説明

デジタルオーディオ放送受信装置及びデジタルオーディオ放送受信方法

【課題】BWSサービスリンクの際、ユーザ操作なしに同一ページを表示可能にする「デジタルオーディオ放送受信装置及びデジタルオーディオ放送受信方法」を提供すること。
【解決手段】複数個のオーディオサービス及び少なくとも放送ウェブサイト(BWS)を含む複数個のデータサービスを多重化した放送波を受信するデジタルオーディオ放送受信装置は、表示手段と、チューナーと、受信中の放送信号の受信状態を検出する制御手段と、を有する。制御手段は、受信中の放送信号の受信状態が所定レベル未満になったとき、受信しているBWSと同一のサービスを放送している異なるアンサンブルを受信して、閲覧しているページと同一のページを表示手段の画面に表示させる。制御手段は、受信したデータサービスの閲覧中のBWSのページの情報を記憶手段に保存し、閲覧中のBWSのページの情報を参照して同一のページを構成し、表示手段の画面に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルオーディオ放送受信装置及びデジタルオーディオ放送受信方法に関し、特に、DAB受信機における放送ウェブサイト(BWS)サービスの受信に好適なデジタルオーディオ放送受信装置及びデジタルオーディオ放送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放送はアナログ放送から、高画質・高音質な出力が可能であるとともに各種データの多重等が可能なデジタル放送に移行してきている。既に、欧州ではデジタルオーディオ放送DAB(Digital Audio Broadcasting)が実用化されている。
【0003】
デジタルオーディオ放送DABは、所定の番組の音声信号データを周波数多重で挿入した複数のデータフィールドと、番組とデータフィールドの対応を示す番組配列データが挿入される情報フィールドを含む周波数多重放送信号を直交変調して放送局より送信し、周波数多重放送受信機で該周波数多重放送信号を受信し、ユーザにより指定された番組に応じたデータフィールドに挿入された周波数多重信号を復調してオーディオ信号に変換して出力するものである。
【0004】
このようなDAB受信機において受信状態が悪化したときには、同一内容の番組を放送している別の放送局から受信することが行われている。これに関して特許文献1では、デジタル音声放送の受信状態が悪化した場合に、デジタル音声放送間のリンク機能を利用して番組を継続し、リンク機能を利用できないときには、デジタル音声放送とFM放送との間のリンク機能を利用して番組を継続して出力する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−224064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、DAB受信機がデジタル放送を受信中に受信が不可能になったとき、予め検索しておいた同一の番組を放送している放送局へサービスリンクするようにしている。
【0007】
一方、デジタルオーディオ放送では、画像情報信号や文字情報信号などが所定のフォーマットで圧縮され、複数のサービスに対応できるように複数チャネルの情報信号がデータ信号として多重化されて送信できるようになっている。
【0008】
このようなデータ放送の一つとしてウェブサイトのページを表示可能なBWS(Broadcasting Web Site)サービスがある。このBWSサービスを受信している状態で受信が不可能になった場合にも、上記したように同一のBWSサービスを提供している放送局へサービスリンクすることによって、引き続きBWSサービスを受けることができるようになっている。
【0009】
しかし、同一のBWSサービスへサービスリンクする際には、ウェブサイトのトップページが表示されるようになっており、ユーザが閲覧していたページを見るためには改めてその階層まで移動する操作が必要になってしまう。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、BWSサービスリンクにおいて、ユーザの操作なしに同一ページを表示可能にするデジタルオーディオ放送受信装置及びデジタルオーディオ放送受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した従来技術の課題を解決するため、本発明の一形態によれば、複数個のオーディオサービス及び少なくとも放送ウェブサイト(BWS)を含む複数個のデータサービスを多重化した放送波を受信するデジタルオーディオ放送受信装置であって、表示手段と、指示に応じた放送局の放送波を受信するチューナーと、受信中の放送信号の受信状態を検出する制御手段と、を有し、前記制御手段は、受信中の放送信号の受信状態が所定レベル未満になったとき、受信しているBWSと同一のサービスを放送している異なるアンサンブルを受信して、閲覧しているページと同一のページを前記表示手段の画面に表示させることを特徴とするデジタルオーディオ放送受信装置が提供される。
【0012】
