ディスクブレーキ
【課題】良好な応答性を確保することができるディスクブレーキを提供する。
【解決手段】本ディスクブレーキ1aのボール−ランプ機構13は、電動モータ11からの回転力によって、キャリパ6に対して回動して、第1の傾斜溝44aにより直動運動の推力を発生させる回動プレート35と、該回動プレート35で発生した直動運動の推力を球状部材42を介して押圧部材7に直動運動の推力を伝達する直動プレート40とを有し、回動プレート35には、押圧部材7が推力の異なる複数の駐車制動位置のいずれかにあっても電動モータ11からの回転力が負荷されないとき、球状部材42と嵌合して回動プレート35の制動解除方向への回動を阻止する保持凹部67が回動プレート35の回動方向に複数形成されるので、駐車ブレーキ機能の応答性を向上させることができる。
【解決手段】本ディスクブレーキ1aのボール−ランプ機構13は、電動モータ11からの回転力によって、キャリパ6に対して回動して、第1の傾斜溝44aにより直動運動の推力を発生させる回動プレート35と、該回動プレート35で発生した直動運動の推力を球状部材42を介して押圧部材7に直動運動の推力を伝達する直動プレート40とを有し、回動プレート35には、押圧部材7が推力の異なる複数の駐車制動位置のいずれかにあっても電動モータ11からの回転力が負荷されないとき、球状部材42と嵌合して回動プレート35の制動解除方向への回動を阻止する保持凹部67が回動プレート35の回動方向に複数形成されるので、駐車ブレーキ機能の応答性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキでは、駐車ブレーキ機能を達成するためのブレーキ力の自己保持をウォーム減速機に持たせるように構成される場合がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−177532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のディスクブレーキでは、ブレーキ力の自己保持をウォーム減速機が担っているため、応答性が劣るという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、良好な応答性を確保することができるディスクブレーキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、キャリパのシリンダ内に設けられ、ディスクへブレーキパッドを押圧する押圧部材と、前記シリンダ内に設けられ、電動モータからの回転力を回転直動変換機構により直動運動に変換して前記押圧部材を推進して、該推進した前記押圧部材を駐車制動位置に保持させる駐車ブレーキ機構と、を有するディスクブレーキにおいて、前記回転直動変換機構は、前記電動モータからの回転力によって前記キャリパに対して回動して、傾斜溝により直動運動の推力を発生させる回動部材と、該回動部材で発生した直動運動の推力を転動体を介して前記押圧部材または前記シリンダに前記直動運動の推力を伝達する非回動部材と、を有し、前記回動部材または前記非回動部材には、前記押圧部材が推力の異なる複数の駐車制動位置のいずれかにあっても前記電動モータからの回転力が負荷されないとき、前記転動体と嵌合して前記回動部材の制動解除方向への回動を阻止する保持凹部が前記回動部材の回動方向に複数形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のディスクブレーキよれば、駐車ブレーキ機能の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1(第3)の実施形態に係るディスクブレーキを示す断面図である。
【図2】図1の回動プレートに設けられる第1の傾斜溝の平面図である。
【図3】図2のC−C線に沿う断面図であり、回動プレートが回動した際の球状部材及び直動プレートの動作を示す断面図である。
【図4】制動力と電動モータへの供給電流値の相関を示す図である。
【図5】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝の他の実施形態を示す断面図である。
【図6】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図7】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図8】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図9】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図10】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明の第2(第4)の実施形態に係るディスクブレーキを示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るディスクブレーキの固定プレート及び回動プレートの互いの対向面、及び本発明の第4の実施形態に係るディスクブレーキの回動直動プレート及びプッシュロッドのフランジ部の互いの対向面に設けた複数の保持凹部を示す平面図である。
【図13】図12のD−D線に沿う断面図であり、対向する保持凹部によりベアリングが挟持された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図13に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aを図1〜図4に基づいて説明する。図1において、符号2及び3は車両の回転部に取り付けられたディスクロータ4を挟んで両側に配置された一対のブレーキパッドとしてのインナブレーキパッド及びアウタブレーキパッドであり、符号6はキャリパである。
第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aは、キャリパ浮動型として構成されており、インナブレーキパッド2、アウタブレーキパッド3及びキャリパ6は、車両のナックル等の非回転部に固定されたキャリア5に、ディスクロータ4の軸方向へ移動可能に支持されている。
【0010】
そして、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aは、図1に示すように、キャリパ6のシリンダ10内に設けられ、ディスクロータ4へインナブレーキパッド2を押圧する押圧部材7と、シリンダ10内に設けられ、電動モータ11からの回転力を回転直動変換機構12により直動運動に変換して押圧部材7を推進して、該推進した押圧部材7を駐車制動位置に保持させる駐車ブレーキ機構15とを備えている。
【0011】
さらに詳述すると、図1に示すように、キャリパ6は、車両内側のブレーキパッドであるインナブレーキパッド2に対向する基端側に配置されるシリンダ10と、車両外側のブレーキパッドであるアウタブレーキパッド3に対向する先端側に配置される爪部16とを備えている。
シリンダ10は、インナブレーキパッド2側を開口部となし、他端が底壁17により閉じられた有底筒状を呈している。シリンダ10の底壁17には外方に突出する嵌合凸部18が形成され、該嵌合凸部18にケーシング19が嵌合している。該ケーシング19内に電動モータ11が配置される。なお、シリンダ10の嵌合凸部18の外周面とケーシング19の内周面との間にはシール部材20が配置されている。
【0012】
押圧部材7は、駐車ブレーキとして作動する場合、回転直動変換機構12からの直動運動が作用する、パッド摩耗調整機構24として構成されるプッシュロッド25及び調整ナット27と、該プッシュロッド25及び調整ナット27からの直動運動が作用する、シリンダ10内に配置されピストンシール28を介して接触状態で軸方向に移動可能なピストン26とから構成される。
【0013】
ピストン26は、カップ形状を呈し、その底部がインナブレーキパッド2に対向するようにシリンダ10内に収められている。このピストン26とシリンダ10の底壁17との間は液圧室29として画成されている。該液圧室29には、キャリパ6内に設けた図示しないポートを通じて、マスタシリンダなどの図示しない液圧源から液圧が供給されるようになっている。また、ピストン26は、その底面に設けた凹部30にインナブレーキパッド2の裏金の背面に設けた凸部31を係合させることにより回り止めされている。また、ピストン26の底部とシリンダ10との間には、シリンダ10内への異物の進入を防ぐダストブーツ32が介在されている。
【0014】
シリンダ10の底壁17には、該底壁17に嵌合した突起33により回り止めされた固定部材としての固定プレート34が配置されており、該固定プレート34と、回転直動変換機構12の回動プレート35との間にスラストベアリング36が配置されている。なお、固定プレート34は、リテーナ37に突起38が嵌合しており、リテーナ37に対して回転不能に支持されている。
回転直動変換機構12は、ボール−ランプ機構13であり、回動部材としての回動プレート35と、非回動部材としての直動プレート40と、これら回動プレート35と直動プレート40との間に介装される転動体としての球状部材42とから構成される。なお、回動プレート35と直動プレート40とが一対のランプ部材に相当する。また、転動体として上記球状部材42に代えて円柱状のコロを用いることもできる。
【0015】
ボール−ランプ機構13を詳述すると、該ボール−ランプ機構13は、シリンダ10の底壁17に回転可能に支持され、電動モータ11からの回転力を伝達する駆動軸41と、該駆動軸41の先端に一体的に備えられ、軸方向にスラストベアリング36により支持され、かつ軸回りに回転可能に支持される回動プレート35と、該回動プレート35と対向して設けられ、突起43によりリテーナ37に対して軸回りに回転不能に支持される直動プレート40と、回動プレート35の、直動プレート40との対向面でその外周に設けられる第1の傾斜溝44aと、直動プレート40の、回動プレート35との対向面にその外周に設けられる第2の傾斜溝45aと、これら回動プレート35の第1の傾斜溝44aと直動プレート40の第2の傾斜溝45aとの間に介装される球状部材42とから構成される。また、駆動軸41とシリンダ10の底壁17の貫通孔との間にはシール部材20が配設される。
なお、回動プレート35に設けた第1の傾斜溝44a及び直動プレート40に設けた第2の傾斜溝45aの構成については後で詳細に説明する。
【0016】
パッド摩耗調整機構24は、逆T字状の調整ナット27と、フランジ部46を有するT字状のプッシュロッド25とを備えている。
