説明

ダイヤフラム駆動式バルブ

【課題】弁部を駆動させる駆動力を高めることができるダイヤフラム駆動式バルブを提供する。
【解決手段】このバルブ1は、ボディ2の仕切壁4の弁軸挿通孔40に移動可能に挿通され弁部50をもつ弁軸5と、複数のダイヤフラム61,62で形成されたダイヤフラム群6とをもつ。ダイヤフラム群6のダイヤフラム61,62は、弁軸5を閉弁方向に移動させるための閉弁用受圧室71,72と、弁軸5を開弁方向に移動させる開弁用受圧室81,82とに各中空室21,22を仕切る。ダイヤフラム群6は、複数の閉弁用受圧室71,72と、複数の開弁用受圧室81,82とを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤフラムが受圧した流体圧で弁部を移動させて弁口を開閉させるダイヤフラム駆動式バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
パイロット圧が供給されると、ダイヤフラムが押圧されて弁部が下降動作し、て弁部のシート部が弁座に着座し、ガスの排出が停止される燃料電池シテスム用のバルブが提供されている(特許文献1)。このものによれば、パイロット圧の供給が停止されると、コイルスプリングの付勢力により弁部が上昇動作し、弁部が開弁され、これによりガスが流通する。
【0003】
また、ガスの流量を制御する弁部と、弁部を駆動するモータと、モータを駆動する制御部とが設けられているバルブが提供されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−183713号公報
【特許文献2】特開2000−97359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るバルブによれば、バルブに搭載されているダイヤフラムは単数であり、ダイヤフラムが受圧する力には限界がある。このため弁部が駆動する駆動力には限界がある。また、特許文献2に係るバルブによれば、モータという駆動源で弁部を駆動させるものであり、ダイヤフラムの受圧で弁部が駆動する方式ではない。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、ダイヤフラムが受圧した気体圧等の流体圧で弁部を開閉させるにあたり、弁部を開閉させる駆動力を増加させるのに有利なダイヤフラム駆動式バルブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るダイヤフラム駆動式バルブは、(i)1次通路と2次通路とを連通させる弁口を形成する弁座と、前記弁口に連通する作動室と、作動室を複数の中空室に仕切ると共に弁軸挿通孔を有する仕切壁とを有するボディと、(ii)ボディの仕切壁の弁軸挿通孔に移動可能に挿通され移動に伴い弁口を開閉させるための弁部をもつ軸状をなす弁軸と、(iii)外端部がボディに保持され内端部が弁軸に保持され弁軸の軸長方向に直列状態に並設された複数のダイヤフラムで形成されたダイヤフラム群とを具備しており、(iv)ダイヤフラム群のダイヤフラムは、流体圧の受圧に伴い弁軸を閉弁方向に移動させるための閉弁用受圧室と、流体圧の受圧に伴い前記弁軸を開弁方向に移動させる開弁用受圧室とに、弁軸の軸長方向において各中空室を仕切ると共に、
閉弁用受圧室および開弁用受圧室のうちの一方または双方は、弁軸の軸長方向において複数個配置されていることを特徴とする。
【0007】
弁部を開弁させるときには、開弁用受圧室に流体が供給される。これによりダイヤフラム群を構成する複数のダイヤフラムが開弁方向に変形する。この結果、弁軸が開弁方向に移動して弁部が弁口から離間して弁口が開放される。流体としては気体、液体が挙げられる。
【0008】
これに対して、弁部を閉弁させるときには、閉弁用受圧室に流体が供給される。これによりダイヤフラム群を構成する複数のダイヤフラムが閉弁方向に変形する。この結果、弁軸が閉弁方向に移動して弁部で弁口を閉鎖させる。
【0009】
本発明によれば、閉弁用受圧室および開弁用受圧室のうちの一方または双方は、弁軸の軸長方向において複数個配置されている。従って、複数個配置されている受圧室からダイヤフラム群が受圧する受圧力が増加する。
【0010】
本発明によれば、閉弁用受圧室および開弁用受圧室のうちの一方または双方は、弁軸の軸長方向において複数個配置されている。この場合、閉弁用受圧室が弁軸の軸長方向において複数個配置されていれば、ダイヤフラム群の受圧に基づく閉弁駆動力を増加させることができる。あるいは、開弁用受圧室が弁軸の軸長方向において複数個配置されていれば、ダイヤフラム群の受圧に基づく開弁駆動力を増加させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、閉弁用受圧室および開弁用受圧室のうちの一方または双方は、弁軸の軸長方向において複数個配置されている。この場合、閉弁用受圧室が弁軸の軸長方向において複数個配置されていれば、ダイヤフラム群の受圧に基づく閉弁駆動力を増加させることができる。あるいは、開弁用受圧室が弁軸の軸長方向において複数個配置されていれば、ダイヤフラム群の受圧に基づく開弁駆動力を増加させることができる。このように弁軸を駆動させるダイヤフラム群の受圧に基づく駆動力を増加させることができる。
【0012】
このため単数のダイヤフラムが搭載されている従来のバルブに対して、ダイヤフラムと径が同一であれば、同じ駆動力を得るにあたり、各ダイヤフラムの径を小さくでき、バルブの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ダイヤフラム駆動式バルブは、ボディを有する。ボディは、1次通路と2次通路とを連通させる弁口を形成する弁座と、弁口に連通する作動室と、弁軸の軸長方向において作動室を複数の中空室に仕切る仕切壁とを有する。仕切壁は、弁軸を挿通するための弁軸挿通孔を有する。弁軸は、ボディの仕切壁の弁軸挿通孔に移動可能に挿通されており、移動に伴い弁口を開閉させるための弁部をもつ。
