説明

トロッコ台車の連結機構

【課題】 連結対象車両との連結部の破損などによって連結対象車両と分離したトロッコ台車を制動動作させる連結機構を提供すること。
【解決手段】 制動機構を備えたトロッコ台車1と連結対象車両Cとを連結する連結杆3に操作ワイヤ6を設ける。操作ワイヤ6の中間部を連結杆杆3に固定金具7により留める。操作ワイヤ6の一端には解放ピン8を設ける。台車1の車体後端面の連結杆3との連結部近傍には、軸受10及び枢軸11によりブレーキ解除レバー12を横方向に回転自在に軸支する。ブレーキ解除レバー12には、台車1の制動機構に連結するワイヤWで制動方向に引かれる係止片13を設ける。軸受10及び枢軸11の側部対応位置には解放ピン8が貫通して、ブレーキ解除レバー12が制動解除位置に保持される一方、トロッコ台車1と連結対象車両Cが分離したら解放ピン8が抜かれてブレーキ解除レバー12が制動動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を移動可能なトロッコ台車の前後に他のトロッコ台車又は牽引車などの連結対象車両を連結杆で連結する場合の連結機構に関するもので、特に制動装置を有する台車が進行中に連結対象車両と分離したら制動動作するものである。
【背景技術】
【0002】
レール上を走行するトロッコ台車Tは、通常作業者が1両ずつ押し進めるが、保管や貨物などの載せ下ろし作業等の停止時に不用意な移動を防止するために自動的にブレーキがかかるように構成されたものがある。これを行うための制動機構は、図7に示すように、台車Tの端面に中間部が枢着されたブレーキ解除レバーLの揺動によって、台車内の中間軸Mを往復回動させ、これによってカムCが回動し、ブレーキシューを開閉させる。ブレーキ解除レバーLの一端側延長部L1にはワイヤWが結合しており、ばねSによってブレーキ解除レバーLには―端部が常に台車内に引き込まれる方向に張力がかかっている。従って作業者がレバーLをばねSのばね力に抗してワイヤWを引き戻す方向にレバーLの他端部を押し込むと、ブレーキが解除される。
【0003】
現場作業において上記台車に連結対象車両を連結して押し進める場合、前後に隣り合う台車を連結杆で連結するが、連結作業時に車両が制動状態にあるので、連結のための移動に先立ってこの制動を解除しておかねばならない。このために、連結動作と制動動作を連動させる機構が特許文献1に記載されている。即ち、台車の端面に突設した受金に連結杆の一端を挿入し連結ピン3を挿通して連結した後、上記ブレーキ解除レバーLに相当するレバー6の軸5に固定された延長片7を連結ピン3の頭部3aに係合させることにより、連結ピン3を抜け止めすると共に、同じくレバー6の軸5に固定された延長片8がこれに係止されたワイヤWにより引き込まれるのを阻止して、制動を解除する状態を維持している。
【特許文献1】特開平8―150817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のトロッコ台車の連結機構において、当該台車は当該台車側での連結ピンの脱落や連結杆の連結部又は受金の破損により自動的に制動動作するが、連結杆自体が当該車両の連結部以外の部分で破損したり、連結杆が連結対象車両から外れた場合に、制動が解除されたままで自由な走行を許容してしまい、好ましくない。一方、台車の連結分離は頻度の高い作業であるため、その操作が簡単であることが望ましい。
そこで、本発明は、連結杆自体やこれを介した連結対象車両の連結部の破損などの場合であっても当該台車が制動動作するトロッコ台車の連結機構を提供すること課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明においては、制動機構を備えたトロッコ台車の前方又は後方に連結対象車両Cを連結杆3を介して連結し、この連結杆3の分離・結合状態に連動して、制動機構が制動動作・解除動作するようにトロッコ台車1の連結機構を構成する。台車1の端部には、制動機構の制動動作を行うばね力に抗して制動位置と解除位置との間を変位可能なブレーキ解除レバー12を設ける。一端が連結対象車両Cに係止される連結線6の他端に、解除位置にあるブレーキ解除レバー12に係合して制動位置への復帰動作を阻止し、台車1と連結対象車両Cとの引き離しに伴ってブレーキ解除レバー12から離脱し、ブレーキ解除レバー12の制動位置への復帰動作を許容するストッパ金具を設ける。
第2の発明においては、ブレーキ解除レバー12は、台車1の後端部に枢軸11により横方向に回転可能に軸支する。また、ストッパ金具は、ブレーキ解除レバー12の枢軸11を台車1の連結方向に貫通して回転を阻止し、ブレーキ解除レバー12の制動位置ヘの復帰動作を行うばね力により抜け止めされる解除ピン8を設ける。
【発明の効果】
【0006】
台車に連結杆を介して連結対象車両を連結した場合に、連結杆自体が破損したり、連結杆の他端部が他の台車から外れるなどして連結対象車両が分離しても、台車がこれに連動して自動的に制動動作するので、台車が停止して暴走を回避することができるし、簡易な連結機構で台車の連結、分離作業を簡単に行うことができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の一形態を図面について説明する。
図1及び図2において、トロッコ台車1には図7の制動機構を備え、連結対象車両である軌陸車Cが連結杆3を介して連結される。台車1の車体後端面には後方に突出した上下に対向する一対の受金2,2が固着されている。連結杆3の両端には平坦部3aを備え、平坦部3aが両受金2,2間に挿入され、垂直に貫通する連結軸4で結合される。連結軸4は不使用時には受金2の近傍に設けられた保持金具5に仮留めされ、また受金2に係止された紐4aにつながっており紛失が防止される。連結軸4は止めピンで受金2に抜け止めされる。