調整ナット27はピストン26内に回転可能に嵌合され、ピストン26側に形成されたテーパ状の摩擦面51に摩擦係合する摩擦面52を有している。調整ナット27の大径部位53と、ピストン26の内周面に固定されたリング状の係止部材54との間に皿ばね55及びスラストベアリング56が配置される。該皿ばね55及びスラストベアリング56によって、調整ナット27の摩擦面52がピストン26の摩擦面51に押し付けられる。また、調整ナット27の先端部は、ピストン26の底部に形成された室57に接触状態で移動可能に、かつ気密的に嵌合されている。室57は通路58及びダストブーツ32を介して大気に開放されている。なお、調整ナット27の先端部とピストン26の内周面との間にシール部材20が配設される。
【0017】
プッシュロッド25は、フランジ部46を有するT字状に形成され、一端部が調整ナット27に螺合し、他端部がリテーナ37によってシリンダ10の軸方向に移動可能に案内されて、その軸回りの回転がリテーナ37に嵌合した突起47により規制されている。プッシュロッド25のフランジ部46とリテーナ37との間にコイルばね48が配置される。該コイルばね48の付勢力がシリンダ10の底壁17側へ付与されることにより、プッシュロッド25がボール−ランプ機構13の直動プレート40にスラストワッシャ50を介して押し付けられる。なお、調整ナット27とプッシュロッド25とは多条ねじによって互いに螺合しており、回転及び直線運動の変換が相互に可能となっている。そして、多条ねじには、所定のビルトインクリアランスが設けられており、相対回転することなく、ビルトインクリアランスの分だけ相互に直線移動できるようになっている。なお、コイルばね48の付勢力は、皿ばね55の付勢力よりも大きくなっている。
【0018】
次に、回動プレート35に設けた第1の傾斜溝44a、及び直動プレート40に設けた第2の傾斜溝45aを図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
回動プレート35の第1の傾斜溝44aは、周方向に3等分に区画されている。該各第1の傾斜溝44aは、周方向断面が円弧状に形成され、周方向に向かって傾斜して構成される。詳述すると、各第1の傾斜溝44aは、図3に示すように、その始端及び終端に側面視で円弧状凹部59、60がそれぞれ形成され、各円弧状凹部59、60を接続するように傾斜面61が形成される。該傾斜面61は、独立した第1〜第4傾斜面62〜65が第1の傾斜溝44aの始端から終端までの間に同ピッチ(同リード)で複数(本実施の形態では4つ)形成されて構成される。これら隣接する第1〜第4傾斜面62〜65は側面視で円弧状の保持凹部67により接続される。言い換えれば、各第1〜第3傾斜面62〜64の終点と次の第2〜第4傾斜面63〜65の始点とは側面視で円弧状の3つの保持凹部67によりそれぞれ接続される。すなわち、回動プレート35の第1の傾斜溝44aには、保持凹部67が回動プレート35の回動方向に沿って複数形成されることになる。なお、第1傾斜面62は始端に設けた円弧状凹部59の接線方向から終端に向かって延び、各第2〜第4傾斜面63〜65は各保持凹部67の接線方向から終端に向かって延びる。また、第1傾斜面62の延長線上に、残りの第2〜第4傾斜面63〜65の終点が位置するようになる。つまり、各第2〜4傾斜面63〜65の径方向に対する傾斜角度は略同一であり、該傾斜角度は第1傾斜面62の径方向に対する傾斜角度より大きく設定される。
【0019】
一方、直動プレート40の第2の傾斜溝45aは、図3に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44aと同じ構成であり、さらに、第1の傾斜溝44aの各保持凹部67のピッチ(リード)と、第2の傾斜溝45aの各保持凹部67のピッチ(リード)とが同一に構成され、回動プレート35が回動した際、周方向の適宜位置で第1の傾斜溝44aの各保持凹部67と、第2の傾斜溝45aの各保持凹部67とが対向されるようになる。
【0020】
次に、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aの作用を説明する。
まず、ディスクブレーキ1の液圧ブレーキとしての作動について説明する。
マスタシリンダ(図示せず)から液圧室29へ液圧を供給すると、ピストン26がピストンシール28を撓ませながら前進して、インナブレーキパッド2をディスクロータ4に押し付け、その反力によってキャリパ6を移動させ、爪部16を介してアウタブレーキパッド3をディスクロータ4に押し付ける。これにより、インナ及びアウタブレーキパッド2、3によってディスクロータ4を挟みつけて制動力を発生させる。マスタシリンダからの液圧を解除すると、ピストンシール28の弾性によってピストン26が原位置まで後退して、制動が解除される。なお、インナ及びアウタブレーキパッド2、3が摩耗してピストン26の移動量が大きくなると、ピストン26とピストンシール28との間に滑りが生じることによって、ピストン26の原位置を移動させて、パッドクリアランスを一定に調整する。
【0021】
次に、駐車ブレーキ機構15の作動を図1〜図3に基づいて説明する。
駐車ブレーキ機構15を作動させる際には電動モータ11を作動させる。すると、ボール−ランプ機構13が作動する。すなわち、ボール−ランプ機構13では、電動モータ11からの回転力により駆動軸41が回動して回動プレート35が矢印A方向(図2及び図3参照)に回転する。これと同時に、球状部材42が相対的に逆方向(図2及び図3の矢印B方向)に第1の傾斜溝44aと第2の傾斜溝45aとの間を転動して、回転規制された直動プレート40が推進して、該推進した直動プレート40がプッシュロッド25及び調整ナット27を介してピストン26を推進させて、最終的に制動力を発生させる。なお、駐車ブレーキ機構15の作動時、調整ナット27の摩擦面52がピストン26の摩擦面51に押し付けられて摩擦係合することにより、調整ナット27の回転が阻止されるので、プッシュロッド25と調整ナット27との相対回転位置は変化しない。
【0022】
そこで、本発明の第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aでは、回動プレート35の第1の傾斜溝44a及び直動プレート40の第2の傾斜溝45aのそれぞれに保持凹部67が複数形成され、それぞれの各保持凹部67が同一ピッチで形成されている。
これにより、回動プレート35が回動した際、第1の傾斜溝44aに設けた終端の円弧状凹部60及び3つの各保持凹部67と、第2の傾斜溝45aに設けた終端の円弧状凹部60及び3つの各保持凹部67とのそれぞれが対向して、その間に球状部材42が挟持される位置が4通り(第1及び第2の傾斜溝44a、45aの各円弧状凹部60、60間で挟持する形態を含む)存在するようになる。
【0023】
そして、球状部材42が挟持される4通りのうちいずれかの位置で球状部材42を停止させるように、電動モータ11を停止させれば、直動プレート40から軸方向の荷重(反力)を受けたとしても、球状部材42が第1の傾斜溝44aの円弧状凹部60または各保持凹部67と、第2の傾斜溝45aの円弧状凹部60または各保持凹部67との間に挟持され、回動プレート35への回転トルクが規制されるので、その制動力を確実に維持することができる。これにより、駐車ブレーキ機構15の応答性を向上させることができる。
また、ボールランプ機構13は、回動プレート35と直動プレート40がそれぞれ回動と直動の機能を分担しているので、それぞれのプレート35,40に係る負担が少なく、耐久性の向上を図ることができる。
【0024】
しかも、図4に示すように、電動モータ11への電流供給値(電動モータ11からの回転力)に対応する球状部材42の4通りの挟持位置と制動力との関係を予め算出すれば、電動モータ11への電流供給値を制御することで、制動力を適宜制御することができる。
すなわち、駐車ブレーキ機構15が作動されると、傾斜センサーや直前の制動条件情報等により路面勾配や温度等を推測して、それに対応した必要制動力を算出する。そして、予め入力された電動モータ11への電流供給値と制動力との関係から必要な電動モータ11への電流供給値を算出する。そして、制動を開始すると共に、必要な電動モータ11への電流供給値に到達したら必要な制動力を得たと判断し、電動モータ11の駆動を停止する。
【0025】
また、別の制御方法として、第1の傾斜溝44aの各保持凹部67及び終端の各円弧状凹部60と、第2の傾斜溝45aの各保持凹部67及び終端の各円弧状凹部60とが対向して球状部材42を挟持した回数と、その時の制動力との関係を予め算出しておく。そして、図4に示すように、球状部材42が、第1及び第2の傾斜溝44a、45aの各保持凹部67または各円弧状凹部60に挟持された瞬間にはモータ電流値が瞬間的に下がる現象が生じるため、球状部材42が挟持された回数をモニターすることで球状部材42がどの位置で挟持されているかを検知して制動力を判断することもできる。
【0026】
ここで、前者の電動モータ11への電流供給値の絶対値を検知して制動力を制御する場合には、制動力の解除時に球状部材42が挟持された回数を検知することなく通過させることが可能であるので高応答性が得られる。
また、電動モータ11として直流モータを使用した場合には電圧値を制御することで、電動モータ11の回転速度の制御が可能になり、より細かい制御が可能になる。例えば、球状部材42が各第1及び第2の傾斜溝44a、45aの各第1〜第4傾斜面62〜65を通過中、各保持凹部67に近接した際に電圧値を小さくするように制御すれば、モータの回転速度が遅くなり、作動音の抑制や摩耗の抑制による耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0027】
次に、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aに採用された第1の傾斜溝44a及び第2の傾斜溝45aの他の実施形態を図5〜図10に基づいて以下に説明する。
該他の実施形態では、図3に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44a、45a)との相違点として、図5に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44b及び直動プレート40の第2の傾斜溝45bは、第1〜第4傾斜面62〜65と各保持凹部67との接続部分に第1〜第4傾斜面62〜65の径方向に対する傾斜角度より小さい傾斜角度を有する緩斜部70を設けている。
これにより、図3に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44a、45a)に比べて、第1〜第4傾斜面62〜65の各緩斜部70と各保持凹部67との境目部分71のなす角度が大きくなり、球状部材42に対する接触面圧が低減されるので、球状部材42、第1の傾斜溝44b及び第2の傾斜溝45bの摩耗が抑制される。
また、緩斜部70を径方向と略平行に形成してもよく、この形態の場合、各緩斜部70と各保持凹部67との境目部分71が摩耗しても、平坦面が残存している限り、各保持凹部67の深さが維持され、制動に係る保持性能を維持することができる。
【0028】
