説明

ダブル編用丸編機

【課題】ダブル編用の丸編機において、ゴム編であり且つボディサイズであり且つ度目の詰まった筒状生地でありながら、更に必要に応じてメリハリのある立体部などをも具備したものとして編成できるようにする。
【解決手段】シリンダ3とダイヤル4とが一体回転可能に設けられていると共に、これらシリンダ3及びダイヤル4の回転域を取り囲む複数位置に給糸口17が分散配置され、シリンダ3及びダイヤル4はボディサイズの筒状生地Wを編成可能な外径で形成されていると共に、シリンダ3のシリンダ針7及びダイヤル4のダイヤル針9は18ゲージ以上とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブル編用丸編機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダブル編用丸編機は、シリンダ針を上下動自在に保持したシリンダと、このシリンダの上部に設けられてダイヤル針を径方向外方へ摺動自在に保持したダイヤルとを有しており、これらシリンダ及びダイヤルの一体回転時にシリンダ針とダイヤル針とで形成されるニッティングポイントから「ゴム編」(「リブ編」「フライス」又は「ダブル生地」等とも呼称される)の筒状生地を編み降すことができるようになっている。
「ゴム編」とはループが凸で並ぶ列とループが凹で並ぶ列とがコース方向で交互配置となる編組織を言い、表裏の区別がでない安定した編地である。
【0003】
ところで、丸編機用の一般的な装備機構として(ダブル編用及びシングル編用を含めた全体の技術として)は、給糸口に対応して形成されるニッティングポイントに対して編針の有効無効を切り替えるようにした選針機が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
また、給糸口に対応して形成されるニッティングポイントの有効形成領域内で編針の動作量を変えられるようにしたステッチ量調整装置が知られている(例えば、特許文献2等参照)。
【0004】
選針機により編針を無効(編成動作をしない状態)に制御すると筒状生地側にタックを作ることができるため、このタックを立体化しようとする領域の輪郭相当位置に配置することにより、このタック輪郭の内方で部分的な立体部を設けることが可能となる。
またステッチ量調整装置を1コースの編成中に稼働させ、1コース内(周方向)の一部にループの大きな領域を設けるようにすると、更にメリハリのついた立体部を設けることができる。
【特許文献1】特開2005−76160号公報
【特許文献2】特開2004−232128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダブル編用であって、尚かつ、ボディサイズの筒状生地を編成できるような丸編機(即ち、複雑機構が必要で且つ径小化が要求されるもの)は、スペース的な制約から未だ製作されていないというのが実情である。殊に、選針機やステッチ量調整装置までもを全て備えるような丸編機となればスペース的な制約は一層厳しくなり、現実化のニーズすらなかった。
ところで、ダブル編用の丸編機(ボディサイズより径大なタイプ)であっても、シンカ(ループ突出量を抑えるのに必要な機構)を設けるスペースがないという事情から、ステッチ量調整装置を装備させたところで生産性を高められず(実益が出ない)、結果としてステッチ量調整装置は装備させないのが普通であった。
【0006】
なお仮に、シンカのない丸編機を用いてシリンダ側で大きなループを作ったとすると、このループが次に動作するダイヤル針に引っ掛けられてしまい、所謂「被り」という瑕疵が発生することになる。
以上のことから、従来、ゴム編であり且つボディサイズであり且つアンダーウエアに好適となるように度目の詰まった(18ゲージ以上)筒状生地を、丸編機によって編成することはできなかった。勿論、この種の筒状生地にメリハリのついた立体部を設けるといったことも不可能であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ゴム編であり且つボディサイズであり且つアンダーウエアに好適となるように度目の詰まった(18ゲージ以上)筒状生地を編成することができるダブル編用丸編機を提供することを目的とする。
また本発明は、ゴム編であり且つボディサイズであり且つ度目の詰まった(18ゲージ以上)筒状生地でありながら、更に必要に応じてメリハリのある立体部などをも具備した
