チルト装置及び電子機器
【課題】負荷付与部の経時的劣化の虞を低減して長期間に亘る使用に耐えられるようにしたチルト装置を提供すること。
【解決手段】揺動支点11に対して揺動して第1姿勢と第2姿勢とを取り、且つ前記第1姿勢と第2姿勢との間の姿勢も取り得る揺動体10と、前記揺動体10を揺動可能な状態で支持する支持部材4,9と、前記揺動体10と支持部材4,9との間に設けられ、前記揺動体10が前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では該揺動体10に揺動負荷を与え、前記揺動体10が第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方では前記揺動体10に揺動負荷を与えない負荷付与部20とを備えている。
【解決手段】揺動支点11に対して揺動して第1姿勢と第2姿勢とを取り、且つ前記第1姿勢と第2姿勢との間の姿勢も取り得る揺動体10と、前記揺動体10を揺動可能な状態で支持する支持部材4,9と、前記揺動体10と支持部材4,9との間に設けられ、前記揺動体10が前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では該揺動体10に揺動負荷を与え、前記揺動体10が第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方では前記揺動体10に揺動負荷を与えない負荷付与部20とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動支点に対して揺動して第1姿勢と第2姿勢とを取り、且つ前記第1姿勢と第2姿勢との間の姿勢も取り得る揺動体と、前記揺動体を揺動可能な状態で支持する支持部材とを備えたチルト装置及び該チルト装置を液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用した記録装置等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
小型のレジスタ、電卓、カーナビゲーション、電話機、プリンタ、ファクシミリ、デジタルビデオカメラ等の電子機器の中には液晶ディスプレイの角度を自由に変えることができるチルト装置を備えたものが多く存在する。従来のチルト装置は、下記の特許文献1及び特許文献2に示すように、揺動体である液晶ディスプレイと、該液晶ディスプレイの支持部材である本体ハウジングとの間に液晶ディスプレイの姿勢位置に関係なく、常時負荷付与状態にある摩擦部材や付勢部材によって構成される負荷付与部が設けられていた。
【0003】
しかしながら、このような負荷付与部は、常時負荷付与状態にあるのでクリープ変形等の経時的劣化が起こり易く、短期間で必要な大きさの負荷を付与できなくなる虞があった。
【0004】
また、常時負荷付与状態にある前記負荷付与部を適用した従来のチルト装置の場合には、液晶ディスプレイが完全に正規の倒伏姿勢又は起立姿勢になっているか否かの把握が難しい問題があった。
【特許文献1】特開2003−110248号公報
【特許文献2】特開2003−148450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような背景技術の問題点の存在を踏まえてなされたものであって、負荷付与部の経時的劣化の虞を低減して長期間に亘る使用に耐えられるようにしたチルト装置及び該チルト装置を液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の第1の態様に係るチルト装置は、揺動支点に対して揺動して第1姿勢と第2姿勢との間で揺動変位可能な揺動体と、前記揺動体を揺動可能な状態で支持する支持部材と、前記揺動体と前記支持部材との間に設けられ、前記揺動体が前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、該揺動体に揺動可能で且つ揺動力がかからない状態では任意の姿勢位置で静止可能にする揺動負荷を与え、前記揺動体の第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方は前記揺動負荷の及ぶ範囲外となる構成の負荷付与部と、前記負荷付与部の揺動負荷の及ぶ範囲外に位置する揺動体の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
本態様によれば、揺動体が第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、負荷付与部から該揺動体に揺動負荷が作用するので、該揺動体は前記揺動負荷によって例えば無段階に姿勢を変化させて任意の位置に固定され得る。一方、揺動体が第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方では、該揺動体に揺動負荷はかからないので、従来のような常時揺動負荷がかかっている場合に問題となっていた経時的劣化の虞を低減できる。すなわち、必要な大きさの揺動負荷を安定して揺動体に付与し続けることが可能になる。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るチルト装置において、前記負荷付与部は、前記支持部材に設けられている弾性片と、前記揺動体の揺動基端部に設けられている被圧接部と、前記弾性片の一部に設けられ、前記揺動体が第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では揺動体の前記被圧接部に圧接状態となり、前記揺動体が第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方では前記被圧接部に非圧接状態となる圧接作用部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本態様によれば、第1の態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。当該負荷付与部は、前記支持部材側に設けられる前記弾性片と、揺動体の基端部に設けられる被圧接部と、前記弾性片の一部に設けられた圧接作用部とを備えて構成されているので、前記揺動負荷の付与・非付与の切り替えを、部品点数が少なく、構造が簡単で且つ安価に実現するこことができる。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様に係るチルト装置において、前記弾性片の他部に、前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態のときに揺動体の前記被圧接部が前記揺動負荷から自由状態で収まる収容部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本態様によれば、第2の態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。前記弾性片の他部に収容部を設けて、該収容部に前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態のときに揺動体の前記被圧接部を、前記揺動負荷から自由状態で収容する構成にしたので、その姿勢位置を安定性良く維持することができる。
特に、揺動体の前記被圧接部が当該収容部に収容されている状態を脱するときに、前記圧接作用部との圧接状態に移行する構造にすることができるので、効率的な構造となって、無駄なスペースを発生させずにコンパクト化を容易に実現することができる。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記第2または第3の態様に係るチルト装置において、前記圧接作用部は前記弾性片の自由端において前記揺動体側に盛り上がった部分に設けられ、該圧接作用部は、前記揺動体の前記被圧接部の揺動方向における前端が該圧接作用部に当接する時と、前記揺動体の前記被圧接部の揺動方向における後端が該圧接作用部に当接する時に最も変位量が大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本態様によれば、第2の態様又は第3の態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。第1姿勢位置または第2姿勢位置に存している揺動体がその位置から移動を開始する際、更に揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に到達する際に、圧接作用部が最も大きく変位するように構成されているので、クリック感を発生させることができる。従って、操作者は感覚的に揺動体の現在の姿勢を把握することができ、チルト装置の操作性が向上して良好な操作感が得られるようになる。
【0014】
本発明の第5の態様は、前記第2の態様〜第4の態様のいずれか1つの態様に係るチルト装置において、前記揺動体は、第2姿勢位置に位置しているときには該揺動体の自重によって第1姿勢位置に向けて揺動しようとする傾向を有しており、前記姿勢保持部は、前記弾性片の自由端に設けられ、前記揺動体の被圧接部の端部が座して前記揺動体の自重を支える座部によって構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、第2の態様〜第4の態様のいずれか1つの態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。揺動体は第2姿勢位置に位置しているとき、揺動負荷は受けていないが、該揺動体の前記被圧接部の端部が前記弾性片に設けられている座部に座して当接するので、揺動体の第2姿勢位置を構造簡単にして確実に保つことができる。
【0016】
