドの不活化方法に関し、より詳しくは従来の高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)や乾熱滅菌では十分に不活化されなかったタンパク質を不活化しうる新規不活化方法に関する。更には、高飽和水蒸気条件下で処理するための、タンパク質の新規不活化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポストゲノムサイエンスの一環として遺伝子の解析が精力的に展開されているが、遺伝子解析では遺伝子サンプル調製も重要なポイントである。目的遺伝子は、RNAに変換されてはじめてその機能を発揮する。遺伝子発現産物のRNAの研究の重要性はいうまでもないことである。RNAは、一本鎖を基本とし、チミンの代わりにウラシルを塩基に持つ以外はDNAに良く似た分子であるが、遺伝子として安定なDNAとは異なり、分解されることが宿命付けられている不安定な分子である。RNAが生理的に不安定な分子であることは、細胞内に多種のRNA分解酵素(以下単に「RNase」ともいう。)が存在することからも明らかである。
【0003】
そのため、RNAを取り扱う実験、例えば逆転写酵素でRNAをDNAに変換した後にDNAをPCRで増幅するRT-PCRや、あるいはプライマーにRNA部分を含むICAN法などでは、RNaseの存在(コンタミネーション)により、実験結果に重大な影響を及ぼすのが問題である。従来では、かかるRNaseの影響を極力避けるために、強アルカリの専用洗剤を用いて実験器具を洗浄したり、オートクレーブ処理などにより不活化させるのが一般的であった。しかしながら、オートクレーブ処理後に使用可能な器具の素材は限られているのが問題であった。
【0004】
RNaseは安定なものが多く、タンパク質変性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS:Sodium Dodecyl Sulfate)やフェノールだけでは完全に不活化させるのは困難であった(非特許文献1)。実験器具や試薬は RNA 分解酵素の阻害剤であり不活性化剤であるジエチルピロカーボネート(DEPC)で処理して、RNA 分解酵素を排除する。ところが、DEPCは人体 (正常な細胞)にとって致命的な毒素であり、その意味でも、多くの分子生物学的実験の中でも最も注意を要する(非特許文献2〜6)。また、オートクレーブ処理や乾熱滅菌処理により、RNaseが確実に分解されているかについては、必ずしも十分に検討がなされていなかった。
【0005】
従って、遺伝子を取り扱う場においては、RNaseをより確実に不活化し、除去する効果的な方法が望まれている。
【非特許文献1】遺伝子工学実験ノート(株式会社羊土社出版、第2版(2002年))
【非特許文献2】バイオ実験イラストレイテッド(株式会社秀潤社出版、第1版(2005年))
【非特許文献3】基礎生化学実験法4(株式会社東京化学同人出版、第1版(2000年))
【非特許文献4】超基本バイオ実験ノート(株式会社羊土社出版、第1刷(2005年))
【非特許文献5】核酸I‐分離精製‐(株式会社東京化学同人出版、第1版(1991年))
【非特許文献6】タンパク質実験ハンドブック(株式会社羊土社出版、第1刷(2003年))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、望ましくないタンパク質を効果的に不活化しうる方法を提供することを課題とする。詳しくは、例えば実験において望ましくないタンパク質を不活化する条件において、実験器具等の素材に対して可能な限り影響を及ぼすことなく、望ましくないタンパク質のみを効果的に不活化する方法を提供することを課題とする。さらには、このようなタンパク質を不活化するためのタンパク質不活化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明らはタンパク質の不活化条件として高飽和水蒸気条件下で処理を行うことに着目し、鋭意研究を重ねた結果、従来のオートクレーブ処理や乾熱滅菌処理では十分に不活化されなかったタンパク質を、これらの処理方法に比べて圧力や温度に関し、マイルドな条件下(以下、「ソフト水熱プロセス」という。)でも十分に不活化しうる条件を見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明は、以下よりなる。
1.高飽和水蒸気条件下で処理することを特徴とする、タンパク質および/またはポリペプチドの不活化方法。
2.高飽和水蒸気条件下で、処理温度が106〜150℃である、前項1に記載の不活化方法。
3.高飽和水蒸気条件下で、処理時間が10〜120分間である、前項1または2に記載の不活化方法。
4.高飽和水蒸気条件において、蒸気飽和度が100%以上である、前項1〜3のいずれか1に記載の不活化方法。
5.不活化されるタンパク質が酵素である、前項1〜4のいずれか1に記載の不活化方法。
6.酵素が、RNA分解酵素である、前項5に記載の不活化方法。
7.前項1〜6のいずれか1に記載の不活化方法に使用し、以下を備えてなる、タンパク質不活化処理装置:
1)不活化すべきタンパク質含有可能性のある被処理物の処理部;
2)前記処理部に供給する水蒸気を発生するスチーム発生部;
3)前記処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるヒータ制御部。
8.さらに、以下を備えてなる、前項7に記載のタンパク質不活化処理装置。
A)前記処理部の内部圧力を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるコントロール弁;
