説明

トナー濃度調整システム及び画像形成装置

【課題】湿式現像剤のトナー濃度の代用特性を目標値と比較し、補給を制御することで、調整するに際して、ロットの異なる濃縮現像剤を追加して徐々に補給するような場合にも、濃縮現像剤のロットバラツキや、補給量の違いによるトナー濃度の代用特性の検知結果のズレの影響を受けることなく、トナー濃度を精度よく調整できるトナー濃度調整システム及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1の制御目標値を設定された湿式現像剤に、濃縮現像剤等の補給を行いながら、トナー濃度の代用特性を検知し、補給を制御するトナー濃度調整において、補給される濃縮現像剤ロットについてのトナー濃度代用特性に基づく第2の制御目標値と、その濃縮現像剤ロットの累積補給量とに応じて、第1の制御目標値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーと分散媒を含む湿式現像剤のトナー濃度の代用特性を検知し、その検知結果と制御目標値との比較に基づき、トナー濃度の高い濃縮現像剤、及び分散媒の補給を制御してトナー濃度を調整するトナー濃度調整システム及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体(像担持体)に静電潜像を形成し、それにトナーを付着させて、紙などに転写して定着する電子写真方式の画像形成装置が、広く使用されている。特に、大量プリント用のオフィスプリンタやオンデマンド印刷装置などの、より高画質及び高解像度が要求される画像形成装置では、トナー粒子径が小さく、トナー画像の乱れもおきにくい液体現像剤(湿式現像剤ともいう)を用いる湿式現像方式が用いられるようになってきている。
【0003】
近年では、シリコンオイルなどの絶縁性液体「キャリヤ液(分散媒ともいう)」中に樹脂及び顔料からなる固形分としてのトナーを高濃度に分散させることで構成される、高粘度で高濃度の湿式現像剤を用いる画像形成装置が提案されるようになってきた。
【0004】
この湿式現像剤を用いて現像する際には、現像ローラ等の現像剤担持体上に現像剤のミクロン単位の薄層を形成し、この薄層化された現像剤を潜像形成した感光体に接触させて現像するのが一般的である。
【0005】
感光体表面の潜像は、湿式現像剤の薄層で現像され、感光体表面にトナー画像(キャリヤ液も含む)が形成される。このトナー画像は、記録媒体に転写される。あるいは、一旦中間転写体などに一次転写された後、記録媒体に二次転写される。
【0006】
記録媒体に転写されたトナー画像は、定着装置により加圧、加熱されるなどして、通常は紙である記録媒体に定着される。
【0007】
一方、現像ローラ表面には、現像後もいくらかの湿式現像剤が残留する。この現像残の湿式現像剤(キャリヤ液成分が多い)は、次の画像形成に悪影響を及ぼすため、ブレード等のクリーニング装置によって除去される。
【0008】
現像ローラ上から除去された湿式現像剤は、通常、廃液として回収される場合もあるが、廃棄にあたってはコストを要するとともに、環境負荷も大きい(輸送して、他の場所で再生する、あるいは処理して廃棄する場合も含めて)ため、回収現像剤として再利用される場合も多い。
【0009】
湿式現像剤を用いる現像装置において、現像部で使用した湿式現像剤を回収して再利用する場合、回収された湿式現像剤のトナー濃度は元のトナー濃度から大きくずれている。その状態で使用すると、画像濃度が変化する問題が生じる。
【0010】
そこで、一般的には、回収した湿式現像剤のトナー濃度を検出し、調整することが行われる。
【0011】
しかしながら、トナー濃度の低い湿式現像剤を用いる場合は、光学センサーで直接トナー量を測定できるが、トナー濃度の高い湿式現像剤を用いる場合、透過光量が少なく光学センサーの使用は困難である。
【0012】
そこで、トナー濃度の高い湿式現像剤を用いる場合は、トナー濃度の代用特性として、湿式現像剤の粘度を測定し、トナー濃度を算出する技術が開発された(特許文献1及び2参照)。粘度を測定する手段としては、湿式現像剤を一定速度で撹拌するときに必要なモータの電流を測定する方法が用いられる。
【0013】
特許文献1には、撹拌手段を一定速度で回転させるために必要なトルクを検知し、トナー濃度の代用特性としての粘度を求める装置が開示されている。そこでは、トルク、液体の温度、質量に基づいて演算を行い、トナー濃度を検知している。
【0014】
特許文献2には、やはり撹拌手段を一定速度で回転させるために必要なトルクを検知し、トナー濃度の代用特性としての粘度を求める装置が開示されている。そこには、検知タンクに液量が一定量になるとオーバーフローする開口を設け、湿式現像剤量を一定に保つ技術が含まれている。
【0015】
湿式現像剤の粘度は、湿式現像剤の温度、トナーの粒径や、形状によって影響を受けることにより、同じトナー濃度でも異なった粘度値となってしまうことがある。
【0016】
湿式現像剤の温度による粘度への影響については、温度を測定し、補正をかけることが行われている(特許文献3参照)。
【0017】
一方、湿式現像剤の製造ロット等によってトナーの粒径や形状が変化すると、同じトナー濃度でも湿式現像剤の粘度が異なる場合がある。従ってその状態で、湿式現像剤の粘度を一定に調整しても、トナー濃度としては目標からずれるという不都合が生じる。
【0018】
そこで、そのずれを補正する仕組みが考えられた(特許文献3参照)。
【0019】
特許文献3には、粘度を測定することでトナー濃度を求める装置が開示されている。目標粘度特性を温度によって補正するために作成した基本補正テーブルを、さらに現像剤ごとに補正し、その現像剤の固有補正テーブルを作成する。その固有補正テーブルに基づいてトナー濃度調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2008−309845号公報
【特許文献2】特開2009−2998号公報
【特許文献3】特開2009−69586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、トナー濃度の調整にあたって測定される湿式現像剤の粘度は、湿式現像剤の温度や、製造ロット等によるトナーの粒径や、形状の変動によって影響を受けることにより、同じトナー濃度でも異なった粘度値となってしまう。
【0022】
これに対して、特許文献3のように温度や製造ロット等を考慮して粘度の目標値を補正する技術が開発された。
【0023】
