説明

データ伝送装置、エレベータの群管理システム及びエレベータ装置

【課題】複雑な構造の光学素子を必要とせずに、各装置間で光信号によるデータ伝送を効率的に行う。
【解決手段】伝送制御装置1に光ボックス2を接続する。光ボックス2には、伝送制御装置1から送信されたデータを光信号に変換して送信する光送信器4と、光送信器4に接続され、上記変換後の光信号を複数の通信相手へ伝送するための漏洩光ファイバ5aを備える。また、この光ボックス2内には、各通信相手のそれぞれに接続された漏洩光ファイバ5b,5c,5dと、漏洩光ファイバ5b,5c,5dから個別に放射される漏洩光を受信用の光信号として受光し、これらの光信号を電気信号に変換して伝送制御装置1に渡す光受信器9を備える。これにより、漏洩光ファイバ5a〜5dを用いて、各装置間で光信号によるデータ伝送を効率的に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩光ファイバを用いたデータ伝送装置、エレベータの群管理システム及びエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データ伝送システムを構築する場合に、電磁ノイズの影響を受けにくい光伝送装置が使用される。その伝送形態としては、ループ型やスター型がある。
【0003】
ループ型の場合、伝送装置内に電気/光変換器を備え、装置間で電気信号を光信号に変換して中継していく方式が一般的である。しかし、伝送装置が故障すると、次の伝送装置に光信号を中継できなくなるといった短所がある。
【0004】
また、スター型では、伝送装置から送られてきた光信号を電気信号に変換した後、再度光信号に変換して他の伝送装置に配信するアクティブスターカプラ方式と、伝送装置から送られてきた光信号をN対Nに分岐させた光学素子を使い、光信号のまま他の伝送装置に配信するパッシブスターカプラ方式がある(例えば、特許文献1参照)。電磁ノイズが発生しやすい産業システムでは、光信号のままで伝送可能なパッシブスターカプラ方式が一般的に使われている。
【特許文献1】特開平8−191273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記パッシブスターカプラ方式では、複雑な構造の光学素子が必要であり、また、その光学素子の調整作業に高度な技術を必要とする。さらに、分岐した光学素子で光信号を分配するために、受信側で検出可能な数までしか分岐数を増やせず、接続できる装置数が制限されるといった問題もある。
【0006】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、複雑な構造の光学素子を必要とせずに、各装置間で光信号によるデータ伝送を効率的に行うことのできるデータ伝送装置と、このデータ伝送装置を用いたエレベータの群管理システム及びエレベータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のエレベータの群管理システムは、光信号によるデータの伝送制御を行う伝送制御装置と、この伝送制御装置に接続された光ボックスとからなる。上記光ボックスは、上記伝送制御装置から送信されたデータを光信号に変換して送信する光送信器と、この光送信器に接続され、上記変換後の光信号を複数の通信相手へ伝送するための第1の漏洩光ファイバと、上記各通信相手のそれぞれに接続された複数本の第2の漏洩光ファイバと、これらの第2の漏洩光ファイバから個別に放射される漏洩光を受信用の光信号として受光し、これらの光信号を電気信号に変換して上記伝送制御装置に渡す光受信器とを備えたことを特徴とする。
【0008】
(2)また、本発明のエレベータの群管理システムは、複数台のエレベータを群管理制御する群管理制御装置と、上記各エレベータに対応して設けられ、当該エレベータの運転を制御する複数の号機制御装置とからなるエレベータの群管理システムにおいて、上記群管理制御装置と上記各号機制御装置との間を複数本の漏洩光ケーブルを介してループ状に接続し、上記群管理制御装置から上記各号機制御装置へのデータの送信、あるいは、上記各号機制御装置から上記群管理制御装置へのデータの送信をそれぞれに接続された上記各漏洩光ケーブルを介して光信号にて行い、上記各漏洩光ケーブルから放射される漏洩光を受信側で受信用のデータとして受光することを特徴とする。
【0009】
