デジタルデータ送信装置、受信装置及びプログラム
【課題】複数のTSをフレームに多重化して伝送するシステムにおいて、受信装置にて出力されるTSの速度を低く抑えることができ、受信装置にて用いるクロック再生回路の規模を小さくする。
【解決手段】送信装置1−1のPCR書き換え部11は、受信装置2−1がTSを出力する際の速度を、元のTSの速度に応じて予め規定し、その出力速度と整合するように、TS内のPCR(プログラム・クロック・リファレンス)の値を書き換える。受信装置2−1の分離部21は、送信装置1−1において規定した出力速度になるように、当該TSにヌルパケットを付加して出力する。受信装置2−1のクロック再生部22は、フレームの伝送速度に同期したクロックを再生し、再生したクロックを分周及び逓倍することにより、分離部21により出力されるTSの出力速度に対応するクロックを生成する。
【解決手段】送信装置1−1のPCR書き換え部11は、受信装置2−1がTSを出力する際の速度を、元のTSの速度に応じて予め規定し、その出力速度と整合するように、TS内のPCR(プログラム・クロック・リファレンス)の値を書き換える。受信装置2−1の分離部21は、送信装置1−1において規定した出力速度になるように、当該TSにヌルパケットを付加して出力する。受信装置2−1のクロック再生部22は、フレームの伝送速度に同期したクロックを再生し、再生したクロックを分周及び逓倍することにより、分離部21により出力されるTSの出力速度に対応するクロックを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPEG−2 TS信号等のパケット形式のデジタルデータを伝送するシステムにおいて、複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、フレームを構成して伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のMPEG−2 TS(ISO/IEC(International Organization for Standardization:国際標準化機構/International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)13818−1に規定されるトランスポートストリーム)を、独立性を保った状態で、単一のTSを想定した伝送路へ伝送させる方式が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。
【0003】
この伝送方式は、送信装置において、TSパケット(同期バイト(0x47)で始まる固定長(188バイト)のパケット、または、これに固定長のパリティバイトを追加したパケット)列に周期的なフレーム構造を持たせ、そのスロット位置の情報を利用することによりTSパケット列を多重化するものである。受信装置は、多重化されたTSパケット列のフレームを受信し、スロット割り当て情報を利用することにより、TSパケット列を分離する。この伝送方式は、フレームのヘッダが、必要な同期語データ(同期情報)と、各TSが格納されるフレーム中の位置を示すスロット割り当て情報とを含み、TSパケット形式になっていることがポイントとなっている。以下、フレームに多重化されたデータをフレーム形式データという。
【0004】
前述の特許文献1または非特許文献1に記載された、単一のTSを想定した伝送路へ伝送させる方式の他、1つの搬送波(チャネル)で伝送可能な速度以上の高速のTSを含む複数のTSを、特許文献1または非特許文献1に示したフレームに多重化し、複数のチャネルを介して周波数多重伝送する方式も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。この伝送方式は、送信装置において、高速のTSをフレームに多重化し、1チャネルあたりの伝送速度に対しN倍の速度のフレーム形式データを生成し、パケット単位でN分割してN個のチャネルで伝送するものである。受信装置は、1チャネルあたりの伝送速度に対してN倍の速度のフレーム形式データを復元し、復元したフレーム形式データから元のTSを生成する。ここで、送信装置では、TSをフレームに多重化する際に、ヘッダの後に(N−1)個のヌルパケットを格納するように多重化しておき、N分割する際に、前記(N−1)個のヌルパケットを前記ヘッダの複製で置き換える。このように、フレームは、分割されたフレーム形式データのそれぞれに1個ずつのヘッダが含まれるように構成される。この方式は、受信装置において、ヘッダに基づいてチャネル間の遅延差を調整し、1チャネルあたりの伝送速度に対してN倍の速度のフレーム形式データを復元することがポイントとなっている。
【0005】
一方、伝送すべきTSの速度を測定し、複数のチャネルに分割する必要のあるTSの分割数と、分割が不要なTSを伝送するチャネル数とに基づいて、各TSに対するチャネルの割り当てを決める技術が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この技術は、特許文献2と異なり、受信装置において、取り出したいTSが伝送されるチャネルのみを受信すればよいことがポイントとなっている。
【0006】
また、受信装置において、取り出したいTSが伝送されるチャネルのみを受信し、かつ、全てのTSを伝送するために必要なチャネルの総数を、前述の特許文献3よりも少なく抑えることを可能とした技術が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。この技術では、送信装置が、1チャネルあたりの伝送速度に対してN倍の速度のフレーム形式データを生成し、パケット単位でN分割してN個のチャネルで伝送する。しかし、前述の特許文献2の技術とは異なり、ヘッダをチャネル毎に独立に生成して伝送するから、受信装置では、1チャネルあたりの伝送速度に対してN倍の速度のフレーム形式データに復元する必要がない。また、元のTSの数及び伝送速度に基づいて、割り当てるスロット数及びスロット位置の情報、並びに割り当てるチャネルの情報を予め用意することによって、各TSの分割数を少なく抑えつつ、特許文献3よりも必要なチャネルの数Nを少なく抑えることを可能としている。
【0007】
ところで、前述の特許文献1及び非特許文献1に記載された、単一のTSを多重伝送する技術、または、前述の特許文献2〜4に記載された、複数のTSを複数のチャネルを介して周波数多重伝送する技術において、受信装置は、ユーザーによって要求されたTSを出力する際に、所望のクロックを再生する必要がある。このクロックを再生する回路の規模を低減することを目的とした技術が提案されている(例えば、特許文献5,6を参照)。
【0008】
特許文献5の技術では、送信装置は、フレームに多重化して1チャネルで伝送するTSに対し、フレーム形式データの伝送速度に合わせるために、PCR(プログラム・クロック・リファレンス)の値を予め書き換え、受信装置は、フレーム形式データからTSを取り出す際に、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する。この技術は、フレーム内にTSが割り当てられたスロット数に関わらず、受信装置において、フレーム形式データの伝送速度と同じ速度でTSを出力し、元のTSの速度を再生する必要がないから、クロック再生処理が簡便になることがポイントとなっている。
【0009】
また、特許文献6の技術では、送信装置は、フレームに多重化して1チャネルで伝送するTSに対し、割り当てるスロット数を1フレームのスロット数の因数とするか、または因数にできない場合には、最も近い因数のスロット数になるようにヌルパケットを付加した上でPCRの値を書き換え、再びヌルパケットを除去して伝送する。受信装置は、取り出したTSに対し、必要に応じてヌルパケットを付加して出力する。この場合、受信装置は、フレーム形式データの伝送速度からクロックを再生し、このクロックを整数分の1に分周することにより、元のTSのクロックを再生する。したがって、この技術は、受信装置において、元のTSのクロックを再生する処理が簡便に行われることがポイントとなっている。
【0010】
また、特許文献4には、元のTSのクロックを再生する処理を不要にし、クロック再生回路の規模を小さくする手法が記載されている。第1の手法は、送信装置が、N個のチャネルで伝送するN個のフレームのうち、M個(MはN以下の整数)のフレームに多重化したTSに対し、1チャネルあたりの伝送速度のM倍の速度に合わせてPCRの値を書き換え、受信装置が、M個のフレーム形式データから要求されたTSを取り出す際に、当該TS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する。また、第2の手法は、送信装置が、N個のチャネルで伝送するN個のフレームのうち、M個(MはN以下の整数)のフレームに多重化したTSに対し、1チャネルあたりの伝送速度のN倍の速度に合わせてPCRの値を書き換え、受信装置は、M個のフレーム形式データから要求されたTSを取り出す際に、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えると共に、(N−M)個のチャネルを介して伝送されたパケット数に対応するヌルパケットを生成し、TSに付加して出力する。これらの手法は、元のTSの速度に関わらず、受信装置において、1チャネルあたりのM倍(手法1)またはN倍(手法2)の速度と同じ速度でTSを取り出すことが可能となり、元のTSの速度を再生する処理が不要になるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3051729号公報
【特許文献2】特許第3991307号公報
【特許文献3】特許第4111438号公報
【特許文献4】特開2010−177858号公報
【特許文献5】特許第4374107号公報
【特許文献6】特開平11−177516号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ITU−T Rec.J.183
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、これらの従来技術には次の問題点がある。例えば、特許文献5の技術では、元のTSの速度が低い場合であっても、出力されるTSの速度はフレーム形式データの伝送速度と同じになるため、受信装置及び受信装置の後段に設けられたデコーダの回路全体として消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0014】
また、特許文献6の技術では、1フレームのスロット数が素数である場合、または1フレームのスロット数の因数が少ない場合には、元のTSの速度が低い場合であっても、出力されるTSの速度が高くなり、受信装置及びデコーダの回路全体として消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0015】
また、特許文献4に記載された手法2では、元のTSの速度が低い場合であっても、出力されるTSの速度は1チャネルあたりの伝送速度のN倍の速度となるため、受信装置及びデコーダの回路全体として消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0016】
また、特許文献4に記載された手法1では、TSを伝送するチャネル数に応じて、1チャネルあたりの伝送速度のN倍以下の速度でTSを取り出すことが可能となり、同じ特許文献4に記載された手法2に比べて、出力するTSの速度を低くすることができる。このため、受信装置及びデコーダの回路全体として消費電力を小さくできるが、受信装置のクロック再生回路にて再生する必要のあるクロックは最大でN種類となり、クロック再生回路の規模が増大するという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数のTSをフレームに多重化して伝送するシステムにおいて、受信装置にて出力されるTSの速度を低く抑えることができ、受信装置にて用いるクロック再生回路の規模を小さくすることが可能なデジタルデータ送信装置、受信装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数のデジタルデータを入力し、前記複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、ヘッダスロット及びデータスロットからなるフレームを構成し、所定数のチャネルにて伝送路へ送信する送信装置において、前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納する際の、それぞれのデジタルデータに対するスロット割り当て数及びスロット位置を決定するスロット割り当て部と、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、ヘッダを生成するヘッダ生成部と、前記デジタルデータに含まれるPCR(プログラム・クロック・リファレンス)の値を書き換えるPCR書き換え部と、前記ヘッダ生成部により生成されたヘッダを前記フレーム内のヘッダスロットに格納し、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、前記PCRの値が書き換えられた前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納し、多重化してフレームを構成する多重化部と、を備え、前記PCR書き換え部は、スロットあたりの伝送速度または1チャネルあたり伝送速度を単位とした複数個の速度が予め規定され、当該送信装置が入力したデジタルデータの速度に対応する、前記規定された複数個の速度のうち入力したデジタルデータの速度以上であって、かつ最小の速度が対応情報として予め規定され、前記対応情報によって規定された速度を、前記フレームを受信する受信装置により出力されるデジタルデータの出力速度とし、前記出力速度に整合するように、前記PCRの値を書き換える、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれる複数個の速度を、1スロットあたりの伝送速度に所定の正の整数を乗算した値、及び1スロットあたりの伝送速度に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれる複数個の速度を、1チャネルあたりの伝送速度に所定の正の整数を乗算した値、及び1チャネルあたりの伝送速度に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部が、当該送信装置が入力したデジタルデータに対するヌルパケット付加後のデジタルデータを、前記フレームを受信する受信装置により前記出力速度にて出力されるデジタルデータとして想定し、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数に基づいて、前記デジタルデータに付加されるヌルパケットの数及び位置を決定し、前記ヌルパケット付加後のデジタルデータの速度に整合するように、前記PCRの値を書き換える、ことを特徴とする。
【0022】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部が、前記対応情報として、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数とが対応して規定された対応情報を備え、前記対応情報に従い、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数に基づいて、前記ヌルパケットの数を決定する、ことを特徴とする。
【0023】
また、請求項6の発明は、請求項4または5に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部が、前記想定したヌルパケット付加後のデジタルデータのパケット列に対し、元のデジタルデータのデータパケット及びヌルパケットを割り振るための規則情報を備え、前記規則情報に従って、割り振るべきデータパケット及びヌルパケットの数、並びに既に割り振られたデータパケット及びヌルパケットの数に基づいて、前記データパケットまたはヌルパケットを前記パケット列に割り振ることにより、前記ヌルパケットの位置を決定する、ことを特徴とする。
【0024】
また、請求項7の発明は、請求項5に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、所定の正の整数及び前記所定の正の整数の因数とする、ことを特徴とする。
【0025】
また、請求項8の発明は、請求項5に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数を単位とした値とする、ことを特徴とする。
【0026】
また、請求項9の発明は、請求項5に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数に所定の正の整数を乗算した値、及び1フレームのスロット数に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする。
【0027】
さらに、請求項10の発明は、請求項1から9までのいずれか一項に記載の送信装置により送信された前記フレームを受信し、ユーザーにより要求されたデジタルデータを、前記フレームから分離して出力する受信装置であって、前記フレーム内のヘッダを検出し、前記ヘッダから前記デジタルデータのスロット割り当て数及びスロット位置を生成するヘッダ検出部と、前記ヘッダ検出部により生成されたデジタルデータのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、前記ユーザーにより要求されたデジタルデータを前記フレームから分離して出力する分離部と、前記フレームの伝送速度に基づいて、前記分離部がデジタルデータを出力する際に必要なクロックを再生するクロック再生部と、を備え、前記分離部が、前記送信装置のPCR書き換え部に備えた対応情報と同一の対応情報を備え、前記対応情報に基づき、前記送信装置が入力したデジタルデータのうち前記ユーザーにより要求されたデジタルデータの速度以上であって、かつ最小の速度を出力速度とし、前記出力速度にて、前記分離したデジタルデータを出力する、ことを特徴とする。
【0028】
さらに、請求項11の発明は、コンピュータを、請求項1から9までのいずれか一項に記載の送信装置として機能させるための送信プログラムにある。
【0029】
また、請求項12の発明は、コンピュータを、請求項10に記載の受信装置として機能させるための受信プログラムにある。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、複数のトランスポートストリームをフレームに多重化して伝送するシステムにおいて、受信装置にて出力されるTSの速度を低く抑えることができ、受信装置にて用いるクロック再生回路の規模を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態1(実施例1)による送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スロット割り当て部により決定されるスロット位置の例を示す図である。
【図3】ヘッダ生成部により生成されるヘッダの例を示す図である。
【図4】PCR書き換え部の処理を示すフローチャートである。
【図5】スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。
【図6】TSパケット及び付加されるヌルパケットの並び順の計算例を説明する図である。
【図7】ヌルパケット付加後のパケット列及び元のTSパケット列についての相対的な時間間隔を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態1(実施例1)による受信装置の構成を示すブロック図である。
【図9】分離部の処理を示すフローチャートである。
【図10】実施例1の変形例1における、1フレームからTS2のパケットを除いた場合の、ヌルパケットからなるパケット列を示す図である。
【図11】実施例1の変形例1における、削除されるヌルパケットの位置の計算例を説明する図である。
【図12】実施例1の変形例1における、削除されるヌルパケットの位置を示す図である。
【図13】実施例1の変形例1における、TS2以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列において、削除されるヌルパケットの位置を示す図である。
【図14】実施例1の変形例1における、ヌルパケット削除後のパケット列及び元のTSパケット列についての相対的な時間間隔を説明する図である。
【図15】実施例1の変形例1における、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列を示す図である。
【図16】実施例1の変形例1における、フレーム内のパケット及び追加されるヌルパケットの並び順の計算例を説明する図である。
【図17】実施例1の変形例1における、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列に、ヌルパケットを追加した例を示す図である。
【図18】実施例1の変形例2における、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。
【図19】本発明の実施形態2(実施例2)による送信装置の構成を示すブロック図である。
【図20】スロット割り当て部により決定されるスロット位置の例である。
【図21】ヘッダ生成部により生成される、各フレームのヘッダの例を示す図である。
【図22】スロット割り当て数の合計と、ヌルパケット付加後のスロット数との対応例を示す図である。
【図23】送信装置の多重化部によるTS分割処理、及び受信装置の分離部によるTS合成処理(TS1に対する処理)を説明する図である。
【図24】送信装置の多重化部によるTS分割処理、及び受信装置の分離部によるTS合成処理(TS2に対する処理)を説明する図である。
【図25】本発明の実施形態2(実施例2)による受信装置の構成を示すブロック図である。
【図26】実施例2の変形例1における、スロット割り当て数の合計と、ヌルパケット付加後のスロット数との対応例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は、送信装置が、受信装置により出力されるTSの速度を規定し、その速度に整合するようにPCRを書き換え、TSをフレームに多重化して送信し、受信装置が、受信したフレームから、ユーザーにより要求されたTSを分離し、このTSを、送信装置により規定された出力速度で出力することを特徴とする。この場合、受信装置により出力されるTSの速度は、TSに書き込まれたPCRと整合したものとなる。以下に説明する実施例1は、複数のTSを1チャネルで伝送するシステムに本発明を適用した例であり、実施例2は、複数のTSを複数のチャネルで伝送するシステムに本発明を適用した例である。
【実施例1】
【0033】
まず、実施例1について説明する。実施例1は、複数のTSを1チャネルで伝送するシステムの例である。以下、送信装置及び受信装置に分けて説明する。
【0034】
〔送信装置〕
まず、実施例1の送信装置について説明する。図1は、実施例1の送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−1は、スロット割り当て部10、PCR書き換え部11−1〜11−I、ヘッダ生成部12及び多重化部13を備えている。
【0035】
送信装置1−1は、送信すべきI個のTS1〜TSIを入力し、入力した各TSの速度を示す速度情報1〜Iを取得する。尚、送信装置1−1により入力されるI個のTS1〜TSIは、後述するスロット割り当て部10において各TSが1フレームの各データスロットに割り当てられるように、予め速度変換されており、PCRの値も書き換えられているものとする。
【0036】
スロット割り当て部10は、速度情報1〜Iを入力し、各TSに割り当てるスロット数及びスロット位置を決定し、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置をPCR書き換え部11−1〜11−I、ヘッダ生成部12及び多重化部13に出力する。
【0037】
PCR書き換え部11−1〜11−Iは、TS1〜TSIをそれぞれ入力すると共に、スロット割り当て部10から当該TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、TS1〜TSIに対し、スロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、後述する受信装置2−1がTSに対して挿入するヌルパケットの数及び位置を決定する。ヌルパケットは、受信装置2−1が要求されたTSをフレームから分離して出力する際に挿入される。そして、PCR書き換え部11−1〜11−Iは、受信装置2−1が挿入するヌルパケットの数及び位置に基づいて、ヌルパケット付加後の速度に整合するように、各TSのPCRの値を書き換え、PCRの値を書き換えたTS1〜TSIを多重化部13に出力する。ここで、PCRは、送信装置1−1のクロックによって発生する値(時刻)を所定間隔でサンプルした番組時刻基準値情報であり、後述する受信装置2−1の後段に設けられたデコーダが、受信装置2−1により出力されるTSをデコードする際に用いられる。
【0038】
つまり、PCR書き換え部11−1〜11−Iは、入力したTS1〜TSIのそれぞれについて、後述する対応情報に規定された、入力したTSの速度以上であって、かつ最小の速度を、後述する受信装置2−1により出力される出力速度に決定し、この出力速度に整合するように、各TSのPCRの値を書き換える。
