説明

ドラム式洗濯機

【課題】撹拌を行うドラム式洗濯機において、簡単な駆動構成でありながら、洗濯物の撹拌が充分になされる構造を備えたドラム式洗濯機を提供すること。
【解決手段】水槽2内に回転軸心を略水平にして回転自在に支持され洗濯物10を収容する有底円筒形の回転槽3の底面において回転自在に支持される撹拌部材12と、回転槽3および撹拌部材12を回転させるモータ13と、モータ13の回転を回転槽3と撹拌部材12とに選択的に切り換えるクラッチ手段14とを備え、クラッチ手段14は、モータ13の回転を回転槽3に伝達せず、撹拌部材12のみに伝達し撹拌部材12のみを回転させることにより洗濯物10を撹拌する第1モードと、モータ13の回転を回転槽3および撹拌部材12の両方に伝達し、回転槽3と撹拌部材12とを同期回転させることにより洗濯物10を撹拌する第2モードとを選択的に切り換えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸心を略水平にして回転自在に支持される回転槽と、回転槽内に位置して洗濯物を撹拌する撹拌部材とを有するドラム式洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドラム式洗濯機は、回転ドラムの回転速度と相対的な回転速度差を有する回転部材を回転ドラムの内底部に設けた構成をしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来のドラム式洗濯機を示すものである。図8に示すように、筐体52内に図示しないサスペンション構造により水槽53が支持され、この水槽53内に有底円筒形に形成された回転槽55が配置されている。水槽53および回転槽55は、開口端側を筐体52の正面側に、底面側を筐体52の背面側にして支持され、回転槽55は水槽53の底面に取り付けられたモータ54によって回転駆動される。回転槽55の開口端側に対向させて筐体52に扉体58を設けており、使用者は扉体58を開くことで、回転槽55に対して洗濯物を出し入れすることができる。
【0004】
回転槽55の内周壁には、複数の突起体59が設けられている。回転槽55に固定された槽回転軸51はモータ54のロータ56に直結しており、水槽53に取り付けられた槽回転軸受61で支持されている。この槽回転軸51は中空構造になっており、撹拌部材70に固定された回転軸50が軸心を一致するように挿入され図示しない軸受で支持されている。モータ54の後部には減速機または増速機71が取り付けられ、槽回転軸51の回転数を減速または増速して回転軸50に伝達することにより、回転槽55と撹拌部材70の回転速度に相対的な回転速度差を生じさせるようにしている。
【0005】
上記構成において、洗濯工程または乾燥工程で、モータ54を駆動し、回転槽55を回転させると、洗濯物は回転槽55の内周壁の突起体59で上方に持ち上げられた後、適当な高さで落下するといった撹拌動作と、回転槽55内で相対的な回転速度差を持って回転する撹拌部材70によってかき回される撹拌動作により、複合的な撹拌動作を受けることになる。このため、撹拌部材70を有さず、回転槽55の回転だけで撹拌動作を行う従来のドラム式洗濯乾燥機に比べて、洗濯物を撹拌する能力が向上し、十分な洗浄能力と乾燥能力を確保することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−253567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、減速機または増速機が必要となるため、複雑な構成となり、駆動部が大型化し、ドラム式洗濯機本体内への収納が困難となる上、コストアップするという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、回転槽と撹拌部材に相対的な回転速度差を与えることにより、撹拌を行うドラム式洗濯機において、簡単な駆動構成でありながら、洗濯物の撹拌が充分になされる構造を備えたドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために本発明のドラム式洗濯機は、洗濯水を貯える水槽と、前記水槽内に回転軸心を略水平にして回転自在に支持され洗濯物を収容する有底円筒形の回転槽と、前記回転槽の底面において回転自在に支持される撹拌部材と、前記回転槽および前記撹拌部材を回転させるモータと、前記モータの回転を前記回転槽と前記撹拌部材とに選択的に切り換えるクラッチ手段とを備え、前記クラッチ手段は、前記モータの回転を前記回転槽に伝達せず、前記撹拌部材のみに伝達し前記撹拌部材のみを回転させることにより前記洗濯物を撹拌する第1モードと、前記モータの回転を前記回転槽および前記撹拌部材の両方に伝達し、前記回転槽と前記撹拌部材とを同期回転させることにより前記洗濯物を撹拌する第2モードとを選択的に切り換えるようにしたものである。