さらに他の実施形態では、図5に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44b、45b)との相違点として、図6に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44c及び直動プレート40の第2の傾斜溝45cは、各保持凹部67及び終端の円弧状凹部60の底部に径方向と略平行な平坦部72をそれぞれ設けている。
これにより、球状部材42が各保持凹部67に位置した時点で回動プレート35の回転を停止させた際、回動プレート35の慣性力が平坦部72で減衰されるために、球状部材42が該保持凹部67から行き過ぎることを抑制する。
【0029】
さらに他の実施形態では、図3に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44a、45a)との相違点として、図7に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44dまたは直動プレート40の第2の傾斜溝45dのいずれか一方(図7では第2の傾斜溝45d)が、第1の実施形態に係る第1または第2の傾斜溝44a、45aと同じ構成であり、いずれか他方(図7では第1の傾斜溝44d)は、始端及び終端に円弧状凹部59、60を設け、これら円弧状凹部59、60を連続した傾斜面73で接続するように構成される。
これにより、図3に示す実施形態に比べて、その作用効果としては略同じ効果を奏し、他方の傾斜溝(第1の傾斜溝44d)は、保持凹部67が無い連続した傾斜面73となっているので、加工が容易で製造コストを低減することができる。
なお、上記他の実施形態では、他方の傾斜溝(第1の傾斜溝44d)は、連続した傾斜面73となっているので、図7に示すように第2傾斜面63と第3傾斜面64との間の保持凹部67に球状部材42が保持されたとき、傾斜面73が球状部材42に対してすべりが生じると、回動プレート35が直動プレート40に対して相対回転してしまう。このような回転が起きないようにするには、傾斜面73と球状部材42との間の摩擦係数をμとし、傾斜面73の傾斜角をθとした場合、次の条件を満たすように設計すれば、傾斜面73と球状部材42との間ですべりが生じることはない。
μ>tanθ
【0030】
さらに他の実施形態では、図3に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44a、45a)との相違点として、図8に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44eの各保持凹部67のピッチ(リード)と、直動プレート40の第2の傾斜溝45eの各保持凹部67のピッチ(リード)とを、例えば、半ピッチ(リード)や1/3ピッチ(リード)分だけずらして構成される。このため、図8の球状部材42が回動プレート35の第2傾斜面63の途中で直動プレート40の第2傾斜面63と第3傾斜面64との間の保持凹部67に保持された状態において、回動プレート35を図中右方向に移動するように回転すると、球状部材42は回動プレート35の第2傾斜面63と直動プレート40の第3傾斜面64とを転動する。そして、球状部材42が、半ピッチ(リード)や1/3ピッチ(リード)分だけ転動して、直動プレート40の第3傾斜面64の途中で回動プレート35の第2傾斜面63と第3傾斜面64との間の保持凹部67に到ると、この位置が次の制動力を維持する位置(ピストン推力保持位置)となる。
これにより、ピストン推力保持機構としての分解能が、第1及び第2の傾斜溝44e、45eの各保持凹部67の合計となるので、保持推力の刻み幅をさらに細かく設定することが可能になる。
【0031】
さらに他の実施形態では、図9に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44f及び直動プレート40の第2の傾斜溝45fを、その周方向略中間点を境に始端側と終端側とで各保持凹部67のピッチを相違させ、そのピッチを始端側が終端側よりも大きくなるように設定する。なお、本実施形態では、終端側の各保持凹部67が連続して複数形成される。
【0032】
さらに他の実施形態では、図9に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44f、45f)との相違点として、図10に示すように、第1及び第2の傾斜溝44g、45gでは、各保持凹部67のピッチが相違される境界が周方向略中間点より始端側に設定され、しかも、本実施形態では、終端側の各保持凹部67が連続して複数形成される。
このように、図9及び図10に示す実施形態に係る第1の傾斜溝44f、44g及び第2の傾斜溝45f、45gでは、該傾斜溝の終端側でのピストン推力保持力を十分に確保することができる。
【0033】
上記第1の実施形態およびその他の実施形態において、所望の段階的なピストン推力保持力を得るため、回動プレート35の第1の傾斜溝44a〜44gおよび直動プレート40の第2の傾斜溝45a〜45gにおける保持凹部67の個数、第1〜第4傾斜面62〜65のピッチ(リード)および径方向に対する傾斜角度等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で自由に設計することができる。例えば、保持凹部67は3つに限らず、2つまたは4つ以上であっても良く、要は回動プレート35の回動方向に複数形成することで、電動モータ11を停止させても、所望の段階的なピストン推力保持力を得ることができる。また、第1〜第4傾斜面62〜65のピッチ(リード)は、同一(等間隔)または異ならせて(不等間隔)も良い。例えば、図3の第1の実施形態で回動プレート35の第1〜第4傾斜面62〜65と直動プレート40の第1〜第4傾斜面62〜65とのピッチ(リード)を異ならせる場合には、回動プレート35を回動したときに回動プレート35の保持凹部67と直動プレート40の保持凹部67とが一致した位置となるようにピッチ(リード)の不等間隔を整合するようにすれば良い。さらに、第1〜第4傾斜面62〜65の径方向に対する傾斜角度は第1傾斜面62と第2〜第4傾斜面63〜65とを異ならせているが、これに限らず、全て同一の角度にすることもできる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bを図11に基づいて、図2及び3も適宜参照しながら説明する。
なお、第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bを説明する際には、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aとの相違点だけを説明する。
第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bでは、電動モータ11から回転力を伝達する駆動軸41に回動部材としての回転直動プレート75が連結され、該回転直動プレート75は軸方向に移動可能で、かつ軸回りに回動可能に支持される。シリンダ10の底壁17には、突起76によってリテーナ37に対して回り止めされる非回動部材としての固定プレート77が固定される。また、回転直動プレート75と、プッシュロッド25のフランジ部46の中央凸部以外の範囲との間にスラストベアリング36が配置される。なお、回転直動プレート75と固定プレート77とが一対のランプ部材に相当し、その間の球状部材42(転動体)を含めてボール−ランプ機構13Aを構成する。
【0035】
また、回転直動プレート75と固定プレート77との互いの対向面に第1の傾斜溝44a及び第2の傾斜溝45a(図2及び図3参照)がそれぞれ設けられ、該第1の傾斜溝44a及び第2の傾斜溝45a間に球状部材42が介装される。なお、本発明の第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bでは、回転直動プレート75に第1の傾斜溝44aが採用され、固定プレート77に第2の傾斜溝45aが採用されているが、回転直動プレート75に第1の傾斜溝44b〜44g(図5〜図10参照)のいずれかを、また、固定プレート77に、対応する第2の傾斜溝45b〜45g(図5〜図10参照)のいずれかを採用してもよい。
【0036】
次に、第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bの作用を説明するが、本ディスクブレーキ1bの液圧ブレーキとしての作動は第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aと同様であるのでここでの説明を省略する。
次に、第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bにおいて、駐車ブレーキ機構15を作動させる際には電動モータ11を作動させる。すると、ボール−ランプ機構13Aでは、駆動軸41が回動して回転直動プレート75が回動する。これと同時に、球状部材42が回転直動プレート75の第1の傾斜溝44aと固定プレート77の第2の傾斜溝45aとの間を転動することにより、回転直動プレート75が回転しながら推進して、該推進した回転直動プレート75がプッシュロッド25及び調整ナット27を介してピストン26を推進させて、制動力を発生させる。
そして、所定の制動力に到達し電動モータ11からの回転力を停止させた後、プッシュロッド25から軸方向の荷重(反力)を受けたとしても、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aと同様に、球状部材42が第1の傾斜溝44aの各保持凹部67または各円弧状凹部60と、第2の傾斜溝45aの各保持凹部67または各円弧状凹部60との間に保持され、回転直動プレート75への回転トルクが規制されるので、その制動力を確実に維持することができる。
また、ボール−ランプ機構13Aは、回動直動プレート75が回動と直動の両機能を果たし、固定プレート77は単に固定されるだけで良いので、固定プレート77の取り付けが容易となる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cを図12及び図13に基づいて、図1も参照しながら説明する。
該第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cを説明する際には、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aとの相違点だけを説明する。
第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cでは、固定部材としての固定プレート34の、回動部材としての回動プレート35との対向面には、径方向断面円弧状の保持凹部79が放射方向に複数延び、隣接する保持凹部79が曲面にて接続される。一方、回動プレート35の、固定プレート34との対向面にも、径方向断面円弧状の保持凹部79が放射方向に複数延び、隣接する保持凹部79が曲面にて接続される。また、固定プレート34と回動プレート35と間で対向した各保持凹部79、79間に転動体としての円柱状コロからなるベアリング80がそれぞれ挟持される。
