説明

ドアミラーの取付部構造

【課題】ドアミラーを安定に仮止めできる取付部構造を提供する。
【解決手段】ガスケット36に2本の仮止め片48,50を突出形成する。該2本の仮止め片48,50の先端部に互いに外向きに爪部48a,50aを形成する。ミラーベース12にガスケット36を予めねじ止め固定する。車両のミラー取付部60の開口部82に前記2本の仮止め片48,50を通して、該各仮止め片48,50の前記各爪部48a,50aを該開口部82の対向する縁部82a,82bにそれぞれ係止してミラーベース12をミラー取付部60に仮止めする。その後ミラーベース12とミラー取付部60とをねじで本止めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はドアミラーを車両に取り付けるための取付部構造に関し、ドアミラーを安定に仮止めできるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドアミラーを車両に装着するときは、ドアミラーを車両ドアのミラー取付部に仮止めし、その後ねじで両者を本止めするようにしている。ドアミラーを仮止めするための構造として下記特許文献1記載のものがあった。これはガスケットに爪部を有する1本の仮止め片を形成し、該仮止め片を車両のミラー取付部に形成された掛止孔に差し込み掛止めしてドアミラーを仮止めするようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−331601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の1本の仮止め片による仮止めでは不安定であり、重量のあるドアミラーでは仮止めが外れて脱落する恐れがあった。
【0005】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ドアミラーを安定に仮止めできるようにしたドアミラーの取付部構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の取付部構造は、車両のドアに設置されたミラー取付部の車外側の取付面にガスケットを挟んでドアミラーのミラーベースを取り付ける構造であって、前記ガスケットは、前記ミラー取付部に対向させる面に互いに間隔を隔てて対向して突出形成した2本の仮止め片と、該2本の仮止め片の先端部に互いに外向きに形成した爪部とを具備し、前記ミラー取付部は、前記2本の仮止め片を通して該各仮止め片の前記各爪部を対向する縁部にそれぞれ係止して仮止めする開口部を具備し、前記ミラーベースに前記ガスケットを予め固定し、該ミラーベースを前記ミラー取付部に仮止めし、該ミラーベースと該ミラー取付部とをねじ止めすることにより、前記ミラーベースを前記ミラー取付部に取り付けるものである。これによれば、2本の仮止め片の各爪部を開口部の縁部にそれぞれ係止することによりミラーベースをミラー取付部に安定に仮止めすることができ、この状態でミラーベースとミラー取付部とをねじ止めすることにより、ミラーベースをミラー取付部に取り付けることができる。
【0007】
またこの発明の取付部構造は、車両のドアに設置されたミラー取付部の車外側の取付面にガスケットを挟んでドアミラーのミラーベースを取り付ける構造であって、前記ミラーベースは、前記ミラー取付部に対向する面に上下方向に互いに間隔を隔ててそれぞれ立設されたねじ棒を具備し、前記ガスケットは、前記上下のねじ棒をそれぞれ通す上下のねじ棒通し穴と、該上下のねじ棒通し穴に挟まれた位置で前記ミラー取付部に対向させる面に左右方向に互いに間隔を隔てて対向して突出形成した2本の仮止め片と、該2本の仮止め片の先端部に互いに外向きに形成した爪部とを具備し、前記ミラー取付部は、前記ガスケットの下側のねじ棒通し穴から突出する下側のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、該ガスケットの上側のねじ棒通し穴から突出する上側のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、該上側のねじ棒の下方位置で前記2本の仮止め片を通して該各仮止め片の前記各爪部を左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止して仮止めする開口部を具備し、前記ミラーベースに前記ガスケットを予め固定し、該ミラーベースを前記ミラー取付部に仮止めし、該ミラー取付部の車内側に露出している前記各ねじ棒にそれぞれナットをねじ込んで締め付けることにより、前記ミラーベースを前記ミラー取付部に取り付けるものである。