しかしながら、さらに、実際の湿式現像剤のトナー濃度調整時においては、使用している湿式現像剤に、新たに別のロットの濃縮現像剤を補給するため、異なるロットの湿式現像剤が除々に混合されることになる。
【0024】
従って、特許文献3に記載の技術も、湿式現像剤のロットごとにそれぞれ補正し、適切な(粘度)目標値を設定するというだけであり、異なるロットの湿式現像剤が除々に混合される状態には適用できない。
【0025】
ロットごとに補正するとともに、ロットの異なる濃縮現像剤の補給量に応じて適切な(粘度)目標値の補正が必要となる。
【0026】
本発明は、上記の技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、湿式現像剤のトナー濃度の代用特性である粘度を検知して、制御目標値と比較し、濃縮現像剤等の補給を制御することで、トナー濃度を調整するに際して、ロットの異なる濃縮現像剤を追加して徐々に補給するような場合にも、補給する濃縮現像剤のロットバラツキや、補給量の違いによる粘度変化、すなわちトナー濃度の検知結果のズレの影響を受けることなく、トナー濃度を精度よく調整でき、また、調整幅が大きくできるので生産性も向上するトナー濃度調整システム及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0028】
1.トナーと分散媒を含む湿式現像剤を、該湿式現像剤のトナー濃度の代用特性である粘度を所定の基準トナー濃度に対応する第1の制御目標値に調整するために収容するトナー濃度調整槽と、
前記トナー濃度調整槽内の前記湿式現像剤のトナー濃度の代用特性である粘度を検知する濃度検知手段と、
前記トナー濃度調整槽に前記基準トナー濃度よりトナー濃度の高い濃縮現像剤を補給する濃縮現像剤補給手段と、
前記トナー濃度調整槽に分散媒を補給する分散媒補給手段と、
前記濃度検知手段による粘度の検知結果と前記第1の制御目標値との比較に基づき、前記粘度が前記第1の制御目標値に近づくように、前記濃縮現像剤、及び前記分散媒の補給を制御する補給制御手段と、
を有するトナー濃度調整システムにおいて、
前記補給制御手段は、
前記濃縮現像剤の累積補給量を計測する補給量計測手段を有し、
前記濃縮現像剤を前記基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する第2の制御目標値と、前記補給量計測手段により計測された当該濃縮現像剤の累積補給量とから、トナー濃度調整の前記第1の制御目標値を補正する
ことを特徴とするトナー濃度調整システム。
【0029】
2.前記濃度検知手段は、モータにより攪拌部材を回転させ、前記トナー濃度調整槽内の前記湿式現像剤を撹拌するトルクとしてのモータ電流値を測定することにより粘度特性を検知する
ことを特徴とする前記1に記載のトナー濃度調整システム。
【0030】
3.前記濃縮現像剤を収容する濃縮現像剤槽と、
前記濃縮現像剤槽内に、新たに濃縮現像剤が収容されたときに、当該濃縮現像剤のトナー濃度として粘度を検知する濃縮現像剤濃度検知手段と、を有し、
前記補給制御手段は、前記濃縮現像剤濃度検知手段により検知された前記濃縮現像剤の粘度に基づいて、当該濃縮現像剤を前記基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する前記第2の制御目標値を算出する
ことを特徴とする前記1または2に記載のトナー濃度調整システム。
【0031】
4.前記補給制御手段は、前記トナー濃度調整槽内に、希釈された前記濃縮現像剤が収容されたときに、前記濃度検知手段により検知された前記希釈された濃縮現像剤の粘度に基づいて、当該濃縮現像剤を前記基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する前記第2の制御目標値を算出する
ことを特徴とする前記1または2に記載のトナー濃度調整システム。
【0032】
5.前記補給制御手段は、前記濃縮現像剤の容器に付属した記録装置から、工場出荷時に予め記録された当該縮現像剤を前記基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する前記第2の制御目標値を読み取る
ことを特徴とする前記1または2に記載のトナー濃度調整システム。
【0033】
6.トナーと分散媒を含む湿式現像剤を用いて、像担持体上の潜像を現像し、トナー像を形成する湿式現像装置を備えた画像形成装置であって、
前記1から5の何れか1項に記載のトナー濃度調整システムを備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、第1の制御目標値を設定された湿式現像剤に、濃縮現像剤等の補給を行いながらトナー濃度の代用特性である粘度を検知し、所定の基準トナー濃度に対応する第1の制御目標値との比較に基づき、濃縮現像剤等の補給を制御するトナー濃度調整において、補給される濃縮現像剤ロットについて基準トナー濃度に希釈したときの粘度特性に基づく第2の制御目標値と、その濃縮現像剤ロットの累積補給量とに応じて、第1の制御目標値を補正する。
【0035】
これにより、ロットの異なる濃縮現像剤を追加して徐々に補給するような場合にも、補給する濃縮現像剤のロットバラツキや、補給量の違いによる粘度変化、すなわちトナー濃度の検知結果のズレの影響を受けることなく、トナー濃度を精度よく調整でき、また、調整幅が大きくできるので生産性も向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】湿式画像形成装置の概略構成例、すなわち湿式現像剤を用いた電子写真プロセスの概略を示す構成図である。
【図2】図1における現像部と回収現像剤の濃度調整部の詳細な構成例を示す構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るトナー濃度調整システムの概略機能構成例を示すブロック図である。
【図4】トナー濃度調整槽9の構造を示す図である。湿式現像剤がオーバーフローするための開口部28が設けられている。
【図5】湿式現像剤の粘度と、攪拌モータ21を一定速度で回転するときに必要な電流の関係を示すグラフである。
【図6】湿式現像剤のトナー濃度と、攪拌モータ21の電流の関係を示すグラフである。
【図7】湿式現像剤の温度と、攪拌モータ21の電流の関係を示すグラフである。
【図8】ロットの異なる湿式現像剤に対する、温度と、攪拌モータ21の電流の関係を示すグラフである。
