説明

デジタルデータ送信装置、受信装置及びプログラム

【課題】複数のTSをパケット単位で時分割多重し、ヘッダを付加したフレームを構成して伝送するシステムにおいて、フレームサイズを大きくし、データの伝送効率を向上させる。
【解決手段】送信装置1のスロット割り当て部11は、入力したTSの数からデータスロットの数を決定し、各TSに割り当てるスロット数及び速度変換後の速度を決定し、TSを伝送可能か否かを判定し、多重するTSの数、TSの識別情報及び各スロットに格納されるTSの相対TS番号を含むスロット割り当て情報を生成する。速度変換部10は、速度変換後の速度により、各TSにヌルパケット等を挿入して速度変換する。ヘッダ生成部12は、スロット割り当て情報を含むヘッダを生成し、多重化部13は、スロット割り当て情報に基づいて各TSをデータスロットに格納しフレームを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPEG−2 TS信号等のパケット形式のデジタルデータを伝送するシステムにおいて、複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、フレームを構成して伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のMPEG−2 TS(ISO/IEC(International Organization for Standardization:国際標準化機構/International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)13818−1に規定されるトランスポートストリーム)を、独立性を保った状態で、単一のTSを想定した伝送路へ伝送させる方式が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。
【0003】
この伝送方式は、デジタルデータ送信装置において、TSパケット(同期バイト(0x47)で始まる固定長(188バイト)のパケット、または、これに固定長のパリティバイトを追加したパケット)列にヘッダを付加して周期的なフレームを生成し、フレーム内のスロットに収容される各TSパケットについてのスロット位置の情報(以下、スロット割り当て情報という。)を利用することにより、TSパケット列を多重化するものである。また、デジタルデータ受信装置において、多重化されたTSパケット列のフレームを受信し、スロット割り当て情報を利用することにより、TSパケット列を分離する。フレーム内のヘッダは、必要な同期語データと、フレームにおける各TSの位置を示すスロット割り当て情報とを含み、TSパケット形式であることがポイントとなっている。以下、TSパケット形式のヘッダ及びTSパケットからなるフレームを多重フレームという。
【0004】
多重されるデータは、主にTSを対象とするが、TSと同様の同期バイトで始まる固定長パケット列のデータであれば、TSと同様に伝送可能である。そこで、「MPEG−2 TS」と「ISO/IEC 13818−1には準拠しないがTSと同様に同期バイト(0x47)で始まる固定長パケット列のデータ」とを区別しないで、どちらもTSと表記して説明する。
【0005】
前述の伝送方式において、スロット割り当て情報を生成する方法には、スロット毎にTS_idを指定する直接指定方法と、相対TS番号を利用する間接指定方法がある(非特許文献2を参照)。直接指定方法は、スロット毎にTS_id及びOriginal_network_idの組を記述し、スロット割り当て情報とするものである。間接指定方法は、多重するTSの最大数と同数のTS_id、またはTS_id及びOriginal_network_idを記述すると共に、TS_id、または、TS_id及びOriginal_network_idを記述した順番で決定する相対TS番号を、各スロットについて記述し、スロット割り当て情報とするものである(非特許文献2〜4を参照)。この間接指定方法は、ケーブルテレビの複数TS伝送方式(非特許文献3を参照)及びBSデジタル放送の伝送方式(非特許文献4を参照)において、実用化されている。なお、非特許文献3に示される方式では、TS_idとOriginal_network_idの組を記述し、非特許文献4に示される方式では、TS_idだけを記述している。
【0006】
ここで、直接指定方法においても間接指定方法においても、1フレーム内のデータスロット数は規定されていないものとして、1フレームで伝送できるデータスロット数の最大値を求める。1フレーム内のデータスロット数が大きいほど、フレーム中のヘッダの割合が小さくなり、伝送路の利用効率が向上するが、その一方、1フレーム内のデータスロット数が大きいほど、スロット割り当て情報が大きくなる。したがって、スロット割り当て情報がヘッダ内に格納可能な大きさとなるように、1フレームで伝送できるデータスロット数の最大値は制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3051729号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ITU−T Rec.J.183
【非特許文献2】“ケーブルテレビ複数MPEG−TS多重方式の一提案”,映像情報メディア学会技術報告,BCT’99−33,pp.7−12(Jul.1999)
【非特許文献3】日本CATV技術協会標準規格 JCTEA STD−002−5.0 「デジタル有線テレビジョン放送 多重化装置」
【非特許文献4】電波産業会 標準規格 ARIB STD−B20 3.0版 「衛星デジタル放送の伝送方式」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以下、スロット割り当て情報を生成する直接指定方法及び間接指定方法について、1フレームで伝送可能なデータスロット数の最大値を比較する。その条件として、前述の非特許文献1〜3と同様に、各データスロットに格納されたTSを識別するために、TS_id(16ビット=2バイト)及びOriginal_network_id(16ビット=2バイト)が必要であるが、非特許文献1とは異なり、1フレームを構成する1個のヘッダスロット及び複数個のデータスロットにおいて、データスロット数は規定されていないものとする。また、ヘッダスロットには、TSパケット形式の1個のヘッダ(188バイト)が格納され、その188バイトのうちのスロット割り当て情報を格納する領域は、最大で170バイト確保可能であるものとする。
【0010】
直接指定方法では、1個のヘッダ中に記述できるスロット割り当て情報は、最大で42スロット分に制限される(1スロットあたり4バイト(16ビット+16ビット)必要になるから、170/4=42.5により、4×42=168バイト<170バイト)ため、1フレーム内のデータスロット数の最大値は42となる。このとき、フレーム中のヘッダパケットの割合は少なくとも1/43以上となる。このように、直接指定方法は伝送効率が低いという問題があった。
【0011】
間接指定方法では、非特許文献2に記載されているとおり、フレームに多重されるTS数が少ない場合に、直接指定方法よりもスロット割り当て情報を記述する領域が小さくなるため、直接指定方法と比べて1フレーム内のデータスロット数を大きくすることができる。例えば、非特許文献3に記載されているように、フレームに多重されるTS数が最大で15のとき、相対TS番号は0〜15であるので4ビットで表すことができる(相対TS番号「0」は、TSパケットを配置していないスロットを表す)。このとき、非特許文献1〜3に記載されている方法にしたがってスロット割り当て情報を生成すると、1フレーム内のデータスロット数は最大で220(4バイト×15+4/8バイト×220=170バイト)となる。また、例えば、フレームに多重されるTS数が最大で31のとき、相対TS番号は0〜31であるので5ビットで表すことができる。このとき、1フレーム内のデータスロット数は最大で73(4バイト×31+5/8バイト×73=169.625バイト)となる。
