説明

ナット保持具、及びナット保持組立部材

【課題】容易なボルト接合作業を可能とすると共に、生産性や取り扱い容易性を向上できるナット保持具、及びナット保持組立部材を提供する。
【解決手段】ナット保持具100は、複数のナット保持組立部材1を互いに接続することで形成される。ナット保持組立部材1の一つ一つは、一体型のナット保持具100と比べ成形部材が小型となる。従って、成形金型が小型となり、成形が容易となるので生産性、コストが改善される。また、小さいナット保持組立部材1は、一体型のナット保持具に比して運搬や保管に広さを必要とせず、運搬や保管効率が向上する。以上によって、容易なボルト接合作業が可能となると共に、生産性や取り扱い容易性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形鋼管とその接合相手部材とをボルトとナットで接合する際に、前記角形鋼管の中空部内に納めて使用されるナット保持具、及びそのナット保持具を構成するナット保持組立部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築などで使用される角形鋼管を接合相手部材と連結する方法として、溶接の他にボルト接合が用いられている。角形鋼管に係るボルト接合の構造として、例えば、仕口部分の柱と梁の接合にボルト接合を用いる構造などがある。
【0003】
ここで、ボルト接合は、ボルトとナットを用いる接合方法であるが、角形鋼管は閉鎖断面であるため、角形鋼管の内側でナットもしくはボルトを保持することが困難である。そのため、特殊な内締めボルトを用いるほか、スタッドボルトを角形鋼管の外面に溶接して、これに接合相手部材を通しナットを締結して接合することが行われている。また、ボルトとナットを用いるボルト接合で、ナットを角形鋼管内部で保持する一般的な技術として、角形鋼管の内面にナットを溶接して固定する方法がある。また、例えば、特許文献1及び2のような閉鎖断面でナットを保持する技術が知られている。また、建築用に用いるような大きな角形鋼管の閉鎖断面に適用する技術ではなく、小さなパイプなどの閉鎖断面でナットを保持する技術として、例えば特許文献3に示すものが知られている。
【0004】
具体的に、特許文献1は、ナットを固着させたプレートの端部を折り曲げてコ字型に形成し、角形鋼管の端辺にコ字型部分を嵌め込むことで、ナットを角形鋼管の内部に配置する技術である。
【0005】
また、特許文献2はレール状のナット保持具を用いて、ナットを配置する位置に切り起こしとボルト軸部挿通孔を設け、ナットを配置して、これを角形鋼管内面に配置する技術である。配置方法は、まず角形鋼管の外側からボルト孔へ筒状の係止鉤を挿入して、角形鋼管内面に係止鉤を突出させる。そして、ナット設置台車を角形鋼管内部へ遠隔操作で送り込み、角形鋼管内面に突出した係止鉤にレール状ナット保持具が備える変断面座金を固定することで、角形鋼管内部にナットが配置される。
【0006】
また、特許文献3は閉鎖断面を有する管状部材に挿入されるナット保持具の技術で、管状部材の管軸に対し直交する各方向への移動を制限される形状を備える。ナットは、共回りしない程度に緩く保持されており、セットされたナットは、不用意に外れないように係止部により保持されているが、ボルトを締結することでナットはボルト側へ寄り動き、係止部が解除されて管状部材内面に密着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−268887号公報
【特許文献2】特許第3934015号公報
【特許文献3】特開2010−236639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
まず、一般的な技術であるナット溶接は、角形鋼管のような閉鎖断面での溶接作業がそもそも困難であり、作業性が大変悪く、コストも掛かる。特にボルト締結位置が角形鋼管の延長方向で中間付近の場合には、溶接できないことがある。また、角形鋼管に溶接の熱を与えてしまう。また、めっき製品の場合には、溶接が困難である。ナットは溶接により固定されているため、角形鋼管への設置位置に融通が利かず、ナットの溶接位置に精度が要求されるし、ボルト締結時にボルト先端部を嵌め入れにくい。
【0009】
次に、特許文献1の技術においては、上記溶接の場合と同様にナットが固着されており、ナットの設置精度が要求され、ボルト締結時にボルト先端部を嵌め入れにくい。更に、ナットと角形鋼管の間にナットを固着させているプレートが挟まって締結されてしまうので、建築などの厳密なボルト締結が要求される場合には、望ましくはない。また、ボルト締結位置が角形鋼管の延長方向で中間付近の場合には、極端に長いプレートが必要となり現実的ではない。
【0010】