【0008】
連結杆3には連結線である操作ワイヤ6が留められる。操作ワイヤ6は連結杆3とほぼ同程度の長さを有し、その中間部が連結杆杆3の中間部の異なる二カ所に固定金具7,7により長さ方向に移動可能に留められて連結杆3に沿って設けられる。操作ワイヤ6の一端にはストッパ金具である解放ピン8が、他端には軌陸車Cの端面に設けられたフックC1に係止されるシャックル9が結合されている。
【0009】
トロッコ台車1の車体後端面には受金2に横方向に間隔を置いて軸受10が固定され、枢軸11を横方向に回転自在に支持する。枢軸11は、その上端部にブレーキ解除レバー12が、下端部に係止片13が固定され、これらと一体に回動可能である。ブレーキ解除レバー12は制動機構に連結されている。係止片13は枢軸11に対してブレーキ解除レバー12と反対方向に延びており、図7における車体1の内方に向かって張られたワイヤWが係止され、台車1の制動機構に連結する。軸受10及び枢軸11の側部対応位置には後方に開口して操作ワイヤ6の解放ピン8に貫通されるピン孔10a,11aが設けられている。
【0010】
このトロッコ台車1の連結機構においては、台車1に軌陸車Cを連結する場合、作業のために軌陸車Cに対して位置合わせしてから、静止させると台車1の制動機構が制動状態にする。図3に示すように、この台車1と軌陸車Cとに連結杆3の平坦部3aを受金2,2間に挿入して連結軸4を貫通させて連結し、さらに軌陸車CのフックC1に操作ワイヤ6のシャックル9を係止する。次に、図4に示すように、制動位置にあるレバー12を解除位置まで押し込むと、軸受10及び枢軸11のピン孔10a,11aが合致するので操作ワイヤ6の解放ピン8を挿入する。そしてブレーキ解除レバー12の押力を解除すると、解放ピン8により枢軸11の回転が阻止されるので、台車1は制動が解除された状態を維持する。この解除位置ではワイヤWによって係止片13が引かれているので、枢軸11が回転しようとするから軸受10との間で解放ピン8を挟み込んで抜け難い状態に保持する。
【0011】
上記のように軌陸車C1と共にこれに連結された台車1が進行中、図5に示すように、台車1が連結軸4の脱落や受金2あるいは連結杆3の平坦部3aの破損などにより台車1から連結杆3が外れる事態が発生した場合、操作ワイヤ6のみで軌陸車Cと連結されることになるので、操作ワイヤ6の大きな張力により解放ピン8が軸受10及び枢軸11から引き抜かれるから、ブレーキ解除レバー12が回転して自動的に制動動作する。また、図6に示すように、連結杆3自体が破損したり、連結杆3の他端部における軌陸車Cとの連結がはずれる事態が発生したら、連結杆3は台車に結合したまま軌陸車Cから分離するが、操作ワイヤ6のみで軌陸車Cと台車1とが連結されることになるから、上記と同様にして、操作ワイヤ6の大きな張力により解放ピン8が軸受10及び枢軸11から引き抜かれ、ブレーキ解除レバー12が回転して自動的に制動動作する。従って、台車と軌陸車との連結が解かれた場合には故障箇所の如何を問わず台車が制動動作するので、必要な対応措置を講ずることができる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、前後のトロッコ台車又は牽引車が何らかの原因で分離しても制動機構が連動する連結機構に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るトロッコ台車の連結機構の平面図である。
【図2】トロッコ台車の連結機構の正面図である。
【図3】トロッコ台車と軌陸車の連結経過を示す連結機構の平面図である。
【図4】トロッコ台車と軌陸車の連結状態を示す連結機構の平面図である。
【図5】連結杆がトロッコ台車側で分離した状態を示す連結機構の平面図である。
【図6】連結杆が軌陸車側で分離した状態を示す連結機構の平面図である。
【図7】トロッコ台車の制動機構の概略図である。
【符号の説明】
【0014】
1 トロッコ台車
2 受金
3 連結杆
6 操作ワイヤ
7 固定金具
8 解放ピン
10 軸受
11 枢軸
12 ブレーキ解除レバー
13 係止片
W ワイヤ
C 軌陸車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動機構を備えたトロッコ台車の前方又は後方に連結杆を介して連結対象車両を連結し、この連結杆の分離・結合状態に連動して、前記制動機構が制動動作・解除動作するトロッコ台車の連結機構において、
前記台車の端部に設けられ、制動機構の制動動作を行うばね力に抗して制動位置と解除位置との間を変位可能なブレーキ解除レバーと、
一端が連結対象に係止される連結線の他端に設けられ、解除位置にある前記ブレーキ解除レバーに係合して制動位置への復帰動作を阻止し、台車と連結対象車両との引き離しに伴ってブレーキ解除レバーから離脱し、ブレーキ解除レバーの制動位置への復帰動作を許容するストッパ金具とを具備することを特徴とするトロッコ台車の連結機構。
【請求項2】
前記ブレーキ解除レバーは、前記台車の後端部に枢軸により横方向に回転可能に支持され、
前記係合金具は、前記ブレーキ解除レバーの枢軸を台車の連結方向に貫通して回転を阻止し、ブレーキ解除レバーの制動位置ヘの復帰動作を行うばね力により抜け止めされる解除ピンであることを特徴とする請求項1に記載のトロッコ台車の連結機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−145260(P2007−145260A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345040(P2005−345040)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)