【0012】
したがって、フレーム中のヘッダパケットの割合は、それぞれ1/221以上、1/74以上となる。このように、間接指定方法は、伝送路中のヘッダパケットの割合を、直接指定方法よりも低くできる場合があるため、すなわち、スロット割り当て情報の大きさを、直接指定方法よりも小さくできる場合があるため、1フレーム内のデータスロット数を大きくでき、伝送効率を高くできることがポイントである。しかしながら、非特許文献1〜4に示される方法では、TS_idとOriginal_network_idの組(非特許文献4においてはTS_id)を記述する領域の大きさは、実際に多重されるTSの数に関わらず、多重するTSの最大数を記述できる大きさにあらかじめ固定される。
【0013】
例えば、非特許文献3においては、多重するTSの最大数を15と規定しており、TS_id、Original_network_idと相対TS番号の対応表の大きさは、15TS×4バイト=60バイトの固定値である。また、非特許文献4においては、想定されるTSの最大数は8であり、前述の対応表の大きさは、8TS×2バイト=16バイトの固定値である。また、実際には多重されるTS数が例えば4であったとしても、実際には多重されないTS(TS5〜TS15)に対しては、TS_id、Original_network_idと共に、無意味な情報「0xFFFF」が記述される。このように、間接指定方法を用いた従来技術においては、実際に多重するTSの数によって、ヘッダ内に無意味な情報(0xFFFF)を記述して伝送する場合があり、伝送効率が低下するという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、以上の課題を鑑みてなされたものであり、複数のTSをパケット単位で時分割多重し、ヘッダを付加したフレームを構成して伝送するシステムにおいて、フレームサイズを大きくすることにより、データの伝送効率を向上させることが可能なデジタルデータ送信装置、受信装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、請求項1の発明は、所定の速度で入力した複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、ヘッダスロット及びデータスロットからなるフレームを構成して送信するデジタルデータ送信装置において、前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納する際の、それぞれのデジタルデータに対して割り当てるデータスロットに関する情報を、スロット割り当て情報として生成するスロット割り当て部と、前記スロット割り当て情報及び前記フレーム同期を確立するためのフレーム同期情報を含むヘッダを生成するヘッダ生成部と、前記ヘッダを前記フレーム内のヘッダスロットに格納し、前記スロット割り当て情報に基づいて、前記複数のデジタルデータを前記データスロットに格納し、多重化してフレームを構成する多重化部と、を備え、前記スロット割り当て部が、前記複数のデジタルデータの数に基づいて、前記フレーム内のデータスロット数を決定すると共に、前記複数のデジタルデータのそれぞれに割り当てるデータスロット数を算出し、前記算出したデータスロット数の全てのデジタルデータを伝送可能か否かを判定し、伝送不可能と判定した場合にはエラーを出力し、伝送可能と判定した場合には、前記複数のデジタルデータの数、各データスロットに格納されるデジタルデータを特定するための情報を含むスロット割り当て情報を生成する、ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のデジタルデータ送信装置において、前記スロット割り当て部は、前記複数のデジタルデータの数と前記フレーム内のデータスロット数の最大値との対応表をあらかじめ記憶しておき、前記複数のデジタルデータの数及び前記対応表に基づいて、前記フレーム内のデータスロット数を決定する、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載のデジタルデータ送信装置において、前記スロット割り当て部が、前記算出したデータスロット数の全てのデジタルデータを伝送不可能と判定した場合に、前記複数のデジタルデータのうちいずれかのデジタルデータの速度を、前記所定の速度よりも低下させるためのエラーを出力する、ことを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項4の発明は、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデジタルデータ送信装置により送信されたフレームを受信し、前記フレームからデジタルデータを分離するデジタルデータ受信装置であって、前記フレーム内のヘッダに含まれるフレーム同期情報に基づいてフレーム同期を確立する同期確立部と、前記フレーム同期が確立したフレーム内のヘッダから、前記スロット割り当て情報を取得するスロット割り当て情報取得部と、前記スロット割り当て情報に基づいて、前記フレーム内のデータスロットから所定のデジタルデータを分離する分離部と、を備え、前記スロット割り当て情報取得部が、前記スロット割り当て情報から複数のデジタルデータの数を取得し、前記複数のデジタルデータの数に基づいて前記フレーム内のデータスロット数を決定し、前記スロット割り当て情報から、前記フレーム内のデータスロット数分のデータスロットに格納されたデジタルデータを特定するための情報を取得し、前記分離部が、前記各データスロットに格納されたデジタルデータを特定するための情報に基づいて、前記フレーム内のデータスロットから所定のデジタルデータを分離する、ことを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項5の発明は、コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデジタルデータ送信装置として機能させるためのデジタルデータ送信プログラムにある。
【0020】
また、請求項6の発明は、コンピュータを、請求項4に記載のデジタルデータ受信装置として機能させるためのデジタルデータ受信プログラムにある。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、複数のTSをパケット単位で時分割多重し、ヘッダを付加したフレームを構成して伝送するシステムにおいて、フレームサイズを大きくすることにより、データの伝送効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スロット割り当て部の処理を示すフローチャートである。
【図3】多重するTS数とフレーム内のデータスロット数の最大値との対応表である。
【図4】スロット割り当て情報の例を示す図である。
【図5】多重化部が生成するフレームの構成例を示す図である。
【図6】ヘッダ生成部が生成するヘッダの構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態による送信装置を利用したアプリケーション例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による受信装置の構成を示すブロック図である。