B)高飽和水蒸気条件を導く過程および/または高飽和水蒸気条件下で発生しうる凝結水を排除するためのスチームトラップ部。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタンパク質の不活化方法によれば、安定なタンパク質で、従来不活化処理が十分でなかったものについても効果的に不活化処理を行うことができる。また、複数種のタンパク質を含む試料を被処理物とした場合、本発明の不活化方法における処理条件を調節することで、望ましくないタンパク質を選択的に不活化処理することも可能となる。
【0010】
本発明のタンパク質の不活化処理装置を用いれば、本発明のタンパク質の不活化方法により、効果的に不活化処理を行うことができる。さらに、本発明の不活化処理装置において、内部圧力を制御するためのコンロトール弁および凝結水を排除するためのスチームトラップ部を備えることで、被処理物、例えばチューブやチップなどの実験器具を滅菌処理終了とともに乾燥した状態で取り扱うことができることや、処理工程中での処理内部で、化学変化の平衡が更新されることにより、反応速度が減衰しないなど、より効果的に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
飽和水蒸気量と温度との関係は、下記の気体の状態方程式に基づき、図1に示す曲線を導き出すことができ、気体の状態を導き出すことができる。(図1の塗りつぶし部分は、「ソフト水熱プロセス」に相当する。)
気体の状態方程式:PV=nRT(PV=G/M・RT)
(P:圧力(MPa)、V:体積(dm3)、n:モル数(mol)、M:H2Oの分子量(18.015)、R:ガス定数(8.31×10-3dm3・MPa/K・mol、T:温度K[℃+273℃])
【0012】
本発明において、「高飽和水蒸気」とは、高蒸気飽和度の飽和水蒸気および飽和水蒸気圧より高い圧力の水蒸気をいう。本発明におけるタンパク質の不活化方法は、高飽和水蒸気条件下で処理するものであり、水熱プロセスによるものである。水熱プロセスとは、高温高圧水蒸気を反応媒体とした化学反応をいう。高蒸気飽和度とは、文字通り高飽和水蒸気状態で、より高い水蒸気を含む状態をいい、具体的には蒸気飽和度が100%よりも高い状態をいう。
【0013】
上記計算式により求められた飽和水蒸気の水分量から、飽和水蒸気水分量の50%の水分量(乾燥水蒸気、dry steam:DS)、飽和水蒸気水分量の100%水分量(飽和水蒸気、saturated vapour:SV)、飽和水蒸気水分量の1000%水分量(加圧熱水、super-heated water:SW)の各容量の水を5ml密閉系の容器に加え、温度条件を変えたときの蒸気飽和度を求めた値を、表1に示した。
【0014】
【表1】

【0015】
本発明における高飽和水蒸気の条件下でタンパク質を処理する場合の、蒸気飽和度や温度などの各条件は、不活化したいタンパク質の性質によって適宜選択することができる。例えば、蒸気圧や熱に対して変性を起こしやすいタンパク質の場合は、マイルドな条件でも不活化処理することができる。一方、不活化すべきタンパク質が変性を起こしにくいタンパク質、例えばRNase等の場合は、変性しやすいタンパク質に比べて、やや厳しい条件を選定することもできる。また、タンパク質の不活化処理の目的に応じても、処理条件を選定することができる。例えば、RNaseの影響を取り除くため、遺伝子を取り扱う実験器具を滅菌処理するなどによりタンパク質不活化処理を行う場合は、実験器具の素材に応じて、実験器具が変性しない条件下での処理条件を選定することが必要である。
【0016】
本発明の不活化方法における温度条件は、高飽和水蒸気条件下で処理できるのであれば、特に限定されないが、例えばソフト熱水プロセスに該当する106〜150℃で処理することができ、例えば実験器具としてチューブやチップ等、プラスチック素材のものを用いる場合には、該プラスチックが変性しない条件、例えば106〜130℃とすることができる。またRNaseのような安定なタンパク質の不活化に必要な温度条件として、106℃以上、より好ましくは110℃以上の温度条件を設定することができる。
【0017】
処理時間は、不活化すべきタンパク質および/またはポリペプチドが不活化される条件であればよく、特に限定されないが、10〜120分間、好ましくは20〜90分間、より好ましくは20〜30分間処理することができる。
【0018】
本発明において、不活化処理される対象物は、タンパク質および/またはポリペプチドであり、S-S結合を含むポリペプチドにも本発明の不活化方法を適用することができる。本発明により不活化処理される対象物は、適宜決定することができるが、例えば望ましくない酵素やトキシンなどが挙げられ、より具体的にはRNaseが挙げられる。以下、本明細書において、処理対象物として「タンパク質」という場合は、上記ポリペプチドも含む概念である。
【0019】
本発明は、上記条件によりタンパク質を不活化しうるタンパク質不活化処理装置にも及ぶ。具体的には、少なくとも以下の1)〜3)の部位を備えてなる、タンパク質不活化処理装置が挙げられる。
1)不活化すべきタンパク質含有可能性のある被処理物の処理部。
2)前記処理部に供給する水蒸気を発生するスチーム発生部。
3)前記処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるヒータ制御部。
【0020】
上記1)において、「被処理物の処理部」とは、被処理物が設置される部位をいう。具体的には、例えば図2の2「処理装置」に該当する。上記において、「不活化すべきタンパク質含有可能性のある被処理物」とは、例えば遺伝子に係る実験に使用しうる実験試料であってもよいが、例えば実験に使用しうる実験器具等も被処理物ということができる。例えば、実験に使用するための実験器具であって、何ら試料等が含まれていないもの、具体的にはチューブやチップなども本発明の被処理物とすることができる。