これによれば、2本の仮止め片の各爪部を開口部の左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止することによりミラーベースをミラー取付部に安定に仮止めすることができ、この状態でミラー取付部の車内側に突出している各ねじ棒にそれぞれナットをねじ込んで締め付けることにより、ミラーベースをミラー取付部に取り付けることができる。2本の仮止め片を上下のねじ棒のうち上側のねじ棒寄りの位置に配置することにより、より安定に仮止めすることができる。
【0008】
またこの発明の取付部構造は、車両のドアに設置されたミラー取付部の車外側の取付面にガスケットを挟んでドアミラーのミラーベースを取り付ける構造であって、前記ミラーベースは、前記ミラー取付部に対向する面に、上下方向に互いに間隔を隔ててそれぞれ立設されたねじ棒と、該上側のねじ棒の上方に立設されたボスとを具備し、前記ガスケットは、前記ボスを通すボス通し穴と、前記上下のねじ棒をそれぞれ通す上下のねじ棒通し穴と、該上下のねじ棒通し穴に挟まれた位置で前記ミラー取付部に対向させる面に左右方向に互いに間隔を隔てて対向して突出形成した2本の仮止め片と、該2本の仮止め片の先端部に互いに外向きに形成した爪部とを具備し、前記ミラー取付部は車外側に配置されるアウタープレートと車内側に配置されるインナープレートを適宜の間隔を隔てて対向配置した構造を具備し、前記アウタープレートは前記ガスケットのボス通し穴から突出する前記ボスを通すボス通し穴と、前記ガスケットの下側のねじ棒通し穴から突出する下側のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、該ガスケットの上側のねじ棒通し穴から突出する上側のねじ棒と前記2本の仮止め片を一緒に通して該各仮止め片の前記各爪部を左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止して仮止めする開口部を具備し、前記インナープレートは前記アウタープレートの開口部から突出する上側のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、前記アウタープレートのねじ棒通し穴から突出する下側のねじ棒を車内側に露出させる開口部を具備し、前記ミラーベースに前記ガスケットを予め固定した状態で、該ミラーベースのボスを前記アウタープレートのボス通し穴に通し、前記下側のねじ棒を前記アウタープレートのねじ棒通し穴に通し、前記上側のねじ棒を前記アウタープレートの開口部を経て前記インナープレートのねじ棒通し穴に通し、前記2本の仮止め片を前記アウタープレートの開口部に通して該各仮止め片の前記各爪部を該開口部の左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止して前記ミラーベースを前記ミラー取付部に仮止めし、該仮止めした状態で前記インナープレートのねじ棒通し穴から突出している上側のねじ棒にナットをねじ込んで締め付け、前記アウタープレートのねじ棒通し穴から突出して前記インナープレートの開口部から露出している下側のねじ棒にナットをねじ込んで締め付けることにより、前記ミラーベースを前記ミラー取付部に取り付けるものである。これによれば、ボスとねじ棒でミラーベースをミラー取付部に位置決めした状態でミラーベースをミラー取付部に向けて押し込むことにより、2本の仮止め片の各爪部を開口部の左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止させてミラーベースをミラー取付部に安定に仮止めすることができ、この状態でミラー取付部の車内側に突出している各ねじ棒にそれぞれナットをねじ込んで締め付けることにより、ミラーベースをミラー取付部に取り付けることができる。またミラー取付部はアウタープレートとインナープレートを適宜の間隔を隔てて対向配置した構造を有するので、ドアの剛性を高めると共に、ドアミラーを強固に支持することができる。またアウタープレートの開口部は上側のねじ棒と2本の仮止め片を一緒に通すので、2本の仮止め片を上側のねじ棒に接近した位置すなわちミラーベースの比較的上部寄りの位置に配置することができ、ドアミラーを安定に仮止めすることができる。