【0014】
ダイヤフラム群は複数のダイヤフラムで形成されている。ダイヤフラムの外端部はボディに保持されている。ダイヤフラムの内端部は弁軸に保持されている。保持構造はディスクに限定されるものではない。複数のダイヤフラムは弁軸の軸長方向に直列に並設されている。ダイヤフラムの数は2個でも、3個でも、4個でも、それ以上でも良い。この場合、各ダイヤフラムは組成、サイズ、厚みは同じとすることができるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて各ダイヤフラムの組成、サイズ、厚み、形状等を変更させることもできる。
【0015】
ダイヤフラムは、流体圧の受圧に伴い弁軸を閉弁方向に移動させるための閉弁用受圧室と、流体圧の受圧に伴い弁軸を開弁方向に移動させる開弁用受圧室とに弁軸の軸長方向において各中空室を仕切る。このようなダイヤフラム群は、弁軸の軸長方向において、閉弁用受圧室と開弁用受圧室とを形成している。
【0016】
本発明によれば、閉弁用受圧室は弁軸の軸長方向において複数個配置されており、開弁用受圧室は弁軸の軸長方向において複数個配置されている形態が採用できる。この場合、ダイヤフラム群の受圧に基づく閉弁駆動力、および、ダイヤフラム群の受圧に基づく開弁駆動力の双方を増加させることができる。
【0017】
また場合によっては、閉弁用受圧室は弁軸の軸長方向において複数個配置されているものの、開弁用受圧室は単数とされている形態も採用できる。この場合、ダイヤフラム群の受圧に基づく閉弁駆動力を増加させることができる。
【0018】
また場合によっては、閉弁用受圧室は単数とされており、開弁用受圧室は弁軸の軸長方向において複数個配置されている形態も採用できる。この場合、ダイヤフラム群の受圧に基づく開弁駆動力を増加させることができる。ここで、複数とは2以上を意味し、複数の上限値はバルブの用途および種類等に応じて適宜選択でき、例えば10個にできる。
【0019】
本発明の一視点によれば、弁軸およびハウジングのうちの少なくとも一方は、複数の閉弁用受圧室同士を連通させる閉弁用連通路を有することが好ましい。閉弁用連通路が弁軸の内部に空洞状に設けられている場合には、サイズの小型化に貢献できる。本発明の一視点によれば、弁軸およびハウジングのうちの少なくとも一方は、複数の開弁用受圧室同士を連通させる開弁用連通路を有することが好ましい。開弁用連通路が弁軸の内部に設けられている場合には、サイズの小型化に貢献できる。
【0020】
本発明の一視点によれば、閉弁時には、閉弁用受圧室は1次通路に直接的または間接的に連通されていることができる。1次通路の1次圧を閉弁用受圧室に供給できる。この場合、相手側の開弁用受圧室は大気圧に直接的または間接的に開放されていることができる。
【0021】
本発明の一視点によれば、開弁時には、開弁用受圧室は1次通路に直接的または間接的に連通されていることができる。1次通路の1次圧を開弁用受圧室に供給できる。この場合、相手側の閉弁用受圧室は大気圧に直接的または間接的に開放されていることができる。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明の実施例1について図1を参照して説明する。ダイヤフラム駆動式バルブ1は金属、硬質樹脂またはセラミックス製のボディ2を有する。ボディ2は、連結された第1ボディ2aと第2ボディ2bと第3ボディ2cとを有する。ボディ2は、高圧側の1次通路31と低圧側の2次通路32とを連通させる弁口29と、弁口29に連通する作動室20と、作動室20を複数の第1中空室21および第2中空室22に仕切るための単数の仕切壁4とを有する。弁口29の周囲は弁座28とされている。第1中空室21および第2中空室22は弁軸5の軸長方向において(矢印Y1,Y2方向)直列に並設されている。
【0023】
図1に示すように、仕切壁4のほぼ中央領域には、弁軸挿通孔40が形成されている。弁軸挿通孔40は、弁軸5を挿通するための仕切壁4を厚み方向に貫通する。弁軸5は長軸状をなしており、ボディ2の仕切壁4の弁軸挿通孔40に移動可能に挿通されている。弁軸5は上下方向に延設されているが、これに限らずボディ2と共に傾斜していても良い。
【0024】
弁軸挿通孔40の内壁面と弁軸5の外壁面との間には、リング形状をなすシール部材42が介在している。弁軸5の先端部には、移動に伴い弁口29を開閉させるための弁部50が鍔状に形成されている。弁部50は弁座28に着座可能である。
【0025】
図1に示すように、ダイヤフラム群6は、弁口29に近い側に配置された第1ダイヤフラム61と、弁口29に遠い側に配置された第2ダイヤフラム62とを有する。第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62は、ゴムや樹脂等の高分子材料で形成された変形可能な膜状とされている。なお、第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62には、必要に応じて、ガスバリヤ性を高めるためのバリヤ層や補強させるための補強層が埋設されていても良い。
【0026】
図1に示すように、第1ダイヤフラム61の第1外端部61pはボディ2に保持されている。すなわち第1ダイヤフラム61の厚肉状の第1外端部61pは、ボディ2の第1ボディ2aと第2ボディ2bとに挟持されて保持されている。第1ダイヤフラム61の第1内端部61iは第1取付部69fにより弁軸5に保持されている。
【0027】
第2ダイヤフラム62の第2外端部62pはボディ2に保持されている。すなわち第2ダイヤフラム62の厚肉状の第2外端部62pは、ボディ2の第2ボディ2bと第3ボディ2cとに挟持されて保持されている。第2ダイヤフラム62の第2内端部62iは第2取付部69sにより弁軸5に保持されている。なお第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62の両者は、同組成、同サイズ、同厚みとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