【0021】
上記2)において、スチーム発生部は、本発明の高飽和水蒸気状態に導くために必要な部位であり、例えば図2の5「スチーム発生装置」に該当する。
上記3)において、ヒータ制御部は、上記説明の如く被処理物の処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうる部位であり、例えば図2の26「ヒータ」および27「温度調節器」に該当する。
【0022】
本発明のタンパク質不活化装置は、さらに以下のA)およびB)の部位を備えることが好適である。
A)前記処理部の内部圧力を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるコントロール弁;
B)高飽和水蒸気条件を導く過程および/または高飽和水蒸気条件下で発生しうる凝結水を排除するためのスチームトラップ部。
【0023】
上記A)およびB)を備えたタンパク質不活化装置を、便宜上、「流通型タンパク質不活化装置」と呼ぶ場合がある。上記流通型と反して、A)およびB)を備えない装置を、便宜上、「密閉型タンパク質不活化装置」と呼ぶ場合がある。
上記A)のコントロール弁は、例えば図2の32に該当し、B)のスチームトラップ部は例えば図2の41に該当する。
【0024】
「密閉型タンパク質不活化装置」であっても、細菌や酵素等の不活化処理が実施できることは、後述の実施例においても示すとおりであるが、「流通型」とすることで、さらに優れた効果が期待される。「密閉型」の場合では、処理部内での化学変化の平衡が特定され、平衡の近傍では反応速度が減衰するが、「流通型」では化学変化の平衡が暫時更新され、反応速度は減衰せず、効率よく処理可能な装置を提供することができる。
【0025】
さらには、「流通型」では、被処理物である実験器具、具体的にはチューブやチップなどが、本発明の方法により処理されると同時に乾燥状態とすることができる。例えば、従来の高圧蒸気滅菌であるオートクレーブ処理の場合は、処理直後は被処理物が凝結水による水分が付着した状態で、そのままでは実験に供することができず、実験器具は一度乾燥状態にするための工程を必要とするが、本発明の「流通型」の装置であれば、タンパク質を不可逆的に不活化した状態で、処理直後に乾燥状態を維持できる点で優れている。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明のタンパク質の不活化方法および装置について、実施例および比較例を示して具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の理解をより確実にするためのものであって、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。
【0027】
(実施例1)ソフト水熱プロセス(110℃、0.14MPa、30分)によるRNaseの不活化
ソフト水熱プロセス(110℃、0.14MPa、30分)での加圧熱水(SW)、飽和水蒸気(SV)、乾燥水蒸気(DS)の各条件で処理した後の試料についてのRNaseの不活化効果を、6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により調べた。
【0028】
(材料と方法)
RNA溶液(1 mg/ml):YeastRNA(Roche製)を、RNA溶解液TEを用いて溶解した。
RNA溶解液TE:TE緩衝液(10 mM Tris-HCl (pH8.0)、1 mM EDTA (pH8.0))
RNase溶液(10 mg/ml):RNase A(Roche製)を、RNase溶解液Mを用いて溶解した。
RNase溶解液M:Tris-HCl (pH7.5)、5 M NaCl、蒸留水)
ポリアクリルアミドゲル 6%
SDSポリアクリルアミドゲル 20%
【0029】
(RNaseの不活化処理)
RNase溶液(10 mg/ml)を10μl、5 ml容量のスクリューキャップ付バイヤルに滴下し、自然乾燥させた後に、加圧熱水(SW)、飽和水蒸気(SV)、乾燥水蒸気(DS)となるように各容量の蒸留水を加え、密閉系で、上記ソフト水熱プロセス条件(110℃、0.14 MPa、30分)でRNaseの不活化処理を行った。
【0030】
(試料の調製)
上記RNaseの不活化処理後のバイヤルに蒸留水を加えてRNaseをよく攪拌した後、蒸留水を加えてRNase濃度が5μg/mlとなるように調製した。該調製したRNaseを含む溶液を、室温にて各時間(1時間〜7日間)おいた。5μg/mlのRNaseを含む溶液10μ1(RNase量 0.05μg)を1 mg/ml RNA 溶液10μl(10μg)と混合し、37℃で60分反応させたものを試料とした。
RNaseを含まない系、すなわち、1 mg/ml RNA 溶液10μl(10μg)と10μ1の蒸留水を混合し、37℃で60分反応させたものを陰性コントロール試料とした。
RNaseを自然乾燥させたのみで不活化処理を行っていない系で、RNase濃度が5μg/mlのRNaseを含む溶液について、上記と同様の方法で調製し、37℃で60分反応させたものを陽性コントロール試料とした。
【0031】
(電気泳動および結果)
各試料について6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動を行い、残存するRNAを確認し、RNaseの活性を確認した。RNAが分解されずにバンドが認められたものは、RNaseが存在しないか、不活化されていることを示す。
その結果、図3に示すように、110℃、0.14 MPa、30分でのソフト水熱プロセスによる不活化処理(バンド4〜12、1 hour〜5 day)では、いずれの場合もRNAのバンドが認められ、不活化処理後5日でも不活化された状態であることが確認された。電気泳動により得られた結果を定量的に測定したものを、図4に示した。その結果、乾燥水蒸気(DS)では2日後まで酵素活性が残っていたが、加圧熱水(SW)および飽和水蒸気(SV)の状態ではRNA重量が多く効果的にRNaseが不活化されたことが確認された。