【0038】
また、第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cでは、回動プレート35に設けた第1の傾斜溝82及び直動プレート40に設けた第2の傾斜溝83の両方が、その始端及び終端に円弧状凹部59、60が設けられ、これら円弧状凹部59、60を連続する傾斜面73で接続するようにそれぞれ構成される(図7に示す第1の傾斜溝44dに相当)。そして、回動プレート35の第1の傾斜溝82と直動プレート40の第2の傾斜溝83との間に球状部材42が介装される。
すなわち、第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cでは、回動プレート35の第1の傾斜溝82及び直動プレート40の第2の傾斜溝83のそれぞれに保持凹部67は設けられておらず、固定プレート34及び回動プレート35の互いの対向面に保持凹部79が回動プレート35の回動方向に沿って複数形成されて構成される。
なお、固定プレート34及び回動プレート35の互いの対向面に設けた保持凹部79の底部に径方向と平行な平坦部(図示略)をそれぞれ設けてもよい(図6に示す平坦部72に相当)。
【0039】
次に、第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cの作用を説明するが、本ディスクブレーキ1cの液圧ブレーキとしての作動は第1及び第2の実施形態に係るディスクブレーキ1a、1bと同様であるのでここでの説明を省略する。
次に、第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cにおいて、駐車ブレーキ機構15を作動させる際には電動モータ11を作動させる。すると、ボール−ランプ機構13では、駆動軸41が回動して回動プレート35が、各保持凹部79が固定プレート34の各保持凹部79内に位置する各ベアリング80を越えながら回動する。これと同時に、球状部材42が回動プレート35の第1の傾斜溝82と直動プレート40の第2の傾斜溝83との間を転動することにより、回転規制された直動プレート40が推進して、該推進した直動プレート40がプッシュロッド25及び調整ナット27を介してピストン26を推進させて、制動力を発生させる。
そして、所定の制動力に到達し電動モータ11からの回転力を停止させた後、直動プレート40からの軸方向の荷重(反力)を受けたとしても、各ベアリング80が回動プレート35及び固定プレート34の各保持凹部79、79間に挟持された状態で、回動プレート35への回転トルクが規制されるので、その制動力を維持することができる。
【0040】
次に、本発明の第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dを、図12及び図13に基づいて、図11も参照しながら説明する。
該第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dを説明する際には、第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bとの相違点だけを説明する。
回転直動プレート75の、押圧部材7としてのプッシュロッド25のフランジ部46の中央凸部を除く範囲との対向面には、径方向断面円弧状の保持凹部79が放射方向に複数延び、隣接する保持凹部79が曲面にて接続される。一方、プッシュロッド25のフランジ部46の中央凸部を除く範囲の、回転直動プレート75との対向面にも、径方向断面円弧状の保持凹部79が放射方向に複数延び、隣接する保持凹部79が曲面にて接続される。また、回転直動プレート75とプッシュロッド25のフランジ部46と間で対向した各保持凹部79、79間に転動体としての円柱状コロからなるベアリング80がそれぞれ挟持される。
【0041】
また、第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dでは、回転直動プレート75に設けた第1の傾斜溝82及び固定プレート77に設けた第2の傾斜溝83の両方が、その始端及び終端に円弧状凹部59、60が設けられ、これら円弧状凹部59、60を連続する傾斜面73で接続するようにそれぞれ構成される(図7に示す第1の傾斜溝44dに相当)。
すなわち、第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dでは、回動直動プレート75の第1の傾斜溝82及び固定プレート77の第2の傾斜溝83のそれぞれに保持凹部67は設けられておらず、回転直動プレート75及びプッシュロッド25のフランジ部46の互いの対向面に保持凹部79が回転直動プレート75の回動方向に沿って複数形成されて構成される。
なお、回動直動プレート75及びプッシュロッド25のフランジ部46の互いの対向面に設けた保持凹部79の底部に径方向と平行な平坦部(図示略)をそれぞれ設けてもよい(図6に示す平坦部72に相当)。
【0042】
次に、第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dの作用を説明するが、本ディスクブレーキ1dの液圧ブレーキとしての作動は第1〜第3の実施形態に係るディスクブレーキ1a〜1cと同様であるのでここでの説明を省略する。
次に、第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dにおいて、駐車ブレーキ機構15を作動させる際、電動モータ11を作動させる。すると、ボール−ランプ機構13では、駆動軸41が回動して回転直動プレート75が、各保持凹部79がプッシュロッド25のフランジ部46の各保持凹部79内に位置する各ベアリング80を越えながら回動する。これと同時に、球状部材42が回転直動プレート75の第1の傾斜溝82と固定プレート77の第2の傾斜溝83との間を転動することにより、回転直動プレート75が回転しながら推進して、該推進した回転直動プレート75がプッシュロッド25及び調整ナット27を介してピストン26を推進させて、制動力を発生させる。
そして、所定の制動力に到達し電動モータ11からの回転力を停止させた後、プッシュロッド25からの軸方向の荷重(反力)を受けたとしても、各ベアリング80が回転直動プレート75及びプッシュロッド25のフランジ部46の各保持凹部79、79間に挟持された状態で、回転直動プレート75への回転トルクが規制されるので、その制動力を維持することができる。
【符号の説明】
【0043】
1a〜1d ディスクブレーキ,2 インナブレーキパッド,3 アウタブレーキパッド,4 ディスクロータ,6 キャリパ,7 押圧部材,10 シリンダ,11 電動モータ,12 回転直動変換機構,13、13A ボール−ランプ機構,15 駐車ブレーキ機構,25 プッシュロッド,26 ピストン,34 固定プレート(固定部材),35 回動プレート(回動部材),40 直動プレート(非回動部材),42 球状部材(転動体),44a〜44g 第1の傾斜溝,45a〜45g 第2の傾斜溝,46 フランジ部,62〜65 第1〜第4傾斜面,67 保持凹部,70 緩斜部,72 平坦部,75 回転直動プレート(回動部材),77 固定プレート(非回動部材),79 保持凹部,80 ベアリング(転動体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキでは、駐車ブレーキ機能を達成するためのブレーキ力の自己保持をウォーム減速機に持たせるように構成される場合がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−177532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のディスクブレーキでは、ブレーキ力の自己保持をウォーム減速機が担っているため、応答性が劣るという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、良好な応答性を確保することができるディスクブレーキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、キャリパのシリンダ内に設けられ、ディスクへブレーキパッドを押圧する押圧部材と、前記シリンダ内に設けられ、電動モータからの回転力を回転直動変換機構により直動運動に変換して前記押圧部材を推進して、該推進した前記押圧部材を駐車制動位置に保持させる駐車ブレーキ機構と、を有するディスクブレーキにおいて、前記回転直動変換機構は、前記電動モータからの回転力によって前記キャリパに対して回動して、傾斜溝により直動運動の推力を発生させる回動部材と、該回動部材で発生した直動運動の推力を転動体を介して前記押圧部材または前記シリンダに前記直動運動の推力を伝達する非回動部材と、を有し、前記回動部材または前記非回動部材には、前記押圧部材が推力の異なる複数の駐車制動位置のいずれかにあっても前記電動モータからの回転力が負荷されないとき、前記転動体と嵌合して前記回動部材の制動解除方向への回動を阻止する保持凹部が前記回動部材の回動方向に複数形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のディスクブレーキよれば、駐車ブレーキ機能の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1(第3)の実施形態に係るディスクブレーキを示す断面図である。
【図2】図1の回動プレートに設けられる第1の傾斜溝の平面図である。
【図3】図2のC−C線に沿う断面図であり、回動プレートが回動した際の球状部材及び直動プレートの動作を示す断面図である。
【図4】制動力と電動モータへの供給電流値の相関を示す図である。
【図5】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝の他の実施形態を示す断面図である。
【図6】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図7】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図8】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図9】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図10】図2に示す第1の傾斜溝及び第2の傾斜溝のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明の第2(第4)の実施形態に係るディスクブレーキを示す断面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るディスクブレーキの固定プレート及び回動プレートの互いの対向面、及び本発明の第4の実施形態に係るディスクブレーキの回動直動プレート及びプッシュロッドのフランジ部の互いの対向面に設けた複数の保持凹部を示す平面図である。