【0039】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部10から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、TSの識別情報(TS_id(TS識別子)及びoriginal_network_id(オリジナルネットワーク識別子)と相対TS番号との対応表)及び各スロットに格納されるTSの相対TS番号からなるスロット割り当て情報を含むヘッダを生成し、生成したヘッダを多重化部13に出力する。
【0040】
多重化部13は、PCR書き換え部11−1〜11−IからPCRの値が書き換えられたTS1〜TSIを入力し、スロット割り当て部10から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、ヘッダ生成部12からヘッダを入力する。そして、多重化部13は、入力したヘッダ及びTS1〜TSIを、入力した各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいてフレームに多重化し、多重化したフレームを後述する受信装置2−1へ送信する。
【0041】
(具体例)
次に、図1に示した送信装置1−1における各部の具体的動作について具体例を挙げて説明する。送信装置1−1が入力するTSは3個(I=3)とし、各TSの速度はそれぞれTS1=1Mbps、TS2=2Mbps、TS3=9Mbpsであり、伝送路は13Mbpsの伝送帯域を持つものとする。また、フレームは、1個のヘッダスロット及び12個のデータスロットにより構成されるものとする。
【0042】
この具体例では、1スロットを用いたときのデータの伝送速度は、13Mbps/13スロット=1Mbpsとなる。また、全てのTSの速度の合計は12Mbpsであり、合計12スロットで全てのTSを伝送可能である。
【0043】
スロット割り当て部10は、TS1〜TS3の速度情報1〜3を入力し、速度情報1〜3に基づいて、TS1〜TS3に割り当てるフレーム内のスロット数を、それぞれ1スロット、2スロット、9スロットと決定する。これらのスロット割り当て数は、1フレームにて伝送されるデータスロット数12に対し、速度情報1〜3の速度の大きさに応じて決定される。また、スロット割り当て部10は、TS1〜TS3に割り当てるフレーム内のスロット位置を決定する。スロット位置は、どのように決定してもよい。
【0044】
図2は、スロット割り当て部10により決定されるスロット位置の例を示す図である。図2において、数字はTS番号(1〜3)を表す。図2に示すように、スロット割り当て部10は、ヘッダスロットの次のデータスロットである第1のデータスロットから第12のデータスロットに、それぞれTS1,TS2,TS2,TS3,・・・,TS3が格納されるように、スロット位置を決定する。
【0045】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部10から入力した各TSのスロット割り当て数及びスロット数に基づいて、ヘッダを生成する。
【0046】
図3は、ヘッダ生成部12により生成されるヘッダの例を示す図である。このヘッダは、パケット同期情報、フレーム同期情報、TS1〜TS15の識別情報であるTS_id及びoriginal_network_id、各スロットに格納されるTSの相対TS番号、及びその他の情報から構成される。パケット同期情報(0x47、ビット数8)は、TSパケット形式のデータの先頭を表し、パケット同期を確立するためのデータである。フレーム同期情報(0x1a86、ビット数16)は、フレーム同期を確立するためのデータ、すなわち、ヘッダを検出するためのデータである。
【0047】
スロット割り当て情報は、非特許文献1と同様に、多重するTS数を最大15とし、15個のTSの識別情報(TS_id及びoriginal_network_idと相対TS番号との対応表)及び、各スロットに格納されるTSの相対TS番号(4ビットで表される相対TS番号を各スロットについて記述した表)により構成される。このスロット割り当て情報により、各スロットに格納されるTSパケットが指定される。
【0048】
本具体例では、図3のヘッダに含まれるスロット割り当て情報に示すように、TS1のTS_idを0x0001、original_network_idを0x1001、TS2のTS_idを0x0002、original_network_idを0x1001、TS3のTS_idを0x0003、original_network_idを0x1002とする。また、伝送するTS数は3であるため、4〜15番目のTS_id及びoriginal_network_idの値は、非特許文献1と同様に「0xFFFF」とする。
【0049】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、前述のとおり、TS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置に基づき、受信装置2−1が挿入するヌルパケットの数及び位置を決定し、TSに含まれるPCRの値を書き換える。
【0050】
図4は、PCR書き換え部11(PCR書き換え部11−1,11−2等を総称してPCR書き換え部11という。)の処理を示すフローチャートである。以下、図4に示すフローチャートを参照して、PCR書き換え部11−1〜11−3の処理について詳細に説明する。
【0051】
まず、PCR書き換え部11−1〜11−3は、TS1〜TS3、当該TSのスロット割り当て数及びスロット位置をそれぞれ入力し(ステップS401)、予め設定された対応情報に従って、スロット割り当て数に対応するヌルパケット付加後のスロット数を決定する(ステップS402)。本具体例では、対応情報として、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応を規定するものとする。
【0052】
図5は、PCR書き換え部11−1〜11−3にて用いる、スロット割り当て数と、ヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図であり、対応情報を示している。PCR書き換え部11−1は、この対応情報を用いて、TS1のスロット割り当て数1に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数3を決定する。また、PCR書き換え部11−2は、この対応情報を用いて、TS2のスロット割り当て数2に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数3を決定する。また、PCR書き換え部11−3は、この対応情報を用いて、TS3のスロット割り当て数9に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数16を決定する。尚、図5に示した対応情報において、ヌルパケット付加後のスロット数は、スロット割り当て数以上の値であれば、どのように規定してもよい。
【0053】
また、図5に示した対応情報において、スロット割り当て数は、PCR書き換え部11−1〜11−3が入力したTSの速度に対応しており、ヌルパケット付加後のスロット数は、後述する受信装置2−1により出力されるTSの出力速度に対応している。つまり、この対応情報は、送信装置1におけるTSの入力速度と、受信装置2におけるTSの出力速度との対応を規定している。PCR書き換え部11−1〜11−3は、送信装置1が入力したTS1〜TS3の各TSについて、この対応情報に基づき、入力したTSの速度(スロット割り当て数)以上であって、かつ最小の速度(ヌルパケット付加後のスロット数)を、後述する受信装置2−1により出力される出力速度に決定する。
【0054】
次に、PCR書き換え部11−1〜11−3は、スロット割り当て部10から入力した各TSのスロット割り当て数及びスロット位置、並びに決定したヌルパケット付加後のスロット数に基づいて、元のTSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置を決定する(ステップS403、ステップS404)。尚、「元のTSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置」は、ヌルパケット付加後のTS速度に整合するように書き換えられるPCRの値に対応している。この場合、送信装置1−1は、実際にヌルパケットを付加することもなく、送信することもない。このヌルパケットは、後述する受信装置2−1において、要求されたTSを出力する際に、TSパケット間に挿入される。つまり、PCR書き換え部11−1〜11−3にて書き換えられるPCRの値は、受信装置2−1において出力されるTSに整合したものになる。
【0055】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、元のTSに対して付加されるヌルパケットの数を、「ヌルパケット付加後のスロット数−スロット割り当て数」(図5を参照)の演算によって決定する。また、PCR書き換え部11−1〜11−3は、元のTSに対して付加されるヌルパケットの位置を、予め設定された規則情報に従って決定する。この規則情報は、後述する受信装置2−1の分離部21が実際にヌルパケットをTSに挿入する際に用いる規則情報と同じとする。尚、ヌルパケットの位置は、送信装置1−1及び受信装置2−1において予め設定された同一の規則情報に従っていれば、どのように決定してもよい。
【0056】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、予め設定された規則情報に従って、例えば、TSパケット及び付加されるヌルパケットにより構成されるパケット列を想定し、そのパケット列の1パケット目から順に、TSパケット及び付加されるヌルパケットのそれぞれに対し、「(1パケット目からその時点までに)パケット列に割り振られたパケット数」/「当該TSに割り当てられた1フレーム中のスロット数(または、付加されるヌルパケットの数)」による割り算の計算を行い、計算結果の値の小さい方、または値が同じ場合は、TSパケットを選択することによって、パケット列内のTSパケット及び付加されるヌルパケットの並び順を決定する。例えば、パケット列の(x−1)パケット目までが割り当て済みで、TSパケットがa個、付加されるヌルパケットがb個割り振られているとする(つまりa+b=x−1である)。ここで、xパケット目にTSパケット、付加されるヌルパケットのどちらを割り振るかは、当該TSのスロット割り当て数をA、付加されるヌルパケットの数をBとすると、それぞれa/A,b/Bを計算することによって行う。a/A≦b/BであればTSパケットを、それ以外ならばヌルパケットが割り振られる。
【0057】
例えばTS2の場合、スロット割り当て数2に対し、ヌルパケット付加後のスロット数は3であるから(図5を参照)、付加されるヌルパケット数は3−2=1となる。また、付加されるヌルパケットの位置は、ヌルパケット付加後のパケット列の1パケット目から順に、前述の計算により決定される。
【0058】
図6は、TS2のスロット割り当て数2及び付加されるヌルパケット数1の場合に、TSパケット及び付加されるヌルパケットの並び順の計算例を説明する図である。図6において、パケット列に割り振られるべきTSパケットの数Aは2であり、パケット列に割り振られるべきヌルパケットの数Bは1である。1パケット目について、パケット列に振り分けられたTSパケットの数aが0であるから、a/Aは0となる。一方、パケット列に振り分けられたヌルパケットの数bは0であるから、b/Bは0となる。したがって、a/A≦b/Bであるから、1パケット目にはTSパケットが割り振られる。また、2パケット目について、パケット列に振り分けられたTSパケットの数aが1であるから、a/Aは0.5となる。一方、パケット列に振り分けられたヌルパケットの数bは0であるから、b/Bは0となる。したがって、a/A≦b/Bでないから、2パケット目にはヌルパケットが割り振られる。また、3パケット目について、パケット列に振り分けられたTSパケットの数aが1であるから、a/Aは0.5となる。一方、パケット列に振り分けられたヌルパケットの数bは1であるから、b/Bは1となる。したがって、a/A≦b/Bであるから、3パケット目にはTSパケットが割り振られる。
【0059】
したがって、PCR書き換え部11−2は、予め設定された規則情報に従って図6に示した計算を行い、例えばTS2の場合、元のTS2である2個のTSパケットに対して付加されるヌルパケットの位置を、2個のTSパケットの間に決定する。
【0060】
前述の規則情報には、TSパケットがパケット列内で等間隔になるように、かつ、ヌルパケットがパケット列内で等間隔になるようにするための割り振り規則が定義されている。この規則情報を用いることにより、後述する受信装置2−1は、パケット列内でTSパケットを等間隔に配置し、かつ、パケット列内でヌルパケットを等間隔に配置したTSを出力する。
【0061】
これにより、TSパケット及びヌルパケットはTS内にバースト的に存在しないから、後述する受信装置2−1の後段に設けられたデコーダがTSパケットをバッファに格納する際に、バッファアンダーフロー及びバッファオーバーフローが生じることがない。
【0062】
図4に戻って、PCR書き換え部11−1〜11−3は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態(前述のように、送信装置1−1はヌルパケットを挿入しないが、ヌルパケット付加後のパケット列に整合するようにPCRの値を書き換える必要があるため、ヌルパケット付加後のパケット列の状態を想定する。ヌルパケットは後述する受信装置2−1により挿入される。)において、PCRの値が整合するように、TS内のPCRの値を書き換える(ステップS405)。具体的には、PCR書き換え部11−1〜11−3は、例えば特許文献5に記載されているように、PCRが書き込まれたパケットが、ヌルパケット付加後のパケット列において何パケット目に位置するかを取得し、ヌルパケット付加前の状態(元の状態)と、ヌルパケット付加後の状態との間の時間差を計算し、この時間差を元のPCRの値に加算して新たなPCRの値を求め、元のPCRの値を新たなPCRの値に書き換える。
【0063】
図7は、ヌルパケット付加後のパケット列及び元のTSパケット列についての相対的な時間間隔を説明する図であり、前述のTS2の例を示している。元のTSパケット列が、TSパケットα及びTSパケットβであり、ヌルパケット付加後のパケット列が、TSパケットα、ヌルパケット及びTSパケットβであり、PCRがTSパケットβに書き込まれているとする。この場合、PCR書き換え部11−2は、PCRが書き込まれたパケットβが、ヌルパケット付加後のパケット列において3パケット目に位置することを取得し、ヌルパケット付加前の状態(元のTSパケット列、図7の下段を参照)と、ヌルパケット付加後の状態(ヌルパケット付加後のパケット列、図7の上段を参照)との間の時間差Δを計算し、この時間差Δを元のPCRの値に加算して新たなPCRの値を求め、元のPCRの値を新たなPCRの値に書き換える。
【0064】
図4に戻って、PCR書き換え部11−1〜11−3は、PCRの値を書き換えたTS1〜TS3を多重化部13にそれぞれ出力する(ステップS406)。尚、前述のとおり、PCRの値を書き換えたTS2には、ヌルパケットは含まれない。ヌルパケットは、後述の受信装置2−1が当該TSを要求されたときに、TSパケット間に挿入される。
【0065】
多重化部13は、ヘッダと、PCRが書き換えられたTS1〜TS3とを、図2に示すように所定のスロット位置に多重化し、送信する。
【0066】
以上のように、実施例1の送信装置1−1によれば、PCR書き換え部11−1〜11−Iが、スロット割り当て部10により決定された各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、予め設定された対応情報に従ってヌルパケット付加後のスロット数を決定し、ヌルパケット付加後のスロット数からスロット割り当て数を減算してヌルパケット数を決定し、予め設定された規則情報に従ってヌルパケットの位置を決定し、ヌルパケット付加後のパケット列を想定してPCRの値を書き換えるようにした。ここで、ヌルパケットは、送信装置1−1にて挿入されず、受信装置2−1において挿入される。そして、多重化部13は、PCRの値が書き換えられたTSをフレームに多重化し、多重化したフレームを送信するようにした。
【0067】
これにより、送信装置1−1から送信されたフレームを受信する受信装置2−1は、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSを、送信装置1−1においてPCRの値の書き換えの際に決定された同じ数のヌルパケットを同じ位置に挿入して出力することで、フレーム内で、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する場合に比べ、TSの速度を低く抑えることができる。また、受信装置2−1がTSにヌルパケットを挿入して出力する際に、そのTSの速度は当該TSに書き込まれたPCRに整合しているから、TSの出力速度を変換する必要がない。したがって、変換のためのクロックを再生する必要がないから、クロック再生回路の規模を小さくすることができる。
【0068】
〔受信装置〕
次に、実施例1の受信装置について説明する。図8は、実施例1の受信装置の構成を示すブロック図である。この受信装置2−1は、ヘッダ検出部20、分離部21及びクロック再生部22を備えている。
【0069】
受信装置2−1は、送信装置1−1により送信されたフレームを受信する。このフレームは、ヘッダ検出部20、分離部21及びクロック再生部22に入力される。
【0070】
ヘッダ検出部20は、フレームを入力し、フレーム内のヘッダからフレーム同期情報(0x1a86)のパターンを取得することによりヘッダを検出し、フレーム同期を確立する。具体的には、ヘッダ検出部20は、フレーム同期情報のパターンを3回連続して正しいタイミングで受信したことを判定することにより、フレームの先頭位置を決定する。これにより、フレーム同期が確立する。そして、ヘッダ検出部20は、フレームからヘッダを取得し、ヘッダから各TSの識別情報及び各スロットに格納されるTSのTS相対番号を取得し、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置の情報を生成して分離部21に出力する。
【0071】
分離部21は、フレームを入力し、ヘッダ検出部20から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、クロック再生部22からTS出力クロックを入力する。そして、分離部21は、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、フレームから、ユーザーによって要求されたTSを分離し、送信装置1−1のPCR書き換え部11と同様の処理によりヌルパケットを付加し、TS出力クロックに同期させたTSを出力する。また、分離部21は、TSのスロット割り当て数に基づいて、当該TSを出力する速度を決定し、出力速度情報としてクロック再生部22に出力する。
【0072】
つまり、分離部21は、分離したTSについて、前述した対応情報に基づき、そのTSの速度以上であって、かつ最小の速度を出力速度に決定し、この出力速度にてTSを出力する。
【0073】
クロック再生部22は、フレームを入力すると共に、分離部21からTSの出力速度情報を入力し、入力したフレームの伝送速度に同期したクロックを再生し、再生したクロックを分周及び逓倍することにより、出力速度情報によって規定するクロックを生成し、TS出力クロックとして分離部21に出力する。
【0074】
(具体例)
次に、図8に示した受信装置2−1における各部の具体的動作について具体例を挙げて説明する。受信装置2−1が受信するフレームは、送信装置1−1により送信されたフレームとし、ユーザーによってTS_id=0x0002、original_network_id=0x1001であるTS(TS2)が要求されているものとする。
【0075】
図9は、分離部21の処理を示すフローチャートである。まず、分離部21は、フレーム、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置、並びにTS出力クロックを入力し(ステップS901)、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置から、要求されたTS2の識別番号に基づいて、要求されたTS2のスロット割り当て数及びスロット位置を取得する(ステップS902)。具体的には、分離部21は、ヘッダ内のTSの識別情報(TS_id及びoriginal_network_idと相対TS番号の対応表)を参照し、要求されたTS2の識別番号と一致するTS_id=0x0002、original_network_id=0x1001の相対TS番号(=0x2)を特定し、入力した各TSのスロット割り当て数及びスロット位置のうちの、TS2のスロット割り当て数及びスロット位置を取得する。
【0076】
次に、分離部21は、取得したスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、フレームから、要求されたTS2を分離する(ステップS903)。
【0077】
次に、分離部21は、フレームから分離したTS2を出力する際に、そのTS2に付加するヌルパケットの数及び位置を、予め設定された対応情報及び規則情報(送信装置1−1にて用いた対応情報及び規則情報と同じ情報)に従って決定する。尚、分離部21は、送信装置1−1のPCR書き換え部11と同様の処理により、TS2に付加するヌルパケットの数及び位置を決定する。
【0078】
具体的には、分離部21は、予め設定された対応情報に従って、分離したTS2のスロット割り当て数に対応するヌルパケット付加後のスロット数を決定する(ステップS904)。これは、図4に示したステップS402に対応する。
【0079】
分離部21は、スロット割り当て数及びスロット位置、並びに決定したヌルパケット付加後のスロット数に基づいて、分離したTS2に対して付加するヌルパケットの数及び位置を決定する(ステップS905、ステップS906)。これは、図4に示したステップS403及びステップS404に対応する。すなわち、分離部21は、TS2に対して付加するヌルパケットの数を、「ヌルパケット付加後のスロット数−スロット割り当て数」(図5を参照)の演算によって決定する。また、分離部21は、TS2に対して付加するヌルパケットの位置を、予め設定された規則情報(図6を参照)に従って決定する。
【0080】
次に、分離部21は、フレームから分離したTS2に、決定した数のヌルパケットを、決定した位置に挿入し、ヌルパケット付加後のTS2をTS出力クロックに同期させて出力する(ステップS907)。具体的には、分離部21は、フレーム内の2個のTSパケットの間に1個のヌルパケットを挿入し、3MbpsのTS2として出力する。
【0081】
また、分離部21は、要求されたTS2について、ヌルパケット付加後のスロット数を出力速度情報としてクロック再生部22に出力する(ステップS908)。TS2の場合、出力速度情報は3となる。
【0082】
クロック再生部22は、フレームの伝送速度に同期したクロックを再生する。本具体例では、伝送路の伝送帯域は13Mbpsであるから、クロック再生部22は、13MHzのクロックを再生する。そして、クロック再生部22は、入力した出力速度情報に基づいて、再生したクロックからTS出力クロックを生成し、分離部21に出力する。TS2の場合、入力した出力速度情報は3であるから、クロック再生部22は、再生した13MHzのクロックを3/13倍して3MHzのクロックを生成し、これをTS出力クロックとして出力する。
【0083】
以上のように、実施例1の受信装置2−1によれば、分離部21が、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置から、ユーザーによって要求されたTSのスロット割り当て数及びスロット位置を取得し、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSについて、予め設定された対応情報に従ってヌルパケット付加後のスロット数を決定し、ヌルパケット付加後のスロット数からスロット割り当て数を減算してヌルパケット数を決定し、予め設定された規則情報に従ってヌルパケットの位置を決定し、分離したTSにヌルパケットを挿入し、TS出力クロックに同期させて出力するようにした。また、クロック再生部22が、分離部21により出力されるヌルパケット付加後のTSの出力速度情報に基づいて、フレームの伝送速度に同期したクロックからTS出力クロックを生成するようにした。
【0084】
すなわち、実施例1では、受信装置2−1が出力するTSの速度(ヌルパケット付加後のスロット数)を、送信装置1−1が入力する元の速度に応じて、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応情報に従って予め設定しておく。そして、送信装置1−1は、予め設定された速度でTSを出力したときに整合するように、PCRの値を予め書き換えておく。送信装置1−1により書き換えられるPCRの値は、受信装置2−1において挿入されるヌルパケットの数に対応したものである。つまり、受信装置2−1により出力されるヌルパケット付加後のTSには、送信装置1−1により書き換えられたPCRが含まれており、出力されるTSの速度は、そのTSに含まれるPCRの値に整合している。
【0085】
