説明

デジタル一眼レフカメラ

【課題】 デジタル一眼レフカメラにおいて、ファインダ装置を通して光学像と撮像スルー画像を確認することを可能にする。
【解決手段】 撮影レンズ2で撮影する被写体の光学像をメインミラー21で反射して焦点板25に結像し、ファインダ装置で観察するとともに、メインミラー21を撮影レンズ2の光路上から退避させて被写体を撮像素子14で撮像するデジタル一眼レフカメラにおいて、撮像素子14で撮像した画像を焦点板25に表示するEL(エレクトロルミネッセンス)装置27を備え、EL装置27で表示した画像と焦点板25に結像された光学像とを接眼レンズ28で観察可能とする。焦点板25の下側に遮光幕62を配設することで、EL装置27で表示される撮像画像がメインミラー21での反射によって観察し難くなることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル一眼レフカメラに関し、特に撮影する被写体の光学像及び撮像スルー画像をファインダ装置で視認することを可能にしたデジタル一眼レフカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル一眼レフカメラは撮影レンズの光軸上にクイックリターン動作するメインミラーを備えており、撮影レンズを透過した光をメインミラーで反射して被写体の光学像を焦点板(ピントガラス)に結像し、この光学像をファインダ装置で確認する。また、メインミラーを撮影レンズの光軸から退避させたとき、いわゆるミラーアップしたときに撮影レンズを透過した光を撮像素子に結像し、被写体の画像信号をモニタ用LCD(液晶表示装置)等に表示して視認する。そのため、この種のカメラでは被写体を常時観察するには、ファインダ装置を通して被写体の光学像を観察するか、ミラーアップしてモニタ用LCDに表示される撮像スルー画像を観察するかのいずれかに限られてしまう。
【0003】
このようなカメラに対し、特許文献1ではファインダ光学系に小型のモニタ用LCDを内装し、モニタ用LCDの表示された撮像スルー画像をファインダ光学系を通して観察することを可能にした技術が提案されている。この技術によれば、ファインダ装置を通して光学像と撮像画像の両方を選択して観察することができるため、撮影時の利便性を高める上で有利である。
【0004】
また、デジタル一眼レフカメラのファインダ装置では、被写体の光学像を確認すると同時に、絞り値やシャッター速度等の各種情報を確認するために、ファインダ装置内に表示装置を設けて各種情報を焦点板に結像させることが行われている。この表示装置としてはLCDが利用されており、LCDで表示した情報を光学手段によって焦点板、あるいは焦点板と光学的に等価な光軸上の位置に結像させている。また、特許文献2では、このようなLCDに代えてEL(エレクトロルミネッセンス)装置を利用したものが提案されている。すなわち、焦点板の被写体像を表示する領域の周辺領域にEL装置を形成し、このEL装置をEL駆動回路により駆動させることにより必要な情報を表示するように構成することで、焦点板に被写体の光学像と共にEL装置により各種情報を表示させ、これをファインダ装置で視認することを可能にしている。また、特許文献2にはファインダ光学系のプリズムの表面に表示装置としてEL装置を形成した技術も提案されている。
【特許文献1】特開平10−294888号公報
【特許文献2】特開2000−137268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では光学像と撮像スルー画像を選択して確認するためにファインダ光学系の一部に設けた可動ミラー等を駆動して光路を切り替えているので、切り替えるための駆動機構が必要になりファインダ装置の構造が複雑化する。また、ファインダ装置内にモニタ用LCDを内装しているためファインダ装置が大型化してしまうという問題がある。また、特許文献2では焦点板に配設したEL装置はLCD装置よりも薄く構成できるが、このEL装置は情報を表示するのみであるので、焦点板に表示される画像は撮影レンズにより結像される被写体の光学像に限られる。そのため、撮像スルー画像を確認するにはモニタ用LCDに表示される画像を確認せざるを得ず、従来のカメラと同等のファインダ機能が得られるのに過ぎない。
【0006】
