説明

ターボチャージャ

【課題】作動性能を維持しつつ、排気ガスの温度低下の抑制と、耐久性の確保とを満たすことのできるターボチャージャを提供すること。
【解決手段】シェル室20を区画するシェル体21をプレス成型板により形成する。これにより、熱容量を小さくすることができるので、排気ガスの温度が低下し過ぎることを抑制できる。また、シェル体21の両端部側に、ベース部接続部30により一体に形成された第1ベース部25と第2ベース部26とを接続する。これにより、シェル体21の変形を抑制でき、シェル体21の耐久性を確保することができる。また、ベース部接続部30は、バックプレート取付部56の上流側に位置させる。これにより、ベース部接続部30が新たに排気ガスの流れを阻害することを抑制でき、過給の性能が低下することを抑制できる。これらの結果、作動性能を維持しつつ、排気ガスの温度低下の抑制と、耐久性の確保とを満たすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに関するものである。特に、この発明は、ノズルベーンを有するターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関では、運転性能の向上を図るために、過給器であるターボチャージャを備えているものがある。このように内燃機関に備えられるターボチャージャには、内燃機関運転時の排気ガスの圧力を利用して作動するタービンと、タービンの作動に伴って作動すると共にこの作動により空気を圧縮することができるコンプレッサとが設けられている。このため、ターボチャージャが設けられた内燃機関の運転時には、内燃機関の排気ガスがターボチャージャのタービンを作動させ、このタービンの作動によりコンプレッサが作動し、空気を圧縮して内燃機関に供給する。これにより、内燃機関の吸入空気量は増大し、燃焼させることのできる燃料も増加するので、運転性能を向上させることができる。
【0003】
ターボチャージャは、このように内燃機関の運転時における排気ガスによって作動するが、内燃機関の運転時に内燃機関から排出される排気ガスの圧力は、内燃機関の運転状態によって変化する。また、ターボチャージャの作動状態は、排気ガスの圧力の状態により変化するため、タービンを作動させる排気ガスの圧力が低い場合には、ターボチャージャは作動し難くなり、内燃機関に供給する空気量が低減する虞があった。
【0004】
そこで、従来のターボチャージャでは、排気ガスの圧力が低下した場合でも、効率よくタービンを作動させることができる構成にしているものがある。例えば、特許文献1に記載の可変ターボチャージャでは、ノズルベーンが取り付けられたノズルプレートとサイドプレートとを支持ボルトで連結することにより、タービンの上流側の位置に、ガス通路であるノズル部を形成する。また、ノズルプレートに取り付けられたノズルベーンは、ノズル部内に回動可能に配設する。これにより、ノズルベーンを回動させて向きを調整することにより、タービンを作動させる排気ガスの流れを調整することができ、排気ガスの圧力の変化に伴う、ターボチャージャから内燃機関に供給する空気量の低下を抑制することができる。
【0005】
即ち、ターボチャージャには、このようにノズルベーン等を設けることにより、排気ガスの圧力の変化に伴う過給圧の低下を抑制することができるが、タービンを作動させる排気ガスは、高温高圧のガスとなっている。このため、従来のターボチャージャでは、タービンのハウジングであるタービンハウジングには、強度の高い材料が用いられている場合が多く、タービンハウジングには、例えば、厚肉の鉄系の鋳造品が用いられている。しかし、タービンハウジングを、このような厚肉の鉄系の鋳造品で形成した場合、質量が増加し、さらに、大きな熱容量を有するため、排気ガスの熱は、タービンハウジングに吸収され易くなる。
【0006】
排気ガスの熱がタービンハウジングに吸収された場合、排気ガスの温度は低下するが、排気ガスの流れ方向におけるターボチャージャの下流側には、排気ガスを浄化する触媒装置が設けられている場合が多い。このように、ターボチャージャの下流側に触媒装置が設けられている場合、内燃機関から排出された排気ガスは、触媒装置により浄化した後に大気中に放出するが、触媒装置は、温度が所定の温度範囲内、即ち、活性化する温度範囲内にある場合に、排気ガスを効率よく浄化することができる。このため、内燃機関の運転時は、触媒装置の温度をこの範囲に維持するのが好ましいが、タービンハウジングを厚肉の鉄系の鋳造品で形成し、さらに、タービンハウジングの温度が低い場合には、排気ガスの熱はタービンハウジングに吸収され易くなるため、排気ガスの温度は低下しやすくなる。
【0007】
例えば、内燃機関の冷間始動時には触媒装置の温度も低いため、早急に温度を上昇させる必要があるが、内燃機関の冷間始動時には、タービンハウジングの温度も低くなっている。このため、タービンハウジングの熱容量が大きい場合における内燃機関の冷間始動時には、排気ガスの熱はタービンハウジングに吸収されて温度が低下し過ぎる虞があった。これにより、排気ガスの温度が伝達されることによって上昇する触媒装置の温度は上昇し難くなり、活性化温度に達するまでの時間が長くなる虞があった。このように触媒装置の温度が上昇し難くなり、触媒装置の温度が活性化温度に達していない状態の場合、排気ガスを触媒装置で効率よく浄化するのが困難なものとなっていた。
【0008】
そこで、従来のターボチャージャでは、排気ガスの熱がタービンハウジングに吸収され難くしているものがある、例えば、特許文献2に記載の過給機用ハウジングでは、排気ガスが流れるシェル室を区画する部分を、金属製のプレス成形板からなる薄肉のシェル体により形成されている。これにより、排気ガスが流れる部分の熱容量を小さくすることができるので、排気ガスからタービンハウジングに伝達される熱を少なくすることができる。従って、排気ガスの温度が低下し過ぎることを抑制できるので、触媒装置を早期に活性化温度に上昇させることができ、排気ガスを効率よく浄化することができる。
【0009】
【特許文献1】特開2001−173450号公報