また、前述の特許文献5の技術では、受信装置が、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する。これに対し、実施例1の受信装置2−1では、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSに対し、送信装置1−1により書き換えられたPCRの値に応じたヌルパケットのみを挿入するから、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換える場合と比べて、出力するTSの速度を低く抑えることができる。したがって、特許文献5の受信装置に比べて、受信装置2−1及び受信装置2−1の後段に設けられるデコーダの回路全体として消費電力を小さくすることができる。
【0086】
また、実施例1の受信装置2−1は、出力するTSの速度を元のTSの速度に戻す必要がないから、元のTSの速度を再生する場合に比べて、再生するクロックの種類を少なくでき、クロック再生部22の処理が簡便になる。
【0087】
また、前述の特許文献6の技術では、1フレームのスロット数の因数が少ない場合には、受信装置から出力されるTSの速度が高くなってしまう場合がある。これに対し、実施例1の受信装置2−1では、1フレームのスロット数とは無関係に、出力するTSの速度を低くすることができ、受信装置2−1及びデコーダの回路全体として消費電力を小さくすることができる。
【0088】
したがって、実施例1によれば、受信装置2−1が、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSを、送信装置1−1においてPCRの値の書き換えの際に決定された同じ数のヌルパケットを同じ位置に挿入して出力する。これにより、TSの速度を低く抑えることができる。したがって、デコーダは、受信装置2−1から低速のTSを入力してデコードすればよいから、処理負荷を低減することができる。また、受信装置2−1は、出力するTSの速度を元のTSの速度に戻す必要がないから、元のTSの速度を再生する場合に比べて、再生するクロックの種類を少なくでき、クロック再生部22の処理が簡便になる。
【0089】
(変形例1)
前記実施例1では、送信装置1−1のPCR書き換え部11は、予め設定された規則情報(図6)に従って、TSに対して付加されるヌルパケットの位置を決定する。すなわち、PCR書き換え部11は、TSに対して付加されるヌルパケットの位置を、パケット列の1パケット目から順に、TSパケット及び付加されるヌルパケットのそれぞれに対し、「(1パケット目からその時点までに)パケット列に割り振られたパケット数」/「当該TSに割り当てられた1フレーム中のスロット数(または付加されるヌルパケットの数)」を計算し、この値の小さい方、または値が同じ場合は、TSパケットを選択することによって決定する。これに対し、変形例1では、他の規則情報に従って、TSに対して付加されるヌルパケットの位置を決定する。
【0090】
具体的には、送信装置1−1のPCR書き換え部11は、TSを入力すると共に、スロット割り当て部10から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、予め設定されたフレーム内のパケット数分のパケットについて、このパケット数から当該TSのスロット割り当て数を差し引いた数のパケットをヌルパケットに置き換える。これにより、スロット割り当て数分のTSパケット、及びフレーム内のスロット数からスロット割り当て数を差し引いた数のヌルパケットからなるパケット列、すなわち、図2に示したTS1〜TS3を含む1フレームにおいて、特定のTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列が生成される。
【0091】
そして、PCR書き換え部11は、図5に示した対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。そして、PCR書き換え部11は、ヌルパケット付加後のスロット数と1フレームのスロット数が等しくない場合には、(a)生成したパケット列に含まれるヌルパケットから、削除されるヌルパケットの数及び位置を決定する。または、(b)生成したパケット列に追加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。このようにして、PCR書き換え部11は、生成したパケット列(1フレーム内で特定のTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列)から、削除または追加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。すなわち、PCR書き換え部11は、TSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。
【0092】
そして、PCR書き換え部11は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態において、PCRの値が整合するように、TS内のPCRの値を書き換える。
【0093】
以下、(a)(b)の場合について説明する。まず、(a)生成したパケット列に含まれるヌルパケットから、削除されるヌルパケットの数及び位置を決定する場合について説明する。この場合、受信装置2−1により出力されるTSの速度は、伝送路の伝送帯域未満の速度となる。これは、ヌルパケット付加後のスロット数が、1フレームのスロット数未満となるからである。PCR書き換え部11は、削除されるヌルパケットの位置を、フレーム内の特定のTSのパケットを除いたパケット列において、floor{k×(1フレームのスロット数−TSのスロット割り当て数)/(削除されるヌルパケット数)}関数にて計算する。kは1から「削除されるヌルパケット数」まで1ずつ増加する整数である。また、床関数のfloor{c}は、c以下の最大の整数を表す。
【0094】
具体例で説明する。例えばTS2の場合、スロット割り当て数は2、ヌルパケット付加後のスロット数は3であるから、フレーム内のTS2以外のパケットをヌルパケットとしたときの、ヌルパケットの数は13−2=11、その中から削除されるヌルパケットの数は13−3=10となる。したがって、PCR書き換え部11−2は、まず、11個のヌルパケットのみのパケット列を生成し、その中から、削除される10個のヌルパケットの位置を、前記床関数floorを用いて決定する。
【0095】
図10は、1フレームからTS2のパケットを除いた場合の、ヌルパケットからなるパケット列を示す図であり、図11は、削除されるヌルパケットの位置の計算例を説明する図である。PCR書き換え部11−2は、図10に示す11個のヌルパケットのみのパケット列を生成し、その中から、図11に示すように、削除される10個のヌルパケットの位置(1〜9,11)を決定する。図11において、削除されるヌルパケットの位置は、kを1から1ずつ増加させたfloor関数によって計算される。
【0096】
図12は、1フレームからTS2のパケットを除いた場合の、ヌルパケットからなるパケット列において、削除されるヌルパケットの位置を示す図であり、図13は、TS2以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列において、削除されるヌルパケットの位置を示す図である。PCR書き換え部11−2は、図11に示した計算によって、図12に示すように、削除されるヌルパケットの位置を1〜9及び11番目の位置に決定する。このようにして、PCR書き換え部11−2は、図13に示すように、生成したパケット列(TS2以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列)において、削除されるヌルパケットの数及び位置を、黒塗り箇所のNに示す数及び位置に決定する。図12及び図13において、削除されるヌルパケットの箇所を黒塗りにて表している。
【0097】
そして、PCR書き換え部11−2は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態において、PCRの値が整合するように、TS2内のPCRの値を書き換える。
【0098】
図14は、TS2において、ヌルパケット削除後のパケット列及び元のTSパケット列についての相対的な時間間隔を説明する図である。元のTSパケット列が、TSパケットα及びTSパケットβであり、ヌルパケット削除後のパケット列が、TSパケットα、TSパケットβ及びヌルパケットであり、PCRがTSパケットβに書き込まれているとする。この場合、PCR書き換え部11−2は、PCRが書き込まれたパケットβが、ヌルパケット削除後のパケット列において2パケット目に位置することを取得し、ヌルパケット削除前の状態(元のTSパケット列、図14の下段を参照)と、ヌルパケット削除後の状態(ヌルパケット削除後のパケット列、図14の上段を参照)との間の時間差Δを計算し、この時間差Δを元のPCRの値から減算して新たなPCRの値を求め、元のPCRの値を新たなPCRの値に書き換える。
【0099】
次に、(b)生成したパケット列に追加されるヌルパケットの数及び位置を決定する場合について説明する。この場合、受信装置2−1により出力されるTSの速度は、伝送路の伝送帯域より大きくなる。これは、ヌルパケット付加後のスロット数が、1フレームのスロット数より大きくなるからである。また、受信装置2−1は、PCRを書き換える対象となるTS以外が割り当てられたスロットをヌルパケットに置き換え、これにより生成されたパケット列に対し、さらにヌルパケットを追加して出力することになる。そこで、PCR書き換え部11は、追加されるヌルパケットの位置を、「フレーム内のパケット」及び「追加されるヌルパケット」のそれぞれに対し、「(その時点までに)パケット列に割り振られたパケット数」/「パケット列に割り振られるべきパケット数」を計算し、この値の小さい方、または値が同じ場合は、「フレーム内のパケット」を選択することによって決定する。
【0100】
具体例で説明する。例えばTS3の場合、スロット割り当て数は9である。また、ヌルパケット付加後のスロット数は16であり、1フレームのスロット数(13)より大きい。したがって、PCR書き換え部11−3は、フレーム内のTS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えて生成したパケット列に対し、新たに追加する3個のヌルパケットの位置を以下のように決定する。
【0101】
図15は、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列を示す図である。PCR書き換え部11−3は、図15に示すように、図2に示したTS1〜TS3を含む1フレームにおいて、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列を生成する。
【0102】
PCR書き換え部11−3は、このパケット列に対して、3個のヌルパケットを追加した16個のパケットからなるパケット列を想定し、予め設定された規則情報に従って、想定したパケット列の1パケット目から16パケット目までのそれぞれについて、図6と同様の処理を行い、パケット列内のTSパケット及び追加されるヌルパケットの並び順を決定する。
【0103】
図16は、フレーム内のパケット及び追加されるヌルパケットの並び順の計算例を説明する図であり、図17は、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列に、ヌルパケットを追加した例を示す図である。PCR書き換え部11−3は、予め設定された規則情報に従って図16に示した計算を行い、追加される3個のヌルパケットの位置を、2パケット目、7パケット目及び12パケット目に決定する。このようにして、PCR書き換え部11−3は、図17に示すように、生成したパケット列(TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列)において、追加されるヌルパケットの数及び位置を、黒塗りの箇所のNに示す数及び位置に決定する。図17において、追加されるヌルパケットの箇所を黒塗りで表している。
【0104】
そして、PCR書き換え部11−3は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態において、PCRの値が整合するように、TS3内のPCRの値を書き換える。
【0105】
これに対し、受信装置2−1の分離部21は、送信装置1−1のPCR書き換え部11と同じ処理を行って、付加するヌルパケットの数及び位置を決定する。すなわち、分離部21は、フレーム内において、ユーザーにより要求されたTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列を生成し、図5に示した対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定し、TSに付加されるヌルパケットの数を決定する。そして、分離部21は、ヌルパケット付加後のスロット数と1フレームのスロット数が等しくない場合には、(a)生成したパケット列に含まれるヌルパケットから、削除するヌルパケットの数及び位置を決定する。または、(b)生成したパケット列に追加するヌルパケットの数及び位置を決定する。そして、分離部21は、ヌルパケットを削除または追加することにより、送信装置1−1において想定したヌルパケット付加後のTSを生成し、出力する。
【0106】
以上のように、実施例1の変形例1によれば、前述の実施例1と同様の効果を奏する。また、受信装置2−1により出力されるTSの速度がフレームの伝送速度に等しくなる場合(すなわち、ヌルパケット付加後のスロット数が、1フレームのスロット数と等しくなる場合であり、具体例では示していないが、ヌルパケット付加後のスロット数を13と規定した場合)、特許文献5に記載された技術と同様に、受信装置2−1の分離部21は、フレーム内のパケットのうち、要求されたTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えるだけでTSを出力することができる。これにより、処理が簡便になる。
【0107】
(変形例2)
前記実施例1では、送信装置1−1のPCR書き換え部11は、予め設定された対応情報(図5)に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。これに対し、変形例2では、他の対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。変形例2における他の対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数は、所定の正の整数及び前記所定の正の整数の因数とする。
【0108】
図18は、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。図18に示すように、対応情報は、例えば、ヌルパケット付加後のスロット数が、16及びその因数となるように規定する。
【0109】
以上のように、実施例1の変形例2によれば、前述の実施例1と同様の効果を奏する。また、受信装置2−1のクロック再生部22にて必要となるクロックは、ある周波数とその因数、すなわち整数分の1に分周した周波数のみとなる。したがって、ある周波数を再生すれば、分周だけで必要な全てのクロックを再生することが可能となり、クロック再生部22の回路規模を著しく小さくすることができる。例えば、図18に示した対応情報に従う場合、クロック再生部22は、13Mbpsの速度から再生した13MHzのクロックを、16/13倍して16MHzのクロックを生成すればよい。これにより、クロック再生部22は、これを整数分の1(1/2,1/4,1/8,1/16)に分周する簡便な回路のみで、全てのTS出力クロックを生成することが可能となり、クロック再生部22の規模を一層小さくすることができる。
【実施例2】
【0110】
次に、実施例2について説明する。実施例2は、複数のTSを複数のチャネルで伝送するシステムの例である。以下、送信装置及び受信装置に分けて説明する。
【0111】
〔送信装置〕
まず、実施例2の送信装置について説明する。実施例1の送信装置1−1と実施例2の送信装置とを比較すると、実施例1の送信装置1−1では、フレームを伝送するチャネルが1個であるのに対し、実施例2の送信装置では、チャネルがJ個(Jは2以上の整数)である点で相違する。
【0112】
図19は、実施例2の送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−2は、スロット割り当て部10、PCR書き換え部11−1〜11−I、ヘッダ生成部12及び多重化部13を備えている。
【0113】
送信装置1−2は、送信すべきI個のTS1〜TSIを入力し、入力した各TSの速度を示す速度情報1〜Iを取得する。尚、送信装置1−2により入力されるI個のTS1〜TSIは、後述するスロット割り当て部10において各TSがJ個のフレームの各データスロットに割り当てられるように、予め速度変換されており、PCRの値も書き換えられているものとする。
【0114】
スロット割り当て部10は、速度情報1〜Iを入力し、各TSに割り当てる、J個のフレーム内における各TSのスロットの数及びスロット位置を決定し、これらの情報をPCR書き換え部11−1〜11−I、ヘッダ生成部12及び多重化部13に出力する。
【0115】
PCR書き換え部11−1〜11−Iは、TS1〜TSIを入力すると共に、スロット割り当て部10からJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、TS1〜TSIに対し、J個のフレーム内におけるスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、後述する受信装置2−2が合成するTSに対して挿入するヌルパケットの数及び位置を決定する。実施例1と同様に、ヌルパケットは、受信装置2−2が要求されたTSをJ個のフレームから分離して合成し、出力する際に挿入される。そして、PCR書き換え部11−1〜11−Iは、受信装置2−2が挿入するヌルパケットの数及び位置に基づいて、各TSに書き込まれたPCRの値を書き換え、PCRの値を書き換えたTS1〜TSIを多重化部13に出力する。
【0116】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部10からJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、TSの識別情報(TS_id(TS識別子)及びoriginal_network_id(オリジナルネットワーク識別子)と相対TS番号との対応表)及び各スロットに格納されるTSの相対TS番号からなるスロット割り当て情報を含むJ個のヘッダを生成し、生成したJ個のヘッダを多重化部13に出力する。
【0117】
多重化部13は、PCR書き換え部11−1〜11−IからPCRの値が書き換えられたTS1〜TSIを入力し、スロット割り当て部10からJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、ヘッダ生成部12からJ個のヘッダを入力する。そして、多重化部13は、入力したTS1〜TSIを、予め設定された分割規則情報に従って分割し、入力したJ個のヘッダ及び分割したTS1〜TSIを、入力したJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、J個のフレームに多重化し、多重化したJ個のフレームを後述する受信装置2−2へ送信する。
【0118】
(具体例)
次に、図19に示した送信装置1−2における各部の具体的動作について具体例を挙げて説明する。送信装置1−2が入力するTSは3個(I=3)とし、各TSの速度はそれぞれTS1=58Mbps、TS2=23Mbps、TS3=3Mbpsであり、1チャネルは13Mbpsの伝送帯域を持つものとする。また、チャネル数は7(J=7)とし、フレームは、1個のヘッダスロット及び12個のデータスロットにより構成されるものとする。
【0119】
この具体例では、1スロットを用いたときのデータの伝送速度は、13Mbps/13スロット=1Mbpsとなり、7チャネル全てを用いたときのデータの伝送速度は、13Mbps×7=91Mbpsである。また、全てのTSの速度の合計は84Mbpsであり、合計84スロットで全てのTSを伝送可能である。
【0120】
スロット割り当て部10は、TS1〜TS3の速度情報1〜3を入力し、速度情報1〜3に基づいて、TS1〜TS3に割り当てる、チャネル1〜7それぞれのスロット数を決定する。本具体例では、TS1に対し、チャネル1〜4の12スロット及びチャネル5の10スロット、すなわち合計で58スロットを決定する。また、TS2に対し、チャネル5の2スロット、チャネル6の12スロット及びチャネル7の9スロット、すなわち合計で23スロットを決定する。また、TS3に対し、チャネル7の3スロットを決定する。
【0121】
また、スロット割り当て部10は、TS1〜TS3に割り当てる7個のフレーム内のスロット位置を決定する。スロット位置は、決定したスロット数を満たしていれば、どのように決定してもよい。
【0122】
図20は、スロット割り当て部10により決定されるスロット位置の例を示す図である。図20において、数字はTS番号(1〜3)を表す。図20に示すように、スロット割り当て部10は、TS1〜TS3に割り当てる、チャネル1〜7それぞれのスロット位置を決定する。
【0123】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部10から入力した、7個のフレーム内についての各TSのスロット割り当て数及びスロット数(図20を参照)に基づいて、ヘッダ1〜7を生成する。
【0124】
図21は、ヘッダ生成部12により生成されるヘッダ1〜7の例を示す図である。このヘッダ1〜7は、図3に示したヘッダと同様に、パケット同期情報、フレーム同期情報、TS1〜TS15の識別情報であるTS_id及びoriginal_network_id、各スロットに格納されるTSの相対TS番号、及びその他の情報から構成される。各情報についての説明は省略する。
【0125】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、前述のとおり、J個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置に基づき、受信装置2−2が挿入するヌルパケットの数及び位置を決定し、TSのPCRを書き換える。以下、PCR書き換え部11−1〜11−3の処理について詳細に説明する。基本的には、図4に示した処理と同様である。
【0126】
まず、PCR書き換え部11−1〜11−3は、TS1〜TS3、J個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置をそれぞれ入力し、予め設定された対応情報に従って、スロット割り当て数の合計に対応するヌルパケット付加後のスロット数を決定する。
【0127】
図22は、PCR書き換え部11−1〜11−3にて用いる、スロット割り当て数の合計と、ヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。PCR書き換え部11−1は、この対応情報を用いて、TS1のスロット割り当て数の合計58に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数60を決定する。また、PCR書き換え部11−2は、この対応情報を用いて、TS2のスロット割り当て数の合計23に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数40を決定する。また、PCR書き換え部11−3は、この対応情報を用いて、TS3のスロット割り当て数の合計3に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数20を決定する。尚、図22に示した対応情報において、ヌルパケット付加後のスロット数は、スロット割り当て数の合計より大きい値であれば、どのように規定してもよい。
【0128】
次に、PCR書き換え部11−1〜11−3は、スロット割り当て部10から入力したJ個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置、並びに決定したヌルパケット付加後のスロット数に基づいて、元のTSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。尚、「元のTSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置」は、ヌルパケット付加後のTS速度に整合するように書き換えられるPCRの値に対応している。この場合、送信装置1−2は、実際にヌルパケットを付加することもなく、送信することもない。このヌルパケットは、後述する受信装置2−2において、要求されたTSを出力する際に、TSパケット間に挿入される。つまり、PCR書き換え部11−1〜11−3にて書き換えられるPCRの値は、受信装置2−2において出力されるTSに整合したものになる。
【0129】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、元のTSに対して付加されるヌルパケットの数を、「ヌルパケット付加後のスロット数−スロット割り当て数の合計」(図22を参照)の演算によって決定する。また、PCR書き換え部11−1〜11−3は、元のTSに対して付加されるヌルパケットの位置を、予め設定された規則情報に従って決定する。この規則情報は、後述する受信装置2−2の分離部21が実際にヌルパケットをTSに挿入する際に用いる規則情報と同じとする。尚、ヌルパケットの位置は、送信装置2−2及び受信装置2−2において予め設定された同一の規則情報に従っていれば、どのように決定してもよい。