本発明の目的は、ファインダ装置を通して撮像スルー画像を確認することを可能にする一方で構造の複雑化を防止し、かつ光学像と撮像スルー画像の切り替え制御が複雑になることを回避したデジタル一眼レフカメラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、撮影レンズで撮影する被写体の光学像をメインミラーで反射して焦点板に結像し、結像した光学像をファインダ装置で観察するとともに、メインミラーを撮影レンズの光路上の位置から退避させて被写体を撮像素子で撮像するデジタル一眼レフカメラにおいて、少なくとも撮像素子で撮像した画像を焦点板に表示するEL装置を備え、EL装置で表示した画像と焦点板に結像された光学像とをファインダ装置で観察可能に構成する。
【0008】
ここで、本発明は次の構成を備えることが好ましい。EL装置は焦点板と一体に形成される。また、EL装置はメインミラーを退避位置に駆動したときに撮像した画像と各種情報を表示し、メインミラーが光路上にあるときに各種情報を表示する構成とする。さらに、メインミラーと焦点板との間に少なくとも焦点板のメインミラー側を覆う遮光幕を備えることが好ましい。この場合、メインミラーを駆動するミラー駆動機構と遮光幕を焦点板を覆う領域から進退させる遮光幕駆動機構とを一体化することが好ましい。また、撮影レンズが防振レンズであるときにはメインミラーを退避位置に駆動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄く構成できるEL装置を焦点板に設け、EL装置を用いて被写体の撮像画像を焦点板に表示するので、焦点板に結像される光学像と当該撮像画像のいずれかをファインダ装置で観察することができる。これにより、デジタル一眼レフカメラにおいてファインダ装置を通して撮像スルー画像を確認して撮影することが可能になる一方で、特許文献1のようなファインダ装置に光学像と撮像画像とを切り替えるための機構は不要になり、切り替え制御が容易になるとともにカメラの構造が複雑化することを抑えることができる。
【0010】
また、焦点板の下側に遮光幕を配設することで、EL装置で表示される撮像画像がメインミラーでの反射によって観察し難くなるようなこともない。また、手振れ防止用の防振レンズを備える撮影レンズの場合にはEL装置で表示される撮像画像を観察することでファインダ像酔いを未然に防止することも可能になる。
【実施例1】
【0011】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の実施例1のデジタル一眼レフカメラを前方及び後方から見たそれぞれの外観斜視図である。実施例1のデジタル一眼レフカメラはカメラ本体1と、カメラ本体1に着脱可能な同図には表れない撮影レンズ2(図13参照)を備えている。カメラ本体1の前面には撮影レンズ2を着脱するためのレンズマウント3が設けられ、上部にはメインスイッチ4、シャッター釦5、前側ダイヤル6、モード設定ダイヤル7、情報用LCD8、アクセサリーシュー9等が配設される。また、背面にはファインダ窓10、モニタ用LCD11、詳細について後述するEL表示釦12、後側ダイヤル13等が配設される。
【0012】
図3は前記カメラ本体1の内部に設けられるミラーボックス20の斜視図、図4はその要部を分解した斜視図である。ミラーボックス20は水平方向に延長したミラー軸を支点として上下方向に往復回動動作(クイックリターン)が可能なメインミラー21を内装している。このメインミラー21は、通常では撮影レンズ2の光軸上に位置した下動位置にあり、撮影レンズ2を透過した被写体光を上方に向けて反射させて同図には表れない焦点板25に結像させる。また、上方に回動したときには撮影レンズ2からの被写体光の光路から退避した上動位置にあり、当該被写体光をミラーボックス20の背後に配設した同図には表れないCCD素子等からなる撮像素子14(図13参照)に結像して撮像を行い、光電変換した撮像信号を出力するようになっている。
【0013】
前記ミラーボックス20の上部には詳細を後述する焦点板25が内装されるとともに、その上には焦点板25に結像された被写体像を正立像にするためのペンタプリズム22が搭載される。また、このペンタプリズム22の背後には測光レンズ23と測光素子24が搭載され、さらに図には表れない接眼レンズ28(図13参照)が装着される。また、前記ミラーボックス20の背面には前記撮像素子の前側にシャッターユニット30が配設され、シャッタ駆動機構31によってシャッタ幕を開動作させて前記した撮像素子での撮像を可能にしている。また、前記ミラーボックス20の左側面(カメラ正面に向かって、以下同様)には、レンズマウント3に装着される撮影レンズに内蔵されている絞りを動作させるための絞り駆動機構40と、前記メインミラー21を上下に回動させるためのミラー駆動機構50が配設されている。
【0014】
