説明

テーブル付き椅子

【課題】テーブルを使用位置としたまま椅子を回動させても、テーブルが客室の側壁や通路の客等に接触する恐れがなく、かつテーブルの物品の載置面積を十分に確保しうるようにしたテーブル付き椅子を提供する。
【解決手段】鉄道車両等の床面に、水平回動可能に取り付けられた椅子1における座体側部の肘掛け4に、テーブル5を、肘掛け4に格納された不使用位置から、座体2の前部上方において水平をなす使用位置まで移動しうるように取付けてなるテーブル付き椅子において、テーブル5の使用位置における平面形を、椅子1の最大回動軌跡の円C内に収まる形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両等の客室に、前向きと後向きとに、180°水平回動可能に設置された椅子に係わり、特に、座体側部の肘掛けに、テーブルを、不使用位置と使用位置とに移動可能に取付けてなるテーブル付き椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等の客室等に設置される椅子の中には、座体側部の肘掛けに設けた収納部に、テーブルを格納しておき、使用時に、テーブルを上方及び内側方に下向き回動させて展開することにより、座体の前部上方において水平をなす使用位置に保持しうるようにしたテーブル付き椅子がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−197号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献に記載されている従来のテーブル付き椅子においては、テーブル使用時の平面形が、内側方の前後の角部を切り欠いた、概ね方形板状をなしているので、テーブルを内側方(着座者方向)に回動させて使用状態とした際に、テーブルの外側方前部の角部が、椅子の前方及び外側方に大きく突出する。
【0004】
そのため、椅子の基台を、床面に水平回動可能に取付け、車両の進行方向に合わせて、椅子の向きを180°変えうるようにしたテーブル付き椅子においては、誤ってテーブルを肘掛けに格納するのを忘れたまま、椅子を回動してしまうと、テーブルの角部が、客室の側壁や通路を通行する客に接触する恐れがある。
これを防止するためには、テーブルの大きさを小さくすればよいが、単にテーブルを小さくすると、物品の載置面積も小さくなるので、使い勝手が悪くなる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、テーブルを使用位置としたまま椅子を回動させても、テーブルが客室の側壁や通路の客等に接触する恐れがなく、かつテーブルの物品の載置面積を十分に確保しうるようにしたテーブル付き椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)鉄道車両等の床面に、水平回動可能に取り付けられた椅子における座体側部の肘掛けに、テーブルを、肘掛けに格納された不使用位置から、座体の前部上方において水平をなす使用位置まで移動しうるように取付けてなるテーブル付き椅子において、前記テーブルの使用位置における平面形を、椅子の最大回動軌跡の円内に収まる形状とする。
【0007】
(2)上記(1)項において、椅子が、鉄道車両等の床面における側壁に近接して配設されるものとする。
【0008】
(3)上記(1)または(2)項において、使用位置におけるテーブルの前端縁の少なくとも一部を、平面視において椅子の最大回動軌跡と近似する円弧状とする。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、使用位置におけるテーブルの平面形を、肘掛けへの取付部である基部を頂点として末拡がり状に拡開するほぼ三角形をなす形状とし、その前端縁を、椅子の最大回動軌跡と近似する円弧状とし、かつ後端縁を、基部から先端に向かって、椅子の最大回動軌跡より内方に漸次離間するようにする。
【0010】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、テーブルの前端部を、肘掛けの前上部に、左右方向を向く軸回りと、前後方向を向く軸回りとに回動しうるように枢着し、肘掛けに格納されたテーブルを、左右方向を向く軸回りに、第1ストッパ手段により停止させられるまで上方にはね上げた後、前後方向を向く軸回りに、第2ストッパ手段より停止させられるまで、内側方に下向き回動させることにより、水平の使用位置としうるようにする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、テーブルの使用位置での平面形を、椅子の最大回動軌跡の円内に収まる形状としてあるので、テーブルを使用位置としたまま、誤って椅子を水平回動させて向きを変えても、テーブルが客室の側壁や通路を通行中の客に接触する恐れがなく、テーブルや側壁を損傷させるのが防止される。