本発明の第6の態様は、前記第2の態様〜第5の態様のいずれか1つの態様に係るチルト装置において、前記揺動体の被圧接部は、揺動支点を中心とする同一半径の円弧曲面に形成されており、該円弧曲面の円周方向の長さは、前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態で前記弾性片から揺動負荷を受けない長さに設定されていることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、第2の態様〜第5の態様のいずれか1つの態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。前記揺動体の被圧接部は、揺動支点を中心とする同一半径の円弧曲面に形成されているので、揺動体が第1姿勢位置と第2姿勢位置の間に位置しているときには該揺動体の被圧接部に常に一定の揺動負荷が作用するようになり、安定性と操作性を向上することができる。
【0018】
本発明の第7の態様は、前記第1〜第6のいずれか1つの態様に係るチルト装置において、前記弾性片は、前記支持部材の前記揺動体の揺動基端部側に位置する部位から延びる前記支持部材と一体の弾性撓み変形可能な舌片状部材であることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、第1の態様〜第6の態様のいずれか1つの態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。前記弾性片は、前記支持部材の前記揺動体の揺動基端部側に位置する部位から延びる前記支持部材と一体の弾性撓み変形可能な舌片状部材であるので、当該弾性片によって揺動体の揺動基端部が被覆され、揺動支点へのゴミ等の侵入と付着が防止され、揺動体の円滑な揺動が確保される。また、部品点数を増やすことなく、簡単な構造で弾性片を構成でき、チルト装置のコンパクト化と製品コストの削減に寄与し得る。
【0020】
本発明の第8の態様は、前記第1〜第7のいずれか1つの態様に係るチルト装置において、前記支持部材には、前記弾性片と、該弾性片の弾性力を補強するために前記弾性片を下方から支持する補助弾性片とが設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、第1の態様〜第7の態様のいずれか1つの態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。前記支持部材には、前記弾性片と、該弾性片の弾性力を補強するために前記弾性片を下方から支持する補助弾性片とが設けられているので、構造的に弾性片の弾性力を増強できないような場合でも、当該補助弾性片によって実質的に弾性片の弾性力を増強して所望の揺動負荷を得ることが可能になる。また弾性片を大型化することなく、大型の揺動体にも対応できるチルト装置を提供することが可能になる。
【0022】
本発明の第9の態様に係る電子機器は、各種の情報が表示される液晶ディスプレイと、前記液晶ディスプレイが取り付けられる本体ハウジングと、前記液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用され、前記液晶ディスプレイを揺動支点に対して揺動させ、第1姿勢と第2姿勢とを取り、且つ前記第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢も取り得るチルト装置とを備え、前記チルト装置は、前記液晶ディスプレイが前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、該液晶ディスプレイに揺動可能で且つ揺動力がかからない状態では任意の姿勢位置で静止可能にする揺動負荷を与え、前記液晶ディスプレイの第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方は前記揺動負荷の及ぶ範囲外となる構成の負荷付与部と、前記負荷付与部の揺動負荷の及ぶ範囲外に位置する液晶ディスプレイの姿勢を保持する姿勢保持部と、を備えていることを特徴とするものである。本態様によれば、チルト装置を備えるプリンタ等の電子機器において、前記各態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
本発明の第10の態様は、前記第9の態様の電子機器において、前記圧接作用部は前記液晶ディスプレイの自由端において前記液晶ディスプレイ側に盛り上がった部分に設けられ、該圧接作用部は、前記液晶ディスプレイの前記被圧接部の揺動方向における前端が該圧接作用部に当接する時と、前記液晶ディスプレイの前記被圧接部の揺動方向における後端が該圧接作用部に当接する時に最も変位量が大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
本態様によれば、第1姿勢位置または第2姿勢位置に存している液晶ディスプレイがその位置から移動を開始する際、更に液晶ディスプレイが第1姿勢位置または第2姿勢位置に到達する際に、圧接作用部が最も大きく変位するように構成されているので、クリック感を発生することができる。従って、操作者は感覚的に液晶ディスプレイの現在の姿勢を把握することができ、操作性が向上して良好な操作感が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本願発明に係るチルト装置及び該チルト装置を液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用した電子機器の一例である記録装置について説明する。最初に本願発明の記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1はインクジェットプリンタの外観を示す左斜め前方からの斜視図である。尚、ここで説明するインクジェットプリンタ100は、例えばA4サイズ以下の被記録材(本明細書において用紙ともいう)Pを対象にした汎用タイプの中型のインクジェットプリンタである。このタイプに限定されないことは勿論である。このインクジェットプリンタ100は、記録装置本体の一例であるプリンタ本体3を備え、該プリンタ本体3の上部に本体ハウジング4を備えている。また、本体ハウジング4の後部寄りの上部には、給送用トレイ5上に積畳された最下位の用紙Pの裏面を支承する折り畳み式のペーパーサポート6が設けられている。そして、給送用トレイ5上に積畳された用紙Pは左右のエッジをエッジガイド15によって案内されて図示しない給送用ローラとホッパとの挟圧送り作用によって1枚ずつ連続的に自動給送される。
【0027】
本体ハウジング4の上面には、上下方向に開閉できる回動式の上面カバー7が設けられている。また、該上面カバー7の一例として向かって左側の側傍に各種の操作スイッチ8a、8b、8c、・・・8nが配置された操作パネル9と、前記操作スイッチ8a、8b、8c、・・・8nによる操作に基づいて、用紙サイズ、用紙の種類、印刷枚数等、各種の情報が表示される液晶ディスプレイ10とが設けられている。そして、前記液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に、後述する本発明のチルト装置1が設けられており、当該チルト装置1の作用によって液晶ディスプレイ10は、揺動支点11を中心にして揺動し、第1姿勢である倒伏姿勢と第2姿勢である起立姿勢とを切り替え、前記倒伏姿勢と起立姿勢との間で例えば無段階に姿勢を変えて固定し得るように構成されている。
【0028】
また、自動給送された用紙Pは、搬送用駆動ローラと搬送用従動ローラとの一対のニップローラによって構成されている図示しない搬送用ローラに供給され、該搬送用ローラの搬送力によって記録ポジションに導かれる。記録ポジションには記録実行手段である図示しない記録ヘッド、用紙Pの下面を支承して記録ヘッドとの間のギャップを規定する図示しないプラテン等がそれぞれ設けられている。そして、記録が実行された用紙Pは、排出用駆動ローラと排出用従動ローラとの一対のニップローラによって構成されている図示しない排出用ローラによって用紙搬送方向の下流端に設けられている図示しない排出用スタッカの載置面上に排出され、スタックされるように構成されている。
【0029】
[実施例1]
次に、このようにして構成されるインクジェットプリンタ100の液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に一例として適用される本発明に係る実施例1のチルト装置1について図面に基づいて具体的に説明する。
【0030】
図2は実施例1のチルト装置を備えたプリンタの上面カバーを取り外した状態の本体ハウジング、操作パネル及び液晶ディスプレイを示す右斜め前方からの斜視図、図3は同プリンタの操作パネル及び液晶ディスプレイの取付け部位周辺を拡大して示す分解斜視図である。図4は同プリンタの液晶ディスプレイを拡大して示す斜視図、図5は同プリンタの液晶ディスプレイの分解斜視図である。図6は同プリンタの本体ハウジングを裏返した状態の斜視図、図7は同プリンタの操作パネル及び液晶ディスプレイの取付け部位周辺を拡大して示す斜視図である。図8は同プリンタのチルト装置周辺を拡大して示す裏面側からの斜視図、図9は同プリンタの液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図である。また図10は同プリンタの液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置と起立姿勢位置との間の位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図、図11は同プリンタの液晶ディスプレイが起立姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図である。
【0031】
本実施例1のチルト装置1は、揺動体である液晶ディスプレイ10と、支持部材である本体ハウジング4及び操作パネル9と、前記液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に設けられる負荷付与部20とを備えることによって基本的に構成されている。
【0032】