【特許文献2】特開2004−143937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、タービンハウジングのシェル体を金属製のプレス成形板から形成して肉厚を薄くした場合、剛性が低くなるため、内燃機関の運転時に熱膨張と収縮とを繰り返すことにより、塑性変形する虞がある。つまり、特許文献2に記載の過給機用ハウジングのように、シェル体の肉厚を薄くした場合には、シェル体はタービンの回転軸の軸方向における剛性が低くなる。このため、内燃機関の運転時にシェル室に排気ガスが流れた際には、シェル体は熱膨張をして、軸方向におけるシェル室の幅が広がる方向に変形し易くなり、内燃機関の運転を停止してシェル体の温度が低下した際には、収縮して軸方向におけるシェル室の幅が狭くなる方向に変形し易くなる。このように、肉厚が薄いシェル体は、熱膨張と収縮とを繰り返して変形し易くなるので、熱疲労によって塑性変形する虞がある。これによりシェル室が変形し、ターボチャージャの性能が低下する虞があった。
【0011】
また、このように剛性が低くなることによる悪影響を緩和する場合には、リブ等の補強部材を設けて剛性を確保することが考えられるが、シェル体が区画するシェル室は排気ガスが流れるため、シェル体にリブ等の補強部材を設けた場合、タービンに流れる排気ガスの流れを阻害する虞がある。これにより、タービンを作動させる排気ガスの圧力が低下するため、タービンの回転が低下し、これに伴いコンプレッサの回転も低下するので、排気ガスによってターボチャージャを作動させる際における過給の性能が低下する虞があった。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作動性能を維持しつつ、排気ガスの温度低下の抑制と、耐久性の確保とを満たすことのできるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係るターボチャージャは、回転可能に支持されたタービンホイールが設けられているタービン側に位置すると共に内燃機関から排出された排気ガスが流れるシェル室を区画し、且つ、プレス成型板からなるシェル体と、前記シェル体の端部のうち一端側に接続される第1ベース部と、前記シェル体の端部のうち他端側に接続される第2ベース部と、前記シェル室から前記タービンホイールに流れる前記排気ガスの流路である排気ガス流路内に配設されるノズルベーンと、前記ノズルベーンを前記排気ガス流路内で回動可能に保持すると共に、前記排気ガス流路内に位置する保持部接続部材により前記第1ベース部に接続されるノズルベーン保持部と、前記排気ガス流路内を流れる前記排気ガスの流れ方向における前記保持部接続部材の上流側または下流側に位置して前記第1ベース部と前記第2ベース部とを一体に接続するベース部接続部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明では、シェル室を区画するシェル体をプレス成型板により形成しているので、質量を軽減することができ、熱容量を小さくすることができる。これにより、排気ガスがシェル室を通過する際に排気ガスからシェル体に伝達される熱が少なくなるので、排気ガスの温度が低下し過ぎることを抑制できる。また、シェル体の両端部側に第1ベース部と第2ベース部とを接続し、第1ベース部と第2ベース部とを、ベース部接続部により一体に接続している。このため、第1ベース部と第2ベース部との相対的な位置が変化することを抑制でき、これにより、第1ベース部と第2ベース部とに接続されたシェル部の変形を抑制できる。従って、シェル部の熱疲労に起因する塑性変形を抑制することができ、耐久性を確保することができる。
【0015】
また、ノズルベーンを保持するノズルベーン保持部は、特許文献1に記載の可変ターボチャージャにおいて、ノズルプレートとサイドプレートとを支持ボルトで連結しているように、保持部接続部材によって第1ベース部に接続されている。さらに、ベース部接続部は、排気ガスの流れ方向において、保持部接続部材の上流側または下流側に位置している。これにより、シェル体の剛性を確保するために、ベース部接続部を設けた場合でも、ベース部接続部は排気ガスの流れ方向において保持部接続部材と重なっているため、ベース部接続部を設けることに起因して、ベース部接続部が新たに排気ガスの流れを阻害することを抑制できる。これにより、ベース部接続部を設けることに起因して、当該ターボチャージャの作動時における過給の性能が低下することを抑制できる。これらの結果、作動性能を維持しつつ、排気ガスの温度低下の抑制と、耐久性の確保とを満たすことができる。
【0016】
また、この発明に係るターボチャージャは、前記第1ベース部と前記第2ベース部と前記ベース部接続部とは、鋳造により一体に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明では、第1ベース部と第2ベース部とベース部接続部とは、鋳造により一体に形成しているので、第1ベース部と第2ベース部との剛性を、より確実に高くすることができる。これにより、第1ベース部と第2ベース部とに接続されるシェル体の塑性変形を、より確実に抑制することができ、耐久性を確保することができる。また、シェル体の塑性変形を抑制できるので、シェル体の変形に起因する当該ターボチャージャの作動時における性能の低下を抑制することができる。これらの結果、より確実に作動性能を維持しつつ、耐久性を確保することができる。
【0018】
