説明

ドアロック装置用アクチュエータ

【課題】ドアロック機構を駆動する作動レバーの揺動角範囲を精度よく規制できて作動信頼性が高く、簡素な構成でコンパクトなドアロック装置用アクチュエータを提供する。
【解決手段】ハウジング3と、ハウジング3に回動可能に保持されるとともにカム部(カム突片41)を有して回動する回転駆動部材4と、回転駆動部材4を回転駆動するモータ7と、回転駆動部材4に隣接して配置されかつハウジング3に揺動自在に保持されるとともにカム部41に駆動されてロック状態及びアンロック状態が切り替えられる作動レバー5と、を備えるドアロック装置用アクチュエータ2であって、作動レバー5は揺動方向に延びかつ揺動軸芯からみて所定の揺動角範囲ASに拡がる係合孔52を有し、ハウジング3は係合孔52に嵌入するとともに回転駆動部材4を回動可能とする固定軸6を備える、ようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関し、より詳細にはロック操作及びアンロック操作をモータで行うドアロック装置用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ドアロック装置を作動させるドアロック装置用アクチュエータとして、例えば特許文献1に開示されるドアロック装置用アクチュエータがある。特許文献1のアクチュエータは、ドアを閉状態に保つ掛止手段を解除するオープンリンクを駆動してアンロック状態及びロック状態の一方を切り替え可能なアクティブレバーを揺動するモータとホイールギヤが設けられており、アクティブレバーの揺動角範囲を規制する手段が設けられている。すなわち、板状のアクティブレバーの一部を切り曲げて形成した係止突起が、ハウジングに設けられた停止部材に当接して規制されるようになっている。
【0003】
また、特許文献2に開示されるドアロック装置用アクチュエータは、モータとホイールギヤにより施錠レバーをロック位置とアンロック位置とに揺動するようになっている。このアクチュエータは、カム突子をもつ回転部材と、カム突子に駆動されて揺動するとともに施錠レバーに連結される作動レバーとを備えている。そして、作動レバーの揺動角範囲は、作動レバーの外縁側に設けられた揺動規制片が、ケースに設けられた揺動規制凹溝に嵌合することで規制されている。
【特許文献1】特開2007−100318号公報
【特許文献2】特開昭62−99578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のアクチュエータでは、モータに駆動されるホイールギヤがアクティブレバーの外縁側に設けられているため大形化する一因となっていた。また、アクティブレバーの係止突起及びハウジングの停止部材の製作寸法公差や作動時の位置のばらつきなどにより、ホイールギヤとアクティブレバーとの噛み合いの精度が出なくなって、作動不具合となるおそれがあった。
【0005】
特許文献2のアクチュエータでは、アクチュエータを構成する回転部材は作動レバーに隣接して平行に設けられ小形化が志向されているが、作動レバーの外縁側で揺動角範囲を規制する部分が大形化の一因となっており、また構造を複雑化させていた。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、ドアロック機構を駆動する作動レバーの揺動角範囲を精度よく規制できて作動信頼性が高く、簡素な構成でコンパクトなドアロック装置用アクチュエータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドアロック装置用アクチュエータは、ハウジングと、該ハウジングに回動可能に保持されるとともにカム部を有して回動する回転駆動部材と、該回転駆動部材を回転駆動するモータと、前記回転駆動部材に隣接して配置されかつ前記ハウジングに揺動自在に保持されるとともに前記カム部に駆動されてロック状態及びアンロック状態が切り替えられる作動レバーと、を備えるドアロック装置用アクチュエータであって、前記作動レバーは揺動方向に延びかつ揺動軸芯からみて所定の揺動角範囲に拡がる係合孔を有し、前記ハウジングまたは前記回転駆動部材は前記係合孔に嵌入するとともに前記回転駆動部材を回動可能とする軸体を備える、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記軸体は前記ハウジングに固定された固定軸である、ことが好ましい。
【0009】
さらに、前記軸体は、前記作動レバーの前記係合孔の端縁が当接する外周に弾性部材を有する、ようにしてもよい。
【0010】
さらに、前記弾性部材に当接する前記作動レバーの前記係合孔の前記端縁は平面とされている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した本発明のドアロック装置用アクチュエータでは、作動レバーに揺動方向に延びる係合孔を設けて、回転駆動部材を回動可能とする軸体を嵌入させるようにしたので、揺動角範囲を精度よく規制できて作動信頼性が高い。また、新たに部品を追加する必要がないので装置構成は簡素で、さらに、作動レバー及び回転駆動部材の外縁側に規制手段を設ける必要がないのでコンパクト化することができる。
【0012】