この形態に係るデジタルオーディオ放送受信装置において、さらに、記憶手段を備え、前記制御手段は、受信したデータサービスの閲覧中のBWSのページの情報を前記記憶手段に保存し、当該閲覧中のBWSのページの情報を参照して同一のページを構成し、前記表示手段の画面に出力するようにしてもよく、前記制御手段は、受信したデータサービスの閲覧中のBWSのページを含む階層の情報を前記記憶手段に保存し、当該閲覧中のBWSのページ及び階層の情報を参照して同一の階層におけるページを構成し、前記表示手段の画面に出力するようにしてもよく、前記制御手段は、前記切り替え後のアンサンブルにおいて前記BWSのページを取得するまで、前記記憶手段に格納しておいた閲覧中のBWSのページを前記表示手段の画面に出力するようにしてもよい。
【0013】
また、前記制御手段は、良好な状態で受信可能な前記異なるアンサンブルが存在することを検出したとき、当該アンサンブルに受信周波数を切り替えてBWSのページを取得するようにしてもよく、前記制御手段は、良好な状態で受信可能な前記異なるアンサンブルが存在しないと判定したとき、前記記憶手段に格納した閲覧中のBWSのページを前記表示手段の画面に出力するようにしてもよく、前記制御手段は、前記アンサンブルが存在するか否かの検出をサービスリンク情報及び他アンサンブル情報を基に行うようにしてもよく、前記制御手段は、受信状態が良好になったとき、前記記憶手段に格納した閲覧中のBWSのページと同一のページを構成して前記表示手段の画面に出力するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の他の形態によれば、受信中のBWSサービスの放送信号の受信状態を検出するステップと、受信状態が所定レベル未満となったとき、デジタルオーディオ放送受信装置で受信しているBWSサービスと同一のサービスを放送している異なるアンサンブルを検出するステップと、前記異なるアンサンブルを受信して前記BWSサービスで閲覧していたページと同一のページを出力するステップと、を有することを特徴とするデジタルオーディオ放送受信方法が提供される。
【0015】
この形態に係るデジタルオーディオ放送受信方法において、前記異なるアンサンブルを検出するステップの前に、前記受信中のBWSサービスのページを記憶手段に保存するステップを有し、前記同一のページを出力するステップでは、前記記憶手段に保存した受信中のBWSのページを参照して同一のページを構成するようにしてもよく、前記異なるアンサンブルを検出するステップの前に、前記受信中のBWSサービスのページを含む階層情報を記憶手段に保存するステップを有し、前記同一のページを出力するステップでは、前記記憶手段に保存した受信中のBWSのページ及び階層の情報を参照して同一のページを構成するようにしてもよく、前記同一のページを出力するステップの前に、前記BWSのページを取得するまで、前記記憶手段に保存した受信中のBWSのページを前記表示手段の画面に出力するステップを有するようにしてもよい。
【0016】
また、前記異なるアンサンブルを検出するステップは、良好な状態で受信可能な前記異なるアンサンブルが存在することを確認するステップであるようにしてもよく、前記異なるアンサンブルを検出するステップの後に、良好な状態で受信可能な前記異なるアンサンブルが存在しないと判定したとき、前記記憶手段に保存した閲覧中のBWSのページを前記表示手段の画面に表示するステップを有するようにしてもよく、前記異なるアンサンブルを検出するステップでは、前記受信中のアンサンブルに含まれるサービスリンク情報及び他アンサンブル情報を基にアンサンブルを検出するようにしてもよく、さらに、受信状態が良好になったとき、前記記憶手段に格納しておいた閲覧中のBWSのページと同一のページを構成して前記表示手段の画面に出力するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のデジタルオーディオ放送受信装置及びデジタルオーディオ放送受信方法では、BWSサービスを受信して、ある階層のページを表示している状態で、受信状態の悪化によりサービスリンクをしたとき、リンク先のBWSサービスにおいてもリンク前に表示していた階層のページを表示するようにしている。これにより、リンク先で表示されるBWSのトップページから、改めて閲覧していた階層のページまで移動させるという手間を省くことが可能になる。
【0018】
また、リンク先で閲覧していた階層のページに移動するまでの間、リンク前のアンサンブルで受信していたBWSのページを表示するようにしている。これにより、サービスリンクをする間もBWSのページが表示されるため、ユーザにサービスリンクの際に画面に何も表示されない状態が続くことによる違和感を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るデジタルオーディオ放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】DABのサービス成分構造の一例を示す図である。
【図3】DABの伝送フレームの構造を示す図である。
【図4】MOTオブジェクトの再構成を説明する図である。
【図5】BWSサービスで表示されるページの階層構成の一例を示す図である。
【図6】BWSの階層記述の一例を示す図である。
