説明

ドライ型プレミックスモルタル組成物

【課題】モルタルの配合や、モルタルの施工条件等に影響されることなく、モルタル施工面における白華を生ずることのないドライ型プレミックスモルタル組成物の提供。
【解決手段】セメントとしてアルミナセメントを用いたドライ型プレミックスモルタル組成物。前記ドライ型プレミックスモルタル組成物をアルミナセメントと、細骨材と、混和材料とを含んだ構成とするドライ型プレミックスモルタル組成物。前記ドライ型プレミックスモルタル組成物をアルミナセメントと、細骨材としての軽量骨材又は普通骨材と、再乳化形粉末樹脂と、増粘剤と、凝結・硬化時間調節剤と、減水剤と、補強短繊維と、揮発性有機化合物の除去材と、抗菌材とを含んだ構成とするドライ型プレミックスモルタル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁仕上げや、床仕上げ等の左官用モルタルなどに都合良く用い得るドライ型プレミックスモルタル組成物の提供、特に、モルタル面に白華を生ずることのないドライ型プレミックスモルタル組成物の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁仕上げや床仕上げに用いられているモルタルは、塗り込まれたモルタルの凝結・硬化に伴って、表面に白華を生ずる傾向を有していた。
【0003】
かかるモルタル化粧面に生ずる白華は、セメントの水和物中の水酸化カルシウムが塗り込まれたモルタルの表面で炭酸ガスと反応し、この塗り込まれたモルタル表面に炭酸カルシウムを生ずることに起因するものであって、モルタルの配合に工夫を凝らしたり、モルタルの施工・養生等に工夫を凝らして、極力、この種の白華を生じないようにしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モルタル施工に際して、外気温が低かったり、また、塗り込まれたモルタル面が風に晒されたりする等の養生条件では、セメントや骨材や混和材料等の配合比率に工夫を凝らしたり、モルタル養生に工夫を凝らしても、モルタル面に必然的に白華を生ずる不具合を避けることができなかった。
【0005】
かかるモルタル面における白華は、外気温の低い状態でモルタル施工をなした際に、塗り込まれたモルタル側がセメントの水和熱によって表面側よりも高温となったり、塗り込まれたモルタル表面が風によって水分を奪われたりすることに伴って、モルタルの内部側から表面側に向けてセメントの水和物が順次に移動し、この移動して当該モルタル表面に順次に滲み出される水酸化カルシウムが炭酸ガスと反応し、当該モルタル表面に白華をもたらす炭酸カルシウムを順次に生成することから、その発生を防ぎ切れないものであった。
【0006】
この発明に係るドライ型プレミックスモルタル組成物は、モルタルの配合や、モルタルの施工条件等に影響されることなく、モルタル面に白華を何等生ずることのないドライ型プレミックスモルタル組成物の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明にあっては、セメントとしてアルミナセメントを用いたことを特徴とするドライ型プレミックスモルタル組成物としてある。
【0008】
また、前記構成に係るドライ型プレミックスモルタル組成物を、アルミナセメントと、細骨材と、混和材料とを含んでなる構成としてある。
【0009】
このように構成されるドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、このドライ型プレミックスモルタル組成物を用いて都合良く壁や床仕上げ等をなすことができ、しかも、モルタルの仕上がり面に白華を生ずることがない。
【0010】
更に、かかるドライ型プレミックスモルタル組成物において、細骨材が軽量骨材であることを特徴とするドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、軽量なモルタル材として用い得ると共に仕上がり面に白華を生ずることのないモルタル面を構成することができる。
【0011】
更に、この軽量骨材を無機質の人工軽量骨材としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、軽量で、しかも、安定なモルタル材として用い得ると共に仕上がり面に白華を生ずることのないモルタル面を構成することができる。
【0012】
更に、この人工軽量骨材を、5〜100μmの粒径で、しかも、0.15〜0.3の比重の無機質発泡体としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、より軽量で、しかも、断熱性に優れたモルタル材として用い得ると共に仕上がり面に白華を生ずることのないモルタル面を構成することができる。
【0013】
ついで、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物における細骨材を砂、砕砂等の普通骨材としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、壁面用モルタルとしてはもとより各種の構造用のモルタルとして、例えば、床用モルタル等としても効果的に用いることができ、白華を生ずることのないモルタルの仕上がり面を構成することができる。