【0032】
(実施例2)ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、30分)によるRNaseの不活化
ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、30分)での加圧熱水(SW)、飽和水蒸気(SV)、乾燥水蒸気(DS)の各条件で処理した後の試料についてのRNaseの不活化効果を、6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により調べた。試料の調製および電気泳動は、実施例1と同手法により行った。
【0033】
その結果、図5に示すように、120℃、0.2 MPa、30分でのソフト水熱プロセスによる不活化処理(バンド4〜12、1 hour〜7 day)では、いずれの場合もRNAのバンドが認められ、不活化処理後7日でも不活化された状態であることが確認された。電気泳動により得られた結果を定量的に測定したものを、図6に示した。その結果、加圧熱水(SW)および飽和水蒸気(SV)の状態でRNA重量が多く、効果的にRNaseが不活化されたことが確認された。
【0034】
(実施例3)ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、60分)によるRNaseの不活化
ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、60分)での加圧熱水(SW)、飽和水蒸気(SV)、乾燥水蒸気(DS)の各条件で処理した後の試料についてのRNaseの不活化効果を、6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により調べた。試料の調製および電気泳動は、実施例1と同手法により行った。
【0035】
その結果、図7に示すように、120℃、0.2 MPa、60分でのソフト水熱プロセスによる不活化処理(バンド4〜12、1 hour〜5 day)では、いずれの場合もRNAのバンドが認められ、不活化処理後5日でも不活化された状態であることが確認された。電気泳動により得られた結果を定量的に測定したものを、図8に示した。その結果、加圧熱水(SW)および飽和水蒸気(SV)の状態でRNA重量が多く、効果的にRNaseが不活化されたことが確認された。
【0036】
(実施例4)ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、90分)によるRNaseの不活化
ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、90分)での加圧熱水(SW)、飽和水蒸気(SV)、乾燥水蒸気(DS)の各条件で処理した後の試料についてのRNaseの不活化効果を、6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により調べた。試料の調製および電気泳動は、実施例1と同手法により行った。
【0037】
その結果、図9に示すように、120℃、0.2 MPa、90分でのソフト水熱プロセスによる不活化処理(バンド4〜12、1 hour〜5 day)では、いずれの場合もRNAのバンドが認められ、不活化処理後5日でも不活化された状態であることが確認された。電気泳動により得られた結果を定量的に測定したものを、図10に示した。その結果、加圧熱水(SW)および飽和水蒸気(SV)の状態でRNA重量が多く、効果的にRNaseが不活化されたことが確認された。
【0038】
(実施例5)ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、120分)によるRNaseの不活化
ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、120分)での加圧熱水(SW)、飽和水蒸気(SV)、乾燥水蒸気(DS)の各条件で処理した後の試料についてのRNaseの不活化効果を、6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により調べた。試料の調製および電気泳動は、実施例1と同手法により行った。
【0039】
その結果、図11に示すように、120℃、0.2 MPa、120分でのソフト水熱プロセスによる不活化処理(バンド4〜12、1 hour〜5 day)では、いずれの場合もRNAのバンドが認められ、不活化処理後5日でも不活化された状態であることが確認された。電気泳動により得られた結果を定量的に測定したものを、図12に示した。その結果、加圧熱水(SW)および飽和水蒸気(SV)の状態でRNA重量が多く、効果的にRNaseが不活化されたことが確認された。
【0040】
(実施例6)流通型タンパク質不活化装置
本発明に使用する流通型のタンパク質不活化装置を図2に示し、詳細に説明する。
【0041】
図2は処理システムの配管系を示す全体構成図である。これらの図を参照して説明すると、処理システム1は処理装置2とスチーム発生装置5を有しており、これらの間には水蒸気供給管7および窒素ガス供給管8が配置されている。処理装置2は、装置架台21の上に横置き状態で設置された圧力容器からなる処理器(蒸煮器)22を有し、この処理器22の一端に水蒸気供給管7および窒素ガス供給管8が連通している。
【0042】