【図9】ロットの差があるトナー補給によるトナーの入れ替わり率と、トナー濃度の関係を示すグラフである。
【図10】濃縮現像剤の補給量に対する湿式現像剤中のトナーの入れ替わり率を示すグラフである。
【図11】基準トナー濃度の湿式現像剤について、温度と検知電流の関係を表すテーブル作成の手順を示すフローチャートである。
【図12】トナー濃度の高い濃縮現像剤について、温度と検知電流の関係を表すテーブル作成の手順を示すフローチャートである。
【図13】基準温度の湿式現像剤について、トナー濃度と検知電流の関係を表すテーブル作成の手順を示すフローチャートである。
【図14】濃縮現像剤を新たに補給するときの(第2の)制御目標値を設定する処理手順を示すフローチャートである。
【図15】トナー濃度調整システムにおけるトナー濃度制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図を参照して本発明に係るトナー濃度調整システム及び該トナー濃度調整システムを備えた画像形成装置の実施形態を説明する。
【0038】
(湿式画像形成装置の概略構成と動作)
図1は、湿式画像形成装置の概略構成例、すなわち湿式現像剤を用いた電子写真プロセスの概略を示す構成図である。図1を用いてトナー濃度調整システムを備えた湿式画像形成装置の概略構成と動作の例を説明する。
【0039】
図1において、1は像担持体としての感光体であり、図中A方向に回転する。
【0040】
感光体1は帯電装置14により一様の電位に帯電される。その後露光装置15により露光され、画像部の電位が減衰し、静電潜像が形成される。
【0041】
静電潜像が形成された感光体1表面は、上記回転により現像ローラ2との対向部である現像部に運ばれる。
【0042】
現像部では現像ローラ2上の湿式現像剤7が感光体1に接触し、静電潜像を現像する。
【0043】
湿式現像剤7は着色剤と樹脂からなるトナー粒子とその粒子を分散させる分散媒とからなる。現像ローラ2上のトナー粒子は帯電しており、感光体1上の画像部ではトナー粒子が静電的に感光体1側に移動し、非画像部では現像ローラ2側に移動する。
【0044】
感光体1上に現像されたトナー粒子は、転写ローラ17との対向部である転写部に運ばれる。
【0045】
転写部では被転写材16が矢印D方向に搬送され、転写ローラ17に印加されたトナー粒子と逆極性の電圧により、感光体1上のトナー粒子は被転写材16に転写される。トナー粒子が転写された被転写材16は定着部(図示せず)に搬送されトナー像が定着される。
【0046】
一方、転写部を通過した後の感光体1に対向して、クリーニング手段12が設けられており、転写後に残った転写残トナー粒子と分散媒を回収する。
【0047】
トナー粒子と分散媒が回収された感光体1は、イレーサランプ13により露光され、潜像電位がキャンセルされる。
【0048】
また現像部を通過した後の現像ローラ2上には、現像されずに残ったトナー粒子や分散媒が存在するため、それらを取り除くためのクリーニングブレード4と、ブレード4で回収した現像剤を溜めておく回収槽8が設けられている。
【0049】
これらの工程を繰り返し行うことで、次々に画像が印字される。
【0050】
図2は、現像部と回収現像剤の濃度調整部100の詳細な構成例を示す構成図である。次に図2を用いて、現像部とトナー濃度調整部100の構成と動作の例について詳細に述べる。
【0051】
<現像部構成と動作>
現像部について説明する。
【0052】
着色剤と樹脂からなるトナー粒子とその粒子を分散させる分散媒とからなる湿式現像剤7が、湿式現像剤槽6中に貯留されている。
【0053】
汲み上げローラ3はその一部が湿式現像剤7中に浸漬されており、矢印E方向への回転により湿式現像剤7を汲み上げる。
【0054】
汲み上げローラ3には湿式現像剤7を一定の厚みに規制するための規制部材5が設けられており、汲み上げられた湿式現像剤7の厚みは一定になる。汲み上げローラ3に表面に凹部を設けた金属ローラ(アニロックスローラ)を用いることで湿式現像剤量を正確に規制することが可能となる。
【0055】
規制部材5により一定の量に規制された後、汲み上げローラ3上の湿式現像剤7は現像ローラ2とのニップ部に運ばれ、現像ローラ2へと受け渡される。現像ローラ2は図中矢印B方向に回転しており、汲み上げローラ3とのニップ部ではそれぞれの表面が同じ方向に移動している。
【0056】
現像ローラ2に受け渡された湿式現像剤7は、感光体1とのニップ部に運ばれ、現像される。
【0057】
現像後の感光体1上には画像部にトナー粒子と分散媒が付着し、非画像部には分散媒のみが付着している。逆に現像後の現像ローラ2上には画像部に分散媒のみが付着し、非画像部にはトナー粒子と分散媒が付着している。
【0058】
この状態で現像ローラ2に新しい湿式現像剤7が供給されると、現像ローラ2上のトナー量にムラが生じ、画像ノイズとなる。それを防ぐために現像後の現像ローラ2上には現像で使われなかった湿式現像剤7を回収するためのブレード4が設けられ、ブレード4で回収された湿式現像剤は回収現像剤として回収槽8に溜められる。
【0059】
ブレード4により回収され、回収槽8に溜められた湿式現像剤は、回収現像剤として再利用されるが、現像部を通過することで元の現像剤とトナー濃度が異なっている。
【0060】
その回収現像剤を湿式現像剤槽6に戻すと、その中の湿式現像剤のトナー濃度が変化してしまうため、回収現像剤は湿式現像剤槽6には戻さず、トナー濃度調整のためにトナー濃度調整槽9に送られる。
【0061】
次にトナー濃度調整槽9を中心としたトナー濃度調整部100について説明する。トナー濃度調整部100は、トナー濃度調整システムとして機能する。
【0062】
(第1の実施形態)
<トナー濃度調整システムの機能構成>
図3は、本発明の第1の実施形態に係るトナー濃度調整システムの概略機能構成例を示すブロック図である。図3を用いて第1の実施形態に係るトナー濃度調整システムの概略機能構成例を説明する。
【0063】
図3において、101はトナー濃度調整槽である。トナーと分散媒を含む湿式現像剤を収容し、トナー濃度調整槽101内で湿式現像剤のトナー濃度の代用特性である粘度を所定の基準トナー濃度に対応する第1の制御目標値になるよう調整する。
【0064】
102は分散媒槽である。トナー濃度調整槽101内のトナー濃度(粘度)が第1の制御目標値より高いときに補給するための分散媒を収容する。
【0065】