図1に示すように、第1ダイヤフラム61は、気体圧(流体圧)の受圧に伴い弁軸5を閉弁方向(矢印Y1方向)に移動させるための第1の閉弁用受圧室71と、流体圧の受圧に伴い弁軸5を開弁方向(矢印Y2方向)に移動させる第1の開弁用受圧室81とに第1中空室21を仕切る。従って、第1ダイヤフラム61は、第1の閉弁用受圧室71に対面する第1の閉弁用受圧面61s(s:shut)と、第1の開弁用受圧室81に対面する第1の開弁用受圧面61o(o:open)とを有する。なお、第1の開弁用受圧室81は弁口29に対面している。
【0029】
第2ダイヤフラム62は、気体圧(流体圧)の受圧に伴い弁軸5を閉弁方向(矢印Y1方向)に移動させるための第2の閉弁用受圧室72と、流体圧の受圧に伴い弁軸5を開弁方向(矢印Y2方向)に移動させる第2の開弁用受圧室82とに第2中空室22を仕切る。従って、第2ダイヤフラム62は、第2の閉弁用受圧室72に対面する第2の閉弁用受圧面62s(s:shut)と、第2の開弁用受圧室82に対面する第2の開弁用受圧面62o(o:open)とを有する。
【0030】
図1から理解できるように、ダイヤフラム群6は、ボディ2の作動室20に配置されている。ダイヤフラム群6は、弁軸5の軸長方向(弁部50の開閉方向)において、弁口29から離間するにつれて、第1の開弁用受圧室81、第1の閉弁用受圧室71と、第2の開弁用受圧室82、第2の閉弁用受圧室72とを直列にこの順に形成している(仕切壁4の配置順を除く)。
【0031】
このように弁軸5の軸長方向(弁部50の開閉方向)において、開弁用受圧室および閉弁用受圧室が交互に配置されている。ダイヤフラム群6に開弁駆動力および閉弁駆動力をそれぞれ与えるためである。なお、図1に示すように、開弁用受圧室81,82の数は閉弁用受圧室71,72の数と同数である。それぞれ2個とされている。図1に示すように、シール部材42は、第1の閉弁用受圧室71と第2の開弁用受圧室82との境界領域をシールする。
【0032】
第1ダイヤフラム61はコンボリューションとも呼ばれる第1膨出部61mをもつ。第1膨出部61mは、第1凹み61rを形成しつつ弁軸5の軸芯P1の回りでリング状に配置されており、圧力に応じて表裏反転可能とされている。第2ダイヤフラム62はコンボリューションとも呼ばれる第2膨出部62mをもち、圧力に応じて表裏反転可能とされている。第2膨出部62mは、第2凹み62rを形成しつつ弁軸5の軸芯P1の回りでリング状に配置されている。
【0033】
ここで、コンボリューションを有するダイヤフラムを搭載するバルブによれば、基本的には、第1ダイヤフラム61については、第1膨出部61mの頂点61xよりも径内側の受圧面積が第1ダイヤフラム61の有効受圧面積とされている。同様に、基本的には、第2ダイヤフラム62については、第2膨出部62mの頂点62xよりも径内側の受圧面積が第2ダイヤフラム62の有効受圧面積とされている。
【0034】
図1に示すように、第2のダイヤフラム62と仕切壁4との間には、第2のダイヤフラム62の開弁動作をアシストするための開弁用の付勢バネ58が設けられている。この付勢バネ58はコイル状をなしており、第2の開弁用受圧室82に弁軸5の外周側において弁軸5と同軸的に配置されている。
【0035】
ボディ2は閉弁用連通路90Fを有する。閉弁用連通路90Fは、第1の閉弁用受圧室71と第2の閉弁用受圧室72とを連通させる。すなわち、閉弁用連通路90Fの一端部90eは、第1の閉弁用受圧室71に連通する。閉弁用連通路90Fの他端部90fは、第2の閉弁用受圧室72に連通する。なお、閉弁用連通路90Fの半分以上はボディ1の外壁面に露出しており、組付性が良い。必要に応じて、閉弁用連通路90Fをボディ1の壁の肉厚の内部に埋設しても良い。
【0036】
本実施例によれば、第1の開弁用受圧室81のポート81tは、1次通路31直接または他のバルブなどを介して間接的に連通されている。また、第2の開弁用受圧室82のポート82tは、中間路200及びバルブ205を介して1次通路31に連通可能とされている共に、大気にも連通可能とされている。第2の閉弁用受圧室72のポート72tは、中間路210および中間バルブ220を介して1次通路31に連通されていると共に、大気にも連通可能とされている。なお中間バルブ220,205は三方バルブとされているが、これに限られるものではなく、要するに開閉機能を有すれば良い。
【0037】
さて、弁部50で弁口29を閉鎖する閉弁動作について説明する。先ず、1次通路31側の高圧(大気圧よりも高圧)の気体を中間弁220および中間路210を介してポート72tから第2の閉弁用受圧室72に、閉弁圧として供給する。そして、第2の閉弁用受圧室72に供給された気体は、閉弁用連通路90Fから第1の閉弁用受圧室71にも、高圧の閉弁圧として供給される。よって、第2ダイヤフラム62の第2の閉弁用受圧面62sが閉弁圧を閉弁方向(矢印Y1方向)に受圧する。同様に、第1ダイヤフラム61の第1の閉弁用受圧面61sが閉弁圧を閉弁方向(矢印Y1方向)受圧する。
【0038】
この結果、第2ダイヤフラム62が閉弁方向(矢印Y1方向)に移動すると共に、第1ダイヤフラム61も閉弁方向(矢印Y1方向)に移動する。この結果、弁軸5が閉弁方向(矢印Y1方向)に移動し、弁部50が弁座28に着座し、弁部50が閉弁する。このため単数のダイヤフラムが搭載されている従来のバルブに比較して、第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62の双方が閉弁駆動力を発揮させるので、バルブ1は大きな閉弁駆動力を発揮することができる。
【0039】
