説明

ドアロック装置

【課題】コストの上昇を抑えかつ強度を高めることが可能なドアロック装置を提供する。
【解決手段】ラッチ20とポール30とを回動可能に軸支する1対の対向軸部71,72が一体形成されて1部品になっているので、それらが2部品であった従来のドアロック装置よりコストダウンを図ることができる。そして、1対の対向軸部71,72の先端部が、金属ベースプレート11におけるストライカ受容溝12を間に挟んだ2箇所にそれぞれ固定されているので、屈曲軸部品70がストライカ受容溝12の間に架け渡された状態になり、金属ベースプレート11が屈曲軸部品70によって補強される。また、1対の対向軸部71,72が、連絡軸部73を介して補強し合う。これにより、ドアロック装置の強度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストライカ受容溝を有した金属ベースプレートにラッチとポールとが回動可能に取り付けられたドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドアロック装置は、図8に示されており、金属ベースプレート2のうちストライカ受容溝3を間に挟んだ2箇所から1対の回転支軸4A,4Bが起立し、それら回転支軸4A,4Bにラッチ5とポール(図示せず)とを回動可能に軸支した構造になっている。また、1対の回転支軸4A,4Bの先端部は樹脂ボディ7に固定されており、その樹脂ボディ7と金属ベースプレート2との間にラッチ5とポールが収まっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−274131号公報(段落[0016],[0017]、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ドアロック装置1を車両のドアに用いた場合、側面衝突によりドアが押されると、ドアロック装置1とストライカ8とが離される方向に力がかかる。ここで、図9には、側面衝突を想定したシミュレーションの結果が示されている。即ち、図9(A)に示すようにラッチ5とストライカ8とが係合した状態で車両のドアが側面衝突されると、ラッチ5がストライカ受容溝3から抜け出す方向に引っ張られる。すると、図9(B)に示すように強度が弱い樹脂ボディ7が大きく変形して1対の回転支軸4A,4Bの先端部同士が互いに接近するように倒れる。そして、これに伴いラッチ5も傾きかつ金属ベースプレート2がストライカ受容溝3を支点にして折れ曲がる。すると、その折れ曲がったラッチ5に金属ベースプレート2が押されて更に金属ベースプレート2の変形が進み、1対の回転支軸4A,4Bの先端部同士がさらに傾き、ラッチ5とストライカ8との係合力が低下するという問題が生じ得た。
【0004】
また、側面衝突により車両のうちストライカ8を有したドア枠部分が押され、ストライカ8がストライカ受容溝3から離脱する方向(図8において左側に移動する方向)に衝撃力を受けた場合、これに伴ってラッチ5とポールとの間に働く力により、それらを軸支する回転支軸4A,4B同士の間隔が開くように変形し、ラッチ5とポールとの間の係合力が低下するという問題が生じ得る。
【0005】
さらには、凶悪犯罪が多発している昨今、建物のドアをバール等でこじ開ける場合も同様にドアロック装置1が変形し、ラッチ5とストライカ8との係合力が低下するという問題が生じ得る。また、ドアロック装置1の強度を高めるために各部品を大きさや材質を変更すると、コストが上昇して実用性が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、コストの上昇を抑えかつ強度を高めることが可能なドアロック装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るドアロック装置は、ドアに取り付け可能な金属ベースプレートと、金属ベースプレートに形成されて、ドア枠に備えたストライカが進入可能なストライカ受容溝と、ストライカ受容溝に進入したストライカと噛み合って回動するラッチと、ラッチと係合し、そのラッチがストライカとの係合を深めるラッチ係合方向に回動することを許容しかつその逆のラッチ解除方向への回動を規制するポールとを備えたドアロック装置において、金属棒の中間部を屈曲させてなり、両端部に互いに平行な1対の対向軸部を有する屈曲軸部品を設け、1対の対向軸部の先端部を金属ベースプレートにそれぞれ固定し、一方の対向軸部にラッチを回動可能に軸支する一方、他方の対向軸部にポールを回動可能に軸支したところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のドアロック装置において、1対の対向軸部の先端部を、金属ベースプレートにおけるストライカ受容溝を間に挟んだ2箇所にそれぞれ固定したところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のドアロック装置において、1対の対向軸部の先端部を段付き状に縮径して先端小径部を形成し、金属ベースプレートに形成されたベース貫通孔の開口縁に先端小径部の基端側の段差面を突き当て、ベース貫通孔に通された先端小径部の先端をカシメて抜け止めしたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1の発明]