【図7】サービスリンク後における同一階層ページ表示処理の一例を示すフローチャート(その1)である。
【図8】サービスリンク時の状況を説明する図である。
【図9】FIG0/6及びFIG0/24のフォーマットを示す図である。
【図10】サービスリンク後における同一階層ページ表示処理の一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、デジタルオーディオ放送受信装置100として、DAB受信機を例にとって説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルオーディオ放送受信装置100の構成を示すブロック図である。この図1に示すように、デジタルオーディオ放送受信装置100は、アンテナ1と、チューナー2と、A/D変換器3と、ベースバンドデコーダ4と、制御部5と、操作部6と、表示部7と、記憶部8により構成されている。ベースバンドデコーダ4は、FFT11と、デマルチプレクサ12と、チャネルデコーダ13と、オーディオデコーダ14と、PADデコーダ15と、パケットモードデコーダ16とで構成されている。
【0022】
アンテナ1は、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式のデジタル放送の電波を受信する。
【0023】
チューナー2は、アンテナ1によって受信した、DAB(Digital Audio Broadcasting)やDMB(Digital Multimedia Broadcasting)などのデジタル放送の電波から所望のチャネルに合致した受信周波数の放送波信号を選択的に抽出して、ベースバンドにダウンコンバートして出力する。A/D変換器3は、ダウンコンバートされたアナログベースバンド信号をデジタル信号に変換する。
【0024】
FFT11は、デジタル信号に変換されたベースバンド信号について高速フーリエ変換を行って受信シンボルを得る。デマルチプレクサ12は、多重化されている信号を分離する。
【0025】
チャネルデコーダ13は、受信シンボルで構成されるDAB伝送フレームから任意の1つの音楽チャネル及び任意のデータチャネルを抽出する。また、チャネルデコーダ13では、復調で得られた受信シンボルを構成するDAB伝送フレームを高速情報チャネル(FIC)並びに複数の音楽チャネル及び複数のデータチャネルを有するメインサービスチャネル(MSC)に分離する。また、MSCからユーザにより選択されたチャネルについてデインタリーブ、ビタビ復号、エネルギー拡散デスクランブルなどの処理を行う。また、FICについてもビタビ復号、エネルギー拡散デスクランブルなどの処理を行う。
【0026】
オーディオデコーダ14は、抽出された音楽チャネルのオーディオ信号をデコードする。デコードされたオーディオ信号は不図示のD/A変換器、増幅器、及びスピーカを介して音声出力される。
【0027】
PADデコーダ15は、チャネルデコーダ13で抽出された、サービスに付加されたプログラム関連データ(PAD)やMOT(Multimedia Object Transfer)データをデコードして、データグループレベルのデータに再構成する。
【0028】
パケットモードデコーダ16は、チャネルデコーダ13で抽出されたサービスを構成するパケットをデコードして、データグループレベルのデータに再構成する。
【0029】
制御部5は、マイクロコンピュータで構成され、デジタルオーディオ放送受信装置100の各部を制御し、操作部12の操作によってチャネル設定の制御信号が入力されたときに、チューナー2が受信するチャネルを決定し、このチャネルに合致する受信周波数をチューナー2に設定する。
【0030】
また、制御部5は、PADデコーダ15又はパケットモードデコーダ16によりデコードされたMOTデータをデコードして、MOTオブジェクトを再構成したり、FIC中の高速情報グループ(FIG)を解析して、同一の内容を放送している放送局があるか否か等の判断を行う。
【0031】
操作部6は、デジタルオーディオ放送受信装置100の操作に必要な操作ボタン等が設けられ、所望の放送局を選局する指示を行う。
【0032】
記憶部7は、ハードディスクや半導体メモリで構成され、BWSサービスを受信して閲覧中のページや階層の情報などを保存する。
【0033】
表示部8は、例えば液晶表示装置(LCD)で構成され、PADデコーダ15又はパケットモードデコーダ16でデコードされて取得したデータを表示する。また、種々の指示を入力するメニュー画面を表示する。表示部8にタッチパネルを設け、ユーザからの指示を入力する場合には、操作部6として機能する。
【0034】
このように構成されたデジタルオーディオ放送受信装置100において、BWSサービスを受信中に受信状態が悪化して他のアンサンブルにサービスリンクするとき、受信していたBWSの階層のページをサービスリンク後も表示するようにする。
【0035】
以下に、BWSを受信中に受信状態が悪化して他のアンサンブルを受信したとき、閲覧していたBWSのページへの切り替えを違和感なく行う処理について、図2から図10を参照しながら説明する。図2及び図3はDABの規格書(EN300401、EN301234)から抜粋したものである。
【0036】