処理器22の他端にはクラッチ式の開閉蓋22aが取り付けられており、処理器22の内部22bは開閉蓋22aを閉じると気密状態に保持される。処理器22の内部22bには円筒状の被処理物設置部23が同軸状態に配置されており、被処理物設置部23に実験器具等の被処理物を搭載可能である。
開閉蓋22aを開けると、被処理物設置部23をスライドレール24に沿って処理器22から引き出すことが可能となっている。また、処理器22の内部22bにはその中心を軸線方向にスチーム吹き出し管25が延びており、このスチーム吹き出し管25の端が水蒸気供給管7に接続されている。
【0043】
処理器22の圧力容器における円筒状胴部の外周を取り巻く状態にヒータ26が取り付けられており、ヒータ26の駆動は温度調節器27によって制御される。温度調節器27は被処理物設置部23に搭載された被処理物の温度を検出するための温度センサ28による検出結果に基づき、ヒータ26を駆動して、処理器22の内部温度を所定の値に保持する。
【0044】
また、処理器22には、その内部22bから排出ガスを外部に放出するための排気管29が接続されており、この排気管29には処理器22の側から、フィルタ30、圧力計31、コントール弁32、気液分離装置33および脱臭装置34が接続され、これらを経由して処理器22の内部22bを大気開放可能である。処理器22の内部22bの圧力は圧力計35に表示されると共に、圧力調節器36によって検出される。圧力調節器36は検出された圧力に基づき、コントロール弁32を開閉して処理器22からのガス排出量を調節することにより、処理室22の内部圧力を所定の値となるように調節する。また、処理器22の内部22bは安全弁37を介して大気開放可能となっており、当該安全弁37によって内部圧力の異常上昇が回避される。
【0045】
本例の処理器22にはドレイン管38も接続されている。ドレイン管38にはフィルタ39が挿入されており、フィルタ39の下流側の部分で二又に分岐し、一方の側がストップ弁40およびスチームトラップ41を介して大気開放され、他方の側がストップ弁42を介して大気開放されている。
【0046】
次に、スチーム発生装置5は、純水あるいはイオン交換水を貯留した水タンク51と水ポンプ52とスチーム発生器53とオーバーフロー式の冷却器54と保圧弁55を備えており、これらが装置架台56に搭載されている。水タンク51内の水はフィルタ58が挿入された循環パイプ57aを介して水ポンプ52に供給され、水ポンプ52から吐出された水は循環パイプ57bを介してスチーム発生器53に供給される。スチーム発生器53は、循環パイプ57bに連通しているコイル状の通路57cを備え、この通路57cを外側から電気炉53aによって加熱することにより、当該通路57cを通過する間に水が水蒸気に変わる。電気炉53aは温度調節器53bによって制御される。発生した水蒸気は循環パイプ57dを通って冷却器54および保圧弁55が挿入されている循環パイプ57eを介して水タンク51に戻る。ここで、循環パイプ57dにはストップ弁59を介して水蒸気供給管7が連通している。ストップ弁59を開くと、スチーム発生器53で発生した飽和水蒸気が水蒸気供給管7を経由して処理器22に供給され、余剰の水蒸気のみが循環パイプ57d、57eを介して還流することになる。処理装置2の側に供給される飽和水蒸気の圧力は保圧弁55によって調節される。また、循環パイプ57dには圧力計60および安全弁61が接続されている。
【0047】
さらに、スチーム発生装置5には窒素ガス供給管62が取り付けられており、この窒素ガス供給管62はマスフローメータ63、ストップ弁64および逆止弁65を介して、処理装置2の側に接続された窒素ガス供給管8に接続されている。窒素ガス供給管62の上流端62aは、減圧弁66が挿入されている上流側配管67を介して窒素ガスタンク68に連通している。さらに、窒素ガス供給管62の上流端62aは、減圧弁69が挿入された排出側配管70を介して、処理装置22の側に搭載されているコントロール弁32の上流側に連通している。
【0048】
ここで、上記構成の処理装置2およびスチーム発生装置5の間に架け渡されている水蒸気供給管7および窒素ガス供給管8は、それぞれ、ラインヒータ9、10によって覆われており、これらを介して処理装置2の側に供給される水蒸気および窒素ガスを加熱できるようになっている。また、水蒸気供給管7には安全弁としてのストップ弁11が接続されている。さらに、窒素ガス供給管8は、その下流側の端部が第1ストップ弁12を介して処理器22に接続されていると共に、当該第1ストップ弁12よりも上流側の部位が第2ストップ弁13を介して水蒸気供給管7の下流側の部位に連通している。
【0049】
上記構成の処理システム1による被処理物の処理動作を説明する。基本的な処理動作は次の通りである。まず、処理器22に、チューブやチップなどの実験器具等、RNase等のタンパク質の不活化処理を所望する被処理物を投入し、処理器22に飽和水蒸気を供給する。ヒータ26によって処理器22の内部温度が所定の温度に到達した後は、コントロール弁32を調節して、処理器22の内部22bを飽和水蒸気圧より高い圧力の水蒸気が充填された状態、すなわち、飽和水蒸気または高飽和水蒸気の雰囲気に所定時間保持する。
次に、スチーム発生装置5からの飽和水蒸気の供給を止めた後、窒素を処理器22に供給してその内部の処理済被処理物を冷却しながら、処理器22の内部圧力を大気圧にする。内部圧力が大気圧になったことが確認された後は、安全のためにストップ弁42(ドレインバルブ)を開き、しかる後に処理器22を開けて、処理済みの被処理物を取り出す。
ただし、本処理に用いる窒素は、空気と置き換えてもよく、被処理物の特性により不活性ガスとして窒素を用いる。
【0050】
(実施例7)流通型タンパク質不活化装置を用いて処理したときの結果