【0010】
これによって、洗濯工程または乾燥工程において、クラッチ手段を第1モードとして、モータを回転させると、洗濯物は回転槽内において、撹拌部材から回転力を受け、第1の撹拌動作を受けることになる。また、クラッチ手段を第2モードとして、モータを回転させると、回転槽が撹拌部材と同期して回転し、洗濯物は、上方に持ち上げられた後、適当な高さで落下するといった第2の撹拌動作を受けることになる。クラッチ手段を第1モード、第2モードと適宜切り換えることにより、洗濯物に複合的な撹拌動作を与えることができ、洗濯物の動きに大きな変化をもたせることができるため、撹拌効果が高まり、簡単な駆動構成で、洗浄能力や乾燥能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クラッチ手段を第1モード、第2モードと適宜切り換えることにより、洗濯物に複合的な撹拌動作を与えることができ、洗濯物の動きに大きな変化をもたせることができるため、撹拌効果が高まり、簡単な駆動構成で、洗浄能力や乾燥能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の縦断面図
【図2】同ドラム式洗濯機の外観を示す斜視図
【図3】同ドラム式洗濯機の第1モード時の要部断面図
【図4】同ドラム式洗濯機の第2モード時の要部断面図
【図5】本発明の実施の形態2におけるドラム式洗濯機の縦断面図
【図6】本発明の実施の形態3におけるドラム式洗濯機の動作説明図
【図7】本発明の実施の形態4におけるドラム式洗濯機の動作説明図
【図8】従来のドラム式洗濯機の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、洗濯水を貯える水槽と、前記水槽内に回転軸心を略水平にして回転自在に支持され洗濯物を収容する有底円筒形の回転槽と、前記回転槽の底面において回転自在に支持される撹拌部材と、前記回転槽および前記撹拌部材を回転させるモータと、前記モータの回転を前記回転槽と前記撹拌部材とに選択的に切り換えるクラッチ手段とを備え、前記クラッチ手段は、前記モータの回転を前記回転槽に伝達せず、前記撹拌部材のみに伝達し前記撹拌部材のみを回転させることにより前記洗濯物を撹拌する第1モードと、前記モータの回転を前記回転槽および前記撹拌部材の両方に伝達し、前記回転槽と前記撹拌部材とを同期回転させることにより前記洗濯物を撹拌する第2モードとを選択的に切り換えるようにしたドラム式洗濯機としたものであり、洗濯または乾燥工程において、クラッチ手段を第1モードとして、モータを回転させると、洗濯物は回転槽内において、撹拌部材から回転力を受け、第1の撹拌動作を受けることになり、また、クラッチ手段を第2モードとして、モータを回転させると、回転槽が撹拌部材と同期して回転し、洗濯物は、上方に持ち上げられた後、適当な高さで落下するといった第2の撹拌動作を受けることになり
、クラッチ手段を第1モード、第2モードと適宜切り換えることにより、洗濯物に複合的な撹拌動作を与えることができ、洗濯物の動きに大きな変化をもたせることができるため、撹拌効果が高まり、簡単な駆動構成で、洗浄能力や乾燥能力を向上させることができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明において、回転槽内の洗濯物の量を検知する洗濯物量検知手段を備え、前記洗濯物量検知手段により検知した洗濯物の量が第1の所定値より少ないときには、クラッチ手段を第2モードとするようにしたドラム式洗濯機とすることにより、洗濯物の量が少なすぎる場合には、第1モードでは撹拌部材が洗濯物に作用しない場合が発生し得るが、そのような場合、第2モードに切り換えることにより、回転槽を撹拌部材と同期回転させ、洗濯物に第2の撹拌動作だけを与え、このとき、洗濯物の量が少ないため、第2の撹拌動作だけでも、洗濯物を大きく動かすことができるため、十分な洗浄能力や乾燥能力を確保することができる。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、モータの負荷を検知するモータ負荷検知手段を備え、クラッチ手段を第1モードとした状態で前記モータを回転させているときに、前記モータ負荷検知手段により検知した前記モータの負荷が第2の所定値より小さいときには、前記クラッチ手段を第2モードに切り換えるようにしたドラム式洗濯機とすることにより、第1モードにおいて、撹拌部材に加わる負荷を直接的に検知するため、洗濯物に第1の撹拌動作を適切に与えることができているかどうかを精度よく検知でき、与えられていない場合には第2モードに適切に切り換えることができるため、十分な洗浄能力や乾燥能力を確保することができる。