【図13】図12のD−D線に沿う断面図であり、対向する保持凹部によりベアリングが挟持された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図13に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aを図1〜図4に基づいて説明する。図1において、符号2及び3は車両の回転部に取り付けられたディスクロータ4を挟んで両側に配置された一対のブレーキパッドとしてのインナブレーキパッド及びアウタブレーキパッドであり、符号6はキャリパである。
第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aは、キャリパ浮動型として構成されており、インナブレーキパッド2、アウタブレーキパッド3及びキャリパ6は、車両のナックル等の非回転部に固定されたキャリア5に、ディスクロータ4の軸方向へ移動可能に支持されている。
【0010】
そして、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aは、図1に示すように、キャリパ6のシリンダ10内に設けられ、ディスクロータ4へインナブレーキパッド2を押圧する押圧部材7と、シリンダ10内に設けられ、電動モータ11からの回転力を回転直動変換機構12により直動運動に変換して押圧部材7を推進して、該推進した押圧部材7を駐車制動位置に保持させる駐車ブレーキ機構15とを備えている。
【0011】
さらに詳述すると、図1に示すように、キャリパ6は、車両内側のブレーキパッドであるインナブレーキパッド2に対向する基端側に配置されるシリンダ10と、車両外側のブレーキパッドであるアウタブレーキパッド3に対向する先端側に配置される爪部16とを備えている。
シリンダ10は、インナブレーキパッド2側を開口部となし、他端が底壁17により閉じられた有底筒状を呈している。シリンダ10の底壁17には外方に突出する嵌合凸部18が形成され、該嵌合凸部18にケーシング19が嵌合している。該ケーシング19内に電動モータ11が配置される。なお、シリンダ10の嵌合凸部18の外周面とケーシング19の内周面との間にはシール部材20が配置されている。
【0012】
押圧部材7は、駐車ブレーキとして作動する場合、回転直動変換機構12からの直動運動が作用する、パッド摩耗調整機構24として構成されるプッシュロッド25及び調整ナット27と、該プッシュロッド25及び調整ナット27からの直動運動が作用する、シリンダ10内に配置されピストンシール28を介して接触状態で軸方向に移動可能なピストン26とから構成される。
【0013】
ピストン26は、カップ形状を呈し、その底部がインナブレーキパッド2に対向するようにシリンダ10内に収められている。このピストン26とシリンダ10の底壁17との間は液圧室29として画成されている。該液圧室29には、キャリパ6内に設けた図示しないポートを通じて、マスタシリンダなどの図示しない液圧源から液圧が供給されるようになっている。また、ピストン26は、その底面に設けた凹部30にインナブレーキパッド2の裏金の背面に設けた凸部31を係合させることにより回り止めされている。また、ピストン26の底部とシリンダ10との間には、シリンダ10内への異物の進入を防ぐダストブーツ32が介在されている。
【0014】
シリンダ10の底壁17には、該底壁17に嵌合した突起33により回り止めされた固定部材としての固定プレート34が配置されており、該固定プレート34と、回転直動変換機構12の回動プレート35との間にスラストベアリング36が配置されている。なお、固定プレート34は、リテーナ37に突起38が嵌合しており、リテーナ37に対して回転不能に支持されている。
回転直動変換機構12は、ボール−ランプ機構13であり、回動部材としての回動プレート35と、非回動部材としての直動プレート40と、これら回動プレート35と直動プレート40との間に介装される転動体としての球状部材42とから構成される。なお、回動プレート35と直動プレート40とが一対のランプ部材に相当する。また、転動体として上記球状部材42に代えて円柱状のコロを用いることもできる。
【0015】
ボール−ランプ機構13を詳述すると、該ボール−ランプ機構13は、シリンダ10の底壁17に回転可能に支持され、電動モータ11からの回転力を伝達する駆動軸41と、該駆動軸41の先端に一体的に備えられ、軸方向にスラストベアリング36により支持され、かつ軸回りに回転可能に支持される回動プレート35と、該回動プレート35と対向して設けられ、突起43によりリテーナ37に対して軸回りに回転不能に支持される直動プレート40と、回動プレート35の、直動プレート40との対向面でその外周に設けられる第1の傾斜溝44aと、直動プレート40の、回動プレート35との対向面にその外周に設けられる第2の傾斜溝45aと、これら回動プレート35の第1の傾斜溝44aと直動プレート40の第2の傾斜溝45aとの間に介装される球状部材42とから構成される。また、駆動軸41とシリンダ10の底壁17の貫通孔との間にはシール部材20が配設される。
なお、回動プレート35に設けた第1の傾斜溝44a及び直動プレート40に設けた第2の傾斜溝45aの構成については後で詳細に説明する。
【0016】
パッド摩耗調整機構24は、逆T字状の調整ナット27と、フランジ部46を有するT字状のプッシュロッド25とを備えている。
調整ナット27はピストン26内に回転可能に嵌合され、ピストン26側に形成されたテーパ状の摩擦面51に摩擦係合する摩擦面52を有している。調整ナット27の大径部位53と、ピストン26の内周面に固定されたリング状の係止部材54との間に皿ばね55及びスラストベアリング56が配置される。該皿ばね55及びスラストベアリング56によって、調整ナット27の摩擦面52がピストン26の摩擦面51に押し付けられる。また、調整ナット27の先端部は、ピストン26の底部に形成された室57に接触状態で移動可能に、かつ気密的に嵌合されている。室57は通路58及びダストブーツ32を介して大気に開放されている。なお、調整ナット27の先端部とピストン26の内周面との間にシール部材20が配設される。
【0017】
プッシュロッド25は、フランジ部46を有するT字状に形成され、一端部が調整ナット27に螺合し、他端部がリテーナ37によってシリンダ10の軸方向に移動可能に案内されて、その軸回りの回転がリテーナ37に嵌合した突起47により規制されている。プッシュロッド25のフランジ部46とリテーナ37との間にコイルばね48が配置される。該コイルばね48の付勢力がシリンダ10の底壁17側へ付与されることにより、プッシュロッド25がボール−ランプ機構13の直動プレート40にスラストワッシャ50を介して押し付けられる。なお、調整ナット27とプッシュロッド25とは多条ねじによって互いに螺合しており、回転及び直線運動の変換が相互に可能となっている。そして、多条ねじには、所定のビルトインクリアランスが設けられており、相対回転することなく、ビルトインクリアランスの分だけ相互に直線移動できるようになっている。なお、コイルばね48の付勢力は、皿ばね55の付勢力よりも大きくなっている。
【0018】
次に、回動プレート35に設けた第1の傾斜溝44a、及び直動プレート40に設けた第2の傾斜溝45aを図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
回動プレート35の第1の傾斜溝44aは、周方向に3等分に区画されている。該各第1の傾斜溝44aは、周方向断面が円弧状に形成され、周方向に向かって傾斜して構成される。詳述すると、各第1の傾斜溝44aは、図3に示すように、その始端及び終端に側面視で円弧状凹部59、60がそれぞれ形成され、各円弧状凹部59、60を接続するように傾斜面61が形成される。該傾斜面61は、独立した第1〜第4傾斜面62〜65が第1の傾斜溝44aの始端から終端までの間に同ピッチ(同リード)で複数(本実施の形態では4つ)形成されて構成される。これら隣接する第1〜第4傾斜面62〜65は側面視で円弧状の保持凹部67により接続される。言い換えれば、各第1〜第3傾斜面62〜64の終点と次の第2〜第4傾斜面63〜65の始点とは側面視で円弧状の3つの保持凹部67によりそれぞれ接続される。すなわち、回動プレート35の第1の傾斜溝44aには、保持凹部67が回動プレート35の回動方向に沿って複数形成されることになる。なお、第1傾斜面62は始端に設けた円弧状凹部59の接線方向から終端に向かって延び、各第2〜第4傾斜面63〜65は各保持凹部67の接線方向から終端に向かって延びる。また、第1傾斜面62の延長線上に、残りの第2〜第4傾斜面63〜65の終点が位置するようになる。つまり、各第2〜4傾斜面63〜65の径方向に対する傾斜角度は略同一であり、該傾斜角度は第1傾斜面62の径方向に対する傾斜角度より大きく設定される。
【0019】
一方、直動プレート40の第2の傾斜溝45aは、図3に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44aと同じ構成であり、さらに、第1の傾斜溝44aの各保持凹部67のピッチ(リード)と、第2の傾斜溝45aの各保持凹部67のピッチ(リード)とが同一に構成され、回動プレート35が回動した際、周方向の適宜位置で第1の傾斜溝44aの各保持凹部67と、第2の傾斜溝45aの各保持凹部67とが対向されるようになる。
【0020】
次に、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aの作用を説明する。
まず、ディスクブレーキ1の液圧ブレーキとしての作動について説明する。
マスタシリンダ(図示せず)から液圧室29へ液圧を供給すると、ピストン26がピストンシール28を撓ませながら前進して、インナブレーキパッド2をディスクロータ4に押し付け、その反力によってキャリパ6を移動させ、爪部16を介してアウタブレーキパッド3をディスクロータ4に押し付ける。これにより、インナ及びアウタブレーキパッド2、3によってディスクロータ4を挟みつけて制動力を発生させる。マスタシリンダからの液圧を解除すると、ピストンシール28の弾性によってピストン26が原位置まで後退して、制動が解除される。なお、インナ及びアウタブレーキパッド2、3が摩耗してピストン26の移動量が大きくなると、ピストン26とピストンシール28との間に滑りが生じることによって、ピストン26の原位置を移動させて、パッドクリアランスを一定に調整する。
【0021】
次に、駐車ブレーキ機構15の作動を図1〜図3に基づいて説明する。