請求項1のドアロック装置は、金属棒の中間部を屈曲させてなり、両端部に互いに平行な1対の対向軸部を有する屈曲軸部品を設け、その屈曲軸部品のうち平行に延びた1対の対向軸部にラッチとポールとが回動可能に軸支されている。即ち、本発明では、ラッチとポールとを回動可能に軸支する1対の対向軸部が一体形成されて1部品になっているので、それらが2部品であった従来のドアロック装置よりコストダウンを図ることができると共に、ラッチとポールとの間隔が広がることが防がれ、強度を高めることが可能になる。
[請求項2の発明]
請求項2の構成によれば、1対の対向軸部の先端部を、金属ベースプレートにおけるストライカ受容溝を間に挟んだ2箇所にそれぞれ固定したので、屈曲軸部品がストライカ受容溝の間に架け渡された状態になり、金属ベースプレートが屈曲軸部品によって補強される。
【0011】
[請求項3の発明]
請求項3の構成によれば、1対の対向軸部の先端部に形成した先端小径部を、金属ベースプレートに形成されたベース貫通孔に挿通してカシメることで、屈曲軸部品を金属ベースプレートに固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態のドアロック装置10は、例えば、車両のドアに取り付けられ、車両本体のドア枠に備えたストライカ40と係合する。
【0013】
ストライカ40は、例えば断面円形の線材を門形に屈曲させてなり、ドア枠の内面から略水平方向に突出している。また、ストライカ40のうち門形の両脚部はドアの開閉方向に並べられ、それらのうち一方の脚部に相当する部分がドアロック装置10と係合する。
【0014】
ドアロック装置10は、図2に示すように金属ベースプレート11と樹脂ボディ50とを対向配置して備えている。そして、金属ベースプレート11が、ドアの板金壁の内面に宛がわれてボルトにて固定される。
【0015】
金属ベースプレート11には、水平方向に延びたストライカ受容溝12が備えられている。このストライカ受容溝12は、一端側に開放口を有し、他端側は閉じている。また、金属ベースプレート11に対向配置された樹脂ボディ50にもストライカ受容溝12と略同形状のストライカ受容溝52が形成されている。そして、ドアを閉じるとストライカ受容溝12,52内にストライカ40が進入する。
【0016】
図2に示すように樹脂ボディ50は、金属ベースプレート11との対向面における外縁部から側壁50Tを金属ベースプレート11側に起立して備え、その側壁50Tを金属ベースプレート11に突き当てた状態で固定されている。これにより、樹脂ボディ50と金属ベースプレート11との間にラッチ20及びポール30等を収容するための可動部品収容室10Kが形成されている。
【0017】
図3に示すように可動部品収容室10Kのうちストライカ受容溝52より下方には、ポール30が回動可能に設けられている。また、ポール30と樹脂ボディ50との間には図示しないトーションバネが備えられ、このトーションバネによってポール30が図3における反時計回り方向に付勢されている。
【0018】
可動部品収容室10Kのうちストライカ受容溝52より上方には、ラッチ20が回動可能に軸支されている。ラッチ20には、互いに平行になった1対の係止爪21,22が備えられている。また、ラッチ20は、図示しないトーションバネにより図3における時計回り方向に付勢されている。そして、ドアを開いた状態では、ラッチ20がアンラッチ位置に位置し、係止爪21,22のうちストライカ受容溝52におけるストライカ40の進入口側に配置された一方の係止爪21(以下、これを「前側係止爪21」といい、他方の係止爪22を「後側係止爪22」という)が、ストライカ受容溝12の上方に退避しかつ、後側係止爪22がストライカ受容溝12を横切った状態になる。そして、ドアを閉めるとストライカ受容溝12に進入したストライカ40が、後側係止爪22を押してラッチ20が図3における反時計回り方向(本発明に係る「ラッチ係合方向」に相当する)に回動し、ラッチ20とストライカ40とが噛み合って係合する。