また、この発明に係るターボチャージャは、前記ノズルベーンは、前記第1ベース部に対向する位置に配設されており、前記第1ベース部における前記ノズルベーンに対向する位置には、前記第1ベース部を形成する材料よりも耐熱性の高い材料からなる耐熱部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この発明では、第1ベース部におけるノズルベーンに対向する位置に耐熱部を設けている。つまり、ノズルベーンは、第1ベース部に接触しながら回動する場合があるが、このため、第1ベース部におけるノズルベーンに対向する部分は、温度が高くなり易くなる。従って、この部分に、第1ベース部を形成する材料よりも耐熱性の高い材料からなる耐熱部を設けることにより、この部分の耐熱性を確保し、耐久性を確保することができる。また、第1ベース部におけるノズルベーンに対向する位置に耐熱部を設ける、即ち、強度が必要な部分に、その強度に適した材料からなる部材を設けることにより、第1ベース部や第2ベース部の他の部分を、耐熱部と異なる材料で形成することができる。例えば、第1ベース部における耐熱部以外の部分や第2ベース部に、耐熱部よりも安価な材料を用いることができる。これにより、製造コストの低減を図ることができる。これらの結果、より確実に耐久性を確保することができると共に、製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るターボチャージャは、作動性能を維持しつつ、排気ガスの温度低下の抑制と、耐久性の確保とを満たすことができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係るターボチャージャの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0022】
以下の説明において、シャフト軸方向とは、シャフト15の軸心の方向に沿った方向を示しており、シャフト径方向とは、シャフト15の径方向に沿った方向を示している。また、シャフト周方向とは、シャフト15の軸心を中心とする円周方向に沿った方向を示している。図1は、本発明の実施例に係るターボチャージャの要部断面図である。図2は、図1に示すターボチャージャが有するタービンハウジングの断面図である。図3は、図2のA−A矢視図である。同図に示すターボチャージャ1は、排気ガスの流れ方向におけるタービンホイール11の上流側に、回動可能なノズルベーン51を設け、ノズルベーン51を調整することによりタービンホイール11の回転を調整可能な、いわゆるVN(Variable Nozzle)ターボとなっている。このターボチャージャ1は、内燃機関(図示省略)から排出される排気ガスにより作動するタービン10を有しており、さらに、タービン10の作動に伴って作動することにより内燃機関が吸入する空気を過給して内燃機関に供給するコンプレッサ(図示省略)を有している。
【0023】
また、このターボチャージャ1は、当該ターボチャージャ1が有する回転体の回転軸であるシャフト15を有しており、コンプレッサは、当該ターボチャージャ1において、シャフト15の軸方向における一方の端に形成され、タービン10は他方の端に形成されている。また、このシャフト15のコンプレッサ側の端部には、コンプレッサホイール(図示省略)が設けられており、タービン10側の端部には、タービンホイール11が設けられている。また、シャフト15は、当該シャフト15を回転可能に支持する軸受16により支持されている。さらに、コンプレッサホイールとタービンホイール11とは、それぞれシャフト15の軸方向における両端に接続されているため、これらのシャフト15、コンプレッサホイール、及びタービンホイール11は、一体となって回転可能に支持されている。
【0024】
また、シャフト15を支持する軸受16は、コンプレッサとタービン10との間に位置するセンターハウジング6に内設されており、軸受16によって回転可能に支持されるシャフト15は、軸受16がセンターハウジング6に内設されることにより、シャフト15もセンターハウジング6に内設されている。
【0025】
また、シャフト15の一端に接続されているタービンホイール11は、シャフト15の軸方向においてセンターハウジング6のタービン10側に位置するハウジングであるタービンハウジング5に内設されている。このタービンハウジング5は、タービンホイール11の径方向における外方に位置し、内燃機関から排出された排気ガスがタービンホイール11の回転方向に沿った方向に旋回して流れるシェル室20を有している。このシェル室20は、金属材料からなるプレス成型板からなるシェル体21により区画されている。つまり、シェル体21は、金属材料からなる薄板が、内側の空間を有してシェル室20の形状になるようにプレス成型によって形成されており、シェル室20は、このように形成されるシェル体21の内側に設けられ、シェル体21によって区画されている。
【0026】
このように形成されるシェル室20は、詳しくは、シャフト15の軸を中心とした旋回方向における一方向に向かうに従って、徐々に断面積が小さくなっており、シェル体21は、シェル室20がこのような形状になるように形成されている。また、シェル体21において、シェル室20の断面積が大きくなっている側の端部は、シャフト15の略径方向における外方に向けて開口しており、この開口している部分は、ターボチャージャ1における、内燃機関から排出された排気ガスの入口である排気ガス入口部41となっている(図3)。このように形成される排気ガス入口部41には、内燃機関から排出された排気ガスの通路である排気管(図示省略)が接続される部分である入口側接続フランジ42が設けられている(図3)。
【0027】
また、このように形成されるシェル室20は、詳しくは、シャフト軸方向においてセンターハウジング6側の反対側に位置する第1シェル板22と、シャフト軸方向におけるセンターハウジング6側に位置する第2シェル板23との2枚のプレス成型板が組合されることにより形成されている。
【0028】
このうち第1シェル板22は、シェル室20を区画する部分が、シャフト軸方向においてセンターハウジング6側の反対方向に凸となって湾曲している。また、第2シェル板23は、シェル室20を区画する部分が、シャフト軸方向におけるセンターハウジング6側、或いは、シャフト径方向における外方に凸となって湾曲している。シェル室20は、このように形成される第1シェル板22と第2シェル板23とが接続されることにより区画されている。また、このように第1シェル板22と第2シェル板23とにより形成されるシェル体21は、シャフト径方向における内方側が開口している。
【0029】