【0130】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、例えば実施例1と同様に、TSパケット及び付加されるヌルパケットにより構成されるパケット列を想定し、そのパケット列の1パケット目から順に、TSパケット及び付加されるヌルパケットのそれぞれに対し、「(1パケット目からその時点までに)パケット列に割り振られたパケット数」/「当該TSに割り当てられた1フレーム中のスロット数(または、付加されるヌルパケットの数)」による割り算の計算を行い、計算結果の値の小さい方、または値が同じ場合は、TSパケットを選択することによって、パケット列内のTSパケット及び付加されるヌルパケットの並び順を決定する。処理の詳細は実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0131】
次に、PCR書き換え部11−1〜11−3は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態において、PCRの値が整合するように、TS内のPCRの値を書き換える。処理の詳細は実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0132】
多重化部13は、PCRの値が書き換えられたTS1〜TS3を、予め設定された分割規則情報に従って、伝送するチャネル数7と同数のデータ列に分割する。分割規則情報はどのような規則でもよい。
【0133】
図23は、多重化部13によるTS分割処理(TS1に対する処理)を説明する図であり、図24は、多重化部13によるTS分割処理(TS2に対する処理)を説明する図である。本実施例では、多重化部13は、入力したTSに対し、割り当てられたスロット位置に従い、チャネル番号及びスロット番号の若い順に、1パケットずつ振り分けるという規則により、TSを分割する。図23及び図24において、数字はTSパケットの順番を表している。
【0134】
そして、多重化部13は、分割したTS及びJ個のヘッダを、入力したJ個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて多重化し、図20に示す7個のフレームを送信する。
【0135】
以上のように、実施例2の送信装置1−2によれば、PCR書き換え部11−1〜11−Iが、スロット割り当て部10により決定されたJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、予め設定された対応情報に従ってヌルパケット付加後のスロット数を決定し、ヌルパケット付加後のスロット数からスロット割り当て数の合計を減算してヌルパケット数を決定し、予め設定された規則情報に従ってヌルパケットの位置を決定し、ヌルパケット付加後のパケット列を想定してPCRの値を書き換えるようにした。ここで、ヌルパケットは、送信装置1−2にて挿入されず、受信装置2−2において挿入される。そして、多重化部13は、PCRの値が書き換えられたTSをJ個のフレームに多重化し、多重化したJ個のフレームを送信するようにした。
【0136】
これにより、送信装置1−2から送信されたJ個のフレームを受信する受信装置2−2は、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSを合成し、送信装置1−2においてPCRの値の書き換えの際に決定された同じ数のヌルパケットを同じ位置に挿入して出力することで、J個のフレーム内において、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する場合に比べ、TSの速度を低く抑えることができる。また、受信装置2−2は、出力するTSの速度を元のTSの速度に戻す必要がないから、元のTSの速度を再生する場合に比べて、再生するクロックの種類を少なくでき、クロック再生部22の処理が簡便になる。
【0137】
〔受信装置〕
次に、実施例2の受信装置について説明する。実施例1の受信装置2−1と実施例2の受信装置とを比較すると、実施例1の受信装置2−1は、1個のヘッダ検出部20を備えているのに対し、実施例2の受信装置は、フレームの数に相当するJ個のヘッダ検出部20を備えている点で相違する。
【0138】
図25は、実施例2の受信装置の構成を示すブロック図である。この受信装置2−2は、ヘッダ検出部20−1〜20−J、分離部21及びクロック再生部22を備えている。
【0139】
受信装置2−2は、送信装置1−2により送信されたJ個のフレームを受信する。J個のフレームのうちの個々のフレーム1〜Jは、ヘッダ検出部20−1〜20−Jにそれぞれ入力される。また、J個のフレームは、分離部21及びクロック再生部22に入力される。
【0140】
ヘッダ検出部20−1〜20−Jは、フレーム1〜Jをそれぞれ入力し、フレーム1〜J内のヘッダからフレーム同期情報(0x1a86)のパターンを取得することによりヘッダをそれぞれ検出し、フレーム同期を確立する。フレーム同期を確立する処理は、実施例1と同様である。そして、ヘッダ検出部20−1〜20−Jは、フレーム1〜Jからヘッダをそれぞれ取得し、ヘッダから各TSの識別情報及び各スロットに格納されるTSの相対TS番号を取得し、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置の情報を生成して分離部21に出力する。
【0141】
分離部21は、J個のフレームを入力し、ヘッダ検出部20−1〜20−Jから、J個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、クロック再生部22からTS出力クロックを入力する。そして、分離部21は、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、J個のフレームから、ユーザーによって要求されたTSを分離し、予め設定された分割規則情報(送信装置1−2の多重化部13にて用いる分割規則情報と同じ情報)に従って、分離されたTSパケット列を1つのTSに合成する。そして、分離部21は、合成したTSに対し、送信装置1−2のPCR書き換え部11と同様の処理によりヌルパケットを付加し、TS出力クロックに同期させたTSを出力する。また、分離部21は、合成したTSのスロット割り当て数に基づいて、当該TSを出力する速度を決定し、出力速度情報としてクロック再生部22に出力する。
【0142】
クロック再生部22は、J個のフレームを入力すると共に、分離部21からTSの出力速度情報を入力し、入力したフレームの伝送速度に同期したクロックを再生し、再生したクロックを分周及び逓倍することにより、出力速度情報によって規定するクロックを生成し、TS出力クロックとして分離部21に出力する。
【0143】
(具体例)
次に、図25に示した受信装置2−2における各部の具体的動作について具体例を挙げて説明する。受信装置2−2が受信する7個のフレームは、送信装置1−2により送信された7個のフレームとし、ユーザーによってTS_id=0x0002、original_network_id=0x1001であるTS(TS2)が要求されているものとする。分割部21の処理は、基本的には図9に示した処理と同様である。
【0144】
まず、分離部21は、7個のフレーム、7個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置、並びにTS出力クロックを入力し、7個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置から、要求されたTS2のスロット割り当て数及びスロット位置を取得する。
【0145】
次に、分離部21は、取得したTS2のスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、フレームから、要求されたTS2を分離し、予め設定された分割規則情報に従って、1つのTS2に合成する。本具体例では、図23及び図24に示したように、TSが割り当てられた複数のフレーム(図24を参照して、TS2の場合はフレーム2,3)から、チャネル番号及びスロット番号の若い順に、1パケットずつ読み出して合成する。
【0146】
次に、分離部21は、合成したTS2を出力する際に、そのTS2に付加するヌルパケットの数及び位置を、予め設定された対応情報及び規則情報(送信装置1−2にて用いた対応情報及び規則情報と同じ情報)に従って決定する。尚、分離部21は、送信装置1−2のPCR書き換え部11と同様の処理により、TSに付加するヌルパケットの数及び位置を決定する。
【0147】
具体的には、分離部21は、予め設定された対応情報に従って、TS2のスロット割り当て数の合計に対応するヌルパケット付加後のスロット数を決定する。そして、分離部21は、TS2のスロット割り当て数及びスロット位置、並びに決定したヌルパケット付加後のスロット数に基づいて、合成したTS2に対して付加するヌルパケットの数及び位置を決定する。すなわち、分離部21は、TS2に対して付加するヌルパケットの数を、「ヌルパケット付加後のスロット数−スロット割り当て数の合計」(図22を参照)の演算によって決定し、TSに対して付加するヌルパケットの位置を、予め設定された規則情報(図6を参照)に従って決定する。
【0148】
次に、分離部21は、合成したTS2に、決定した数のヌルパケットを、決定した位置に挿入し、ヌルパケット付加後のTS2をTS出力クロックに同期させて出力する。これにより、TS2は、送信装置1−2が入力する元の速度以上の速度で、受信装置2−2から出力される。TS2の場合、23個のTSパケットに対し17個のヌルパケットが付加され、40MbpsのTSとして出力される。
【0149】
また、分離部21は、要求されたTS2について、ヌルパケット付加後のスロット数を出力速度情報としてクロック再生部22に出力する。TS2の出力速度情報は40となる。
【0150】
クロック再生部22は、1チャネルあたりの伝送速度に同期したクロックを再生する。本具体例では、1チャネルあたりの伝送路の伝送帯域は13Mbpsであるから、クロック再生部22は、13MHzのクロックを再生する。そして、クロック再生部22は、入力した出力速度情報に基づいて、再生したクロックからTS出力クロックを生成し、分離部21に出力する。TS2の場合、入力した出力速度情報は40であるから、クロック再生部22は、再生した13MHzのクロックを40/13倍して40MHzのクロックを生成し、これをTS出力クロックとして出力する。
【0151】
以上のように、実施例2の受信装置2−2によれば、分離部21が、J個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置から、ユーザーによって要求されたTSのスロット割り当て数及びスロット位置を取得し、要求されたTSを各フレームから分離し、分離した各TSを合成し、合成したTSに対し、予め設定された対応情報に従ってヌルパケット付加後のスロット数を決定し、ヌルパケット付加後のスロット数からスロット割り当て数を減算してヌルパケット数を決定し、予め設定された規則情報に従ってヌルパケットの位置を決定し、合成したTSにヌルパケットを挿入し、TS出力クロックに同期させて出力するようにした。また、クロック再生部22が、分離部21により出力されるヌルパケット付加後のTSの出力速度情報に基づいて、1チャネルあたりの伝送速度に同期したクロックからTS出力クロックを生成するようにした。
【0152】
すなわち、実施例2では、受信装置2−2が出力するTSの速度(ヌルパケット付加後のスロット数)を、送信装置1−2が入力する元の速度に応じて、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応情報に従って予め設定しておく。そして、送信装置1−2は、予め設定された速度でTSを出力したときに整合するように、PCRの値を予め書き換えておく。送信装置1−2により書き換えられるPCRの値は、受信装置2−2において挿入されるヌルパケットの数に対応したものである。つまり、受信装置2−2により出力されるヌルパケット付加後のTSには、送信装置1−2により書き換えられたPCRが含まれており、出力されるTSの速度は、そのTSに含まれるPCRの値に整合している。
【0153】
また、前述の特許文献4に記載された第2の手法では、受信装置は、1チャネルあたりの伝送速度のN倍(Nはチャネル数)の速度でTSを出力する。これに対し、実施例2の受信装置2−2では、スロット割り当て数に応じた数のヌルパケットを挿入し、ヌルパケット付加後の速度でTSを出力する。つまり、受信装置2−2は、1チャネルあたりの伝送速度のN倍の速度よりも低い速度でTSを出力するから、TSの速度を低く抑えることができる。したがって、特許文献4の受信装置に比べて、受信装置2−2及び受信装置2−2の後段に設けられるデコーダの回路全体として消費電力を小さくすることができる。
【0154】
また、前述の特許文献4に記載された第1の手法では、受信装置のクロック再生回路は、最大でN種類のクロック(Nはチャネル数)を生成する必要がある。これに対し、実施例2の受信装置2−2では、1チャネルあたりの伝送速度に同期したクロックを再生し、入力した出力速度情報に基づいて、再生したクロックからTS出力クロックを生成する。つまり、受信装置2−2は、特許文献4の受信装置にて生成されるクロックよりも少ない種類のクロックを生成すれば済むから、クロック再生部22の処理が簡便になる。
【0155】
したがって、実施例2によれば、受信装置2−2が、要求されたTSをJ個のフレームから分離し、分離したTSを合成し、送信装置1−2においてPCRの値の書き換えの際に決定された同じ数のヌルパケットを同じ位置に挿入して出力する。これにより、TSの速度を低く抑えることができる。したがって、デコーダは、受信装置2−2から低速のTSを入力してデコードすればよいから、処理負荷を低減することができる。また、受信装置2−2がTSにヌルパケットを挿入して出力する際に、そのTSは当該TSに書き込まれたPCRに整合しており、受信装置2−2は、ヌルパケットを挿入して出力するTSの速度に対応するクロックを、1チャネルあたりの伝送速度に同期したクロックから生成すればよい。したがって、クロック再生部22の規模を小さくすることができる。
【0156】
(変形例1)
前記実施例2では、送信装置1−2のPCR書き換え部11は、予め設定された対応情報(図22)に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。これに対し、変形例1では、他の対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。変形例1における他の対応情報に含まれるヌルパケットのスロット数は、実施例1の変形例2と同様に、所定の正の整数及び前記所定の正の整数の因数とする。
【0157】
図26は、スロット割り当て数の合計とヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。図26に示すように、対応情報は、例えば、ヌルパケット付加後のスロット数が、96及びその因数となるように規定する。
【0158】
以上のように、実施例2の変形例1によれば、前述の実施例2と同様の効果を奏する。また、受信装置2−2のクロック再生部22にて必要となるクロックは、ある周波数とその因数、すなわち整数分の1に分周した周波数のみとなる。したがって、ある周波数を再生すれば、分周だけで必要な全てのクロックを再生することが可能となり、クロック再生部22の回路規模を著しく小さくすることができる。例えば、図26に示した対応情報に従う場合、クロック再生部22は、13Mbpsの速度から再生した13MHzのクロックを、96/13倍して16MHzのクロックを生成すればよい。これにより、クロック再生部22は、これを整数分の1(1/2,1/3,1/4,1/6,1/8,1/12,1/16,1/24,1/32,1/48,1/96)に分周する簡便な回路のみで、全てのTS出力クロックを生成することが可能となり、クロック再生部22の規模を一層小さくすることができる。
【0159】
(変形例2)
前記実施例2及び実施例2の変形例1では、送信装置1−2のPCR書き換え部11がヌルパケット付加後のスロット数を決定する際に用いる対応情報(図22、図26)において、ヌルパケット付加後のスロット数は1スロット単位で規定されている。これに対し、変形例2では、対応情報におけるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数を単位として規定する。また、変形例2では、他の規則情報に従って、TSに対して付加されるヌルパケットの位置を決定する。
【0160】
具体的には、送信装置1−2のPCR書き換え部11は、TSを入力すると共に、スロット割り当て部10から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、特定のTSが伝送されるZ個(Zは1以上の整数)のフレーム内の、特定のTS以外のパケットをヌルパケットに置き換える。また、Zが2以上の場合には、予め設定した分割規則情報に従って、1つのパケット列に合成する。
【0161】
そして、PCR書き換え部11は、予め設定した対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定し、TSに付加されるヌルパケットの数を決定する。そして、PCR書き換え部11は、ヌルパケット付加後のスロット数と、1フレームのスロット数にZを乗じた値が等しくない場合には、(a)生成したパケット列に含まれるヌルパケットから、削除されるヌルパケットの数及び位置を決定する。または、(b)生成したパケット列に追加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。
【0162】
以上のように、実施例2の変形例2によれば、前述の実施例2と同様の効果を奏する。また、あるTSのヌルパケット付加後のスロット数が、1フレームのスロット数にZを乗じた値と等しくなる場合には、実施例1の変形例1と同様に、受信装置2−2の分離部21は、Z個のフレーム内の、要求されたTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えたのち、Zが2以上の場合には、予め設定した分割規則情報に従って、パケット列をTSに合成することにより、TSを出力することが可能となり、処理が簡便になる。
【0163】
(変形例3)
変形例3では、対応情報におけるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数に所定の正の整数を乗算した値、及び1フレームのスロット数に前記所定の正の整数の因数を乗算した値として規定する。
【0164】
以上のように、実施例2の変形例3によれば、前述の実施例2及び実施例2の変形例2と同様の効果を奏する。また、受信装置2−2のクロック再生部22にて必要となるクロックは、ある周波数とその因数、すなわち整数分の1に分周した周波数のみとなる。したがって、ある周波数を再生すれば、分周だけで必要な全てのクロックを再生することが可能となり、実施例1の変形例2及び実施例2の変形例1と同様に、クロック再生部22の回路規模を著しく小さくすることができる。
【0165】
尚、本発明の実施例1,2による送信装置1−1,1−2及び受信装置2−1,2−2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。送信装置1−1,1−2及び受信装置2−1,2−2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。送信装置1−1,1−2に備えたスロット割り当て部10、PCR書き換え部11、ヘッダ生成部12及び多重化部13の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、受信装置2−1,2−2に備えたヘッダ検出部20、分離部21及びクロック再生部22の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【符号の説明】
【0166】
1 送信装置
2 受信装置
10 スロット割り当て部
11 PCR書き換え部
12 ヘッダ生成部
13 多重化部
20 ヘッダ検出部
21 分離部
22 クロック再生部
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPEG−2 TS信号等のパケット形式のデジタルデータを伝送するシステムにおいて、複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、フレームを構成して伝送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のMPEG−2 TS(ISO/IEC(International Organization for Standardization:国際標準化機構/International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)13818−1に規定されるトランスポートストリーム)を、独立性を保った状態で、単一のTSを想定した伝送路へ伝送させる方式が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。
【0003】
この伝送方式は、送信装置において、TSパケット(同期バイト(0x47)で始まる固定長(188バイト)のパケット、または、これに固定長のパリティバイトを追加したパケット)列に周期的なフレーム構造を持たせ、そのスロット位置の情報を利用することによりTSパケット列を多重化するものである。受信装置は、多重化されたTSパケット列のフレームを受信し、スロット割り当て情報を利用することにより、TSパケット列を分離する。この伝送方式は、フレームのヘッダが、必要な同期語データ(同期情報)と、各TSが格納されるフレーム中の位置を示すスロット割り当て情報とを含み、TSパケット形式になっていることがポイントとなっている。以下、フレームに多重化されたデータをフレーム形式データという。
【0004】
前述の特許文献1または非特許文献1に記載された、単一のTSを想定した伝送路へ伝送させる方式の他、1つの搬送波(チャネル)で伝送可能な速度以上の高速のTSを含む複数のTSを、特許文献1または非特許文献1に示したフレームに多重化し、複数のチャネルを介して周波数多重伝送する方式も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。この伝送方式は、送信装置において、高速のTSをフレームに多重化し、1チャネルあたりの伝送速度に対しN倍の速度のフレーム形式データを生成し、パケット単位でN分割してN個のチャネルで伝送するものである。受信装置は、1チャネルあたりの伝送速度に対してN倍の速度のフレーム形式データを復元し、復元したフレーム形式データから元のTSを生成する。ここで、送信装置では、TSをフレームに多重化する際に、ヘッダの後に(N−1)個のヌルパケットを格納するように多重化しておき、N分割する際に、前記(N−1)個のヌルパケットを前記ヘッダの複製で置き換える。このように、フレームは、分割されたフレーム形式データのそれぞれに1個ずつのヘッダが含まれるように構成される。この方式は、受信装置において、ヘッダに基づいてチャネル間の遅延差を調整し、1チャネルあたりの伝送速度に対してN倍の速度のフレーム形式データを復元することがポイントとなっている。
【0005】
一方、伝送すべきTSの速度を測定し、複数のチャネルに分割する必要のあるTSの分割数と、分割が不要なTSを伝送するチャネル数とに基づいて、各TSに対するチャネルの割り当てを決める技術が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この技術は、特許文献2と異なり、受信装置において、取り出したいTSが伝送されるチャネルのみを受信すればよいことがポイントとなっている。
【0006】
また、受信装置において、取り出したいTSが伝送されるチャネルのみを受信し、かつ、全てのTSを伝送するために必要なチャネルの総数を、前述の特許文献3よりも少なく抑えることを可能とした技術が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。この技術では、送信装置が、1チャネルあたりの伝送速度に対してN倍の速度のフレーム形式データを生成し、パケット単位でN分割してN個のチャネルで伝送する。しかし、前述の特許文献2の技術とは異なり、ヘッダをチャネル毎に独立に生成して伝送するから、受信装置では、1チャネルあたりの伝送速度に対してN倍の速度のフレーム形式データに復元する必要がない。また、元のTSの数及び伝送速度に基づいて、割り当てるスロット数及びスロット位置の情報、並びに割り当てるチャネルの情報を予め用意することによって、各TSの分割数を少なく抑えつつ、特許文献3よりも必要なチャネルの数Nを少なく抑えることを可能としている。
【0007】
ところで、前述の特許文献1及び非特許文献1に記載された、単一のTSを多重伝送する技術、または、前述の特許文献2〜4に記載された、複数のTSを複数のチャネルを介して周波数多重伝送する技術において、受信装置は、ユーザーによって要求されたTSを出力する際に、所望のクロックを再生する必要がある。このクロックを再生する回路の規模を低減することを目的とした技術が提案されている(例えば、特許文献5,6を参照)。
【0008】
