説明

トラクタの作業機連結装置

【課題】2Pリンクから3Pリンクへの切り替えに際し、2P回動ブラケットを90度転回させることで、左右に突設するピンが邪魔にならないように上下方向に変位させてミッションケースの左右幅内に収納固定し、2Pから3Pへの切り替え容易化並びに作業機の充分なる昇降幅の確保を図る。
【解決手段】 本発明は、2Pリンク(10)から3Pリンク(20)への切り替え時には、左右にピン(12),(12)を突設する前後方向の軸芯(Q)回りに回動可能な回動ブラケット(11)を90度反転させてミッションケース(1)の左右幅内に収納固定する。本機側に設けたロアリンク装着用ピン部材(23)にロアリンクを装着して3Pに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタの後部に装着する作業機の連結装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているように、2Pリンク(2点リンク方式)と3Pリンク(3点リンク方式)を切り替え可能とした構成のトラクタが知られている。
また、特許文献2に開示されているように、2Pリンク用回動ブラケットの近傍には、作業機の水平制御用センサが備えられている。
【特許文献1】特開平9−271205号公報
【特許文献2】特開平7−177802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のものでは、2Pリンクから3Pリンクへの組み替えに際しては、2Pリンクの部品をトラクタから取り外さなければならず、組み替えに大きな工数がかかる問題と、2Pリンクから3Pリンクに切り替えた場合、2Pリンクの回動ブラケットの左右に突設するピンが邪魔になり、作業機の昇降幅が制限される問題があった。
【0004】
また、作業機の水平制御用センサには、保護カバーが設けられていないため、2P回動ブラケットの泥土が直接ふりかかり、長期の性能保持が得難い問題があった。
本発明の課題は、上記問題点を解消することにあり、2Pリンクから3Pリンクへの組み替え容易化並びにピンによる妨げを無くして作業機の充分な昇降幅を確保することと、水平制御用センサへの泥土の付着を無くしてセンサの確実な防泥保護を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、左右にピン(12),(12)を突設すると共に前後方向の軸芯回りに回動可能な回動ブラケット(11)を90度反転させてミッションケース(1)の左右幅内に略収納状態で固定し、本機側にはロアリンク装着用ピン部材(23)を設けてあることを特徴とする。
【0006】
2Pリンク(10)から3Pリンク(20)への切り替え時には、2P回動ブラケット(11)を90度反転させて固定する。この時、左右方向に突設状態のピン(12),(12)は、上下方向に向いた状態となり、ミッションケース(1)の左右幅外への突出がなく、左右幅内で収納固定されることになる。そして、本機側に設けたロアリンク装着用ピン部材(23)にロアリンク(22)を装着し、3Pリンク用トップリンクブラケット(25)にはトップリンク(21)を装着する。
【0007】
要するに、2Pリンクから3Pリンクへの切り替え時には、2P回動ブラケットを90度反転させて固定するだけでよいから、従来のように2P回動ブラケット等を取り外す必要がなく、切り替えに工数がかからない。しかも、左右横方向に突設状態の左右のピンがミッションケースの左右幅内へ収納されることになるため、ピンが邪魔になって昇降幅の制限を受けることがない。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、2P回動ブラケット(11)の上方には作業機(R)の水平制御用検出センサ(30)を配置すると共に、この検出センサを覆うように保護カバー(36)を装着してあることを特徴とする。
【0009】
作業機の水平制御用検出センサ(30)は、保護カバー(36)によって被覆されているので、2P回動ブラケット(11)からの泥土がセンサ自体に直接ふりかかることがなく、カバーにより泥土の浸入を確実に防護することができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は請求項2において、前記検出センサ(30)の保護カバー(36)は、シリンダケース(4)から後方に延出して支持すると共に、該カバー(36)の後端部を側面視で下方に垂下(36p)させた状態として、2P回動ブラケット(11)の左右のピン(12),(12)より前側に位置させ、且つ、カバーの中途部を後下がり傾斜とすると共に、その左右両側方を下方に折り曲げてセンサ(30)を左右側から防護する構成としてあることを特徴とする。