さらに、第2シェル板23と共にシェル室20を区画する第1シェル板22は、シャフト軸方向において湾曲してシェル室20を形成している部分よりも内方に位置する部分がシャフト径方向における内方に向けて形成されており、シャフト軸方向にほぼ直交する面を有して形成されている。またさらに、第1シェル板22は、この湾曲してシェル室20を形成している部分よりも内方に位置する部分におけるシャフト径方向の内端部分から、シャフト軸方向におけるセンターハウジング6側の反対方向に向けて形成されている部分を有している。この部分は、略円筒径の形状で、シャフト軸方向におけるセンターハウジング6側の反対方向に向けて形成されており、円筒形の軸とシャフト15の軸とがほぼ一致する向きで設けられている。
【0030】
第1シェル板22において、この円筒形の形状で形成されている部分の先端、即ち、センターハウジング6側の反対側の端部は、ターボチャージャ1を作動させる排気ガスの出口である排気ガス出口部45となっている。この排気ガス出口部45には、内側に第1シェル板22の形状である円筒形の径とほぼ同じ径の孔が開けられた円板からなる出口側接続フランジ46が設けられている。この出口側接続フランジ46は、当該出口側接続フランジ46の形状である円形の軸とシャフト15の軸とがほぼ一致する向きで設けられている。
【0031】
この出口側接続フランジ46には、ターボチャージャ1を通過した排気ガスの通路である排気管(図示省略)が接続可能となっており、排気管には、排気ガスを浄化可能な触媒(図示省略)が設けられている。この触媒は、排気ガス中の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)と窒素酸化物(NOx)との3物質を酸化・還元反応により同時に除去する、三元触媒となっている。
【0032】
また、シェル体21には、シェル体21の端部のうち一端側が第1ベース部25に接続されており、シェル体21の端部のうち他端側は第2ベース部26が接続されている。つまり、シェル体21の第1シェル板22には第1ベース部25が接続されており、第2シェル板23には第2ベース部26が接続されている。
【0033】
このうち、第1ベース部25は、第1シェル板22においてシェル室20を形成する部分の、シャフト径方向における内方に位置している部分の形状に沿って形成されている。詳しくは、第1ベース部25は、第1シェル板22における、シェル室20を形成する部分からシャフト径方向における内方に向けて形成される部分の、センターハウジング6側の面に、第1シェル板22に沿って設けられており、この部分は、シャフト軸方向に直交すると共にセンターハウジング6方向に向けて形成された面を有している。さらに、第1ベース部25は、このように第1シェル板22におけるセンターハウジング6側の面に設けられている部分から、第1シェル板22に沿って、当該第1シェル板22における、略円筒形の形状で形成されている部分の径方向における内側にも設けられている。即ち、第1ベース部25は、第1シェル板22において排気ガス出口部45を形成する部分付近のシャフト径方向における内方側に、第1シェル板22に沿って設けられている。
【0034】
また、第2ベース部26は、シャフト軸方向における第2シェル板23の両端のうち、第1シェル板22側に位置する端部の反対側の端部付近に接続されている。センターハウジング6は、この第2ベース部26に接続される。このように、第1シェル板22に接続される第1ベース部25と、第2シェル板23に接続される第2ベース部26とは、シャフト軸方向において所定の間隔を開けて設けられている。さらに、これらの第1ベース部25と第2ベース部26とは、双方の間に位置し、両端が第1ベース部25と第2ベース部26とに接続されたベース部接続部30により接続されている。このように設けられるベース部接続部30により、第1ベース部25と第2ベース部26とは一体に形成されており、換言すると、ベース部接続部30は、第1ベース部25と第2ベース部26とを一体に接続している。
【0035】
また、ベース部接続部30は、3つ形成されており、3つのベース部接続部30は、シャフト周方向において概ね等間隔に配設されている(図3)。このように設けられるベース部接続部30によって接続されることにより、一体に形成されている第1ベース部25と第2ベース部26とベース部接続部30とは、鋳造により一体に形成されている。
【0036】
また、第1ベース部25と第1シェル板22とには、シャフト径方向におけるベース部接続部30の内方付近に、第1ベース部25と第1シェル板22とを貫通した貫通孔によって形成される取付孔31が形成されている(図2、図3)。この取付孔31は、ベース部接続部30と同様に、シャフト周方向において概ね等間隔に3箇所に形成されており、それぞれ、シャフト径方向におけるベース部接続部30の内方付近の位置に形成されている。
【0037】
また、第1ベース部25における第2ベース部26側の面には、第1ベース部25や第2ベース部26を形成する材料よりも耐熱性の高い材料からなる耐熱部35が設けられている。この耐熱部35は、例えば、耐熱ステンレス鋼板材など、耐熱性の高い材料で形成されており、リング状の円板状の形状で第1ベース部25の第2ベース部26側の面に設けられている。つまり、耐熱部35は、第1ベース部25の第2ベース部26側の面において、シャフト径方向における所定の範囲に形成され、且つ、シャフト周方向における全周に形成されている。さらに、この耐熱部35は、第1ベース部25における耐熱部35以外の部分よりも高い寸法精度で形成されている。
【0038】
また、第1シェル板22と第2シェル板23、即ち、シェル体21によって形成されるシェル室20は、シャフト径方向における内方側が開口している。つまり、第1ベース部25と第2ベース部26とは、ベース部接続部30以外の部分が離れて形成されているため、シェル室20は、この第1ベース部25と第2ベース部26との間の部分が開口している。
【0039】
図4は、図1に示すターボチャージャが有するノズルベーン組立体の断面図である。図5は、図4のB−B矢視図である。また、第1ベース部25には、ノズルベーン組立体50が接続されている。詳しくは、このノズルベーン組立体50は、複数のノズルベーン51と、当該ノズルベーン51を保持するノズルベーン保持部であるバックプレート55を有している。このバックプレート55は、中央に穴が開けられた略円板状、即ちリング状の形状で形成されており、ノズルベーン51は、このリング状の一側面に位置している。詳しくは、複数のノズルベーン51は、それぞれ略矩形状の板状の形状で形成されており、板厚方向が、概ねシャフト周方向、或いはバックプレート55の周方向となる向きで、バックプレート55から突出して設けられている。複数のノズルベーン51は、この向きで、バックプレート55の周方向に等間隔で配設されている。