特許文献2の技術においては、係止鉤を備えるナット保持部品、変断面座金、ナットを保持するナット保持具など複数の部材を必要とし、かつ、これを装着するために、角形鋼管の外側からボルト孔に係止鉤を挿入したあと、角形鋼管内部へナット設置台車を送り込み遠隔操作をしなければならず、大変作業性が悪い。また、複数の部材や装置を用いるのでコストも掛かる。さらに、一般的な六角ナットではなく、フランジのあるナットを用いるのでコストが掛かるとともに、当該ナットがレール状ナット保持具にスポット溶接で固定されているため、前記一般的な溶接の場合や、特許文献1の場合のように、ナットの固定に精度が要求され、ボルト締結時にボルト先端部を嵌め入れにくい。
【0011】
特許文献3の技術においては、一般的な溶接の場合や、特許文献1、2のような課題は生じないものの、建築で使用するような大きさの角形鋼管に適用した場合、使用する樹脂などの材料が多く必要になり、材料コストが掛かる。また、例えば成形によってナット保持部材を作成する場合、成形物が大きいと樹脂による射出成形自体が困難となり、たとえ可能であっても生産性が悪く大掛かりな成形装置となり生産コストも掛かってしまう。また、肉盗みにより材料を削減しても、大型で嵩張るため運搬や保管に広さを必要とし、コストが多く掛かる。
【0012】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、容易なボルト接合作業を可能とすると共に、生産性や取り扱い容易性を向上できるナット保持具、及びナット保持組立部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るナット保持具は、角形鋼管とその接合相手部材とをボルトとナットで接合する際に、角形鋼管の中空部内に納めて使用されるナット保持具であって、角形鋼管の管軸方向から見たナット保持具の形状は、角形鋼管の内面へ内側から接することによって、当該角形鋼管の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状であり、ナット保持具は、ナットを納める凹部として形成されたナット嵌め込み部を有し、ナット保持具の形状は、複数のナット保持組立部材を互いに接続手段により接続することで形成され、ナット嵌め込み部は、ナットが納められた際に、ねじ込まれるボルトに対して共回りしない程度に緩くナットを保持することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るナット保持具では、角形鋼管の管軸方向から見た形状が、角形鋼管の内面へ内側から接することによって、当該角形鋼管の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状である。従って、角形鋼管内で、ナット嵌め込み部に保持されたナットをボルト孔に対応する位置に配置しておけば、ボルト接合時にナット嵌め込み部自体が大きくふらついたりずれたりすることがなく、安定したボルト接合作業が可能となる。また、溶接等を行わなくてもナット保持具を角形鋼管の中空部に納めるだけでボルト接合作業ができるため、ボルト締結位置が角形鋼管の延長方向の中間付近の場合などであっても、特別な設備や困難な作業を伴うことなく、容易なボルト接合作業が可能となる。また、ナット嵌め込み部は、ナットが納められた際に、ねじ込まれるボルトに対して共回りしない程度に緩くナットを保持するものであるため、ボルトの挿入軸が多少傾いてもナットが寄り動くことで締結が容易になり、また、部材同士の寸法誤差を吸収することができるため、製造や作業が容易になる。このようなナット保持具の形状は、複数のナット保持組立部材を互いに接続手段による接続することで形成される。例えば、角形鋼管の断面積が大きくなった場合、ナット保持具の形状を、ナット保持や移動の制限に必要な部分を確保し不要な部分を除くような形状とすることで、材料を節約することができる。しかし、ナット保持具を一体型の成形で製造する場合、成形上の各種制約などを考慮しながら構造を設計する必要があり、成形金型が複雑化してコストが掛かってしまう可能性がある。また、ナット保持具の形状も成形上の制約を受けることで、必要な構造だけが確保されたような所望の形状に成形することが困難になる可能性がある。一方、複数のナット保持組立部材を接続する構造であれば、ナット保持具の全体的な構造よりも個々のナット保持組立部材の構造が単純になるため、一体型のナット保持具の成形に比して個々のナット保持組立部材の成形は容易であり、コストを掛けることなく高い自由度でナット保持具の形状を形成することが可能となる。従って、容易に材料の量を減らすことができる。また、ナット保持具を一体型の成形とした場合、成形部材全体として大きくなるため、肉盗みにより材料を削減したとしても、大型で嵩張るため運搬や保管に広さを必要とし、コストが多く掛かる。しかし、ナット保持組立部材の一つ一つは、一体型のナット保持具と比べ成形部材が小型となる。従って、成形金型が小型となり、成形が容易となるので生産性、コストが改善される。また、小さいナット保持組立部材は、一体型のナット保持具に比して運搬や保管に広さを必要とせず、運搬や保管効率が向上する。以上によって、容易なボルト接合作業が可能となると共に、生産性や取り扱い容易性が向上する。
【0015】