(3)また、本発明のエレベータ装置は、昇降路内を昇降動作する乗りかごと、この乗りかごの運転を制御する制御盤とを備えたエレベータ装置において、上記昇降路内に上記乗りかごの昇降方向に沿って設けられ、上記制御盤から上記乗りかごへ送信する情報を光伝送する第1の漏洩光ファイバと、上記乗りかごの側面に上記乗りかごの昇降方向に沿って設けられ、上記乗りかごのコントローラから上記制御盤へ送信する情報を光伝送する第2の漏洩光ファイバと、上記昇降路内に上記第2の漏洩光ファイバに対向させて所定の間隔で設けられ、上記乗りかごの移動中に上記第2の漏洩光ファイバから放射される漏洩光を受信用のデータとして受光して上記制御盤に渡す第1の光受信器と、上記乗りかごの側面に上記第1の漏洩光ファイバに対向させて設けられ、上記乗りかごの移動中に上記第1の漏洩光ファイバから放射される漏洩光を受信用のデータとして受光して上記乗りかごのコントローラに渡す第2の光受信器とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、漏洩光ファイバを用いて各装置間を接続することで、複雑な構造の光学素子を必要とせずに、各装置間で光信号によるデータ伝送を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(第1の実施例)
図1は本発明の第1の実施形態に係る漏洩光ファイバを用いたデータ伝送装置の構成を示す図である。
【0013】
このデータ伝送装置は、伝送制御装置1と、この伝送制御装置1に接続された光ボックス2とからなる。伝送制御装置1は、光信号によるデータの伝送制御を行う。光ボックス2には、一対の光送信器4と光受信器9が設けられていると共に、複数本(ここでは4本)の漏洩光ファイバ5a〜5dが収納されている。このうちの1本(漏洩光ファイバ5a)は本装置に接続され、その他(漏洩光ファイバ5b,5c,5d)は通信相手側の伝送制御装置のそれぞれに接続されている。
【0014】
光送信器4は、伝送制御装置1から送信信号線3を介して送られた電気信号を光信号に変換し、漏洩光ファイバ5aに送出する機能を有する。光受信器9は、漏洩光ファイバ5b,5c,5dから放射される漏洩光8b,8c,8dを受光し、これらを受信用のデータとして電気信号に変換して伝送制御装置1に渡す機能を有する。
【0015】
漏洩光ファイバ5aは、光送信器4から通信相手側の伝送制御装置を経由してループ状に配設されており、その終端は当該伝送制御装置1の光ボックス2内に納められている。漏洩光ファイバ5b,5c,5dは、通信相手となる他の各伝送制御装置から個別に延出されたものであり、光ボックス2内の光受信器9に対向させるようにして配設されている。
【0016】
なお、「漏洩光ファイバ」とは、光の屈折率を利用して側面から光を漏洩させるように形成された特殊な光ファイバである。
【0017】
伝送制御装置1から送信用のデータとして出力された電気信号は、光送信器4にて光信号に変換された後、漏洩光ファイバ5aに送出される。この光信号は漏洩光ファイバ5aの中を所定の屈折率を以て進行するが、一部が漏洩光ファイバ5aの側面から漏洩する。図中の6aはその漏洩光を示している。この漏洩光6aは、通信相手側の伝送制御装置にて本装置のデータとして受信される。
【0018】
一方、漏洩光ファイバ5b,5c,5dについても、漏洩光ファイバ5aと同様に、それぞれの側面から光信号の一部が漏洩する。図中の6b,6c,6dはその漏洩光を示している。
【0019】
ここで、漏洩光ファイバ5b,5c,5dの各箇所から放射される漏洩光6b,6c,6dには時間的なずれがあるため、これらを光受信器9にて多数受光してしまうと、後にフィルタリングなどの複雑な処理が必要となる。そこで、漏洩光ファイバ5b,5c,5dの光受信器9に対向する部分に、一対の遮蔽体7a,7bが設けられている。この遮蔽体7a,7bにより、漏洩光ファイバ5b,5c,5dの各箇所から放射される漏洩光6b,6c,6dのうち、光受信器9に対向する部分の漏洩光8b,8c,8d(時間ずれのない漏洩光)が受信用のデータとしてピンポイントで受光可能となる。
【0020】
また、この遮蔽体7a,7bは、自ケーブルである漏洩光ファイバ5aから放射される漏洩光6aを光受信器9から遮断する役割も兼ねている。
【0021】
なお、漏洩光ファイバ5a〜5dを介して伝送される各データ(光信号)には、それぞれに送信元の識別情報が付加されており、受信側では、その識別情報に基づいて送信元を識別することができる。すなわち、図1の例では、光受信器9にて漏洩光8b,8c,8dを受光した場合に、それぞれに付加された識別情報に基づいて、例えば漏洩光8bは装置Bのデータ、漏洩光8cは装置Cのデータ、漏洩光8bは装置Dのデータといったように識別できる。