駐車ブレーキ機構15を作動させる際には電動モータ11を作動させる。すると、ボール−ランプ機構13が作動する。すなわち、ボール−ランプ機構13では、電動モータ11からの回転力により駆動軸41が回動して回動プレート35が矢印A方向(図2及び図3参照)に回転する。これと同時に、球状部材42が相対的に逆方向(図2及び図3の矢印B方向)に第1の傾斜溝44aと第2の傾斜溝45aとの間を転動して、回転規制された直動プレート40が推進して、該推進した直動プレート40がプッシュロッド25及び調整ナット27を介してピストン26を推進させて、最終的に制動力を発生させる。なお、駐車ブレーキ機構15の作動時、調整ナット27の摩擦面52がピストン26の摩擦面51に押し付けられて摩擦係合することにより、調整ナット27の回転が阻止されるので、プッシュロッド25と調整ナット27との相対回転位置は変化しない。
【0022】
そこで、本発明の第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aでは、回動プレート35の第1の傾斜溝44a及び直動プレート40の第2の傾斜溝45aのそれぞれに保持凹部67が複数形成され、それぞれの各保持凹部67が同一ピッチで形成されている。
これにより、回動プレート35が回動した際、第1の傾斜溝44aに設けた終端の円弧状凹部60及び3つの各保持凹部67と、第2の傾斜溝45aに設けた終端の円弧状凹部60及び3つの各保持凹部67とのそれぞれが対向して、その間に球状部材42が挟持される位置が4通り(第1及び第2の傾斜溝44a、45aの各円弧状凹部60、60間で挟持する形態を含む)存在するようになる。
【0023】
そして、球状部材42が挟持される4通りのうちいずれかの位置で球状部材42を停止させるように、電動モータ11を停止させれば、直動プレート40から軸方向の荷重(反力)を受けたとしても、球状部材42が第1の傾斜溝44aの円弧状凹部60または各保持凹部67と、第2の傾斜溝45aの円弧状凹部60または各保持凹部67との間に挟持され、回動プレート35への回転トルクが規制されるので、その制動力を確実に維持することができる。これにより、駐車ブレーキ機構15の応答性を向上させることができる。
また、ボールランプ機構13は、回動プレート35と直動プレート40がそれぞれ回動と直動の機能を分担しているので、それぞれのプレート35,40に係る負担が少なく、耐久性の向上を図ることができる。
【0024】
しかも、図4に示すように、電動モータ11への電流供給値(電動モータ11からの回転力)に対応する球状部材42の4通りの挟持位置と制動力との関係を予め算出すれば、電動モータ11への電流供給値を制御することで、制動力を適宜制御することができる。
すなわち、駐車ブレーキ機構15が作動されると、傾斜センサーや直前の制動条件情報等により路面勾配や温度等を推測して、それに対応した必要制動力を算出する。そして、予め入力された電動モータ11への電流供給値と制動力との関係から必要な電動モータ11への電流供給値を算出する。そして、制動を開始すると共に、必要な電動モータ11への電流供給値に到達したら必要な制動力を得たと判断し、電動モータ11の駆動を停止する。
【0025】
また、別の制御方法として、第1の傾斜溝44aの各保持凹部67及び終端の各円弧状凹部60と、第2の傾斜溝45aの各保持凹部67及び終端の各円弧状凹部60とが対向して球状部材42を挟持した回数と、その時の制動力との関係を予め算出しておく。そして、図4に示すように、球状部材42が、第1及び第2の傾斜溝44a、45aの各保持凹部67または各円弧状凹部60に挟持された瞬間にはモータ電流値が瞬間的に下がる現象が生じるため、球状部材42が挟持された回数をモニターすることで球状部材42がどの位置で挟持されているかを検知して制動力を判断することもできる。
【0026】
ここで、前者の電動モータ11への電流供給値の絶対値を検知して制動力を制御する場合には、制動力の解除時に球状部材42が挟持された回数を検知することなく通過させることが可能であるので高応答性が得られる。
また、電動モータ11として直流モータを使用した場合には電圧値を制御することで、電動モータ11の回転速度の制御が可能になり、より細かい制御が可能になる。例えば、球状部材42が各第1及び第2の傾斜溝44a、45aの各第1〜第4傾斜面62〜65を通過中、各保持凹部67に近接した際に電圧値を小さくするように制御すれば、モータの回転速度が遅くなり、作動音の抑制や摩耗の抑制による耐久性の向上を図ることが可能になる。
【0027】
次に、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aに採用された第1の傾斜溝44a及び第2の傾斜溝45aの他の実施形態を図5〜図10に基づいて以下に説明する。
該他の実施形態では、図3に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44a、45a)との相違点として、図5に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44b及び直動プレート40の第2の傾斜溝45bは、第1〜第4傾斜面62〜65と各保持凹部67との接続部分に第1〜第4傾斜面62〜65の径方向に対する傾斜角度より小さい傾斜角度を有する緩斜部70を設けている。
これにより、図3に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44a、45a)に比べて、第1〜第4傾斜面62〜65の各緩斜部70と各保持凹部67との境目部分71のなす角度が大きくなり、球状部材42に対する接触面圧が低減されるので、球状部材42、第1の傾斜溝44b及び第2の傾斜溝45bの摩耗が抑制される。
また、緩斜部70を径方向と略平行に形成してもよく、この形態の場合、各緩斜部70と各保持凹部67との境目部分71が摩耗しても、平坦面が残存している限り、各保持凹部67の深さが維持され、制動に係る保持性能を維持することができる。
【0028】
さらに他の実施形態では、図5に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44b、45b)との相違点として、図6に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44c及び直動プレート40の第2の傾斜溝45cは、各保持凹部67及び終端の円弧状凹部60の底部に径方向と略平行な平坦部72をそれぞれ設けている。
これにより、球状部材42が各保持凹部67に位置した時点で回動プレート35の回転を停止させた際、回動プレート35の慣性力が平坦部72で減衰されるために、球状部材42が該保持凹部67から行き過ぎることを抑制する。
【0029】
さらに他の実施形態では、図3に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44a、45a)との相違点として、図7に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44dまたは直動プレート40の第2の傾斜溝45dのいずれか一方(図7では第2の傾斜溝45d)が、第1の実施形態に係る第1または第2の傾斜溝44a、45aと同じ構成であり、いずれか他方(図7では第1の傾斜溝44d)は、始端及び終端に円弧状凹部59、60を設け、これら円弧状凹部59、60を連続した傾斜面73で接続するように構成される。
これにより、図3に示す実施形態に比べて、その作用効果としては略同じ効果を奏し、他方の傾斜溝(第1の傾斜溝44d)は、保持凹部67が無い連続した傾斜面73となっているので、加工が容易で製造コストを低減することができる。
なお、上記他の実施形態では、他方の傾斜溝(第1の傾斜溝44d)は、連続した傾斜面73となっているので、図7に示すように第2傾斜面63と第3傾斜面64との間の保持凹部67に球状部材42が保持されたとき、傾斜面73が球状部材42に対してすべりが生じると、回動プレート35が直動プレート40に対して相対回転してしまう。このような回転が起きないようにするには、傾斜面73と球状部材42との間の摩擦係数をμとし、傾斜面73の傾斜角をθとした場合、次の条件を満たすように設計すれば、傾斜面73と球状部材42との間ですべりが生じることはない。
μ>tanθ
【0030】
さらに他の実施形態では、図3に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44a、45a)との相違点として、図8に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44eの各保持凹部67のピッチ(リード)と、直動プレート40の第2の傾斜溝45eの各保持凹部67のピッチ(リード)とを、例えば、半ピッチ(リード)や1/3ピッチ(リード)分だけずらして構成される。このため、図8の球状部材42が回動プレート35の第2傾斜面63の途中で直動プレート40の第2傾斜面63と第3傾斜面64との間の保持凹部67に保持された状態において、回動プレート35を図中右方向に移動するように回転すると、球状部材42は回動プレート35の第2傾斜面63と直動プレート40の第3傾斜面64とを転動する。そして、球状部材42が、半ピッチ(リード)や1/3ピッチ(リード)分だけ転動して、直動プレート40の第3傾斜面64の途中で回動プレート35の第2傾斜面63と第3傾斜面64との間の保持凹部67に到ると、この位置が次の制動力を維持する位置(ピストン推力保持位置)となる。
これにより、ピストン推力保持機構としての分解能が、第1及び第2の傾斜溝44e、45eの各保持凹部67の合計となるので、保持推力の刻み幅をさらに細かく設定することが可能になる。
【0031】
さらに他の実施形態では、図9に示すように、回動プレート35の第1の傾斜溝44f及び直動プレート40の第2の傾斜溝45fを、その周方向略中間点を境に始端側と終端側とで各保持凹部67のピッチを相違させ、そのピッチを始端側が終端側よりも大きくなるように設定する。なお、本実施形態では、終端側の各保持凹部67が連続して複数形成される。
【0032】
さらに他の実施形態では、図9に示す実施形態(第1及び第2の傾斜溝44f、45f)との相違点として、図10に示すように、第1及び第2の傾斜溝44g、45gでは、各保持凹部67のピッチが相違される境界が周方向略中間点より始端側に設定され、しかも、本実施形態では、終端側の各保持凹部67が連続して複数形成される。
このように、図9及び図10に示す実施形態に係る第1の傾斜溝44f、44g及び第2の傾斜溝45f、45gでは、該傾斜溝の終端側でのピストン推力保持力を十分に確保することができる。
【0033】