103は濃縮現像剤槽である。トナー濃度調整槽101内のトナー濃度(粘度)が第1の制御目標値より低いときに補給するため、トナー濃度が基準トナー濃度より高い濃縮現像剤を収容する。
【0066】
104は分散媒補給手段である。トナー濃度調整槽101内のトナー濃度(粘度)が第1の制御目標値より高いときに、後述する補給制御部110の指示に従い、分散媒槽102から分散媒を補給する。
【0067】
105は濃縮現像剤補給手段である。トナー濃度調整槽101内のトナー濃度(粘度)が第1の制御目標値より低いときに、後述する補給制御部110の指示に従い、濃縮現像剤槽103から濃縮現像剤を補給する。
【0068】
106は濃度検知手段である。トナー濃度調整槽101内の湿式現像剤のトナー濃度を検知する。実際は制御目標値と比較可能な代用特性(粘度)を検知する。
【0069】
107は濃縮現像剤濃度検知手段である。濃縮現像剤に対して基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する第2の制御目標値を算出するために、濃縮現像剤槽103内の濃縮現像剤の粘度を検知する。トナー濃度調整槽101内の湿式現像剤のトナー濃度と同様の代用特性(粘度)を用いる。
【0070】
110は補給制御手段である。トナー濃度調整槽101内の湿式現像剤のトナー濃度を調整するため、濃度検知手段106によるトナー濃度(粘度)検知結果を制御目標値と比較して、濃縮現像剤や分散媒の補給を制御する。またそのための制御目標値の算出や補正も行う。
【0071】
補給制御手段110には、以下のような機能が含まれる。
【0072】
111は制御部である。例えばCPUが実装され、補給制御部110の備える各機能を統括して制御する。特にトナー濃度調整槽101内の湿式現像剤のトナー濃度調整のために、濃度検知手段106によるトナー濃度(粘度)の検知結果を後述する補正された第1の制御目標値と比較し、濃縮現像剤補給手段105または分散媒補給手段104に指示し、濃縮現像剤もしくは分散媒の補給を行う。
【0073】
112は制御目標値算出部である。特に新たに使用する濃縮現像剤槽103内の濃縮現像剤について、濃縮現像剤濃度検知手段107によるトナー濃度(粘度)の検知結果から、基準温度の補正等を行い、濃縮現像剤としての基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する第2の制御目標値を算出する。
【0074】
113は制御目標値補正部である。特にトナー濃度調整槽101内の湿式現像剤についての第1の制御目標値を、補給する濃縮現像剤に対しての第2の制御目標値と、後述する補給量計測手段115による濃縮現像剤の累積補給量に基づいて補正する。
【0075】
115は補給量計測手段である。制御目標値補正部113で第1の制御目標値を補正するために必要な、濃縮現像剤補給手段105による濃縮現像剤の累積補給量を計測する。
【0076】
120はテーブル等記憶部である。制御部111が統括して処理する上記各処理に必要な値や数値テーブル、換算式等を記憶し、必要に応じて参照する。なお記憶部は、補給制御手段110の外部に設けられていてもよい。
【0077】
以上、概略を述べた補給制御手段110の各機能の詳細は、トナー濃度制御の手順として後述する。
【0078】
<トナー濃度調整部構成と動作>
図2に戻って、トナー濃度調整部の具体的な構成と動作の例を説明する。
【0079】
ブレード4により回収され、回収槽8に溜められた湿式現像剤は、回収現像剤として再利用される。回収現像剤はトナー濃度調整のためにトナー濃度調整槽9(図3の101)に送られる。
【0080】
トナー濃度調整槽9には攪拌部材20が設けられており、モータ21の回転により収容された湿式現像剤を攪拌する。モータ21は一定の回転数で回転するように制御されており、そのときの電流値を検知する電流検知装置22が設けられている。
【0081】
攪拌部材20、モータ21、電流検知装置22は濃度検知手段(図3の106)として機能する。回転負荷としての電流値により、トナー濃度の代用特性として粘度特性を計っている。詳細は後述する。
【0082】
トナー濃度調整槽9には湿式現像剤がオーバーフローするための開口部28が設けられており(図4参照)、オーバーフローした湿式現像剤は容器27に回収される。この容器27に回収された湿式現像剤は再びトナー濃度調整槽9に戻される。オーバーフローさせることで、攪拌時のトナー濃度調整槽9中の湿式現像剤量は一定となる。
【0083】
トナー濃度(粘度)検知は現像剤がオーバーフローしている状態(現像剤量が一定に制御された状態)で行われる必要がある。またトナー濃度調整槽9には湿式現像剤の温度を測定する温度検知装置29が設けられている。
【0084】
トナー濃度調整槽9には、トナー濃度が高い濃縮現像剤を貯蔵する濃縮現像剤槽10(図3の103)と、分散媒を貯蔵する分散媒槽11(図3の102)が接続されており、後述するトナー濃度(粘度)検知により現像剤中のトナー濃度が高いと判定された場合には分散媒補給装置33により分散媒が、低いと判定された場合には濃縮現像剤補給装置32により濃縮現像剤が補給される。
【0085】
分散媒補給装置33は分散媒補給手段(図3の104)として、濃縮現像剤補給装置32は濃縮現像剤補給手段(図3の105)として機能する。
【0086】
濃縮現像剤槽10には、トナー濃度調整槽9と同様に攪拌部材24、モータ25、モータ電流検知装置26、温度検知装置30が設けられている。これらは濃縮現像剤濃度検知手段(図3の107)として機能する。
【0087】
トナー濃度調整槽9でトナー濃度が調整された湿式現像剤は、再び湿式現像剤槽6に戻され、現像に使用される。
【0088】
トナー濃度調整槽9でトナー濃度を調整しているときは、回収槽8や容器27からトナー濃度調整槽9に現像剤を入れないことが好ましい。
【0089】
<粘度によるトナー濃度検知について>
湿式現像剤は分散媒中に固形分であるトナー粒子を分散しており、トナー濃度は湿式現像剤に対するトナー粒子の質量比で示される。
【0090】
トナー濃度が高いと分散媒に対するトナー量が多く、湿式現像剤の粘度が大きくなる。逆にトナー濃度が低いと分散媒に対するトナー量が少なく、湿式現像剤の粘度は低くなる。すなわち、湿式現像剤のトナー濃度は湿式現像剤の粘度を測定することで代用可能である。
【0091】
図5に湿式現像剤の粘度と、攪拌モータ21を一定速度で回転するときに必要な電流の関係を示す。電流は図2中に示した電流検知装置22で検知している。湿式現像剤の粘度が大きくなると、攪拌部材20で攪拌するときの負荷が増加し、一定の回転数で攪拌するためのモータ21の消費電流が大きくなる。