この取付部構造は、前記下側のねじ棒が左右方向に2本配列され、該2本のねじ棒をそれぞれ通す前記アウタープレートの2個のねじ棒通し穴のうち1個は、該1個のねじ棒通し穴と前記ボス通し穴とを結ぶ直線の方向に長径を有し該直線に直角な方向に短径を有する長円形に形成され、該短径は該ねじ棒通し穴に通すねじ棒が該短径方向に動き得る余裕がない大きさに形成され、該長径は該ねじ棒通し穴に通すねじ棒が該長径方向に動き得る余裕がある大きさに形成され、前記2個のねじ棒通し穴のうち別の1個は該ねじ棒通し穴に通すねじ棒がその径方向に動き得る余裕がある大きさの円形に形成され、前記アウタープレートのボス通し穴は該ボス通し穴に通すボスがその径方向に動き得る余裕がない大きさに形成されているものとすることができる。これによれば、前記ボスを前記ボス通し穴に係合させた状態で前記下側の左右一方のねじ棒を長円形のねじ棒通し穴に係合させることによりミラーベースをミラー取付部に容易に位置決めすることができる。
【0009】
また、この発明の取付部構造は、車両のドアに設置された略三角形状のミラー取付部の車外側の取付面にガスケットを挟んでドアミラーのミラーベースを取り付ける構造であって、前記ミラーベースは、前記ミラー取付部に対向する略三角形状の面に、上側の1本のねじ棒と、下側左右の2本のねじ棒と、前記上側のねじ棒の上方に1本のボスをそれぞれ立設配置した構造を具備し、前記ガスケットは、前記ボスを通すボス通し穴と、前記上下のねじ棒をそれぞれ通す上下のねじ棒通し穴と、該上下のねじ棒通し穴に挟まれた位置で前記ミラー取付部に対向させる面に左右方向に互いに間隔を隔てて対向して突出形成した2本の仮止め片と、該2本の仮止め片の先端部に互いに外向きに形成した爪部とを具備し、前記ミラー取付部は、前記ガスケットのボス通し穴から突出するボスを通すボス通し穴と、前記ガスケットの下側のねじ棒通し穴から突出する下側の2本のねじ棒を通す2個のねじ棒通し穴と、該ガスケットの上側のねじ棒通し穴から突出する上側の1本のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、該上側のねじ棒の下方位置で前記2本の仮止め片を通して該各仮止め片の前記各爪部を左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止して仮止めする開口部を具備し、前記1本のボスおよび前記3本のねじ棒を前記ミラー取付部の各通し穴に途中までそれぞれ差し込んで前記2本の仮止め片の爪部の前端面を前記開口部の左右方向に対向する縁部に当接させ、この状態で前記ミラーベースを前記ミラー取付部に向けて押し込んで該2本の仮止め片の爪部を該開口部の左右の縁部を乗り越えて該左右の縁部にそれぞれ係止させて該ミラーベースを該ミラー取付部に仮止めし、該仮止めした状態で前記3本のねじ棒にナットをねじ込んで締め付けることにより、該ミラーベースを該ミラー取付部に取り付けるものである。これによれば、ボスとねじ棒で位置決めした状態でミラーベースをミラー取付部に向けて押し込むことにより容易かつ安定に仮止めすることができる。
【0010】
この発明において前記2本の仮止め片の互いに対向する面側にはそれぞれリブを形成することができる。これによれば、リブで仮止め片の剛性が高められ、これによりドアミラーの自重でガスケットが屈曲するのが抑制され、爪部と開口部の縁部との係合が外れてドアミラーが脱落するのをより確実に防止することができる。両リブの下部を突条によるリブ連結部で相互に連結することにより、該箇所におけるガスケットの板面の剛性を高めて爪部と開口部の縁部との係合をさらに外れにくくすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態を示す図で、図5、図6のミラー取付部に図2のドアミラー10を仮止めした状態を、インナープレート66を取り除いた状態で示す斜視図である。
【図2】ドアミラーの斜視図である
【図3】ガスケットを車体のミラー取付部との対向面側から見た斜視図である。
【図4】図2のドアミラー10のミラーベース12に図3のガスケット36を装着した状態を示す一部拡大斜視図である。
【図5】図2のドアミラー10を取り付ける車両のミラー取付部60を車外側から見た斜視図である。
【図6】図2のドアミラー10を取り付ける車両のミラー取付部60を車内側から見た斜視図である。