図2は、DABのサービス成分構造の一例を示す図である。ユーザはサービス成分(Service)を選択することにより各サービス成分コンポーネント(Service component)へアクセスする。一つのアンサンブル(Ensemble)により複数個のサービス成分にアクセスすることができ、各サービス成分は1個以上のサービス成分コンポーネントをもつ。
【0037】
各サービス成分の根本的なサービス成分コンポーネントはプライマリサービス成分コンポーネントと呼ばれる。プライマリサービス成分コンポーネントは、通常はオーディオとしてのプログラムサービス成分であるが、データサービス成分であってもよい。
【0038】
アンサンブルラベル(アンサンブル名)がDABアンサンブル1(DAB ENSEMBLE ONE)であるアンサンブルは、サービス成分ラベルがアルファ1ラジオ(ALPHA 1 RADIO)、ベータラジオ(BETA RADIO)、アルファ2ラジオ(ALPHA 2 RADIO)等の複数のサービス成分を含んでいる。
【0039】
アルファ1ラジオは、プライマリ(Primary)のサービス成分コンポーネントを1個、セカンダリ(Secondary)のサービス成分コンポーネントを1個有している。プライマリのサービス成分コンポーネントはオーディオ(Audio)であり、セカンダリのサービス成分コンポーネントは交通メッセージチャネル:TMC(Traffic Message Channel)である。
【0040】
オーディオ成分はMSC内のサブチャネル(SubCh)で伝送され、TMCはFIC内のFIDC(Fast Information Data Channel)で伝送される。
【0041】
ベータラジオはサービス成分コンポーネントを2個もっている。2つともオーディオであり、どちらもMSCのサブチャネルで伝送される。
【0042】
アルファ2ラジオは、アルファ1ラジオと同一のTMCを持ち、スイッチの切り替えによってはオーディオもアルファ1ラジオと同じになることがある。
【0043】
図2に示したTMCのように、DABではオーディオだけでなく、データサービスも放送信号を用いて放送している。データ放送のための放送プロトコルとしてMOT(Multimedia Object Transfer)プロトコルがある。このMOTプロトコルは放送ウェブサイト(BWS:Broadcasting Web Site)やスライドショーのように、時間に依存しないデータをオブジェクト単位で放送する場合に使用されるプロトコルである。
【0044】
このようなBWSのデータはX−PADとしてオーディオのサービスに含まれている場合と、パケットモードの2種類存在し、どちらのデータチャネルもMOTプロトコルによって伝送される。PADは、伝送フレームのうち、音声情報を含むフレームの末尾に配置される。パケットモードはデータ番組そのものを伝送するものであり、データ番組を一定のサイズのパケットと呼ばれるブロックに分割し、これら複数のブロックにまとめたものを数回に分けて伝送する。
【0045】
MOTプロトコルを介して伝送されるデータは、MOTヘッダデータと、MOTヘッダデータに対応するMOTボディ(本体)データとを含んでいる。このうち、MOTボディデータは、複数のMOTオブジェクトデータからなる実際のコンテンツデータであり、MOTヘッダデータは、対応するMOTボディデータのサイズやサービス種類、MOTオブジェクトデータ毎の固有情報であるトランスポートIDなどに関する情報が格納されている。また、BWSのように階層構造をもつデータに対しては、その階層構造の情報をMOTディレクトリによって表している。
【0046】
デジタルオーディオ放送受信装置100は、MOTデータを受信した後、トランスポートIDに基づいて受信されたMOTボディデータを再構成することによって元のデータが得られ、得られたデータを使用してユーザにサービスを提供することができる。
【0047】
このようなMOTデータは、一般に、複数のMSC(Main Service Channel)データを含んでいる。
【0048】
MSCデータは、放送局を介して受信される複数のパケットデータ又はX−PAD(Extend Program Associated Data)のサブフィールドを介して受信される。複数のMSCデータは、それぞれ、個々のMOTオブジェクトデータを構成するためのシリアル情報を有している。例えば、MOTヘッダを構成するためのMSCデータは、1番から10番のシリアル情報を有し、かつ、MOTボディを構成するためのMSCデータもまた1番から10番のシリアル情報を有する。この場合には、MSCデータは上記のシリアル情報に加えてMSCデータの使用により形成されたMOTオブジェクトデータが、MOTヘッダ又はMOTボディのいずれに該当するかに関する情報も含む。
【0049】
図3は、DABの伝送フレーム(Transmission Frame)の構成を示す図である。送信されるDAB信号は、OFDMで変調されたOFDM信号として送信され、図3に示す伝送フレームはOFDM信号を復調した復調OFDM信号から得られる。
【0050】
DABの伝送フレームは、図3(a)に示すように、同期チャネル(Synchronization Channel)、高速情報チャネル(FIC:Fast Information Channel)、主サービスチャネル(MSC:Main Service Channel)で構成される。