【0040】
このように設けられる複数のノズルベーン51には、それぞれに回動軸61が接続されており、回動軸61はバックプレート55を貫通してノズルベーン51側の側面の反対側に位置する側面から突出している。回動軸61は、このようにバックプレート55を貫通することによりバックプレート55に回動可能に保持されており、ノズルベーン51は、この回動軸61に接続されることにより、回動軸61を介して回動可能にバックプレート55に保持されている。
【0041】
また、バックプレート55における、回動軸61が突出した側面側には、複数の回動軸61に対応して複数設けられた開閉レバー63と、シャフト15の軸心の位置付近に軸心を有する略リング状の形状で形成され、これらの複数の開閉レバー63を接続するリングプレート62とが設けられている。複数の回動軸61は、それぞれ開閉レバー63に接続されており、さらに、複数の開閉レバー63は、それぞれが複数の連結ピン64によってリングプレート62に接続されている。このうち、開閉レバー63は、ノズルベーン51と共に回動軸61を軸として回動可能に設けられている。
【0042】
また、リングプレート62は、開閉レバー63とバックプレート55との間に位置しており、この位置で、複数の連結ピン64によって複数の開閉レバー63に接続されている。これにより、複数の開閉レバー63は、複数の連結ピン64によって全てリングプレート62に接続されている。
【0043】
また、リングプレート62には、駆動レバーピン66によって駆動レバー65が接続されている。この駆動レバー65は、リングプレート62における開閉レバー63が設けられている側の面に設けられている。さらに、駆動レバー65には、当該駆動レバー65におけるリングプレート62側の反対側、つまり、バックプレート55側の反対側に向けて突出した操作軸67が接続されている。この操作軸67は、一端側が駆動レバー65に接続されており、他端側には、操作部68が接続されている。また、操作部68には、操作軸67を軸として当該操作部68を回動させることのできるアクチュエータ(図示省略)が接続されており、アクチュエータによって操作部68を回動させることにより駆動レバーピン66は回動可能に設けられている。
【0044】
このように、ノズルベーン51を回動可能に保持するバックプレート55には、保持部接続部材であるバックプレート取付部56が設けられている。このバックプレート取付部56は、略円筒形の形状で形成されており、バックプレート55における、ノズルベーン51が設けられている側の面に3つ設けられている。さらに、この3つのバックプレート取付部56の位置は、シャフト周方向において概ね等間隔に配設されており、詳しくは、第1ベース部25と第1シェル板22とに形成される前記取付孔31に対応する位置に設けられている。さらに、このバックプレート取付部56は、先端付近にネジ山が形成されており、このネジ山が形成されている部分とバックプレート取付部56の付け根との間には、他の部分よりも径が大きくなった部分である固定部57が形成されている。
【0045】
第1ベース部25にノズルベーン組立体50を接続する際、或いは、第1ベース部25にバックプレート55を取り付ける際には、バックプレート55のバックプレート取付部56やノズルベーン51が設けられている側の面を、第1ベース部25の耐熱部35が設けられている側の面に対向させる。この状態で、バックプレート取付部56を第1ベース部25の取付孔31に挿通し、バックプレート取付部56の固定部57を第1ベース部25の耐熱部35に当接させる。これにより、バックプレート取付部56におけるネジ山が形成されている部分は、取付孔31における第1シェル板22側から突出するので、ナット58をネジ山に螺合する。これにより、バックプレート取付部56は第1ベース部25に取り付けられ、ノズルベーン組立体50は、第1ベース部25に接続される。
【0046】
また、第1ベース部25にバックプレート55を取り付ける際には、このようにバックプレート55のノズルベーン51が設けられている側の面を、第1ベース部25の耐熱部35が設けられている側の面に対向させる。このため、ノズルベーン51は、第1ベース部25に対向する位置に配設され、また、第1ベース部25におけるノズルベーン51に対向する位置には、耐熱部35が位置することになる。換言すると、耐熱部35は、第1ベース部25にバックプレート55を取り付けた際に、第1ベース部25においてノズルベーン51が対向する位置に設けられている。また、耐熱部35とノズルベーン51とは、このように対向する位置に設けられているが、この耐熱部35とノズルベーン51との、シャフト軸方向における間隔は、微小な隙間となっている。つまり、第1ベース部25とノズルベーン51との、シャフト軸方向における間隔は、微小な隙間となっている。
【0047】
また、第1ベース部25に形成された取付孔31は、シャフト径方向におけるベース部接続部30の内方付近の位置に形成されているため、ノズルベーン組立体50を第1ベース部25に接続した状態では、取付孔31に挿通されるバックプレート取付部56も同様に、シャフト径方向におけるベース部接続部30の内方付近に位置した状態になる。
【0048】
このように、ノズルベーン組立体50が第1ベース部25に接続された状態では、第1ベース部25とバックプレート55とは互いに対向しており、シェル室20からタービンホイール11に流れる排気ガスの流路である排気ガス流路48を形成している。また、第1ベース部25と第2ベース部26も互いに対向しているが、第1ベース部25と第2ベース部26とにおいて互いに対向している部分も、排気ガス流路48として形成されている。バックプレート55が回動可能に保持するノズルベーン51は、このように形成される排気ガス流路48内に配設されている。
【0049】