図4と図5に示すように、液晶ディスプレイ10は、透過性材料によって構成されるカバー21と、該カバー21が取り付けられるアッパーハウジング22と、該アッパーハウジング22の下方に取り付けられるロアハウジング23と、前記アッパーハウジング22及びロアハウジング23によって挟まれるようにこれらの内部空間に配置される図示しない液晶等を備えることによって構成されている。
【0033】
アッパーハウジング22には、液晶を視認するための窓部24と、ロアハウジング23に係止するための係止爪25が適宜の数、設けられている。ロアハウジング23には前記アッパーハウジング22の係止爪25に係止される係止部26と、揺動支点11となる軸部27と、ロアハウジング23の本体と前記軸部27とを接続する湾曲したアーム部28とが設けられている。そして、前記軸部27とアーム部28は、ロアハウジング23の本体の幅寸法内に収まるように形成されており、プリンタ本体3の幅寸法の減少ないし小型化を容易にしている。尚、前記軸部27は、操作パネル9の裏面側に設けられている図8に示す軸受部12によって揺動自在に軸支されている。
【0034】
図9に示したように、アーム部28の外周面は、負荷付与部20の構成部材の1つである被圧接部29になっており、軸部27によって構成されている前記揺動支点11を中心とする同一半径Rの円弧曲面によって一例として構成されている。そして、前記被圧接部29の円周方向の長さLは、液晶ディスプレイ10が図9に示す第1姿勢位置である倒伏姿勢位置または図11に示す第2姿勢位置である起立姿勢位置に位置している状態で、後述する弾性片30の圧接作用部31から図10中矢印で示す揺動負荷Fを受けない長さに設定されている。また、前記被圧接部29の円周方向の長さLと、後述する弾性片30における圧接作用部31の作用位置は、液晶ディスプレイ10の揺動角度θとの関係を考慮して設定される。
【0035】
本体ハウジング4は、プリンタ本体3の上部ハウジングを構成する部材で、表面側には図2、図3に示すように、上面カバー取付け部32、ペーパーサポート取付け部33及び操作パネル取付け部34が設けられている。また、図6に示すように、本体ハウジング4の裏面側には、プリンタ本体3の下部ハウジングに本体ハウジング4を取り付けるための係止爪35と係止ボス36とが適宜の数、設けられている。この他、図3、図7、そして図9に示したように、本体ハウジング4の操作パネル取付け部34の上部の液晶ディスプレイ10の揺動基端位置には、本体ハウジング4と一体に負荷付与部20の構成部材の他の一つである弾性片30が設けられている。該弾性片30の近傍における本体ハウジング4の裏面側には、本実施例では更に、該弾性片30の弾性力を補強する別体の補助弾性片37が設けられている。
【0036】
負荷付与部20は、図10に示すように、液晶ディスプレイ10が倒伏姿勢位置と起立姿勢位置との間に位置している状態では液晶ディスプレイ10に揺動負荷Fを与え、液晶ディスプレイ10が図9に示す倒伏姿勢位置または図11に示す起立姿勢位置に位置している状態では前記揺動負荷Fを液晶ディスプレイ10に与えない構成である。具体的には、当該負荷付与部20は、前記本体ハウジング4に対して設けられている弾性片30と、前記液晶ディスプレイ10の揺動基端部のアーム部28に設けられている被圧接部29と、前記弾性片30の一部に設けられ、液晶ディスプレイ10が第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では該液晶ディスプレイ10の被圧接部29に圧接状態となり、前記液晶ディスプレイ10が第1姿勢位置と第2姿勢位置では前記被圧接部29に非圧接状態となる圧接作用部31とを備えることによって基本的に構成されている。
【0037】
弾性片30は、本体ハウジング4の前記部位から前方に向けて延びている弾性作用部38と、該弾性作用部38の自由端側に設けられる圧接作用部31とを備えることによって構成されている。弾性作用部38は、本体ハウジング4と一体の弾性撓み変形可能な湾曲した舌片状の部材によって形成されており、該弾性作用部38の上方には液晶ディスプレイ10が、図9に示す倒伏姿勢位置または図11に示す起立姿勢位置に位置している状態では、前記液晶ディスプレイ10の被圧接部29が前記揺動負荷Fから開放された自由状態で収まる収容部39が形成されている。
【0038】
圧接作用部31は、図10に示すように、液晶ディスプレイ10が倒伏姿勢位置と起立姿勢位置との間に位置している状態で液晶ディスプレイ10の被圧接部29に圧接し、液晶ディスプレイ10が図9に示す倒伏姿勢位置または図11に示す起立姿勢位置に位置している状態で液晶ディスプレイ10の被圧接部29に対する圧接状態が解除されるように構成されている。具体的には、弾性片30の自由端において、液晶ディスプレイ10側に盛り上がった部分が圧接作用部31になっており、液晶ディスプレイ10の被圧接部29の前端40が圧接作用部31に当接する時と、液晶ディスプレイ10の被圧接部29の後端41が圧接作用部31に当接する時が最も圧接作用部31の変位量が大きくなるようになっている。
【0039】
従って、これらの場合に弾性作用部38の弾性変形量も最も大きくなり、弾性作用部38の弾性変形に伴う反力によって操作者にクリック感を感じさせることができるようになっている。具体的には、図9に示す倒伏姿勢位置にある液晶ディスプレイ10が図10に示す「間の位置」に向けて揺動を開始するとき、図11に示す起立姿勢位置にある液晶ディスプレイ10が図10に示す「間の位置」に向けて揺動を開始するとき、及び図10に示す「間の位置」に存している液晶ディスプレイ10が図9に示す倒伏姿勢位置又は図11に示す起立姿勢位置に到達するときに、操作者は前記クリック感を体感し、液晶ディスプレイ10の現在の姿勢を感覚的に把握できるようになっている。
【0040】
また、図11に示すように、液晶ディスプレイ10が起立姿勢位置に位置している状態では、該液晶ディスプレイ10は、当該液晶ディスプレイ10の自重によって図9に示す倒伏姿勢になる方向に揺動しようとする傾向を構造的に有している。この時、前記被圧接部29の後端部41が弾性片30の前記圧接作用部31の先端近傍の座部(姿勢保持部)46に座して前記液晶ディスプレイ10の自重が支えられるように構成されている。一方、図9に示すように、液晶ディスプレイ10が倒伏姿勢位置に位置している状態では、液晶ディスプレイ10におけるロアハウジング23の揺動自由端側の裏面が本体ハウジング4の表面側に設けられている凸部(他の姿勢保持部)42に当接し、液晶ディスプレイ10は本体ハウジング4との間に若干の隙間を隔てた状態で水平に支持されるようになっている。
【0041】
また、図示の実施例1では、上述したように前記弾性片30の弾性力を補強するために補助弾性片37が設けられている(図6、図7、図9)。補助弾性片37は前記弾性片30を下方から支持する板バネ部材によって一例として構成されている。そして、前記補助弾性片37は、図示のように弾性片30が設けられている部位の上方の本体ハウジング4の裏面側に取付けネジ43等を用いて取り付けられている。また、補助弾性片37の自由端側は、図9に示したように、先端が幾分、丸くなるように折り曲げられており、当該折り曲げられた部分が前記弾性片30の圧接作用部31の下面に当接して下方から支承する支承作用部44になっている。
【0042】
次に、このようにして構成される本実施例1のチルト装置1の作動態様を液晶ディスプレイ10が図9に示す(1)倒伏姿勢位置にあるときと、図10に示す(2)間の位置にあるときと、図11に示す(3)起立姿勢位置にあるときの3つの場合に分けて説明する。
【0043】
(1)倒伏姿勢位置にあるとき(図9参照)
液晶ディスプレイ10が倒伏姿勢位置にあるときは、液晶ディスプレイ10は揺動支点11と前記凸部42とによって水平に支持され、図示のような倒伏姿勢が保たれている。またこの時、液晶ディスプレイ10の被圧接部29は弾性作用部38の上方の収容部39内の完全に収容された状態になっており、圧接作用部31からの揺動負荷Fは液晶ディスプレイ10の被圧接部29に作用しないようになっている。
【0044】
(2)「間の位置」にあるとき(図10参照)
液晶ディスプレイ10が「間の位置」にあるときは、液晶ディスプレイ10は揺動支点11と圧接作用部31とによって支持されており、圧接作用部31からの圧接力を受けて任意の姿勢位置に無段階に固定できるようになっている。またこの時、液晶ディスプレイ10の被圧接部29には、一様の大きさの揺動負荷Fが常時安定して作用するようになっている。
【0045】
(3)起立姿勢位置にあるとき(図11参照)
液晶ディスプレイ10を上方にいっぱいに起こすと、液晶ディスプレイ10のアッパーハウジング22の一部が図示のように操作パネル9の上端面に当接してそれ以上の揺動が規制される。そしてこの状態では、液晶ディスプレイ10の被圧接部29の後端41が弾性片30の圧接作用部31を外れ、姿勢保持部である座部46に座るようにして支持される。これにより、揺動支点11と前記座部46とによって図示のような起立姿勢が保たれるようになっている。またこの時、液晶ディスプレイ10の被圧接部29は、弾性作用部38の上方の収容部39外に完全に出た状態になっており、圧接作用部31からの揺動負荷Fは液晶ディスプレイ10の被圧接部29に作用しないようになっている。
【0046】
[実施例2]
本願発明に係るチルト装置1及び該チルト装置1を液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に適用した記録装置100は以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0047】
図12は本発明に係る実施例2を示し、液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図である。この実施例2は、補助弾性片37を設けないで弾性片30と被圧接部29とによって負荷付与部20を構成したものである。必要とされる前記揺動負荷Fの大きさを弾性片30の厚さやリブによって確保することで補助弾性片37を省くことが可能である。そして、このような構成のチルト装置1を採用した場合でも前記実施例1と同様の作用効果が奏される。