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、椅子が鉄道車両の側壁と近接して配設されても、テーブルが側壁と接触することがないので、椅子の左右幅を大としたり、通路を大きく確保したりすることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、使用位置におけるテーブルの前端縁の少なくとも一部を、平面視において椅子の最大回動軌跡と近似する円弧状としたことにより、テーブルの前端が椅子の最大回動軌跡の円と近接することとなり、従って、平面視でのテーブルの大きさを大としうるので、物品を載置する面積が大きくなる。
また、テーブル全体を背凭れから前方に離間させうるので、着座者とテーブルとの間のスペースが大きくなり、楽に着座することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、テーブルにおける物品の載置面積が十分に確保され、使い勝手がよくなる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、テーブルは、左右方向と前後方向を向く軸回りに回動可能に肘掛けに枢着されているので、テーブルを水平の使用位置としたときに、妄りに前後方向に移動して、椅子の最大回動軌跡内より外方に飛び出す恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、例えば鉄道車両の客室に設置される本発明のテーブル付き椅子の斜視図、図2は、同じく平面図である。
【0017】
図1および図2において、椅子1は、図示しない車両の床面に固着された水平回動式の基台の上部に、同じく図示しない旋回機構を介して左右2列並設され、図2に示す回転中心Oを中心として、180°水平回動させることにより、車両の進行方向に合わせて、椅子1を、前向きと後向きとに180°変えられるようになっている。
【0018】
椅子1は、座体2、2と、その後部より起立する背凭れ3、3と、各座体2の外側の側部より起立する肘掛け4、4とを備え、これら全ての部材は図示しないフレームに取り付けられている。
左右の肘掛け4、4は、互いに左右対称をなし、それらの内部には、図3に示すように、テーブル5を不使用位置に格納しておくための上端が開口する収納部6が形成され、それぞれの上端開口部は、外側方上向きに開閉可能な蓋体7により閉塞されている(図3は、蓋体を開いた状態を示す)。
【0019】
肘掛け4の前上部には、ヒンジ機構8が取付けられ、このヒンジ機構8により、テーブル5は、肘掛け4内に格納された不使用位置と、格納位置から肘掛け4の前上部を中心として上方に回動したはね上げ位置と、図2に示すように、はね上げ位置から前後方向を向く軸線回りに、椅子1の内側方に下向き回動して、座体2の前部上方においてほぼ水平となる使用位置とに移動可能として、肘掛け4に枢着されている。
テーブル5を不使用位置に格納しているとき、その上端は、肘掛け4の上端より上方に突出しないようにしてある。
【0020】
図4〜図8に示すように、ヒンジ機構8は、肘掛け4の前上部の収納部6内に、左右方向を向く枢軸9をもって枢着された支持腕10を備えている。
この支持腕10は、枢軸9に外嵌される円筒形の基部10aと、基部10aから接線方向に延出する腕部10b と、腕部10b の先端部と中間部とから直角方向に延出し、テーブル5の基部5aを枢支する枢軸11を支持する1対の二股状の突片10c、10cとからなっている。
【0021】
枢軸11は、枢軸9とわずかの間隔を隔てて、直角方向を向くようにして、支持腕10に支持され、テーブル5をはね上げ位置および使用位置としたとき、ほぼ前後方向を向くようにしてある。
【0022】
支持腕10の腕部10b の先端部には、テーブル5をはね上げ位置としたとき、肘掛け4の前端部上面に当接して、テーブル5を使用位置としたときの前方を向く仰角を調節可能な第1ストッパボルト12が、またテーブル5の基部5aの一側面には、テーブル5を水平な使用位置としたとき、支持腕10の腕部10b に当接して、テーブル5を使用位置としたときの内側方を向く仰角を調節可能な第2ストッパボルト13が、それぞれ設けられている。
【0023】
テーブル5は、不使用時の側面形または使用時の平面形が、基部5aを頂点として末拡がり状に拡開するほぼ三角形をなし、その厚さは、基部5aが厚く、先端に向かって漸次薄くなるようにしてある。