【図7】図5、図6のミラー取付部60に図2のドアミラー10を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図8】図7の状態における仮止め片48,50付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施の形態を説明する。図2はドアミラーを示す。ドアミラー10はミラーベース12とミラー本体部14を有する。ミラー本体部14はプラスチック製ハウジング13内に金属ダイカスト製またはガラス繊維入り硬質プラスチック製のフレーム(図示せず)を取付け支持し、該フレームに鏡面角度調整用アクチュエータ15を取付け支持し、該鏡面角度調整用アクチュエータ15の前面にミラー(図示せず)を取付け支持して構成される。ミラーベース12は車体に固定される車体固定部12aと該車体固定部12aの下部から外方へ突出してミラー本体部14を使用位置と格納位置間に回動自在に支持する回動支持部12bとを有する。ミラーベース12の車体固定部12aは車両のフロントドアの三角コーナー部に設置するために取付面が三角形状に形成されている。ミラーベース12は内部に金属ダイカスト製またはガラス繊維入り硬質プラスチック製のベース本体16を有し、その外側にプラスチック製のカバー18が被せられている。ベース本体16とカバー18とは複数本のビス20で相互に連結固定されている。ベース本体16は回動支持部12bにおいてミラー本体部14のフレームと連結され、該ミラー本体部14のフレームを前記使用位置と格納位置間に回動自在に支持している。
【0013】
ベース本体16の車体取付面16aには車体との固定を行う上側の1本のねじ棒22と下側の2本のねじ棒24,26が該車体取付面16aに対し直角にそれぞれ立設固定されている。また該車体取付面16aには上側のねじ棒22の上方位置に位置決め用のボス27が該車体取付面16aに対し直角に突出形成されている。ベース本体16の車体取付面16aにはミラー本体部14に電動格納用および鏡面角度調整用の給電を行うハーネス28を通す穴30が開設されている。ベース本体16の車体取付面16aにはガスケット36(図3)をベース本体16に固定するためのビス58(図4)をねじ込むねじ穴31が形成されている。カバー18の周縁部付近の内面にはガスケット36(図3)の周縁部を留めるための複数個のボス32と、1個の突起33と、1個の係止部34が突出形成されている。ねじ棒22,24,26の先端部はミラー取付部60(図5、図6)の各ねじ棒通し穴90,86,88に通しやすいように、ねじ山を有しない細径に形成されている。またボス27の先端はミラー取付部60のボス通し穴80に通しやすいように先細りに形成されている。
【0014】
ベース本体16の車体取付面16aに装着されるガスケットを図3に車体との対向面側から見た状態で示す。ガスケット36はPE(ポリエチレン)等の比較的軟質のプラスチックで構成され、その車体との対向面の一部の領域にスポンジパッキン38が貼り付けられている。ガスケット36には前記上側のねじ棒22を通すねじ棒通し穴40、前記下側のねじ棒24,26を通すねじ棒通し穴42,44、前記ボス27を通すボス通し穴45、前記ハーネス28を通すハーネス通し穴46、ガスケット36をベース本体16に固定するビス58(図4)を通すビス通し穴47がそれぞれ形成されている。またガスケット36の車体との対向面には、上側のねじ棒通し穴40と下側のねじ棒通し穴42,44とで挟まれた位置で上側のねじ棒通し穴40寄りの位置に、左右方向に互いに間隔を隔てて2本の仮止め片48,50が該ガスケット36と一体成型でそれぞれ突出形成されている。ガスケット36の周縁部付近には前記カバー18(図2)のボス32を嵌め込んで留める穴52と、突起33を差し込んで留める穴54と、係止部34に掛けて留められる係止片56がそれぞれ形成されている。
【0015】
ドアミラー10のミラーベース12にガスケット36を装着した状態の部分拡大図を図4に示す。ガスケット36は1本のビス58をガスケット36のビス通し穴47(図3)を通してベース本体16のねじ穴31(図2)にねじ込むことによりベース本体16に固定される。ガスケット36の周縁部は、穴52(図3)にボス32(図2)を嵌め込み、穴54(図3)に突起33(図2)を嵌め込み、係止片56(図3)を係止部34(図2)に係止してミラーベース12の周縁部に留められる。ドアミラー10の車体への取り付けは、このように予めガスケット36をベース本体16に固定した状態で行う。仮止め片48,50の先端部には互いに外向きに爪部48a,50aが形成されている。仮止め片48,50の互いに対向する面側には互いに内向きにそれぞれリブ48b,50bが該仮止め片48,50と一体に形成されている。リブ48b,50bの下部はガスケット36の板面に形成された突条によるリブ連結部49で相互に連結されている。リブ連結部49はリブ48b,50b間の位置でガスケット36の板面の剛性を高め、仮止め片48,50を開口部82の縁部82a,82bに仮止めする際にリブ48b,50b間の位置でガスケット36の板面が折れ曲がるのを防ぎ、もって仮止め片48,50が縁部82a,82bからの脱落するのを防止する働きをする。