【0016】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、モータの負荷を検知するモータ負荷検知手段を備え、クラッチ手段を第1モードとした状態で前記モータを回転させているときに、前記モータ負荷検知手段により検知した前記モータの負荷が第3の所定値を超えたときには、前記クラッチ手段を第2モードに切り換えるようにしたドラム式洗濯機とすることにより、第1モードにおいて、撹拌部材により洗濯物が受ける回転力が大きくなりすぎるようなときには、第2モードに切り換えることで、洗濯物の損傷を防止できる。
【0017】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、回転槽の底面を低位に傾斜させて設けたドラム式洗濯機、洗濯物は、回転槽の底面に位置する撹拌部材側へと重力により偏りやすくなるため、第1モードにおいて、洗濯物に対して、撹拌部材が第1の撹拌動作を与えやすくなり、洗浄能力や乾燥能力を向上させることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるドラム式洗濯機の縦断面図、図2は、同ドラム式洗濯機の外観を示す斜視図、図3は、同ドラム式洗濯機の第1モード時の要部断面図、図4は、同ドラム式洗濯機の第2モード時の要部断面図を示すものである。
【0020】
図1において、筐体1内にサスペンション5により水槽2が支持され、この水槽2内に有底円筒形に形成された回転槽3が配置されている。水槽2および回転槽3は、開口端側を筐体1の正面側に、底面側を筐体1の背面側にして、正面側から背面側に向けて水平方向から下向き傾斜となるように支持されている。回転槽3の開口端側に対向させて筐体1に扉体4を設けており、使用者は、図2に示すように、扉体4を開くことで、回転槽3に対して洗濯物10を出し入れすることができる。尚、水槽2の洗濯物出入口6の周囲には
、柔軟な弾性体によって形成されたベローズ7が配設され、扉体4を閉じると、その内面にベローズ7の一端が圧接し、水が水槽2内から外に飛び出すのを防止している。
【0021】
上記構成のように、回転槽3が傾斜配置され、その開口部に対向させて筐体1に扉体4を設けることにより、扉体4は筐体1の前に立つ人の顔方向に向くようになり、扉体4を開いて回転槽3に対して洗濯物10を出し入れする作業に際して腰を屈める程度が少なくなり、楽に洗濯物10を出し入れすることができる。従って、筐体1の正面に余裕のある空間を確保する必要もなく、洗面所などの狭いスペースに設置することが可能となり、狭い日本の住環境にも適合するドラム式洗濯乾燥機に構成することができる。
【0022】
回転槽3の内周壁には、複数の突起体11が設けられており、回転槽3を低速で回転させることにより、洗濯物10を突起体11で引っ掛けて上方に持ち上げることができる。また、回転槽3内の背面側には、撹拌部材12が回転槽3と回転軸芯を一致させて回転自在に設けられている。
【0023】
水槽2の下方には、水槽2内の水を排水する排水経路8が設けられており、排水経路8の途中には、経路を閉じたり開いたりする排水弁9が設けられている。洗濯物10を収納する回転槽3は、排水弁9を閉じた状態で水槽2内に水や洗剤等を貯えると洗濯室となる。
【0024】
また、排水弁9を開き、水槽2内に貯えられた水や洗剤等を排水経路8から排水し、回転槽3を高速で回転させると、洗濯物10は回転槽3の側面に遠心力により押し付けられる。このとき、洗濯物10に含まれる水分は、回転槽3の側面に設けられた複数の脱水穴3aから水槽2と回転槽3の間に抜け、排水経路8から排水される。このように、回転槽3は、脱水室にもなる。
【0025】
また、回転槽3内には、ヒータ21、送風手段22、送風経路23により温風が送風されるような構造となっており、温風送風時には、回転槽3は、乾燥室にもなる。乾燥工程における風の流れを以下に説明する。
【0026】