ものとして編成できるようにしたダブル編用丸編機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るダブル編用丸編機は、シリンダ針を上下動自在に保持したシリンダと、このシリンダの上部に設けられてダイヤル針を径方向に沿って摺動自在に保持したダイヤルとが一体回転可能に設けられていると共に、これらシリンダ及びダイヤルの回転域を取り囲む複数位置に給糸口が分散配置されたものであって、シリンダ及びダイヤルはボディサイズの筒状生地を編成可能な外径で形成されていると共に、シリンダのシリンダ針及びダイヤルのダイヤル針は18ゲージ以上とされている。
【0009】
このようにすることで、ゴム編であり且つボディサイズであり且つアンダーウエアに好適となるように度目の詰まった(18ゲージ以上)筒状生地を編成することができる。この筒状生地は、そのまま(裁断や縫製などすることなく)身生地に利用できるので、生産性に優れ、低コストで且つ着心地に優れた衣類を製作することができる。またこの筒状生地はアンダーウエアを製作するのに使用することができ、保温性などに優れたアンダーウエアを製作することが可能となる。
シリンダ及び/又はダイヤルに、給糸口に対応して形成されるニッティングポイントに対して編針の有効無効を切り替える選針機を設けるのが好適である。
【0010】
また、各給糸口に対応させて給糸切替装置を設けるのが好適である。
また、シリンダ及び/又はダイヤルに、給糸口に対応して形成されるニッティングポイントの有効形成領域内で編針の動作量を可変にするステッチ量調整装置を設けるのが好適である。
また、シリンダ及び/又はダイヤルの外周部に沿った少なくとも1箇所に目移し部を設けるのが好適である。
また、給糸口に対応して形成されるニッティングポイントに対し、筒状生地の編み降ろし方向へ沿わせたエアを吹き付けることでこのニッテイングポイントで突出しているループを次に出るダイヤル針の不干渉位置へ押し込めるダウンブロー噴射部を設けることもできる。
【0011】
このようにすると、ダウンブロー噴射部から噴射されるエアがニッティングポイントで突出するループを押さえるようになり、このループが次に動作するダイヤル針に引っ掛けられるのを防止することができる。
そのためステッチ量調整装置を装備させたときであっても、編成筒状生地に対して所謂「被り」という瑕疵を発生させるおそれがなく、結果として、メリハリのついた立体部を編成することができるものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るダブル編用丸編機では、ゴム編(ダブル生地)であり且つボディサイズであり且つアンダーウエアに好適となるように度目の詰まった(18ゲージ以上)筒状生地を編成することができる。またこの種の筒状生地において、必要に応じてメリハリのある立体部などをも具備したものとして編成できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図5は、本発明に係るダブル編用丸編機1の一実施形態を示している。
本実施形態のダブル編用丸編機1は、円筒形のシリンダ3と、このシリンダ3の上部に設けられた円盤状のダイヤル4とを有している。これらシリンダ3及びダイヤル4は、それらの中心Pを通る回転軸5のまわりで互いに一体回転可能とされており、この回転軸5に設けられた伝動手段6を介して回転駆動が与えられるようになっている。
図3に示すように、シリンダ3には、その外周面全周を取り囲む配置で多数本のシリンダ針7が上下動自在に保持されている。シリンダ3のまわりには定置状態でカムホルダー8が設けられており、このカムホルダー8の内周面に、各シリンダ針7に所定タイミングで上下動(編成動作)を起こさせるためのステッチカム8aが設けられている。
【0014】
ダイヤル4には、その上面で中心から放射状配置で多数本(シリンダ針7と同数)のダ
イヤル針9が径方向に沿って摺動自在に保持されている。このダイヤル4の上部には上部カムホルダー10が定置状態で設けられており、この上部カムホルダー10の下面に、ダイヤル針9に横移動(編成動作)を起こさせるためのダイヤルカム10aが設けられている。