なお、弁部50を閉弁方向に移動させるときには、第2の開弁用受圧室82のポート82t、第1の開弁用受圧室81のポート81tは、大気に開放されることが好ましい。この場合、第2の開弁用受圧室82および第1の開弁用受圧室81は低圧(大気圧)となる。このため、第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62は閉弁方向に良好に変形することができる。
【0040】
本実施例によれば、単数のダイヤフラムが搭載されているバルブとは異なり、第1ダイヤフラム61,第2ダイヤフラム62に基づく閉弁駆動力を増加させることができるため、弁口29が開放されて弁口29に気体が流れている状態のときであっても、弁部50を閉弁させることができる。
【0041】
本実施例によれば、バルブ1が搭載されているシステムが停止される場合には、弁部50が閉弁された状態で、制御装置により中間弁220が閉鎖された状態に維持される。このため、第1の閉弁用受圧室71および第2の閉弁用受圧室72の双方には、高圧の気体が封入されている状態に維持される。よって、弁部50が弁座28に着座したままの状態に良好に維持される。
【0042】
次に、弁口29を閉鎖している弁部50を開放させる開弁動作について説明する。先ず、1次通路31側の高圧の気体をポート81tから第1の開弁用受圧室81に、高圧の開弁圧として供給する。同様に、高圧の気体をポート82tから第2の開弁用受圧室82に、高圧の開弁圧として供給する。よって、第2ダイヤフラム62の第2の開弁用受圧面62oが開弁圧を開弁方向に受圧する。同様に、第1ダイヤフラム61の第1の開弁用受圧面61oが開弁圧を開弁方向に受圧する。この結果、第2ダイヤフラム62が開弁方向(矢印Y2方向)に移動する。同様に、第1ダイヤフラム61が開弁方向(矢印Y2方向)に移動する。
【0043】
この結果、弁軸5が開弁方向(矢印Y2方向)に移動する。故に、弁座28に着座していた弁部50が弁座28から離間し、弁部50が開弁し、弁口29が開放される。このため単数のダイヤフラムのみが搭載されている従来のバルブに比較して、第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62の双方がそれぞれ開弁駆動力を発揮するため、バルブ1は大きな開弁駆動力を発揮することができる。
【0044】
上記したように弁部50を開弁方向に移動させるときには、第2の閉弁用受圧室72のポート72tは、大気に開放されることが好ましい。この場合、第2の閉弁用受圧室72と第1の閉弁用受圧室71とは閉弁用連通路90Fを介して連通されているため、第2の閉弁用受圧室72および第1の閉弁用受圧室71の双方が大気に開放される。従ってダイヤフラム61,62は良好に変形できる。
【0045】
なお本実施例によれば、単数のダイヤフラムが搭載されている従来のバルブと、本実施例のバルブ1とについて、駆動力が同一である場合には、第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62の双方が設けられているため、ダイヤフラム径を小さくでき、バルブ1の径寸法D1(図1参照)の小型化に貢献することができる。
【0046】
ここで、付勢バネ58は第2ダイヤフラム62を開弁方向(矢印Y2方向)に常時に付勢しているため、開弁駆動力の大きさを高めることができ、バルブ1の開弁動作をアシストすることができる。この場合、水の凍結等で弁座28と弁部50とが結着されている場合において、開弁に有効である。上記したようにバルブ1の弁部50は、気体の圧力(流体圧)に基づいて開閉される。弁部50を開閉させるためのアクチュエータはバルブ1に設けられていない。
【0047】
本実施例に係るバルブ1は、気体の搬送を行う流体システムに適用できる。例えば燃料電池システムに適用できる。この場合、バルブ1に供給される気体としてはカソードガスが挙げられるが、アノードガスでも良い。更には、燃料電池システムのパージガス等として使用される窒素ガスでも良い。
【0048】
本実施例によれば、弁部50が閉弁しているときにおいて、ダイヤフラム群6を構成する第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62について、有効受圧面積は同一又は近似している。このため第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62の変形は同程度となる。すなわち、第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62について、有効受圧面積の最大値Smaxを有するダイヤフラム、最小値Sminを有するダイヤフラムを選定する。本実施例によれば、Smax/Smin=1.00〜1.30の範囲内、1.00〜1.20の範囲内、1.01〜1.10の範囲内、1.02〜1.05の範囲内に設定されていることが好ましい。この場合、第1ダイヤフラム61の有効受圧面積と第2ダイヤフラム62の有効受圧面積とが同一または近似した値となり、開弁動作時および閉弁動作時において、均一な負荷がダイヤフラム61,62に作用することになり、ダイヤフラム群6の耐久性の向上に貢献できる。
【0049】
なお本実施例によれば、図1に示すように、第2ダイヤフラム62は、開弁をアシストするための付勢バネ58により付勢されているため、付勢バネ58に抗して閉弁動作する必要があり、且つ、開弁の際には付勢バネ58で開弁駆動力がアシストされる。これに対して第1ダイヤフラム61は付勢バネ58で付勢されていない。このため第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62は厳密には同じ動作をするものではない。但し、第1ダイヤフラム61の第1内端部61iおよび第2ダイヤフラム62の第2内端部62iは弁軸5に保持されているため、弁軸5が矢印Y1,Y2方向に移動する限り、第1ダイヤフラム61の変形量および第2ダイヤフラム62の変形量は基本的には大差がないものである。
【0050】