送風手段22により、送風された空気はヒータ21により加熱され、温風となり、送風経路23により水槽2および回転槽3の背面側に導かれ、水槽2の背面に設けられた吐出口24から水槽2内に吹き込まれる。水槽2内に吹き込まれた温風は、回転槽3の背面に設けられた穴25を通過し、回転槽3内に収納される洗濯物10に吹き付けられる。洗濯物10から水分を蒸発させ後の空気は、回転槽3の側面の脱水穴3aから水槽2と回転槽3の間に抜け、水槽2の前方に設けた吸込み口26から送風経路23へと導かれ、再び送風手段22に至る。図示していないが、送風手段22へと至るまでの送風経路23の途中には、洗濯物10から水分を蒸発させた後の空気を冷却除湿するための除湿手段が設けられている。
【0027】
水槽2の底面(背面)側には、撹拌部材12および回転槽3の回転の駆動源となるモータ13が設けられている。クラッチ手段14は、モータ13の回転を回転槽3と撹拌部材12とに選択的に切り換えるものである。以下にクラッチ手段14の構成を説明する。
【0028】
撹拌部材12とモータ13のロータ13bは撹拌部材回転軸27により連結され、モータ13の回転は、そのまま撹拌部材12に伝達される。図3に示すように、モータ13のステータ13aは、水槽2の底面側に固定される静止部材15に固定されている。撹拌部材回転軸27は、回転槽3と連結される槽回転軸16の中空部に取り付けられた2個の撹拌部材回転軸受28により、回転自在に支持されている。槽回転軸16は、静止部材15に取り付けられた2個の槽回転軸受17で回転自在に支持されており、回転槽3とは反対
側の端部は、モータ13のロータ13bと少し離れた位置で対向しており、スプライン16aを形成している。このスプライン16aには、これと嵌合しながら槽回転軸16の軸方向に、ロータ13b側または、ドラム3側へ往復移動できるように構成されるクラッチ板30が設けられている。
【0029】
クラッチ板30は、クラッチレバー29を介して、ギアードモータ等から構成されるアクチュエータ(図示せず)によって駆動される。クラッチ板30のロータ13b側には、複数の爪30aが形成されており、爪30aと対向するロータ13bには、爪30aと嵌合できるような穴部31が形成されている。クラッチ板30がロータ13b側へと移動したときには、クラッチ板30の爪30aは、ロータ13bの穴部31と嵌合し、クラッチ板30がドラム3側へと移動したときには、クラッチ板30の爪30aは、ロータ13bの穴部31から外れるように構成している。
【0030】
次に、上記したクラッチ手段14により、切り換え可能となる2つのモードについて説明する。
【0031】
第1モードでは、図3に示すように、アクチュエータにより、クラッチ板30をドラム3側へと移動させ、クラッチ板30の爪30aをロータ13bの穴部31から外す。この状態でモータ13を回転させると、回転駆動力は槽回転軸16には直接伝達されず、撹拌部材回転軸27が回転することになる。このため、モータ13の回転は、回転槽3には直接伝達されず、撹拌部材12を回転させることになる。
【0032】
このとき、回転槽3内に収納される洗濯物10は、撹拌部材12により、回転力を受け、第1の撹拌動作を受ける。すなわち、回転槽3は、回転フリー状態であるため、撹拌部材12から洗濯物10を介してモータ13の回転力を間接的に受けることになる。但し、この回転力は、洗濯物10の状態によって、変化するため、回転槽3は不定期に回転することになる。この不定期な回転槽3の回転により、洗濯物10はランダムに入れ替えられるといった撹拌作用も受ける。
【0033】
第2モードでは、図4に示すように、アクチュエータにより、クラッチ板30をロータ13b側へと移動させ、クラッチ板30の爪30aをロータ13bの穴部31と嵌合させる。ここで、クラッチ板30をロータ13b側へ移動させた初期の時点で、ロータ13bの穴部31の回転位置が爪30aと対向する位置関係になくても、モータ13のロータ13bを回転させることにより穴部31は、いずれ爪30aと対向する位置関係となり、嵌合させることができる。このとき、ロータ13bと槽回転軸16は、クラッチ板30を介して連結されるため、モータ13を回転させると、回転駆動力は槽回転軸16および撹拌部材回転軸27に伝達される。このため、回転槽3は、撹拌部材12と同期回転することになる。
【0034】
このとき、回転槽3内に収納される洗濯物10は、回転槽3の内周壁に設けられた複数の突起体11および撹拌部材12によって引っ掛けられ、上方に持ち上げられた後に、適当な高さで落下するといった第2の撹拌動作を受けることになる。
【0035】