【0048】
[実施例3]
図13は本発明に係る実施例3を示し、液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図である。この実施例3は、液晶ディスプレイ10の揺動基端側に設けた弾性片30を排除し、当初補助弾性片37が設けられていた個所に本体ハウジング4と一体の他の弾性片45を設けたものである。
この構造によって、前記収納部39はオープン構造となり、製造公差から解放されると共に、組み付け性が向上する。そして、このような構成のチルト装置1を採用した場合でも前記実施例1と同様の作用効果が奏される。
【0049】
[他の実施例]
本願発明に係るチルト装置1及び該チルト装置1を液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に適用した記録装置100は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0050】
本発明のチルト装置1は、汎用タイプの中型のインクジェットプリンタ100に限らず、持ち運びができる小型のインクジェットプリンタ100や大判のロール紙等に記録の実行ができる大型のインクジェットプリンタ100に対して適用することが可能である。
【0051】
更に、本発明のチルト装置1は、ラインプリンタ、レーザープリンタや複写機等の他の記録装置や電話機、ファクシミリ、あるいはデジタルビデオカメラ等、記録装置以外の種々の電子機器に対して適用することも可能である。
【0052】
また、液晶ディスプレイ10の取る第1姿勢と第2姿勢は必ずしも前記実施例のような倒伏姿勢と起立姿勢に限らず種々の姿勢が選択でき、液晶ディスプレイ10の揺動方向も上下方向に限らず左右方向等、他の方向であっても構わない。また、揺動体は液晶ディスプレイ10に限らず、同様の目的で使用される種々の揺動部材に拡大することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図。
【図2】実施例1のチルト装置を備えたプリンタの上面カバーを取り外した状態の斜視図。
【図3】同プリンタの操作パネル及び液晶ディスプレイの取付け部位周辺を拡大して示す分解斜視図。
【図4】同プリンタの液晶ディスプレイを拡大して示す斜視図。
【図5】同プリンタの液晶ディスプレイの分解斜視図。
【図6】図6は同プリンタの本体ハウジングを裏返した状態の斜視図。
【図7】同プリンタの操作パネル及び液晶ディスプレイの取付け部位周辺を拡大して示す斜視図。
【図8】同プリンタのチルト装置周辺を拡大して示す裏面側からの斜視図。
【図9】同プリンタの液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【図10】同プリンタの液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置と起立姿勢位置との間の位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【図11】同プリンタの液晶ディスプレイが起立姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【図12】実施例2の液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【図13】実施例3の液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【符号の説明】
【0054】
1 チルト装置、3 プリンタ本体(記録装置本体)、4 本体ハウジング(支持部材)、5 給送用トレイ、6 ペーパーサポート、7 上面カバー、8a、8b、8c、・・・8n 操作スイッチ、9 操作パネル(支持部材)、10 液晶ディスプレイ(揺動体)、11 揺動支点、12 軸受部、15 エッジガイド、20 負荷付与部、21 カバー、22 アッパーハウジング、23 ロアハウジング、24 窓部、25 係止爪、26 係止部、27 軸部、28 アーム部、29 被圧接部、30 弾性片、31 圧接作用部、32 上面カバー取付け部、33 ペーパーサポート取付け部、34 操作パネル取付け部、35 係止爪、36 係止ボス、37 補助弾性片、38 弾性作用部、39 収容部、40 前端、41 後端、42 凸部、43 取付けネジ、44 支承作用部、45 他の弾性片、46 座部、100 インクジェットプリンタ(記録装置)、P 用紙(被記録材)、R 半径、L 円周方向の長さ、F 揺動負荷、θ 揺動角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動支点に対して揺動して第1姿勢と第2姿勢とを取り、且つ前記第1姿勢と第2姿勢との間の姿勢も取り得る揺動体と、前記揺動体を揺動可能な状態で支持する支持部材とを備えたチルト装置及び該チルト装置を液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用した記録装置等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
小型のレジスタ、電卓、カーナビゲーション、電話機、プリンタ、ファクシミリ、デジタルビデオカメラ等の電子機器の中には液晶ディスプレイの角度を自由に変えることができるチルト装置を備えたものが多く存在する。従来のチルト装置は、下記の特許文献1及び特許文献2に示すように、揺動体である液晶ディスプレイと、該液晶ディスプレイの支持部材である本体ハウジングとの間に液晶ディスプレイの姿勢位置に関係なく、常時負荷付与状態にある摩擦部材や付勢部材によって構成される負荷付与部が設けられていた。
【0003】
しかしながら、このような負荷付与部は、常時負荷付与状態にあるのでクリープ変形等の経時的劣化が起こり易く、短期間で必要な大きさの負荷を付与できなくなる虞があった。
【0004】
また、常時負荷付与状態にある前記負荷付与部を適用した従来のチルト装置の場合には、液晶ディスプレイが完全に正規の倒伏姿勢又は起立姿勢になっているか否かの把握が難しい問題があった。
【特許文献1】特開2003−110248号公報
【特許文献2】特開2003−148450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような背景技術の問題点の存在を踏まえてなされたものであって、負荷付与部の経時的劣化の虞を低減して長期間に亘る使用に耐えられるようにしたチルト装置及び該チルト装置を液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の第1の態様に係るチルト装置は、揺動支点に対して揺動して第1姿勢と第2姿勢との間で揺動変位可能な揺動体と、前記揺動体を揺動可能な状態で支持する支持部材と、前記揺動体と前記支持部材との間に設けられ、前記揺動体が前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、該揺動体に揺動可能で且つ揺動力がかからない状態では任意の姿勢位置で静止可能にする揺動負荷を与え、前記揺動体の第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方は前記揺動負荷の及ぶ範囲外となる構成の負荷付与部と、前記負荷付与部の揺動負荷の及ぶ範囲外に位置する揺動体の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
本態様によれば、揺動体が第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、負荷付与部から該揺動体に揺動負荷が作用するので、該揺動体は前記揺動負荷によって例えば無段階に姿勢を変化させて任意の位置に固定され得る。一方、揺動体が第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方では、該揺動体に揺動負荷はかからないので、従来のような常時揺動負荷がかかっている場合に問題となっていた経時的劣化の虞を低減できる。すなわち、必要な大きさの揺動負荷を安定して揺動体に付与し続けることが可能になる。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るチルト装置において、前記負荷付与部は、前記支持部材に設けられている弾性片と、前記揺動体の揺動基端部に設けられている被圧接部と、前記弾性片の一部に設けられ、前記揺動体が第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では揺動体の前記被圧接部に圧接状態となり、前記揺動体が第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方では前記被圧接部に非圧接状態となる圧接作用部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本態様によれば、第1の態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。当該負荷付与部は、前記支持部材側に設けられる前記弾性片と、揺動体の基端部に設けられる被圧接部と、前記弾性片の一部に設けられた圧接作用部とを備えて構成されているので、前記揺動負荷の付与・非付与の切り替えを、部品点数が少なく、構造が簡単で且つ安価に実現するこことができる。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様に係るチルト装置において、前記弾性片の他部に、前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態のときに揺動体の前記被圧接部が前記揺動負荷から自由状態で収まる収容部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本態様によれば、第2の態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。前記弾性片の他部に収容部を設けて、該収容部に前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態のときに揺動体の前記被圧接部を、前記揺動負荷から自由状態で収容する構成にしたので、その姿勢位置を安定性良く維持することができる。