【0022】
また、光受信器9は、例えばフォトダイオードあるいはホトマルで構成される。「ホトマル」は、光電子増倍管のことであり、光電面、集束電極、電子倍増部、陽極を真空管の中に納めた高感度の光センサのことである。
【0023】
このような構成において、伝送制御装置1は、通信相手となる図示せぬ他の伝送制御装置に対して、制御情報などを含む各種データに自装置の識別情報を付して光ボックス2へ送る。光ボックス2に送られたデータは、光送信器4にて光信号に変換されて漏洩光ファイバ5aの一端面に入射される。この入射された光信号は、漏洩光ファイバ5aを蛇行しながら他端面に向けて進む。その間に、漏洩光ファイバ5aの側面から漏洩光6aが放射される。
【0024】
通信相手側には、図1の光ボックス2と同様の光ボックスが設けられており、上記漏洩光ファイバ5aから放射された漏洩光6aを伝送制御装置1のデータとして受光することができる。
【0025】
一方、データの受信は、光ボックス2内の漏洩光ファイバ5b,5c,5dから放射される漏洩光6b,6c,6dを光受信器9にて受光することで行う。この場合、遮蔽体7a,7bによって、光受信器9に対向した部分の漏洩光8b,8c,8dだけがピンポイントで受光できるので、後にフィルタリング等の処理を行う必要はない。光受信器9にて受光された漏洩光6b,6c,6dは電気信号に変換されて、受信信号線10を介して伝送制御装置1に渡される。
【0026】
このように、本実施形態によれば、複雑な構造の光学素子を必要とせずに、各装置間に配設された漏洩光ファイバを用いて、各種データを光信号のままで高速に通信することが可能となる。この場合、受信側では、1つの光受信器にて各通信相手のデータを受信できるため、従来の光通信のように接続可能な装置数が制限されることもなく、簡単な構造で効率的なデータ伝送を実現できる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0028】
図2は本発明の第2の実施形態に係るデータ伝送装置における光ボックス内の構成を部分的に示した図であり、漏洩光ファイバの光軸方向から見た状態が示されている。なお、図2において、上記第1の実施形態における図1と同じ部分には同一符号を付して、重複する説明は省略するものとする。
【0029】
図1の構成と異なる点は、光ボックス2内に固定台11と集光レンズ12が設けられていることである。固定台11は、各通信相手に接続された漏洩光ファイバ5b,5c,5dを1つに纏めて固定しておくためのものであり、軸方向に所定の間隔を空けて複数配設される。この固定台11は、断面が凹形状のケーブル支持部11a〜11cを有する。漏洩光ファイバ5b,5c,5dは、そのケーブル支持部11a〜11cに嵌め込まれて、水平方向に並べて支持される。
【0030】
集光レンズ12は、光受信器9の前面に設けられ、漏洩光ファイバ5b,5c,5dの側面から放射される受信用の漏洩光8b,8c,8dを集光して光受信器9に与える。図中の13b,13c,13dは、その集光された漏洩光を示している。
【0031】
このような構成において、各通信相手に接続された漏洩光ファイバ5b,5c,5dは、光ボックス2内に設けられた固定台11によって水平方向に支持される。この場合、漏洩光ファイバ5b,5c,5dから放射される漏洩光8b,8c,8dの光強度は、本装置と通信相手との間の伝送距離に応じて異なる。そこで、漏洩光8b,8c,8dの光強度がほぼ一定になるように、固定台11に形成されたケーブル支持部11a〜11cの段差を調整しておくものとする。
【0032】
また、漏洩光ファイバ5b,5c,5dの側面から放射された受信用の漏洩光8b,8c,8dは、集光レンズ12にて集光されて光受信器9に与えられる。これにより、所定の受信レベルを確保できる。光受信器9では、集光レンズ12にて集光された漏洩光13b,13c,13dを受光すると、これを電気信号に変換して伝送制御装置1に渡す。
【0033】
このように、本実施形態によれば、固定台を用いて漏洩光ファイバを支持すると共に、その漏洩光ファイバから放射される漏洩光を集光レンズを介して光受信器に与える構成としたことで、微弱な漏洩光でも安定して受信することができ、また、光受信器の受信感度が狭い範囲でも使用可能となる。
【0034】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0035】