上記第1の実施形態およびその他の実施形態において、所望の段階的なピストン推力保持力を得るため、回動プレート35の第1の傾斜溝44a〜44gおよび直動プレート40の第2の傾斜溝45a〜45gにおける保持凹部67の個数、第1〜第4傾斜面62〜65のピッチ(リード)および径方向に対する傾斜角度等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で自由に設計することができる。例えば、保持凹部67は3つに限らず、2つまたは4つ以上であっても良く、要は回動プレート35の回動方向に複数形成することで、電動モータ11を停止させても、所望の段階的なピストン推力保持力を得ることができる。また、第1〜第4傾斜面62〜65のピッチ(リード)は、同一(等間隔)または異ならせて(不等間隔)も良い。例えば、図3の第1の実施形態で回動プレート35の第1〜第4傾斜面62〜65と直動プレート40の第1〜第4傾斜面62〜65とのピッチ(リード)を異ならせる場合には、回動プレート35を回動したときに回動プレート35の保持凹部67と直動プレート40の保持凹部67とが一致した位置となるようにピッチ(リード)の不等間隔を整合するようにすれば良い。さらに、第1〜第4傾斜面62〜65の径方向に対する傾斜角度は第1傾斜面62と第2〜第4傾斜面63〜65とを異ならせているが、これに限らず、全て同一の角度にすることもできる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bを図11に基づいて、図2及び3も適宜参照しながら説明する。
なお、第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bを説明する際には、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aとの相違点だけを説明する。
第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bでは、電動モータ11から回転力を伝達する駆動軸41に回動部材としての回転直動プレート75が連結され、該回転直動プレート75は軸方向に移動可能で、かつ軸回りに回動可能に支持される。シリンダ10の底壁17には、突起76によってリテーナ37に対して回り止めされる非回動部材としての固定プレート77が固定される。また、回転直動プレート75と、プッシュロッド25のフランジ部46の中央凸部以外の範囲との間にスラストベアリング36が配置される。なお、回転直動プレート75と固定プレート77とが一対のランプ部材に相当し、その間の球状部材42(転動体)を含めてボール−ランプ機構13Aを構成する。
【0035】
また、回転直動プレート75と固定プレート77との互いの対向面に第1の傾斜溝44a及び第2の傾斜溝45a(図2及び図3参照)がそれぞれ設けられ、該第1の傾斜溝44a及び第2の傾斜溝45a間に球状部材42が介装される。なお、本発明の第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bでは、回転直動プレート75に第1の傾斜溝44aが採用され、固定プレート77に第2の傾斜溝45aが採用されているが、回転直動プレート75に第1の傾斜溝44b〜44g(図5〜図10参照)のいずれかを、また、固定プレート77に、対応する第2の傾斜溝45b〜45g(図5〜図10参照)のいずれかを採用してもよい。
【0036】
次に、第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bの作用を説明するが、本ディスクブレーキ1bの液圧ブレーキとしての作動は第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aと同様であるのでここでの説明を省略する。
次に、第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bにおいて、駐車ブレーキ機構15を作動させる際には電動モータ11を作動させる。すると、ボール−ランプ機構13Aでは、駆動軸41が回動して回転直動プレート75が回動する。これと同時に、球状部材42が回転直動プレート75の第1の傾斜溝44aと固定プレート77の第2の傾斜溝45aとの間を転動することにより、回転直動プレート75が回転しながら推進して、該推進した回転直動プレート75がプッシュロッド25及び調整ナット27を介してピストン26を推進させて、制動力を発生させる。
そして、所定の制動力に到達し電動モータ11からの回転力を停止させた後、プッシュロッド25から軸方向の荷重(反力)を受けたとしても、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aと同様に、球状部材42が第1の傾斜溝44aの各保持凹部67または各円弧状凹部60と、第2の傾斜溝45aの各保持凹部67または各円弧状凹部60との間に保持され、回転直動プレート75への回転トルクが規制されるので、その制動力を確実に維持することができる。
また、ボール−ランプ機構13Aは、回動直動プレート75が回動と直動の両機能を果たし、固定プレート77は単に固定されるだけで良いので、固定プレート77の取り付けが容易となる。
【0037】
次に、本発明の第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cを図12及び図13に基づいて、図1も参照しながら説明する。
該第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cを説明する際には、第1の実施形態に係るディスクブレーキ1aとの相違点だけを説明する。
第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cでは、固定部材としての固定プレート34の、回動部材としての回動プレート35との対向面には、径方向断面円弧状の保持凹部79が放射方向に複数延び、隣接する保持凹部79が曲面にて接続される。一方、回動プレート35の、固定プレート34との対向面にも、径方向断面円弧状の保持凹部79が放射方向に複数延び、隣接する保持凹部79が曲面にて接続される。また、固定プレート34と回動プレート35と間で対向した各保持凹部79、79間に転動体としての円柱状コロからなるベアリング80がそれぞれ挟持される。
【0038】
また、第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cでは、回動プレート35に設けた第1の傾斜溝82及び直動プレート40に設けた第2の傾斜溝83の両方が、その始端及び終端に円弧状凹部59、60が設けられ、これら円弧状凹部59、60を連続する傾斜面73で接続するようにそれぞれ構成される(図7に示す第1の傾斜溝44dに相当)。そして、回動プレート35の第1の傾斜溝82と直動プレート40の第2の傾斜溝83との間に球状部材42が介装される。
すなわち、第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cでは、回動プレート35の第1の傾斜溝82及び直動プレート40の第2の傾斜溝83のそれぞれに保持凹部67は設けられておらず、固定プレート34及び回動プレート35の互いの対向面に保持凹部79が回動プレート35の回動方向に沿って複数形成されて構成される。
なお、固定プレート34及び回動プレート35の互いの対向面に設けた保持凹部79の底部に径方向と平行な平坦部(図示略)をそれぞれ設けてもよい(図6に示す平坦部72に相当)。
【0039】
次に、第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cの作用を説明するが、本ディスクブレーキ1cの液圧ブレーキとしての作動は第1及び第2の実施形態に係るディスクブレーキ1a、1bと同様であるのでここでの説明を省略する。
次に、第3の実施形態に係るディスクブレーキ1cにおいて、駐車ブレーキ機構15を作動させる際には電動モータ11を作動させる。すると、ボール−ランプ機構13では、駆動軸41が回動して回動プレート35が、各保持凹部79が固定プレート34の各保持凹部79内に位置する各ベアリング80を越えながら回動する。これと同時に、球状部材42が回動プレート35の第1の傾斜溝82と直動プレート40の第2の傾斜溝83との間を転動することにより、回転規制された直動プレート40が推進して、該推進した直動プレート40がプッシュロッド25及び調整ナット27を介してピストン26を推進させて、制動力を発生させる。
そして、所定の制動力に到達し電動モータ11からの回転力を停止させた後、直動プレート40からの軸方向の荷重(反力)を受けたとしても、各ベアリング80が回動プレート35及び固定プレート34の各保持凹部79、79間に挟持された状態で、回動プレート35への回転トルクが規制されるので、その制動力を維持することができる。
【0040】
次に、本発明の第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dを、図12及び図13に基づいて、図11も参照しながら説明する。
該第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dを説明する際には、第2の実施形態に係るディスクブレーキ1bとの相違点だけを説明する。
回転直動プレート75の、押圧部材7としてのプッシュロッド25のフランジ部46の中央凸部を除く範囲との対向面には、径方向断面円弧状の保持凹部79が放射方向に複数延び、隣接する保持凹部79が曲面にて接続される。一方、プッシュロッド25のフランジ部46の中央凸部を除く範囲の、回転直動プレート75との対向面にも、径方向断面円弧状の保持凹部79が放射方向に複数延び、隣接する保持凹部79が曲面にて接続される。また、回転直動プレート75とプッシュロッド25のフランジ部46と間で対向した各保持凹部79、79間に転動体としての円柱状コロからなるベアリング80がそれぞれ挟持される。
【0041】
また、第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dでは、回転直動プレート75に設けた第1の傾斜溝82及び固定プレート77に設けた第2の傾斜溝83の両方が、その始端及び終端に円弧状凹部59、60が設けられ、これら円弧状凹部59、60を連続する傾斜面73で接続するようにそれぞれ構成される(図7に示す第1の傾斜溝44dに相当)。
すなわち、第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dでは、回動直動プレート75の第1の傾斜溝82及び固定プレート77の第2の傾斜溝83のそれぞれに保持凹部67は設けられておらず、回転直動プレート75及びプッシュロッド25のフランジ部46の互いの対向面に保持凹部79が回転直動プレート75の回動方向に沿って複数形成されて構成される。
なお、回動直動プレート75及びプッシュロッド25のフランジ部46の互いの対向面に設けた保持凹部79の底部に径方向と平行な平坦部(図示略)をそれぞれ設けてもよい(図6に示す平坦部72に相当)。
【0042】
次に、第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dの作用を説明するが、本ディスクブレーキ1dの液圧ブレーキとしての作動は第1〜第3の実施形態に係るディスクブレーキ1a〜1cと同様であるのでここでの説明を省略する。