すなわち、前記ミラーボックス20の左側面には絞駆動機構支持板41がネジ42によって固定されており、この絞駆動機構支持板41には、絞り駆動機構40の駆動源となる絞駆動モータ43と共にミラー駆動機構50の駆動源としてのミラー駆動モータ51が支持されている。絞駆動機構40は前記レンズマウント3に取着された図には表れない撮影レンズの絞り込みレバーに連係し、絞駆動モータ43を回転動作することで絞りを動作させるものであり、従来のデジタル一眼レフカメラに適用されているものと同じ構成であるのでここでは説明は省略する。ただし、ここでは絞り駆動機構40はミラー駆動機構50とは独立して絞り動作を行うように構成されており、これによりミラー動作とは独立して常時撮像画像の絞り調整が可能にされている。
【0015】
前記ミラー駆動機構50は前記絞駆動機構支持板41の内側の前記ミラーボックス20の左側面に構築されており、遮光幕駆動機構60が一体的に構成されている。図5はミラー駆動機構50及び遮光幕駆動機構60の要部の斜視図であり、図6はこれをカメラの左方向から見た図である。前記ミラーボックス20内のメインミラー21の直上位置に焦点板25が配設されている。前記絞駆動機構支持板41に支持されているミラー駆動モータ51の回転軸にギヤGAが取着されており、このギヤGAからギヤGKまでの複数のギヤが順次噛合され、ミラー駆動モータ51の回転力を最終的にギヤGKまで伝達するギヤ列52が構成されている。このギヤ列52を構成するギヤGA〜GKのうち、ギヤGIはシャッタチャージレバー53に設けられたカム係合部53aに係合するシャッタチャージカム54を一体的に回動するように構成される。このシャッタチャージレバー53は図には表れないバネ手段によって図の反時計方向に付勢されており、ギヤGIの回転に伴ってシャッタチャージカム54が時計方向に回動されたときにシャッタチャージを行うが、この構成は従来のデジタル一眼レフカメラと同じであるので詳細な説明は省略する。
【0016】
また、ギヤGJはシャッタ係止解除レバー55に設けたカム係合部55aに係合するシャッタ係止解除カム56を一体的に回動するように構成される。シャッタ係止解除レバー55は図には表れないバネ手段によって図の反時計方向に付勢されており、その一部は前記メインミラー21に設けられたレバー係合部21aの下側に配設されている。前記メインミラー21は図には表れないバネ手段によってミラー軸21bを支点として図の時計方向に回動するように付勢されており、この付勢力によってメインミラー21は下方に回動されて撮影レンズの光軸上に位置した下動位置にあり、この位置では前記レバー係合部21aは前記シャッタ係止解除レバー55に当接している。ギヤGJの回転に伴ってシャッタ係止解除カム56が反時計方向に回動されたときにシャッタ係止解除レバー55が時計方向に回動され、レバー係合部21aを介してメインミラー21を上方に回動して撮影レンズの光軸上の位置から退避した上動位置に移動させ、いわゆるミラーアップを行う。
【0017】
図7(a)及び(b)に外観斜視図を示すように、前記ギヤGJは円周方向の所定長さ領域にわたって軸方向の半分だけ歯58の一部を欠損させた欠歯領域57を設けている。また、ギヤGKはギヤGJの欠歯領域57では噛合せず、欠歯領域57以外でのみギヤGJの歯58と噛合する部分歯59を備えている。これらのギヤGJとGKは、ギヤGJが図の反時計方向に所定位置まで回動されときに両ギヤの歯が噛合してギヤGJの回転力がギヤGKに伝達される。さらに、ギヤGJが反時計方向に回動されると、ギヤGJの欠歯領域57がギヤGKの部分歯58に対向する位置になり、ギヤGJの歯58とギヤGKの部分歯59の噛合状態は解消され、ギヤGKは回転が自由な状態になる。
【0018】
遮光幕駆動機構60は、大径の巻取りプーリPAと小径の駆動プーリPBとを備えており、巻取りプーリPAは前記ギヤGKと同軸状態に一体化されている。また、前記駆動プーリPBは、前記メインミラー21のミラー軸21bの近傍にこれと平行に配設された遮光幕軸61に軸支されている。この遮光幕軸61は前記焦点板の下面に臨む高さ位置に配設されており、前記ミラーボックス20に軸転可能に支持されている。そして、前記遮光幕軸61に遮光幕62が巻き付けられている。遮光幕62は柔軟な遮光性のある薄い幕で形成されており、前記メインミラー21の反射面を覆うことが可能な幅寸法及び長さ寸法に形成されている。そして、遮光幕62の一部を細幅に延長した案内ベルト63が設けられており、この案内ベルト63が前記巻取りプーリPAの円周一部に連結されている。前記遮光幕軸61の左端部、すなわち前記ミラー駆動機構50に臨む側の端部は、図4に示したように前記絞駆動機構支持板41を貫通し、その貫通した部分に前記駆動プーリPBが軸支されており、この駆動プーリPBには細幅の駆動ベルト64が巻き付けられており、この駆動ベルト64の先端部と絞駆動機構支持板41の一部との間にコイルバネからなる引っ張りバネ65を弾装している。前記巻取りプーリPAの一側面には回転したときにミラーボックス20の固定部に当接し、後述するように引っ張りバネ65により遮光幕軸61に巻き取られる遮光幕62の位置を規制するためのストッパピン66が設けられる。