なお本実施例では、1次通路31から2次通路32に向けて流体が流れるが、これに限らず、2次通路32に相当する通路32Mから、1次通路31に相当する通路31Mに向けて流体が流れることにしても良い。この場合、閉弁状態の弁部50を開放させるときには、中間バルブ220を大気に連通させてポート72tおよび閉弁用受圧室72を大気に開放させつつ、流体をバルブ205およびポート82tを介して開弁用受圧室82に流体を導入させれば良い。
【実施例2】
【0051】
図2は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、実施例1と相違する部分を中心として説明する。図2に示すように、弁軸5の内部には、閉弁用連通路90Sが空洞状に形成されている。閉弁用連通路90Sは、弁軸5の軸長方向に沿って延びる長孔90aと、長孔90aに連通するように弁軸5の径方向に沿って延びる複数個の短孔90cとを有する。短孔90cは第1の閉弁用受圧室71に連通する。長孔90aの先端開口90eは第2の閉弁用受圧室72に連通する。
【0052】
この結果、閉弁用連通路90Sは、第1の閉弁用受圧室71と第2の閉弁用受圧室72とを常時連通させ、同圧とさせることができる。すなわち、閉弁用連通路90Sの一端部は第1の閉弁用受圧室71に連通すると共に、第2の閉弁用連通路90Sの他端部は第2の閉弁用受圧室72に連通する。
【0053】
実施例1と同様に、図2に示すように、ボディ2は、第1の閉弁用受圧室71と第2の閉弁用受圧室72とを連通させる閉弁用連通路90Fを有する。閉弁用連通路90Fの一端部90eは第1の閉弁用受圧室71に連通すると共に、閉弁用連通路90Fの他端部90fは第2の閉弁用受圧室72に連通する。なお本実施例においても、図2に示すように、開弁用受圧室81,82の数は閉弁用受圧室71,72の数と同数であり、それぞれ2個とされている。
【0054】
上記したように閉弁用連通路90Fおよび閉弁用連通路90Sの双方が並設されているため、第1の閉弁用受圧室71と第2の閉弁用受圧室72との連通性が良好に維持される。従って、万一、連通路90F,90Sのうちのいずれか一方に詰まり等が発生するときであっても、第1の閉弁用受圧室71と第2の閉弁用受圧室72との連通性が良好に維持される。よって、ダイヤフラム群6の動作性が良好に確保される。
【実施例3】
【0055】
図3は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図3に示すように、弁軸5の内部には、閉弁用連通路90Sが空洞状に形成されている。閉弁用連通路90Sは、弁軸5の軸長方向に沿って延びる長孔90aと、長孔90aに連通するように弁軸5の径方向に沿って延びる複数個の短孔90cとを有する。短孔90cは第1の閉弁用受圧室71に連通する。長孔90aの先端開口90eは第2の閉弁用受圧室72に連通する。この結果、閉弁用連通路90Sは、第1の閉弁用受圧室71と第2の閉弁用受圧室72とを連通させ、同圧に維持できる。なお本実施例においても、図3に示すように、開弁用受圧室81,82の数は閉弁用受圧室71,72の数と同数であり、それぞれ2個とされている。
【実施例4】
【0056】
図4は実施例4を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図4は、弁軸5の軸芯P1に沿って軸芯P1を通る断面を示す。仕切壁4に形成されている弁軸挿通孔40の内壁面と弁軸5の外壁面との間には、スリーブ形状をなすシール部材42Bが同軸的に配置されている。シール部材42Bを形成する周壁は、これの厚み方向に弾性変形できるように設定されている。従って弁軸5の軸芯P1は弁軸挿通孔40内で多少揺動できる。
【0057】
図4において、弁部50が閉弁しているときにおいて、弁軸5の中央を通過する軸芯P1よりも一方Aの半分側について、第1ダイヤフラム61の有効受圧面積をSRとする。弁軸5の中央を通過する軸芯P1よりも他方の半分B側について、第1ダイヤフラム61の有効受圧面積をSLとするとき、SRおよびSLは異なる値に設定されている。
【0058】
すなわち、SRはSLよりも僅かに大きく設定されている。例えば、SR/SL=1.01〜1.3の範囲内、1.05〜1.2の範囲内に設定されていることができる。弁部50が開弁するとき、第1ダイヤフラム61の有効受圧面積SRに作用する開弁駆動力は、第1ダイヤフラム61の有効受圧面積SLに作用する開弁駆動力よりも大きく設定されている。この結果、一方Aの半分側について第1ダイヤフラム61に作用する開弁駆動力を、他方Bの半分側について第1ダイヤフラム61に作用する開弁駆動力よりも大きくできる。第2ダイヤフラム62についても同様とされている。
【0059】
このような本実施例によれば、第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62が開弁方向に変形して、閉鎖状態の弁部50が矢印Y2方向に移動して開弁するとき、弁軸挿通孔40の中心線に対して弁軸5の軸芯P1を僅かに傾けるように弁軸5を揺動方向に動作させることが期待できる。ひいては、弁軸5に設けられている弁部50を僅かに傾けるように弁部50を動作させることができる。この結果、開弁駆動力を弁部50の周方向において均一に作用させる形態よりも、開弁駆動力を弁部50の周方向において弁部50に局所的に集中的に作用させることが期待できる。このため、冬季または寒冷地等において、凍結などで弁座28に弁部50が強固に結着されている場合であっても、弁部50を弁座28から効果的に引きはがして開弁させることができる利点が得られる。なお、場合によっては、SLはSRよりも僅かに大きく設定されていることにしても良い。勿論、上記したSRおよびSLは同じ値に設定することにしても良い。
【実施例5】
【0060】