【0016】
ドアミラー10を取り付けるミラー取付部の構成を説明する。図5はミラー取付部60を車外側から見た状態、図6はミラー取付部60を車内側から見た状態をそれぞれ示す。ミラー取付部60は三角形状に形成され、車両のフロントドア62の三角コーナー部に設置されている。ミラー取付部60は車外側に配置される鋼板製のアウタープレート64と車内側に配置される鋼板製のインナープレート66を適宜の間隔を隔てて対向配置して構成される。ミラー取付部60は、フロントドア62の構成要素で該ミラー取付部60を包囲するいずれも鋼板製のアウトサイドパネル68、インサイドパネル70、メインフレーム72、ロアフレーム74に溶接で固定される。メインフレーム72の外周縁部にはゴム製のウェザーストリップ76が装着される。ミラー取付部60の車両後方側に隣接する領域にはサイドウインドウガラス78が配置される。
【0017】
ミラー取付部60のアウタープレート64(図5)にはボス27を通すボス通し穴80、ねじ棒22を非接触に通しかつ仮止め片48,50を通す開口部82、ハーネス28を通すハーネス通し穴84、ねじ棒24,26を通すねじ棒通し穴86,88がそれぞれ形成されている。ボス通し穴80はボス27がその径方向に動き得る余裕がない大きさに形成されている(ただしボス27をボス通し穴80に差し込んだ状態でミラーベース12がボス27を中心に回転できる程度の余裕はある)。開口部82はねじ棒22および仮止め片48,50を一緒に通せるように縦長の長円形状に形成されている。これにより仮止め片48,50は上側のねじ棒22に接近した位置すなわちミラーベース12の比較的上部寄りの位置に配置することができるので、ドアミラー10を安定に仮止めすることができる。すなわちドアミラー10が仮止めされている状態で自重により該仮止めが外れてミラー取付部60から脱落するときは、ねじ棒24,26がねじ棒通し穴86,88に通されたミラーベース12の下部位置を中心にドアミラー10が回転して脱落するので、該回転中心からできるだけ離れたミラーベース12の上部寄りの位置で仮止めすることにより、ドアミラー10の自重による仮止め片48,50にかかる荷重(ミラーベース12の下部位置を中心にして仮止め片48,50にかかるモーメント力)を抑制して、ドアミラー10を脱落しにくくすることができる。
【0018】
アウタープレート64のねじ棒通し穴86は、該ねじ棒通し穴86とボス通し穴80とを結ぶ直線の方向に長径を有し該直線に直角な方向に短径を有する長円形に形成されている。該短径はねじ棒通し穴86に通すねじ棒24が該短径方向に動き得る余裕がない大きさに形成され、該長径はねじ棒通し穴86に通すねじ棒24が該長径方向に動き得る余裕がある大きさに形成されている。一方、ねじ棒通し穴88は、該ねじ棒通し穴88に通すねじ棒26がその径方向に動き得る余裕がある(すなわちねじ棒26が容易に入る)大きさの円形に形成されている。
【0019】
ミラー取付部60のインナープレート66(図6)にはねじ棒22を通すねじ棒通し穴90、アウタープレート68のハーネス通し穴84およびねじ棒通し穴86,88を車内側に露出させる開口部92が形成されている。ねじ棒通し穴90はねじ棒22がその径方向に動き得る余裕がある(すなわちねじ棒22が容易に入る)大きさに形成されている。
【0020】
ドアミラー10をミラー取付部60に取り付ける手順を説明する。
(1)ドアミラー10をミラー取付部60に取り付けるのに先立ち、予めガスケット36(図3)をドアミラー10(図2)のミラーベース12の車体取付面16aにビス58(図4)で固定する。
(2)ミラーベース12をミラー取付部60の車外側の取付面60aに押し込んで仮止めする。図1はこの仮止めした状態をインナープレート66を取り除いた状態で示す。仮止めは次の手順で行われる。
i)ハーネス28をインナープレート66の開口部92に露出しているハーネス通し穴84に通す。