【図9】スロット割り当て情報取得部の処理を示すフローチャートである。
【図10】分離部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する実施例は、複数のTSをパケット単位で時分割多重し、ヘッダを付加したフレームを構成して伝送するシステムにおいて、各TSをフレーム内のデータスロットに割り当てる際に、各TSに割り当てるスロット数(データスロット数)及びスロット位置を示すスロット割り当て情報を生成する。本実施例では、各TSに割り当てるスロット数は、整数とする。本実施例は、各TSに割り当てるスロット数として、できる限り大きな数を設定できるようにすることを特徴とする。また、スロット割り当て情報として、多重するTSの数、各TSのTS_id(TS識別子)及びOriginal_network_id(オリジナルネットワーク識別子)を組み合わせた識別情報(以下、各TSの識別情報という。)、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号を規定する。これにより、フレーム内のデータスロット数を増やすことができ、フレームサイズが大きくなるから、フレームサイズに対するデータスロットのサイズの割合が大きくなり、データの伝送効率を向上させることができる。
【0024】
本実施例は、フレーム内のヘッダに格納されるスロット割り当て情報として、多重するTSの数、各TSの識別情報、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号を規定し、多重化したTSを伝送する例である。なお、本実施例では、送信すべきTSの速度は固定として説明するが、本発明の一般性を失うものではない。
【0025】
〔送信装置〕
図1は、送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1は、速度変換部10−1〜10−J、スロット割り当て部11、ヘッダ生成部12及び多重化部13を備えている。送信装置1は、複数のTS1〜TSJを入力し、スロット割り当て情報を生成し、スロット割り当て情報に基づいて複数のTS1〜TSJをパケット単位で時分割多重し、ヘッダを付加したフレームを構成して受信装置へ送信する。
【0026】
送信装置1が送信すべきJ個(Jは整数)のTS1〜TSJを入力すると、速度変換部10−1〜10−Jは、TS1〜TSJをそれぞれ入力すると共に、スロット割り当て部11からTS1〜TSJに対する速度変換後の速度を入力する。そして、速度変換部10−1〜10−Jは、入力したTS1〜TSJの速度をそれぞれ測定し、元の速度と変換後の速度との間の差分について、TS1〜TSJにヌルパケットをそれぞれ挿入し、PCR(Program Clock Reference)の値を書き換えることによって、TS1〜TSJの速度を変換し、速度変換後のTS1〜TSJを多重化部13に出力する。
【0027】
速度変換部10−1〜10−Jは、TS1〜TSJが「ISO/IEC 13818−1には準拠しないがTSと同様に同期バイト(0x47)で始まる固定長パケット列のデータ」である場合は、適当なスタッフデータを付加して速度変換を行う。また、速度変換部10−1〜10−Jは、TS1〜TSJの速度が固定かつ既知の場合、または速度が可変であるがその最大値が既知である場合、TS1〜TSJの速度を測定することなく、既知の速度または速度の最大値を上回るように予め設定されたTS1〜TSJの速度により、速度変換を行うようにしてもよい。また、速度変換部10−1〜10−Jは、スロット割り当て部11から速度変換後の速度の代わりにスロット割り当て情報を入力し、スロット割り当て情報から速度変換後の速度を算出し、元の速度と変換後の速度との間の差分に相当するヌルパケットをTS1〜TSJに挿入するようにしてもよい。
【0028】
スロット割り当て部11は、各TS1〜TSJの速度を示す速度情報1〜Jを入力する。そして、スロット割り当て部11は、入力した速度情報1〜Jに基づいて、後述する(1)及び(2)の条件を満たすように、フレーム内のデータスロット数を決定すると共に、各TSに割り当てるスロット数と、各TSの速度変換後の速度を決定する。そして、スロット割り当て部11は、フレーム内のデータスロット数と各TSに割り当てるスロット数の合計とを比較して、各TSを伝送可能か否か判定し、各TSを伝送不可能であると判定した場合には、エラーを出力し、伝送可能であると判定した場合には、各TS1〜TSJに割り当てるスロット位置を決定し、スロット割り当て情報を生成する。ここでは、スロット割り当て部11は、多重するTSの数、各TSの識別情報、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号を含むスロット割り当て情報を生成する。そして、スロット割り当て部11は、速度変換後の速度を速度変換部10−1〜10−Jに出力し、スロット割り当て情報をヘッダ生成部12に出力し、1フレーム内のデータスロット数及びスロット割り当て情報を多重化部13に出力する。
【0029】
ここで、速度変換後の各TSの速度及びスロット割り当て情報は、TS1〜TSJのTSパケットが多重化時に欠落しないで所定の条件を満たすように、決定及び生成される。変換後の速度を決定する処理の詳細、スロット割り当て情報を生成する処理の詳細、及びスロット割り当て情報の詳細については後述する。
【0030】
なお、スロット割り当て部11は、TS1〜TSJの速度が既知の場合、予め取得した既知の速度情報1〜Jを入力するようにしてもよい。また、TS1〜TSJの速度が既知でない場合、速度変換部10−1〜10−Jまたは図示しない速度情報測定部により測定された速度情報1〜Jを入力するようにしてもよい。この場合、速度情報測定部は、TS1〜TSJを入力し、TS1〜TSJに基づいて速度情報1〜Jをそれぞれ測定する。
【0031】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部11からスロット割り当て情報を入力し、スロット割り当て情報を含むヘッダを生成し、多重化部13に出力する。ヘッダの詳細については後述する。
【0032】
多重化部13は、速度変換部10−1〜10−Jから速度変換後のTS1〜TSJを入力し、スロット割り当て部11からフレーム内のデータスロット数及びスロット割り当て情報を入力し、ヘッダ生成部12からヘッダを入力する。そして、多重化部13は、スロット割り当て情報に基づいて、TS1〜TSJに割り当てるスロット数及び位置を算出し、TS1〜TSJをフレーム内のデータスロットに順番に連続して格納すると共に、ヘッダをフレーム内のヘッダスロットに格納し、TS1〜TSJ及びヘッダをフレーム内のデータスロット数で指定された大きさのフレームに多重化し、フレームを構成して出力する。多重化部13により出力されたフレームは、送信装置1から放送網の伝送路を介して後述する受信装置へ、放送波として伝送される。
【0033】
(具体例)
次に、多重化の具体例、すなわち、フレーム内のデータスロット数、スロット割り当て情報及びそれらに基づくフレームの生成例について説明する。ここでは、入力するTS数が4(J=4)の場合について説明する。各TS1〜TS4の元の速度は、それぞれTS1=42.34・・・Mbps、TS2=22.98・・・Mbps、TS3=30Mbps、TS4=4.11・・・Mbpsであり、伝送路の帯域が100Mbpsであるとする。なお、全TSの合計の速度は99.43・・・Mbpsであり、伝送路の帯域を下回っている。