実施例6のタンパク質不活化装置を用いて水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、20分)処理を行った以外は、実施例1と同様に処理した試料について、RNaseの不活化効果を、20%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により調べた。試料の調製および電気泳動は、実施例1と同手法により行った。不活化処理試料は、SH-1〜5、SH-6〜10の計10試料について確認を行った。
【0051】
その結果を、図13ABおよび図14ABに示した。流通型処理装置を用いて処理した場合は、110℃、20分の条件でもRNaseが不活化され、RNAが残存することが確認された。
【0052】
(比較例1)高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)処理したときの結果
高圧蒸気滅菌(121℃、0.2 MPa、20分)処理した後の試料についてのRNaseの不活化効果を、6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により調べた。試料の調製および電気泳動は、実施例1と同手法により行った。
【0053】
その結果、図15に示すように、110℃、0.14 MPa、20分でのオートクレーブによる不活化処理では、不活化処理後4日目頃から、RNAのバンドが検出されなくなり、RNase活性が再活性化されたことが確認された。電気泳動により得られた結果を定量的に測定したものを、図16に示した。その結果、経時的にRNA量の減少が認められ、RNaseの不活化処理が十分でないことが観察された。
【0054】
(比較例2)乾熱滅菌処理したときの結果
乾熱滅菌(180℃、60分)処理した後の試料についてのRNaseの不活化効果を、6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動により調べた。試料の調製および電気泳動は、実施例1と同手法により行った。
【0055】
その結果、図17に示すように、180℃、60分での乾燥加熱による不活化処理では、不活化処理後1日目でも、RNAのバンドが検出されなくなり、RNase活性が再活性化されたことが確認された。電気泳動により得られた結果を定量的に測定したものを、図18に示した。その結果、乾熱滅菌処理直後では、処理後すぐにRNA量の減少が認められ、RNaseの不活化処理が十分でないことが観察された。
【0056】
(実験例1)ソフト水熱プロセスによる不活化処理後のRNAseの不活化の確認
ソフト水熱プロセス(110℃、0.14MPa、30分または120℃、0.2 MPa、30分)での加圧熱水(SW)、飽和水蒸気(SV)、乾燥水蒸気(DS)の各条件で処理した後の試料について、TE緩衝液を加えてRNase濃度が5μg/mlとなるように調製した試料について、10μlの酸化型および還元型グルタチオンをそれぞれ加え、さらに実施例1、2と同様にRNA溶液を加え、37℃で60分間インキュベートした。
【0057】
実施例1および2と同様に6%ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動を行った後、検出されたRNA量を定量した。その結果を、図19および20に示した。その結果、乾燥水蒸気(DS)条件下での110℃、0.14MPa、30分での処理では、グルタチオン添加後にRNA重量が低下しており、RNaseの活性が回復したことが認められたが、加圧熱水(SW)および飽和水蒸気(SV)の高飽和水蒸気条件下ではRNA重量の低下も低く、RNaseの活性は殆ど回復していないことが確認された。一方、120℃、0.2 MPa、30分での処理では、何れの条件でもグルタチオン添加後にRNA重量の低下は顕著でなく、効果的にRNaseが不活性化されたことが確認された。上記結果から、相対的なRNase活性算出したものを図21に示した。
【0058】
グルタチオンは、タンパク質またはペプチドにおいて、スクランブルなS-S結合を酸化または還元することにより折りたたみを修復し、タンパク質の再構成を行う(図22A参照)。従って、RNaseの不活化処理が、S-S結合のスクランブルによる場合には、グルタチオンによりRNaseが再構成され、混合したRNAに対して酵素活性が回復することによりRNA重量が低減化することになる。しかし、RNaseの不活化処理が、S-S結合のスクランブルによるものでなく、より強力な作用により、例えば加水分解によるペプチド結合が分断される場合には、グルタチオンによりRNaseが再構成されることがない(図22B参照)。
【0059】
上記の結果より、本発明のソフト水熱プロセスによる不活化処理方法は、S-S結合のスクランブルによる可逆的不活化処理ではなく、より強力な不可逆的不活化処理方法であることが確認された。
【0060】
(実験例2)ソフト水熱プロセスによる不活化処理後のRNA量およびRNase量の確認
加圧熱水(SW)について、a)105℃、30分、b)110℃、20分、c)121℃、20分の各温度および時間の各条件でのソフト水熱プロセス処理を行ったのちのRNAを計測し、RNaseの不活化効果を確認し、その結果を図23〜25に示した。上記結果から、各条件処理後のRNase量を図26に示した。その結果、105℃30分で、RNA重量が50%程度であり、若干RNaseの活性が残ることが示唆された。一方、処理温度が110℃以上の場合は、RNaseを含まないコントロールと殆ど変わらない量のRNAが認められ、RNaseが十分に不活化されたことが確認された。さらに、相対的なRNase活性を算出したものを図27に示した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上詳述したように、本発明のタンパク質の不活化方法によれば、従来不活化処理が十分でなかった安定なタンパク質についても効果的に不活化処理を行うことができる。また、複数種のタンパク質を含む試料を処理物として、本発明の不活化方法における処理条件を調節することで、望ましくないタンパク質を選択的に不活化処理することも可能となる。