図3は本発明の第3の実施形態に係るデータ伝送装置における光ボックス内の構成を部分的に示した図であり、漏洩光ファイバの光軸方向から見た状態が示されている。なお、図3において、上記第1の実施形態における図1と同じ部分には同一符号を付して、重複する説明は省略するものとする。
【0036】
図1の構成と異なる点は、光ボックス2内に、曲面固定台14が設けられていることである。曲面固定台14は、上記第2の実施形態の固定台11と同様に、各通信相手に接続された漏洩光ファイバ5b,5c,5dを1つに纏めて固定しておくためのものであり、軸方向に所定の間隔を空けて複数配設される。
【0037】
ここで、上記第2の実施形態の固定台11は漏洩光ファイバ5b,5c,5dを光受信器9に対して水平方向に支持する構成であったのに対し、本実施形態の曲面固定台14は、漏洩光ファイバ5b,5c,5dを光受信器9に対して均一に配置するように湾曲形成されている点で異なる。
【0038】
すなわち、この曲面固定台14に形成されたケーブル支持部14a〜14cは、図3に示すように光受信器9に向けて湾曲している。漏洩光ファイバ5b,5c,5dは、これらのケーブル支持部14a〜14cに嵌め込まれて、光受信器9に向けて支持される。
【0039】
このような構成において、各通信相手に接続された漏洩光ファイバ5b,5c,5dは、光ボックス2内に設けられた曲面固定台14によって光受信器9を囲むように支持される。この場合、上記第2の実施形態のように、漏洩光ファイバ5b,5c,5dを水平方向に並べると、両側の漏洩光ファイバ5b,5dから放射される漏洩光8b,8dが光受信器9の受光面に真っ直ぐに入射しないため、十分な受信レベルが得られない可能性がある。
【0040】
これに対し、本実施形態では、漏洩光ファイバ5b,5c,5dが光受信器9を囲むようにして支持されているので、漏洩光ファイバ5b,5c,5dから放射される漏洩光8b,8c,8dが光受信器9の受光面に向けて均等に入射されることになり、十分な受信レベルを確保することができる。光受信器9では、この漏洩光8b,8c,8dを受光すると、これを電気信号に変換して伝送制御装置1に渡す。
【0041】
このように、本実施形態によれば、曲面固定台を用いて漏洩光ファイバを支持する構成としたことで、集光レンズ等の光学部材を必要とせずに、十分な受信レベルを確保することができる。
【0042】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として、本発明の伝送制御装置をエレベータの群管理システムに適用した場合について説明する。
【0043】
図4は本発明の第4の実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成を示す図であり、群管理制御装置と各号機制御装置とを漏洩光ファイバによってループ状に接続した状態が示されている。なお、図4において、上記第1の実施形態における図1と同じ部分には同一符号を付して、重複する説明は省略するものとする。
【0044】
群管理制御装置21は、複数台のエレベータの群管理制御するための制御装置である。この群管理制御装置21には、CPUからなる群管理制御部22の他に、伝送制御装置1とインタフェイス部23が備えられている。群管理制御部22は、例えば乗場呼びの割当制御など、一般的な群管理に関わる制御を行う。この群管理制御部22にインタフェイス部23を介して伝送制御装置1が接続されている。
【0045】
一方、号機制御装置24は、各エレベータの号機に対応して設けられており、群管理制御装置21からの指令に従って当該エレベータの運転を制御する。この号機制御装置24には、CPUからなる制御部25の他に、伝送制御装置1とインタフェイス部26が備えられている。制御部25は、例えば乗りかごの昇降動作を制御したり、着床時にドアの開閉を制御するなど、一般的な運転制御を行う。この制御部25にインタフェイス部26を介して伝送制御装置1が接続されている。
【0046】
伝送制御装置1および光ボックス2は、図1と同様である。すなわち、光ボックス2には、ここでは図示を省略するが、一対の光送信器4と光受信器9が設けられている。また、光ボックス2には、複数本からなる漏洩光ファイバ5が収納されており、そのうちの1本はデータ送信用として光送信器4に接続されており、その他は受信用として光受信器9の近くに配設されている。
【0047】