特許文献5の技術では、送信装置は、フレームに多重化して1チャネルで伝送するTSに対し、フレーム形式データの伝送速度に合わせるために、PCR(プログラム・クロック・リファレンス)の値を予め書き換え、受信装置は、フレーム形式データからTSを取り出す際に、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する。この技術は、フレーム内にTSが割り当てられたスロット数に関わらず、受信装置において、フレーム形式データの伝送速度と同じ速度でTSを出力し、元のTSの速度を再生する必要がないから、クロック再生処理が簡便になることがポイントとなっている。
【0009】
また、特許文献6の技術では、送信装置は、フレームに多重化して1チャネルで伝送するTSに対し、割り当てるスロット数を1フレームのスロット数の因数とするか、または因数にできない場合には、最も近い因数のスロット数になるようにヌルパケットを付加した上でPCRの値を書き換え、再びヌルパケットを除去して伝送する。受信装置は、取り出したTSに対し、必要に応じてヌルパケットを付加して出力する。この場合、受信装置は、フレーム形式データの伝送速度からクロックを再生し、このクロックを整数分の1に分周することにより、元のTSのクロックを再生する。したがって、この技術は、受信装置において、元のTSのクロックを再生する処理が簡便に行われることがポイントとなっている。
【0010】
また、特許文献4には、元のTSのクロックを再生する処理を不要にし、クロック再生回路の規模を小さくする手法が記載されている。第1の手法は、送信装置が、N個のチャネルで伝送するN個のフレームのうち、M個(MはN以下の整数)のフレームに多重化したTSに対し、1チャネルあたりの伝送速度のM倍の速度に合わせてPCRの値を書き換え、受信装置が、M個のフレーム形式データから要求されたTSを取り出す際に、当該TS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する。また、第2の手法は、送信装置が、N個のチャネルで伝送するN個のフレームのうち、M個(MはN以下の整数)のフレームに多重化したTSに対し、1チャネルあたりの伝送速度のN倍の速度に合わせてPCRの値を書き換え、受信装置は、M個のフレーム形式データから要求されたTSを取り出す際に、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えると共に、(N−M)個のチャネルを介して伝送されたパケット数に対応するヌルパケットを生成し、TSに付加して出力する。これらの手法は、元のTSの速度に関わらず、受信装置において、1チャネルあたりのM倍(手法1)またはN倍(手法2)の速度と同じ速度でTSを取り出すことが可能となり、元のTSの速度を再生する処理が不要になるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3051729号公報
【特許文献2】特許第3991307号公報
【特許文献3】特許第4111438号公報
【特許文献4】特開2010−177858号公報
【特許文献5】特許第4374107号公報
【特許文献6】特開平11−177516号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ITU−T Rec.J.183
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、これらの従来技術には次の問題点がある。例えば、特許文献5の技術では、元のTSの速度が低い場合であっても、出力されるTSの速度はフレーム形式データの伝送速度と同じになるため、受信装置及び受信装置の後段に設けられたデコーダの回路全体として消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0014】
また、特許文献6の技術では、1フレームのスロット数が素数である場合、または1フレームのスロット数の因数が少ない場合には、元のTSの速度が低い場合であっても、出力されるTSの速度が高くなり、受信装置及びデコーダの回路全体として消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0015】
また、特許文献4に記載された手法2では、元のTSの速度が低い場合であっても、出力されるTSの速度は1チャネルあたりの伝送速度のN倍の速度となるため、受信装置及びデコーダの回路全体として消費電力が大きくなってしまうという問題があった。
【0016】
また、特許文献4に記載された手法1では、TSを伝送するチャネル数に応じて、1チャネルあたりの伝送速度のN倍以下の速度でTSを取り出すことが可能となり、同じ特許文献4に記載された手法2に比べて、出力するTSの速度を低くすることができる。このため、受信装置及びデコーダの回路全体として消費電力を小さくできるが、受信装置のクロック再生回路にて再生する必要のあるクロックは最大でN種類となり、クロック再生回路の規模が増大するという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数のTSをフレームに多重化して伝送するシステムにおいて、受信装置にて出力されるTSの速度を低く抑えることができ、受信装置にて用いるクロック再生回路の規模を小さくすることが可能なデジタルデータ送信装置、受信装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数のデジタルデータを入力し、前記複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、ヘッダスロット及びデータスロットからなるフレームを構成し、所定数のチャネルにて伝送路へ送信する送信装置において、前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納する際の、それぞれのデジタルデータに対するスロット割り当て数及びスロット位置を決定するスロット割り当て部と、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、ヘッダを生成するヘッダ生成部と、前記デジタルデータに含まれるPCR(プログラム・クロック・リファレンス)の値を書き換えるPCR書き換え部と、前記ヘッダ生成部により生成されたヘッダを前記フレーム内のヘッダスロットに格納し、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、前記PCRの値が書き換えられた前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納し、多重化してフレームを構成する多重化部と、を備え、前記PCR書き換え部は、スロットあたりの伝送速度または1チャネルあたり伝送速度を単位とした複数個の速度が予め規定され、当該送信装置が入力したデジタルデータの速度に対応する、前記規定された複数個の速度のうち入力したデジタルデータの速度以上であって、かつ最小の速度が対応情報として予め規定され、前記対応情報によって規定された速度を、前記フレームを受信する受信装置により出力されるデジタルデータの出力速度とし、前記出力速度に整合するように、前記PCRの値を書き換える、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれる複数個の速度を、1スロットあたりの伝送速度に所定の正の整数を乗算した値、及び1スロットあたりの伝送速度に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項3の発明は、請求項1に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれる複数個の速度を、1チャネルあたりの伝送速度に所定の正の整数を乗算した値、及び1チャネルあたりの伝送速度に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部が、当該送信装置が入力したデジタルデータに対するヌルパケット付加後のデジタルデータを、前記フレームを受信する受信装置により前記出力速度にて出力されるデジタルデータとして想定し、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数に基づいて、前記デジタルデータに付加されるヌルパケットの数及び位置を決定し、前記ヌルパケット付加後のデジタルデータの速度に整合するように、前記PCRの値を書き換える、ことを特徴とする。
【0022】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部が、前記対応情報として、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数とが対応して規定された対応情報を備え、前記対応情報に従い、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数に基づいて、前記ヌルパケットの数を決定する、ことを特徴とする。
【0023】
また、請求項6の発明は、請求項4または5に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部が、前記想定したヌルパケット付加後のデジタルデータのパケット列に対し、元のデジタルデータのデータパケット及びヌルパケットを割り振るための規則情報を備え、前記規則情報に従って、割り振るべきデータパケット及びヌルパケットの数、並びに既に割り振られたデータパケット及びヌルパケットの数に基づいて、前記データパケットまたはヌルパケットを前記パケット列に割り振ることにより、前記ヌルパケットの位置を決定する、ことを特徴とする。
【0024】
また、請求項7の発明は、請求項5に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、所定の正の整数及び前記所定の正の整数の因数とする、ことを特徴とする。
【0025】
また、請求項8の発明は、請求項5に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数を単位とした値とする、ことを特徴とする。
【0026】
また、請求項9の発明は、請求項5に記載の送信装置において、前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数に所定の正の整数を乗算した値、及び1フレームのスロット数に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする。
【0027】
さらに、請求項10の発明は、請求項1から9までのいずれか一項に記載の送信装置により送信された前記フレームを受信し、ユーザーにより要求されたデジタルデータを、前記フレームから分離して出力する受信装置であって、前記フレーム内のヘッダを検出し、前記ヘッダから前記デジタルデータのスロット割り当て数及びスロット位置を生成するヘッダ検出部と、前記ヘッダ検出部により生成されたデジタルデータのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、前記ユーザーにより要求されたデジタルデータを前記フレームから分離して出力する分離部と、前記フレームの伝送速度に基づいて、前記分離部がデジタルデータを出力する際に必要なクロックを再生するクロック再生部と、を備え、前記分離部が、前記送信装置のPCR書き換え部に備えた対応情報と同一の対応情報を備え、前記対応情報に基づき、前記送信装置が入力したデジタルデータのうち前記ユーザーにより要求されたデジタルデータの速度以上であって、かつ最小の速度を出力速度とし、前記出力速度にて、前記分離したデジタルデータを出力する、ことを特徴とする。
【0028】
さらに、請求項11の発明は、コンピュータを、請求項1から9までのいずれか一項に記載の送信装置として機能させるための送信プログラムにある。
【0029】
また、請求項12の発明は、コンピュータを、請求項10に記載の受信装置として機能させるための受信プログラムにある。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、複数のトランスポートストリームをフレームに多重化して伝送するシステムにおいて、受信装置にて出力されるTSの速度を低く抑えることができ、受信装置にて用いるクロック再生回路の規模を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態1(実施例1)による送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スロット割り当て部により決定されるスロット位置の例を示す図である。
【図3】ヘッダ生成部により生成されるヘッダの例を示す図である。
【図4】PCR書き換え部の処理を示すフローチャートである。
【図5】スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。
【図6】TSパケット及び付加されるヌルパケットの並び順の計算例を説明する図である。
【図7】ヌルパケット付加後のパケット列及び元のTSパケット列についての相対的な時間間隔を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態1(実施例1)による受信装置の構成を示すブロック図である。
【図9】分離部の処理を示すフローチャートである。
【図10】実施例1の変形例1における、1フレームからTS2のパケットを除いた場合の、ヌルパケットからなるパケット列を示す図である。
【図11】実施例1の変形例1における、削除されるヌルパケットの位置の計算例を説明する図である。
【図12】実施例1の変形例1における、削除されるヌルパケットの位置を示す図である。
【図13】実施例1の変形例1における、TS2以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列において、削除されるヌルパケットの位置を示す図である。
【図14】実施例1の変形例1における、ヌルパケット削除後のパケット列及び元のTSパケット列についての相対的な時間間隔を説明する図である。
【図15】実施例1の変形例1における、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列を示す図である。
【図16】実施例1の変形例1における、フレーム内のパケット及び追加されるヌルパケットの並び順の計算例を説明する図である。
【図17】実施例1の変形例1における、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列に、ヌルパケットを追加した例を示す図である。
【図18】実施例1の変形例2における、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。
【図19】本発明の実施形態2(実施例2)による送信装置の構成を示すブロック図である。
【図20】スロット割り当て部により決定されるスロット位置の例である。
【図21】ヘッダ生成部により生成される、各フレームのヘッダの例を示す図である。
【図22】スロット割り当て数の合計と、ヌルパケット付加後のスロット数との対応例を示す図である。
【図23】送信装置の多重化部によるTS分割処理、及び受信装置の分離部によるTS合成処理(TS1に対する処理)を説明する図である。
【図24】送信装置の多重化部によるTS分割処理、及び受信装置の分離部によるTS合成処理(TS2に対する処理)を説明する図である。
【図25】本発明の実施形態2(実施例2)による受信装置の構成を示すブロック図である。
【図26】実施例2の変形例1における、スロット割り当て数の合計と、ヌルパケット付加後のスロット数との対応例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は、送信装置が、受信装置により出力されるTSの速度を規定し、その速度に整合するようにPCRを書き換え、TSをフレームに多重化して送信し、受信装置が、受信したフレームから、ユーザーにより要求されたTSを分離し、このTSを、送信装置により規定された出力速度で出力することを特徴とする。この場合、受信装置により出力されるTSの速度は、TSに書き込まれたPCRと整合したものとなる。以下に説明する実施例1は、複数のTSを1チャネルで伝送するシステムに本発明を適用した例であり、実施例2は、複数のTSを複数のチャネルで伝送するシステムに本発明を適用した例である。
【実施例1】
【0033】
まず、実施例1について説明する。実施例1は、複数のTSを1チャネルで伝送するシステムの例である。以下、送信装置及び受信装置に分けて説明する。
【0034】
〔送信装置〕
まず、実施例1の送信装置について説明する。図1は、実施例1の送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−1は、スロット割り当て部10、PCR書き換え部11−1〜11−I、ヘッダ生成部12及び多重化部13を備えている。
【0035】
送信装置1−1は、送信すべきI個のTS1〜TSIを入力し、入力した各TSの速度を示す速度情報1〜Iを取得する。尚、送信装置1−1により入力されるI個のTS1〜TSIは、後述するスロット割り当て部10において各TSが1フレームの各データスロットに割り当てられるように、予め速度変換されており、PCRの値も書き換えられているものとする。
【0036】
スロット割り当て部10は、速度情報1〜Iを入力し、各TSに割り当てるスロット数及びスロット位置を決定し、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置をPCR書き換え部11−1〜11−I、ヘッダ生成部12及び多重化部13に出力する。
【0037】
PCR書き換え部11−1〜11−Iは、TS1〜TSIをそれぞれ入力すると共に、スロット割り当て部10から当該TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、TS1〜TSIに対し、スロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、後述する受信装置2−1がTSに対して挿入するヌルパケットの数及び位置を決定する。ヌルパケットは、受信装置2−1が要求されたTSをフレームから分離して出力する際に挿入される。そして、PCR書き換え部11−1〜11−Iは、受信装置2−1が挿入するヌルパケットの数及び位置に基づいて、ヌルパケット付加後の速度に整合するように、各TSのPCRの値を書き換え、PCRの値を書き換えたTS1〜TSIを多重化部13に出力する。ここで、PCRは、送信装置1−1のクロックによって発生する値(時刻)を所定間隔でサンプルした番組時刻基準値情報であり、後述する受信装置2−1の後段に設けられたデコーダが、受信装置2−1により出力されるTSをデコードする際に用いられる。
【0038】
つまり、PCR書き換え部11−1〜11−Iは、入力したTS1〜TSIのそれぞれについて、後述する対応情報に規定された、入力したTSの速度以上であって、かつ最小の速度を、後述する受信装置2−1により出力される出力速度に決定し、この出力速度に整合するように、各TSのPCRの値を書き換える。
【0039】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部10から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、TSの識別情報(TS_id(TS識別子)及びoriginal_network_id(オリジナルネットワーク識別子)と相対TS番号との対応表)及び各スロットに格納されるTSの相対TS番号からなるスロット割り当て情報を含むヘッダを生成し、生成したヘッダを多重化部13に出力する。
【0040】
多重化部13は、PCR書き換え部11−1〜11−IからPCRの値が書き換えられたTS1〜TSIを入力し、スロット割り当て部10から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、ヘッダ生成部12からヘッダを入力する。そして、多重化部13は、入力したヘッダ及びTS1〜TSIを、入力した各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいてフレームに多重化し、多重化したフレームを後述する受信装置2−1へ送信する。
【0041】
(具体例)
次に、図1に示した送信装置1−1における各部の具体的動作について具体例を挙げて説明する。送信装置1−1が入力するTSは3個(I=3)とし、各TSの速度はそれぞれTS1=1Mbps、TS2=2Mbps、TS3=9Mbpsであり、伝送路は13Mbpsの伝送帯域を持つものとする。また、フレームは、1個のヘッダスロット及び12個のデータスロットにより構成されるものとする。
【0042】
この具体例では、1スロットを用いたときのデータの伝送速度は、13Mbps/13スロット=1Mbpsとなる。また、全てのTSの速度の合計は12Mbpsであり、合計12スロットで全てのTSを伝送可能である。
【0043】
スロット割り当て部10は、TS1〜TS3の速度情報1〜3を入力し、速度情報1〜3に基づいて、TS1〜TS3に割り当てるフレーム内のスロット数を、それぞれ1スロット、2スロット、9スロットと決定する。これらのスロット割り当て数は、1フレームにて伝送されるデータスロット数12に対し、速度情報1〜3の速度の大きさに応じて決定される。また、スロット割り当て部10は、TS1〜TS3に割り当てるフレーム内のスロット位置を決定する。スロット位置は、どのように決定してもよい。
【0044】
図2は、スロット割り当て部10により決定されるスロット位置の例を示す図である。図2において、数字はTS番号(1〜3)を表す。図2に示すように、スロット割り当て部10は、ヘッダスロットの次のデータスロットである第1のデータスロットから第12のデータスロットに、それぞれTS1,TS2,TS2,TS3,・・・,TS3が格納されるように、スロット位置を決定する。
【0045】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部10から入力した各TSのスロット割り当て数及びスロット数に基づいて、ヘッダを生成する。
【0046】
図3は、ヘッダ生成部12により生成されるヘッダの例を示す図である。このヘッダは、パケット同期情報、フレーム同期情報、TS1〜TS15の識別情報であるTS_id及びoriginal_network_id、各スロットに格納されるTSの相対TS番号、及びその他の情報から構成される。パケット同期情報(0x47、ビット数8)は、TSパケット形式のデータの先頭を表し、パケット同期を確立するためのデータである。フレーム同期情報(0x1a86、ビット数16)は、フレーム同期を確立するためのデータ、すなわち、ヘッダを検出するためのデータである。
【0047】
スロット割り当て情報は、非特許文献1と同様に、多重するTS数を最大15とし、15個のTSの識別情報(TS_id及びoriginal_network_idと相対TS番号との対応表)及び、各スロットに格納されるTSの相対TS番号(4ビットで表される相対TS番号を各スロットについて記述した表)により構成される。このスロット割り当て情報により、各スロットに格納されるTSパケットが指定される。
【0048】
本具体例では、図3のヘッダに含まれるスロット割り当て情報に示すように、TS1のTS_idを0x0001、original_network_idを0x1001、TS2のTS_idを0x0002、original_network_idを0x1001、TS3のTS_idを0x0003、original_network_idを0x1002とする。また、伝送するTS数は3であるため、4〜15番目のTS_id及びoriginal_network_idの値は、非特許文献1と同様に「0xFFFF」とする。
【0049】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、前述のとおり、TS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置に基づき、受信装置2−1が挿入するヌルパケットの数及び位置を決定し、TSに含まれるPCRの値を書き換える。
【0050】
図4は、PCR書き換え部11(PCR書き換え部11−1,11−2等を総称してPCR書き換え部11という。)の処理を示すフローチャートである。以下、図4に示すフローチャートを参照して、PCR書き換え部11−1〜11−3の処理について詳細に説明する。
【0051】
まず、PCR書き換え部11−1〜11−3は、TS1〜TS3、当該TSのスロット割り当て数及びスロット位置をそれぞれ入力し(ステップS401)、予め設定された対応情報に従って、スロット割り当て数に対応するヌルパケット付加後のスロット数を決定する(ステップS402)。本具体例では、対応情報として、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応を規定するものとする。
【0052】
図5は、PCR書き換え部11−1〜11−3にて用いる、スロット割り当て数と、ヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図であり、対応情報を示している。PCR書き換え部11−1は、この対応情報を用いて、TS1のスロット割り当て数1に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数3を決定する。また、PCR書き換え部11−2は、この対応情報を用いて、TS2のスロット割り当て数2に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数3を決定する。また、PCR書き換え部11−3は、この対応情報を用いて、TS3のスロット割り当て数9に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数16を決定する。尚、図5に示した対応情報において、ヌルパケット付加後のスロット数は、スロット割り当て数以上の値であれば、どのように規定してもよい。