また、本発明に係るナット保持具では、角形鋼管は、接合相手部材と接合され、角形鋼管の外側から内側へ向かってボルトが挿入される平面部を有し、ナット保持具の形状は、ナット嵌め込み部が複数形成されるとともに、平面部に対して角形鋼管の内側から対向する対向構造と、ボルトが挿入される方向へのナット嵌め込み部の移動を制限する第1の移動制限構造と、管軸方向から見てボルトが挿入される方向に対して直交する方向へのナット嵌め込み部の移動を制限する第2の移動制限構造と、を構成することが好ましい。このような対向構造によって、角形鋼管の平面部に挿入されるボルトに対し、ナットが向かい合うようにナット嵌め込み部で当該ナットを保持することができる。また、第1の移動制限構造によって、ボルトの挿入に対して反力を発生させ、ボルト挿入時にナットが沈み込むことを防止できる。また、第2の移動制限構造によって、当該挿入方向に直交する方向へナットが必要以上にふらつくことを防止できる。
【0016】
また、本発明に係るナット保持具では、ナット保持具の形状は、角形鋼管の断面形状に対応する角形環状の形状を有することが好ましい。すなわち、ナット保持具の形状が、角形鋼管の各平面部と対向するような辺で構成される角形環状の形状を有する。角形環状の形状によれば、ボルトが挿入される平面部と対向する辺でボルトを保持することができ、各辺が角形鋼管の内面へ(直接、または間接的に)接することによって、角形鋼管の管軸方向と直交するあらゆる方向への移動を制限することができる。更に、ボルト保持や移動制限に寄与しない中央付近の材料を節約することができる。特に、断面積の大きい角形鋼管では、大幅に材料を節約することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係るナット保持具では、ナット保持組立部材は、板状であることが好ましい。これによって、ナット保持組立部材の成形が容易になると共に、複数のナット保持組立部材を重ね合わせた状態で運搬及び保管が可能となるため、取り扱いの容易性が向上する。
【0018】
また、本発明に係るナット保持具では、接続手段は、一のナット保持組立部材に形成された嵌合部と、他のナット保持組立部材に形成された嵌合部との嵌合による接続構造によって構成されることが好ましい。これにより、接着剤や接続のための設備などが無くても、ナット保持組立部材を組み立てることができる。
【0019】
また、本発明に係るナット保持具では、ナット保持具は、外面から外側へ突出する突出部を有し、突出部は角形鋼管の内面と接することによって、ナット保持具のコーナー部を角形鋼管の内面のコーナー部から離間させることが好ましい。これにより、角形鋼管のコーナー部にRが形成されていても、ナット保持具のコーナー部が当該Rと干渉することを防止できる。
【0020】
また、本発明に係るナット保持具では、ナット保持具のコーナー部は、角形鋼管の内面のコーナー部に沿って湾曲していることが好ましい。これにより、角形鋼管のコーナー部にRが形成されていても、ナット保持具のコーナー部が当該Rと干渉することを防止できる。
【0021】
また、本発明に係るナット保持具では、ナット保持具のコーナー部は内側へ窪む形状をなすことが好ましい。これにより、角形鋼管のコーナー部にRが形成されていても、ナット保持具のコーナー部が当該Rと干渉することを防止できる。
【0022】
また、本発明に係るナット保持組立部材は、角形鋼管とその接合相手部材とをボルトとナットで接合する際に、角形鋼管の中空部内に納めて使用されるナット保持具を構成するナット保持組立部材であって、ナットを納める凹部として形成されたナット嵌め込み部を有し、接続手段により他のナット保持組立部材と接続されることにより、角形鋼管の管軸方向から見て、角形鋼管の内面へ内側から接することによって、当該角形鋼管の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状を形成し、ナット嵌め込み部は、ナットが納められた際に、ねじ込まれるボルトに対して共回りしない程度に緩くナットを保持することを特徴とする。
【0023】
本発明に係るナット保持組立部材によれば、前述のナット保持具を形成することが可能となる。従って、前述のナット保持具と同様の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、容易なボルト接合作業を可能とすると共に、生産性や取り扱い容易性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るナット保持具の斜視図である。
【図2】ナット保持具の使用例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るナット保持具を角形鋼管の管軸方向から見た図である。