【0092】
図5から明らかなように湿式現像剤の粘度と攪拌モータ21の消費電流には比例関係があり、攪拌モータ21の電流を電流検知装置22で検知することで湿式現像剤の粘度を測定できることが分かる。
【0093】
同様に、湿式現像剤のトナー濃度と攪拌モータ21の電流の関係を図6に示す。湿式現像剤のトナー濃度についても攪拌モータ21の電流で検知することが可能である。
【0094】
<トナー濃度調整について>
電流検知装置22で検知された攪拌モータ21の電流値は、制御装置31により制御目標値(目標とする基準トナー濃度のときの電流値)と比較される。制御装置31は補給制御手段(3の110)として機能する。
【0095】
その結果、制御目標値より低い、すなわちトナー濃度が基準トナー濃度より低いと判断された場合、濃縮現像剤槽10中の濃縮現像剤がトナー濃度調整槽9に補給される。
【0096】
逆に攪拌モータ21の電流値が制御目標値より高い、すなわちトナー濃度が基準トナー濃度より高いと判断された場合、分散媒槽11中の分散媒がトナー濃度調整槽9に供給される。
【0097】
これらの動作は、攪拌モータ21の電流が目標値に一致する、あるいは一定の範囲に収まるまで繰り返し実施される。そうすることでトナー濃度調整槽9中の湿式現像剤のトナー濃度は一定の値(基準トナー濃度)に調整される。
【0098】
トナー濃度が調整された湿式現像剤は湿式現像剤槽6に運ばれる。
【0099】
<トナー濃度測定の誤差について>
ところが同じトナー濃度でも湿式現像剤の温度が異なるとモータ21の検知電流は図7のように異なってしまう(図7の3本のラインはトナー濃度が異なる)。これは湿式現像剤の温度が変わると、湿式現像剤中の分散媒の粘度が変化することで生じる。
【0100】
温度が高くなると分散媒の粘度が低くなり、湿式現像剤の粘度も低くなる。逆に温度が低くなると分散媒の粘度が高くなり、湿式現像剤の粘度も高くなる。この差を補正するには、『湿式現像剤の温度を一定(基準温度)に保つ』あるいは『現像剤温度を測定し、その温度に応じて、電流の目標値を基準温度での目標値に補正する』等の手段が必要となる。
【0101】
また、製造ロットによっても湿式現像剤の物性は変化する。特に、トナー粒子については同じように製造しても、製造時の周囲の環境や樹脂の材料、分散状態、顔料差などにより、粒径や形状にバラツキが生じる。
【0102】
トナー粒子の粒径や形状がバラツクと、同じトナー濃度でも湿式現像剤の粘度が異なり、その結果として攪拌モータ21の電流値も異なる(図8参照、ラインa、b、cは製造ロットが異なる)。湿式現像剤の粘度がばらついた状態で、攪拌モータ21の電流値すなわち粘度を一定の制御目標値に制御すると、結果として湿式現像剤のトナー濃度がばらついてしまう。
【0103】
さらに、実際には湿式現像剤に対して異なるロットの濃縮現像剤を補給していくため、濃縮現像剤が補給されるごとに湿式現像剤中のトナー粒子が入れ替わる。よって濃縮現像剤が補給されるごとに、ロットのばらつきにより、同じトナー濃度でも湿式現像剤の粘度が変化する。
【0104】
例えば、図8中の湿式現像剤bに対して、湿式現像剤cを補給していく場合、湿式現像剤bのままの検知電流の制御目標値に合わせてトナー濃度を制御し、補給していくと、実際のトナー濃度は図9に示すように変化してしまう(図9において入れ替わり率100%とは元のトナー(湿式現像剤b)がすべて消費され、すべてのトナーが新しく補給されたもの(湿式現像剤c)になる状態を示す)。
【0105】
そこで、現像剤cの補給量(トナーの入れ替わり率)に応じて検知電流の制御目標値を補正する必要がある。
【0106】
<検知電流の目標値の補正について>
濃縮現像剤の補給量に対する湿式現像剤中のトナーの入れ替わり率を図10に示す。ラインL3は湿式現像剤総量が3Lの場合、ラインL5は5Lの場合を表す。
【0107】
濃縮現像剤を補給する場合、補給されたトナーも消費される。よって湿式現像剤中のトナーが補給されたトナーに100%入れ替わるためには多量のトナーを補給することが必要となる。実際は、濃縮現像剤槽10の容量はそれほど大きくなく、湿式現像剤中のトナーが100%入れ替わる可能性は低い。
【0108】
また、入れ替わり率は、湿式現像剤槽6、トナー濃度調整槽9中の湿式現像剤量に依存し、例えば湿式現像剤槽6、トナー濃度調整槽9中の湿式現像剤量の合計が3L、湿式現像剤のトナー濃度が25質量%の場合、図10中の実線(L3)のような入れ替わり性を示す。
【0109】
よって、濃縮現像剤の補給量をモニターすることで、図10を元に現在の入れ替わり率を求めることができる(図10中の補給トナー量は、補給された濃縮現像剤中のトナー量を示しており、濃縮現像剤の量に換算するには濃縮現像剤のトナー濃度で割ればよい)。
【0110】
入れ替わり率が求まると、元々の現像剤での制御目標値を第1の制御目標値、補給する現像剤で求めた制御目標値を第2の制御目標値として、以下の式により制御の目標値を補正することができる。
補正された第1の制御目標値=現状の第1の制御目標値+(第2の制御目標値−現状の第1の制御目標値)*入れ替わり率
これらの演算は、補給制御手段としての制御装置31(図3の制御目標値補正部113)により行われる。
【0111】
また制御装置31は、補給量計測手段(図3の115)としても機能し、入れ替わり率を算出するため、濃縮現像剤補給量をモニターし、累積補給量を算出する。
【0112】
また制御装置31は、濃縮現像剤に対する第2の制御目標値を算出する機能(図3の制御目標値算出部112)を有する。この第2の制御目標値の算出について、以下に説明する。
【0113】
<補給する濃縮現像剤に対する第2の制御目標値算出>
濃縮現像剤がなくなった場合、湿式現像剤7よりトナー濃度が高く、トナー濃度の明らかな新しい濃縮現像剤が濃縮現像剤槽10に一定量補給される。
【0114】
濃縮現像剤槽10にはトナー濃度調整槽9と同様に攪拌部材24と撹拌モータ25、さらに撹拌モータ25を一定速度で回転させるために必要な電流を検知する電流検知装置26、濃縮現像剤の温度検知装置30が設けられている。
【0115】
新しい濃縮現像剤が濃縮現像剤槽10に補給されたとき、以下のステップで、補給される濃縮現像剤を基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する第2の制御目標値としての電流値を求める。濃縮現像剤は、湿式現像剤7に対してトナー濃度が高いため、湿式現像剤7と同じトナー濃度(基準トナー濃度相当)に変換した場合の制御目標としての電流値を算出する必要がある。
