説明

ダイフラクトースアンハイドライド含有経口組成物

【課題】
食塩の過剰摂取は生活習慣病に類される疾患、及びその合併症の発症、増悪の原因の一つとされており、食塩の過剰摂取の悪影響を改善する新たな組成物、予防改善剤、飲食品、ペット飼料を提供する。
ナトリウム及び/又はカリウムの排泄を促進させることにより、腎臓に障害を抱えている者の食事の自由度を向上する。
【解決手段】
ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有するナトリウム及び/又はカリウム排泄促進用経口組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム及び/又はカリウム排泄促進機能をもつ経口組成物に関するものである。また、ナトリウム排泄促進機能をもつことにより、食塩過剰摂取に起因する疾患の予防及び改善作用をもつ経口組成物に関するものである。また、ナトリウム及び/又はカリウム排泄促進機能をもつことにより、腎臓病患者のナトリウム及び/又はカリウム摂取制限に対して役立つ事を目的とした経口組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国民栄養調査によると、日本人の食塩摂取目安量である10gに対し、過剰に摂取している。食塩の過剰摂取は高血圧、ひいてはそれに伴う合併症の発生につながり、深刻な問題である。このような現状に対し、主に多糖類を主とした食事由来のナトリウムを体外に排泄する機能をもつ成分が特許文献1(WO99/33478,特開2002−87980号公報)に知られている。
【0003】
また、カリウム排泄の調節は、腎臓の働きと、副腎皮質ホルモンの作用が密接に関連して行われるが、腎臓や副腎の機能のわるい人では、カリウムの排泄がうまくいかず、過剰にカリウムを摂取した場合・高カリウム血症(血漿中のカリウム濃度が上昇し、心臓症状がみられてくる)をおこす危険がある。腎臓病患者における食事コントロールの課題の一つとして、カリウムの摂取制限があり、調理の煩雑さや、食事の不味さが腎臓病者のQOL(Qualtiy of Life)を低下させている。このような現状に対し、様々な低カリウム食品や、クエン酸を主成分としてその他成分を含む事でカリウムイオンの吸収を抑制する事を目的とした食品(特許文献2:特開2000−270811号公報)が開発されている。
【0004】
本発明者等は、ダイフラクトース アンハイドライド(以下DFAと記す)について、その機能、応用について鋭意研究してきた。DFAの機能としてはビフィズス菌増殖作用を有すること(特許文献3:特公平3−5788号公報)やカルシウム吸収量を増やすこと(特許文献4:特開平11−43438号公報)、利尿作用をもつこと(特許文献5:特開2003−321371号公報)が公知となっている。しかし、DFAがナトリウム及び/又はカリウムを腸管を経由して排泄促進させる機能をもつ事は知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−87980号公報
【特許文献2】特開2000−270811号公報
【特許文献3】特公平3−5788号公報
【特許文献4】特開平11−43438号公報
【特許文献5】特開2003−321371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食塩の過剰摂取は生活習慣病に類される疾患、及びその合併症の発症、増悪の原因の一つとされており、食塩の過剰摂取の悪影響を改善する新たな組成物、予防改善剤、飲食品、飼料を提供することを目的とする。
また、ナトリウム及び/又はカリウムの排泄を促進させることにより、腎臓に障害を抱えている者の食事の自由度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、腸管を経由してナトリウム排泄を促進させる作用に注目し、研究を続けた結果、腸管を経由して体内ナトリウムの排泄を促進する機能をもち、さらに、食塩の過剰摂取に起因する疾患の予防、改善作用を有するDFAの投与によって腸管を経由してナトリウム排泄が促進される事を見出した。さらに、本発明者らは、腸管を経由してカリウム排泄を促進させる作用に注目し、研究を続けた結果、腸管を経由してカリウム排泄を促進する機能をもつDFAの投与によって腸管を経由して体内カリウムの排泄が促進される事を見出した。すなわち本発明はDFAが腸管内のナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分としての機能に着目した発明である。その機能を活かした本発明の主な構成は次のとおりである。
(1)ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム排泄促進用経口組成物
(2)ナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取による有害作用を予防、改善する有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取予防・改善用経口組成物。
(3)ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム排泄促進剤。
(4)ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とする飲食品。
(5)ナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取による有害作用を予防、改善する有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取予防・改善用飲食品。
(6)ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするペット飼料。
(7)ナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取による有害作用を予防、改善する有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取予防・改善用ペット飼料。
【発明の効果】
【0008】
本発明のDFAを含有する経口組成物は腸管を経由して生体内ナトリウム排泄あるいは生体内カリウム排泄を促進する。
ナトリウム排泄を促進する事により、食塩の過剰摂取に起因する疾患の予防及び改善作用を示す。また、腎臓病患者のナトリウム及び/又はカリウム摂取制限に伴うQOLの低下を改善する。