【図4】ナット嵌め込み部の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るナット保持具の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るナット保持組立部材の斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るナット保持具の斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るナット保持具を角形鋼管の管軸方向から見た図、及びナット保持組立部材の外形を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るナット保持具の斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るナット保持具を角形鋼管の管軸方向から見た図、及びナット保持組立部材の外形を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係るナット保持具の斜視図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るナット保持具を角形鋼管の管軸方向から見た図、及びナット保持組立部材の変形例を示す斜視図である。
【図13】本発明の第6実施形態に係るナット保持具の斜視図である。
【図14】本発明の第6実施形態に係るナット保持具を角形鋼管の管軸方向から見た図である。
【図15】本発明の変形例を示す図である。
【図16】肉盗みをしたナット保持組立部材の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
[第1実施形態]
図1〜図4を参照して、第1実施形態に係るナット保持具100及びナット保持組立部材1について説明する。図2に示すように、ナット保持具100は、角形鋼管50とその接合相手部材60とをボルト70とナット80で接合する際に、角形鋼管50の中空部51内に納めて使用される。ナット保持具100は、角形鋼管50のボルト孔53に対応する位置でナット80を保持するように、配置される。本実施形態では、角形鋼管50が、横断面が略正方形をなして上下方向へ延在する閉断面の鋼管柱であり、接合相手部材60が、H形断面梁90を角形鋼管50へ接続するためのT形継手である場合を一例として説明する。なお、角形鋼管の例として鋼管柱を例示し、接合相手部材としてT形継手を例示しているが、特に限定されない。
【0028】
接合相手部材60は、H形断面梁90の上フランジ91または下フランジ92とボルト接合される水平部材61と、角形鋼管50にボルト接合される垂直部材62と、を備えている。水平部材61及び垂直部材62には、ボルト接合位置にボルト孔が形成される。本実施形態では、垂直部材62に四つのボルト孔が形成される。角形鋼管50は、四方の管壁を構成する平面部52A,52B,52C,52Dを有している。平面部52A,52B,52C,52Dのうち、接合相手部材60が接合される平面部には、当該角形鋼管50の外側から内側へ向かってボルト70が挿入されるボルト孔53が形成される。このボルト孔53は、接合相手部材60の垂直部材62のボルト孔と対応する位置に形成される。なお、本実施形態では、平面部52A,52B,52C,52Dの全てがボルト孔53を有し、四方から接合相手部材60を接合可能であるものとして説明するが、平面部52A,52B,52C,52Dのうち少なくとも一つにおいて接合相手部材60が接合可能であればよい。
【0029】
図1及び図3に示すように、ナット保持具100は、板状のナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dを互いに接続することにより、全体として上下が開口した箱状の構成を有する。ナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dとして、同一部材を用いることができる(ナット保持組立部材1A,1Bでは上側に配置された貫通孔11に吊り棒7の両端部が嵌め込まれ、ナット保持組立部材1C,1Dでは貫通孔11の下側に配置された貫通孔12に吊り棒8の両端部が嵌め込まれる。詳細は後述する)。
【0030】
ナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dの材質は特に限定されない。実用上は大量生産に適して安価に軽く製造(成形)でき、取り扱いが容易である、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂、例えばフェノール樹脂やエポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等々を使用して成形するのが好ましい。また、低・中発泡ないし高発泡のポリスチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等で成形して実施することも好適である。非発泡の合成樹脂製で実施することもできるし、木製や金属製として製作し実施することもできる。ただし、成形部品とした場合に、本実施形態の構造による効果を、一層顕著に得ることができる。
【0031】