図5は実施例5を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図5に示すように、第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62は突出部を有していない。更に、開弁をアシストするための付勢バネ58も配置されていない。本実施例では、上記した実施例1に係る第2の開弁用受圧室82に相当する室82Rは、常時、大気に開放されているため、第2ダイヤフラム62を開弁方向(矢印Y2方向)に移動させる開弁駆動力を発揮させない。従って本例では、1個の開弁用受圧室81のみが設けられているものの、閉弁用受圧室71,72の数は2個である。よって、単数のダイヤフラムが搭載されている従来のバルブに比較して、閉弁駆動力が増加されている。
【実施例6】
【0061】
図6は実施例6を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図6に示すように、仕切壁4と第1ダイヤフラム61との間には、閉弁動作をアシストするために、閉弁用の付勢バネ58Eが弁軸5と同軸的に設けられている。弁軸挿通孔40には、摺動性が良好な筒形状またはリング形状の摺動部材45が配置されている。摺動部材45は、摺動性が高い材料で形成でき、潤滑成分を含有する多孔質体等で形成しても良い。摺動部材45の案内孔45cに弁軸5が摺動可能に配置されている。弁軸挿通孔40は、円錐筒形状の蛇腹筒部47で包囲されている。このような蛇腹筒部47は仕切壁4と第2ダイヤフラム62との境界をシールしている。
【0062】
蛇腹筒部47は弁軸5の軸長方向において伸縮性に富む。このため、弁軸5が矢印Y1,Y2方向に移動するときであっても、開閉方向における弁軸5の移動性を確保させつつ、蛇腹筒部47は仕切壁4と第2ダイヤフラム62との間をシールしている。図6に示すように、仕切壁4と第1ダイヤフラム61との間には、閉弁用の付勢バネ58Eが介在されている。このため閉弁力がアシストされる。本実施例では、上記した実施例1に係る第2の閉弁用受圧室72に相当する室72Rは、常時、大気に開放されているため、第2ダイヤフラム62を閉弁方向(矢印Y1方向)に移動させる閉弁駆動力を発揮させない。従って開弁用受圧室の数は閉弁用受圧室の数と異なる。本実施例によれば、図6から理解できるように、1個の閉弁用受圧室71が設けられているものの、開弁用受圧室81,82の数は2個である。従って、単数のダイヤフラムが搭載されている従来のバルブに比較して、開弁駆動力が増加されている。
【実施例7】
【0063】
図7は実施例7を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図7に示すように、弁軸5の内部には開弁用連通路100が空洞状に形成されている。開弁用連通路100は、弁軸5の軸長方向に沿って延びる長孔100aと、長孔100aに連通するように弁軸5の径方向に沿って延びる複数個の短孔100cとを有する。短孔100cは第1の開弁用受圧室81と第2の開弁用受圧室82とに互いに連通させる。長孔100aの先端開口は、閉鎖部100fで閉鎖されている。この結果、開弁用連通路100は、第1の開弁用受圧室81と第2の開弁用受圧室82とを連通させ、同圧とする。
【0064】
図7に示すように、第1の閉弁用受圧室71と第2の閉弁用受圧室72とを連通させるための閉弁用連通路90Tがボディ2の壁の肉厚を有効利用し、当該肉厚の内部に形成されている。ボディ2の壁の肉厚の内部において、閉弁用連通路90Tの一端部90eは、第1の閉弁用受圧室71に連通する。閉弁用連通路90Tの他端部90fは、第2の閉弁用受圧室72に連通する。このため閉弁用受圧室71,72は基本的には同圧とされる。なお、2kはボディ2b,2cの接合面をシールするリング形状のシール部材である。
【実施例8】
【0065】
図8は実施例8を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。図8は、弁軸5の軸芯P1に沿って軸芯P1を通る断面を示す。図8に示すように、ボディ2は、第1の仕切壁4f、第2の仕切壁4s、第3の仕切壁4tを弁軸5の軸長方向において直列に並設している。ダイヤフラム群6は、弁口29に近い側から順に、第1ダイヤフラム61、第2ダイヤフラム62、第3ダイヤフラム63、第4ダイヤフラム64とをほぼ同軸的に有する。図8に示すように、第1ダイヤフラム61は、流体圧の受圧に伴い弁軸5を閉弁方向(矢印Y1方向)に移動させるための第1の閉弁用受圧室71と、流体圧の受圧に伴い弁軸5を開弁方向(矢印Y2方向)に移動させる第1の開弁用受圧室81とに第1中空室21を仕切る。
【0066】
第2ダイヤフラム62は、流体圧の受圧に伴い弁軸5を閉弁方向(矢印Y1方向)に移動させるための第2の閉弁用受圧室72と、流体圧の受圧に伴い弁軸5を開弁方向(矢印Y2方向)に移動させる第2の開弁用受圧室82とに第2中空室22を仕切る。
【0067】
図8に示すように、第3ダイヤフラム63は、流体圧の受圧に伴い弁軸5を閉弁方向(矢印Y1方向)に移動させるための第3の閉弁用受圧室73と、流体圧の受圧に伴い弁軸5を開弁方向(矢印Y2方向)に移動させる第3の開弁用受圧室83とに第3中空室23を仕切る。
【0068】
更に図8に示すように、第4ダイヤフラム64は、流体圧の受圧に伴い弁軸5を閉弁方向(矢印Y1方向)に移動させるための第4の閉弁用受圧室74と、流体圧の受圧に伴い弁軸5を開弁方向(矢印Y2方向)に移動させる第4の開弁用受圧室84とに第4中空室24を仕切る。
【0069】
このようにダイヤフラム群6は、ボディ2の作動室20において且つ弁軸5の軸長方向(弁部50の開閉方向)において、弁口29から離間するにつれて、第1の開弁用受圧室81、第1の閉弁用受圧室71と、第2の開弁用受圧室82、第2の閉弁用受圧室72、第3の開弁用受圧室83、第3の閉弁用受圧室73と、第4の開弁用受圧室84、第4の閉弁用受圧室74とを直列に形成している。このように弁軸5の軸長方向(弁部50の開閉方向)において、開弁用受圧室および閉弁用受圧室が交互に配置されている。なお、シール部材42は第1の仕切壁4f、第2の仕切壁4s、第3の仕切壁4tをそれぞれシールしている。