【0019】
ここで、ドアが全閉状態になると、図5に示すように、ポール30が前側係止爪21の先端部に突き当たり、ラッチ20がフルラッチ位置に位置決めされて逆戻り方向(本発明に係る「ラッチ解除方向」相当する)の回転が規制され、これによりドアが全閉状態に保持される。また、半ドア状態になると、図4に示すように、ポール30が後側係止爪22の先端部に突き当たり、ラッチ20がハーフラッチ位置に位置決めされて逆戻り方向の回転が規制され、これによりドアが半ドア状態に保持される。なお、ドアに備えた図示しないハンドルを操作すると、屈曲軸部品70に軸支されたポール操作部材W(図1及び図2参照)と共にポール30が時計回り方向に回動して、ラッチ20から離脱する。
【0020】
さて、図2に示すように、ドアロック装置10には、金属棒をU字形に屈曲形成してなる屈曲軸部品70が備えられている。そして、屈曲軸部品70のうち平行に延びた1対の対向軸部71,72の先端部が、金属ベースプレート11におけるストライカ受容溝12を間に挟んだ2箇所にそれぞれ固定されている。また、一方の対向軸部71(以下、適宜、「第1の対向軸部71」という)にはラッチ20が回動可能に軸支され、他方の対向軸部72(以下、適宜、「第2の対向軸部72」という)にはポール30が回動可能に軸支されている。
【0021】
より詳細には、屈曲軸部品70のうち両対向軸部71,72の間を連絡する連絡軸部73は、それら対向軸部71,72に対して直交する方向に延びている。また、第1の対向軸部71は連絡軸部73と同じ外径をなし、その先端部は段付き状に縮径された先端小径部71Aになっている。一方、第2の対向軸部72は、連絡軸部73側の基端寄り位置で段付き状に縮径されて連絡軸部73より全体的に細くなっており、その先端部は更に段付き状に縮径されて先端小径部72Aになっている。
【0022】
屈曲軸部品70を固定するために、金属ベースプレート11には、ストライカ受容溝12を間に挟んだ2箇所を樹脂ボディ50側に隆起させて軸固定台11A,11Aが形成され、それら軸固定台11A,11Aにベース貫通孔11K,11Kが貫通形成されている。また、樹脂ボディ50のうち金属ベースプレート11と反対側の外面には背面金属プレート60が宛がわれ、その背面金属プレート60と樹脂ボディ50とには、両対向軸部71,72に対応した貫通孔60K,50Kがそれぞれ形成されている。
【0023】
ドアロック装置10を組み立てる際には、第2の対向軸部72にポール操作部材Wを挿通し、背面金属プレート60の貫通孔60K、樹脂ボディ50の貫通孔50Kの順番に両対向軸部71,72に挿通する。次いで、ラッチ20を第1の対向軸部71に、ポール30を第2の対向軸部72に挿通してから金属ベースプレート11のベース貫通孔11K,11Kに両対向軸部71,72の先端小径部71A,72Aを通す。この状態で、第2の対向軸部72における基端側の段差面72Eには、背面金属プレート60における貫通孔60Kの開口縁が当接し、両対向軸部71,72の先端寄り位置の段差面71D,72Dには、金属ベースプレート11におけるベース貫通孔11K,11Kの開口縁が当接する。これにより、金属ベースプレート11と背面金属プレート60と樹脂ボディ50を併せたアッシの厚さ寸法が、前記両段差面72E,72Dの間の寸法内に収められる。そして、第1の先端小径部71A,72Aの先端部がカシメられて抜け止めされている。これにより、ドアロック装置10の全ての構成部品がアッシ化されてドアロック装置10が完成する。
【0024】
上述したように、本実施形態のドアロック装置10では、ラッチ20とポール30とを回動可能に軸支する1対の対向軸部71,72が一体形成されて1部品になっているので、それらが2部品であった従来のドアロック装置よりコストダウンを図ることができる。そして、1対の対向軸部71,72の先端部が、金属ベースプレート11におけるストライカ受容溝12を間に挟んだ2箇所にそれぞれ固定されているので、屈曲軸部品70がストライカ受容溝12の間に架け渡された状態になり、金属ベースプレート11が屈曲軸部品70によって補強される。また、1対の対向軸部71,72が、連絡軸部73を介して補強し合う。これらより、ドアが側面衝突された際に、ドアロック装置10における1対の対向軸部71,72同士が互いに接近するように倒れ難くなり、金属ベースプレート11も屈曲軸部品70の補強により折れ曲がり難くなる。よって、ラッチ20とストライカ40との係止力の低下が防がれる。即ち、本実施形態によれば、コストの上昇を抑えてドアロック装置10の強度を高めることができる。
【0025】
[第2実施形態]