また、軸体をハウジングに固定された固定軸とし、固定軸外周に弾性部材を設け、係合孔の端縁を平面とした態様では、固定軸に端縁が当接するときの衝撃や衝突音を低減することができ、経時特性低下を低減して作動信頼性を一層向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図3を参考にして説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例のドアロック装置用アクチュエータを備えた車両用ドアロック装置全体を説明する斜視図であり、アンロック状態が示されている。実施例のドアロック装置用アクチュエータ2は、車両用ドアロック装置1のドアロック機構9をロック操作及びアンロック操作するものである。図1において、アクチュエータ2のハウジング3下方から突設される駆動レバー55に対して、ドアロック機構9のロッキングレバー91が係合されて駆動されるようになっている。図2は実施例のアクチュエータ2を説明する斜視図、図3はアクチュエータ2の分解斜視図である。アクチュエータ2は、ハウジング3と、回転駆動部材4と、作動レバー5と、モータ7と、を備えている。
【0015】
ハウジング3は、図3に示されるように、上側部材31と下側部材32とが対向して組み合わされて構成され、部材を組み付ける横長の内部空間が区画形成されている。下側部材32の中央左寄りには内部空間に向けて固定軸6が立設され、左端には図中上下方向に貫通する枢支孔34が形成されている。
【0016】
固定軸6は、下側部材32寄りの太い基部61と、基部61の上側に縮径されて中間太さの枢支部62と、枢支部62の上側に縮径されて細い当接部63とで、三段に形成されている。当接部63の外周には、図2に示されるように合成ゴム製の筒状の弾性部材64が装着されている。
【0017】
回転駆動部材4は、円板状の部材で形成され、中心には枢支孔が設けられている。回転駆動部材4の表面には中心を挟んで対称に2個のカム突片41、42が立設され、外周面にはギヤが形成されている。回転駆動部材4は、ハウシング3の下側部材32の上側に下側部材32と平行に配置され、枢支孔が固定軸6の枢支部62に回動可能に保持されるようになっている。
【0018】
図2に示されるように、作動レバー5は、図中右下が狭く図中左上方に略扇形に拡がる板状の部材で形成されている。作動レバー5の狭い側の裏面には揺動軸51が下方に向けて突設され、略中央の扇形部分には係合孔52が形成されている。さらに、作動レバー5の係合孔52の外周側裏面には周方向に延び中央に凹部531をもつカム壁53が形成され、最外周付近の表面には付勢ボス54が形成されている。
【0019】
作動レバー5は、ハウシング3の上側部材31と回転駆動部材4との間に隣接して設けられ、回転駆動部材4と平行に配置されている。そして、揺動軸51は下側部材32の枢支孔34に貫通して揺動軸芯となっている。さらに、揺動軸51のハウジング2外に抜け出た先端は、「く」の字状に折れ曲がった揺動レバー55の中央に嵌挿されている。また、係合孔52には、固定軸6の当接部63が嵌入されている。カム壁53は、被駆動部に相当する部分であり、中央の凹部531に回転駆動部材4の一方のカム突片41が係合して駆動されるようになっている。付勢ボス54にはピン状の付勢ばね56が係合され、付勢ばね56は下側部材32に設けられたばね取付部35に保持されている。付勢ばね56は、作動レバー5が揺動の中間位置に来たときに付勢ボス54との距離が小さくなって作動レバー5を押圧する付勢力が増加するように配置されている。つまり、作動レバー5を揺動の中間位置に留めずに、どちらかの端位置に案内する作用を有している。
【0020】
係合孔52は、図2に示されるように、揺動軸51の中心からみて所定の揺動角範囲ASに拡がる略円弧形状に形成されている。すなわち、内側円弧521と外側円弧522と、両円弧の端点を径方向に結ぶ2つの端縁523、524とで係合孔52の周縁が形成されている。この2つの端縁523、524により定められる所定の揺動角範囲ASは、作動レバー5が揺動したときにロック状態及びアンロック状態を切り替えられるように設定されている。また、内側円弧521と外側円弧522との距離は、固定軸6の当接部63の外周の弾性部材64の外径よりもわずかに大とされ、弾性部材64が係合孔52内を抵抗なく通れるようになっている。
【0021】
モータ7は、図2に示されるように、下側部材32に固定取り付けされている。モータ7の出力軸には、ウォームギヤ71が一体に設けられている。ウォームギヤ71は、回転駆動部材4の周面のギヤに噛合している。モータは正転及び逆転可能とされ、回転駆動部材4を双方向に回転駆動するようになっている。
【0022】
ドアロック機構9は、図1に示されるように、ロッキングレバー91、オープンリンク92、オープンレバー93、リフトレバー94を主要部材として構成されている。ロッキングレバー91は、駆動レバー55に駆動される被駆動部911と、オープンリンク92の長孔921に係合してロック位置とアンロック位置とを切り替える切替部912と、両者の中間に設けられている軸芯913と、をもっている。オープンリンク92は、前述の長孔921と当接部922とを図中右側にもち、操作部923を図中左側にもち、図中左右に作動するようになっている。オープンレバー93は、オープンリンク92の操作部923に係合されてハンドル操作により図中反時計回りに回動するようになっている。リフトレバー94は、オープンリンク92の当接部922が当接する被当接部941と、一体に揺動する図略のロック解除部とをもっている。
【0023】
図1のアンロック状態において、閉状態のドアを開ける操作及び作用について説明する。まず、ハンドルが操作されると、オープンレバー93が矢印C1で示されるように反時計回りに揺動してオープンリンク92を駆動する。次いで、オープンリンク92が矢印C2で示されるように右方に作動し、当接部922がリフトレバー94の被当接部941に当接して押圧する。最後に、リフトレバー94が矢印C3で示されるように反時計回りに揺動し、ロック解除部が作動されてドアの閉状態が解除される。