【0062】
本発明のタンパク質の不活化処理装置を用いれば、効果的に不活化処理を行うことができる。本発明のタンパク質の不活化処理装置に関し、「密閉型タンパク質不活化装置」であっても、細菌や酵素などの不活化処理は一応実施できるが、「流通型」とすることで、特にS-S結合を含むタンパク質やポリペプチドにおいて、さらに優れた効果が期待される。「密閉型」の場合では、処理部内での化学変化の平衡が特定され、平衡の近傍では反応速度が減衰するが、「流通型」では化学変化の平衡が暫時更新され、反応速度は減衰せず、効率よく処理可能な装置を提供することができる。
【0063】
さらには、「流通型」では、被処理物である実験器具、具体的にはチューブやチップなどが本発明の方法により処理されると同時に、乾燥状態とすることができる。例えば、従来の高圧蒸気滅菌であるオートクレーブ処理の場合は、処理直後は被処理物が凝結水により水分が付着した状態で、そのままでは実験に供することができず、実験器具は一度乾燥状態にするための工程を必要とするが、本発明の流通型の装置であれば、タンパク質やポリペプチドを不可逆的に不活化した状態で処理直後に乾燥状態を維持できる点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の高飽和水蒸気条件における飽和水蒸気量と温度の関係を示す図である。
【図2】本発明のタンパク質不活化に使用可能な装置の一例を示す図である。(実施例6)
【図3】ソフト水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、30分)処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。(実施例1)
【図4】ソフト水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、30分)処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。(実施例1)
【図5】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、30分)処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。(実施例2)
【図6】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、30分)処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。(実施例2)
【図7】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、60分)処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。(実施例3)
【図8】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、60分)処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。(実施例3)
【図9】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、90分)処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。(実施例4)
【図10】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、90分)処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。(実施例4)
【図11】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、120分)処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。(実施例5)
【図12】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、120分)処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。(実施例5)
【図13A】流通型装置を用いたときのソフト水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、20分)処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。SH-1〜5(実施例7)
【図13B】流通型装置を用いたときのソフト水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、20分)処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。SH-6〜10(実施例7)
【図14A】流通型装置を用いたときのソフト水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、20分)処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。SH-1〜5(実施例7)
【図14B】流通型装置を用いたときのソフト水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、20分)処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。SH-6〜10(実施例7)