また、シャフト径方向における排気ガス流路48の外方には、シェル室20が位置しているが、このシェル室20は、シャフト径方向における内方側が開口している。このため、シェル室20は、排気ガス流路48に開口している。従って、内燃機関の運転時における排気ガスは、シェル室20から排気ガス流路48を通ってタービンホイール11に流れる。排気ガス流路48内には、このように排気ガスが流れるが、この排気ガス流路48には、第1ベース部25と第2ベース部26とを接続するベース部接続部30と、バックプレート55を第1ベース部25に接続するバックプレート取付部56とが、排気ガス流路48を横断して配設されている。
【0050】
これらのベース部接続部30とバックプレート取付部56とは、シャフト径方向において、バックプレート取付部56がベース部接続部30の内方付近に位置している。即ち、ベース部接続部30は、シャフト径方向においてバックプレート取付部56の外方に位置しているため、排気ガス流路48内を流れる排気ガスの流れ方向で見た場合、ベース部接続部30は、排気ガスの流れ方向におけるバックプレート取付部56の上流側に位置している。
【0051】
この実施例に係るターボチャージャ1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。内燃機関の運転時には、内燃機関から排出された排気ガスは、入口側接続フランジ42が設けられた排気ガス入口部41からシェル室20に流入する。シェル室20に流入した排気ガスは、シェル室20の形状に沿ってタービンホイール11の略回転方向に旋回しながら流れ、旋回した流れのまま排気ガス流路48に流れる。その際に、排気ガスから、シェル室20を区画するシェル体21に向けて排気ガスの熱が伝達されるが、シェル体21は、金属材料からなるプレス成型板によって形成されているため、熱容量が小さくなっている。このため、排気ガスの熱が伝達されたシェル体21は、早期に温度が上昇し、排気ガスからシェル体21には熱が伝達され難くなる。
【0052】
シェル室20を旋回しながら流れた排気ガスは、旋回した流れのまま排気ガス流路48に流れるが、排気ガス流路48には、ベース部接続部30とバックプレート取付部56とが、排気ガス流路48を横断している。このため、排気ガスは、この部分を通過した後、タービンホイール11の方向に流れる。排気ガス流路48に流れ、ベース部接続部30とバックプレート取付部56とが設けられている部分を通過した排気ガスは、さらに旋回した流れのままタービンホイール11に当たる。これにより、タービンホイール11には回転方向の力が作用し、タービンホイール11は、シャフト15及びコンプレッサホイールと一体となって回転する。
【0053】
また、排気ガス流路48には、ノズルベーン51が設けられているが、このノズルベーン51は、回動軸61を中心として回動可能に設けられている。具体的には、ノズルベーン51を回動させる際には、操作軸67を中心としてアクチュエータによって操作部68を回動させる。これにより、駆動レバーは、操作軸67を中心として回動するが、駆動レバーの回動時の力は、駆動レバーピン66によってリングプレート62に伝達される。これにより、リングプレート62は、当該リングプレート62の形状であるリング状の中心付近、或いは、シャフト15の軸心付近を中心として回動する。この回動により、リングプレート62と開閉レバー63とを接続する連結ピン64もほぼ同じ方向に回動するが、連結ピン64の回動時の力は当該連結ピン64が接続されている開閉レバー63に伝達される。このように、連結ピン64から力が伝えられた開閉レバー63は、回動軸61を中心として回動する。なお、開閉レバー63は複数設けられているが、連結ピン64を介してリングプレート62から回動時の力が開閉レバー63に伝達される場合には、全ての開閉レバー63に伝達され、全ての開閉レバー63が回動軸61を中心として回動する。
【0054】
この開閉レバー63は、回動軸61と一体に接続されており、回動軸61は、さらにノズルベーン51に一体に接続されている。これにより、開閉レバー63が回動軸61を中心として回動する場合には、回動軸61は開閉レバー63の回動と一体となって回動する。さらに、このように回動軸61が回動をする場合には、回動軸61と一体に形成されているノズルベーン51も回動軸61と一体となって回動する。ノズルベーン51は、このように回動することにより、排気ガス流路48を流れる排気ガスの流れ方向に対する傾斜角が調整可能になっている。つまり、ノズルベーン51は、排気ガス流路48を流れる排気ガスの流れ方向に比較的沿う状態である小傾斜状態52と、この排気ガスの流れ方向から大きく傾斜した状態である大傾斜状態53との間で、傾斜角度が調節可能になっている。
【0055】
このように、ノズルベーン51の傾斜角を調節することにより、排気ガス流路48を流れる排気ガスは、向きが変化する。これにより、この排気ガス流路48から排気ガスがタービンホイール11に流れる際における向きが変化し、排気ガスがタービンホイール11に当たる際における角度、及び当たる位置が変化する。このため、タービンホイール11に対する排気ガスの当たり方によってタービンホイール11に対する排気ガスからの入力、即ち、タービンホイール11を回転させる力が変化するため、ノズルベーン51の傾斜角を調節することにより、タービンホイール11の回転を変化させることができる。これにより、コンプレッサホイールの回転を調節することができ、内燃機関への過給を調整することができる。
【0056】
タービンホイール11を回転させた排気ガスは、排気ガス出口部45の方向に向かい、排気ガス出口部45からターボチャージャ1の外に流出する。つまり、タービンホイール11を回転させた排気ガスは、排気ガス出口部45から、出口側接続フランジ46に接続された排気管内に流れ、排気管に設けられた触媒によって浄化された後、大気中に放出される。
【0057】
このように、内燃機関の運転時には、ターボチャージャ1のタービン10側には内燃機関から排出された排気ガスが流れるため、排気ガスの熱はタービン10側の各部に伝達され、少なくともターボチャージャ1におけるタービン10側の温度は上昇する。このため、タービン10側の各部には熱膨張が生じ、第1ベース部25と第2ベース部26とには、熱膨張により双方の間隔が開く方向の力が生じる。これに対し、内燃機関の運転を停止し、ターボチャージャ1の温度が低下した場合には、熱膨張をした各部は収縮する。従って、第1ベース部25と第2ベース部26とには、収縮により双方の間隔が狭くなる方向の力が生じる。