【0024】
次に、実施例の車両用ドアロック装置1をロック操作したときの作用について説明する。図2において、ロック操作によりモータ7が起動されると、ウォームギヤ71に駆動されて回転駆動部材4が矢印L1で示されるように反時計回りに回動する。すると、カム突片41がカム壁53の凹部531に係合して、矢印L2で示されるように作動レバー5を反時計回りに駆動する。作動レバー5は、係合孔52の一端縁523が固定軸6の当接部63に当接するまで揺動した後に停止する。このとき、弾性部材64を介して当接するので、衝撃や衝突音は低減される。
【0025】
以降の作用は図1で説明する。作動レバー5が揺動すると一体に形成された駆動レバー55は矢印L3で示されるように反時計回りに揺動して、ロッキングレバー91を駆動する。ロッキングレバー91は、矢印L4で示されるように軸芯913を中心に時計回りに揺動してオープンリンク92の長孔921を駆動する。すると、オープンリンク92の当接部922は矢印L5で示されるようにリフトレバー94の被当接部941から離れて当接しなくなる。オープンリンク92とリフトレバー94との当接が断たれたときがロック状態である。
【0026】
このロック状態において、ハンドルが操作されオープンレバー93が揺動してオープンリンク92が右方に作動しても、当接部922は被当接部941を押圧しない。したがって、リフトレバー94は揺動せず、ロック解除部は作動しない。つまり、ハンドルからドアを開ける操作がロックされている。
【0027】
また、ロック状態からアンロック状態への解除操作は、モータ7を逆転させて行うことができる。モータ7が逆転すると、回転駆動部材4、作動レバー5、ロッキングレバー91、オープンリンク92の各部材は反転して作動する。そして、オープンリンク92の当接部922がリフトレバー94の被当接部941に正対して、押圧可能な図1のアンロック状態に戻る。
【0028】
以上説明したように本実施例のドアロック装置用アクチュエータ2では、作動レバー5に揺動方向に延びる係合孔52を設けて、回転駆動部材4を回動可能とする固定軸6を嵌入させるようにしたので、揺動角範囲ASを精度よく規制できて作動信頼性が高い。また、新たに部品を追加する必要がないので装置構成は簡素で、さらに、作動レバー5及び回転駆動部材4の外縁側に規制手段を設ける必要がないのでコンパクト化することができる。
【0029】
また、固定軸6をハウジングに固定し、固定軸6外周に弾性部材64を設け、係合孔52の端縁523、524を平面とした態様では、固定軸6に端縁523、524が当接するときの衝撃や衝突音を低減することができ、経時特性低下を抑制して作動信頼性を一層向上することができる。さらに、筒状の弾性部材64の外側表面が平面の端縁523、524に垂直に当接する構造とすることで、揺動角範囲規制の精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例のドアロック装置用アクチュエータを備えた車両用ドアロック装置全体を説明する斜視図である。
【図2】本発明の実施例のドアロック装置用アクチュエータを説明する斜視図である。
【図3】図2のアクチュエータの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1:車両用ドアロック装置
2:ドアロック装置用アクチュエータ
3:ハウジング 31:上側部材 32:下側部材 34:枢支孔
4:回転駆動部材 41、42:カム突片
5:作動レバー 51:揺動軸 52:係合孔 53:カム壁
55:揺動レバー
6:固定軸 61:基部 62:枢支部 63:当接部
64:弾性部材
7:モータ 71:ウォームギヤ
9:ドアロック機構
AS:揺動角範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに回動可能に保持されるとともにカム部を有して回動する回転駆動部材と、該回転駆動部材を回転駆動するモータと、前記回転駆動部材に隣接して配置されかつ前記ハウジングに揺動自在に保持されるとともに前記カム部に駆動されてロック状態及びアンロック状態が切り替えられる作動レバーと、を備えるドアロック装置用アクチュエータであって、
前記作動レバーは揺動方向に延びかつ揺動軸芯からみて所定の揺動角範囲に拡がる係合孔を有し、前記ハウジングまたは前記回転駆動部材は前記係合孔に嵌入するとともに前記回転駆動部材を回動可能とする軸体を備える、ことを特徴とするドアロック装置用アクチュエータ。
【請求項2】
前記軸体は前記ハウジングに固定された固定軸である請求項1に記載のドアロック装置用アクチュエータ。
【請求項3】
前記軸体は、前記作動レバーの前記係合孔の端縁が当接する外周に弾性部材を有する請求項2に記載のドアロック装置用アクチュエータ。
【請求項4】
前記弾性部材に当接する前記作動レバーの前記係合孔の前記端縁は平面とされている請求項3に記載のドアロック装置用アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−127288(P2009−127288A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303344(P2007−303344)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】