1.濃縮現像剤の温度を測定する。
2.撹拌モータ25により攪拌部材24を一定の速度で回転させ、そのときに必要な電流を電流検知装置26で検知する。
3.濃縮現像剤の温度と、検知された電流と、図7の濃縮現像剤のトナー濃度における、湿式現像剤温度と電流値の関係(テーブルデータとして記憶部120に予め保持)から、濃縮現像剤のトナー濃度時における基準温度時の電流値を求める。
4.図6の基準温度のときのトナー濃度と電流値の関係(これもテーブルデータとして記憶部120に予め保持)より、湿式現像剤7と同じトナー濃度(基準トナー濃度相当)に希釈した際の第2の制御目標値としての電流値を求める。
【0116】
以上の詳細手順は後述する。
【0117】
上記では濃縮現像剤槽10での温度を測定する場合について述べたが、濃縮現像剤槽10の周囲に温調機を設け、濃縮現像剤の温度を一定に保つようにすれば、温度の補正はしなくてもよい。
【0118】
<補正テーブルの作成について>
上記の制御目標値の補正の処理のためなどに必要となる、各種の補正のためのテーブルデータの作成方法について説明する。これらのテーブルデータは、トナー濃度制御の手順で用いるため、記憶部23(図3のテーブル等記憶部120)に記憶される。
【0119】
(1)粘度特性(検知電流)の温度補正のためのテーブル
図11は、基準トナー濃度の湿式現像剤について、温度と検知電流の関係を表すテーブル作成の手順を示すフローチャートである。
【0120】
まずステップS11で、基準トナー濃度の湿式現像剤(基準現像剤)を用意する。
【0121】
次にステップS12では、上記基準現像剤を当該トナー濃度調整システムと同仕様のトナー濃度調整槽に入れる。
【0122】
ステップS13で、トナー濃度調整槽内の基準現像剤温度を変化させながら、基準現像剤温度を測定する。また、温度測定と同時に、基準現像剤を攪拌し電流値を測定する。
【0123】
ステップS14で、基準トナー濃度の湿式現像剤についての温度と電流値(粘度)の関係を示すテーブルを作成する。図7に示すような相関が得られる。
【0124】
ステップS15で、ステップS14で得られたテーブルを各トナー濃度調整部の記憶部23に記憶させる。
【0125】
(2)濃縮現像剤の温度補正のためのテーブル
図12は、トナー濃度の高い濃縮現像剤について、温度と検知電流の関係を表すテーブル作成の手順を示すフローチャートである。濃縮現像剤と同じトナー濃度の湿式現像剤を用いる以外は、基準トナー濃度の湿式現像剤についての温度補正テーブル作成(図11)と同じである。
【0126】
まずステップS21で、濃縮現像剤と同じトナー濃度の湿式現像剤を用意する。
【0127】
次にステップS22では、上記湿式現像剤を当該トナー濃度調整システムと同仕様のトナー濃度調整槽に入れる。
【0128】
ステップS23で、トナー濃度調整槽内の湿式現像剤温度を変化させながら、湿式現像剤温度を測定する。また、温度測定と同時に、湿式現像剤を攪拌し電流値を測定する。
【0129】
ステップS24で、濃縮現像剤についての温度と電流値(粘度)の関係を示すテーブルを作成する。図7に示すような相関が得られる。
【0130】
ステップS25で、ステップS24で得られたテーブルを各トナー濃度調整部の記憶部23に記憶させる。
【0131】
(3)粘度特性(検知電流)のトナー濃度補正のためのテーブル
図13は、基準温度の湿式現像剤について、トナー濃度と検知電流の関係を表すテーブル作成の手順を示すフローチャートである。
【0132】
まずステップS31で、あるトナー濃度に調合した湿式現像剤を用意する。
【0133】
次にステップS32では、:当該トナー濃度調整システムと同仕様のトナー濃度調整槽に上記湿式現像剤を入れる。
【0134】
ステップS33で、トナー濃度調整槽内の湿式現像剤温度を基準温度に保つ。
【0135】
ステップS34で、トナー濃度調整槽内の湿式現像剤温度を基準温度に保ちながら湿式現像剤を攪拌し、そのときの電流値を測定する。
【0136】
ステップS35で、トナー濃度を変えた湿式現像剤を複数調合し、それぞれにおいてステップS32〜ステップS34を繰り返す。
【0137】
ステップS36で、それぞれのトナー濃度と、そのときの電流値の関係をまとめ、基準温度の湿式現像剤についてのトナー濃度と電流値(粘度)の関係を示すテーブルを作成する。図6に示すような相関が得られる。
【0138】
ステップS37で、ステップS36で得られたテーブルを各トナー濃度調整部の記憶部23に記憶させる。
【0139】
上記3つの補正テーブルは、当該トナー濃度調整システムを備えた装置の工場出荷前に作成され、各装置の記憶部23に記録されている。
【0140】
<濃縮現像剤の新規補給時の処理手順について>
図14は、濃縮現像剤を新たに濃縮現像剤槽10に補給したときの(基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する第2の)制御目標値を設定する処理手順を示すフローチャートである。図14を用いて、濃縮現像剤について(第2の)制御目標値を設定する処理手順を説明する。
【0141】
まずステップS41で、空の濃縮現像剤槽10に新しい濃縮現像剤を一定量補給する。
【0142】
次にステップS42では、温度検知装置30により、濃縮現像剤槽10中の濃縮現像剤の温度を測定する。
【0143】
ステップS43で、モータ25により攪拌部材24を一定速度で回転させ、そのときに流れる電流を電流検知手段26により検知する。
【0144】
ステップS44で、図12のステップS25にて記憶部23上に記憶させた温度補正テーブルを参照し、基準温度のときの濃縮現像剤の電流値を補正して算出する。トナーの製造ロットによって濃縮現像剤の温度と電流の関係からずれるが、温度と電流の傾きから基準温度のときの電流値(粘度)を算出する。
【0145】
ステップS45で、図13のステップS37にて記憶部23上に記憶された基準温度のときのトナー濃度補正テーブルを参照し、濃縮現像剤を湿式現像剤7と同じトナー濃度に希釈したときの電流値を目標電流値として算出する。これが補給される濃縮現像剤の(第2の)制御目標値となる。これもトナーのロットによってずれるが、傾きから算出する。
【0146】
ステップS46で、補給される濃縮現像剤の(第2の)制御目標値を記憶部23に記憶させる。
【0147】
<トナー濃度制御の処理手順>