【0011】
カバーの中途部は後下がり傾斜であり、後端部は略垂直状に垂下して2P回動ブラケットの左右のピンより前側に位置しているため、2P回動ブラケット側から泥土が飛散しても付着滞留することがなく、速やかに下方に滑落し、センサへの泥土の浸入を防ぐことができる。また、カバー中途部の後下がり傾斜部(36d)では、左右両側部が下方に折り曲げられ、その左右折曲片(36l),(36r)によりセンサを左右側から防護するので、側方からの泥土浸入も確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明によれば、2Pリンクから3Pリンクへの切り替え時には、2P回動ブラケット(11)を90度反転させてから固定するだけでよいため、回動ブラケットの取り外しの必要がなく、組み替えの容易化を図ることができ、しかも、左右に突設するピン(12),(12)がミッションケース(1)の左右幅内で収納固定されることになるため、従来のようにピンが邪魔になって作業機の昇降幅に制限を受けることがなく、充分な昇降幅を確保することができる。
【0013】
請求項2に記載の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、水平制御用検出センサ(30)にはカバー(36)が設けられているため、泥土の浸入がなく、本来の機能を長期に維持し得る。
【0014】
また、請求項3に記載の本発明によれば、センサ保護カバー(36)の中途部が後下がり傾斜であり、後端部は略垂直状に垂下して2P回動ブラケット(11)の左右のピン(12)より前側に位置しているため、2P回動ブラケット側から泥土が飛散しても付着滞留することがなく、泥土を速やかに下方に滑落させることでき、センサへの泥土の浸入を確実に防止することができる。また、カバー中途部の後下がり傾斜部(36d)では、左右両側部が下方に折り曲げられてセンサを左右側から防護するので、側方からの泥土浸入も確実に防止でき、請求項2の発明効果に加えてより良い効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、乗用型トラクタを示すものであり、このトラクタTの前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス1内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪2と後輪3とに伝えるようにしている。ミッションケース1の上部には油圧シリンダケース4が設けられ、この油圧シリンダケース4にリフトアーム5を回動自在に枢着している。油圧シリンダケース4内の油圧昇降シリンダ内に作動油を供給するとリフトア−ム5が上昇回動し、排出するとリフトア−ム5は下降するようになっている。
【0016】
トラクタ後部に装着されるロータリ等の作業機Rが前記リフトア−ム5の昇降駆動によって上下動するようになっている。
ステアリングハンドル6は、左右の旋回操作で左右前輪2を左右に操向制御する構成であり、ステアリングハンドル6の後方には運転席7が配備されている。 2Pリンク(2点リンク方式)10は、図1に示すように、前後方向の軸芯(Q)回りに回動自在な2Pリンク用回動ブラケット(2P回動ブラケット)11を備え、該2P回動ブラケット11には左右方向で両外側に向けてピン12,12が突設され、左右一対の作業機牽引用ドラフトリンク13が連結されるようになっている。前記リフトアーム5の先端部に連結されたリフトロッド14がドラフトリンク13の中間部に連結されている。
【0017】
3Pリンク(3点リンク方式)20は、図2に示すように、1本のトップリンク21と左右一対のロアリンク22,22を備え、前記リフトアーム5の先端部に連結されたリフトロッド14がロアリンク22,22の中間部に連結されている。ロアリンク22,22は、ミッションケース1から左右方向に突設したロアリンク装着用ピン部材23に連結している。
【0018】
トップリンク21は、油圧シリンダケース4の後部に取付板24を介して装着したトップリンクブラケット25に連結している。トップリンクブラケット25は、図5及び図6に示すように、その背部に左右側板26,26が突設されてあり、前記取付板24及び取付ボルト27a,27b,27cを介して着脱自在に取り付けできる構成としている。