【0034】
また、本実施例では、多重するTSの最大数は15と規定されているものとする。すなわち、多重するTSの最大数は15であるが、実際に多重されるTS数が4(J=4)の場合について説明する。
【0035】
まず、この具体例について、従来技術である非特許文献1〜3に示す方法を用いた場合について説明する。既に説明したように、非特許文献1〜3に示す間接指定方法を用いた場合、実際に多重するTS数がいくつであっても、TS_id及びOriginal_network_idの組を記述する領域の大きさが、多重するTSの最大数(本実施例では15)を記述できる大きさにあらかじめ固定されているため、1フレーム内のデータスロット数の最大値は220となる。そこで、入力したTSを、例えば1スロットあたりの伝送速度(=1/(220+1))の整数倍になるように速度変換すると、速度変換後の各TSに割り当てるスロット数は、それぞれTS1=94、TS2=51、TS3=67、TS4=10となる。これらを合計すると222となり、1フレームで伝送できるデータロット数の最大値(=220)を超えてしまう。したがって、従来技術において、1スロットあたりの伝送速度の整数倍になるように速度変換する場合には、このような組合せのTSを伝送することができなかった。これに対し、本実施例では、以下に説明するように、このような組合せのTSであっても伝送することができる。
【0036】
(スロット割り当て部)
前述の具体例について、図1に示したスロット割り当て部11の処理について詳細に説明する。前述のとおり、スロット割り当て部11は、TS1〜TS4の速度情報1〜4に基づいて、後述する条件(1)及び(2)を満たすように、速度変換後の速度を決定すると共に、フレームを構成するデータスロットの数を決定し、さらに、スロット割り当て情報を生成するために必要な、各TS1〜TS4に割り当てるスロット数及び位置を決定する。
【0037】
図2は、スロット割り当て部11の処理を示すフローチャートである。まず、スロット割り当て部11は、TS1〜TS4の速度情報1〜4を入力する(ステップS201)。ここで、スロット割り当て部11は、4つの速度情報を入力したことから、多重するTS数が4であると判定する。そして、この場合に1フレームで伝送可能なデータスロット数の最大値を求める(ステップS202)。具体的には、例えばヘッダ内のスロット割り当て情報を格納できる領域が最大170バイトであるとき、スロット割り当て情報として、以下の情報(A)〜(C)の合計が170バイト以下となるように、フレーム内のデータスロット数を決定する。
(A)多重するTS数(=4)
(B)4個のTSについてのTS_id、Original_network_idと相対TS番号の対応表
(C)相対TS番号の表(フレーム内の各データスロットに格納するTSの相対TS番号)
【0038】
本実施例では、多重するTS数の最大値は15なので、2=16>15より、多重するTS数は4ビットで表すことができる。これより、相対TS番号の表に使えるビット数を求めると、170バイト(1360ビット)−多重するTS数(4ビット)−TS_id、Original_network_idと相対TS番号の対応表(4バイト×4TS=128ビット)=1228ビットとなる。
【0039】
実際に多重されるTS数は4であるので、2=8>4より、相対TS番号は3ビットで表すことができる。したがって、1228÷3=409.3・・・より、相対TS番号の表には、相対TS番号を最大で409個記述することができる。すなわち、フレーム内のデータスロット数の最大値は409となる。
【0040】
ここで、フレーム内のデータスロット数の最大値は、ヘッダ内のスロット割り当て情報を格納できる領域の大きさ、及び多重するTSの最大数が既知であれば、多重するTS数により一意に決定される。したがって、スロット割り当て部11は、多重するTS数と、フレーム内のデータスロット数の最大値の対応表をあらかじめ記憶しておき、その対応表を参照することによってフレーム内のデータスロット数の最大値を求めるようにしてもよい。
【0041】
図3は、多重するTS数と、フレーム内のデータスロット数の最大値との対応表である。このような対応表が記憶されている場合には、スロット割り当て部11は、多重するTS数4に対し、そのときのフレーム内のデータスロット数の最大値を対応表から読み取り、フレーム内のデータスロット数の最大値を409に決定する。
【0042】
図2に戻って、次に、スロット割り当て部11は、1フレーム内のデータスロット数を決定する(ステップS203)。この値は、上記の処理で得られた最大値以下であればどのように決定してもよいが、スロット割り当て部11は、1フレーム内のデータスロット数をできる限り大きい値に決定することが望ましい。これにより、ヘッダのオーバーヘッドが少なくなり、また、より細かい単位でTSを速度変換することができるため、伝送効率が高くなる。したがって、本実施例では、上記の処理で得られた最大値をそのまま利用することとする。すなわち、スロット割り当て部11は、1フレーム内のデータスロット数を409と決定する。したがって、1フレーム内の全スロット数は、ヘッダを格納する1スロットを加えた410となる。
【0043】
次に、スロット割り当て部11は、伝送路の帯域と、各TS1〜TS4の速度、1フレーム内の全スロット数に基づいて、以下の条件(1)及び(2)を満たすように、各TS1〜TS4の速度変換後の速度を決定する。そして、速度変換後の速度を1スロットあたりの伝送速度で正規化した速度を、各TS1〜TS4に割り当てるスロット数と決定する(ステップS204)。なお、本実施例では、1スロットあたりの伝送速度で正規化した速度を、正規化速度と記述する。
(1)各TS1〜TSJの速度変換後の速度が、当該各TS1〜TSJの元の速度(入力した速度)以上になること。
(2)各TS1〜TSJの速度変換後の正規化速度が、元の速度以上の最小の整数になること。
【0044】
この条件(1)については、TS1〜TSJのTSパケットが多重化時に欠落するのを防ぐためである。そして、速度変換後のTSはスロットをいくつ使用してもよいが、変換時にTSに挿入するヌルパケットまたはスタッフデータは、伝送効率の観点から可能な限り少ない方がよい。したがって、スロット割り当て部11は、条件(2)を満たすように、各TS1〜TSJに割り当てるスロット数を決定する。ここでは1スロットあたりの伝送速度、すなわち100/410=0.2439・・・Mbpsを単位として速度変換するものとする。1スロットあたりの伝送速度を単位として速度変換することにより、各TS1〜TS4の速度変換後の正規化速度、すなわち各TS1〜TS4に割り当てるスロット数が整数となる。以上の条件により、各TSに割り当てるスロット数を求めると、それぞれ、TS1=174、TS2=95、TS3=123、TS4=17となる。
【0045】
次に、スロット割り当て部11は、1フレーム内のデータスロット数と、速度変換後の各TSに割り当てるスロット数の合計とを比較して、TS1〜TS4を伝送可能か否か判定する(ステップS205)。具体的には、「1フレーム内のデータスロット数≧各TSに割り当てるスロット数の合計」である場合には、伝送可能であると判定し、「1フレーム内のデータスロット数<各TSに割り当てるスロット数の合計」である場合には、伝送不可能であると判定する。本実施例の場合、各TSに割り当てるスロット数の合計は、174+95+123+17=409となり、1フレーム内のデータスロット数も409であるため、「1フレーム内のデータスロット数≧各TSに割り当てるスロット数の合計」を満たすので、伝送可能であると判定する。ここで、伝送可能でない(伝送不可能である)と判定した場合には、エラーを出力する(ステップS206)。