従って、シリンダ3及びダイヤル4を一体回転させることで、ステッチカム8aに倣ってシリンダ針7が上下動すると共に、ダイヤルカム10aに倣ってダイヤル針9が横移動するようになる。この状態で、シリンダ針7の針先(フック部)とダイヤル針9の針先(フック部)との交差部として形成されるニッティングポイントへ給糸切替装置(ストライパー)12を介して給糸すれば、筒状生地Wが編み降ろされることになる。
【0015】
編成された筒状生地Wは、シリンダ3の内方を介して垂れ下げられ、シリンダ3の下方に吊り枠15を介して設けられた巻取装置16によって巻き取られる。
シリンダ3及びダイヤル4の外径は、ボディサイズの筒状生地Wを編成できるサイズに形成されている。またシリンダ3におけるシリンダ針7のゲージ数、及びダイヤル4におけるダイヤル針9のゲージ数は、いずれも18ゲージ以上とされている。
なお、ボディサイズの具体例を挙げると、子供用ではおおよそ8寸(12インチ)以上、成人女性用ではおおよそ11寸(15インチ)〜13寸(17インチ)程度、成人男性用ではおおよそ13寸(17インチ)〜15寸(19インチ)程度となる。ビッグサイズとして20インチや22インチなどを設定することも可能である。これらはあくまでも一例である。
【0016】
また、ゲージ数はシリンダ3やダイヤル4の周方向において1インチあたりに配置される針本数を言う(即ち「18ゲージ」とは18本/インチを指す)が、このゲージ数は、所謂、「呼び数」であって、厳密に実態としての針本数を表したものではない。従って18ゲージには、1インチあたり17本を超え19本未満の針本数とされたものも含まれるものとする。
シリンダ3のまわりには、複数の給糸口17が分散配置されており(図2は8口の場合を示している)、各給糸口17に対応して上記給糸切替装置(ストライパー)12が設けられている。
【0017】
またシリンダ3のカムホルダー8に対しては、各給糸口17に対応する状態で、ステッチカム8a内のカム経路を変更可能にするスイングカムをはじめ、ニッティングポイントが形成される有効範囲内でシリンダ針7の動作量を可変にするステッチ量調整装置20、更にはシリンダ針7による編成の可否を選択可能にする選針機21が設けられている。更に、給糸口17とは一致しない少なくとも一箇所に、目移し部22が設けられている。
ステッチ量調整装置20は、サーボモータ又はステッピングモータなどの制御モータ26により、シリンダ3の周方向で複数に分割されたステッチカム8aを上下動させる構造であり、且つ全てのステッチカム8aに、それぞれ制御モータ26が割り当てられた構造である。
【0018】
そのため、個々の制御モータ26を所定タイミングで制御することによってシリンダ針7の上昇位置(高さ)を変化させることができる。これにより、1コースの編成中に、コース方向の所望箇所でループの大きさを変更させることができる。
選針機21は、必要に応じてシリンダ針7を上昇させるかさせないかを選択できるようにした針動作機構を有した構造であり、この針動作機構の動作の有無により、各給糸口17に対応して形成されるニッティングポイントに対してシリンダ針7を有効とするか無効とするか(編成動作をさせるかさせないかの選択)を切り替えられるようになっている。
【0019】
目移し部22は、例えば周方向の4箇所程度に設けられる。図4に示すように、全てのシリンダ針7の下部側面には、下端が固定され上端が弾性屈曲自在な自由端として開放された鉤フック状のポケット部28が設けられている。
目移し部22には選針機21と同様な針動作機構が設けられていており、所定タイミングで各シリンダ針7を個別に上下動させることができるようになっている。但し、選針機21の針動作機構とはシリンダ針7の高さ設定が異なっており、この目移し部22が有する針動作機構では、シリンダ針7の上昇位置を、上記ポケット部28がダイヤル針9の摺
動レベルに一致する高さとしている。
【0020】
すなわち、シリンダ針7を上昇させた後、ダイヤル針9が突出動作すると、このダイヤル針9がシリンダ針7のポケット部28内へ横から挿入されるようになっている。そのため、この状態でシリンダ針7が下降すると、シリンダ針7に引っ掛けられていたループLはダイヤル針9側へ乗り移り、その後のダイヤル針9の退入によってダイヤル針9側へ引き取られることになる。
ダイヤル4についてもシリンダ3の場合と略同様であり、各給糸口17に対応する状態でスイングカム、ステッチ量調整装置30、選針機31が設けられている。更に、給糸口17とは一致しない少なくとも一箇所に、目移し部33が設けられている。
【0021】