【0058】
従って、第1ベース部25と第2ベース部26とには、内燃機関の運転や停止に起因して温度が上昇したり低下したりすることにより、双方の間隔が大きくなったり小さくなったりする方向の力が発生するが、第1ベース部25と第2ベース部26とは、ベース部接続部30によって接続され、一体に形成されている。このため、第1ベース部25と第2ベース部26との温度が変化する場合でも、第1ベース部25と第2ベース部26との相対的な位置は変化し難くなっている。
【0059】
また、この第1ベース部25と第2ベース部26とには、シェル体21が接続されているが、第1ベース部25と第2ベース部26とは、このように温度の変化により相対的な位置が変化し難くなっている。このため、第1ベース部25と第2ベース部26とに接続されたシェル体21も、第1ベース部25と第2ベース部26とが、温度の変化によって相対的な位置が変化し難くなっていることにより変形し難くなっている。
【0060】
また、ノズルベーン51は、回動可能に設けられているが、第1ベース部25の耐熱部35とノズルベーン51との間隔は、微小な隙間となっている。このため、ターボチャージャ1の作動時における上記のような熱変形や、ターボチャージャ1の作動時における振動等により、耐熱部35とノズルベーン51とは近付き、ノズルベーン51は耐熱部35に接触する場合がある。この場合、ノズルベーン51は、回動時に耐熱部35に対して摺動しながら回動する。
【0061】
以上のターボチャージャ1は、シェル室20を区画するシェル体21をプレス成型板により形成しているので、質量を軽減することができ、熱容量を小さくすることができる。これにより、排気ガスがシェル室20を通過する際に排気ガスからシェル体21に伝達される熱が少なくなるので、排気ガスの温度が低下し過ぎることを抑制できる。このため、特に内燃機関の冷間始動時に、排気ガスの熱がシェル体21に伝達されて温度が低くなり過ぎるのを抑制できるため、排気ガスの熱によって触媒の温度を上昇させることができ、触媒を早期に活性化温度まで上昇させることができる。
【0062】
また、シェル体21の両端部側に第1ベース部25と第2ベース部26とを接続し、第1ベース部25と第2ベース部26とを、ベース部接続部30により一体に接続している。このため、第1ベース部25と第2ベース部26との相対的な位置が変化することを抑制でき、これにより、第1ベース部25と第2ベース部26とに接続されたシェル体21の変形を抑制できる。従って、シェル体21の熱疲労に起因する塑性変形を抑制することができ、耐久性を確保することができる。
【0063】
また、ノズルベーン51を保持するバックプレート55は、バックプレート取付部56によって第1ベース部25に接続されている。さらに、ベース部接続部30は、排気ガスの流れ方向において、バックプレート取付部56の上流側に位置している。これにより、シェル体21の剛性を確保するために、ベース部接続部30を設けた場合でも、ベース部接続部30は排気ガスの流れ方向においてバックプレート取付部56と重なっているため、ベース部接続部30を設けることに起因して、ベース部接続部30が新たに排気ガスの流れを阻害することを抑制できる。これにより、ベース部接続部30を設けることに起因して、当該ターボチャージャ1の作動時における過給の性能が低下することを抑制できる。これらの結果、作動性能を維持しつつ、排気ガスの温度低下の抑制と、耐久性の確保とを満たすことができる。
【0064】
また、第1ベース部25と第2ベース部26とベース部接続部30とは、鋳造により一体に形成しているので、第1ベース部25と第2ベース部26との剛性を、より確実に高くすることができる。これにより、第1ベース部25と第2ベース部26とに接続されるシェル体21の塑性変形を、より確実に抑制することができ、耐久性を確保することができる。また、シェル体21の塑性変形を抑制できるので、シェル体21の変形に起因する当該ターボチャージャ1の作動時における性能の低下を抑制することができる。
【0065】
つまり、シェル体21が変形した場合、シェル室20を流れる排気ガスの流れが所望の流れで流れなくなってしまう虞があり、この場合、排気ガスを効率よくタービンホイール11に当てることが困難になる虞がある。この場合、タービンホイール11を排気ガスによって効率よく回転させることが困難になり、このタービンホイール11と一体となって回転するコンプレッサホイールを所望の回転で回転させることも困難になるため、過給性能が低下する虞がある。これに対し、第1ベース部25と第2ベース部26とベース部接続部30とを鋳造により一体に形成した場合には、第1ベース部25と第2ベース部26との剛性を確保でき、シェル体21の剛性も確保できるので、ターボチャージャ1の作動時に過給性能が低下することを抑制できる。これらの結果、より確実に作動性能を維持しつつ、耐久性を確保することができる。
【0066】
また、第1ベース部25におけるノズルベーン51に対向する位置に耐熱部35を設けている。つまり、シャフト軸方向におけるノズルベーン51と第1ベース部25との間隔は微小な隙間になっているため、ノズルベーン51の回動時には、ノズルベーン51は第1ベース部25に接触しながら回動する場合がある。このため、第1ベース部25におけるノズルベーン51に対向する部分は、温度が高くなり易くなっている。従って、この部分に、第1ベース部25を形成する材料よりも耐熱性の高い材料からなる耐熱部35を設けることにより、この部分の耐熱性を確保し、耐久性を確保することができる。
【0067】
また、第1ベース部25におけるノズルベーン51に対向する位置に耐熱部35を設ける、即ち、強度が必要な部分に、その強度に適した材料からなる部材を設けることにより、第1ベース部25や第2ベース部26の他の部分を、耐熱部35と異なる材料で形成することができる。例えば、第1ベース部25における耐熱部35以外の部分や第2ベース部26に、耐熱部35よりも安価な材料を用いることができる。これにより、製造コストの低減を図ることができる。