特に、揺動体の前記被圧接部が当該収容部に収容されている状態を脱するときに、前記圧接作用部との圧接状態に移行する構造にすることができるので、効率的な構造となって、無駄なスペースを発生させずにコンパクト化を容易に実現することができる。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記第2または第3の態様に係るチルト装置において、前記圧接作用部は前記弾性片の自由端において前記揺動体側に盛り上がった部分に設けられ、該圧接作用部は、前記揺動体の前記被圧接部の揺動方向における前端が該圧接作用部に当接する時と、前記揺動体の前記被圧接部の揺動方向における後端が該圧接作用部に当接する時に最も変位量が大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本態様によれば、第2の態様又は第3の態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。第1姿勢位置または第2姿勢位置に存している揺動体がその位置から移動を開始する際、更に揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に到達する際に、圧接作用部が最も大きく変位するように構成されているので、クリック感を発生させることができる。従って、操作者は感覚的に揺動体の現在の姿勢を把握することができ、チルト装置の操作性が向上して良好な操作感が得られるようになる。
【0014】
本発明の第5の態様は、前記第2の態様〜第4の態様のいずれか1つの態様に係るチルト装置において、前記揺動体は、第2姿勢位置に位置しているときには該揺動体の自重によって第1姿勢位置に向けて揺動しようとする傾向を有しており、前記姿勢保持部は、前記弾性片の自由端に設けられ、前記揺動体の被圧接部の端部が座して前記揺動体の自重を支える座部によって構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、第2の態様〜第4の態様のいずれか1つの態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。揺動体は第2姿勢位置に位置しているとき、揺動負荷は受けていないが、該揺動体の前記被圧接部の端部が前記弾性片に設けられている座部に座して当接するので、揺動体の第2姿勢位置を構造簡単にして確実に保つことができる。
【0016】
本発明の第6の態様は、前記第2の態様〜第5の態様のいずれか1つの態様に係るチルト装置において、前記揺動体の被圧接部は、揺動支点を中心とする同一半径の円弧曲面に形成されており、該円弧曲面の円周方向の長さは、前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態で前記弾性片から揺動負荷を受けない長さに設定されていることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、第2の態様〜第5の態様のいずれか1つの態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。前記揺動体の被圧接部は、揺動支点を中心とする同一半径の円弧曲面に形成されているので、揺動体が第1姿勢位置と第2姿勢位置の間に位置しているときには該揺動体の被圧接部に常に一定の揺動負荷が作用するようになり、安定性と操作性を向上することができる。
【0018】
本発明の第7の態様は、前記第1〜第6のいずれか1つの態様に係るチルト装置において、前記弾性片は、前記支持部材の前記揺動体の揺動基端部側に位置する部位から延びる前記支持部材と一体の弾性撓み変形可能な舌片状部材であることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、第1の態様〜第6の態様のいずれか1つの態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。前記弾性片は、前記支持部材の前記揺動体の揺動基端部側に位置する部位から延びる前記支持部材と一体の弾性撓み変形可能な舌片状部材であるので、当該弾性片によって揺動体の揺動基端部が被覆され、揺動支点へのゴミ等の侵入と付着が防止され、揺動体の円滑な揺動が確保される。また、部品点数を増やすことなく、簡単な構造で弾性片を構成でき、チルト装置のコンパクト化と製品コストの削減に寄与し得る。
【0020】
本発明の第8の態様は、前記第1〜第7のいずれか1つの態様に係るチルト装置において、前記支持部材には、前記弾性片と、該弾性片の弾性力を補強するために前記弾性片を下方から支持する補助弾性片とが設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、第1の態様〜第7の態様のいずれか1つの態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。前記支持部材には、前記弾性片と、該弾性片の弾性力を補強するために前記弾性片を下方から支持する補助弾性片とが設けられているので、構造的に弾性片の弾性力を増強できないような場合でも、当該補助弾性片によって実質的に弾性片の弾性力を増強して所望の揺動負荷を得ることが可能になる。また弾性片を大型化することなく、大型の揺動体にも対応できるチルト装置を提供することが可能になる。
【0022】
本発明の第9の態様に係る電子機器は、各種の情報が表示される液晶ディスプレイと、前記液晶ディスプレイが取り付けられる本体ハウジングと、前記液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用され、前記液晶ディスプレイを揺動支点に対して揺動させ、第1姿勢と第2姿勢とを取り、且つ前記第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢も取り得るチルト装置とを備え、前記チルト装置は、前記液晶ディスプレイが前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、該液晶ディスプレイに揺動可能で且つ揺動力がかからない状態では任意の姿勢位置で静止可能にする揺動負荷を与え、前記液晶ディスプレイの第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方は前記揺動負荷の及ぶ範囲外となる構成の負荷付与部と、前記負荷付与部の揺動負荷の及ぶ範囲外に位置する液晶ディスプレイの姿勢を保持する姿勢保持部と、を備えていることを特徴とするものである。本態様によれば、チルト装置を備えるプリンタ等の電子機器において、前記各態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
本発明の第10の態様は、前記第9の態様の電子機器において、前記圧接作用部は前記液晶ディスプレイの自由端において前記液晶ディスプレイ側に盛り上がった部分に設けられ、該圧接作用部は、前記液晶ディスプレイの前記被圧接部の揺動方向における前端が該圧接作用部に当接する時と、前記液晶ディスプレイの前記被圧接部の揺動方向における後端が該圧接作用部に当接する時に最も変位量が大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
本態様によれば、第1姿勢位置または第2姿勢位置に存している液晶ディスプレイがその位置から移動を開始する際、更に液晶ディスプレイが第1姿勢位置または第2姿勢位置に到達する際に、圧接作用部が最も大きく変位するように構成されているので、クリック感を発生することができる。従って、操作者は感覚的に液晶ディスプレイの現在の姿勢を把握することができ、操作性が向上して良好な操作感が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本願発明に係るチルト装置及び該チルト装置を液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用した電子機器の一例である記録装置について説明する。最初に本願発明の記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1はインクジェットプリンタの外観を示す左斜め前方からの斜視図である。尚、ここで説明するインクジェットプリンタ100は、例えばA4サイズ以下の被記録材(本明細書において用紙ともいう)Pを対象にした汎用タイプの中型のインクジェットプリンタである。このタイプに限定されないことは勿論である。このインクジェットプリンタ100は、記録装置本体の一例であるプリンタ本体3を備え、該プリンタ本体3の上部に本体ハウジング4を備えている。また、本体ハウジング4の後部寄りの上部には、給送用トレイ5上に積畳された最下位の用紙Pの裏面を支承する折り畳み式のペーパーサポート6が設けられている。そして、給送用トレイ5上に積畳された用紙Pは左右のエッジをエッジガイド15によって案内されて図示しない給送用ローラとホッパとの挟圧送り作用によって1枚ずつ連続的に自動給送される。
【0027】