【0053】
また、図5に示した対応情報において、スロット割り当て数は、PCR書き換え部11−1〜11−3が入力したTSの速度に対応しており、ヌルパケット付加後のスロット数は、後述する受信装置2−1により出力されるTSの出力速度に対応している。つまり、この対応情報は、送信装置1におけるTSの入力速度と、受信装置2におけるTSの出力速度との対応を規定している。PCR書き換え部11−1〜11−3は、送信装置1が入力したTS1〜TS3の各TSについて、この対応情報に基づき、入力したTSの速度(スロット割り当て数)以上であって、かつ最小の速度(ヌルパケット付加後のスロット数)を、後述する受信装置2−1により出力される出力速度に決定する。
【0054】
次に、PCR書き換え部11−1〜11−3は、スロット割り当て部10から入力した各TSのスロット割り当て数及びスロット位置、並びに決定したヌルパケット付加後のスロット数に基づいて、元のTSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置を決定する(ステップS403、ステップS404)。尚、「元のTSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置」は、ヌルパケット付加後のTS速度に整合するように書き換えられるPCRの値に対応している。この場合、送信装置1−1は、実際にヌルパケットを付加することもなく、送信することもない。このヌルパケットは、後述する受信装置2−1において、要求されたTSを出力する際に、TSパケット間に挿入される。つまり、PCR書き換え部11−1〜11−3にて書き換えられるPCRの値は、受信装置2−1において出力されるTSに整合したものになる。
【0055】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、元のTSに対して付加されるヌルパケットの数を、「ヌルパケット付加後のスロット数−スロット割り当て数」(図5を参照)の演算によって決定する。また、PCR書き換え部11−1〜11−3は、元のTSに対して付加されるヌルパケットの位置を、予め設定された規則情報に従って決定する。この規則情報は、後述する受信装置2−1の分離部21が実際にヌルパケットをTSに挿入する際に用いる規則情報と同じとする。尚、ヌルパケットの位置は、送信装置1−1及び受信装置2−1において予め設定された同一の規則情報に従っていれば、どのように決定してもよい。
【0056】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、予め設定された規則情報に従って、例えば、TSパケット及び付加されるヌルパケットにより構成されるパケット列を想定し、そのパケット列の1パケット目から順に、TSパケット及び付加されるヌルパケットのそれぞれに対し、「(1パケット目からその時点までに)パケット列に割り振られたパケット数」/「当該TSに割り当てられた1フレーム中のスロット数(または、付加されるヌルパケットの数)」による割り算の計算を行い、計算結果の値の小さい方、または値が同じ場合は、TSパケットを選択することによって、パケット列内のTSパケット及び付加されるヌルパケットの並び順を決定する。例えば、パケット列の(x−1)パケット目までが割り当て済みで、TSパケットがa個、付加されるヌルパケットがb個割り振られているとする(つまりa+b=x−1である)。ここで、xパケット目にTSパケット、付加されるヌルパケットのどちらを割り振るかは、当該TSのスロット割り当て数をA、付加されるヌルパケットの数をBとすると、それぞれa/A,b/Bを計算することによって行う。a/A≦b/BであればTSパケットを、それ以外ならばヌルパケットが割り振られる。
【0057】
例えばTS2の場合、スロット割り当て数2に対し、ヌルパケット付加後のスロット数は3であるから(図5を参照)、付加されるヌルパケット数は3−2=1となる。また、付加されるヌルパケットの位置は、ヌルパケット付加後のパケット列の1パケット目から順に、前述の計算により決定される。
【0058】
図6は、TS2のスロット割り当て数2及び付加されるヌルパケット数1の場合に、TSパケット及び付加されるヌルパケットの並び順の計算例を説明する図である。図6において、パケット列に割り振られるべきTSパケットの数Aは2であり、パケット列に割り振られるべきヌルパケットの数Bは1である。1パケット目について、パケット列に振り分けられたTSパケットの数aが0であるから、a/Aは0となる。一方、パケット列に振り分けられたヌルパケットの数bは0であるから、b/Bは0となる。したがって、a/A≦b/Bであるから、1パケット目にはTSパケットが割り振られる。また、2パケット目について、パケット列に振り分けられたTSパケットの数aが1であるから、a/Aは0.5となる。一方、パケット列に振り分けられたヌルパケットの数bは0であるから、b/Bは0となる。したがって、a/A≦b/Bでないから、2パケット目にはヌルパケットが割り振られる。また、3パケット目について、パケット列に振り分けられたTSパケットの数aが1であるから、a/Aは0.5となる。一方、パケット列に振り分けられたヌルパケットの数bは1であるから、b/Bは1となる。したがって、a/A≦b/Bであるから、3パケット目にはTSパケットが割り振られる。
【0059】
したがって、PCR書き換え部11−2は、予め設定された規則情報に従って図6に示した計算を行い、例えばTS2の場合、元のTS2である2個のTSパケットに対して付加されるヌルパケットの位置を、2個のTSパケットの間に決定する。
【0060】
前述の規則情報には、TSパケットがパケット列内で等間隔になるように、かつ、ヌルパケットがパケット列内で等間隔になるようにするための割り振り規則が定義されている。この規則情報を用いることにより、後述する受信装置2−1は、パケット列内でTSパケットを等間隔に配置し、かつ、パケット列内でヌルパケットを等間隔に配置したTSを出力する。
【0061】
これにより、TSパケット及びヌルパケットはTS内にバースト的に存在しないから、後述する受信装置2−1の後段に設けられたデコーダがTSパケットをバッファに格納する際に、バッファアンダーフロー及びバッファオーバーフローが生じることがない。
【0062】
図4に戻って、PCR書き換え部11−1〜11−3は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態(前述のように、送信装置1−1はヌルパケットを挿入しないが、ヌルパケット付加後のパケット列に整合するようにPCRの値を書き換える必要があるため、ヌルパケット付加後のパケット列の状態を想定する。ヌルパケットは後述する受信装置2−1により挿入される。)において、PCRの値が整合するように、TS内のPCRの値を書き換える(ステップS405)。具体的には、PCR書き換え部11−1〜11−3は、例えば特許文献5に記載されているように、PCRが書き込まれたパケットが、ヌルパケット付加後のパケット列において何パケット目に位置するかを取得し、ヌルパケット付加前の状態(元の状態)と、ヌルパケット付加後の状態との間の時間差を計算し、この時間差を元のPCRの値に加算して新たなPCRの値を求め、元のPCRの値を新たなPCRの値に書き換える。
【0063】
図7は、ヌルパケット付加後のパケット列及び元のTSパケット列についての相対的な時間間隔を説明する図であり、前述のTS2の例を示している。元のTSパケット列が、TSパケットα及びTSパケットβであり、ヌルパケット付加後のパケット列が、TSパケットα、ヌルパケット及びTSパケットβであり、PCRがTSパケットβに書き込まれているとする。この場合、PCR書き換え部11−2は、PCRが書き込まれたパケットβが、ヌルパケット付加後のパケット列において3パケット目に位置することを取得し、ヌルパケット付加前の状態(元のTSパケット列、図7の下段を参照)と、ヌルパケット付加後の状態(ヌルパケット付加後のパケット列、図7の上段を参照)との間の時間差Δを計算し、この時間差Δを元のPCRの値に加算して新たなPCRの値を求め、元のPCRの値を新たなPCRの値に書き換える。
【0064】
図4に戻って、PCR書き換え部11−1〜11−3は、PCRの値を書き換えたTS1〜TS3を多重化部13にそれぞれ出力する(ステップS406)。尚、前述のとおり、PCRの値を書き換えたTS2には、ヌルパケットは含まれない。ヌルパケットは、後述の受信装置2−1が当該TSを要求されたときに、TSパケット間に挿入される。
【0065】
多重化部13は、ヘッダと、PCRが書き換えられたTS1〜TS3とを、図2に示すように所定のスロット位置に多重化し、送信する。
【0066】
以上のように、実施例1の送信装置1−1によれば、PCR書き換え部11−1〜11−Iが、スロット割り当て部10により決定された各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、予め設定された対応情報に従ってヌルパケット付加後のスロット数を決定し、ヌルパケット付加後のスロット数からスロット割り当て数を減算してヌルパケット数を決定し、予め設定された規則情報に従ってヌルパケットの位置を決定し、ヌルパケット付加後のパケット列を想定してPCRの値を書き換えるようにした。ここで、ヌルパケットは、送信装置1−1にて挿入されず、受信装置2−1において挿入される。そして、多重化部13は、PCRの値が書き換えられたTSをフレームに多重化し、多重化したフレームを送信するようにした。
【0067】
これにより、送信装置1−1から送信されたフレームを受信する受信装置2−1は、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSを、送信装置1−1においてPCRの値の書き換えの際に決定された同じ数のヌルパケットを同じ位置に挿入して出力することで、フレーム内で、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する場合に比べ、TSの速度を低く抑えることができる。また、受信装置2−1がTSにヌルパケットを挿入して出力する際に、そのTSの速度は当該TSに書き込まれたPCRに整合しているから、TSの出力速度を変換する必要がない。したがって、変換のためのクロックを再生する必要がないから、クロック再生回路の規模を小さくすることができる。
【0068】
〔受信装置〕
次に、実施例1の受信装置について説明する。図8は、実施例1の受信装置の構成を示すブロック図である。この受信装置2−1は、ヘッダ検出部20、分離部21及びクロック再生部22を備えている。
【0069】
受信装置2−1は、送信装置1−1により送信されたフレームを受信する。このフレームは、ヘッダ検出部20、分離部21及びクロック再生部22に入力される。
【0070】
ヘッダ検出部20は、フレームを入力し、フレーム内のヘッダからフレーム同期情報(0x1a86)のパターンを取得することによりヘッダを検出し、フレーム同期を確立する。具体的には、ヘッダ検出部20は、フレーム同期情報のパターンを3回連続して正しいタイミングで受信したことを判定することにより、フレームの先頭位置を決定する。これにより、フレーム同期が確立する。そして、ヘッダ検出部20は、フレームからヘッダを取得し、ヘッダから各TSの識別情報及び各スロットに格納されるTSのTS相対番号を取得し、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置の情報を生成して分離部21に出力する。
【0071】
分離部21は、フレームを入力し、ヘッダ検出部20から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、クロック再生部22からTS出力クロックを入力する。そして、分離部21は、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、フレームから、ユーザーによって要求されたTSを分離し、送信装置1−1のPCR書き換え部11と同様の処理によりヌルパケットを付加し、TS出力クロックに同期させたTSを出力する。また、分離部21は、TSのスロット割り当て数に基づいて、当該TSを出力する速度を決定し、出力速度情報としてクロック再生部22に出力する。
【0072】
つまり、分離部21は、分離したTSについて、前述した対応情報に基づき、そのTSの速度以上であって、かつ最小の速度を出力速度に決定し、この出力速度にてTSを出力する。
【0073】
クロック再生部22は、フレームを入力すると共に、分離部21からTSの出力速度情報を入力し、入力したフレームの伝送速度に同期したクロックを再生し、再生したクロックを分周及び逓倍することにより、出力速度情報によって規定するクロックを生成し、TS出力クロックとして分離部21に出力する。
【0074】
(具体例)
次に、図8に示した受信装置2−1における各部の具体的動作について具体例を挙げて説明する。受信装置2−1が受信するフレームは、送信装置1−1により送信されたフレームとし、ユーザーによってTS_id=0x0002、original_network_id=0x1001であるTS(TS2)が要求されているものとする。
【0075】
図9は、分離部21の処理を示すフローチャートである。まず、分離部21は、フレーム、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置、並びにTS出力クロックを入力し(ステップS901)、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置から、要求されたTS2の識別番号に基づいて、要求されたTS2のスロット割り当て数及びスロット位置を取得する(ステップS902)。具体的には、分離部21は、ヘッダ内のTSの識別情報(TS_id及びoriginal_network_idと相対TS番号の対応表)を参照し、要求されたTS2の識別番号と一致するTS_id=0x0002、original_network_id=0x1001の相対TS番号(=0x2)を特定し、入力した各TSのスロット割り当て数及びスロット位置のうちの、TS2のスロット割り当て数及びスロット位置を取得する。
【0076】
次に、分離部21は、取得したスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、フレームから、要求されたTS2を分離する(ステップS903)。
【0077】
次に、分離部21は、フレームから分離したTS2を出力する際に、そのTS2に付加するヌルパケットの数及び位置を、予め設定された対応情報及び規則情報(送信装置1−1にて用いた対応情報及び規則情報と同じ情報)に従って決定する。尚、分離部21は、送信装置1−1のPCR書き換え部11と同様の処理により、TS2に付加するヌルパケットの数及び位置を決定する。
【0078】
具体的には、分離部21は、予め設定された対応情報に従って、分離したTS2のスロット割り当て数に対応するヌルパケット付加後のスロット数を決定する(ステップS904)。これは、図4に示したステップS402に対応する。
【0079】
分離部21は、スロット割り当て数及びスロット位置、並びに決定したヌルパケット付加後のスロット数に基づいて、分離したTS2に対して付加するヌルパケットの数及び位置を決定する(ステップS905、ステップS906)。これは、図4に示したステップS403及びステップS404に対応する。すなわち、分離部21は、TS2に対して付加するヌルパケットの数を、「ヌルパケット付加後のスロット数−スロット割り当て数」(図5を参照)の演算によって決定する。また、分離部21は、TS2に対して付加するヌルパケットの位置を、予め設定された規則情報(図6を参照)に従って決定する。
【0080】
次に、分離部21は、フレームから分離したTS2に、決定した数のヌルパケットを、決定した位置に挿入し、ヌルパケット付加後のTS2をTS出力クロックに同期させて出力する(ステップS907)。具体的には、分離部21は、フレーム内の2個のTSパケットの間に1個のヌルパケットを挿入し、3MbpsのTS2として出力する。
【0081】
また、分離部21は、要求されたTS2について、ヌルパケット付加後のスロット数を出力速度情報としてクロック再生部22に出力する(ステップS908)。TS2の場合、出力速度情報は3となる。
【0082】
クロック再生部22は、フレームの伝送速度に同期したクロックを再生する。本具体例では、伝送路の伝送帯域は13Mbpsであるから、クロック再生部22は、13MHzのクロックを再生する。そして、クロック再生部22は、入力した出力速度情報に基づいて、再生したクロックからTS出力クロックを生成し、分離部21に出力する。TS2の場合、入力した出力速度情報は3であるから、クロック再生部22は、再生した13MHzのクロックを3/13倍して3MHzのクロックを生成し、これをTS出力クロックとして出力する。
【0083】
以上のように、実施例1の受信装置2−1によれば、分離部21が、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置から、ユーザーによって要求されたTSのスロット割り当て数及びスロット位置を取得し、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSについて、予め設定された対応情報に従ってヌルパケット付加後のスロット数を決定し、ヌルパケット付加後のスロット数からスロット割り当て数を減算してヌルパケット数を決定し、予め設定された規則情報に従ってヌルパケットの位置を決定し、分離したTSにヌルパケットを挿入し、TS出力クロックに同期させて出力するようにした。また、クロック再生部22が、分離部21により出力されるヌルパケット付加後のTSの出力速度情報に基づいて、フレームの伝送速度に同期したクロックからTS出力クロックを生成するようにした。
【0084】
すなわち、実施例1では、受信装置2−1が出力するTSの速度(ヌルパケット付加後のスロット数)を、送信装置1−1が入力する元の速度に応じて、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応情報に従って予め設定しておく。そして、送信装置1−1は、予め設定された速度でTSを出力したときに整合するように、PCRの値を予め書き換えておく。送信装置1−1により書き換えられるPCRの値は、受信装置2−1において挿入されるヌルパケットの数に対応したものである。つまり、受信装置2−1により出力されるヌルパケット付加後のTSには、送信装置1−1により書き換えられたPCRが含まれており、出力されるTSの速度は、そのTSに含まれるPCRの値に整合している。
【0085】
また、前述の特許文献5の技術では、受信装置が、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する。これに対し、実施例1の受信装置2−1では、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSに対し、送信装置1−1により書き換えられたPCRの値に応じたヌルパケットのみを挿入するから、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換える場合と比べて、出力するTSの速度を低く抑えることができる。したがって、特許文献5の受信装置に比べて、受信装置2−1及び受信装置2−1の後段に設けられるデコーダの回路全体として消費電力を小さくすることができる。
【0086】
また、実施例1の受信装置2−1は、出力するTSの速度を元のTSの速度に戻す必要がないから、元のTSの速度を再生する場合に比べて、再生するクロックの種類を少なくでき、クロック再生部22の処理が簡便になる。
【0087】
また、前述の特許文献6の技術では、1フレームのスロット数の因数が少ない場合には、受信装置から出力されるTSの速度が高くなってしまう場合がある。これに対し、実施例1の受信装置2−1では、1フレームのスロット数とは無関係に、出力するTSの速度を低くすることができ、受信装置2−1及びデコーダの回路全体として消費電力を小さくすることができる。
【0088】
したがって、実施例1によれば、受信装置2−1が、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSを、送信装置1−1においてPCRの値の書き換えの際に決定された同じ数のヌルパケットを同じ位置に挿入して出力する。これにより、TSの速度を低く抑えることができる。したがって、デコーダは、受信装置2−1から低速のTSを入力してデコードすればよいから、処理負荷を低減することができる。また、受信装置2−1は、出力するTSの速度を元のTSの速度に戻す必要がないから、元のTSの速度を再生する場合に比べて、再生するクロックの種類を少なくでき、クロック再生部22の処理が簡便になる。
【0089】
(変形例1)
前記実施例1では、送信装置1−1のPCR書き換え部11は、予め設定された規則情報(図6)に従って、TSに対して付加されるヌルパケットの位置を決定する。すなわち、PCR書き換え部11は、TSに対して付加されるヌルパケットの位置を、パケット列の1パケット目から順に、TSパケット及び付加されるヌルパケットのそれぞれに対し、「(1パケット目からその時点までに)パケット列に割り振られたパケット数」/「当該TSに割り当てられた1フレーム中のスロット数(または付加されるヌルパケットの数)」を計算し、この値の小さい方、または値が同じ場合は、TSパケットを選択することによって決定する。これに対し、変形例1では、他の規則情報に従って、TSに対して付加されるヌルパケットの位置を決定する。
【0090】
具体的には、送信装置1−1のPCR書き換え部11は、TSを入力すると共に、スロット割り当て部10から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、予め設定されたフレーム内のパケット数分のパケットについて、このパケット数から当該TSのスロット割り当て数を差し引いた数のパケットをヌルパケットに置き換える。これにより、スロット割り当て数分のTSパケット、及びフレーム内のスロット数からスロット割り当て数を差し引いた数のヌルパケットからなるパケット列、すなわち、図2に示したTS1〜TS3を含む1フレームにおいて、特定のTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列が生成される。
【0091】
そして、PCR書き換え部11は、図5に示した対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。そして、PCR書き換え部11は、ヌルパケット付加後のスロット数と1フレームのスロット数が等しくない場合には、(a)生成したパケット列に含まれるヌルパケットから、削除されるヌルパケットの数及び位置を決定する。または、(b)生成したパケット列に追加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。このようにして、PCR書き換え部11は、生成したパケット列(1フレーム内で特定のTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列)から、削除または追加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。すなわち、PCR書き換え部11は、TSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。
【0092】
そして、PCR書き換え部11は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態において、PCRの値が整合するように、TS内のPCRの値を書き換える。
【0093】
以下、(a)(b)の場合について説明する。まず、(a)生成したパケット列に含まれるヌルパケットから、削除されるヌルパケットの数及び位置を決定する場合について説明する。この場合、受信装置2−1により出力されるTSの速度は、伝送路の伝送帯域未満の速度となる。これは、ヌルパケット付加後のスロット数が、1フレームのスロット数未満となるからである。PCR書き換え部11は、削除されるヌルパケットの位置を、フレーム内の特定のTSのパケットを除いたパケット列において、floor{k×(1フレームのスロット数−TSのスロット割り当て数)/(削除されるヌルパケット数)}関数にて計算する。kは1から「削除されるヌルパケット数」まで1ずつ増加する整数である。また、床関数のfloor{c}は、c以下の最大の整数を表す。
【0094】
具体例で説明する。例えばTS2の場合、スロット割り当て数は2、ヌルパケット付加後のスロット数は3であるから、フレーム内のTS2以外のパケットをヌルパケットとしたときの、ヌルパケットの数は13−2=11、その中から削除されるヌルパケットの数は13−3=10となる。したがって、PCR書き換え部11−2は、まず、11個のヌルパケットのみのパケット列を生成し、その中から、削除される10個のヌルパケットの位置を、前記床関数floorを用いて決定する。
【0095】
図10は、1フレームからTS2のパケットを除いた場合の、ヌルパケットからなるパケット列を示す図であり、図11は、削除されるヌルパケットの位置の計算例を説明する図である。PCR書き換え部11−2は、図10に示す11個のヌルパケットのみのパケット列を生成し、その中から、図11に示すように、削除される10個のヌルパケットの位置(1〜9,11)を決定する。図11において、削除されるヌルパケットの位置は、kを1から1ずつ増加させたfloor関数によって計算される。
【0096】