【0051】
同期チャネルは、フレームを識別するものであり、伝送フレーム同期化(transmission frame synchronization)、自動周波数制御(automatic frequency control)、チャネル状態推定(channel state estimation)、送信機識別(transmitter identification)のような基本的復調器の機能のために用いられる。
【0052】
FICは、受信機が迅速に情報をアクセスできるようにするためのチャネルであり、多重化の配列、サービスの名称、ページング・コード、トラヒック・メッセージ制御などの情報が含まれる。FICは、複数個のブロックFIB(Fast Information Block)で構成され、FIBは、30バイトのFIBデータ領域と16ビットのCRC(Cyclic Redundancy Check)で構成される。FIBデータ領域は、一つ以上のFIG(Fast Information Group)、1個のエンドマーカ(End marker)、及び1個のパッディング(FIBデータ領域をバイトに合わせるために残ったビットに0を入れること)で構成される。
【0053】
FIGはFIGタイプ(FIG type)及び長さ(Length)で構成されるFIGヘッダとFIGデータフィールドからなり、FIGタイプは、FIGデータフィールドに記録されるデータのタイプを表し、長さは、FIGデータフィールドの長さを表す。
【0054】
例えば、FIGタイプ0は、現在以降のマルチプレクス構成(multiplex configuration)、マルチプレクス再構成(multiplex re-configuration)、時間と日付、及びその他の基本サービス情報を表すために用いられる。このFIGタイプ0のFIGデータフィールドには、拡張(extension)フィールドとタイプ0フィールド(Type 0 field)がある。拡張フィールドは、タイプ0フィールドの32種のインタープリテーションの中から一つを識別するためのものである。
【0055】
MSCは、ビデオ、オーディオ、データサービスコンポーネントを搬送するために用いられるチャネルであり、伝送モードに応じた数のCIF(Common Interleaved Frame)で構成される。各CIFは、複数の音楽用のサブチャネル、複数の一般データ用のサブチャネルが多重化されており、1つのサブチャネルは一つの番組に相当する。
【0056】
図3(b)は、BWSがオーディオのサービスに含まれている場合の、MSCデータを構成するX−PADデータの例を示している。図3(b)に示すように、デジタルオーディオ放送受信装置は、X−PADモードによって受信されたデータを用いてMSCデータを構成する。
【0057】
MSCデータは、MOTオブジェクトデータを構成するための情報、すなわち、トランスポートID,MSCデータのシリアル番号であるセグメント番号、及びトランスポートIDに対応するMOTオブジェクトデータを構成するために必要な最後のセグメント番号、などが格納されるMSCデータグループヘッダを含んでいる。さらに、MSCデータグループヘッダは、MOTオブジェクトデータを構成するのに必要なMSCデータの個数に関する情報を含むことができる。
【0058】
図3(c)は、MSCデータを構成するためのパケットデータの例を示している。BWSのデータは、パケットデータフィールド(Packet data field)に記述されている。図3(b)のX−PADモードと同様に、デジタルオーディオ放送受信機は、パケットモードによって受信されたデータを用いてMSCデータを構成することができる。
【0059】
図4は、MOTオブジェクトの再構成を説明する図である。チャネルデコーダ13でデコードされたX−PADデータサブフィールドのデータは、PADデコーダ15でデコードされてデータグループレベルのMSCデータグループデータの一部が構成される。また、パケットデータはパケットモードデコーダ16でデコードされてMSCデータグループデータの一部が構成される。MSCデータグループのデータはMOTデータデコーダに入力され、データグループデコーダを通してMOTセグメントを得る。このMOTセグメントを基に、MOTディレクトリとMOTボディを再構成する。MOTディレクトリとMOTボディで構成されるMOTオブジェクトはユーザ端末内のデコーダを通して画像データに変換されて出力される。
【0060】
このようにして再構成されたMOTオブジェクトから、BWSサービスを受信したときにどの階層の画面まで表示されているかを検出する。BWSサービスの階層構造が記述されたMOTディレクトリを参照することによって、どの階層のどのページまで再構成されたかを検出する。
【0061】
図5は、BWSサービスで表示される画面の階層構成の一例を示した図である。また、図6は、具体的なBWSの階層記述の一例を示した図である。図5に示すように、BWSのページは一つの最上位のTopnewsの下に複数の階層を有し、各階層で1又は複数のページを有している。この最上位のページや階層などのデータはMOTディレクトリに記述されている。