本体ハウジング4の上面には、上下方向に開閉できる回動式の上面カバー7が設けられている。また、該上面カバー7の一例として向かって左側の側傍に各種の操作スイッチ8a、8b、8c、・・・8nが配置された操作パネル9と、前記操作スイッチ8a、8b、8c、・・・8nによる操作に基づいて、用紙サイズ、用紙の種類、印刷枚数等、各種の情報が表示される液晶ディスプレイ10とが設けられている。そして、前記液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に、後述する本発明のチルト装置1が設けられており、当該チルト装置1の作用によって液晶ディスプレイ10は、揺動支点11を中心にして揺動し、第1姿勢である倒伏姿勢と第2姿勢である起立姿勢とを切り替え、前記倒伏姿勢と起立姿勢との間で例えば無段階に姿勢を変えて固定し得るように構成されている。
【0028】
また、自動給送された用紙Pは、搬送用駆動ローラと搬送用従動ローラとの一対のニップローラによって構成されている図示しない搬送用ローラに供給され、該搬送用ローラの搬送力によって記録ポジションに導かれる。記録ポジションには記録実行手段である図示しない記録ヘッド、用紙Pの下面を支承して記録ヘッドとの間のギャップを規定する図示しないプラテン等がそれぞれ設けられている。そして、記録が実行された用紙Pは、排出用駆動ローラと排出用従動ローラとの一対のニップローラによって構成されている図示しない排出用ローラによって用紙搬送方向の下流端に設けられている図示しない排出用スタッカの載置面上に排出され、スタックされるように構成されている。
【0029】
[実施例1]
次に、このようにして構成されるインクジェットプリンタ100の液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に一例として適用される本発明に係る実施例1のチルト装置1について図面に基づいて具体的に説明する。
【0030】
図2は実施例1のチルト装置を備えたプリンタの上面カバーを取り外した状態の本体ハウジング、操作パネル及び液晶ディスプレイを示す右斜め前方からの斜視図、図3は同プリンタの操作パネル及び液晶ディスプレイの取付け部位周辺を拡大して示す分解斜視図である。図4は同プリンタの液晶ディスプレイを拡大して示す斜視図、図5は同プリンタの液晶ディスプレイの分解斜視図である。図6は同プリンタの本体ハウジングを裏返した状態の斜視図、図7は同プリンタの操作パネル及び液晶ディスプレイの取付け部位周辺を拡大して示す斜視図である。図8は同プリンタのチルト装置周辺を拡大して示す裏面側からの斜視図、図9は同プリンタの液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図である。また図10は同プリンタの液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置と起立姿勢位置との間の位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図、図11は同プリンタの液晶ディスプレイが起立姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図である。
【0031】
本実施例1のチルト装置1は、揺動体である液晶ディスプレイ10と、支持部材である本体ハウジング4及び操作パネル9と、前記液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に設けられる負荷付与部20とを備えることによって基本的に構成されている。
【0032】
図4と図5に示すように、液晶ディスプレイ10は、透過性材料によって構成されるカバー21と、該カバー21が取り付けられるアッパーハウジング22と、該アッパーハウジング22の下方に取り付けられるロアハウジング23と、前記アッパーハウジング22及びロアハウジング23によって挟まれるようにこれらの内部空間に配置される図示しない液晶等を備えることによって構成されている。
【0033】
アッパーハウジング22には、液晶を視認するための窓部24と、ロアハウジング23に係止するための係止爪25が適宜の数、設けられている。ロアハウジング23には前記アッパーハウジング22の係止爪25に係止される係止部26と、揺動支点11となる軸部27と、ロアハウジング23の本体と前記軸部27とを接続する湾曲したアーム部28とが設けられている。そして、前記軸部27とアーム部28は、ロアハウジング23の本体の幅寸法内に収まるように形成されており、プリンタ本体3の幅寸法の減少ないし小型化を容易にしている。尚、前記軸部27は、操作パネル9の裏面側に設けられている図8に示す軸受部12によって揺動自在に軸支されている。
【0034】
図9に示したように、アーム部28の外周面は、負荷付与部20の構成部材の1つである被圧接部29になっており、軸部27によって構成されている前記揺動支点11を中心とする同一半径Rの円弧曲面によって一例として構成されている。そして、前記被圧接部29の円周方向の長さLは、液晶ディスプレイ10が図9に示す第1姿勢位置である倒伏姿勢位置または図11に示す第2姿勢位置である起立姿勢位置に位置している状態で、後述する弾性片30の圧接作用部31から図10中矢印で示す揺動負荷Fを受けない長さに設定されている。また、前記被圧接部29の円周方向の長さLと、後述する弾性片30における圧接作用部31の作用位置は、液晶ディスプレイ10の揺動角度θとの関係を考慮して設定される。
【0035】
本体ハウジング4は、プリンタ本体3の上部ハウジングを構成する部材で、表面側には図2、図3に示すように、上面カバー取付け部32、ペーパーサポート取付け部33及び操作パネル取付け部34が設けられている。また、図6に示すように、本体ハウジング4の裏面側には、プリンタ本体3の下部ハウジングに本体ハウジング4を取り付けるための係止爪35と係止ボス36とが適宜の数、設けられている。この他、図3、図7、そして図9に示したように、本体ハウジング4の操作パネル取付け部34の上部の液晶ディスプレイ10の揺動基端位置には、本体ハウジング4と一体に負荷付与部20の構成部材の他の一つである弾性片30が設けられている。該弾性片30の近傍における本体ハウジング4の裏面側には、本実施例では更に、該弾性片30の弾性力を補強する別体の補助弾性片37が設けられている。
【0036】
負荷付与部20は、図10に示すように、液晶ディスプレイ10が倒伏姿勢位置と起立姿勢位置との間に位置している状態では液晶ディスプレイ10に揺動負荷Fを与え、液晶ディスプレイ10が図9に示す倒伏姿勢位置または図11に示す起立姿勢位置に位置している状態では前記揺動負荷Fを液晶ディスプレイ10に与えない構成である。具体的には、当該負荷付与部20は、前記本体ハウジング4に対して設けられている弾性片30と、前記液晶ディスプレイ10の揺動基端部のアーム部28に設けられている被圧接部29と、前記弾性片30の一部に設けられ、液晶ディスプレイ10が第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では該液晶ディスプレイ10の被圧接部29に圧接状態となり、前記液晶ディスプレイ10が第1姿勢位置と第2姿勢位置では前記被圧接部29に非圧接状態となる圧接作用部31とを備えることによって基本的に構成されている。
【0037】
弾性片30は、本体ハウジング4の前記部位から前方に向けて延びている弾性作用部38と、該弾性作用部38の自由端側に設けられる圧接作用部31とを備えることによって構成されている。弾性作用部38は、本体ハウジング4と一体の弾性撓み変形可能な湾曲した舌片状の部材によって形成されており、該弾性作用部38の上方には液晶ディスプレイ10が、図9に示す倒伏姿勢位置または図11に示す起立姿勢位置に位置している状態では、前記液晶ディスプレイ10の被圧接部29が前記揺動負荷Fから開放された自由状態で収まる収容部39が形成されている。
【0038】
圧接作用部31は、図10に示すように、液晶ディスプレイ10が倒伏姿勢位置と起立姿勢位置との間に位置している状態で液晶ディスプレイ10の被圧接部29に圧接し、液晶ディスプレイ10が図9に示す倒伏姿勢位置または図11に示す起立姿勢位置に位置している状態で液晶ディスプレイ10の被圧接部29に対する圧接状態が解除されるように構成されている。具体的には、弾性片30の自由端において、液晶ディスプレイ10側に盛り上がった部分が圧接作用部31になっており、液晶ディスプレイ10の被圧接部29の前端40が圧接作用部31に当接する時と、液晶ディスプレイ10の被圧接部29の後端41が圧接作用部31に当接する時が最も圧接作用部31の変位量が大きくなるようになっている。
【0039】
従って、これらの場合に弾性作用部38の弾性変形量も最も大きくなり、弾性作用部38の弾性変形に伴う反力によって操作者にクリック感を感じさせることができるようになっている。具体的には、図9に示す倒伏姿勢位置にある液晶ディスプレイ10が図10に示す「間の位置」に向けて揺動を開始するとき、図11に示す起立姿勢位置にある液晶ディスプレイ10が図10に示す「間の位置」に向けて揺動を開始するとき、及び図10に示す「間の位置」に存している液晶ディスプレイ10が図9に示す倒伏姿勢位置又は図11に示す起立姿勢位置に到達するときに、操作者は前記クリック感を体感し、液晶ディスプレイ10の現在の姿勢を感覚的に把握できるようになっている。
【0040】
また、図11に示すように、液晶ディスプレイ10が起立姿勢位置に位置している状態では、該液晶ディスプレイ10は、当該液晶ディスプレイ10の自重によって図9に示す倒伏姿勢になる方向に揺動しようとする傾向を構造的に有している。この時、前記被圧接部29の後端部41が弾性片30の前記圧接作用部31の先端近傍の座部(姿勢保持部)46に座して前記液晶ディスプレイ10の自重が支えられるように構成されている。一方、図9に示すように、液晶ディスプレイ10が倒伏姿勢位置に位置している状態では、液晶ディスプレイ10におけるロアハウジング23の揺動自由端側の裏面が本体ハウジング4の表面側に設けられている凸部(他の姿勢保持部)42に当接し、液晶ディスプレイ10は本体ハウジング4との間に若干の隙間を隔てた状態で水平に支持されるようになっている。
【0041】