【0014】
更に、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物を、アルミナセメントと、細骨材としての軽量骨材及び普通骨材の双方またはいずれか一方と、再乳化形粉末樹脂と、増粘剤と、凝結・硬化時間調節剤と、減水剤と、補強短繊維と、揮発性有機化合物の除去材と、抗菌材とを含んでなる構成とすることによよって、ひび割れ等を生ずることが無く、しかも、抗菌機能及び空気中の揮発性有機化合物の除去効果を併せ有すると共に白華を生ずることのない各種モルタルを構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明にかかるドライ型プレミックスモルタル組成物は、白華を生じないようにモルタル組成物の配合に格別の配慮を施したり、白華を生じないようにモルタル施工時に格別の配慮を施したり、白華を生じないようにモルタルの養生に格別の配慮を施したりすることなく、白華を生ずることなく容易にモルタル施工をなし得るドライ型プレミックスモルタル組成物の提供を目的としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明を実施するための最良の形態に係るドライ型プレミックスモルタル組成物を具体的に説明する。
【0017】
この発明を実施するための最良の形態に係るドライ型プレミックスモルタル組成物は、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を構成するセメントとしてアルミナセメントを用いた構成としてある。
ここで、ドライ型プレミックスモルタル組成物とは、水等を加えて練り混ぜることによって施工に都合良く用い得るセメントモルタルとなすことのできる乾燥状態の混合物を称する。
【0018】
また 、前記形態に係るドライ型プレミックスモルタル組成物を、アルミナセメントと、細骨材と、混和材料とを含んでなるドライ型プレミックスモルタル組成物として構成することができる。
【0019】
このように構成されるドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、このドライ型プレミックスモルタル組成物を用いて都合良く壁や床等におけるモルタル施工をなすことができ、しかも、モルタルの仕上がり面に白華を生ずることがない。
【0020】
前記ドライ型プレミックスモルタル組成物にあって、細骨材を軽量骨材としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、軽量なモルタル材として用い得ると共に仕上がり面に白華を生ずることのないモルタルを構成することができる。
【0021】
更に、この軽量骨材を無機質の人工軽量骨材としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、軽量で、しかも、安定なモルタル材として用い得ると共に仕上がり面に白華を生ずることのないモルタルを構成することができる。
【0022】
更に、この人工軽量骨材を、5〜100μmの粒径で、しかも、0.15〜0.3の比重の無機質発泡体としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、より軽量で、しかも、断熱性に優れたモルタル材として用い得ると共に仕上がり面に白華を生ずることのないモルタルを構成することができる。
【0023】
また、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物における細骨材を砂、砕砂等の普通骨材としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、壁用モルタルとしてはもとより各種の構造用のモルタルとして、例えば、床用のモルタル等としても効果的に用いることができ、白華を生ずることのないモルタルの仕上がり面を構成することができる。
【0024】
更に、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物にあって、細骨材を軽量骨材及び普通骨材としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、その軽量骨材及び普通骨材の各配合軽量に対応して目的とする壁用モルタル、床用モルタル等として用い得ると共に仕上がり面に白華を生ずることのないモルタルを構成することができる。
【0025】
ついで、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物を、アルミナセメントと、細骨材としての軽量骨材及び普通骨材の双方またはいずれか一方と、再乳化形粉末樹脂と、増粘剤と、凝結・硬化時間調節剤と、減水剤と、顔料と、補強短繊維と、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compoundsであって、VOCと略称される。)の除去材と、抗菌材とを含んでなる構成としたドライ型プレミックスモルタル組成物にあっては、ひび割れ等を生ずることが無く、しかも、抗菌機能及び空気中の揮発性有機化合物の除去効果を併せ有し、しかも、仕上がり面に白華を生ずることのないモルタルを構成することができる。