【0062】
図6(a)は、2つの番組(News,Sport)に対応する論理構造であり、図6(b)は、図6(a)に対応するディレクトリの記述例を示している。例えば、図6(a)の“News1-1”のページは、図6(b)の“/news/index/news1/news1-1.html”のデータを用いて表示される。
【0063】
サービスリンクによって、別のアンサンブルを受信したとき、最初に構成されるページは最上層のページとなっている。そのため、ユーザが下位の階層のページを閲覧していたときには、その階層のページは表示されず、再構成が完了した後、改めてメニュー等を操作してユーザの所望のページを表示させなければならない。例えば、図5の階層2−5の画面をユーザが閲覧していたとすると、サービスリンク後に最初に表示される画面はTopnewsのページであり、そこから階層2−5のページまで移動させなければならない。
【0064】
本実施形態では、閲覧していた階層及びページの情報を記憶部8に保存しておき、サービスリンク後のアンサンブルの受信後、閲覧していた階層のページと同一のページを表示するようにしている。すなわち、MOTディレクトリ及びMOTボディのMOTオブジェクトの情報を基に、トップページを表示することなく、閲覧していたページと同一のページが構成された段階でそのページを表示するようにしている。
【0065】
なお、この同一のページが構成されるまでにどの程度の時間がかかるかは不明である。Topnewsが一番先に構成されるものの、下位の階層の画面の構成順序は決まっていない。そのため、閲覧していた画面が早く表示される場合もあるし表示されるまでに時間がかかる場合もある。そこで、サービスリンク後のアンサンブルの受信において同一ページが構成されるまで、記憶部8に保存したアンサンブル切り替え時点でのページのデータそのものを用いて表示するようにしてもよい。その後、同一ページが構成されたときは、その構成されたページのデータを用いて再表示するようにしてもよい。
【0066】
このように、本実施形態ではデジタルオーディオ放送受信装置100でBWSサービスを受信している状態で、受信状態が悪化した場合に、同一のサービスを放送している異なるアンサンブルを検出して閲覧していたBWSサービスのページと同一のページを表示するようにしている。これにより、サービスリンクが行われたときに、それまで閲覧していたページに移動する手間を省くことができる。
【0067】
次に、図7から図10を参照しながら、サービスリンク後における同一ページ表示処理について説明する。
【0068】
図7は、デジタルオーディオ放送受信装置100の制御部5が行うサービスリンク後における同一ページ表示処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理では、デジタル放送の受信状態が悪化したことを検出したときに実施されるものとする。受信状態の悪化の検出は、例えば、チャネルデコーダ13から取得するBERが規定値を越えたことや、受信強度などによって判断される。
【0069】
まず、図7のステップS11において、サービスリンク関連情報を取得する。図8の、受信中のDAB放送(1)とリンク先のDAB放送(2)とのサービスリンク時の状況説明図に示すように、DAB放送(1)を受信中に伝送フレームのFIGデータを取得して同一のサービスを放送しているアンサンブルがあるか否かを確認し、その情報を保存する。サービスリンクに関連する情報は、受信中のDABのFICデータの中のFIG0/6(拡張6のためのタイプ0フィールド)に含まれている。このFIGデータを取得して、サービスリンクがされているか否かを確認する。図9(a)はFIG0/6のフォーマットであり、サービスリンクされていればFIG0/6の中のSIdにリンク先のサービス(放送局)が記載されている。
【0070】
次のステップS12において、現在視聴している放送と同一内容のサービスを放送しいているリンク先(別アンサンブル)の周波数が存在するか否かを確認する。ステップS11において取得したサービスリンク関連情報と、他アンサンブルに関する情報を基に現在受信しているサービスと同一のサービスがどこにあるのかを確認する。他アンサンブルに関する情報は、FICのFIG0/24に含まれている。図9(b)はFIG0/24のフォーマットであり、サービスSIdに対応するアンサンブルが存在すれば、EIdにそのアンサンブルが記載されている。
【0071】
次のステップS13において、リンク先の受信状況を確認する。受信状況の確認は、リンク先の周波数にチューニングして、その放送局のC/N比(搬送波電力対雑音電力比)を検出する。評価基準としては、C/N比の他に、受信強度やBERなどの受信レベルの情報を使用してもよい。
【0072】
次のステップS14において、リンク可能か否かを判断する。ステップS13において検出したC/N比等の値を基に受信状況が良好か否かを判断する。リンク可能であれば、ステップS15に移行し、受信状況が悪くリンク不可能であれば、ステップS17に移行する。
【0073】
次のステップS15において、現在閲覧中のBWS情報の階層を確認する。図8に示すように、受信状態が劣化したと判断された時点におけるBWS情報を、MOTディレクトリ及びMOTボディから取得する。