図15は、トナー濃度調整システムにおけるトナー濃度制御の処理手順を示すフローチャートである。図15を用いて、トナー濃度制御の処理手順を説明する。
【0148】
まずステップS51で、濃縮現像剤槽10にセットされてから今回の調整制御までに湿式現像剤7に補給された、濃縮現像剤の累積補給量を算出する。
【0149】
次にステップS52では、記憶部23上のテーブルを参照し、濃縮現像剤の補給量から、湿式現像剤7に対して補給されたトナーの入れ替わり率を算出する。
【0150】
ステップS53で、ステップS52にて求めた入れ替わり率と、現状の(第1の)制御目標値と、図14のステップS46で記憶部に記憶させた補給される濃縮現像剤の(第2の)制御目標値より、トナーの入れ替わりによる電流値のずれを補正し、補正された(第1の)制御目標値を求める。
【0151】
ステップS54で、トナー濃度調整槽9中の湿式現像剤の温度を温度検知装置29により測定する。
【0152】
ステップS55で、モータ21により攪拌部材20を一定速度で回転させ、そのときに必要な電流を電流検知手段22により検知する。
【0153】
ステップS56で、図11のステップS15にて記憶部に記憶させた温度補正テーブルを参照し、測定中の湿式現像剤の基準温度での電流値(粘度)を算出する。
【0154】
ステップS57及びステップS58で、ステップS56にて求めた電流値とステップS53にて求めた補正後の制御目標値を比較する。
【0155】
その結果、制御目標値に対して現在の電流値が高い場合、ステップS59に進み分散媒槽11から分散媒を補給する。
【0156】
逆に制御目標値に対して現在の電流値が低い場合、濃縮現像剤槽10から濃縮現像剤を補給する。
【0157】
その後、再びステップS54またはステップS51に戻り、制御目標値に合うまで上記手順が繰り返される。
【0158】
最終的に制御目標値と現在の電流値が等しくなれば、制御を終了する。
【0159】
もちろん、電流値の制御目標値は一定の値でなく、幅を持たせてもよい。その際、その幅の中に現在の制御の電流値が入れば制御を終了する。
【0160】
また、濃縮現像剤の補給に対する制御目標値の補正は、濃縮現像剤が補給されるごとに行ってもよいが、一定量補給されたときに行ってもよい。
【0161】
また、本実施形態では温度検知手段を用いて温度を検知し、電流値を補正する場合について述べたが、湿式現像剤7や濃縮現像剤の温度を一定に保つように制御してもかまわない。
【0162】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、濃縮現像剤槽10中に濃縮現像剤濃度検知手段、すなわち攪拌部材24や、モータ25、電流検知手段26を設けて濃縮現像剤の特性を測定する場合を提示した。
【0163】
第2の実施形態では、濃縮現像剤槽10では検知を行わず、トナー濃度調整槽9を用いて濃縮現像剤の特性を測定する場合について説明する。従ってトナー濃度調整システムの機能構成(図3参照)において濃縮現像剤濃度検知手段107は必要ない。
【0164】
トナー濃度制御の手順はほとんど同様であるが、そのための準備動作として異なる点を以下に述べる。
【0165】
濃縮現像剤を新たに補給する際、まず、トナー濃度調整槽9中の湿式現像剤を一旦容器27に移し、トナー濃度調整槽9内を空にする。その後、湿式現像剤7と同じトナー濃度(基準トナー濃度)になるように、濃縮現像剤と分散媒をトナー濃度調整槽9に補給する。
【0166】
その状態で、トナー濃度調整槽9中の湿式現像剤の温度を温度検知装置29により測定し、そのときにモータ21を一定速度で回転させるために必要な電流値を電流検知手段22により検知する。
【0167】
この湿式現像剤温度と検知電流の関係を、記憶部23に記憶されている湿式現像剤7の基準トナー濃度での湿式現像剤温度と検知電流のテーブルに当てはめることで、補給される濃縮現像剤の(第2の)制御目標値を求めることができる。
【0168】
求めた補給される濃縮現像剤の(第2の)制御目標値は記憶部23に記憶させる。
【0169】
このようにすることで、第1の実施形態での濃縮現像剤の現像剤温度と検知電流のテーブル作成(図12参照)、基準温度でのトナー濃度と検知電流のテーブル作成(図13参照)、濃縮現像剤の新規補給時(図14参照)の作業が不要となる。
【0170】
湿式現像剤のトナー濃度調整の処理手順は、第1の実施形態の場合(図15参照)と同様である。
【0171】
補給される濃縮現像剤の(第2の)制御目標値を記憶部23に記憶させた後は、トナー濃度調整槽9中の湿式現像剤は現像剤槽6へ送られる。また、容器27に移されていた湿式現像剤はトナー濃度調整槽9に戻される。
【0172】
こうすることで、テーブル作成の作業が省略される以外に、同じ装置で現像剤と濃縮現像剤の特性を評価できるため、機械による誤差が生じない。また、部品の削減になり、コストダウンにもつながる。
【0173】
(第3の実施形態)
上述した第1及び第2の実施形態では、トナー濃度調整システムの装置中で濃縮現像剤の特性を測定する場合を提示した。
【0174】
第3の実施形態では、装置中で濃縮現像剤の特性を測定しない場合について述べる。従ってトナー濃度調整システムの機能構成(図3参照)において濃縮現像剤濃度検知手段107は必要ない。しかし、新規の濃縮現像剤の容器等から第2の制御目標値を読み取る、制御目標値読み取り部114が必要となる。
【0175】
トナー濃度制御の手順はほとんど同様であるが、そのための準備動作として異なる点を以下に述べる。
【0176】
濃縮現像剤のロットごとに、濃縮現像剤の一部を工場出荷前に湿式現像剤7と同じトナー濃度(基準トナー濃度)に希釈し、それを用いて湿式現像剤温度と検知電流のテーブルを作成する(図11と同様)。
【0177】
さらに、濃縮現像剤を貯蔵するカートリッジに記憶装置を設け、そこに上記で求めた湿式現像剤温度と検知電流のテーブルを記憶させる。
【0178】
その状態でトナー濃度調整システムを備えた装置にセットし、カートリッジに設けた記憶装置から、制御目標値読み取り部114によりデータを読み出し、新しい補給現像剤での基準トナー濃度時の湿式現像剤温度と検知電流のテーブルを入手するとともに、新しい補給現像剤の(第2の)制御目標値を求めることができる。
【0179】
すなわち、第1の実施形態での湿式現像剤7の基準トナー濃度での湿式現像剤温度と検知電流のテーブル作成(図11参照)、濃縮現像剤の現像剤温度と検知電流のテーブル作成(図12参照)、基準温度でのトナー濃度と検知電流のテーブル作成(図13参照)、濃縮現像剤の新規補給時の作業(図14参照)が不要となる。