ii)ミラーベース12をミラー取付部60の取付面60aに対し少し前傾させた姿勢で対面させて、ボス27をボス通し穴80に少し差し込んでミラーベース12の上部を位置決めする。このときねじ棒22はアウタープレート64の開口部82の上部領域に差し込まれる。この状態でボス27を中心にミラーベース12を回転方向に動かしてねじ棒24をねじ棒通し穴86に位置決めして少し差し込む。ねじ棒通し穴86は長円形であるが、その短径方向がミラーベース12の回転方向に一致しているので、ミラーベース12は回転方向の動きが規制される。これによりミラーベース12は取付面60aに沿った方向(上下左右方向)について位置決めされる。この状態でミラーベース12を取付面60aに対し平行な姿勢にしてミラーベース12を取付面60aに向けて少し押し込むと残りのねじ棒22,26もねじ棒通し穴90,88に少し差し込まれる。ねじ棒通し穴90はねじ棒22がその径方向に動き得る余裕があり、ねじ棒通し穴88はねじ棒26がその径方向に動き得る余裕があるので、ねじ棒22,26はねじ棒通し穴90,88に容易に差し込まれる。このようにして仮止め片48,50の爪部48a,50aの前端面48aa,50aaを開口部82の左右方向に対向する縁部82a,82bに当接させる。ボス27およびねじ棒22,24,26がアウタープレート64の各通し穴80,90,86,88に途中まで差し込まれた状態で仮止め片48,50の爪部48a,50aの前端面48aa,50aaが開口部82の縁部82a,82bに当接するように、ボス27およびねじ棒22,24,26の長さが設定されている。
iii)ミラーベース12を取付面60aに向けてさらに強く押し込んでいくと、仮止め片48,50の爪部48a,50aの前端面48aa,50aaが開口部82の縁部82a,82bに押圧当接し、該仮止め片48,50およびガスケット36の板面の可撓性(弾性変形)により仮止め片48,50が互いに内側に寄って縁部82a,82bを乗り越えて開口部82に差し込まれる。ミラーベース12が取付面60aに沿った方向について位置決めされた状態でこの押し込みを行うので、仮止め片48,50を容易に開口部82に差し込むことができる。仮止め片48,50の爪部48a,50aおよびボス27の先端部はインナープレート66とアウタープレート64の間の空間65(図8)に配置された状態となる。
iv)差し込みが完了すると、仮止め片48,50の爪部48a,50aは開口部82の縁部82a,82bにそれぞれ係止される。この状態ではミラーベース12は、取付面60aに沿った方向の動きがボス27とボス通し穴80との嵌め合い、ねじ棒24とねじ棒通し穴86との嵌め合いにより規制され、かつミラー取付部60の取付面60aから離れる方向の動きが仮止め片48,50の爪部48a,50aと開口部82の縁部82a,82bとの係合により規制されるので、正しく位置決めされて仮止めされた状態となる。したがってドアミラー10から手を離してもドアミラー10はミラー取付部60から脱落しない。特に仮止め片48,50はリブ48b,50bで補強されて撓みすぎないようにされ、またリブ48b,50b間を繋ぐリブ連結部49により該リブ48b,50b間の位置でガスケット36の板面は剛性が高められて折れ曲がりにくくなっているため、爪部48a,50aと開口部82の縁部82a,82bとの係合が外れにくくされており、ドアミラー10がミラー取付部60から脱落するのがより確実に防止される。
(3)図7に示すように、インナープレート66の上からねじ棒22にナット94をねじ込んで締め付け、インナープレート66の開口部92を通してアウタープレート64の上からねじ棒24,26にそれぞれナット96,98をねじ込んで締め付けることにより、ミラーベース12はミラー取付部60に本止めされる。図8はこのときの仮止め片48,50付近の断面を示す。
(4)インナープレート66の表面に内装板(ガーニッシュ)を装着してドアミラー10の取付が完成する。なお、図7においてハーネス28の下側に配置されている直角に屈曲した板材29はハーネス28を支持するものである。この板材29はプラスチックで構成され、一端がガスケット36に形成された差し込み穴35に差し込まれてガスケット36に取り付けられる。
【0021】
前記実施の形態ではミラー取付部60を2枚のプレート64,66で構成したが、1枚のプレートで構成することもできる。
【符号の説明】
【0022】