【0068】
さらに、シャフト軸方向におけるノズルベーン51と第1ベース部25との間隔は微小な隙間になっているため、この部分の形状には精度が要求されるが、この部分に、第1ベース部25における他の部分よりも寸法精度が高い耐熱部35を設けている。これにより、高い精度で製造する必要がある部分にのみ、精度の高い部材である耐熱部35を設け、その他の部分の製造時における精度は、耐熱部35が設けられている部分の精度よりも低くすることができる。このため、これによっても製造コストの低減を図ることができる。これらの結果、より確実に耐久性を確保することができると共に、製造コストの低減を図ることができる。
【0069】
なお、上述したターボチャージャ1では、ベース部接続部30とバックプレート取付部56とは、それぞれ3つずつ設けられているが、これらは3つずつ以外でも構わない。ベース部接続部30は、排気ガス流路48を流れる排気ガスの流れ方向においてバックプレート取付部56と重なる位置に設けられていればよい。このため、このように設けられていれば、ベース部接続部30とバックプレート取付部56とは、それぞれ3つずつ以外でもよく、また、ベース部接続部30とバックプレート取付部56との数は異なっていてもよい。さらに、上述したターボチャージャ1では、ベース部接続部30は、排気ガス流路48内を流れる排気ガスの流れ方向におけるバックプレート取付部56の上流側に位置しているが、ベース部接続部30は、バックプレート取付部56の下流側に位置していてもよい。つまり、ベース部接続部30は、バックプレート取付部56の数以下の数で設けられ、排気ガス流路48を流れる排気ガスの流れ方向においてバックプレート取付部56と重なる位置に設けられていればよい。
【0070】
また、上述したターボチャージャ1では、シェル体21は第1シェル板22と第2シェル板23とにより形成されているが、シェル体21は、一体で形成されていてもよい。シェル体21は、プレス成型板、即ち、薄板により形成されていればよく、薄板により形成されていれば、一体で形成されていても、複数を組合わせることにより形成されていてもよい。このように、シェル体21を薄板により形成することにより、熱容積が小さくなるので、排気ガスから伝達される熱の量が少なくなり、内燃機関の冷間始動時に排気ガスの温度が低くなり過ぎることを抑制できる。この結果、排気ガスの流れ方向におけるターボチャージャ1の下流側に位置する触媒の初期暖機性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明に係るターボチャージャは、ノズルベーンを有するターボチャージャに有用であり、特に、ターボチャージャの下流側に触媒が設けられている場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施例に係るターボチャージャの要部断面図である。
【図2】図1に示すターボチャージャが有するタービンハウジングの断面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】図1に示すターボチャージャが有するノズルベーン組立体の断面図である。
【図5】図4のB−B矢視図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ターボチャージャ
5 タービンハウジング
6 センターハウジング
10 タービン
11 タービンホイール
15 シャフト
16 軸受
20 シェル室
21 シェル体
22 第1シェル板
23 第2シェル板
25 第1ベース部
26 第2ベース部
30 ベース部接続部
31 取付孔
35 耐熱部
41 排気ガス入口部
42 入口側接続フランジ
45 排気ガス出口部
46 出口側接続フランジ
48 排気ガス流路
50 ノズルベーン組立体
51 ノズルベーン
52 小傾斜状態
53 大傾斜状態
55 バックプレート
56 バックプレート取付部
57 固定部
58 ナット
61 回動軸
62 リングプレート
63 開閉レバー
64 連結ピン
65 駆動レバー
66 駆動レバーピン
67 操作軸
68 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持されたタービンホイールが設けられているタービン側に位置すると共に内燃機関から排出された排気ガスが流れるシェル室を区画し、且つ、プレス成型板からなるシェル体と、
前記シェル体の端部のうち一端側に接続される第1ベース部と、
前記シェル体の端部のうち他端側に接続される第2ベース部と、
前記シェル室から前記タービンホイールに流れる前記排気ガスの流路である排気ガス流路内に配設されるノズルベーンと、
前記ノズルベーンを前記排気ガス流路内で回動可能に保持すると共に、前記排気ガス流路内に位置する保持部接続部材により前記第1ベース部に接続されるノズルベーン保持部と、
前記排気ガス流路内を流れる前記排気ガスの流れ方向における前記保持部接続部材の上流側または下流側に位置して前記第1ベース部と前記第2ベース部とを一体に接続するベース部接続部と、
を備えることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記第1ベース部と前記第2ベース部と前記ベース部接続部とは、鋳造により一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記ノズルベーンは、前記第1ベース部に対向する位置に配設されており、
前記第1ベース部における前記ノズルベーンに対向する位置には、前記第1ベース部を形成する材料よりも耐熱性の高い材料からなる耐熱部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−121470(P2008−121470A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304303(P2006−304303)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】