【0074】
次のステップS16において、ステップS12で検出した別アンサンブルへリンクするとともに、ステップS15において確認したBWS情報の階層まで移動させてBWSのページを出力する。
【0075】
一方、リンク可能な別アンサンブルが存在しない場合は、ステップS17において現在のサービスの受信を継続して、本処理は終了する。
【0076】
なお、元のアンサンブルの受信状態が良好になったときには、再び元のアンサンブルへ戻して元のアンサンブルにおけるBWS情報を基にページを表示するようにしてもよい。
【0077】
次に、アンサンブルの切り替えの際に、BWSサービスのページの表示が途切れることのないようにする処理について説明する。
【0078】
図10のステップS21からステップS24は、図7のステップS11からステップS14までの処理と同様であるので説明を省略する。
【0079】
図10のステップS25において、現在閲覧中のBWS情報の階層を確認する。このとき、現在閲覧中のBWSのページの情報を記憶部8に格納しておく。
【0080】
次のステップS26において、別アンサンブルへリンクするとともに、ステップS25で確認した階層に移動するまで、現在のアンサンブルで受信状態が良好なときに受信したBWSのページを出力する。すなわち、サービスリンク先の放送を受信したあと、そのサービスにおいて該当するBWSのページを生成するまで、記憶部8に格納されたBWSのページデータを用いて画面に表示する。その後、リンク先のサービスにおけるBWSのページが生成されたときはステップS27においてそのBWSのページを表示して本処理は終了する。
【0081】
一方、受信状態が良好なリンク先が存在しないときは、ステップS28において現在のサービスの受信を継続するとともに、記憶部8に格納した受信状態が良好なときのBWSのページを出力して本処理は終了する。
【0082】
なお、上記処理ではステップS25又はステップS28において現在閲覧中のBWSのページの情報を記憶部8に格納しているが、ステップS24における他アンサンブルへのサービスリンクが可能か否かの判断をする前の時点で閲覧中のBWSページの情報を記憶部8に格納しておくようにしてもよい。また、閲覧するBWSのページが変更になった時点でその情報を記憶部8に格納しておくようにしてもよい。これらの場合には、ステップS26又はステップS28において、記憶部8に格納されたBWSのページを表示することになる。
【0083】
また、元のアンサンブルの受信状態が良好になったときには、再び元のアンサンブルへ戻して元のアンサンブルにおけるBWS情報を基にページを表示するようにしてもよい。この場合に、他アンサンブルにおいて受信しているBWSのページの情報を記憶部8に保存しておき、元のアンサンブルにおけるBWSのページが再構成されるまで、他アンサンブルの受信中に保存しておいたBWSのページを表示するようにしてもよい。
【0084】
以上説明したように、本実施形態のデジタルオーディオ放送受信装置及びデジタルオーディオ放送受信方法では、BWSサービスを受信して、ある階層のページを表示している状態で、受信状態の悪化によりサービスリンクをしたとき、リンク先のBWSサービスにおいてもリンク前に表示していた階層のページを表示するようにしている。これにより、リンク先で表示されるBWSのトップページから、改めて閲覧していた階層のページまで移動させるという手間を省くことが可能になる。
【0085】
また、リンク先で閲覧していた階層のページに移動するまでの間、リンク前のアンサンブルで受信していたBWSのページを表示するようにしている。これにより、サービスリンクをする間もBWSのページが表示されるため、ユーザにサービスリンクの際に画面に何も表示されない状態が続くことによる違和感を軽減することが可能になる。
【符号の説明】
【0086】
1…アンテナ、
2…チューナー、
3…A/D変換器、
4…ベースバンドデコーダ、
5…制御部、
6…操作部、
7…表示部、
8…記憶部、
11…FFT、
12…デマルチプレクサ、
13…チャネルデコーダ、
14…オーディオデコーダ、
15…PADデコーダ、
16…パケットモードデコーダ、
100…デジタルオーディオ放送受信装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のオーディオサービス及び少なくとも放送ウェブサイト(BWS)を含む複数個のデータサービスを多重化した放送波を受信するデジタルオーディオ放送受信装置であって、
表示手段と、
指示に応じた放送局の放送波を受信するチューナーと、
受信中の放送信号の受信状態を検出する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、受信中の放送信号の受信状態が所定レベル未満になったとき、受信しているBWSと同一のサービスを放送している異なるアンサンブルを受信して、閲覧しているページと同一のページを前記表示手段の画面に表示させることを特徴とするデジタルオーディオ放送受信装置。
【請求項2】
さらに、記憶手段を備え、