すなわち、本システムでは、群管理制御装置21と各エレベータの号機制御装置24との間を複数本の漏洩光ファイバ5を介してループ状に接続することにより、互いに光信号でデータを送受信できるように構成されている。
【0048】
なお、漏洩光ファイバ5は、上述したように、その中を通過する光信号の一部を漏洩させるように形成された特殊な光ファイバである。この場合、漏洩光ファイバ5の各部から漏洩光が放出されると、エレベータの各機器類に影響を与える可能性もある。そこで、各装置の接続ポイントつまり光ボックス2内でのみ漏洩光を放出させるように、漏洩光ファイバ5の側面に何らかの材質的な工夫を施しておくことが好ましい。
【0049】
このような構成において、号機制御装置24から送信されたデータは、当該号機制御装置24に対応した光ボックス2にて光信号に変換された後、漏洩光ファイバ5を介して他の号機制御装置24や群管理制御装置21に伝送される。このデータには、当該号機制御装置24の識別情報が付加されているので、受信側では、その識別情報に基づいてデータの送信元を識別することができる。
【0050】
号機制御装置24から出力されるデータとしては、例えば乗場呼びやかご呼びなど、そのエレベータの運転状態を示すデータが主である。群管理制御装置21では、号機制御装置24からのデータを当該群管理制御装置21に対応した光ボックス2を介して受信することにより、当該データに関する所定の処理を実行する。
【0051】
一方、群管理制御装置21から送信されたデータは、当該群管理制御装置21に対応した光ボックス2にて光信号に変換された後、漏洩光ファイバ5を介して各エレベータの号機制御装置24に伝送される。このデータには、当該群管理制御装置21の識別情報が付加されているので、受信側では、その識別情報に基づいてデータの送信元を識別することができる。
【0052】
群管理制御装置21から出力されるデータとしては、例えば乗場呼びの割当情報など、各エレベータの運転を制御するためのデータが主である。号機制御装置24では、群管理制御装置21からのデータを当該号機制御装置24に対応した光ボックス2を介して受信することにより、当該データに関する所定の処理を実行する。
【0053】
このように、本実施形態によれば、漏洩光ファイバを用いて群管理制御装置と各号機制御装置との間を接続して光信号による双方向の通信を行うようにしたことで、パッシブなループ構成の群管理システムを実現できる。
【0054】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態として、本発明の伝送制御装置をエレベータ装置に適用した場合について説明する。
【0055】
図5は本発明の第5の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図であり、エレベータの昇降路内に漏洩光ファイバを配設した状態が示されている。
【0056】
図中の30はビルであり、31はそのビル30に設置されたエレベータの昇降路である。この昇降路31には、乗りかご41が巻上機42の駆動により上下方向に昇降動作可能に設けられている。巻上機42には、ロープ43が巻き掛けられており、そのロープ43の一端に乗りかご41が取り付けられ、他端にカウンタウェイト44が取り付けられている。これにより、巻上機42の回転に伴い、ロープ43を介して乗りかご41とカウンタウェイト44がつるべ式に昇降動作する。
【0057】
また、このエレベータを制御する制御盤32は、号機制御装置33と信号線34を介して接続されている。また、この制御盤32には、信号線35を介して変換器36が接続されている。
【0058】
変換器36は、電気信号から光信号への変換機能と、光信号から電気信号への変換機能を備える。この変換器36には、漏洩光ファイバ37の一端が接続されている。また、この変換器36には、複数の光受信器39a〜39eが信号線38を介してカスケード接続されている。
【0059】
漏洩光ファイバ37は、昇降路31の壁などに乗りかご41の昇降方向に沿って設けられている。光受信器39a〜39eは、昇降路31の壁などに乗りかご41の昇降方向に沿って所定の間隔で設けられている。
【0060】
一方、乗りかご41に設置されたかごコントローラ45には、電気信号から光信号への変換機能と、光信号から電気信号への変換機能が備えられている。このかごコントローラ45には、信号線47を介して漏洩光ファイバ46の一端が接続されている。また、このかごコントローラ45には、2つの光受信器48a,48bが信号線49を介してカスケード接続されている。
【0061】