また、図示の実施例1では、上述したように前記弾性片30の弾性力を補強するために補助弾性片37が設けられている(図6、図7、図9)。補助弾性片37は前記弾性片30を下方から支持する板バネ部材によって一例として構成されている。そして、前記補助弾性片37は、図示のように弾性片30が設けられている部位の上方の本体ハウジング4の裏面側に取付けネジ43等を用いて取り付けられている。また、補助弾性片37の自由端側は、図9に示したように、先端が幾分、丸くなるように折り曲げられており、当該折り曲げられた部分が前記弾性片30の圧接作用部31の下面に当接して下方から支承する支承作用部44になっている。
【0042】
次に、このようにして構成される本実施例1のチルト装置1の作動態様を液晶ディスプレイ10が図9に示す(1)倒伏姿勢位置にあるときと、図10に示す(2)間の位置にあるときと、図11に示す(3)起立姿勢位置にあるときの3つの場合に分けて説明する。
【0043】
(1)倒伏姿勢位置にあるとき(図9参照)
液晶ディスプレイ10が倒伏姿勢位置にあるときは、液晶ディスプレイ10は揺動支点11と前記凸部42とによって水平に支持され、図示のような倒伏姿勢が保たれている。またこの時、液晶ディスプレイ10の被圧接部29は弾性作用部38の上方の収容部39内の完全に収容された状態になっており、圧接作用部31からの揺動負荷Fは液晶ディスプレイ10の被圧接部29に作用しないようになっている。
【0044】
(2)「間の位置」にあるとき(図10参照)
液晶ディスプレイ10が「間の位置」にあるときは、液晶ディスプレイ10は揺動支点11と圧接作用部31とによって支持されており、圧接作用部31からの圧接力を受けて任意の姿勢位置に無段階に固定できるようになっている。またこの時、液晶ディスプレイ10の被圧接部29には、一様の大きさの揺動負荷Fが常時安定して作用するようになっている。
【0045】
(3)起立姿勢位置にあるとき(図11参照)
液晶ディスプレイ10を上方にいっぱいに起こすと、液晶ディスプレイ10のアッパーハウジング22の一部が図示のように操作パネル9の上端面に当接してそれ以上の揺動が規制される。そしてこの状態では、液晶ディスプレイ10の被圧接部29の後端41が弾性片30の圧接作用部31を外れ、姿勢保持部である座部46に座るようにして支持される。これにより、揺動支点11と前記座部46とによって図示のような起立姿勢が保たれるようになっている。またこの時、液晶ディスプレイ10の被圧接部29は、弾性作用部38の上方の収容部39外に完全に出た状態になっており、圧接作用部31からの揺動負荷Fは液晶ディスプレイ10の被圧接部29に作用しないようになっている。
【0046】
[実施例2]
本願発明に係るチルト装置1及び該チルト装置1を液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に適用した記録装置100は以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0047】
図12は本発明に係る実施例2を示し、液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図である。この実施例2は、補助弾性片37を設けないで弾性片30と被圧接部29とによって負荷付与部20を構成したものである。必要とされる前記揺動負荷Fの大きさを弾性片30の厚さやリブによって確保することで補助弾性片37を省くことが可能である。そして、このような構成のチルト装置1を採用した場合でも前記実施例1と同様の作用効果が奏される。
【0048】
[実施例3]
図13は本発明に係る実施例3を示し、液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図である。この実施例3は、液晶ディスプレイ10の揺動基端側に設けた弾性片30を排除し、当初補助弾性片37が設けられていた個所に本体ハウジング4と一体の他の弾性片45を設けたものである。
この構造によって、前記収納部39はオープン構造となり、製造公差から解放されると共に、組み付け性が向上する。そして、このような構成のチルト装置1を採用した場合でも前記実施例1と同様の作用効果が奏される。
【0049】
[他の実施例]
本願発明に係るチルト装置1及び該チルト装置1を液晶ディスプレイ10と本体ハウジング4との間に適用した記録装置100は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0050】
本発明のチルト装置1は、汎用タイプの中型のインクジェットプリンタ100に限らず、持ち運びができる小型のインクジェットプリンタ100や大判のロール紙等に記録の実行ができる大型のインクジェットプリンタ100に対して適用することが可能である。
【0051】
更に、本発明のチルト装置1は、ラインプリンタ、レーザープリンタや複写機等の他の記録装置や電話機、ファクシミリ、あるいはデジタルビデオカメラ等、記録装置以外の種々の電子機器に対して適用することも可能である。
【0052】
また、液晶ディスプレイ10の取る第1姿勢と第2姿勢は必ずしも前記実施例のような倒伏姿勢と起立姿勢に限らず種々の姿勢が選択でき、液晶ディスプレイ10の揺動方向も上下方向に限らず左右方向等、他の方向であっても構わない。また、揺動体は液晶ディスプレイ10に限らず、同様の目的で使用される種々の揺動部材に拡大することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図。
【図2】実施例1のチルト装置を備えたプリンタの上面カバーを取り外した状態の斜視図。
【図3】同プリンタの操作パネル及び液晶ディスプレイの取付け部位周辺を拡大して示す分解斜視図。
【図4】同プリンタの液晶ディスプレイを拡大して示す斜視図。
【図5】同プリンタの液晶ディスプレイの分解斜視図。
【図6】図6は同プリンタの本体ハウジングを裏返した状態の斜視図。
【図7】同プリンタの操作パネル及び液晶ディスプレイの取付け部位周辺を拡大して示す斜視図。
【図8】同プリンタのチルト装置周辺を拡大して示す裏面側からの斜視図。
【図9】同プリンタの液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【図10】同プリンタの液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置と起立姿勢位置との間の位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【図11】同プリンタの液晶ディスプレイが起立姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【図12】実施例2の液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【図13】実施例3の液晶ディスプレイが倒伏姿勢位置にある時のチルト装置の作動態様を示す側断面図。
【符号の説明】
【0054】
1 チルト装置、3 プリンタ本体(記録装置本体)、4 本体ハウジング(支持部材)、5 給送用トレイ、6 ペーパーサポート、7 上面カバー、8a、8b、8c、・・・8n 操作スイッチ、9 操作パネル(支持部材)、10 液晶ディスプレイ(揺動体)、11 揺動支点、12 軸受部、15 エッジガイド、20 負荷付与部、21 カバー、22 アッパーハウジング、23 ロアハウジング、24 窓部、25 係止爪、26 係止部、27 軸部、28 アーム部、29 被圧接部、30 弾性片、31 圧接作用部、32 上面カバー取付け部、33 ペーパーサポート取付け部、34 操作パネル取付け部、35 係止爪、36 係止ボス、37 補助弾性片、38 弾性作用部、39 収容部、40 前端、41 後端、42 凸部、43 取付けネジ、44 支承作用部、45 他の弾性片、46 座部、100 インクジェットプリンタ(記録装置)、P 用紙(被記録材)、R 半径、L 円周方向の長さ、F 揺動負荷、θ 揺動角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動支点に対して揺動して第1姿勢と第2姿勢との間で揺動変位可能な揺動体と、
前記揺動体を揺動可能な状態で支持する支持部材と、
前記揺動体と前記支持部材との間に設けられ、前記揺動体が前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、該揺動体に揺動可能で且つ揺動力がかからない状態では任意の姿勢位置で静止可能にする揺動負荷を与え、前記揺動体の第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方は前記揺動負荷の及ぶ範囲外となる構成の負荷付与部と、
前記負荷付与部の揺動負荷の及ぶ範囲外に位置する揺動体の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備えていることを特徴とするチルト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のチルト装置において、
前記負荷付与部は、
前記支持部材に設けられている弾性片と、
前記揺動体の揺動基端部に設けられている被圧接部と、
前記弾性片の一部に設けられ、前記揺動体が第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では揺動体の前記被圧接部に圧接状態となり、前記揺動体が第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方では前記被圧接部に非圧接状態となる圧接作用部と、を備えていることを特徴とするチルト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のチルト装置において、