【0070】
図8に示すように、第2のダイヤフラムと第1の仕切壁4fとの間には、第2のダイヤフラム62の開弁動作をアシストするための開弁用の第1の付勢バネ58fが設けられている。同様に、第4のダイヤフラム64と第3の仕切壁4tとの間には、第4のダイヤフラム64の開弁動作をアシストするための開弁用の第2の付勢バネ58sが設けられている。付勢バネ58f,58sは弁軸5と同軸的に配置されている。なお付勢バネ58f,58sは開弁アシスト用とされているが、閉弁アシスト用としても良い。場合によっては付勢バネ58f,58sを廃止しても良い。
【0071】
図8に示すように、ボディ2に設けられている第1の閉弁用連通路90Aは、第1の閉弁用受圧室71と第2の閉弁用受圧室72とを互いに連通させて、同圧とさせる。更にボディ2に形成されている第2の閉弁用連通路90Bは、第3の閉弁用受圧室73と第4の閉弁用受圧室74とを互いに連通させて、同圧とさせる。弁軸5の内部にも、第2の閉弁用連通路90Wが空洞状に形成されている。第2の閉弁用連通路90Wの短口90rにより、第1の閉弁用受圧室71、第2の閉弁受圧室72、第3の閉弁用受圧室73、第4の閉弁用受圧室74とを互いに連通させている。
【0072】
さて、弁部50で弁口29を閉鎖する閉弁動作について説明する。先ず、気体をポート72tから第2の閉弁用受圧室72に、ポート74tから第4の閉弁用受圧室74に閉弁圧として供給する。第2の閉弁用受圧室72に供給された気体は、第1の閉弁用連通路90Aから第1の閉弁用受圧室71にも、閉弁圧として供給される。第4の閉弁用受圧室74に供給された気体は、第2の閉弁用連通路90Bから第3の閉弁用受圧室73にも閉弁圧として供給される。
【0073】
この結果、第1ダイヤフラム61、第2ダイヤフラム62、第3ダイヤフラム63、第4ダイヤフラム64がそれぞれ閉弁方向(矢印Y1方向)に受圧して移動する。この結果、弁軸5が閉弁方向(矢印Y1方向)に移動し、弁部50が閉弁する。この場合、ダイヤフラム61〜64が設けられているため、単数のダイヤフラムのみが搭載されていた従来のバルブに比較して、遙かに大きな閉弁駆動力を発揮することができる。
【0074】
上記したように弁部50を閉弁方向(矢印Y1方向)に移動させるときには、第4の開弁用受圧室84のポート84t、第3の開弁用受圧室83のポート83t、第2の開弁用受圧室82のポート82t、第1の開弁用受圧室81のポート81tは、大気に開放されることが好ましい。これにより閉弁方向におけるダイヤフラム群6の変形が良好となる。
【0075】
次に、弁口29を閉鎖している弁部50を開放させる開弁動作について説明する。先ず、気体をポート81tから第1の開弁用受圧室81に開弁圧として供給すると共に、気体をポート82tから第2の開弁用受圧室82に開弁圧として供給する。同様に、気体をポート83tから第3の閉弁用受圧室83に開弁圧として供給すると共に、気体をポート74tから第4の閉弁用受圧室74に開弁圧として供給する。
【0076】
この結果、第1ダイヤフラム61、第2ダイヤフラム62、第3ダイヤフラム63、第4ダイヤフラム64が開弁方向(矢印Y2方向)に受圧して移動する。この結果、弁軸5が開弁方向(矢印Y2方向)に移動し、弁部50が開弁し、弁口29が開放される。このため単数のダイヤフラムのみが搭載されていた従来のバルブに比較して、遙かに大きな開弁駆動力を発揮することができる。
【0077】
上記したように弁部50を開弁方向に移動させるときには、開弁方向におけるダイヤフラム群6の変形を容易にするため、第2の閉弁用受圧室72のポート72tおよび第4の閉弁用受圧室74のポート74tは、大気に開放されることが好ましい。この場合、第2の閉弁用受圧室72と第1の閉弁用受圧室71とは第1の閉弁用連通路90Aを介して連通されているため、第2の閉弁用受圧室72および第1の閉弁用受圧室71の双方が大気に開放される。同様に、第4の閉弁用受圧室74と第3の閉弁用受圧室73とは第2の閉弁用連通路90Bを介して連通されているため、第4の閉弁用受圧室74および第3の閉弁用受圧室73の双方が大気に開放される。よってダイヤフラム群6が開弁方向に良好に変形できる。
【0078】
図8に示すように、第1の付勢バネ58fは第2ダイヤフラム62を開弁方向(矢印Y2方向)に付勢している。第2の付勢バネ58sは第4ダイヤフラム64を開弁方向(矢印Y2方向)に付勢している。このため、開弁駆動力の大きさを高めることができ、開弁動作をアシストすることができる。この場合、水の凍結等で弁座28と弁部50とが結着されている場合における開弁に有効である。
【0079】
なお、本実施例は流体システムに適用できる。例えば燃料電池システムに適用できる。この場合、気体としてはカソードガスが挙げられるが、アノードガスでも良い。更には、燃料電池システムのパージガス等として使用される窒素ガスでも良い。開弁用受圧室の数は閉弁用受圧室の数と同じとされている。但し、これに限定されるものではなく、開弁用受圧室の数は閉弁用受圧室の数よりも多くても良いし、少なくても良い。
【0080】
本実施例によれば、弁部50が閉弁しているときにおいて、第1ダイヤフラム61〜第4ダイヤフラム64の4個のダイヤフラムうち、有効受圧面積の最大値をもつダイヤフラムについてその最大値をSmaxとし、有効受圧面積の最小値をもつダイヤフラムについてその最小値をSminとするとき、Smax/Smin=1.00〜1.30の範囲内、1.05〜1.20の範囲内、1.05〜1.10の範囲内に設定されていることが好ましい。この場合、各ダイヤフラム61〜64の有効受圧面積が同一または近似するため、開弁動作時および閉弁動作時において、ダイヤフラム群6を構成する各ダイヤフラム61〜64の変形が同程度となり、ダイヤフラム群6の耐久性の向上に貢献できる。
【0081】
(その他)