【0026】
このような構成からなるドライ型プレミックスモルタル組成物に水を加え、練り混ぜて壁や床等に用いた際に、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物に含まれているアルミナセメントの水和物が炭酸ガスに反応して炭酸カルシウムを生ずる成分を有しておらず、壁や床等のモルタル面に白華を生ずる不具合がない。
【0027】
かかるドライ型プレミックスモルタル組成物は、例えば、アルミナセメント、軽量細骨材として無機質超微粒発泡体等の人工超軽量骨材、補強短繊維、再乳化形粉末樹脂、揮発性有機化合物の除去材、抗菌材、増粘剤、凝結・硬化時間調節剤、顔料、高性能減水剤を含んでいる構成としてある。
また、例えば、必要に応じて、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物における軽量細骨材に代えて珪砂等の普通細骨材を配合して当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を構成する。
また、例えば、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物における軽量細骨材と共に珪砂等の普通細骨材を当該ドライ型プレミックスモルタル組成物に配合することによってドライ型プレミックスモルタル組成物を構成する。
【0028】
また、かかるドライ型プレミックスモルタル組成物は、例えば、アルミナセメントと人工軽量細骨材としての無機質超微粒中空パーライトと再乳化形粉末樹脂と、微量のメチルセルロースと、繊維長さが5mmのアジパミド有機系繊維と、凝結調整剤とを含む構成とすることができる。
【0029】
また、かかるドライ型プレミックスモルタル組成物は、例えば、アルミナセメントと、砂、珪砂、寒水砂のうちの一種以上からなる普通細骨材と、微量のメチルセルロースと、高性能減水剤とを含む構成とすることができる。
【0030】
更に、かかるドライ型プレミックスモルタル組成物は、例えば、アルミナセメントと人工軽量細骨材としての無機質超微粒中空パーライト及び珪砂、寒水砂等の普通細骨材と、再乳化形粉末樹脂と、微量のメチルセルロースと、繊維長さが5mmのアジパミド有機系繊維と、凝結調整剤とを含む構成とすることができる。
【0031】
ここで用いられる軽量細骨材は、いわゆる普通細骨材に比して比重が軽く、軽量なモルタル、例えば、壁や床等の軽量化を可能とするモルタルに用い得るものであれば、いかなる軽量細骨材であっても良い。かかる軽量細骨材は、モルタル材の使用用途に対応して、例えば、造粒型人工軽量骨材や非造粒型人工軽量骨材等の構造用人工軽量骨材を配合して、床面等に用い得るドライ型プレミックスモルタル組成物とすることができる。また、例えば、構造用人工軽量骨材に比して比重の著しく小さな非構造用人工軽量骨材を配合してドライ型プレミックスモルタル組成物を構成することによって、壁面等に用い得るドライ型プレミックスモルタル組成物とすることができる。また、かかる軽量細骨材を発砲タイプの細骨材とすることによって、軽量で、しかも、断熱性に優れたモルタルを構成することができ、軽量で、しかも、断熱性に優れた壁面のモルタル仕上げや、床面のモルタル仕上げ等をなすことができる。
【0032】
かかる軽量細骨材として、例えば、無機質発泡体の超微粒子を用いることができる。かかる無機質発泡体の超微粒子として、例えば、粒径が5〜100μmの無機質の中空発泡体を用いることができる。
【0033】
また、この軽量細骨材として、例えば、その比重が0.15〜0.3の無機質発泡体の超微粒子を用いることができる。
かかる無機質発泡体の超微粒子として、シラスバルーンを用いることができる。
【0034】
かかる軽量細骨材を、例えば、シラスバルーン等の無機質発泡体の超微粒子によって構成することで、より軽量で、且つ、断熱性に優れたモルタル、例えば、各種の仕上げモルタルを構成するドライ型プレミックスモルタル組成物を得ることができる。
【0035】
かかる軽量細骨材を、更に、粒径が5〜100μmの範囲内にあり、しかも、その比重が0.15〜0.3の範囲内にある無機質発泡体を、アルミナセメント100容量部に対して150〜400容量部の範囲内で配合することによって、より軽量で、且つ、断熱性に優れたモルタル、例えば、各種の仕上げモルタルを構成するドライ型プレミックスモルタル組成物を構成することができる。
【0036】
前記アルミナセメント及び細骨材に配合される混和材料は、ドライ型プレミックスモルタル組成物の使用用途に対応して、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物が当該用途に都合の良い各種混和材料をそれぞれ必要量含むように配合される。
【0037】
かかる混和材料は、ドライ型プレミックスモルタル組成物の用途に対応するように適宜必要とされる混和剤や混和材を前記アルミナセメント及び細骨材に対して必要量を配合してドライ型プレミックスモルタル組成物を構成する。
【0038】
すなわち、構成されるドライ型プレミックスモルタル組成物に、その用途に対応する強度特性、耐久特性、施工特性等を、適宜必要に応じてもたらす混和剤、混和材を選択的に、且つ、必要量を配合してドライ型プレミックスモルタル組成物を構成する。