【0046】
そして、スロット割り当て部11は、伝送可能であると判定した場合、決定した各TSに割り当てるスロット数から速度変換後の各TSの速度を求め、速度変換部10−1〜10−4にそれぞれ出力する(ステップS207)。本実施例の場合、速度変換後の各TSの速度として、TS1=174×100/410=42.4390・・・Mbps、TS2=95×100/410=23.1707・・・Mbps、TS3=123×100/410=30Mbps、TS4=17×100/410=4.1463・・・Mbpsが求められる。
【0047】
次に、スロット割り当て部11は、TS1〜TS4のスロット数の情報に基づいて、各TSに割り当てるフレーム内のスロット位置を決定する(ステップS208)。スロット位置は、規定のスロット数を満たしていれば、どのように決定してもよい。そして、スロット割り当て部11は、スロット割り当て情報を生成し、スロット割り当て情報をヘッダ生成部12に出力し、スロット割り当て情報及び1フレーム内のデータスロット数を多重化部13に出力する(ステップS209)。
【0048】
図4は、スロット割り当て情報の例を示す図である。このスロット割り当て情報は、多重するTS数、各TSのTS_id及びOriginal_network_id、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号により構成される。本実施例では、多重するTS数に4が設定される。また便宜上、各スロットの相対TS番号は、TS1から順番に、1番目のデータスロットから割り当てるものとする。したがって、データスロットのうち、1〜174スロット目にTS1、175〜269スロット目にTS2、270〜392スロット目にTS3、393〜409スロット目にTS4のパケットが、それぞれ配置されることになる。
【0049】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て情報を入力し、このスロット割り当て情報を含むヘッダを生成し、多重化部13に出力する。
【0050】
多重化部13は、入力した1フレーム内のデータスロット数及びスロット割り当て情報に基づいて、入力した各TSのTSパケット及びヘッダを、フレーム内のスロットに格納して出力する。なお、TS1〜TS4が伝送されない空きスロットができる場合、空きスロットには他の用途のデータを格納してもよく、例えばヌルパケットを格納してもよい。
【0051】
(フレーム)
次に、多重化部13が生成するフレームの構成例について説明する。図5は、フレームの構成例を示す図である。前述のとおり、多重化部13は、スロット割り当て情報に基づいて、前述の具体例で示したTS1〜TS4をフレーム内のデータスロットに格納すると共に、ヘッダをフレーム内のヘッダスロットに格納して多重化し、図5に示すフレームを構成する。
【0052】
図5を参照して、このフレームは、1個のヘッダスロット及び409個のデータスロットから構成される。ヘッダスロットには、ヘッダ生成部12により生成されたヘッダが格納される。データスロットには、スロット割り当て部11により生成されたスロット割り当て情報に基づいて、TS1からTS4まで順番に、174個のTS1、95個のTS2、123個のTS3及び17個のTS4が格納される。
【0053】
(ヘッダ)
次に、ヘッダ生成部12が生成するヘッダの構成例について説明する。図6は、ヘッダの構成例を示す図である。ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部11により生成されたスロット割り当て情報を含む、図6に示すヘッダを生成する。1フレームを構成する1個のヘッダスロット及び複数個のデータスロットにおいて、ヘッダスロットのサイズは188バイトとし、その188バイトのうちのスロット割り当て情報を格納する領域は、最大で170バイトとし、フレームに多重されるTSの種類の数を最大で15とする。
【0054】
図6を参照して、ヘッダは、パケット同期情報、フレーム同期情報、多重するTS数、TS1〜TS4のTS_id及びOriginal_network_id、スロット1〜スロット409の各データスロットに格納されるTSの相対TS番号、及びその他の情報から構成される。パケット同期情報(0x47、ビット数8)は、TSパケット形式のデータの先頭を表し、パケット同期を確立するためのデータである。フレーム同期情報(0x1a86、ビット数16)は、フレーム同期を確立するためのデータ、すなわち、ヘッダを検出するためのデータである。
【0055】
ここで、スロット割り当て情報は、図6に示したヘッダのうち、多重するTS数、各TSのTS_id及びOriginal_network_id、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号である。
【0056】
本実施例では、スロット割り当て情報において、TS_id及びOriginal_network_idの組を記述する領域の大きさを可変として、多重するTSの数と共にヘッダに格納するようにした。これにより、実際に多重されるTS数に応じて、1フレーム内のデータスロット数を変化させることができる。したがって、実際に多重されるTS数が小さいほど、フレームサイズを大きくすることができるため、伝送効率が高くなる。具体例では、実際に多重されるTS数が4であるから、前述のとおり、1フレーム内のデータスロット数の最大値が409と大きくなる。このため、送信するTSに対して、より細かな単位で速度変換を行うことができ、TSに挿入するヌルパケットの量を減らすことができる。したがって、伝送路の利用効率を高くすることができるため、従来では伝送することができなかったTS1〜TS4を伝送することが可能となる。
【0057】
以上のように、本実施例の送信装置1によれば、スロット割り当て部11は、TS1〜TSJの速度に基づいて、変換後の速度が元の速度以上になること(1)、かつ、速度変換後の正規化速度が元の速度以上の最小の整数になること(2)の2つの条件を満たすように、TS1〜TSJに割り当てるスロット数及び速度変換後の速度を決定し、フレーム内のデータスロットに連続して配置するようにスロット位置を決定するようにした。また、スロット割り当て部11は、多重するTS数、多重するTSのTS_id及びOriginal_network_id、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号からなるスロット割り当て情報を生成するようにした。そして、速度変換部10−1〜10−Jは、入力したTS1〜TSJに、速度変換後の速度と元の速度との差分に相当するヌルパケットまたはスタッフデータを挿入し、TSの速度を変換し、ヘッダ生成部12が、スロット割り当て情報を含むヘッダを生成し、多重化部13が、スロット割り当て情報に基づいて、フレームを構成して受信装置へ送信するようにした。
【0058】
スロット割り当て情報は、多重するTS数、多重するTSのTS_id及びOriginal_network_id、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号から構成されるように生成されるから、多重するTS数に応じて、1フレーム内のデータスロット数が変化する。すなわち、実際に多重するTS数が小さいほど、多重するTSのTS_id及びOriginal_network_idを記述する領域の大きさが小さくなるから、各データスロットに格納されるTSの相対TS番号が設定される領域を大きくすることができる。したがって、多重するTS数が小さいほど、1フレーム内のデータスロット数を増やすことができ、フレームサイズが大きくなるから、多重するTS数に応じたフレームサイズとなり、データの伝送効率を向上させることができる。