ナット保持組立部材1Aは、長方形の板材の長手方向の両端面1d,1eに嵌合部6の凹凸が形成された形状を有する。ナット保持組立部材1Aの板厚は、ナット80を内部に収納するために、当該ナット80より厚く設定されている。ナット保持組立部材1Aの外面1aには、ナット80を嵌め込むことができるナット嵌め込み部3が形成されている。本実施形態では、接合相手部材60の垂直部材62のボルト孔が四つであるため、ナット保持組立部材1の外面1aにも、四つのナット嵌め込み部3が形成されている。ナット嵌め込み部3は二つずつ上下二段に形成されている。ナット保持組立部材1Aの中心に対して、各ナット嵌め込み部3の軸心は、それぞれ同心円上に配置される。
【0032】
ナット嵌め込み部3は、ナット80を嵌め込むための孔であり、ナット保持組立部材1Aの外面1aと直交する方向に貫通する形態で設けられている。ナット嵌め込み部3は、ナット80を納める凹部として形成されている。このナット嵌め込み部3は、納められたナット80を回り止め状態で保持し、ボルト接合の作業時に、ねじ込まれるボルト70に対して共回りしない程度に緩くナット80を保持することができる形状、大きさに成形されている。
【0033】
「共回りしない程度に緩く保持」とは、納められたナット80の外周面とナット嵌め込み部40の内周面41との間にスペース、間隔を開けることでナット嵌め込み部40内部でのナット80の僅かな移動を許容するが、ナット80に対してボルト70がねじ込まれた時は、ボルト70のねじ込みと共に回転しようとするナット80を、ナット嵌め込み部40の内周面41に当接させることによって支持することでナット80が共回りしないように保持することである。本実施形態では、ナット嵌め込み部3は、正六角形のナット80を楽に挿入でき、かつ同ナット80を接合するボルトの先端で多少ぐらつかせられる余裕をもつ大きさの六角形状として形成されている。図4に示すように、ナット80を挿入したとき、六角形状の内周面41と、ナット80の外周面との間に、僅かな隙間が形成される。
【0034】
上記ナット嵌め込み部3には、外面1aからナット80の高さ相当の寸法だけ入った内部に、ナット80の上面80bを座らせる段部43が形成されている。ナット嵌め込み部3へ嵌め入れたナット80は、その上面80bを段部43へ座らせて、ボルト70のねじ込みに対してナット80が共回りしない状態に落ち着かせる構成とされている。従って、段部43より以深のナット嵌め込み部3の貫通孔42の貫通状態と大きさは、ナット80へねじ込まれるボルトの先端部が、ナット嵌め込み部3へ当たることの無いように形成される。一方、段部43へ落ち着いたナット80の座面は、ナット保持具100を角形鋼管50へ挿入する際に支障とならない程度に、外面1aよりも少し沈み込んで外面1a近傍に露出する状態にナット嵌め込み部3内に嵌め込まれている。
【0035】
ナット嵌め込み部3内へ挿入されたナット80が不用意に浮上して抜け外れる不都合を防ぐため、ナット嵌め込み部3の近傍に、上端部に爪部を有する係止部44が設けられている。ナット嵌め込み部3の入口部分に、六角形の一つの辺の中央部位に切り欠きを設け、当該切り欠き部に係止部44が設けられる。係止部44は、切り欠き部の底部から上方へ向かって延びる板状部と、当該板状部の上端に爪部と、を有している。ナット嵌め込み部3へナット80を嵌めると、当該ナット80が係止部44を押しのけ(板状部が外側へ弾性変形する)、中へナット80が挿入されると、直ちに係止部44が元の位置に働いて爪部で止め、ナット80が不用意に浮上したり抜け外れることを防止する。
【0036】
図1及び図3に示すように、ナット保持組立部材1Aの外面1aには、当該外面1aから外側へ向かって突出する突出部4が複数形成されている。この突出部4は、ナット保持具100を組み立てて角形鋼管50内にセットした時に、外面1aと角形鋼管50の内面50aとの間に隙間を形成する機能を有する。また、突出部4は、角形鋼管50の内面50aと接することでナット保持具100の移動を制限する機能を有する。突出部4の数や形成位置は特に限定されないが、本実施形態では、ナット保持組立部材1Aの四隅付近にそれぞれ形成されている。なお、図3では、突出部4の特徴・機能を明確にするために、デフォルメして当該突出部4を大きく示している。突出部4の突出量は、角形鋼管50のコーナー部54のRの大きさなどに応じて適宜変更してよい。ナット保持組立部材1Aの長手方向の中央位置には、上端面1b付近に貫通孔11が形成され、その貫通孔11の下側に貫通孔12が形成される。なお、下端面1c付近には貫通孔を形成しなくともよい。貫通孔11,12は、板厚方向に貫通しており、後述の吊り棒7,8が挿入される。
【0037】