漏洩光ファイバ46は、乗りかご41の側面に上記光受信器39a〜39eに対向させて昇降方向に設けられている。光受信器48a,48bは、乗りかご41の側面の上下に上記漏洩光ファイバ37に対向させて設けられている。
【0062】
このような構成において、号機制御装置33から指令を受けた制御盤32は、乗りかご41に送信すべき情報を変換器36にて光信号に変換して、昇降路内の漏洩光ファイバ37に送出する。上記情報としては、乗りかご41の運転に関わる制御情報の他に、映像情報やアナウンス情報なども含まれる。
【0063】
変換器36から漏洩光ファイバ37に送出された光信号は、漏洩光ファイバ37の中を所定の屈折率を以て進行するが、一部が漏洩光ファイバ37の側面から漏洩する。図中の50はその漏洩光を示している。この漏洩光50は、乗りかご41の移動中にかご側の光受信器48aまたは受信器48bにて受光されてかごコントローラ45に送られる。かごコントローラ45では、これを電気信号に変換して処理する。
【0064】
一方、乗りかご41から制御盤32に対して送信する情報は、かごコントローラ45にて光信号に変換された後、漏洩光ファイバ46に送出される。上記情報としては、かご呼びや非常呼びなどがある。
【0065】
かごコントローラ45から漏洩光ファイバ46に送出された光信号は、漏洩光ファイバ46の中を所定の屈折率を以て進行するが、一部が漏洩光ファイバ46の側面から漏洩する。図中の51はその漏洩光を示している。この漏洩光51は、乗りかご41の移動中に昇降路31側の光受信器39a〜39eのいずれかにて受光されて変換器36に送られる。変換器36では、これを電気信号に変換して制御盤32に渡す。
【0066】
このように、本実施形態によれば、漏洩光ファイバを用いて制御盤と乗りかごのコントローラとの間を非接触で接続したことで、テールコードのような伝送ケーブルを必要とせずに、各種情報を自由に送受信することができるようになる。
【0067】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る漏洩光ファイバを用いたデータ伝送装置の構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の第2の実施形態に係るデータ伝送装置における光ボックス内の構成を部分的に示した図である。
【図3】図3は本発明の第3の実施形態に係るデータ伝送装置における光ボックス内の構成を部分的に示した図である。
【図4】図4は本発明の第4の実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成を示す図である。
【図5】図5は本発明の第5の実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1…伝送制御装置、2…光ボックス、3…送信信号線、4…光送信器、5a〜5d…漏洩光ファイバ、6a〜6d…漏洩光、7a,7b…遮蔽体、8b〜8d…受信用の漏洩光、9…光受信器、10…受信信号線、11…固定台、11a〜11c…ケーブル支持部、12…集光レンズ、13a〜13d…集光された漏洩光、14…曲面固定台、14a〜14c…ケーブル支持部、21…群管理制御装置、22…制御部、23…インタフェイス部、24…号機制御装置、25…制御部、26…インタフェイス部、30…ビル、31…昇降路、32…制御盤、33…号機制御装置、34…信号線、35…信号線、36…変換器、37…漏洩光ファイバ、38…信号線、39a〜39e…光受信器、41…乗りかご、42…巻上機、43…ロープ、44…カウンタウェイト、45…かごコントローラ、46…漏洩光ファイバ、47…信号線、48a,48b…光受信器、49…信号線、50…漏洩光、51…漏洩光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号によるデータの伝送制御を行う伝送制御装置と、この伝送制御装置に接続された光ボックスとからなり、
上記光ボックスは、
上記伝送制御装置から送信されたデータを光信号に変換して送信する光送信器と、
この光送信器に接続され、上記変換後の光信号を複数の通信相手へ伝送するための第1の漏洩光ファイバと、
上記各通信相手のそれぞれに接続された複数本の第2の漏洩光ファイバと、
これらの第2の漏洩光ファイバから個別に放射される漏洩光を受信用の光信号として受光し、これらの光信号を電気信号に変換して上記伝送制御装置に渡す光受信器と
を備えたことを特徴とするデータ伝送装置。
【請求項2】