ダイヤル4側のスイングカム、ステッチ量調整装置30、選針機31、目移し部33も、それぞれシリンダ3側のスイングカム、ステッチ量調整装置20、選針機21、目移し部22と略同じである。なお、ダイヤル4側の目移し部33は、例えば周方向の2箇所程度に設けられる。
一方、図3及び図5に示すように、給糸口17に対応して形成されるニッティングポイントに対し、ダウンブロー噴射部37が設けられている。本実施形態において、このダウンブロー噴射部37は、ダイヤル4の下面外周部で、シリンダ3の内部下方を指向するようにして設けられたものとしてある。
【0022】
ダウンブロー噴射部37は、ダイヤル4の周方向に沿って互いに所定間隔をおいて複数設けられた噴射孔37aへ、外部設置のエア供給源からダイヤル4内に設けられたエア供給路38等を介してエアが供給されるようになっている。
従ってこのダウンブロー噴射部37の各噴射孔37aからエアを噴射させると、編成されつつある筒状生地Wに対し、その編み降ろし方向へ沿ってエアが吹き付けられるようになる。そのため、このニッテイングポイントで突出しているループが次に出るダイヤル針9の不干渉位置へ押し込められるようになる。
【0023】
ダウンブロー噴射部37において、噴射孔37aが筒状生地Wに向く下向きの角度θは1〜45°とするのが好適であり、更に好ましくは20°前後とすればよい。また噴射孔37aは、シリンダ3の内面先端からの距離Hを5〜50mmの範囲とし、ダイヤル4の外周面での周方向の配置間隔を20〜50mmとするのが好適である。更に噴射孔37aの口径φは1.5〜3mmとし、エア供給圧(元圧)は3〜5kg/cm2 とするのが好適である。
以上、詳説したところから明かなように、本発明に係るダブル編用丸編機1では、ゴム編(「リブ編」「フライス」又は「ダブル生地」等とも呼称される)であり、且つボディサイズ(裁断や縫製を加えずに筒径をそのまま身筒状生地に適用できるサイズ)であり、且つアンダーウエアに好適となるように度目の詰まった(18ゲージ以上)筒状生地Wを編成することができる。
【0024】
その他、以下のような各種の編成が可能である。
[ゴム編と平編との編み分け]
上記のように編成するゴム編部に対し、平編(「天竺編」や「シングル生地」等とも呼称される)により編成する平編部を無縫製状態のまま混在させるようにすることができる。
この場合、図6に示すように、平編部は、表側平編部40Aと裏側平編部40Bとで二枚重ねとなる二重平編部40を形成させるようにして、表側平編部40Aと裏側平編部40Bとの間に大きな空気層41を保持させることができる。このような空気層41を保持させることで、保温性などに優れた衣類(アンダーウエア等)を製作することが可能となる。
【0025】
また、ゴム編部42と二重平編部40との連結部分は一連の編成作業で製作されているので、この連結部分に関して縫着の必要がなく、従って当然に、凸状の縫着ラインが発生することもない。これらのことから、衣類の製作に関して高生産性、低コスト、着用感の向上が図れるといった種々の利点がある。
このような筒状生地Wを編成するには、シリンダ3及びダイヤル4を一体回転させつつ
給糸を開始し、全ての給糸口17に対応したニッティングポイントでシリンダ針7とダイヤル針9との両方を用いたゴム編を行い、ゴム編部42を筒状に編み降ろす。
【0026】
ゴム編部42が所定長さ編成できたところで、図7に示すように、所定の給糸口17(図例では1番給糸口及び3番給糸口に相当)に対応するニッティングポイントでは、シリンダ針7を停止させることによりダイヤル針9だけによる平編を行わせ、これによって裏側平編部40Bを編成させる。
またこれ以外の給糸口17(図例では2番給糸口及び4番給糸口に相当)に対応するニッティングポイントでは、ダイヤル針9を停止させることによりシリンダ針7だけによる平編を行わせ、これによって表側平編部40Aを編成させる。
【0027】
このようにしてシリンダ針7だけを用いた表側平編部40Aと、ダイヤル針9だけを用いた裏側平編部40Bとを並行して編成することにより、表裏で乖離した二重平編部40を形成させる。
なお、この二重平編部40の編成中に、所定の給糸口17に対応するニッティングポイントにおいて停止中の針を単発的に編み位置まで動作させ、その後、すぐに元の停止状態に戻すようにすると、二重平編部40に対して点在的に、表裏間を連結した結節部43を形成させることができる。