前記制御手段は、受信したデータサービスの閲覧中のBWSのページの情報を前記記憶手段に保存し、当該閲覧中のBWSのページの情報を参照して同一のページを構成し、前記表示手段の画面に出力することを特徴とする請求項1に記載のデジタルオーディオ放送受信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、受信したデータサービスの閲覧中のBWSのページを含む階層の情報を前記記憶手段に保存し、当該閲覧中のBWSのページ及び階層の情報を参照して同一の階層におけるページを構成し、前記表示手段の画面に出力することを特徴とする請求項2に記載のデジタルオーディオ放送受信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記切り替え後のアンサンブルにおいて前記BWSのページを取得するまで、前記記憶手段に格納しておいた閲覧中のBWSのページを前記表示手段の画面に出力することを特徴とする請求項3に記載のデジタルオーディオ放送受信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、良好な状態で受信可能な前記異なるアンサンブルが存在することを検出したとき、当該アンサンブルに受信周波数を切り替えてBWSのページを取得することを特徴とする請求項1に記載のデジタルオーディオ放送受信装置。
【請求項6】
前記制御手段は、良好な状態で受信可能な前記異なるアンサンブルが存在しないと判定したとき、前記記憶手段に格納した閲覧中のBWSのページを前記表示手段の画面に出力することを特徴とする請求項2に記載のデジタルオーディオ放送受信装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記アンサンブルが存在するか否かの検出をサービスリンク情報及び他アンサンブル情報を基に行うことを特徴とする請求項1に記載のデジタルオーディオ放送受信装置。
【請求項8】
前記制御手段は、受信状態が良好になったとき、前記記憶手段に格納した閲覧中のBWSのページと同一のページを構成して前記表示手段の画面に出力することを特徴とする請求項4に記載のデジタルオーディオ放送受信装置。
【請求項9】
受信中のBWSサービスの放送信号の受信状態を検出するステップと、
受信状態が所定レベル未満となったとき、デジタルオーディオ放送受信装置で受信しているBWSサービスと同一のサービスを放送している異なるアンサンブルを検出するステップと、
前記異なるアンサンブルを受信して前記BWSサービスで閲覧していたページと同一のページを出力するステップと、
を有することを特徴とするデジタルオーディオ放送受信方法。
【請求項10】
前記異なるアンサンブルを検出するステップの前に、前記受信中のBWSサービスのページを記憶手段に保存するステップを有し、
前記同一のページを出力するステップでは、前記記憶手段に保存した受信中のBWSのページを参照して同一のページを構成することを特徴とする請求項9に記載のデジタルオーディオ放送受信方法。
【請求項11】
前記異なるアンサンブルを検出するステップの前に、前記受信中のBWSサービスのページを含む階層情報を記憶手段に保存するステップを有し、
前記同一のページを出力するステップでは、前記記憶手段に保存した受信中のBWSのページ及び階層の情報を参照して同一のページを構成することを特徴とする請求項9に記載のデジタルオーディオ放送受信方法。
【請求項12】
前記同一のページを出力するステップの前に、
前記BWSのページを取得するまで、前記記憶手段に保存した受信中のBWSのページを前記表示手段の画面に出力するステップを有することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載のデジタルオーディオ放送受信方法。
【請求項13】
前記異なるアンサンブルを検出するステップは、良好な状態で受信可能な前記異なるアンサンブルが存在することを確認するステップであることを特徴とする請求項9に記載のデジタルオーディオ放送受信方法。
【請求項14】
前記異なるアンサンブルを検出するステップの後に、
良好な状態で受信可能な前記異なるアンサンブルが存在しないと判定したとき、前記記憶手段に保存した閲覧中のBWSのページを前記表示手段の画面に表示するステップを有することを特徴とする請求項9に記載のデジタルオーディオ放送受信方法。
【請求項15】
前記異なるアンサンブルを検出するステップでは、前記受信中のアンサンブルに含まれるサービスリンク情報及び他アンサンブル情報を基にアンサンブルを検出することを特徴とする請求項9に記載のデジタルオーディオ放送受信方法。
【請求項16】
さらに、受信状態が良好になったとき、前記記憶手段に格納しておいた閲覧中のBWSのページと同一のページを構成して前記表示手段の画面に出力することを特徴とする請求項9に記載のデジタルオーディオ放送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−176547(P2011−176547A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38418(P2010−38418)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】