飲食品、ペット動物用飼料としても提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明でいうDFAとは、2個のフラクトースが、互いに2点ずつで結合したアンヒドロ化環状二糖である。従来、カラメルなどに存在することが知られていたが、工業的には、イヌリンをイヌリン分解酵素、例えば、Arthrobacter sp.H65−7株が産生するイヌリンフラクトトランスフェラーゼ(EC2.4.1.93)により発酵させたり、レヴァンをArthrobacter nicotinovorans GS−9が産生するレヴァンフルクトトランスフェラーゼ(EC2.4.1.10)により発酵させたりすることにより製造することができる。二分子のフラクトースの結合様式の差異により、誘導体が5種類存在し、それぞれ、DFAI、DFAII、DFAIII、DFAIV、DFAV と称される。本発明でいうDFAとは、それら全てをいうが、本発明では、もっぱら、工業的生産の効率、精製してからの安定性などが優れているDFAIII(di-D-fructofuranose-1,2’ : 2,3’ dianhydride)、DFAIV(di-D-fructofuranose-2,6’ : 6,2’ dianhydride)が好ましく使用される。
本発明に係る経口組成物は、DFA を有効成分として含有するものであって、医薬品タイプ、飲食品タイプ、ペット動物用飼餌料タイプの組成物として利用することができ、例えば、ヒト又はペット動物用の医薬品、飲食品、調製粉乳、経腸栄養剤、健康飲食品、ペット飼餌料添加物など、最終的に経口投与可能な形態であれば制限はない。また、有効成分の含有量は、特に限定されない。
【0010】
飲食品タイプの組成物として使用する場合には、DFA又はその処理物をそのまま使用したり、他の食品ないし食品成分と併用したりして、適宜常法に従い使用できる。また、加工にあたっては、熱安定性、酸安定性が高いため、通常の食品加工方法がなんら問題なく適用できる。DFAを含有する食品タイプの経口組成物は、粉末、顆粒状、ペースト状、液状、懸濁状など特段の限定は受けない。例えば甘味料、酸味料、ビタミン剤その他ドリンク剤製造に常用される各種成分を用いて、健康ドリンクに製剤化することも例示できる。
予防や改善用としても摂取することができる。
【0011】
医薬品タイプの組成物として使用する場合、本有効成分は、種々の形態で投与される。その投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与が例示できる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。その使用量は症状、年令、体重、剤形によって異なるが、通常は、成人に対して、経口投与の場合に1日当たり、体重1kg当たり0.5〜2000mg、好ましくは1〜1000mgの範囲で投与するのがよい。
予防や改善用としても摂取することができる。
【0012】
ペット動物も富栄養化あるいは人と同様の食物をとる機会が増えるので、ペット動物用剤あるいはペット飼料に添加してナトリウム及び/又はカリウム排出を促進することが有用である。また、予防や改善用としても摂取することができる。
【0013】
〔実施例〕
以下の実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
DFAの腸管経由ナトリウム排泄促進機能を調べた。
Wistar系雄ラット(3週齢)24匹を3日間固形飼料で予備飼育した後、基本食7g(ナトリウム14mg含有)を3日間与え、3群に分けた。それぞれに基本食7gのみ、基本食にDFAIII1.0g又はショ糖 1.0gずつ足した飼料を与えた。3週間の本飼育中、最後の7日間の糞を採取し、凍結乾燥処理を行ったのち、乾燥糞中のナトリウム濃度を原子吸光測定し、調べた。
結果を図1に示す。
この結果から明らかなように、DFAの摂取により、糞便中ナトリウム濃度の上昇が認められた。また、各群の乾燥糞重量は基本食群(4.3±0.1g)、ショ糖群(4.3±0.2g)、DFAIII群(4.8±0.1g)であった。
【実施例2】
【0015】
DFAの腸管経由カリウム排泄促進機能を調べた。
Wistar系雄ラット(3週齢)24匹を3日間固形飼料で予備飼育した後、基本食7g(カリウム50.4mg含有)を3日間与え、3群に分けた。それぞれに基本食7gのみ、基本食にDFAIII1.0g、ショ糖 1.0gずつ足した飼料を与えた。3週間の本飼育中、最後の7日間の糞を採取し、凍結乾燥処理を行ったのち、乾燥糞中のカリウム濃度を原子吸光測定し、調べた。
結果を図2に示す。
この結果から明らかなように、DFAの摂取により、糞便中カリウム濃度の上昇が認められた。また、各群の乾燥糞重量は基本食群(4.3±0.1g)、ショ糖群(4.3±0.2g)、DFAIII群(4.8±0.1g)であった。
【実施例3】
【0016】
DFAIIIを含有する錠剤の処方例を示す。
処方例1 錠剤 (配合量:質量%)
DFAIII 77
コーンスターチ 20
グアーガム 1
ステアリン酸マグネシウム 1
【実施例4】
【0017】
DFAIIIを含有するジュースの処方例を示す。
処方例2 ジュース (配合量:質量%)
DFAIII 10
冷凍濃縮温州ミカン果汁 5
クエン酸 0.2
L−アスコルビン酸 0.02
香料 0.2
色素 0.1
水 84.48
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】DFAIIIによる糞中へのナトリウム排泄促進を示すグラフ
【図2】DFAIIIによる糞中へのカリウム排泄促進を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム排泄促進用経口組成物。
【請求項2】
ナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取による有害作用を予防、改善する有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取予防・改善用経口組成物。
【請求項3】
ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム排泄促進剤。
【請求項4】
ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項5】
ナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取による有害作用を予防、改善する有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取予防・改善用飲食品。
【請求項6】
ナトリウム及び/又はカリウムを排泄促進させる有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするペット飼料。
【請求項7】
ナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取による有害作用を予防、改善する有効成分として、ダイフラクトース アンハイドライド(DFA)を含有することを特徴とするナトリウム及び/又はカリウム過剰摂取予防・改善用ペット飼料。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−104103(P2006−104103A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291541(P2004−291541)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】