上記構成により、洗濯または乾燥工程において、クラッチ手段14を第1モードまたは第2モードに適宜切り換えることにより、洗濯物10に複合的な撹拌動作を与えることができ、洗濯物10の動きに大きな変化をもたせることができるため、撹拌効果が高まり、洗浄能力や乾燥能力を向上させることができる。また、撹拌部材12と回転槽3に相対的な回転速度差を与えるのに、減速機構や増速機構等を必要とせず、簡単な駆動構成を実現している。
【0036】
また、回転槽3は、底面を低位に傾斜させて設けられているため、洗濯物10は、回転槽3の底面に位置する撹拌部材12側へと重力により偏りやすくなるため、第1モードにおいて、洗濯物10に対して、撹拌部材12が第1の撹拌動作を与えやすくなり、撹拌効果をより向上させることを可能にしている。
【0037】
脱水工程においては、クラッチ手段14を図4に示すような第2モードとし、モータ13を高速回転させ、回転槽3を高速回転させることにより、脱水を行う。
【0038】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2におけるドラム式洗濯機の縦断面図を示すものである。実施の形態1と同一構成は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
本実施の形態2のドラム式洗濯機は、まず、運転開始初期にクラッチ手段14を、図4に示すような第2モードとし、モータ13を所定の回転速度で高速回転させた後、モータ13への通電をOFFするような制御を行なう。このとき、洗濯物10の収納された回転槽3は、高速回転した後、慣性でしばらく惰性回転を続ける。この惰性回転時間は、回転槽3内に収納される洗濯物10の量が多いほど、慣性が大きくなるため、長くなり、洗濯物10の量が少ないほど、慣性が小さくなるため、短くなる。この惰性時間を図示しないタイマーにより、検知することで、回転槽3内の洗濯物量検知手段を構成している。
【0040】
例えば、図5に示すように、回転槽3内の洗濯物10の量が少なすぎるような場合、第1モードでは、撹拌部材12が洗濯物10に作用しない場合が発生し、洗濯物10に十分な撹拌動作を与えることができない。これを回避するため、前記洗濯物量検知手段により検知した洗濯物10の量が所定値より少ないときには、クラッチ手段14を第2モードとするような制御を行ない、回転槽3を撹拌部材12と同期回転させ、洗濯物10に第2の撹拌動作だけを与える。このとき、洗濯物10の量が少ないため、第2の撹拌動作だけでも、洗濯物10を大きく動かすことができるため、十分な洗浄能力や乾燥能力を確保することができる。
【0041】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3におけるドラム式洗濯機の動作説明図を示すものである。実施の形態1、2と同一構成は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施の形態3のドラム式洗濯機は、モータ13のロータ13bを回転させるときに、ステータ13aに流す電流値を検知することにより、モータ13のトルク(負荷)を検知する図示しないモータ負荷検知手段を備えている。クラッチ手段14を、図3に示すような第1モードとし、モータ13を回転させると、撹拌部材12が回転する。このとき、撹拌部材12に加わる負荷は直接的にモータ13のトルクとなり、回転槽3内の洗濯物10に第1の撹拌動作を適切に与えることができているかどうかをモータ付加検知手段で精度よく判定することができる。
【0043】
例えば、図5に示すように、回転槽3内の洗濯物10の量が少なすぎるような場合、第1モードでは撹拌部材12が洗濯物10に作用しないため、図6に示すように、回転トルクTは、撹拌部材12が洗濯物10に作用する最低限の回転トルクT1に対して、小さくなっている。このような場合、クラッチ手段14を図6に示すように切換え、図4に示すような第2モードとし、モータ13を回転させ、回転槽3を撹拌部材12と同期回転させ、洗濯物10に第2の撹拌動作だけを与える。このとき、洗濯物10の量が少ないため、第2の撹拌動作だけでも、洗濯物10を大きく動かすことができるため、十分な洗浄能力や乾燥能力を確保することができる。
【0044】