10…ドアミラー、12…ミラーベース、22,24,26…ねじ棒、27…ボス、36…ガスケット、40,42,44…ガスケットのねじ棒通し穴、45…ガスケットのボス通し穴、48,50…仮止め片、48a,50a…爪部、48aa,50aa…爪部の前端面、48b,50b…リブ、60…ミラー取付部、60a…車外側の取付面、62…車両のドア、64…アウタープレート、66…インナープレート、80…アウタープレートのボス通し穴、82…ミラー取付部のアウタープレートの開口部、82a,82b…ミラー取付部のアウタープレートの開口部の縁部、86…ミラー取付部のアウタープレートの長円形のねじ棒通し穴、88…ミラー取付部のアウタープレートの円形のねじ棒通し穴、90…ミラー取付部のインナーープレートのねじ棒通し穴、92…ミラー取付部のインナープレートの開口部、94,96,98…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設置されたミラー取付部の車外側の取付面にガスケットを挟んでドアミラーのミラーベースを取り付ける構造であって、
前記ミラーベースは、前記ミラー取付部に対向する面に上下方向に互いに間隔を隔ててそれぞれ立設されたねじ棒を具備し、
前記ガスケットは、前記上下のねじ棒をそれぞれ通す上下のねじ棒通し穴と、該上下のねじ棒通し穴に挟まれた位置で前記ミラー取付部に対向させる面に左右方向に互いに間隔を隔てて対向して突出形成した2本の仮止め片と、該2本の仮止め片の先端部に互いに外向きに形成した爪部とを具備し、
前記ミラー取付部は、前記ガスケットの下側のねじ棒通し穴から突出する下側のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、該ガスケットの上側のねじ棒通し穴から突出する上側のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、該上側のねじ棒の下方位置で前記2本の仮止め片を通して該各仮止め片の前記各爪部を左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止して仮止めする開口部を具備し、
前記ミラーベースに前記ガスケットを予め固定し、該ミラーベースを前記ミラー取付部に仮止めし、該ミラー取付部の車内側に露出している前記各ねじ棒にそれぞれナットをねじ込んで締め付けることにより、前記ミラーベースを前記ミラー取付部に取り付けるドアミラーの取付部構造。
【請求項2】
車両のドアに設置された略三角形状のミラー取付部の車外側の取付面にガスケットを挟んでドアミラーのミラーベースを取り付ける構造であって、
前記ミラーベースは、前記ミラー取付部に対向する略三角形状の面に、上側の1本のねじ棒と、下側左右の2本のねじ棒と、前記上側のねじ棒の上方に1本のボスをそれぞれ立設配置した構造を具備し、
前記ガスケットは、前記ボスを通すボス通し穴と、前記上下のねじ棒をそれぞれ通す上下のねじ棒通し穴と、該上下のねじ棒通し穴に挟まれた位置で前記ミラー取付部に対向させる面に左右方向に互いに間隔を隔てて対向して突出形成した2本の仮止め片と、該2本の仮止め片の先端部に互いに外向きに形成した爪部とを具備し、
前記ミラー取付部は、前記ガスケットのボス通し穴から突出するボスを通すボス通し穴と、前記ガスケットの下側のねじ棒通し穴から突出する下側の2本のねじ棒を通す2個のねじ棒通し穴と、該ガスケットの上側のねじ棒通し穴から突出する上側の1本のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、該上側のねじ棒の下方位置で前記2本の仮止め片を通して該各仮止め片の前記各爪部を左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止して仮止めする開口部を具備し、
前記1本のボスおよび前記3本のねじ棒を前記ミラー取付部の各通し穴に途中までそれぞれ差し込んで前記2本の仮止め片の爪部の前端面を前記開口部の左右方向に対向する縁部に当接させ、この状態で前記ミラーベースを前記ミラー取付部に向けて押し込んで該2本の仮止め片の爪部を該開口部の左右の縁部を乗り越えて該左右の縁部にそれぞれ係止させて該ミラーベースを該ミラー取付部に仮止めし、該仮止めした状態で前記3本のねじ棒にナットをねじ込んで締め付けることにより、該ミラーベースを該ミラー取付部に取り付けるドアミラーの取付部構造。
【請求項3】
車両のドアに設置されたミラー取付部の車外側の取付面にガスケットを挟んでドアミラーのミラーベースを取り付ける構造であって、