【0019】
このミラー駆動機構50及び遮光幕駆動機構60では、レリーズ時、あるいはミラーアップ操作時にミラー駆動モータ51が回転すると、図8及び図9の斜視図及び左側面図に示すように、ギヤGAの回転がギヤGJまで伝達され、ギヤGJの反時計方向の回転によりシャッタ係止解除レバー55によりメインミラー21を上動する。また、ギヤGJが所定位置まで回転されると、図7(b)に示すように、ギヤGJの欠歯領域57がギヤGKの部分歯59から外れてギヤGJの歯58と部分歯59とが噛合するようになり、ギヤGKが時計方向に回転される。ギヤGKのかかる回転により、これと一体の巻取りプーリPAが時計方向に回動され、遮光幕62の案内ベルト63を巻取りプーリPAに巻き取る。これにより、遮光幕62が遮光幕軸61から引き出される。遮光幕62が引き出されるのに伴って遮光幕軸61が回転されると、駆動ベルト64は引っ張りバネ65を引延しながら駆動プーリPBに巻き取られることになる。
【0020】
レリーズ終了時、あるいはマニュアルによるミラーダウン操作時にミラー駆動モータ51がさらに回転すると、ギヤGJのさらなる反時計方向の回転によってメインミラー21が下動され、撮影レンズ2の光軸上の通常位置に復帰される。また、これと同時にギヤGJのかかる反時計方向の回転によりギヤGJの欠歯領域57がギヤGKの部分歯58に対向する状態となり、ギヤGJとギヤGKの噛合が解除され、ギヤGK及び巻取りプーリPAが自由な回転状態となる。そのため、引っ張りバネ65のバネ力によって駆動ベルト64が引かれて駆動プーリPBがギヤGKとともに反時計方向に回動され、これと一体の遮光幕軸61も反時計方向に回転されるため遮光幕62は遮光幕軸61に巻き込まれて行き、遮光幕62は焦点板25の下側領域から後退され、初期の状態に復帰することになる。
【0021】
図10は前記ミラーボックス内に内装されている焦点板25の外観斜視図、図11はその断面図と一部の拡大図である。焦点板25は矩形の平板状をした結像板26と、この結像板26の表面の周辺領域を除いたほぼ全面にわたって形成された浅い凹部261内に埋設されたEL装置27とで構成される。結像板26はPMMA(アクリル)、PC(ポリカーボネート)等の厚さ1mm程度の透明樹脂板で構成され、表面は結像される被写体像を視認させるための拡散面262として構成される。ここでは結像板26の表面に2μm程度の微細な凹凸262aを形成して粗面化することで拡散面262を構成している。また、ここでは結像板26は光学コンデンサ機能を持たせており、図の下側の裏面263はレンズ面としてあるいはフレネルレンズ面として構成されている。
【0022】
EL装置27はここではフルカラーELディスプレイとして構成されており、R(赤色),G(緑色),B(青色)の各画素270を平面マトリクス配列したものである。このELディスプレイ27は、図12に画素の一部を拡大図示するように、透明なフィルムからなる透明基板271の表面に前記画素270を配列したEL部272を形成しており、このEL部272では、防湿バリア膜273の上にITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)からなる25〜100 nmの膜厚の透明な基板側電極274が所要パターンに形成され、その上に各画素に対応して絶縁層275、発光層276、絶縁層277が形成される。さらにその上にIZO(Indium Zinc Oxide :酸化インジウム亜鉛)電極からなる25〜100 nmの膜厚の透明な表面側電極278、防湿バリア層279が形成されたものである。このELディスプレイ27は基板側電極274と表面側電極278との間に所要の電圧を印加して発光層に高電界を印加することにより発光層276がそれぞれ発光して赤色光、緑色光、青色光を出射する。したがって、所望の画素を選択して発光させることで、ELディスプレイ27において所望のカラーパターン(カラー画像)を表示させることが可能である。また、両電極274,278間に電圧を印加しないときにはELディスプレイ27は透明な状態に保たれる。
【0023】