【0028】
例えば図7では、2番給糸口に対応するニッティングポイントにおいてダイヤル針9で実施したり、3番給糸口に対応するニッティングポイントにおいてシリンダ針7で実施したりしている。
このような結節部43を形成させることで、二重平編部40は表側平編部40Aと裏側平編部40Bとが必要以上に間隔を広げるような分離状態とならず、空気層41は、その容量が極端に拡縮するようなことはない。そのため、空気層41による保温効果が一定状態に保たれることになる。
【0029】
また表側平編部40Aと裏側平編部40Bとが面方向にズレることもないので、皺などの発生を防止できることになり、着崩れの防止に繋がり、また見栄え上も好適である。衣類の洗濯時などに、表側平編部40Aや裏側平編部40Bが皺などを原因として破れるような不具合も起こらない。
二重平編部40を編成した後は、シリンダ針7だけで平編を行っている給糸口17(図例の2番給糸口及び4番給糸口)対応のニッティングポイントでは、停止中のダイヤル針9に編み動作を開始させて、シリンダ針7及びダイヤル針9の両方を用いたゴム編を行わせる。
【0030】
また同様に、ダイヤル針9だけで平編を行っている給糸口17(図例の1番給糸口及び3番給糸口)対応のニッティングポイントでは、停止中のシリンダ針7に編み動作を開始させてシリンダ針7及びダイヤル針9の両方を用いたゴム編を行わせる。
これらにより、全ての給糸口17に対応したニッティングポイントにおいてシリンダ針7とダイヤル針9との両方を用いたゴム編が行われる状態に戻り、二重平編部40から無縫製状態のまま、ゴム編部42を編み降ろすことができる。
この編成方法で編成して得られた筒状生地Wは、そのまま(裁断や縫製などすることなく)身筒状生地に利用できるので、生産性に優れ、低コストで且つ着心地に優れた衣類を製作することができる。
[立体編み]
女性用衣類の胸部や男性用衣類の股間部、或いは男女用を問わず臀部など、立体化させたい部分があるときには、編成糸として弾性糸を使用したり、或いは選針機21,31を使って編針(シリンダ針7やダイヤル針9)の動作を特定タイミング(立体化しようとする領域の輪郭相当位置)で不動作状態に制御してタックを作ったりする。
【0031】
しかし、よりメリハリのついた立体部を設ける場合には、ステッチ量調整装置20を作動させ(所定の制御モータ26を制御して)、1コース内(周方向)の一部にループの大きな領域を設けるようにする。
この場合、シリンダ3及びダイヤル4を一体回転させつつ給糸を開始して編成を開始させると同時に、エア供給源からダウンブロー噴射部37(図3及び図5参照)へとエアを
供給し、噴射孔37aから筒状生地Wの編み降ろし方向へ沿わせたエアを噴出させる。
このようにすれば、ダウンブロー噴射部37から噴射されるエアがニッティングポイントで突出するループを押さえるようになり、このループが次に動作するダイヤル針9に引っ掛けられることが防止されることになる。また、シリンダ3の上周部とダイヤル4の外周部との間に形成される周隙間に対して、外部の空気が吸い込まれるようになり、この空気の流れが更にループの突出を押さえるように作用する。
【0032】
そのため、編成された筒状生地Wに対して所謂「被り」という瑕疵が発生することはなく、そのうえでメリハリのついた立体部を有する筒状生地(ダブル編筒状生地)が編成されることになる。
[目移し]
シリンダ3側でシリンダ針7だけを用いて平編部を編成したり、反対にダイヤル4側でダイヤル針9だけを用いて平編部を編成したりすることも勿論可能である。
この場合、平編部の一部又は全部でメッシュ編を編成させたり、シリンダ針7で数ループを編んだ後、ダイヤル針9で数ループを編むといったことを繰り返してウエル方向に凹凸のある編部を編成させたりするといったことも可能である。
【0033】
このように編成の途中、シリンダ針7とダイヤル針9とで糸の受け渡しが必要になるときには、シリンダ3及びダイヤル4の目移し部22,33を用いる。
[糸変え]
給糸切替装置12を具備しているため、編成しようとする衣類の所望箇所へ所望の糸(色、太さ、縒り構造、品種(材質)、物性など、種々に異なる糸)を使うことができる。[その他の構成]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0034】