弁軸5は上下方向に延設されているが、これに限らず傾斜していても良い。水平方向に延設されていても良い。ボディ2は分割ボディとされているが、分割されていなくても良い。付勢バネ58は開弁アシスト用であるが、閉弁アシスト用でも良い。場合によっては付勢バネ58を廃止しても良い。第1ダイヤフラム61および第2ダイヤフラム62のうちの少なくとも一方は、ベーローズ構造としても良い。弁軸5の内部に閉弁用連通路および開弁用連通路の双方が空洞状に形成されていても良い。その他、本発明は上記した実施形態および実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。ある実施形態および実施例に特有の構造および機能は他の実施形態についても適用できる。本明細書から次の技術的思想も把握できる。
(付記項1)(i)1次通路と2次通路とを連通させる弁口を形成する弁座と、弁口に連通する作動室と、作動室を複数の中空室に仕切ると共に弁軸挿通孔を有する仕切壁とを有するボディと、(ii)ボディの仕切壁の弁軸挿通孔に移動可能に挿通され移動に伴い弁口を開閉させるための弁部をもつ軸状をなす弁軸と、(iii)外端部がボディに保持され内端部が弁軸に保持され弁軸の軸長方向に直列状態に並設されたダイヤフラムとを具備するダイヤフラム駆動式バルブ。弁軸の軸芯に沿って軸芯を通る断面において、弁部の閉弁時において、軸芯よりも一方側についてダイヤフラムの有効受圧面積の合計をSRとし、軸芯よりも他方側についてダイヤフラムの有効受圧面積の合計をSLとするとき、SRおよびSLは異なる値に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は例えば燃料電池システム、コージュネシステム等の流体システムに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施例1に係り、バルブの概念を示す断面図である。
【図2】実施例2に係り、バルブの概念を示す断面図である。
【図3】実施例3に係り、バルブの概念を示す断面図である。
【図4】実施例4に係り、バルブの概念を示す断面図である。
【図5】実施例5に係り、バルブの概念を示す断面図である。
【図6】実施例6に係り、バルブの概念を示す断面図である。
【図7】実施例7に係り、バルブの概念を示す断面図である。
【図8】実施例8に係り、バルブの概念を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1はバルブ、2はボディ、31は1次通路、32は2次通路、4は仕切壁、40は弁軸挿通孔、42はシール部材、5は弁軸、50は弁部、58は付勢バネ、6はダイヤフラム群、61は第1ダイヤフラム、62は第2ダイヤフラム、71は第1の閉弁用受圧室、72は第2の閉弁用受圧室、81は第1の開弁用受圧室、82は第2の開弁用受圧室、90は閉弁用連通路、100は開弁用連通路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次通路と2次通路とを連通させる弁口を形成する弁座と、前記弁口に連通する作動室と、前記作動室を複数の中空室に仕切ると共に弁軸挿通孔を有する仕切壁とを有するボディと、
前記ボディの前記仕切壁の前記弁軸挿通孔に移動可能に挿通され移動に伴い前記弁口を開閉させるための弁部をもつ軸状をなす弁軸と、
外端部が前記ボディに保持され内端部が前記弁軸に保持され前記弁軸の軸長方向に直列状態に並設された複数のダイヤフラムで形成されたダイヤフラム群とを具備しており、
前記ダイヤフラム群の前記ダイヤフラムは、
流体圧の受圧に伴い前記弁軸を閉弁方向に移動させるための閉弁用受圧室と、流体圧の受圧に伴い前記弁軸を開弁方向に移動させる開弁用受圧室とに、前記弁軸の軸長方向において各前記中空室を仕切ると共に、
前記閉弁用受圧室および前記開弁用受圧室のうちの一方または双方は、前記弁軸の軸長方向において複数個配置されていることを特徴とするダイヤフラム駆動式バルブ。
【請求項2】
請求項1において、前記閉弁用受圧室および前記開弁用受圧室はそれぞれ複数個配置されており、前記閉弁用受圧室および前記開弁用受圧室は同数個とされていることを特徴とするダイヤフラム駆動式バルブ。
【請求項3】
請求項1または2において、前記弁軸および前記ハウジングのうちの少なくとも一方は、複数の前記開弁用受圧室同士を連通させる閉弁用連通路を有することを特徴とするダイヤフラム駆動式バルブ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記弁軸および前記ハウジングのうちの少なくとも一方は、複数の前記開弁用受圧室同士を連通させる開弁用連通路を有することを特徴とするダイヤフラム駆動式バルブ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記弁部の閉弁時において、各前記ダイヤフラムのうち有効受圧面積の最大値をSmaxとし、各前記ダイヤフラムのうち有効受圧面積の最小値をSminとするとき、Smax/Smin=1.00〜1.30の範囲内に設定されていることを特徴とするダイヤフラム駆動式バルブ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一項において、前記弁軸の軸芯に沿って軸芯を通る断面において、前記弁部の閉弁時において、前記軸芯よりも一方側について前記ダイヤフラム群の有効受圧面積の合計をSRとし、前記軸芯よりも他方側について前記ダイヤフラム群の有効受圧面積の合計をSLとするとき、SRおよびSLは異なる値に設定されていることを特徴とするダイヤフラム駆動式バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−127446(P2010−127446A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305953(P2008−305953)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】