前記ELディスプレイ27の透明基板271は、厚さが75μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート),PES(ポリエーテルサルフォン),PAr(ポリアリレート),PC(ポリカーボネート)等の透明な樹脂フィルムで構成される。前記絶縁層275,277は0.2 〜0.3 μmの膜厚の二酸化シリコン膜が用いられ、前記防湿バリア膜273,279は同程度の膜厚の窒化シリコン膜が用いられる。発光層276は0.5 〜1μmの厚さであり、無機ELとして構成したときには赤色画素にCaS:Eu,ZnS:Sm等、緑色画素にZn:Tb等、青色画素にSrS:Ce,CaGa:Ce等が用いられる。また、有機ELとして構成したときには赤色画素にEu(DBM)(Phen)(Eu錯体)、緑色画素にAlq(8−キノリノラトアルミニウム錯体)、青色画素にDPVBi(ジスチリル誘導体)が用いられる。
【0024】
そして、前述したように前記ELディスプレイ27は表面側を結像板26の表面に向けた状態で前記結像板26の凹部261内に内装され、図には表れないがELディスプレイ27の周囲に透明なシール材を塗布して両者の各表面間を封止するとともに、両者を一体化して前記焦点板25を構成している。
【0025】
図13は実施例1のカメラブロック構成図である。カメラ本体1に装着した撮影レンズ2で結像された被写体像を光学ローパスフィルタ141を通して撮像した撮像素子14からの撮像信号はA/D変換器101においてデジタルの画像信号に変換される。このデジタル画像信号は信号処理回路102においてカラープロセス処理やガンマ補正等の所定の信号処理が施され、圧縮回路103において圧縮され、あるいは圧縮されることなくVRAM(画像メモリ)104に書き込まれる。前記撮像素子10は、CPU100がクロックジェネレータ106を介してCCDドライバ105を制御することによって、撮像時における撮像素子14での蓄積時間を設定することが可能にされている。
【0026】
前記CPU100は被写体を撮像する際には測距装置111で測定した被写体距離に基づいてAF(自動焦点)駆動機構112を制御する。また、ミラー駆動機構50を制御して前記メインミラー21を動作する。さらに、前述のシャータチャージレバー53、シャッタ係止解除レバー55でのシャッタチャージ、チャージ解除を行い、同時にシャッタ駆動回路114を制御してシャッタユニット30を開閉制御する。同時に撮影レンズ2内に設けられている絞り201を絞り駆動機構40により制御する。さらに、前記CPU100は、撮影情報用LCD8及びモニタ用LCD11に所要のデータを表示するように動作する。また、カメラに付属され、あるいは外付されたストロボ115を発光させるストロボ制御部116を制御する。さらに、前記測光素子24の測光出力に基づいて露出制御部117を制御する。
【0027】
また、前記CPU100には、メインスイッチ4の操作情報と、レリーズ釦5の押し込みにより動作される測光スイッチとレリーズスイッチのスイッチ情報と、各種モードを設定するためのモード設定ダイヤル7で設定されるモード情報が入力される。さらに、ELディスプレイ27での表示を行うためのEL表示釦12の操作情報が入力される。また、前記焦点板25に一体に設けられたELディスプレイを駆動してELディスプレイでの表示を行うためのEL駆動回路118が設けられており、前記モード設定ダイヤルやEL表示釦12が操作されたときにCPU100はEL駆動回路118を動作させてELディスプレイでの表示を行うことが可能とされている。さらに、前記遮光幕62を焦点板25の下側に進退させるための遮光幕駆動機構60を制御することが可能とされている。
【0028】
以上の構成のデジタル一眼レフカメラにおける撮影動作を図14のフローチャートを参照して説明する。CPU100に設けられた内蔵カウンタのカウント値NをN=0に設定し(S101)、メインスイッチ4のオンを確認すると(S102)、カウント値NをN=N+1とする(S103)。撮影レンズ2のレンズが手振れ防止用の防振レンズとして構成されているか否かを判定し(S104)、続いてEL表示釦12がオンされているか否かを判定し(S105)、防振レンズでないとき、及びEL表示釦12がオンされていないときには「光学像表示フロー」に入る(F1)。また、撮影レンズ2が防振レンズのとき、又はEL表示釦12がオンされているときには「EL表示フロー」に入る(F2)。
【0029】