ナット保持組立部材1Aの長手方向の両端面1d,1eには、それぞれ嵌合部6が形成されている。嵌合部6は、端面1d,1eに凹凸形状が設けられることによって構成されている。嵌合部6は、ナット保持組立部材1Aの端面1d,1eに形成される切欠部6bと、残った部分に形成される凸部6aと、を有している。端面1d側には、上端面1bから下端面1cへ向かって、凸部6a、切欠部6b、凸部6a、切欠部6bの順で形成される。一対の凸部6aに挟まれる切欠部6bは、凹状に形成される。端面1e側には、上端面1bから下端面1cへ向かって、切欠部6b、凸部6a、切欠部6b、凸部6aの順で形成される。一対の凸部6aに挟まれる切欠部6bは、凹状に形成される。切欠部6bの側面(すなわち凸部6aの側面)は端面1d,1eと垂直となり、切欠部6bの底面は端面1d,1eと平行になる。切欠部6bの深さ、すなわち凸部6aの突出量は、ナット保持組立部材1Aの板厚と同じである。凸部6a及び切欠部6bの幅(上下方向の大きさ)は、端面1d,1eを四等分した大きさに設定され、互いに等しい幅に設定されている。このような構成により、ナット保持組立部材1Aの嵌合部6に他のナット保持組立部材1C,1Dの嵌合部6を嵌合させたとき、他のナット保持組立部材1C,1Dの嵌合部6の凸部6aの端面は、突出することなく、ナット保持組立部材1Aの外面1aと略一致する。
【0038】
このように、ナット保持組立部材1A,1B,1C,1D同士を接続する接続手段として、各部材自体に形成されている嵌合部6を嵌合させる接続構造が採用されている。この接続手段は、(取付金具などの)接続のための別部材を用いることなく、板状のナット保持組立部材1A,1B,1C,1D自体を互いに直接接続することができる。すなわち輸送時などに板状の部材のみを運べばよく、接続のための特別な工具や作業も不要である。また、このような嵌合による接続手段は、一度接続しても当該接続を解除することができる。例えば、角形鋼管と相手部材が仮設部材の場合、互いの連結を解除して解体するにあたり、ボルトの締結を緩めてボルトを抜きとり、角形鋼管50内のナット保持具100は不要であるため、引き上げて取り出すことができる。このとき、ナット保持組立部材1A,1B,1C,1D同士の接続を解除することができるため、ナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dをばらして別の現場へ輸送し、再利用することが可能となる。特に、各ナット保持組立部材の材質に樹脂を用いることで、樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合とすることができ、ナット保持組立部材1A,1B,1C,1D同士の接続を十分な強度で容易に行うことができる。また、接続の解除も樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合なので容易である。
【0039】
ナット保持組立部材1B,1C,1Dは、上述のようなナット保持組立部材1Aと同じ構成を有している。ナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dを各嵌合部6を嵌合させて互いに接続することにより、ナット保持具100が形成される。ナット保持具100は、上下方向に開口した箱状の構成を有し、四方に側壁部2A,2B,2C,2Dを備える。ナット保持組立部材1Aがナット保持具100の側壁部2Aを構成し、ナット保持組立部材1Bがナット保持具100の側壁部2Bを構成し、ナット保持組立部材1Cがナット保持具100の側壁部2Cを構成し、ナット保持組立部材1Dがナット保持具100の側壁部2Dを構成する。側壁部2A,2B,2C,2Dは、角形鋼管50の平面部52A,52B,52C,52Dとそれぞれ水平に対向しており、突出部4によって、当該平面部52A,52B,52C,52Dから離間している。これによって、ナット保持具100の四隅のコーナー部31が、Rが形成された角形鋼管50の四隅のコーナー部54の内面50aと干渉することなく離間する。
【0040】
ナット保持具100の上端側では、側壁部2Aの貫通孔11と側壁部2Bの貫通孔11が対向し、側壁部2Cの貫通孔12と側壁部2Dの貫通孔12が対向する。各貫通孔11に、吊り棒7の両端部がそれぞれ嵌め込まれ、各貫通孔12に、吊り棒8の両端部がそれぞれ嵌め込まれる。貫通孔12の上端からの位置は、貫通孔11よりも低い位置にあるので、吊り棒8は吊り棒7と干渉しない。当該吊り棒7,8には、角形鋼管50内にナット保持具100を配置するときに、当該ナット保持具100を上から吊るための吊り糸STが取り付けられる。
【0041】
上述のように構成されることにより、角形鋼管50の管軸方向から見たナット保持具100の形状は、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状となる。このような形状が、複数のナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dを互いに嵌合部6を嵌合して接続することで形成される。本実施形態では、管軸方向から見たナット保持具100の形状は、側壁部2A,2B,2C,2Dを四辺とした正方形環状(角形環状)の形状と、各側壁部2A,2B,2C,2Dから角形鋼管50の各平面部52A,52B,52C,52Dへ延びる突出部4による突出形状と、を有している。また、ナット保持具100の形状は、一定以上の板厚を有した正方形環状の形状をなしている。ナット保持具100は、各平面部52A,52B,52C,52Dによって描かれる正方形よりも僅かに小さい正方形の形状となっているため、角形鋼管50の内面50aへ突出部4を介して内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交するあらゆる方向への移動が制限される。