【0059】
つまり、本実施例の送信装置1によれば、複数のTS1〜TSJをパケット単位で時分割多重し、ヘッダを付加したフレームを構成して伝送するシステムにおいて、フレームサイズを大きくすることができ、データの伝送効率を向上させることができる。
【0060】
なお、本実施例において、送信装置1の速度変換部10−1〜10−Jは、スロット割り当て部11から入力する速度変換後の速度に基づいて、TS1〜TSJの速度を変換するようにしたが、元の速度によっては速度変換しない場合もあり得る。前記具体例において、送信装置1が入力するTS1〜TS4の正規化速度が整数となる場合(例えば、入力するTS1〜TS4の正規化速度がTS1=174、TS2=95、TS3=123、TS4=17の場合)は、割り当てるスロット数が整数となるから、速度変換する必要がない。従って、速度変換部10−1〜10−4は、入力したTS1〜TS4の速度を変換することなく、入力した速度のままでTS1〜TS4を出力する。
【0061】
また、本実施例において、送信装置1は速度変換部10−1〜10−Jを備えるようにしたが、速度変換部10−1〜10−Jは必ずしも必要ではない。すなわち、本実施例の送信装置1と同等の機能を、スロット割り当て部11、ヘッダ生成部12及び多重化部13を備えた送信装置と、速度変換部10−1〜10−Jを備えた速度変換装置とにより構成される送信システムに実現させる。送信装置のスロット割り当て部11は、速度変換後の速度またはスロット割り当て情報を速度変換装置へ出力する。速度変換装置の速度変換部10−1〜10−Jは、送信装置から速度変換後の速度またはスロット割り当て情報を入力し、速度変換処理を行い、速度変換後のTS1〜TSJを送信装置へ出力する。送信装置の多重化部13は、速度変換装置から速度変換後のTS1〜TSJを入力し、多重化処理を行う。
【0062】
(送信装置1のスロット割り当て部11が伝送不可能と判定した場合)
本実施例の送信装置1のスロット割り当て部11は、入力されるTSの数及び速度によっては、伝送不可能であると判定し、エラーを出力して処理を終了する場合もある(図2のステップS205及びステップS206を参照)。以下、スロット割り当て部11が、伝送不可能であると判定する例について説明する。
【0063】
ヘッダ内のスロット割り当て情報を格納できる領域は、前記具体例と同様に、最大170バイトとする。また、伝送路の帯域は100Mbpsとし、入力されるTSの数は4とすることも、前記具体例と同様だが、各TSの元の速度はそれぞれTS1=42.34・・・Mbps、TS2=22.98・・・Mbps、TS3=30.1Mbps、TS4=4.11・・・Mbpsであるとする。すなわち、本例は、前記具体例に比べ、TS3の速度が30Mbpsから30.1Mbpsと、0.1Mbps大きくなっている点で異なる。このとき、全TSの合計の速度は、99.53・・・Mbpsである。
【0064】
フレーム内のデータスロット数の最大値は、ヘッダ内のスロット割り当て情報を格納できる領域の大きさ、及び、入力されるTS数によって決まるので、この場合も、前記実施例と同じく409となる。1フレーム内のデータスロット数をそのまま409とし、1スロット分のヘッダを加えてフレームを構成すると、1スロットあたりの伝送速度は、100/410=0.2439・・・Mbpsである。そして、TSを速度変換する際に、挿入するヌルパケットあるいはスタッフデータがなるべく少なくなるように、各TSに割り当てるスロット数を決定すると、それぞれ、TS1=174、TS2=95、TS3=124、TS4=17となり、各TSに割り当てるスロット数の合計は、410となる。
【0065】
この場合、1フレーム内のデータスロット数(=409)が、各TSに割り当てるスロット数の合計より小さいため、スロット割り当て部11は、これらのTSを伝送不可能であると判定し、エラーを出力して処理を終了する。
【0066】
(送信装置1を利用したアプリケーション例)
図7は、本実施例の送信装置1を利用したアプリケーション例を示す図である。例えば、ケーブルテレビ局のように、地上デジタル放送波をケーブルテレビ用の変調方式に変換して再送信するトランスモジュレーション方式を採用している場合であって、地上デジタル放送波以外に、独自で速度を決めることができる自主放送チャンネルを多重化してフレームを送信している場合に、本実施例の送信装置1を適用することにより、一層高い速度で効率良くデータを伝送することができる。
【0067】
デコーダ70は、地上デジタル放送波を受信して復号する復号装置であり、エンコーダ71は、独自のビデオカメラで撮影等を行った映像音声信号を符号化し、デジタルデータとして出力する符号化装置である。この際、エンコーダ71により出力されるTSJの速度は、そのケーブルテレビ局によって独自に決定することができる。このため、ケーブルテレビ局としては、エンコーダ71により、TSJの速度がより高くなるように設定され、送信装置1により、TSJのスロット数が大きくなるように設定されることが望ましい。そこで、本実施例の送信装置1を用いることにより、一層高い速度で効率良くデータを伝送することができる。
【0068】
また、前述のように、送信装置1は、伝送不可能であると判定し、エラーを出力した場合、そのエラー情報、すなわち、TSJの速度が高いというエラー情報をエンコーダ71に出力する。エンコーダ71は、このエラー情報を入力すると、TSJの速度を所定値だけ低下させ、速度が低下したTSJを送信装置1に送信する。これにより、送信装置1は、地上デジタル放送波を再送信する際に、伝送路の帯域及び地上デジタル放送波の速度を考慮した速度にて、自主放送チャンネルの信号を送信することができる。
【0069】
例えば、送信装置1にデコーダ70から入力されるデータがTS1〜TS3、エンコーダ71から入力されるデータがTS4であり、前述のように、送信装置1の1フレーム内のデータスロット数が409で、各TSに割り当てるスロット数がTS1=174、TS2=95、TS3=124、TS4=17(各TSの速度は、TS1=42.34・・・Mbps、TS2=22.98・・・Mbps、TS3=30.1Mbps、TS4=4.11・・・Mbps)であるとする。この場合、各TSに割り当てるスロット数の合計が410となるため、送信装置1は伝送不可能であると判定し、エラーを出力する。送信装置1から当該エラー情報を取得したエンコーダ71は、TS4の速度を所定値だけ下げて、その速度を送信装置1へフィードバックする。具体的には、例えばTS4の速度を0.3Mbps下げてTS4=3.81・・・Mbpsとすると、TS4に割り当てるスロット数は16となるため、各TSに割り当てるスロット数はTS1=174、TS2=95、TS3=124、TS4=16となり、各TSに割り当てるスロット数の合計が409になるため、伝送可能であると判定し、フレームを伝送することができるようになる。
【0070】
このようにすれば、複数のTS1〜TSJをパケット単位で時分割多重し、ヘッダを付加したフレームを構成して伝送するシステムにおいて、フレームサイズをできるだけ大きくしただけでなく、確実に伝送可能にすることができ、データの伝送効率を一層向上させることができる。
【0071】
〔受信装置〕