「光学像表示フロー」F1は、これまでのデジタル一眼レフカメラの撮影フローと同じであり、メインミラー21は下動位置にあり、撮影レンズ2を透過した光はメインミラー21で反射され焦点板25に結像される。撮影者はファインダ窓10を覗いて焦点板25に結像した被写体の光学像をペンタプリズム22及び接眼レンズ28を通して視認する(S111)。レリーズ釦5の半押しで測光スイッチがオンすると(S112)、測距装置111で測距した被写体距離によりAF駆動機構112を駆動して焦点合わせを行うとともに(S113)、測光素子24により測光を行って絞り値、シャッタ速度を決定し(S114)する。次いで、レリーズ釦5の全押しでシャッタスイッチがオンされと(S115)、ミラー駆動機構50によりメインミラー21を上動し(S116)、シャッタ駆動機構31によりシャッタユニット30のシャッタを開いて撮影レンズ2による被写体像を撮像素子14に結像し、撮像を実行する(S130)。撮像した画像はメモリに記録する(S131)。その後、メインスイッチ5の状態を確認し(S132)、メインスイッチ5がオンであるときにはステップS103に戻り、カウント値NをN=N+1としてステップS104に移行する。
【0030】
一方、「EL表示フロー」F2は、ステップS121においてカウント値NがN=1のときにはミラー駆動機構50を動作してメインミラー21を上動する(S122)。これにより、撮影レンズ2で結像される被写体像は撮像素子14によって撮像される。ステップS121においてカウント値NがN=1でないときには、既にメインミラー21が上動されているのでステップS122はパスする。そして、レリーズ釦5を半押して測光スイッチをオンすると(S123)、撮像素子14で撮像した撮像信号のコントラストから被写体のAFを行う(S124)。また、撮像素子14を構成しているCCD素子での受光により測光を行う(S125)。撮像素子14で撮像した撮像信号は前述のように信号処理されて被写体の画像が得られ、このときEL表示釦12がオンされているので、EL駆動回路118を駆動し、ELディスプレイ27に被写体像、すなわち撮像スルー画像を表示する(S126)。そのため、焦点板25にはELディスプレイ27により被写体像がカラー表示されるので、ペンタプリズム22及び接眼レンズ28によって視認することができる。なお、このときモニタ用LCD11において撮像スルー画像を表示するようにしてもよい(S127)。したがって、撮影者はファインダ視野内に表示されるELディスプレイ27での被写体の画像を確認しながら、レリーズ釦5を全押しすることにより(S128)、ステップS130に移行し、撮像が実行される。
【0031】
このとき、メインミラー21が上動して反射面が焦点板25の直下に位置されていると、ELディスプレイ27から出射される画像光のうち、下面側に出射した光はメインミラー21の反射面で反射され、ELディスプレイ27の上面側、すなわち焦点板25の上面側に出射した光と重なって二重画像に見えるおそれがある。このとき、図15にELディスプレイ27の画像表示のフローを示すように、CPU100はミラー駆動機構50を動作してメインミラー21を上動すると(S201)、これと同時にEL駆動回路118を駆動する(S202)。ミラー駆動機構50の動作により、遮光幕駆動機構60が駆動され、遮光幕62を移動して上動したメインミラー21と焦点板25との間に進出させる(S203)。これにより、メインミラー21の反射面が遮光幕62によって覆われることになり、焦点板25に設けたELディスプレイ27が画像を表示したときに、ELディスプレイ27から下面側に出射された光がメインミラー21によって反射されることはなく、ELディスプレイ27の上面側から出射された光で形成される画像のみがファインダ装置を通して視認されることになり、画像の見栄えが低下するようなこともない。
【0032】
また、ミラー駆動機構50によりメインミラー21を下動したときには(S204)、EL駆動回路118の動作を停止する(S205)。これと同時に遮光幕駆動機構60により遮光幕62は遮光幕軸61に薪戻されるため、遮光幕62はメインミラー21と焦点板25との間から退避され、メインミラー21で反射した被写体の光学像を焦点板25に結像させることが可能になる。
【0033】
なお、図14に示したフローのステップS104において、撮影レンズ2が防振レンズのときには無条件で「EL表示フロー」F2に移行している。これは、防振レンズは手振れを防止することを目的にカメラ本体1に生じる振動を相殺するようにレンズが振動する構成であるため、「光学像表示フロー」F1での撮影を行うとすると、振動するレンズにより結像された被写体の光学像が焦点板25上で微細に移動され、これをファインダ装置で観察すると撮影者がファインダ像酔い状態になるおそれがある。そのため、防振レンズのときには強制的に「EL表示フロー」F2での撮影とすれば、撮像素子14により得られる被写体の画像は手振れが防止された画像であるため、この画像をELディスプレイ27で焦点板25に表示してもファインダ像酔い状態が生じることを防止できる。