図12は、1フレームからTS2のパケットを除いた場合の、ヌルパケットからなるパケット列において、削除されるヌルパケットの位置を示す図であり、図13は、TS2以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列において、削除されるヌルパケットの位置を示す図である。PCR書き換え部11−2は、図11に示した計算によって、図12に示すように、削除されるヌルパケットの位置を1〜9及び11番目の位置に決定する。このようにして、PCR書き換え部11−2は、図13に示すように、生成したパケット列(TS2以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列)において、削除されるヌルパケットの数及び位置を、黒塗り箇所のNに示す数及び位置に決定する。図12及び図13において、削除されるヌルパケットの箇所を黒塗りにて表している。
【0097】
そして、PCR書き換え部11−2は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態において、PCRの値が整合するように、TS2内のPCRの値を書き換える。
【0098】
図14は、TS2において、ヌルパケット削除後のパケット列及び元のTSパケット列についての相対的な時間間隔を説明する図である。元のTSパケット列が、TSパケットα及びTSパケットβであり、ヌルパケット削除後のパケット列が、TSパケットα、TSパケットβ及びヌルパケットであり、PCRがTSパケットβに書き込まれているとする。この場合、PCR書き換え部11−2は、PCRが書き込まれたパケットβが、ヌルパケット削除後のパケット列において2パケット目に位置することを取得し、ヌルパケット削除前の状態(元のTSパケット列、図14の下段を参照)と、ヌルパケット削除後の状態(ヌルパケット削除後のパケット列、図14の上段を参照)との間の時間差Δを計算し、この時間差Δを元のPCRの値から減算して新たなPCRの値を求め、元のPCRの値を新たなPCRの値に書き換える。
【0099】
次に、(b)生成したパケット列に追加されるヌルパケットの数及び位置を決定する場合について説明する。この場合、受信装置2−1により出力されるTSの速度は、伝送路の伝送帯域より大きくなる。これは、ヌルパケット付加後のスロット数が、1フレームのスロット数より大きくなるからである。また、受信装置2−1は、PCRを書き換える対象となるTS以外が割り当てられたスロットをヌルパケットに置き換え、これにより生成されたパケット列に対し、さらにヌルパケットを追加して出力することになる。そこで、PCR書き換え部11は、追加されるヌルパケットの位置を、「フレーム内のパケット」及び「追加されるヌルパケット」のそれぞれに対し、「(その時点までに)パケット列に割り振られたパケット数」/「パケット列に割り振られるべきパケット数」を計算し、この値の小さい方、または値が同じ場合は、「フレーム内のパケット」を選択することによって決定する。
【0100】
具体例で説明する。例えばTS3の場合、スロット割り当て数は9である。また、ヌルパケット付加後のスロット数は16であり、1フレームのスロット数(13)より大きい。したがって、PCR書き換え部11−3は、フレーム内のTS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えて生成したパケット列に対し、新たに追加する3個のヌルパケットの位置を以下のように決定する。
【0101】
図15は、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列を示す図である。PCR書き換え部11−3は、図15に示すように、図2に示したTS1〜TS3を含む1フレームにおいて、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列を生成する。
【0102】
PCR書き換え部11−3は、このパケット列に対して、3個のヌルパケットを追加した16個のパケットからなるパケット列を想定し、予め設定された規則情報に従って、想定したパケット列の1パケット目から16パケット目までのそれぞれについて、図6と同様の処理を行い、パケット列内のTSパケット及び追加されるヌルパケットの並び順を決定する。
【0103】
図16は、フレーム内のパケット及び追加されるヌルパケットの並び順の計算例を説明する図であり、図17は、TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列に、ヌルパケットを追加した例を示す図である。PCR書き換え部11−3は、予め設定された規則情報に従って図16に示した計算を行い、追加される3個のヌルパケットの位置を、2パケット目、7パケット目及び12パケット目に決定する。このようにして、PCR書き換え部11−3は、図17に示すように、生成したパケット列(TS3以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列)において、追加されるヌルパケットの数及び位置を、黒塗りの箇所のNに示す数及び位置に決定する。図17において、追加されるヌルパケットの箇所を黒塗りで表している。
【0104】
そして、PCR書き換え部11−3は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態において、PCRの値が整合するように、TS3内のPCRの値を書き換える。
【0105】
これに対し、受信装置2−1の分離部21は、送信装置1−1のPCR書き換え部11と同じ処理を行って、付加するヌルパケットの数及び位置を決定する。すなわち、分離部21は、フレーム内において、ユーザーにより要求されたTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えたパケット列を生成し、図5に示した対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定し、TSに付加されるヌルパケットの数を決定する。そして、分離部21は、ヌルパケット付加後のスロット数と1フレームのスロット数が等しくない場合には、(a)生成したパケット列に含まれるヌルパケットから、削除するヌルパケットの数及び位置を決定する。または、(b)生成したパケット列に追加するヌルパケットの数及び位置を決定する。そして、分離部21は、ヌルパケットを削除または追加することにより、送信装置1−1において想定したヌルパケット付加後のTSを生成し、出力する。
【0106】
以上のように、実施例1の変形例1によれば、前述の実施例1と同様の効果を奏する。また、受信装置2−1により出力されるTSの速度がフレームの伝送速度に等しくなる場合(すなわち、ヌルパケット付加後のスロット数が、1フレームのスロット数と等しくなる場合であり、具体例では示していないが、ヌルパケット付加後のスロット数を13と規定した場合)、特許文献5に記載された技術と同様に、受信装置2−1の分離部21は、フレーム内のパケットのうち、要求されたTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えるだけでTSを出力することができる。これにより、処理が簡便になる。
【0107】
(変形例2)
前記実施例1では、送信装置1−1のPCR書き換え部11は、予め設定された対応情報(図5)に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。これに対し、変形例2では、他の対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。変形例2における他の対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数は、所定の正の整数及び前記所定の正の整数の因数とする。
【0108】
図18は、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。図18に示すように、対応情報は、例えば、ヌルパケット付加後のスロット数が、16及びその因数となるように規定する。
【0109】
以上のように、実施例1の変形例2によれば、前述の実施例1と同様の効果を奏する。また、受信装置2−1のクロック再生部22にて必要となるクロックは、ある周波数とその因数、すなわち整数分の1に分周した周波数のみとなる。したがって、ある周波数を再生すれば、分周だけで必要な全てのクロックを再生することが可能となり、クロック再生部22の回路規模を著しく小さくすることができる。例えば、図18に示した対応情報に従う場合、クロック再生部22は、13Mbpsの速度から再生した13MHzのクロックを、16/13倍して16MHzのクロックを生成すればよい。これにより、クロック再生部22は、これを整数分の1(1/2,1/4,1/8,1/16)に分周する簡便な回路のみで、全てのTS出力クロックを生成することが可能となり、クロック再生部22の規模を一層小さくすることができる。
【実施例2】
【0110】
次に、実施例2について説明する。実施例2は、複数のTSを複数のチャネルで伝送するシステムの例である。以下、送信装置及び受信装置に分けて説明する。
【0111】
〔送信装置〕
まず、実施例2の送信装置について説明する。実施例1の送信装置1−1と実施例2の送信装置とを比較すると、実施例1の送信装置1−1では、フレームを伝送するチャネルが1個であるのに対し、実施例2の送信装置では、チャネルがJ個(Jは2以上の整数)である点で相違する。
【0112】
図19は、実施例2の送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置1−2は、スロット割り当て部10、PCR書き換え部11−1〜11−I、ヘッダ生成部12及び多重化部13を備えている。
【0113】
送信装置1−2は、送信すべきI個のTS1〜TSIを入力し、入力した各TSの速度を示す速度情報1〜Iを取得する。尚、送信装置1−2により入力されるI個のTS1〜TSIは、後述するスロット割り当て部10において各TSがJ個のフレームの各データスロットに割り当てられるように、予め速度変換されており、PCRの値も書き換えられているものとする。
【0114】
スロット割り当て部10は、速度情報1〜Iを入力し、各TSに割り当てる、J個のフレーム内における各TSのスロットの数及びスロット位置を決定し、これらの情報をPCR書き換え部11−1〜11−I、ヘッダ生成部12及び多重化部13に出力する。
【0115】
PCR書き換え部11−1〜11−Iは、TS1〜TSIを入力すると共に、スロット割り当て部10からJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、TS1〜TSIに対し、J個のフレーム内におけるスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、後述する受信装置2−2が合成するTSに対して挿入するヌルパケットの数及び位置を決定する。実施例1と同様に、ヌルパケットは、受信装置2−2が要求されたTSをJ個のフレームから分離して合成し、出力する際に挿入される。そして、PCR書き換え部11−1〜11−Iは、受信装置2−2が挿入するヌルパケットの数及び位置に基づいて、各TSに書き込まれたPCRの値を書き換え、PCRの値を書き換えたTS1〜TSIを多重化部13に出力する。
【0116】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部10からJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、TSの識別情報(TS_id(TS識別子)及びoriginal_network_id(オリジナルネットワーク識別子)と相対TS番号との対応表)及び各スロットに格納されるTSの相対TS番号からなるスロット割り当て情報を含むJ個のヘッダを生成し、生成したJ個のヘッダを多重化部13に出力する。
【0117】
多重化部13は、PCR書き換え部11−1〜11−IからPCRの値が書き換えられたTS1〜TSIを入力し、スロット割り当て部10からJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、ヘッダ生成部12からJ個のヘッダを入力する。そして、多重化部13は、入力したTS1〜TSIを、予め設定された分割規則情報に従って分割し、入力したJ個のヘッダ及び分割したTS1〜TSIを、入力したJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、J個のフレームに多重化し、多重化したJ個のフレームを後述する受信装置2−2へ送信する。
【0118】
(具体例)
次に、図19に示した送信装置1−2における各部の具体的動作について具体例を挙げて説明する。送信装置1−2が入力するTSは3個(I=3)とし、各TSの速度はそれぞれTS1=58Mbps、TS2=23Mbps、TS3=3Mbpsであり、1チャネルは13Mbpsの伝送帯域を持つものとする。また、チャネル数は7(J=7)とし、フレームは、1個のヘッダスロット及び12個のデータスロットにより構成されるものとする。
【0119】
この具体例では、1スロットを用いたときのデータの伝送速度は、13Mbps/13スロット=1Mbpsとなり、7チャネル全てを用いたときのデータの伝送速度は、13Mbps×7=91Mbpsである。また、全てのTSの速度の合計は84Mbpsであり、合計84スロットで全てのTSを伝送可能である。
【0120】
スロット割り当て部10は、TS1〜TS3の速度情報1〜3を入力し、速度情報1〜3に基づいて、TS1〜TS3に割り当てる、チャネル1〜7それぞれのスロット数を決定する。本具体例では、TS1に対し、チャネル1〜4の12スロット及びチャネル5の10スロット、すなわち合計で58スロットを決定する。また、TS2に対し、チャネル5の2スロット、チャネル6の12スロット及びチャネル7の9スロット、すなわち合計で23スロットを決定する。また、TS3に対し、チャネル7の3スロットを決定する。
【0121】
また、スロット割り当て部10は、TS1〜TS3に割り当てる7個のフレーム内のスロット位置を決定する。スロット位置は、決定したスロット数を満たしていれば、どのように決定してもよい。
【0122】
図20は、スロット割り当て部10により決定されるスロット位置の例を示す図である。図20において、数字はTS番号(1〜3)を表す。図20に示すように、スロット割り当て部10は、TS1〜TS3に割り当てる、チャネル1〜7それぞれのスロット位置を決定する。
【0123】
ヘッダ生成部12は、スロット割り当て部10から入力した、7個のフレーム内についての各TSのスロット割り当て数及びスロット数(図20を参照)に基づいて、ヘッダ1〜7を生成する。
【0124】
図21は、ヘッダ生成部12により生成されるヘッダ1〜7の例を示す図である。このヘッダ1〜7は、図3に示したヘッダと同様に、パケット同期情報、フレーム同期情報、TS1〜TS15の識別情報であるTS_id及びoriginal_network_id、各スロットに格納されるTSの相対TS番号、及びその他の情報から構成される。各情報についての説明は省略する。
【0125】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、前述のとおり、J個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置に基づき、受信装置2−2が挿入するヌルパケットの数及び位置を決定し、TSのPCRを書き換える。以下、PCR書き換え部11−1〜11−3の処理について詳細に説明する。基本的には、図4に示した処理と同様である。
【0126】
まず、PCR書き換え部11−1〜11−3は、TS1〜TS3、J個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置をそれぞれ入力し、予め設定された対応情報に従って、スロット割り当て数の合計に対応するヌルパケット付加後のスロット数を決定する。
【0127】
図22は、PCR書き換え部11−1〜11−3にて用いる、スロット割り当て数の合計と、ヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。PCR書き換え部11−1は、この対応情報を用いて、TS1のスロット割り当て数の合計58に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数60を決定する。また、PCR書き換え部11−2は、この対応情報を用いて、TS2のスロット割り当て数の合計23に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数40を決定する。また、PCR書き換え部11−3は、この対応情報を用いて、TS3のスロット割り当て数の合計3に対応する、ヌルパケット付加後のスロット数20を決定する。尚、図22に示した対応情報において、ヌルパケット付加後のスロット数は、スロット割り当て数の合計より大きい値であれば、どのように規定してもよい。
【0128】
次に、PCR書き換え部11−1〜11−3は、スロット割り当て部10から入力したJ個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置、並びに決定したヌルパケット付加後のスロット数に基づいて、元のTSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。尚、「元のTSに対して付加されるヌルパケットの数及び位置」は、ヌルパケット付加後のTS速度に整合するように書き換えられるPCRの値に対応している。この場合、送信装置1−2は、実際にヌルパケットを付加することもなく、送信することもない。このヌルパケットは、後述する受信装置2−2において、要求されたTSを出力する際に、TSパケット間に挿入される。つまり、PCR書き換え部11−1〜11−3にて書き換えられるPCRの値は、受信装置2−2において出力されるTSに整合したものになる。
【0129】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、元のTSに対して付加されるヌルパケットの数を、「ヌルパケット付加後のスロット数−スロット割り当て数の合計」(図22を参照)の演算によって決定する。また、PCR書き換え部11−1〜11−3は、元のTSに対して付加されるヌルパケットの位置を、予め設定された規則情報に従って決定する。この規則情報は、後述する受信装置2−2の分離部21が実際にヌルパケットをTSに挿入する際に用いる規則情報と同じとする。尚、ヌルパケットの位置は、送信装置2−2及び受信装置2−2において予め設定された同一の規則情報に従っていれば、どのように決定してもよい。
【0130】
PCR書き換え部11−1〜11−3は、例えば実施例1と同様に、TSパケット及び付加されるヌルパケットにより構成されるパケット列を想定し、そのパケット列の1パケット目から順に、TSパケット及び付加されるヌルパケットのそれぞれに対し、「(1パケット目からその時点までに)パケット列に割り振られたパケット数」/「当該TSに割り当てられた1フレーム中のスロット数(または、付加されるヌルパケットの数)」による割り算の計算を行い、計算結果の値の小さい方、または値が同じ場合は、TSパケットを選択することによって、パケット列内のTSパケット及び付加されるヌルパケットの並び順を決定する。処理の詳細は実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0131】
次に、PCR書き換え部11−1〜11−3は、ヌルパケット付加後のパケット列の状態において、PCRの値が整合するように、TS内のPCRの値を書き換える。処理の詳細は実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0132】
多重化部13は、PCRの値が書き換えられたTS1〜TS3を、予め設定された分割規則情報に従って、伝送するチャネル数7と同数のデータ列に分割する。分割規則情報はどのような規則でもよい。
【0133】
図23は、多重化部13によるTS分割処理(TS1に対する処理)を説明する図であり、図24は、多重化部13によるTS分割処理(TS2に対する処理)を説明する図である。本実施例では、多重化部13は、入力したTSに対し、割り当てられたスロット位置に従い、チャネル番号及びスロット番号の若い順に、1パケットずつ振り分けるという規則により、TSを分割する。図23及び図24において、数字はTSパケットの順番を表している。
【0134】
そして、多重化部13は、分割したTS及びJ個のヘッダを、入力したJ個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて多重化し、図20に示す7個のフレームを送信する。
【0135】
以上のように、実施例2の送信装置1−2によれば、PCR書き換え部11−1〜11−Iが、スロット割り当て部10により決定されたJ個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、予め設定された対応情報に従ってヌルパケット付加後のスロット数を決定し、ヌルパケット付加後のスロット数からスロット割り当て数の合計を減算してヌルパケット数を決定し、予め設定された規則情報に従ってヌルパケットの位置を決定し、ヌルパケット付加後のパケット列を想定してPCRの値を書き換えるようにした。ここで、ヌルパケットは、送信装置1−2にて挿入されず、受信装置2−2において挿入される。そして、多重化部13は、PCRの値が書き換えられたTSをJ個のフレームに多重化し、多重化したJ個のフレームを送信するようにした。
【0136】
これにより、送信装置1−2から送信されたJ個のフレームを受信する受信装置2−2は、要求されたTSをフレームから分離し、分離したTSを合成し、送信装置1−2においてPCRの値の書き換えの際に決定された同じ数のヌルパケットを同じ位置に挿入して出力することで、J個のフレーム内において、要求されたTS以外のTSパケットをヌルパケットに置き換えて出力する場合に比べ、TSの速度を低く抑えることができる。また、受信装置2−2は、出力するTSの速度を元のTSの速度に戻す必要がないから、元のTSの速度を再生する場合に比べて、再生するクロックの種類を少なくでき、クロック再生部22の処理が簡便になる。
【0137】
〔受信装置〕
次に、実施例2の受信装置について説明する。実施例1の受信装置2−1と実施例2の受信装置とを比較すると、実施例1の受信装置2−1は、1個のヘッダ検出部20を備えているのに対し、実施例2の受信装置は、フレームの数に相当するJ個のヘッダ検出部20を備えている点で相違する。
【0138】
図25は、実施例2の受信装置の構成を示すブロック図である。この受信装置2−2は、ヘッダ検出部20−1〜20−J、分離部21及びクロック再生部22を備えている。
【0139】
受信装置2−2は、送信装置1−2により送信されたJ個のフレームを受信する。J個のフレームのうちの個々のフレーム1〜Jは、ヘッダ検出部20−1〜20−Jにそれぞれ入力される。また、J個のフレームは、分離部21及びクロック再生部22に入力される。
【0140】
ヘッダ検出部20−1〜20−Jは、フレーム1〜Jをそれぞれ入力し、フレーム1〜J内のヘッダからフレーム同期情報(0x1a86)のパターンを取得することによりヘッダをそれぞれ検出し、フレーム同期を確立する。フレーム同期を確立する処理は、実施例1と同様である。そして、ヘッダ検出部20−1〜20−Jは、フレーム1〜Jからヘッダをそれぞれ取得し、ヘッダから各TSの識別情報及び各スロットに格納されるTSの相対TS番号を取得し、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置の情報を生成して分離部21に出力する。
【0141】
分離部21は、J個のフレームを入力し、ヘッダ検出部20−1〜20−Jから、J個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、クロック再生部22からTS出力クロックを入力する。そして、分離部21は、各TSのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、J個のフレームから、ユーザーによって要求されたTSを分離し、予め設定された分割規則情報(送信装置1−2の多重化部13にて用いる分割規則情報と同じ情報)に従って、分離されたTSパケット列を1つのTSに合成する。そして、分離部21は、合成したTSに対し、送信装置1−2のPCR書き換え部11と同様の処理によりヌルパケットを付加し、TS出力クロックに同期させたTSを出力する。また、分離部21は、合成したTSのスロット割り当て数に基づいて、当該TSを出力する速度を決定し、出力速度情報としてクロック再生部22に出力する。
【0142】
クロック再生部22は、J個のフレームを入力すると共に、分離部21からTSの出力速度情報を入力し、入力したフレームの伝送速度に同期したクロックを再生し、再生したクロックを分周及び逓倍することにより、出力速度情報によって規定するクロックを生成し、TS出力クロックとして分離部21に出力する。
【0143】
(具体例)
次に、図25に示した受信装置2−2における各部の具体的動作について具体例を挙げて説明する。受信装置2−2が受信する7個のフレームは、送信装置1−2により送信された7個のフレームとし、ユーザーによってTS_id=0x0002、original_network_id=0x1001であるTS(TS2)が要求されているものとする。分割部21の処理は、基本的には図9に示した処理と同様である。
【0144】