次に、本実施例の受信装置について説明する。図8は、本発明の実施形態による受信装置の構成を示すブロック図である。この受信装置2は、同期確立部20、スロット割り当て情報取得部21及び分離部22を備えている。受信装置2は、図1に示した送信装置1により送信された、TS1〜TSJが多重化されたフレームを、伝送路を介して受信し、フレーム同期を確立し、フレーム内のヘッダからスロット割り当て情報を取得し、スロット割り当て情報に基づいて、要求されたTSをフレームから分離して出力する。
【0072】
同期確立部20は、フレームを入力し、フレーム内のヘッダからフレーム同期情報(0x1a86)のパターンを取得することにより、フレーム同期を確立し、フレーム同期のタイミング位置を示す同期情報(フレームの先頭位置を示す情報)をスロット割り当て情報取得部21に出力する。具体的には、同期確立部20は、フレーム同期情報のパターンを3回連続して正しいタイミングで受信したことを判定することにより、フレームの先頭位置を決定する。これにより、フレーム同期が確立する。
【0073】
スロット割り当て情報取得部21は、フレームを入力すると共に、同期確立部20から、フレームの先頭位置を示す同期情報を入力し、同期情報に基づいてフレームからヘッダを検出し、検出したヘッダからスロット割り当て情報を取得する。そして、スロット割り当て情報取得部21は、スロット割り当て情報を分離部22に出力する。
【0074】
分離部22は、フレームを入力し、スロット割り当て情報取得部21からスロット割り当て情報を入力し、受信装置2において分離が要求されたTSの識別情報(TS_id及びOriginal_network_id)を入力する。そして、分離部22は、スロット割り当て情報に基づいて、要求されたTSを、フレーム内のデータスロットから取得することにより、要求されたTSを全てのTSから分離し、出力する。
【0075】
(スロット割り当て情報取得部)
次に、図8に示したスロット割り当て情報取得部21の処理について詳細に説明する。図9は、スロット割り当て情報取得部21の処理を示すフローチャートである。まず、スロット割り当て情報取得部21は、フレームを入力すると共に、同期確立部20からの同期情報を入力する(ステップS901)。
【0076】
スロット割り当て情報取得部21は、入力した同期情報に基づいて、入力したフレームからヘッダを検出し、ヘッダの先頭からパケット同期情報及びフレーム同期情報を除いて、ヘッダ内のスロット割り当て情報を取得する(ステップS902)。そして、スロット割り当て情報のうちの先頭の4ビットの位置から、多重するTS数(本実施例の場合には、TS数=4)を取得し(ステップS903)、それに続く位置から、多重するTSそれぞれのTS_id及びOriginal_network_idを取得する(ステップS904)。さらに、送信装置1に備えたスロット割り当て部11と同様に、多重するTS数に基づいて、データスロット数の最大値を求め、1フレーム内のデータスロット数を求める。そして、各データスロットに格納されたTSの相対TS番号を取得する(ステップS905)。そして、スロット割り当て情報取得部21は、多重するTS数、各TS1〜TS4のTS_id及びOriginal_network_id、各データスロットに格納されたTSの相対TS番号が区別されたスロット割り当て情報を分離部22に出力する(ステップS906)。
【0077】
なお、スロット割り当て情報取得部21は、ステップS905においてデータスロット数の最大値を求める際に、前述の送信装置1のスロット割り当て部11の処理について説明したのと同様に、多重するTS数が4であることから、計算によりフレーム内のデータスロット数の最大値が409であることを算出してもよいし、図3のような対応表をあらかじめ記憶しておき、その対応表を読み取ることによって求めるようにしてもよい。
【0078】
(分離部)
次に、図8に示した分離部22の処理について詳細に説明する。図10は、分離部22の処理を示すフローチャートである。まず、分離部22は、フレーム、スロット割り当て情報、及び分離が要求されたTSの識別情報を入力する(ステップS1001)。
【0079】
分離部22は、スロット割り当て情報から各TSの識別情報(TS_id及びOriginal_network_id)を取得し、要求されたTSの識別情報と一致するTS_id及びOriginal_network_idを検索し、要求されたTSの相対TS番号を特定する(ステップS1002)。
【0080】
分離部22は、スロット割り当て情報から、各データスロットに格納されたTSの相対TS番号を取得し、要求されたTSの相対TS番号と同じ番号のスロット位置を特定する(ステップS1003)。これにより、要求されたTSが格納されているデータスロットの番号を認識することができる。
【0081】
分離部22は、要求されたTSを、フレーム内のデータスロットから取得し、出力する(ステップS1004)。このようにして、要求されたTSが、フレームに格納されている全てのTSから分離される。
【0082】
(具体例)
まず、スロット割り当て情報取得部21による、多重するTS数、各TSのTS_id及びOriginal_network_id、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号を取得する処理について、具体例を挙げて説明する。スロット割り当て情報取得部21は、前述のとおり、フレームからヘッダを検出し、ヘッダ内のスロット割り当て情報及びその他の情報を取得する。ここで、スロット割り当て情報取得部21がヘッダから取得したスロット割り当て情報が、図6に示した情報である場合を想定する。スロット割り当て情報取得部21は、取得したスロット割り当て情報から、最初の4ビット長のデータを多重するTS数(本具体例の場合には、TS数=4)として取得する。そして、各々16ビット長のTS_id及びOriginal_network_idを、前記取得したTS数4の分だけ、すなわち、32ビット×4=128ビットの領域を、TS1〜TS4のTS_id及びOriginal_network_idとして取得する。また、多重するTS数が4であることに基づいて、1スロット毎の相対TS番号のための領域は3ビット長のデータであり、データスロット数の最大値は409であることが求められる。そして、本具体例では、1フレームのデータスロット数として、上記の最大値をそのまま利用するため、1フレーム内のデータスロット数が409と求められる。これにより、スロット割り当て情報取得部21は、スロット1〜スロット409の相対TS番号を取得する。そして、スロット割り当て情報取得部21は、多重するTS数、各TSのTS_id及びOriginal_network_id、各スロットの相対TS番号が区別されたスロット割り当て情報を分離部22に出力する。
【0083】
次に、分離部22による、要求されたTSを分離する処理について、具体例を挙げて説明する。例えば、要求されたTSの識別情報がTS_id=0x0002、Original_network_id=0x1001である場合を想定する。
【0084】
分離部22は、ステップS1002において、要求されたTSの識別情報がTS_id=0x0002、Original_network_id=0x1001であるから、このTSの識別情報が、スロット割り当て情報内の各TSの識別情報であるTS_id及びOriginal_network_idの表の2番目に記述されていることを判断し(図6を参照)、要求されたTSの相対TS番号2を特定する。
【0085】
そして、分離部22は、図10に示したステップS1003において、スロット割り当て情報取得部21により取得されたスロット割り当て情報から各スロットの相対TS番号(スロット1の相対TS番号、スロット2の相対TS番号、・・・、スロット409の相対TS番号)を取得し、相対TS番号2のスロット位置を特定する。これにより、TS2は、第175〜第269スロット目のデータスロットに格納されていることを特定することができる。