次に、第4の実施形態に係るディスクブレーキ1dにおいて、駐車ブレーキ機構15を作動させる際、電動モータ11を作動させる。すると、ボール−ランプ機構13では、駆動軸41が回動して回転直動プレート75が、各保持凹部79がプッシュロッド25のフランジ部46の各保持凹部79内に位置する各ベアリング80を越えながら回動する。これと同時に、球状部材42が回転直動プレート75の第1の傾斜溝82と固定プレート77の第2の傾斜溝83との間を転動することにより、回転直動プレート75が回転しながら推進して、該推進した回転直動プレート75がプッシュロッド25及び調整ナット27を介してピストン26を推進させて、制動力を発生させる。
そして、所定の制動力に到達し電動モータ11からの回転力を停止させた後、プッシュロッド25からの軸方向の荷重(反力)を受けたとしても、各ベアリング80が回転直動プレート75及びプッシュロッド25のフランジ部46の各保持凹部79、79間に挟持された状態で、回転直動プレート75への回転トルクが規制されるので、その制動力を維持することができる。
【符号の説明】
【0043】
1a〜1d ディスクブレーキ,2 インナブレーキパッド,3 アウタブレーキパッド,4 ディスクロータ,6 キャリパ,7 押圧部材,10 シリンダ,11 電動モータ,12 回転直動変換機構,13、13A ボール−ランプ機構,15 駐車ブレーキ機構,25 プッシュロッド,26 ピストン,34 固定プレート(固定部材),35 回動プレート(回動部材),40 直動プレート(非回動部材),42 球状部材(転動体),44a〜44g 第1の傾斜溝,45a〜45g 第2の傾斜溝,46 フランジ部,62〜65 第1〜第4傾斜面,67 保持凹部,70 緩斜部,72 平坦部,75 回転直動プレート(回動部材),77 固定プレート(非回動部材),79 保持凹部,80 ベアリング(転動体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリパのシリンダ内に設けられ、ディスクへブレーキパッドを押圧する押圧部材と、前記シリンダ内に設けられ、電動モータからの回転力を回転直動変換機構により直動運動に変換して前記押圧部材を推進して、該推進した前記押圧部材を駐車制動位置に保持させる駐車ブレーキ機構と、を有するディスクブレーキにおいて、
前記回転直動変換機構は、
前記電動モータからの回転力によって前記キャリパに対して回動して、傾斜溝により直動運動の推力を発生させる回動部材と、
該回動部材で発生した直動運動の推力を転動体を介して前記押圧部材または前記シリンダに前記直動運動の推力を伝達する非回動部材と、を有し、
前記回動部材または前記非回動部材には、前記押圧部材が推力の異なる複数の駐車制動位置のいずれかにあっても前記電動モータからの回転力が負荷されないとき、前記転動体と嵌合して前記回動部材の制動解除方向への回動を阻止する保持凹部が前記回動部材の回動方向に複数形成されていることを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項2】
前記回動部材には第1の傾斜溝が、前記非回動部材には第2の傾斜溝がそれぞれ形成され、
前記回動部材または前記非回動部材のいずれか一方が前記回動部材の回動により直動運動するように構成され、
前記保持凹部は、前記回動部材の第1の傾斜溝または前記非回動部材の第2の傾斜溝の少なくとも一方に形成されることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記非回動部材は、前記回動部材と前記押圧部材との間に設けられる直動部材であり、該直動部材と前記回動部材との対向面にそれぞれ設けられる前記傾斜溝に前記保持凹部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記非回動部材は、前記回動部材と前記シリンダとの間に設けられる固定部材であり、該固定部材と前記回動部材との対向面にそれぞれ設けられる前記傾斜溝に前記保持凹部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記回動部材と前記非回動部材とは、周方向に沿って傾斜する前記傾斜溝をそれぞれ有する一対のランプ部材であり、
前記転動体は、各ランプ部材の傾斜溝間に介装される球状部材であり、
前記保持凹部は、前記傾斜溝における前記球状部材が当接する軌跡の始点と、前記球状部材が保持されて前記駐車ブレーキ機構の駐車制動位置となる終点との途中に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記傾斜溝の前記保持凹部間には傾斜角を減じた緩斜部が形成されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記非回動部材は、前記回動部材で発生した直動運動の推力を受承して、前記押圧部材または前記シリンダに前記直動運動の推力を前記転動体を介して伝達して、
前記保持凹部は、前記押圧部材及び前記非回動部材、または前記シリンダ及び前記非回動部材に形成されることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
前記転動体は、前記回動部材と、前記シリンダ内に固定された固定部材との間に設けられるベアリングであり、
該固定部材と前記回動部材との間のそれぞれの対向面に前記保持凹部が形成されることを特徴とする請求項1または7に記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
前記転動体は、前記回動部材に対向して前記押圧部材に形成されるフランジ部と、前記回動部材との間に設けられるベアリングであり、
前記フランジ部と前記回動部材との間のそれぞれの対向面に前記保持凹部が形成されることを特徴とする請求項1または7に記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
前記保持凹部の底面には、平坦部が形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のディスクブレーキ。
【請求項1】
キャリパのシリンダ内に設けられ、ディスクへブレーキパッドを押圧する押圧部材と、前記シリンダ内に設けられ、電動モータからの回転力を回転直動変換機構により直動運動に変換して前記押圧部材を推進して、該推進した前記押圧部材を駐車制動位置に保持させる駐車ブレーキ機構と、を有するディスクブレーキにおいて、
前記回転直動変換機構は、
前記電動モータからの回転力によって前記キャリパに対して回動して、傾斜溝により直動運動の推力を発生させる回動部材と、
該回動部材で発生した直動運動の推力を転動体を介して前記押圧部材または前記シリンダに前記直動運動の推力を伝達する非回動部材と、を有し、
前記回動部材または前記非回動部材には、前記押圧部材が推力の異なる複数の駐車制動位置のいずれかにあっても前記電動モータからの回転力が負荷されないとき、前記転動体と嵌合して前記回動部材の制動解除方向への回動を阻止する保持凹部が前記回動部材の回動方向に複数形成されていることを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項2】
前記回動部材には第1の傾斜溝が、前記非回動部材には第2の傾斜溝がそれぞれ形成され、
前記回動部材または前記非回動部材のいずれか一方が前記回動部材の回動により直動運動するように構成され、
前記保持凹部は、前記回動部材の第1の傾斜溝または前記非回動部材の第2の傾斜溝の少なくとも一方に形成されることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記非回動部材は、前記回動部材と前記押圧部材との間に設けられる直動部材であり、該直動部材と前記回動部材との対向面にそれぞれ設けられる前記傾斜溝に前記保持凹部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記非回動部材は、前記回動部材と前記シリンダとの間に設けられる固定部材であり、該固定部材と前記回動部材との対向面にそれぞれ設けられる前記傾斜溝に前記保持凹部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
前記回動部材と前記非回動部材とは、周方向に沿って傾斜する前記傾斜溝をそれぞれ有する一対のランプ部材であり、
前記転動体は、各ランプ部材の傾斜溝間に介装される球状部材であり、
前記保持凹部は、前記傾斜溝における前記球状部材が当接する軌跡の始点と、前記球状部材が保持されて前記駐車ブレーキ機構の駐車制動位置となる終点との途中に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記傾斜溝の前記保持凹部間には傾斜角を減じた緩斜部が形成されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記非回動部材は、前記回動部材で発生した直動運動の推力を受承して、前記押圧部材または前記シリンダに前記直動運動の推力を前記転動体を介して伝達して、
前記保持凹部は、前記押圧部材及び前記非回動部材、または前記シリンダ及び前記非回動部材に形成されることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
前記転動体は、前記回動部材と、前記シリンダ内に固定された固定部材との間に設けられるベアリングであり、
該固定部材と前記回動部材との間のそれぞれの対向面に前記保持凹部が形成されることを特徴とする請求項1または7に記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
前記転動体は、前記回動部材に対向して前記押圧部材に形成されるフランジ部と、前記回動部材との間に設けられるベアリングであり、
前記フランジ部と前記回動部材との間のそれぞれの対向面に前記保持凹部が形成されることを特徴とする請求項1または7に記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
前記保持凹部の底面には、平坦部が形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のディスクブレーキ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【公開番号】特開2012−77806(P2012−77806A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222007(P2010−222007)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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