まず、分離部21は、7個のフレーム、7個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置、並びにTS出力クロックを入力し、7個のフレーム内におけるTS1〜TS3のスロット割り当て数及びスロット位置から、要求されたTS2のスロット割り当て数及びスロット位置を取得する。
【0145】
次に、分離部21は、取得したTS2のスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、フレームから、要求されたTS2を分離し、予め設定された分割規則情報に従って、1つのTS2に合成する。本具体例では、図23及び図24に示したように、TSが割り当てられた複数のフレーム(図24を参照して、TS2の場合はフレーム2,3)から、チャネル番号及びスロット番号の若い順に、1パケットずつ読み出して合成する。
【0146】
次に、分離部21は、合成したTS2を出力する際に、そのTS2に付加するヌルパケットの数及び位置を、予め設定された対応情報及び規則情報(送信装置1−2にて用いた対応情報及び規則情報と同じ情報)に従って決定する。尚、分離部21は、送信装置1−2のPCR書き換え部11と同様の処理により、TSに付加するヌルパケットの数及び位置を決定する。
【0147】
具体的には、分離部21は、予め設定された対応情報に従って、TS2のスロット割り当て数の合計に対応するヌルパケット付加後のスロット数を決定する。そして、分離部21は、TS2のスロット割り当て数及びスロット位置、並びに決定したヌルパケット付加後のスロット数に基づいて、合成したTS2に対して付加するヌルパケットの数及び位置を決定する。すなわち、分離部21は、TS2に対して付加するヌルパケットの数を、「ヌルパケット付加後のスロット数−スロット割り当て数の合計」(図22を参照)の演算によって決定し、TSに対して付加するヌルパケットの位置を、予め設定された規則情報(図6を参照)に従って決定する。
【0148】
次に、分離部21は、合成したTS2に、決定した数のヌルパケットを、決定した位置に挿入し、ヌルパケット付加後のTS2をTS出力クロックに同期させて出力する。これにより、TS2は、送信装置1−2が入力する元の速度以上の速度で、受信装置2−2から出力される。TS2の場合、23個のTSパケットに対し17個のヌルパケットが付加され、40MbpsのTSとして出力される。
【0149】
また、分離部21は、要求されたTS2について、ヌルパケット付加後のスロット数を出力速度情報としてクロック再生部22に出力する。TS2の出力速度情報は40となる。
【0150】
クロック再生部22は、1チャネルあたりの伝送速度に同期したクロックを再生する。本具体例では、1チャネルあたりの伝送路の伝送帯域は13Mbpsであるから、クロック再生部22は、13MHzのクロックを再生する。そして、クロック再生部22は、入力した出力速度情報に基づいて、再生したクロックからTS出力クロックを生成し、分離部21に出力する。TS2の場合、入力した出力速度情報は40であるから、クロック再生部22は、再生した13MHzのクロックを40/13倍して40MHzのクロックを生成し、これをTS出力クロックとして出力する。
【0151】
以上のように、実施例2の受信装置2−2によれば、分離部21が、J個のフレーム内における各TSのスロット割り当て数及びスロット位置から、ユーザーによって要求されたTSのスロット割り当て数及びスロット位置を取得し、要求されたTSを各フレームから分離し、分離した各TSを合成し、合成したTSに対し、予め設定された対応情報に従ってヌルパケット付加後のスロット数を決定し、ヌルパケット付加後のスロット数からスロット割り当て数を減算してヌルパケット数を決定し、予め設定された規則情報に従ってヌルパケットの位置を決定し、合成したTSにヌルパケットを挿入し、TS出力クロックに同期させて出力するようにした。また、クロック再生部22が、分離部21により出力されるヌルパケット付加後のTSの出力速度情報に基づいて、1チャネルあたりの伝送速度に同期したクロックからTS出力クロックを生成するようにした。
【0152】
すなわち、実施例2では、受信装置2−2が出力するTSの速度(ヌルパケット付加後のスロット数)を、送信装置1−2が入力する元の速度に応じて、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数との対応情報に従って予め設定しておく。そして、送信装置1−2は、予め設定された速度でTSを出力したときに整合するように、PCRの値を予め書き換えておく。送信装置1−2により書き換えられるPCRの値は、受信装置2−2において挿入されるヌルパケットの数に対応したものである。つまり、受信装置2−2により出力されるヌルパケット付加後のTSには、送信装置1−2により書き換えられたPCRが含まれており、出力されるTSの速度は、そのTSに含まれるPCRの値に整合している。
【0153】
また、前述の特許文献4に記載された第2の手法では、受信装置は、1チャネルあたりの伝送速度のN倍(Nはチャネル数)の速度でTSを出力する。これに対し、実施例2の受信装置2−2では、スロット割り当て数に応じた数のヌルパケットを挿入し、ヌルパケット付加後の速度でTSを出力する。つまり、受信装置2−2は、1チャネルあたりの伝送速度のN倍の速度よりも低い速度でTSを出力するから、TSの速度を低く抑えることができる。したがって、特許文献4の受信装置に比べて、受信装置2−2及び受信装置2−2の後段に設けられるデコーダの回路全体として消費電力を小さくすることができる。
【0154】
また、前述の特許文献4に記載された第1の手法では、受信装置のクロック再生回路は、最大でN種類のクロック(Nはチャネル数)を生成する必要がある。これに対し、実施例2の受信装置2−2では、1チャネルあたりの伝送速度に同期したクロックを再生し、入力した出力速度情報に基づいて、再生したクロックからTS出力クロックを生成する。つまり、受信装置2−2は、特許文献4の受信装置にて生成されるクロックよりも少ない種類のクロックを生成すれば済むから、クロック再生部22の処理が簡便になる。
【0155】
したがって、実施例2によれば、受信装置2−2が、要求されたTSをJ個のフレームから分離し、分離したTSを合成し、送信装置1−2においてPCRの値の書き換えの際に決定された同じ数のヌルパケットを同じ位置に挿入して出力する。これにより、TSの速度を低く抑えることができる。したがって、デコーダは、受信装置2−2から低速のTSを入力してデコードすればよいから、処理負荷を低減することができる。また、受信装置2−2がTSにヌルパケットを挿入して出力する際に、そのTSは当該TSに書き込まれたPCRに整合しており、受信装置2−2は、ヌルパケットを挿入して出力するTSの速度に対応するクロックを、1チャネルあたりの伝送速度に同期したクロックから生成すればよい。したがって、クロック再生部22の規模を小さくすることができる。
【0156】
(変形例1)
前記実施例2では、送信装置1−2のPCR書き換え部11は、予め設定された対応情報(図22)に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。これに対し、変形例1では、他の対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定する。変形例1における他の対応情報に含まれるヌルパケットのスロット数は、実施例1の変形例2と同様に、所定の正の整数及び前記所定の正の整数の因数とする。
【0157】
図26は、スロット割り当て数の合計とヌルパケット付加後のスロット数との対応例を説明する図である。図26に示すように、対応情報は、例えば、ヌルパケット付加後のスロット数が、96及びその因数となるように規定する。
【0158】
以上のように、実施例2の変形例1によれば、前述の実施例2と同様の効果を奏する。また、受信装置2−2のクロック再生部22にて必要となるクロックは、ある周波数とその因数、すなわち整数分の1に分周した周波数のみとなる。したがって、ある周波数を再生すれば、分周だけで必要な全てのクロックを再生することが可能となり、クロック再生部22の回路規模を著しく小さくすることができる。例えば、図26に示した対応情報に従う場合、クロック再生部22は、13Mbpsの速度から再生した13MHzのクロックを、96/13倍して16MHzのクロックを生成すればよい。これにより、クロック再生部22は、これを整数分の1(1/2,1/3,1/4,1/6,1/8,1/12,1/16,1/24,1/32,1/48,1/96)に分周する簡便な回路のみで、全てのTS出力クロックを生成することが可能となり、クロック再生部22の規模を一層小さくすることができる。
【0159】
(変形例2)
前記実施例2及び実施例2の変形例1では、送信装置1−2のPCR書き換え部11がヌルパケット付加後のスロット数を決定する際に用いる対応情報(図22、図26)において、ヌルパケット付加後のスロット数は1スロット単位で規定されている。これに対し、変形例2では、対応情報におけるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数を単位として規定する。また、変形例2では、他の規則情報に従って、TSに対して付加されるヌルパケットの位置を決定する。
【0160】
具体的には、送信装置1−2のPCR書き換え部11は、TSを入力すると共に、スロット割り当て部10から各TSのスロット割り当て数及びスロット位置を入力し、特定のTSが伝送されるZ個(Zは1以上の整数)のフレーム内の、特定のTS以外のパケットをヌルパケットに置き換える。また、Zが2以上の場合には、予め設定した分割規則情報に従って、1つのパケット列に合成する。
【0161】
そして、PCR書き換え部11は、予め設定した対応情報に従って、ヌルパケット付加後のスロット数を決定し、TSに付加されるヌルパケットの数を決定する。そして、PCR書き換え部11は、ヌルパケット付加後のスロット数と、1フレームのスロット数にZを乗じた値が等しくない場合には、(a)生成したパケット列に含まれるヌルパケットから、削除されるヌルパケットの数及び位置を決定する。または、(b)生成したパケット列に追加されるヌルパケットの数及び位置を決定する。
【0162】
以上のように、実施例2の変形例2によれば、前述の実施例2と同様の効果を奏する。また、あるTSのヌルパケット付加後のスロット数が、1フレームのスロット数にZを乗じた値と等しくなる場合には、実施例1の変形例1と同様に、受信装置2−2の分離部21は、Z個のフレーム内の、要求されたTS以外のパケットをヌルパケットに置き換えたのち、Zが2以上の場合には、予め設定した分割規則情報に従って、パケット列をTSに合成することにより、TSを出力することが可能となり、処理が簡便になる。
【0163】
(変形例3)
変形例3では、対応情報におけるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数に所定の正の整数を乗算した値、及び1フレームのスロット数に前記所定の正の整数の因数を乗算した値として規定する。
【0164】
以上のように、実施例2の変形例3によれば、前述の実施例2及び実施例2の変形例2と同様の効果を奏する。また、受信装置2−2のクロック再生部22にて必要となるクロックは、ある周波数とその因数、すなわち整数分の1に分周した周波数のみとなる。したがって、ある周波数を再生すれば、分周だけで必要な全てのクロックを再生することが可能となり、実施例1の変形例2及び実施例2の変形例1と同様に、クロック再生部22の回路規模を著しく小さくすることができる。
【0165】
尚、本発明の実施例1,2による送信装置1−1,1−2及び受信装置2−1,2−2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。送信装置1−1,1−2及び受信装置2−1,2−2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。送信装置1−1,1−2に備えたスロット割り当て部10、PCR書き換え部11、ヘッダ生成部12及び多重化部13の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、受信装置2−1,2−2に備えたヘッダ検出部20、分離部21及びクロック再生部22の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【符号の説明】
【0166】
1 送信装置
2 受信装置
10 スロット割り当て部
11 PCR書き換え部
12 ヘッダ生成部
13 多重化部
20 ヘッダ検出部
21 分離部
22 クロック再生部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデジタルデータを入力し、前記複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、ヘッダスロット及びデータスロットからなるフレームを構成し、所定数のチャネルにて伝送路へ送信する送信装置において、
前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納する際の、それぞれのデジタルデータに対するスロット割り当て数及びスロット位置を決定するスロット割り当て部と、
前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、ヘッダを生成するヘッダ生成部と、
前記デジタルデータに含まれるPCR(プログラム・クロック・リファレンス)の値を書き換えるPCR書き換え部と、
前記ヘッダ生成部により生成されたヘッダを前記フレーム内のヘッダスロットに格納し、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、前記PCRの値が書き換えられた前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納し、多重化してフレームを構成する多重化部と、を備え、
前記PCR書き換え部は、
1スロットあたりの伝送速度または1チャネルあたり伝送速度を単位とした複数個の速度が予め規定され、当該送信装置が入力したデジタルデータの速度に対応する、前記規定された複数個の速度のうち入力したデジタルデータの速度以上であって、かつ最小の速度が対応情報として予め規定され、前記対応情報によって規定された速度を、前記フレームを受信する受信装置により出力されるデジタルデータの出力速度とし、前記出力速度に整合するように、前記PCRの値を書き換える、ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれる複数個の速度を、1スロットあたりの伝送速度に所定の正の整数を乗算した値、及び1スロットあたりの伝送速度に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれる複数個の速度を、1チャネルあたりの伝送速度に所定の正の整数を乗算した値、及び1チャネルあたりの伝送速度に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部は、
当該送信装置が入力したデジタルデータに対するヌルパケット付加後のデジタルデータを、前記フレームを受信する受信装置により前記出力速度にて出力されるデジタルデータとして想定し、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数に基づいて、前記デジタルデータに付加されるヌルパケットの数及び位置を決定し、前記ヌルパケット付加後のデジタルデータの速度に整合するように、前記PCRの値を書き換える、ことを特徴とする送信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部は、
前記対応情報として、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数とが対応して規定された対応情報を備え、前記対応情報に従い、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数に基づいて、前記ヌルパケットの数を決定する、ことを特徴とする送信装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部は、
前記想定したヌルパケット付加後のデジタルデータのパケット列に対し、元のデジタルデータのデータパケット及びヌルパケットを割り振るための規則情報を備え、前記規則情報に従って、割り振るべきデータパケット及びヌルパケットの数、並びに既に割り振られたデータパケット及びヌルパケットの数に基づいて、前記データパケットまたはヌルパケットを前記パケット列に割り振ることにより、前記ヌルパケットの位置を決定する、ことを特徴とする送信装置。
【請求項7】
請求項5に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、所定の正の整数及び前記所定の正の整数の因数とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項8】
請求項5に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数を単位とした値とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項9】
請求項5に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数に所定の正の整数を乗算した値、及び1フレームのスロット数に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の送信装置により送信された前記フレームを受信し、ユーザーにより要求されたデジタルデータを、前記フレームから分離して出力する受信装置であって、
前記フレーム内のヘッダを検出し、前記ヘッダから前記デジタルデータのスロット割り当て数及びスロット位置を生成するヘッダ検出部と、
前記ヘッダ検出部により生成されたデジタルデータのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、前記ユーザーにより要求されたデジタルデータを前記フレームから分離して出力する分離部と、
前記フレームの伝送速度に基づいて、前記分離部がデジタルデータを出力する際に必要なクロックを再生するクロック再生部と、を備え、
前記分離部は、
前記送信装置のPCR書き換え部に備えた対応情報と同一の対応情報を備え、前記対応情報に基づき、前記送信装置が入力したデジタルデータのうち前記ユーザーにより要求されたデジタルデータの速度以上であって、かつ最小の速度を出力速度とし、前記出力速度にて、前記分離したデジタルデータを出力する、ことを特徴とする受信装置。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から9までのいずれか一項に記載の送信装置として機能させるための送信プログラム。
【請求項12】
コンピュータを、請求項10に記載の受信装置として機能させるための受信プログラム。
【請求項1】
複数のデジタルデータを入力し、前記複数のデジタルデータをパケット単位で時分割多重し、ヘッダスロット及びデータスロットからなるフレームを構成し、所定数のチャネルにて伝送路へ送信する送信装置において、
前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納する際の、それぞれのデジタルデータに対するスロット割り当て数及びスロット位置を決定するスロット割り当て部と、
前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、ヘッダを生成するヘッダ生成部と、
前記デジタルデータに含まれるPCR(プログラム・クロック・リファレンス)の値を書き換えるPCR書き換え部と、
前記ヘッダ生成部により生成されたヘッダを前記フレーム内のヘッダスロットに格納し、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、前記PCRの値が書き換えられた前記複数のデジタルデータを前記フレーム内のデータスロットに格納し、多重化してフレームを構成する多重化部と、を備え、
前記PCR書き換え部は、
1スロットあたりの伝送速度または1チャネルあたり伝送速度を単位とした複数個の速度が予め規定され、当該送信装置が入力したデジタルデータの速度に対応する、前記規定された複数個の速度のうち入力したデジタルデータの速度以上であって、かつ最小の速度が対応情報として予め規定され、前記対応情報によって規定された速度を、前記フレームを受信する受信装置により出力されるデジタルデータの出力速度とし、前記出力速度に整合するように、前記PCRの値を書き換える、ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれる複数個の速度を、1スロットあたりの伝送速度に所定の正の整数を乗算した値、及び1スロットあたりの伝送速度に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれる複数個の速度を、1チャネルあたりの伝送速度に所定の正の整数を乗算した値、及び1チャネルあたりの伝送速度に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部は、
当該送信装置が入力したデジタルデータに対するヌルパケット付加後のデジタルデータを、前記フレームを受信する受信装置により前記出力速度にて出力されるデジタルデータとして想定し、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数に基づいて、前記デジタルデータに付加されるヌルパケットの数及び位置を決定し、前記ヌルパケット付加後のデジタルデータの速度に整合するように、前記PCRの値を書き換える、ことを特徴とする送信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部は、
前記対応情報として、スロット割り当て数とヌルパケット付加後のスロット数とが対応して規定された対応情報を備え、前記対応情報に従い、前記スロット割り当て部により決定されたスロット割り当て数に基づいて、前記ヌルパケットの数を決定する、ことを特徴とする送信装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部は、
前記想定したヌルパケット付加後のデジタルデータのパケット列に対し、元のデジタルデータのデータパケット及びヌルパケットを割り振るための規則情報を備え、前記規則情報に従って、割り振るべきデータパケット及びヌルパケットの数、並びに既に割り振られたデータパケット及びヌルパケットの数に基づいて、前記データパケットまたはヌルパケットを前記パケット列に割り振ることにより、前記ヌルパケットの位置を決定する、ことを特徴とする送信装置。
【請求項7】
請求項5に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、所定の正の整数及び前記所定の正の整数の因数とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項8】
請求項5に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数を単位とした値とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項9】
請求項5に記載の送信装置において、
前記PCR書き換え部に備えた対応情報に含まれるヌルパケット付加後のスロット数を、1フレームのスロット数に所定の正の整数を乗算した値、及び1フレームのスロット数に前記所定の正の整数の因数を乗算した値とする、ことを特徴とする送信装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の送信装置により送信された前記フレームを受信し、ユーザーにより要求されたデジタルデータを、前記フレームから分離して出力する受信装置であって、
前記フレーム内のヘッダを検出し、前記ヘッダから前記デジタルデータのスロット割り当て数及びスロット位置を生成するヘッダ検出部と、
前記ヘッダ検出部により生成されたデジタルデータのスロット割り当て数及びスロット位置に基づいて、前記ユーザーにより要求されたデジタルデータを前記フレームから分離して出力する分離部と、
前記フレームの伝送速度に基づいて、前記分離部がデジタルデータを出力する際に必要なクロックを再生するクロック再生部と、を備え、
前記分離部は、
前記送信装置のPCR書き換え部に備えた対応情報と同一の対応情報を備え、前記対応情報に基づき、前記送信装置が入力したデジタルデータのうち前記ユーザーにより要求されたデジタルデータの速度以上であって、かつ最小の速度を出力速度とし、前記出力速度にて、前記分離したデジタルデータを出力する、ことを特徴とする受信装置。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1から9までのいずれか一項に記載の送信装置として機能させるための送信プログラム。
【請求項12】
コンピュータを、請求項10に記載の受信装置として機能させるための受信プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−94993(P2012−94993A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238753(P2010−238753)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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