前記第1実施形態の屈曲軸部品70の1対の対向軸部71,72が、ストライカ受容溝12,52を間に挟んだ2箇所に配置されていたが、本実施形態のドアロック装置10Vは、図6及び図7に示すように屈曲軸部品70の1対の対向軸部71,72が、両方ともストライカ受容溝12,52(ストライカ受容溝12は図7にのみ示されている)に対して上下方向の一方側(図6及び図7の上側)に纏めて配置されている。そして、ポール30がラッチ20のうち後側係止爪22及び前側係止爪21の突出方向の反対側の外縁部に備えた凹凸部分に係止して、ラッチ20がフルラッチ位置、ハーフラッチ位置に保持されるようになっている。上記構成以外は、第1実施形態と同様であるので、同一の部位には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0026】
本実施形態の構成によっても第1実施形態と同様に、1対の対向軸部71,72が一体形成されて1部品になっているので、それらが2部品であった従来のドアロック装置よりコストダウンを図ることができると共に強度アップが可能になる。
【0027】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0028】
(1)前記実施形態では、第1及び第2の対向軸部71,72の間の連絡軸部73が直線状に延びていたが、連絡軸部は円弧状に湾曲していてもよい。
【0029】
(2)前記実施形態において、背面金属プレート60のみを廃止した構成にしてもよいし、また、樹脂ボディ50及び背面金属プレート60の両方を廃止してもよい。樹脂ボディ50及び背面金属プレート60の両方を廃止した場合には、金属ベースプレート11側にトーションバネ等を組み付けると共に、1対の対向軸部71,72の基端側に段差面を設けて、それら段差面と金属ベースプレート11との間でラッチ20及びポール30を挟んで位置決めすればよい。
【0030】
(3)前記実施形態のドアロック装置10は、車両のドアに取り付けられていたが、建物のドアに取り付けられるドアロック装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係るドアロック装置のドアの正面図
【図2】図1のA−A切断面における断面図
【図3】ラッチがアンラッチ位置に配置されたドアロック装置の正断面図
【図4】ラッチがハーフラッチ位置に配置されたドアロック装置の正断面図
【図5】ラッチがフルラッチ位置に配置されたドアロック装置の正断面図
【図6】第2実施形態に係るドアロック装置の正断面図
【図7】図6のB−B切断面における側断面図
【図8】従来のドアロック装置の正面図
【図9】(A)従来のドアロック装置の通常の状態の側面図(B)従来のドアロック装置が変形した状態の側面図
【符号の説明】
【0032】
10 ドアロック装置
11 金属ベースプレート
11K ベース貫通孔
12 ストライカ受容溝
20 ラッチ
30 ポール
40 ストライカ
50 樹脂ボディ
60 背面金属プレート
70 屈曲軸部品
71,72 対向軸部
71A,72A 先端小径部
71D 段差面
72E 段差面
73 連絡軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアに取り付け可能な金属ベースプレートと、前記金属ベースプレートに形成されて、ドア枠に備えたストライカが進入可能なストライカ受容溝と、前記ストライカ受容溝に進入した前記ストライカと噛み合って回動するラッチと、前記ラッチと係合し、そのラッチがストライカとの係合を深めるラッチ係合方向に回動することを許容しかつその逆のラッチ解除方向への回動を規制するポールとを備えたドアロック装置において、
金属棒の中間部を屈曲させてなり、両端部に互いに平行な1対の対向軸部を有する屈曲軸部品を設け、前記1対の対向軸部の先端部を前記金属ベースプレートにそれぞれ固定し、一方の前記対向軸部に前記ラッチを回動可能に軸支する一方、他方の前記対向軸部に前記ポールを回動可能に軸支したことを特徴とするドアロック装置。
【請求項2】
前記1対の対向軸部の先端部を、前記金属ベースプレートにおける前記ストライカ受容溝を間に挟んだ2箇所にそれぞれ固定したことを特徴とする請求項1に記載のドアロック装置。
【請求項3】
前記1対の対向軸部の先端部を段付き状に縮径して先端小径部を形成し、前記金属ベースプレートに形成されたベース貫通孔の開口縁に前記先端小径部の基端側の段差面を突き当て、前記ベース貫通孔に通された前記先端小径部の先端をカシメて抜け止めしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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