【図15】オートクレーブ処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。(比較例1)
【図16】オートクレーブ処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。(比較例1)
【図17】乾熱滅菌処理でのRNase不活化結果(電気泳動)を示す図である。(比較例2)
【図18】乾熱滅菌処理でのRNase不活化結果(RNA量)を示す図である。(比較例2)
【図19】ソフト水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、30分)処理したときの、グルタチオン処理によるRNase不活化効果の確認実験結果(RNA量)を示す図である。(実験例1)
【図20】ソフト水熱プロセス(120℃、0.2 MPa、20分)処理したときの、グルタチオン処理によるRNase不活化効果の確認実験結果(RNA量)を示す図である。(実験例1)
【図21】ソフト水熱プロセス(110℃、0.14 MPa、30分、120℃、0.2 MPa、20分)処理したときの、RNase不活化効果の確認実験結果を相対的RNA量により示す図である。(実験例1)
【図22】タンパク質の不活化の理論図である。
【図23】ソフト水熱プロセス処理(105℃、20分)したときの、残存RNA量を示す図である。(実験例2)
【図24】ソフト水熱プロセス処理(110℃、20分)したときの、残存RNA量を示す図である。(実験例2)
【図25】ソフト水熱プロセス処理(121℃、20分)したときの、残存RNA量を示す図である。(実験例2)
【図26】各条件でソフト水熱プロセス処理したときの、残存RNase量を示す図である。(実験例2)
【図27】各条件でソフト水熱プロセス処理したときの、RNase不活化効果の確認実験結果を相対的RNA量により示す図である。(実験例2)
【符号の説明】
【0065】
以下図2に示す各符号について、説明する。
1 処理システム
2 処理装置
5 スチーム発生装置
7 水蒸気供給管
8 窒素ガス供給管
9、10 ラインヒータ
12、13 ストップ弁
22 処理器
22a 開閉蓋
22b 内部
23 被処理物設置部
25 スチーム吹き出し管
26 ヒータ
27 温度調節器
28 温度センサ
29 排気管
32 コントロール弁
33 気液分離装置
34 脱臭装置
36 圧力調節器
38 ドレインパイプ
40、42 スチームトラップ部
51 水タンク
52 水ポンプ
53 スチーム発生器
53a 電気炉
53b 温度調節器
54 冷却器
55 保圧弁
57a、57b、57d、57e 循環パイプ
57c コイル状通路
68 窒素ガスタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高飽和水蒸気条件下で処理することを特徴とする、タンパク質および/またはポリペプチドの不活化方法。
【請求項2】
高飽和水蒸気条件下で、処理温度が106〜150℃である、請求項1に記載の不活化方法。
【請求項3】
高飽和水蒸気条件下で、処理時間が10〜120分間である、請求項1または2に記載の不活化方法。
【請求項4】
高飽和水蒸気条件において、蒸気飽和度が100%以上である、請求項1〜3のいずれか1に記載の不活化方法。
【請求項5】
不活化されるタンパク質が酵素である、請求項1〜4のいずれか1に記載の不活化方法。
【請求項6】
酵素が、RNA分解酵素である、請求項5に記載の不活化方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の不活化方法に使用し、以下を備えてなる、タンパク質不活化処理装置:
1)不活化すべきタンパク質含有可能性のある被処理物の処理部;
2)前記処理部に供給する水蒸気を発生するスチーム発生部;
3)前記処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるヒータ制御部。
【請求項8】
さらに、以下を備えてなる、請求項7に記載のタンパク質不活化処理装置。
A)前記処理部の内部圧力を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるコントロール弁;
B)高飽和水蒸気条件を導く過程および/または高飽和水蒸気条件下で発生しうる凝結水を排除するためのスチームトラップ部。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図14A】
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【図14B】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図13A】
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【図13B】
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【図15】
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【図17】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−240206(P2009−240206A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89825(P2008−89825)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000148380)株式会社前田製作所 (14)
【Fターム(参考)】