【0039】
かかる混和材をなす有機混和材としてドライ型プレミックスモルタル組成物に含められる再乳化形粉末樹脂は、モルタル表面に生成される被膜によってモルタルの乾燥を遅らせてセメントの水和時間を十分に維持し得るように配合してあり、例えば、エチレン酢酸ビニル系、アクリル系、スチレンアクリル系又はこれらの混合系からなる粉末エマルション(合成樹脂エマルションを噴霧・乾燥した粉末)を用いることによって、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いたモルタル施工に際して、モルタル表面に効果的に皮膜を生成し、当該被膜でモルタルの乾燥を遅らせ、セメントの水和時間を必要かつ十分に維持し得るようにする。
【0040】
また、かかる混和剤としてドライ型プレミックスモルタル組成物に含められる増粘剤は、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いたモルタル施工に際して、モルタルが都合良くのびて、左官作業が容易となるように配合してあり、例えば、メチルセルロース等のセルロース系増粘剤、グアーガム系増粘剤、変性ポリサッカライド増粘剤、ヒドロキシエチルセルロース増粘剤等の水溶性高分子化合物を用いることによって、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いたモルタル施工に際してのモルタルののびを良好とし、更に、当該増粘剤の保水機能によってセメントの水和時間を必要かつ十分に保ち得るようにする。
【0041】
また、かかる混和剤としてドライ型プレミックスモルタル組成物に含められる凝結・硬化時間調節剤は、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いたモルタル施工に際して、モルタルが都合良く凝結・硬化する時間を維持し得るように配合される。かかる凝結・硬化時間調節剤は、例えば、酢酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム水和物、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、イソプロピルアルコール、グリコール、グリセリン、カゼイン、リグニン、カリウム、リチウム塩、クエン酸カリウム、クエン酸カリウムナトリウム、無水クエン酸、グルコン酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、炭酸リチウム、酒石酸、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム等の水溶性高分子化合物が用いられ、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いたモルタル施工に際して、モルタルの凝結・硬化を当該モルタルの凝結・硬化に都合の良い時間となるように配合する。
【0042】
また、かかる混和剤としてドライ型プレミックスモルタル組成物に含められる減水剤は、所用のスランプを得るのに要すべき水量を所定の水量で足りるように所用量を配合する。例えば、高性能減水剤を所用量配合してドライ型プレミックスモルタル組成物を構成することによって、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いて所要のスランプを得るのに必要な単位水量を当該配合高性能減水剤によって減少させる。
【0043】
また、かかる混和材としてドライ型プレミックスモルタル組成物に含められる各種の着色材によって、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いたモルタル施工に際して、モルタルを所望の色合いを有するものとして仕上げることができる。例えば、アルミナセメントの凝結・硬化を妨げない無機質系顔料をドライ型プレミックスモルタル組成物に含めることによって、仕上げモルタルを所望の色合いに都合良く仕上げることができる。
【0044】
また、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物に、珪砂等の普通細骨材を必要量、すなわち、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いて仕上げられる床面や壁面等に所要の強度をもたらし得る量の普通細骨材を配合し、床仕上げ等に用いられるドライ型プレミックスモルタル組成物を構成することができる。かかる砂、砕砂等の普通細骨材は、前記軽量細骨材と共に配合されてドライ型プレミックスモルタル組成物を構成するようにしてあっても、また、前記軽量細骨材に代えて当該普通細骨材を細骨材として当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を構成するようにしてあってもよい。
【0045】