【0180】
湿式現像剤のトナー濃度調整の処理手順は、第1の実施形態の場合(図15参照)と同様である。
【0181】
こうすることで、テーブル作成の作業が省略されることや部品の削減によるコストダウンにもつながる。また補給される湿式現像剤での特性を元に補正が可能であり、誤差が減少する。
【0182】
(第4の実施形態)
上述した第3の実施形態に対して、修正点を加えた第4の実施形態について、異なる点を述べる。
【0183】
第3の実施形態に対して、第1の実施形態での湿式現像剤7の基準トナー濃度での湿式現像剤温度と検知電流のテーブル作成(図11参照)は作成を行う。
【0184】
しかしながら、工場では濃縮現像剤のロットごとには、基準トナー濃度、基準温度での検知電流のみを測定し、カートリッジに設けた記憶装置に記憶させる。
【0185】
こうすることで、各ロットごとのテーブル作成が簡素化される。
【0186】
上述のように、本発明に係る実施形態のトナー濃度調整システム及び画像形成装置によれば、第1の制御目標値を設定された湿式現像剤に、濃縮現像剤等の補給を行いながら、トナー濃度を検知し、第1の制御目標値との比較に基づき濃縮現像剤等の補給を制御するトナー濃度調整において、補給される濃縮現像剤ロットについての粘度特性に基づく第2の制御目標値と、その濃縮現像剤ロットの累積補給量とに応じて、第1の制御目標値を補正する。
【0187】
これにより、ロットの異なる濃縮現像剤を追加して徐々に補給するような場合にも、補給する濃縮現像剤のロットバラツキや、補給量の違いによる粘度変化、すなわちトナー濃度の検知結果のズレの影響を受けることなく、トナー濃度を精度よく調整でき、また、調整幅が大きくできるので生産性も向上させられる。
【0188】
なお、上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0189】
1 感光体(像担持体)
2 現像ローラ
3 汲み上げローラ
4 (クリーニング)ブレード
5 規制部材
6 湿式現像剤槽
7 湿式現像剤
8 回収槽
9、101 トナー濃度調整槽
10、103 濃縮現像剤槽
11、102 分散媒槽
12 クリーニング手段
13 イレーサランプ
14 帯電装置
15 露光装置
16 被転写材
17 転写ローラ
20、24 攪拌部材
21、25 (撹拌)モータ
22、26 電流検知装置
23 記憶部
27 容器
28 開口部
29、30 温度検知装置
31、110、115 制御装置(補給制御手段、補給量計測手段)
32、105 濃縮現像剤補給装置
33、104 分散媒補給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーと分散媒を含む湿式現像剤を、該湿式現像剤のトナー濃度の代用特性である粘度を所定の基準トナー濃度に対応する第1の制御目標値に調整するために収容するトナー濃度調整槽と、
前記トナー濃度調整槽内の前記湿式現像剤のトナー濃度の代用特性である粘度を検知する濃度検知手段と、
前記トナー濃度調整槽に前記基準トナー濃度よりトナー濃度の高い濃縮現像剤を補給する濃縮現像剤補給手段と、
前記トナー濃度調整槽に分散媒を補給する分散媒補給手段と、
前記濃度検知手段による粘度の検知結果と前記第1の制御目標値との比較に基づき、前記粘度が前記第1の制御目標値に近づくように、前記濃縮現像剤、及び前記分散媒の補給を制御する補給制御手段と、
を有するトナー濃度調整システムにおいて、
前記補給制御手段は、
前記濃縮現像剤の累積補給量を計測する補給量計測手段を有し、
前記濃縮現像剤を前記基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する第2の制御目標値と、前記補給量計測手段により計測された当該濃縮現像剤の累積補給量とから、トナー濃度調整の前記第1の制御目標値を補正する
ことを特徴とするトナー濃度調整システム。
【請求項2】
前記濃度検知手段は、モータにより攪拌部材を回転させ、前記トナー濃度調整槽内の前記湿式現像剤を撹拌するトルクとしてのモータ電流値を測定することにより粘度特性を検知する
ことを特徴とする請求項1に記載のトナー濃度調整システム。
【請求項3】
前記濃縮現像剤を収容する濃縮現像剤槽と、
前記濃縮現像剤槽内に、新たに濃縮現像剤が収容されたときに、当該濃縮現像剤のトナー濃度として粘度を検知する濃縮現像剤濃度検知手段と、を有し、
前記補給制御手段は、前記濃縮現像剤濃度検知手段により検知された前記濃縮現像剤の粘度に基づいて、当該濃縮現像剤を前記基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する前記第2の制御目標値を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトナー濃度調整システム。
【請求項4】
前記補給制御手段は、前記トナー濃度調整槽内に、希釈された前記濃縮現像剤が収容されたときに、前記濃度検知手段により検知された前記希釈された濃縮現像剤の粘度に基づいて、当該濃縮現像剤を前記基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する前記第2の制御目標値を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトナー濃度調整システム。
【請求項5】
前記補給制御手段は、前記濃縮現像剤の容器に付属した記録装置から、工場出荷時に予め記録された当該縮現像剤を前記基準トナー濃度に希釈したときの粘度に対応する前記第2の制御目標値を読み取る
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトナー濃度調整システム。
【請求項6】
トナーと分散媒を含む湿式現像剤を用いて、像担持体上の潜像を現像し、トナー像を形成する湿式現像装置を備えた画像形成装置であって、
請求項1から5の何れか1項に記載のトナー濃度調整システムを備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−27956(P2011−27956A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172890(P2009−172890)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】