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4におけるドラム式洗濯機の動作説明図を示すものである。実施の形態1〜3と同一構成は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施の形態4のドラム式洗濯機は、クラッチ手段14を、図3に示すような第1モードとし、モータ13を回転させているとき、例えば、回転槽3内の洗濯物10の絡みがきつくなってきたような場合、撹拌部材12に加わる負荷が大きくなり、モータ13の回転トルクTが大きくなる。
【0046】
回転トルクTが大きければ大きいほど撹拌効果が大きくなるが、所定の回転トルクT2を超えると、洗濯物10に過負荷がかかり、損傷を与えてしまう可能性がある。このような場合、クラッチ手段14を、図7に示すように、図3に示すような第1モードから、図4に示すような第2モードに切換えた後、モータ13を回転させ、回転槽3を撹拌部材12と同期回転させ、洗濯物10に第2の撹拌動作だけを与える。これにより、洗濯物10をほぐし、絡みを解消するとともに、洗濯物10の損傷を防止することができる。
【0047】
なお、本実施の形態1〜4の構成では、回転槽3を傾斜配置させた乾燥機能を有するドラム式洗濯機としているが、これに限定されるものではなく、回転槽3の回転軸が水平方向となる乾燥機能を有するドラム式洗濯機であっても、乾燥機能を有さないドラム式洗濯機であっても、洗濯物10に複合的な撹拌動作を与えることにより、撹拌効果を向上させるという効果は同様に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯機は、クラッチ手段を第1モード、第2モードと適宜切り換えることにより、洗濯物に複合的な撹拌動作を与えることができ、洗濯物の動きに大きな変化をもたせることができるため、撹拌効果が高まり、簡単な駆動構成で、洗浄能力や乾燥能力を向上させることができるドラム式洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0049】
2 水槽
3 回転槽
10 洗濯物
12 撹拌部材
13 モータ
14 クラッチ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯水を貯える水槽と、前記水槽内に回転軸心を略水平にして回転自在に支持され洗濯物を収容する有底円筒形の回転槽と、前記回転槽の底面において回転自在に支持される撹拌部材と、前記回転槽および前記撹拌部材を回転させるモータと、前記モータの回転を前記回転槽と前記撹拌部材とに選択的に切り換えるクラッチ手段とを備え、前記クラッチ手段は、前記モータの回転を前記回転槽に伝達せず、前記撹拌部材のみに伝達し前記撹拌部材のみを回転させることにより前記洗濯物を撹拌する第1モードと、前記モータの回転を前記回転槽および前記撹拌部材の両方に伝達し、前記回転槽と前記撹拌部材とを同期回転させることにより前記洗濯物を撹拌する第2モードとを選択的に切り換えるようにしたドラム式洗濯機。
【請求項2】
回転槽内の洗濯物の量を検知する洗濯物量検知手段を備え、前記洗濯物量検知手段により検知した洗濯物の量が第1の所定値より少ないときには、クラッチ手段を第2モードとするようにした請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
モータの負荷を検知するモータ負荷検知手段を備え、クラッチ手段を第1モードとした状態で前記モータを回転させているときに、前記モータ負荷検知手段により検知した前記モータの負荷が第2の所定値より小さいときには、前記クラッチ手段を第2モードに切り換えるようにした請求項1または2記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
モータの負荷を検知するモータ負荷検知手段を備え、クラッチ手段を第1モードとした状態で前記モータを回転させているときに、前記モータ負荷検知手段により検知した前記モータの負荷が第3の所定値を超えたときには、前記クラッチ手段を第2モードに切り換えるようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
回転槽の底面を低位に傾斜させて設けた請求項1〜4のいずれか1項に記載のドラム式洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−101724(P2011−101724A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257735(P2009−257735)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】