【0042】
なお、「角形鋼管の内面へ内側から接することによって、〜への移動を制限する」形状とは、ナット保持具100を角形鋼管50内に配置した時点で、ナット保持具100の所定部分が完全に角形鋼管50の内面50aに接触するような形状だけを指すものではない。すなわち、ナット保持具100を角形鋼管50内に配置した時点では、ボルト接合の作業に影響を及ぼさない範囲内で、僅かに角形鋼管50の内面50aとの間にギャップやぐらつきが形成される形状であってもよい。この場合、ボルト70が挿入されて当該ボルト70の先端が保持されたナット80と接触したときに、ボルト70の挿入方向または当該挿入方向と直交する方向に、ナット保持具100の全体が僅かに移動し、角形鋼管50の内面50aと接することで移動が制限される。ナット保持具100の移動は僅かであるため、ナット80の位置が大きくふらつくことやずれることはなく、良好にボルト接合作業を行うことができる。当該内容は、明細書中の他の部分にも同様に当てはまる。
【0043】
より詳細には、ナット保持具100の形状は、ボルト70のそれぞれの挿入方向に対して、少なくとも対向構造21と、第1の移動制限構造22と、第2の移動制限構造23と、を構成している。
【0044】
対向構造21は、ナット嵌め込み部3が形成されると共に、外側からボルト70が挿入される平面部52と対向する構造である。対向構造21は、挿入されたボルト70がナット嵌め込み部3に保持されたナット80と接合され易くなるように、角形鋼管50の平面部52に対して略平行に対向するような形状に構成されている。この対向構造21は、ナット嵌め込み部3を形成できる程度に、一定以上の板厚を有すると共に一定以上の広さが確保された形状に構成されている。本実施形態のように、一の平面部52に複数のボルト70が挿入される場合は、それに対応して複数のナット嵌め込み部3が必要となるため、対向構造21は、平面部52と対向する部分が広く確保された形状に構成されている。
【0045】
第1の移動制限構造22は、ボルト70が挿入される方向へのナット嵌め込み部3の移動を制限する構造である。第1の移動制限構造22は、ボルト70の挿入方向に対向する一対の平面部52(コーナー部54付近も含む)とそれぞれ接することができる部分と、当該部分を支持する(ボルト70の挿入に対して反力を発生させることができるように支持する)ようにボルト70の挿入方向へ延在する部分と、を有するような形状に構成されている。ボルト70の挿入方向に延在する部分は、複数の位置からボルト70が挿入される場合でも、挿入位置によらずバランスよく反力を発生させることができるような形状に構成されていることが好ましい。
【0046】
第2の移動制限構造23は、管軸方向から見てボルト70が挿入される方向に対して直交する方向へのナット嵌め込み部3の移動を制限する構造である。第2の移動制限構造23は、ボルト70の挿入方向と直交する方向に対向する一対の平面部52(コーナー部54付近も含む)とそれぞれ接することができる部分と、当該部分を支持する(ボルト70の挿入に伴うふらつきを防止できる程度に支持する)ようにボルト70の挿入方向と直交する方向へ延在する部分と、を有するような形状に構成されている。なお、移動制限構造22,23で、ボルト挿入方向、及び当該ボルト挿入方向と直交する方向へのナット嵌め込み部3の移動が制限されることで、斜め方向(二つの方向成分を含んでいる)への移動も当然に制限される。
【0047】
本実施形態について、どの部分の形状が対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23、を構成しているかを説明する。なお、同一部分の形状が対向構造21や移動制限構造22,23として同時に機能する場合もある。また、本実施形態に係るナット保持具100は、四方の全てからボルト70を挿入できる構造となっているため、ボルト70の挿入方向によって、同一部分の形状が、対向構造21として機能する場合もあれば、別な挿入方向では移動制限構造22,23として機能する場合もある。なお、図1及び図3では、角形鋼管50の平面部52Aからボルト70を挿入する場合のみについて、対向構造21及び移動制限構造22,23として機能する部分に「21、22、23」の符号を付している。なお、以下の説明では、移動制限構造22,23を構成する形状のうち、主なもののみを挙げるが、吊り棒7,8も移動制限に寄与し、以下で挙げられる以外の形状も移動制限に寄与する場合がある。
【0048】