【0086】
分離部22は、ステップS1004において、要求されたTS2を、フレーム内の第175〜第269スロット目のデータスロットから取得する。そして、分離部22は、要求されたTS2を、フレームから分離し、出力する。
【0087】
以上のように、本実施例の受信装置2によれば、送信装置1からTS1〜TSJが多重されたフレームを受信し、同期確立部20は、フレーム内のヘッダからフレーム同期情報パターンを取得してフレーム同期を確立し、スロット割り当て情報取得部21は、フレーム同期が確立した状態で、フレーム内のヘッダからスロット割り当て情報を取得し、分離部22は、スロット割り当て情報に基づいて、要求されたTSの相対TS番号を特定し、要求されたTSのスロット位置を特定し、フレーム内のデータスロットから、要求されたTSを取得するようにした。
【0088】
これにより、要求されたTSをフレームから分離することができる。また、受信装置2が受信するフレームのスロット割り当て情報は、多重するTS数、各TSのTS_id及びOriginal_network_id、並びに各データスロットに格納されるTSの相対TS番号により構成され、多重するTSの数に応じて、各TSのTS_id及びOriginal_network_idのサイズを小さくでき、各データスロットに格納されるTSの相対TS番号の数を大きくすることができる。これにより、データスロットの数が増えるから、サイズを大きくしたフレームが送信装置1から伝送され、データの伝送効率を向上させることができる。つまり、本実施例の受信装置2によれば、複数のTS1〜TSJをパケット単位で時分割多重し、ヘッダを付加したフレームを構成して伝送するシステムにおいて、サイズを大きくしたフレームを受信してTSを分離することができ、データの伝送効率を向上させることができる。
【0089】
なお、本発明の実施形態による送信装置1及び受信装置2のハード構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。送信装置1及び受信装置2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。送信装置1に備えた速度変換部10−1〜10−J、スロット割り当て部11、ヘッダ生成部12及び多重化部13の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、受信装置2に備えた同期確立部20、スロット割り当て情報取得部21及び分離部22の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【符号の説明】
【0090】
1 送信装置
2 受信装置
10 速度変換部
11 スロット割り当て部
12 ヘッダ生成部
13 多重化部
20 同期確立部
21 スロット割り当て情報取得部
22 分離部
70 デコーダ
71 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の速度で入力した複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、ヘッダスロット及びデータスロットからなるフレームを構成して送信するデジタルデータ送信装置において、
前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納する際の、それぞれのデジタルデータに対して割り当てるデータスロットに関する情報を、スロット割り当て情報として生成するスロット割り当て部と、
前記スロット割り当て情報及び前記フレーム同期を確立するためのフレーム同期情報を含むヘッダを生成するヘッダ生成部と、
前記ヘッダを前記フレーム内のヘッダスロットに格納し、前記スロット割り当て情報に基づいて、前記複数のデジタルデータを前記データスロットに格納し、多重化してフレームを構成する多重化部と、を備え、
前記スロット割り当て部は、前記複数のデジタルデータの数に基づいて、前記フレーム内のデータスロット数を決定すると共に、前記複数のデジタルデータのそれぞれに割り当てるデータスロット数を算出し、前記算出したデータスロット数の全てのデジタルデータを伝送可能か否かを判定し、伝送不可能と判定した場合には、エラーを出力し、伝送可能と判定した場合には、前記複数のデジタルデータの数、各データスロットに格納されるデジタルデータを特定するための情報を含むスロット割り当て情報を生成する、ことを特徴とするデジタルデータ送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタルデータ送信装置において、
前記スロット割り当て部は、前記複数のデジタルデータの数と前記フレーム内のデータスロット数の最大値との対応表をあらかじめ記憶しておき、前記複数のデジタルデータの数及び前記対応表に基づいて、前記フレーム内のデータスロット数を決定する、ことを特徴とするデジタルデータ送信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデジタルデータ送信装置において、
前記スロット割り当て部は、前記算出したデータスロット数の全てのデジタルデータを伝送不可能と判定した場合に、前記複数のデジタルデータのうちいずれかのデジタルデータの速度を、前記所定の速度よりも低下させるためのエラーを出力する、ことを特徴とするデジタルデータ送信装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載のデジタルデータ送信装置により送信されたフレームを受信し、前記フレームからデジタルデータを分離するデジタルデータ受信装置であって、
前記フレーム内のヘッダに含まれるフレーム同期情報に基づいてフレーム同期を確立する同期確立部と、
前記フレーム同期が確立したフレーム内のヘッダから、前記スロット割り当て情報を取得するスロット割り当て情報取得部と、
前記スロット割り当て情報に基づいて、前記フレーム内のデータスロットから所定のデジタルデータを分離する分離部と、を備え、
前記スロット割り当て情報取得部が、前記スロット割り当て情報から複数のデジタルデータの数を取得し、前記複数のデジタルデータの数に基づいて前記フレーム内のデータスロット数を決定し、前記スロット割り当て情報から、前記フレーム内のデータスロット数分のデータスロットに格納されたデジタルデータを特定するための情報を取得し、
前記分離部が、前記各データスロットに格納されたデジタルデータを特定するための情報に基づいて、前記フレーム内のデータスロットから所定のデジタルデータを分離する、
ことを特徴とするデジタルデータ受信装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から3までのいずれか一項に記載のデジタルデータ送信装置として機能させるためのデジタルデータ送信プログラム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項4に記載のデジタルデータ受信装置として機能させるためのデジタルデータ受信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−94938(P2012−94938A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237955(P2010−237955)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】