また、図2に示すように、テーブル5を使用位置としたとき、椅子1の最大回動軌跡の円内、すなわち、椅子1の基台の回転中心Oから、最遠部である肘掛け4の前端までを半径Rとする円C内に収まるようにしてある。
この実施形態では、テーブル5の前端縁5bの前半部を、円Cと近似する円弧状とするとともに、後端縁5cを、基部5aから先端に向かって、円Cより内方に漸次離間するようにしてある。
【0024】
テーブル5使用時の平面形をこのようにすると、テーブル5を使用位置としたまま、誤って椅子1を180°水平回動させて向きを変えても、テーブル5が客室の側壁Wや通路を通行中の客等に接触する恐れはなく、テーブル5や側壁Wを損傷させるのが防止される。
また、テーブル5を、側壁Wと接触しない範囲内で、前方に位置させうるので、着座者とテーブル5との間のスペースが大きくなり、楽に着座することができる。
【0025】
さらに、テーブル5の前側の外周縁5bの前半部を、円Cと近似する円弧状とするとともに、後側の外周縁5cを、基部5aから先端に向かって、円Cより内方に漸次離間するようにしてあるので、平面視でのテーブルの大きさを大としうるので、物品を載置する面積を十分に確保することができ、使い勝手がよくなる。
【0026】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、使用位置におけるテーブル5の前端縁5bの前半部のみを、円Cと近似する円弧状としてあるが、その全周を円弧状としてもよい。
また、上記実施形態では、テーブル5を、平面視においてほぼ三角形をなす形状としたが、椅子1の最大回動軌跡の円C内であれば、それ以外の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態のテーブル付椅子の斜視図である。
【図2】同じく、テーブルを使用位置としたときのテーブル付椅子の平面図である。
【図3】同じく、蓋体を開いた状態の肘掛けの平面図である。
【図4】同じく、テーブルとその支持腕との斜視図である。
【図5】同じく、テーブルを使用位置としたときの肘掛けの平面図である。
【図6】同じく、側面図である。
【図7】図5のVII−VII線拡大縦断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 椅子
2 座体
3 背凭れ
4 肘掛け
5 テーブル
5a 基部
5b 前端縁
5c 後端縁
6 収納部
7 蓋体
8 ヒンジ機構
9 枢軸
10 支持腕
10a 基部
10b 腕部
10c 突片
11 枢軸
12 第1ストッパボルト(第1ストッパ手段)
13 第2ストッパボルト(第2ストッパ手段)
C 円
O 回転中心
R 半径
W 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両等の床面に、水平回動可能に取り付けられた椅子における座体側部の肘掛けに、テーブルを、肘掛けに格納された不使用位置から、座体の前部上方において水平をなす使用位置まで移動しうるように取付けてなるテーブル付き椅子において、
前記テーブルの使用位置における平面形を、椅子の最大回動軌跡の円内に収まる形状としたことを特徴とするテーブル付椅子。
【請求項2】
椅子が、鉄道車両等の床面における側壁に近接して配設されるものとした請求項1記載のテーブル付き椅子。
【請求項3】
使用位置におけるテーブルの前端縁の少なくとも一部を、平面視において椅子の最大回動軌跡と近似する円弧状としてなる請求項1または2記載のテーブル付き椅子。
【請求項4】
使用位置におけるテーブルの平面形を、肘掛けへの取付部である基部を頂点として末拡がり状に拡開するほぼ三角形をなす形状とし、その前端縁を、椅子の最大回動軌跡と近似する円弧状とし、かつ後端縁を、基部から先端に向かって、椅子の最大回動軌跡より内方に漸次離間するようにしてなる請求項1〜3のいずれかに記載のテーブル付き椅子。
【請求項5】
テーブルの前端部を、肘掛けの前上部に、左右方向を向く軸回りと、前後方向を向く軸回りとに回動しうるように枢着し、肘掛けに格納されたテーブルを、左右方向を向く軸回りに、第1ストッパ手段により停止させられるまで上方にはね上げた後、前後方向を向く軸回りに、第2ストッパ手段により停止させられるまで、内側方に下向き回動させることにより、水平の使用位置としうるようにしてなる請求項1〜4のいずれかに記載のテーブル付き椅子。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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