上記光受信器は、フォトダイオードからなることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項3】
上記光受信器は、ホトマルからなることを特徴とする請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項4】
上記光ボックスは、
上記各第2の漏洩光ファイバの特定の部分から放射される漏洩光を上記光受信器に受光させるように配設された遮蔽体をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項5】
上記光ボックスは、
上記各第2の漏洩光ファイバを1つに纏めて固定するための固定台と、
この固定台によって固定された上記各第2の漏洩光ファイバから放射される漏洩光を集光して上記光受信器に与える集光レンズと
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項6】
上記固定台は、上記各第2の漏洩光ファイバを所定の間隔で並べて支持するための複数の支持部を有し、上記光受信器に対する上記各第2の漏洩光ファイバの漏洩光の光強度がほぼ一定になるように、上記各支持部の段差が調整されていることを特徴とする請求項5記載のデータ伝送装置。
【請求項7】
上記光ボックスは、
上記各第2の漏洩光ファイバを1つに纏めて固定すると共に、これらから放射される漏洩光が上記光受信器の受光面に向けて均等に入射されるように上記光受信器に向けて湾曲形成された固定台をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のデータ伝送装置。
【請求項8】
複数台のエレベータを群管理制御する群管理制御装置と、上記各エレベータに対応して設けられ、当該エレベータの運転を制御する複数の号機制御装置とからなるエレベータの群管理システムにおいて、
上記群管理制御装置と上記各号機制御装置との間を複数本の漏洩光ケーブルを介してループ状に接続し、
上記群管理制御装置から上記各号機制御装置へのデータの送信、あるいは、上記各号機制御装置から上記群管理制御装置へのデータの送信をそれぞれに接続された上記各漏洩光ケーブルを介して光信号にて行い、
上記各漏洩光ケーブルから放射される漏洩光を受信側で受信用のデータとして受光することを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項9】
上記群管理制御装置と上記各号機制御装置のそれぞれの接続ポイントには光ボックスが設けられており、
上記光ボックスは、
当該装置から送信されたデータを光信号に変換する光送信器と、
この光送信器に接続され、上記変換後の光信号を複数の通信相手へ伝送するための第1の漏洩光ファイバと、
上記各通信相手のそれぞれに接続された複数本の第2の漏洩光ファイバと、
これらの第2の漏洩光ファイバから個別に放射される漏洩光を受信用の光信号として受光し、これらの光信号を電気信号に変換して当該装置に渡す光受信器と
を備えたことを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項10】
昇降路内を昇降動作する乗りかごと、この乗りかごの運転を制御する制御盤とを備えたエレベータ装置において、
上記昇降路内に上記乗りかごの昇降方向に沿って設けられ、上記制御盤から上記乗りかごへ送信する情報を光伝送する第1の漏洩光ファイバと、
上記乗りかごの側面に上記乗りかごの昇降方向に沿って設けられ、上記乗りかごのコントローラから上記制御盤へ送信する情報を光伝送する第2の漏洩光ファイバと、
上記昇降路内に上記第2の漏洩光ファイバに対向させて所定の間隔で設けられ、上記乗りかごの移動中に上記第2の漏洩光ファイバから放射される漏洩光を受信用のデータとして受光して上記制御盤に渡す第1の光受信器と、
上記乗りかごの側面に上記第1の漏洩光ファイバに対向させて設けられ、上記乗りかごの移動中に上記第1の漏洩光ファイバから放射される漏洩光を受信用のデータとして受光して上記乗りかごのコントローラに渡す第2の光受信器と
を具備したことを特徴とするエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−66784(P2008−66784A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239295(P2006−239295)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】