【0019】
図3、図4は、2Pリンクで使用時の状態を示し、2P回動ブラケット11は、図4の状態位置から略90度反転させて図6の状態位置でボルト固定できるように構成している。つまり、2P回動ブラケット11は、ベースプレート17と左右突出状に設けるピン12,12と、該支持ピン12,12を保持するフレーム部18を一体化してなり、これらは4本のボルト28,28…によってミッションケースの後面に固定される。なおベースプレート17とミッションケースとの間には回動案内体29を介在しており、上記ボルトを外すと水平軸心回りに回転自在に設けられる。
一方のフレーム部18に設けた回動ブラケット固定用プレート15は、2P回動ブラケット11を90度反転させた後、ボルト穴16を通してボルトによりトップリンクブラケット25に固定できる構成としている。
【0020】
図5は、3Pリンクオプション取付時の状態を示す側面図であり、また、図6は、図5の2P回動ブラケットを90度転回させた状態での背面図を示すものであるが、2P回動ブラケット11のピン12,12が上下方向に位置しミッションケース1の左右幅内に収納固定された状態となる。
【0021】
前記2P回動ブラケット11の上方には、作業機Rの水平制御用検出センサ30を設置している。この検出センサ30は、センサ取付ステー31によって取付支持され、センサアーム32が軸33回りに揺動可能で、2P回動ブラケット11と一体的に回動するローリングアーム34がセンサアーム32の切欠溝32aに係合されている。従って、2P回動ブラケット11が左右に回動すれば、ローリングアーム34の揺動によって検出センサが作業機のローリング角を検出することになる。
【0022】
なお、センサ取付ステー31は、回動ブラケット11の取付ボルト27cによって共締めする構成としてあり、検出センサ30本体は、センサ取付ステー31に対しセンサ取付ボルト35を介して締付固定する。
【0023】
また、前記検出センサ30には、該センサを上方から覆うように保護カバー36を設けている。保護カバー36は、シリンダケース4側から後方に延出支持され、取付ボルト27aによって締付固定されている。そして、該カバー36の具体的構造は、後端部が側面視で下方に垂下しその下端が前記2P回動ブラケット11の左右のピン12,12より前側に位置するように設定された垂下部36pと、カバーの中途部が後方側ほど下方に向けて傾斜する後下がり傾斜部36dと、その後下がり傾斜部36dの左右両側部が下方に折り曲げられてセンサ30を左右両側から防護するように形成された折曲片36l,36rとからなる構成である。
【0024】
従来では、2Pリンクを3Pリンクに組み替えるという市場要望が多くあり、オプション設定されているが、2Pリンクの部品をトラクタから外してしまわなければならず、組み替えに大きな工数がかかっている。本例では、上記構成により、2P回動ブラケット、水平制御用検出センサを外さずとも3Pリンクに組み替えすることができる。要するに、2Pリンク仕様のトラクタに、オプションとして3Pリンクを取り付ける場合、2P用部品を外すことなく簡単に取り付けできる。
【0025】
図7、図8に示す実施例について説明する。図例は、爪軸両端の草巻き付き防止装置を示すもので、爪軸40の両端を軸受する軸受体41と、耕耘爪42を差し込んで爪固定ボルト43により締付固定する爪ホルダ44との間において、爪ホルダ44の前後外面のうち、回転方向後方側の外面には取付プレート45及び締付固定具46を介してスクレーパ47を取り付け、この取り付けたスクレーパ47により軸受体41への草の巻き付きを防止するように構成している。
【0026】
スクレーパ47は、先端の刃47aが軸受体41に対し近づいたり遠ざかったりするように長穴48を介して移動調整可能とし、軸受体との間隙調整により的確な巻き付き防止効果が得られるように構成している。また、スクレーパの形状は、刃47a,47aを長手方向中心線より表裏対称状に形設することで、一方側の刃が摩耗しても表裏反転させて使用することができる。
【0027】
なお、前記スクレーパ47の放射方向外端側の形状を、図9に示すように、爪軸芯方向外端側に向けて昇り傾斜面47sとすることで、草が軸受体41側へ寄りにくくなり、草巻き付き防止効果を高めることができる。
【0028】