前記弾性片の他部に、前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態のときに揺動体の前記被圧接部が前記揺動負荷から自由状態で収まる収容部が設けられていることを特徴とするチルト装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のチルト装置において、
前記圧接作用部は前記弾性片の自由端において前記揺動体側に盛り上がった部分に設けられ、
該圧接作用部は、前記揺動体の前記被圧接部の揺動方向における前端が該圧接作用部に当接する時と、前記揺動体の前記被圧接部の揺動方向における後端が該圧接作用部に当接する時に最も変位量が大きくなるように構成されていることを特徴とするチルト装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載のチルト装置において、
前記揺動体は、第2姿勢位置に位置しているときには該揺動体の自重によって第1姿勢位置に向けて揺動しようとする傾向を有しており、前記姿勢保持部は、前記弾性片の自由端に設けられ、前記揺動体の被圧接部の端部が座して前記揺動体の自重を支える座部によって構成されていることを特徴とするチルト装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のチルト装置において、
前記揺動体の被圧接部は、揺動支点を中心とする同一半径の円弧曲面に形成されており、該円弧曲面の円周方向の長さは、前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態で前記弾性片から揺動負荷を受けない長さに設定されていることを特徴とするチルト装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のチルト装置において、
前記弾性片は、前記支持部材の前記揺動体の揺動基端部側に位置する部位から延びる前記支持部材と一体の弾性撓み変形可能な舌片状部材であることを特徴とするチルト装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のチルト装置において、
前記支持部材には、前記弾性片と、該弾性片の弾性力を補強するために前記弾性片を下方から支持する補助弾性片と、が設けられていることを特徴とするチルト装置。
【請求項9】
各種の情報が表示される液晶ディスプレイと、
前記液晶ディスプレイが取り付けられる本体ハウジングと、
前記液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用され、前記液晶ディスプレイを揺動支点に対して揺動させ、第1姿勢と第2姿勢とを取り、且つ前記第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢も取り得るチルト装置と、を備え、
前記チルト装置は、
前記液晶ディスプレイが前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、該液晶ディスプレイに揺動可能で且つ揺動力がかからない状態では任意の姿勢位置で静止可能にする揺動負荷を与え、前記液晶ディスプレイの第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方は前記揺動負荷の及ぶ範囲外となる構成の負荷付与部と、
前記負荷付与部の揺動負荷の及ぶ範囲外に位置する液晶ディスプレイの姿勢を保持する姿勢保持部と、を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電子機器において、
前記圧接作用部は前記液晶ディスプレイの自由端において前記液晶ディスプレイ側に盛り上がった部分に設けられ、
該圧接作用部は、前記液晶ディスプレイの前記被圧接部の揺動方向における前端が該圧接作用部に当接する時と、前記液晶ディスプレイの前記被圧接部の揺動方向における後端が該圧接作用部に当接する時に最も変位量が大きくなるように構成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
揺動支点に対して揺動して第1姿勢と第2姿勢との間で揺動変位可能な揺動体と、
前記揺動体を揺動可能な状態で支持する支持部材と、
前記揺動体と前記支持部材との間に設けられ、前記揺動体が前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、該揺動体に揺動可能で且つ揺動力がかからない状態では任意の姿勢位置で静止可能にする揺動負荷を与え、前記揺動体の第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方は前記揺動負荷の及ぶ範囲外となる構成の負荷付与部と、
前記負荷付与部の揺動負荷の及ぶ範囲外に位置する揺動体の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備えていることを特徴とするチルト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のチルト装置において、
前記負荷付与部は、
前記支持部材に設けられている弾性片と、
前記揺動体の揺動基端部に設けられている被圧接部と、
前記弾性片の一部に設けられ、前記揺動体が第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では揺動体の前記被圧接部に圧接状態となり、前記揺動体が第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方では前記被圧接部に非圧接状態となる圧接作用部と、を備えていることを特徴とするチルト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のチルト装置において、
前記弾性片の他部に、前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態のときに揺動体の前記被圧接部が前記揺動負荷から自由状態で収まる収容部が設けられていることを特徴とするチルト装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のチルト装置において、
前記圧接作用部は前記弾性片の自由端において前記揺動体側に盛り上がった部分に設けられ、
該圧接作用部は、前記揺動体の前記被圧接部の揺動方向における前端が該圧接作用部に当接する時と、前記揺動体の前記被圧接部の揺動方向における後端が該圧接作用部に当接する時に最も変位量が大きくなるように構成されていることを特徴とするチルト装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載のチルト装置において、
前記揺動体は、第2姿勢位置に位置しているときには該揺動体の自重によって第1姿勢位置に向けて揺動しようとする傾向を有しており、前記姿勢保持部は、前記弾性片の自由端に設けられ、前記揺動体の被圧接部の端部が座して前記揺動体の自重を支える座部によって構成されていることを特徴とするチルト装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のチルト装置において、
前記揺動体の被圧接部は、揺動支点を中心とする同一半径の円弧曲面に形成されており、該円弧曲面の円周方向の長さは、前記揺動体が第1姿勢位置または第2姿勢位置に位置している状態で前記弾性片から揺動負荷を受けない長さに設定されていることを特徴とするチルト装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のチルト装置において、
前記弾性片は、前記支持部材の前記揺動体の揺動基端部側に位置する部位から延びる前記支持部材と一体の弾性撓み変形可能な舌片状部材であることを特徴とするチルト装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のチルト装置において、
前記支持部材には、前記弾性片と、該弾性片の弾性力を補強するために前記弾性片を下方から支持する補助弾性片と、が設けられていることを特徴とするチルト装置。
【請求項9】
各種の情報が表示される液晶ディスプレイと、
前記液晶ディスプレイが取り付けられる本体ハウジングと、
前記液晶ディスプレイと本体ハウジングとの間に適用され、前記液晶ディスプレイを揺動支点に対して揺動させ、第1姿勢と第2姿勢とを取り、且つ前記第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢も取り得るチルト装置と、を備え、
前記チルト装置は、
前記液晶ディスプレイが前記第1姿勢と第2姿勢との間に位置している状態では、該液晶ディスプレイに揺動可能で且つ揺動力がかからない状態では任意の姿勢位置で静止可能にする揺動負荷を与え、前記液晶ディスプレイの第1姿勢位置と第2姿勢位置の少なくとも一方は前記揺動負荷の及ぶ範囲外となる構成の負荷付与部と、
前記負荷付与部の揺動負荷の及ぶ範囲外に位置する液晶ディスプレイの姿勢を保持する姿勢保持部と、を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電子機器において、
前記圧接作用部は前記液晶ディスプレイの自由端において前記液晶ディスプレイ側に盛り上がった部分に設けられ、
該圧接作用部は、前記液晶ディスプレイの前記被圧接部の揺動方向における前端が該圧接作用部に当接する時と、前記液晶ディスプレイの前記被圧接部の揺動方向における後端が該圧接作用部に当接する時に最も変位量が大きくなるように構成されていることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−47307(P2009−47307A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183663(P2008−183663)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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