例えば、ダウンブロー噴射部37は、図8に示すようにシリンダ3及びダイヤル4に対する外方側からニッティングポイントへ向けてエアを噴射させるように構成したり、或いは図9に示すようにシリンダ3の上端内周縁部からニッティングポイントへ向けてエアを噴射させるように構成したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るダブル編用丸編機の一実施形態を示した側断面図である。
【図2】図1に対応する平面図である。
【図3】図1の一部(シリンダまわり)を示した拡大図である。
【図4】目移し部の動作を説明した拡大図である。
【図5】図3の一部(ダウンブロー噴射部)の拡大図である。
【図6】本発明に係るダブル編用丸編機を用いて編成した筒状生地の一例を示した断面図である。
【図7】図6の筒状生地を編成する状況を示した組織図である。
【図8】ダウンブロー噴射部の別実施形態を示した側断面図である。
【図9】ダウンブロー噴射部の更なる別実施形態を示した側断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ダブル編用丸編機
3 シリンダ
4 ダイヤル
7 シリンダ針
9 ダイヤル針
12 給糸切替装置
17 給糸口
20 ステッチ量調整装置(シリンダ側)
21 選針機(シリンダ側)
22 目移し部(シリンダ側)
30 ステッチ量調整装置(ダイヤル側)
31 選針機(ダイヤル側)
33 目移し部(ダイヤル側)
37 ダウンブロー噴射部
W 筒状生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ針(7)を上下動自在に保持したシリンダ(3)と、このシリンダ(3)の上部に設けられてダイヤル針(9)を径方向に沿って摺動自在に保持したダイヤル(4)とが一体回転可能に設けられていると共に、これらシリンダ(3)及びダイヤル(4)の回転域を取り囲む複数位置に給糸口(17)が分散配置されているダブル編用丸編機において、
シリンダ(3)及びダイヤル(4)はボディサイズの筒状生地(W)を編成可能な外径で形成されていると共に、シリンダ(3)のシリンダ針(7)及びダイヤル(4)のダイヤル針(9)は18ゲージ以上とされている
ことを特徴とするダブル編用丸編機。
【請求項2】
前記シリンダ(3)及び/又はダイヤル(4)には給糸口(17)に対応して形成されるニッティングポイントに対して編針の有効無効を切り替える選針機(21)(31)が設けられていることを特徴とする請求項1記載のダブル編用丸編機。
【請求項3】
前記各給糸口(17)に対応させて給糸切替装置(12)が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のダブル編用丸編機。
【請求項4】
前記シリンダ(3)及び/又はダイヤル(4)には給糸口(17)に対応して形成されるニッティングポイントの有効形成領域内で編針の動作量を可変にするステッチ量調整装置(20)(30)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のダブル編用丸編機。
【請求項5】
前記シリンダ(3)及び/又はダイヤル(4)の外周部に沿った少なくとも1箇所に目移し部(22)(33)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のダブル編用丸編機。
【請求項6】
前記給糸口(17)に対応して形成されるニッティングポイントに対し、筒状生地(W)の編み降ろし方向へ沿わせたエアを吹き付けることでこのニッテイングポイントで突出しているループを次に出るダイヤル針(9)の不干渉位置へ押し込めるダウンブロー噴射部(37)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のダブル編用丸編機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−133060(P2010−133060A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311073(P2008−311073)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【出願人】(592199412)安田工機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】