また、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物に各種繊維からなる補強材料を含ませて当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を構成することによって、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いたモルタルに所望の、例えば、衝撃強さ、耐ひび割れ性、耐久性等の各種特性をもたらすことができる。例えば、有機及び無機の双方又はいずれか一方、天然及び合成の双方又はいずれか一方からなる比較的短い繊維、より具体的には、炭素繊維、ガラス繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ナイロン繊維、セルロース等の各種の繊維を当該ドライ型プレミックスモルタル組成物に含ませることによって、衝撃強さ、耐ひび割れ性、耐久性を備えた仕上げモルタル等のモルタルを構成することができる。かかる繊維は、ドライ型プレミックスモルタル組成物の用途に対応した長さを備えたものが用いられ、典型的には、その繊維長さが3mm〜15mmの各種繊維が用いられる。
【0046】
また、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物にホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、p−ジクロロベンゼン等の揮発性有機化合物(VOC)の除去材を含ませて当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を構成することによって、壁や床等のモルタル面において、これらの揮発性有機化合物を除去することができる。例えば、アルミナセメントの初期の水和反応時におけるアルカリ成分中において変化することのない珪藻土微粉末、竹炭微粉末、ゼオライト微粉末等の無機質物質を含ませた当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いて壁や床等のモルタル仕上げをなすことによって、室内に存在する各種の揮発性有機化合物を効果的に除去することができる。
【0047】
また、前記ドライ型プレミックスモルタル組成物に抗菌材を含ませて当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を構成することによって、当該ドライ型プレミックスモルタル組成物を用いた床や壁等のモルタル仕上げ面における抗菌効果と、このモルタル仕上げ面における吸放湿に伴う浮遊細菌等の増殖の防止等が想定される。例えば、対応の予定される菌類に効果を奏する抗菌剤を水溶性高分子のエマルション中に分散し、この抗菌剤の含まれた水溶性高分子のエマルションを発泡軽量骨材に付着させ、あるいは、多孔質軽量骨材に含浸させて得られた抗菌材をドライ型プレミックスモルタル組成物に含ませ、この抗菌材の含まれたドライ型プレミックスモルタル組成物を用いて壁や床面等のモルタル仕上げをなすことによって、当該壁面や床面に対して前記の抗菌効果をもたらすことができる。
【0048】
まず、「骨材として軽量細骨材を用いたドライ型プレミックスモルタル組成物」の典型例について説明する。
【0049】
この骨材として軽量細骨材を用いた典型的なドライ型プレミックスモルタル組成物は、例えば、アルミナセメントと、軽量細骨材としての無機質発泡体と、再乳化形粉末樹脂と、微量のメチルセルロースと、繊維長さが3mm〜15mmの繊維と、凝結・硬化時間調節剤とを含むものとして構成することができる。かかるドライ型プレミックスモルタル組成物に水を加えて練り混ぜて、壁や床等の仕上げ用モルタルとして用いたところ、当該仕上げモルタルは、ひび割れ等が発生せず、軽量で、且つ、断熱性に優れ、しかも、白華を生ずることがなかった。
【0050】
かかる骨材として、例えば、無機質発泡体の超微粒子として、シラスバルーンをアルミナセメント100容量部に対して150〜400容量部の割で配合することによって、白華を生ずることがなく、軽量で、且つ、断熱性に優れたモルタル仕上げに用いうるドライ型プレミックスモルタル組成物を都合良く得ることができた。
【0051】
また、かかる骨材として軽量細骨材を用いた典型的なドライ型プレミックスモルタル組成物は、例えば、アルミナセメント100容量部及び軽量骨材としての無機質発泡体(例えば、無機質超微粒子発泡体)150〜400容量部と、
アルミナセメントに対して、補強短繊維(例えば、微細な有機系繊維)を0.1容量%〜7.0容量%、再乳化形粉末樹脂を5容量%〜10容量%、抗菌材を1.5容量%〜10.0容量%、揮発性有機化合物の除去材(VOC除去材)を0.5容量%〜10容量%と、
微量の増粘剤とによって構成した。
【0052】
このようにして得られたドライ型プレミックスモルタル組成物に水を加えて練り混ぜ、壁塗り用や床塗り用等のモルタルを構成して壁仕上げや床仕上げをなすことによって、養生時における保水性が良く、ひび割れ等を生ずることがなく、断熱性に優れ、しかも、抗菌効果及びVOC除去効果を備えた白華を生ずることのない壁仕上げや床仕上げ等をなすことができた。
【0053】
また、かかる骨材として軽量細骨材を用いた典型的なドライ型プレミックスモルタル組成物は、例えば、アルミナセメント100容量部と、人工軽量細骨材としての無機質超微粒子中空パーライト400容量部と、再乳化形粉末樹脂5容量部と、微量のメチルセルロースと、繊維長さが5mmのアジパミド有機系繊維0.1〜1.0容量部と、有機系高分子減水剤0.05〜1.0容量部とを混合して得た。
【0054】