前記ミラーベースは、前記ミラー取付部に対向する面に、上下方向に互いに間隔を隔ててそれぞれ立設されたねじ棒と、該上側のねじ棒の上方に立設されたボスとを具備し、
前記ガスケットは、前記ボスを通すボス通し穴と、前記上下のねじ棒をそれぞれ通す上下のねじ棒通し穴と、該上下のねじ棒通し穴に挟まれた位置で前記ミラー取付部に対向させる面に左右方向に互いに間隔を隔てて対向して突出形成した2本の仮止め片と、該2本の仮止め片の先端部に互いに外向きに形成した爪部とを具備し、
前記ミラー取付部は車外側に配置されるアウタープレートと車内側に配置されるインナープレートを適宜の間隔を隔てて対向配置した構造を具備し、
前記アウタープレートは前記ガスケットのボス通し穴から突出する前記ボスを通すボス通し穴と、前記ガスケットの下側のねじ棒通し穴から突出する下側のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、該ガスケットの上側のねじ棒通し穴から突出する上側のねじ棒と前記2本の仮止め片を一緒に通して該各仮止め片の前記各爪部を左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止して仮止めする開口部を具備し、
前記インナープレートは前記アウタープレートの開口部から突出する上側のねじ棒を通すねじ棒通し穴と、前記アウタープレートのねじ棒通し穴から突出する下側のねじ棒を車内側に露出させる開口部を具備し、
前記ミラーベースに前記ガスケットを予め固定した状態で、該ミラーベースのボスを前記アウタープレートのボス通し穴に通し、前記下側のねじ棒を前記アウタープレートのねじ棒通し穴に通し、前記上側のねじ棒を前記アウタープレートの開口部を経て前記インナープレートのねじ棒通し穴に通し、前記2本の仮止め片を前記アウタープレートの開口部に通して該各仮止め片の前記各爪部を該開口部の左右方向に対向する縁部にそれぞれ係止して前記ミラーベースを前記ミラー取付部に仮止めし、該仮止めした状態で前記インナープレートのねじ棒通し穴から突出している上側のねじ棒にナットをねじ込んで締め付け、前記アウタープレートのねじ棒通し穴から突出して前記インナープレートの開口部から露出している下側のねじ棒にナットをねじ込んで締め付けることにより、前記ミラーベースを前記ミラー取付部に取り付けるドアミラーの取付部構造。
【請求項4】
前記下側のねじ棒が左右方向に2本配列され、
該2本のねじ棒をそれぞれ通す前記アウタープレートの2個のねじ棒通し穴のうち1個は、該1個のねじ棒通し穴と前記ボス通し穴とを結ぶ直線の方向に長径を有し該直線に直角な方向に短径を有する長円形に形成され、該短径は該ねじ棒通し穴に通すねじ棒が該短径方向に動き得る余裕がない大きさに形成され、該長径は該ねじ棒通し穴に通すねじ棒が該長径方向に動き得る余裕がある大きさに形成され、
前記2個のねじ棒通し穴のうち別の1個は該ねじ棒通し穴に通すねじ棒がその径方向に動き得る余裕がある大きさの円形に形成され、
前記アウタープレートのボス通し穴は該ボス通し穴に通すボスがその径方向に動き得る余裕がない大きさに形成されている請求項3記載のドアミラーの取付部構造。
【請求項5】
車両のドアに設置されたミラー取付部の車外側の取付面にガスケットを挟んでドアミラーのミラーベースを取り付ける構造であって、
前記ガスケットは、前記ミラー取付部に対向させる面に互いに間隔を隔てて対向して突出形成した2本の仮止め片と、該2本の仮止め片の先端部に互いに外向きに形成した爪部とを具備し、
前記ミラー取付部は、前記2本の仮止め片を通して該各仮止め片の前記各爪部を対向する縁部にそれぞれ係止して仮止めする開口部を具備し、
前記ミラーベースに前記ガスケットを予め固定し、該ミラーベースを前記ミラー取付部に仮止めし、該ミラーベースと該ミラー取付部とをねじ止めすることにより、前記ミラーベースを前記ミラー取付部に取り付けるドアミラーの取付部構造。
【請求項6】
前記2本の仮止め片の互いに対向する面側にそれぞれリブが形成されている請求項1から5のいずれか1項に記載のドアミラーの取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−51434(P2011−51434A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200840(P2009−200840)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】