図10及び図11に示す実施例は、チエンケースの下端の接地により形成される溝を押し均しながら消して行く溝消し装置に関し、ロータリ作業機Rのチエンケース50の前方には、該チエンケースが押していく土をロータリ内部に取り込むガイド板51を設けてあり、そして、ロータリ内部に取り込ん土をチエンケースの後方側に戻すため、リヤカバー52のチエンケース側端部をチエンケース後方まで側方に長く延設して補助リヤカバー53を設けた構成としている。従って、これによれば、耕耘後のチエンケース後方には溝ができず、良好な整地仕上がりを得ることができる。
【0029】
従来、固定フロントカバーに対し開閉式フロントカバーを開閉自在に装着した構成のものでは、例えば、図12に示すように、フロントカバー代掻き位置で内盛り跡を耕耘したりすると、土押しによる外力でフロントカバーが変形し、抜け落ちることがあった。かかる問題点を解消するために、本例では、図13及び図14に示すように、固定フロントカバー55に対して枢着する開閉式フロントカバー56の一端側に筒体57を固着して設け、固定フロントカバー55から突出させたL型ピン58に前記筒体57を挿通係止させる。前記固定フロントカバー55と開閉式フロントカバー56の他端側には、係止レバー59の係止孔60a及び開閉フロントカバー側の係止突起61をスプリング62に抗して挿通係止する係止孔60bが備えられている。63はスプリングピンを示す。本例は、上記のように構成されるので、従来のように、固定フロントカバー側にL型ピンを、開閉式フロントカバー側にストレートピンを設けたものとは異なり、固定フロントカバー側に筒体を、開閉式フロントカバー側にL型ピンを設けることで、開閉式フロントカバーに外力が加わっても抜け落ちることがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】2Pリンク仕様のトラクタ側面図
【図2】3Pリンク仕様のトラクタ側面図
【図3】2Pリンク使用時のトラクタ要部の側面図
【図4】同上要部の背面図
【図5】3Pリンク使用時のトラクタ要部の側面図
【図6】図5の2P回動ブラケットを90度転回させた状態での背面図
【図7】ロータリ耕耘部の要部の背面図
【図8】同上要部の側面図
【図9】図7の変形例を示す要部の背面図
【図10】ロータリ作業機の側面図
【図11】同上要部の平面図
【図12】ロータリ耕耘部の従来例を示す要部の背面図
【図13】本例の要部の背面図
【図14】同上要部の斜視図
【符号の説明】
【0031】
1 ミッションケース
4 油圧シリンダケース
10 2Pリンク
11 2P回動ブラケット
12 ピン
13 ドラフトリンク
15 回動ブラケット固定用プレート
20 3Pリンク
21 トップリンク
22 ロアリンク
23 ロアリンク装着用ピン部材
25 トップリンクブラケット
30 水平制御用検出センサ
36 保護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右にピン(12),(12)を突設すると共に前後方向の軸芯回りに回動可能な回動ブラケット(11)を90度反転させてミッションケース(1)の左右幅内に略収納状態で固定し、本機側にはロアリンク装着用ピン部材(23)を設けてあることを特徴とするトラクタの作業機連結装置。
【請求項2】
2P回動ブラケット(11)の上方には作業機(R)の水平制御用検出センサ(30)を配置すると共に、この検出センサを覆うように保護カバー(36)を装着してあることを特徴とする請求項1に記載のトラクタの作業機連結装置。
【請求項3】
前記検出センサ(30)の保護カバー(36)は、シリンダケース(4)から後方に延出して支持すると共に、該カバー(36)の後端部を側面視で下方に垂下(36p)させた状態として、2P回動ブラケット(11)の左右のピン(12),(12)より前側に位置させ、且つ、カバーの中途部を後下がり傾斜とすると共に、その左右両側方を下方に折り曲げてセンサ(30)を左右側から防護する構成としてあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトラクタの作業機連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−151420(P2007−151420A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347330(P2005−347330)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】