このようにして得られたドライ型プレミックスモルタル組成物に水を加えて練り混ぜ、壁塗り用モルタルを構成して壁仕上げに用いることによって、養生時における保水性が良く、ひび割れ等を生ずることがなく、断熱性に優れ、しかも、抗菌効果及びVOC除去効果を備えた白華を生ずることのない壁仕上げ用モルタルを得ることができた。また、同様にして床仕上げ用のモルタルを得ることができた。
【0055】
また、顔料を含めてドライ型プレミックスモルタル組成物を構成する場合にあっては、このドライ型プレミックスモルタル組成物に含まれる顔料は、典型的には、アルミナセメントの硬化を妨げない無機質系顔料を用い、その混入量を、アルミナセメントに対して8.0wt%以内とすることが好ましい。
【0056】
ついで「骨材として普通細骨材を用いたドライ型プレミックスモルタル組成物」の典型例について説明する。
【0057】
この骨材として普通細骨材を用いた典型的なドライ型プレミックスモルタル組成物は、例えば、砂、珪砂、寒水砂のうちの一種以上からなる普通細骨材と、アルミナセメントと、微量のメチルセルロースと、高性能減水剤を含むものとして構成することができる。かかるドライ型プレミックスモルタル組成物に水を加えて練り混ぜ、床や壁に用いたところモルタルの仕上げ面のいずれにも白華を生ずることがなかった。
【0058】
かかる骨材として、例えば、砂、珪砂、寒水砂のうちの一種以上からなる普通細骨材をアルミナセメント100容量部に対して100〜350容量部の割で配合することによって、白華を生ずることのない床仕上げや壁仕上げに都合の良いドライ型プレミックスモルタル組成物を得ることができる。
【0059】
かかるドライ型プレミックスモルタル組成物は、より具体的には、アルミナセメント100容量部と、砂、珪砂、寒水砂のうちの一種以上からなる普通細骨材100〜350容量部と、微量のメチルセルロースと、有機系高分子減水剤0.05〜1.0容量部とを混合して得ることができる。
【0060】
また、かかるドライ型プレミックスモルタル組成物を顔料を含めて構成する場合にあっては、このドライ型プレミックスモルタル組成物に含まれる顔料は、典型的には、アルミナセメントの硬化を妨げない無機質系顔料を用い、その混入量を、アルミナセメントに対して8.0wt%以内とすることが好ましい。
【0061】
このようにして得られたドライ型プレミックスモルタル組成物に水を加えて練り混ぜ、床や壁に用いたところ壁や床のモルタル仕上げ面のいずれにも白華を生ずることがなかった。
【0062】
かかるドライ型プレミックスモルタル組成物を、抗菌材、揮発性有機化合物の除去材(VOC除去材)を含んだ構成とすることによって、抗菌効果を有するモルタル面、揮発性有機化合物を捕捉するモルタル面を床や壁等にもたらすことができる。
【0063】
実施例1
アルミナセメント100容量部と軽量細骨材としての無機質超微粒中空パーライト300容量部と、
アルミナセメントに対して再乳化形粉末樹脂を7.0容量%、繊維長さ5mmの有機系繊維を0.2容量%、凝結調整剤を0.8容量%、有機系高分子減水剤を0.05〜0.2容量%と、
微量のメチルセルロースと
を混合してドライ型プレミックスモルタル組成物を得た。
【0064】
このドライ型プレミックスモルタル組成物に対して、水を混入して練り混ぜてモルタルを構成した。
【0065】
このモルタルの硬化後における曲げ強度は2.4N/mm、圧縮強度は3.9N/mm、引張り強度は1.3N/mm、乾燥比重は0.75、熱伝導率は0.14kcal/m.h℃であって、白華を生ずることがなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントとしてアルミナセメントを用いたことを特徴とするドライ型プレミックスモルタル組成
物。
【請求項2】
アルミナセメントと、細骨材と、混和材料とを含んでなることを特徴とする請求項1に記載のドライ型プレミックスモルタル組成物。
【請求項3】
前記細骨材が軽量骨材であることを特徴とする請求項2に記載のドライ型プレミックスモルタル組成物。
【請求項4】
前記軽量骨材が無機質の人工軽量骨材であることを特徴とする請求項3に記載のドライ型プレミックスモルタル組成物。
【請求項5】
前記人工軽量骨材が、5〜100μmの粒径で、しかも、0.15〜0.3の比重の無機質発泡体よりなることを特徴とする請求項4に記載のドライ型プレミックスモルタル組成物。
【請求項6】
前記細骨材が砂、砕砂等の普通骨材であることを特徴とする請求項2に記載のドライ型プレミックスモルタル組成物。
【請求項7】
アルミナセメントと、細骨材としての軽量骨材及び普通骨材の双方またはいずれか一方と、再乳化形粉末樹脂と、増粘剤と、凝結・硬化時間調節剤と、減水剤と、補強短繊維と、揮発性有機化合物の除去材と、抗菌材とを含んでなる請求項1に記載のドライ型プレミックスモルタル組成物。

【公開番号】特開2006−335597(P2006−335597A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161762(P2005−161762)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(301028679)株式会社サエキ (1)
【Fターム(参考)】