【0034】
以上のように、実施例のカメラでは、極めて薄いディスプレイ装置であるEL装置(ELディスプレイ)27を焦点板25に一体的に設けており、このEL装置27を用いて被写体の撮像画像を焦点板25に表示し、これをファインダ装置で観察することができるので、特許文献1のようなファインダ装置に光学像と撮像画像とを切り替えるための機構は不要になる。また、実施例では遮光幕駆動装置60を備えているが、ミラー駆動機構50と一体的に動作するように連係させることで構造が複雑化することを最小限に抑えることができる。
【0035】
ここで、前記EL装置27は、光学像表示フローF1時においても、焦点板25に表示された被写体の光学像をファインダ装置を通して視認する際の邪魔にならない範囲で、例えば絞りやシャッタースピード等の撮影情報を同時に表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1のカメラを前側から見た斜視図である。
【図2】実施例1のカメラを後ろ側から見た斜視図である。
【図3】ミラーボックスの斜視図である。
【図4】図3の一部を分解した斜視図である。
【図5】ミラー駆動機構と遮光幕駆動機構の斜視図である。
【図6】図5の左側面図である。
【図7】ギヤGJ,GKの斜視図である。
【図8】ミラー駆動機構と遮光幕駆動機構の動作を示す斜視図である。
【図9】図8の左側面図である。
【図10】焦点板の斜視図である。
【図11】焦点板の断面図と要部の拡大図である。
【図12】EL部の画素の拡大断面図である。
【図13】全体構成のブロック構成図である。
【図14】撮影動作のフローチャートである。
【図15】ELの表示のフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1 カメラ本体
2 撮影レンズ
5 レリーズ釦
12 EL表示釦
20 ミラーボックス
21 メインミラー
25 焦点板
26 結像板
27 EL装置
40 絞駆動機構
50 ミラー駆動機構
60 遮光幕駆動機構
62 遮光幕
GA〜GK ギヤ
PA,PB プーリ
100 CPU
118 EL駆動回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズで撮影する被写体の光学像をメインミラーで反射して焦点板に結像し、結像した光学像をファインダ装置で観察するとともに、前記メインミラーを前記撮影レンズの光路上の位置から退避させて前記被写体を撮像素子で撮像するデジタル一眼レフカメラにおいて、少なくとも前記撮像素子で撮像した画像を前記焦点板に表示するEL(エレクトロルミネッセンス)装置を備え、前記EL装置で表示した画像と前記焦点板に結像された光学像とを前記ファインダ装置で観察可能に構成したことを特徴とするデジタル一眼レフカメラ。
【請求項2】
前記EL装置は前記焦点板と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のデジタル一眼レフカメラ。
【請求項3】
前記EL装置は前記メインミラーを退避位置に駆動したときに前記画像と各種情報を表示し、前記メインミラーが光路上にあるときに各種情報を表示することを特徴とする請求項2に記載のデジタル一眼レフカメラ。
【請求項4】
前記メインミラーと前記焦点板との間に少なくとも焦点板のメインミラー側を覆う遮光幕を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のデジタル一眼レフカメラ。
【請求項5】
前記メインミラーを駆動するミラー駆動機構と前記遮光幕を前記焦点板を覆う領域から進退させる遮光幕駆動機構とを一体化したことを特徴とする請求項4に記載のデジタル一眼レフカメラ。
【請求項6】
前記撮影レンズが防振レンズであるときには前記メインミラーを退避位置に駆動させることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のデジタル一眼レフカメラ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−33701(P2007−33701A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214993(P2005−214993)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】