まず、角形鋼管50の平面部52Aからボルト70を挿入する場合(図3では、ボルト挿入方向は矢印DAで示される)について説明する。対向構造21は、主に、側壁部2Aによって構成されている。側壁部2Aの形状は、平面部52Aと平行に対向すると共に、ナット嵌め込み部3を形成できる程度に板厚が確保され、複数のナット嵌め込み部3を形成するために十分な幅が確保されている。また、第1の移動制限構造22は、主に、側壁部2Aから突出して平面部52Aと接する突出部4と、側壁部2Bから突出して平面部52Bと接する突出部4と、ボルト挿入方向DAへ延在する側壁部2C,2Dと、によって構成されている。側壁部2C,2Dの形状は、対向構造21として機能する側壁部2Aの両側の端部から一定の板厚を確保された状態で延在しているため、十分な強度で、且つバランスよく反力を発生させることができる。また、第2の移動制限構造23は、主に、側壁部2Cから突出して平面部52Cと接する突出部4と、側壁部2Dから突出して平面部52Dと接する突出部4と、ボルト挿入方向DAと直交する方向へ延在する側壁部2A,2Bと、によって構成されている。側壁部2A,2B形状は、突出部4が設けられている側壁部2C,2Dの両側の端部から一定の板厚を確保された状態で延在しているため、十分な強度で、且つバランスよくふらつきを防止できる。
【0049】
角形鋼管50の平面部52Bからボルト70を挿入する場合(図3では、ボルト挿入方向は矢印DBで示される)、対向構造21は、主に、側壁部2Bによって構成されている。第1の移動制限構造22は、主に、側壁部2Bから突出して平面部52Bと接する突出部4と、側壁部2Aから突出して平面部52Aと接する突出部4と、ボルト挿入方向DBへ延在する側壁部2C,2Dと、によって構成されている。第2の移動制限構造23は、主に、側壁部2Cから突出して平面部52Cと接する突出部4と、側壁部2Dから突出して平面部52Dと接する突出部4と、ボルト挿入方向DBと直交する方向へ延在する側壁部2A,2Bと、によって構成されている。角形鋼管50の平面部52Cからボルト70を挿入する場合(図3では、ボルト挿入方向は矢印DCで示される)、対向構造21は、主に、側壁部2Cによって構成されている。第1の移動制限構造22は、主に、側壁部2Cから突出して平面部52Cと接する突出部4と、側壁部2Dから突出して平面部52Dと接する突出部4と、ボルト挿入方向DCへ延在する側壁部2A,2Bと、によって構成されている。第2の移動制限構造23は、主に、側壁部2Aから突出して平面部52Aと接する突出部4と、側壁部2Bから突出して平面部52Bと接する突出部4と、ボルト挿入方向DCと直交する方向へ延在する側壁部2C,2Dと、によって構成されている。角形鋼管50の平面部52Dからボルト70を挿入する場合(図3では、ボルト挿入方向は矢印DDで示される)、対向構造21は、主に、側壁部2Dによって構成されている。第1の移動制限構造22は、主に、側壁部2Cから突出して平面部52Cと接する突出部4と、側壁部2Dから突出して平面部52Dと接する突出部4と、ボルト挿入方向DDへ延在する側壁部2A,2Bと、によって構成されている。第2の移動制限構造23は、主に、側壁部2Aから突出して平面部52Aと接する突出部4と、側壁部2Bから突出して平面部52Bと接する突出部4と、ボルト挿入方向DDと直交する方向へ延在する側壁部2C,2Dと、によって構成されている。
【0050】
次に、本実施形態に係るナット保持具100及びナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dの使用手順の一例について説明する。
【0051】
組立前のナット保持組立部材1を建設現場まで運搬し、当該現場にてナット保持具100を組み立てる。なお、組み立てた状態のナット保持具100を運搬してもよいが、本実施形態ではナット保持組立部材1は板状であるため、互いに重ね合わせることで、コンパクトな状態で容易に運搬することが可能となるため、現場にて組み立てることが好ましい。組み立ては、嵌合部6を互いに嵌合させるだけであるので、現場にて容易に行うことができる。
【0052】
ナット保持具100を組み立てた後、各ナット嵌め込み部3にナット80を嵌め込む。または、ナット80を嵌め込んだ後に組み立ててもよい。更に、ナット80を既に嵌め込んだ状態にて、ナット保持具100やナット保持組立部材1を現場に運搬してもよい。このとき、接合相手部材60が角形鋼管50の四方全ての平面部52に接合される場合は、ナット保持具100の四面の全てのナット嵌め込み部3にナット80を嵌め込む必要があるが、一部の平面部52のみに接合相手部材60が接合される場合は、該当する面のみにナット80を嵌め込めばよい。次に、角形鋼管50の上端の開口部から中空部51にナット保持具100を挿入し、吊り糸STで吊りながらナット保持具100を降ろす。保持されたナット80と角形鋼管50のボルト孔53とが対向する位置にてナット保持具100を止め、吊り糸STを固定するなどにより、当該位置でナット保持具100の高さ位置を保持しておく。このとき、図4(a)に示すように、ボルト孔53とナット80のネジ孔が対向する位置関係となる。なお、図4には、側壁部2A、平面部52Aでのボルト接合の様子が示されているが、他の部分も同様である。
【0053】
次に、図4(b)に示すように、互いのボルト孔53,63が一致するように、角形鋼管50の平面部52Aの外面50bに接合相手部材60の垂直部材62を突き合わせる。当該ボルト孔53,63に、外側からボルト70を挿入する。このとき、ナット嵌め込み部3はナット80の多少のぐらつきを許容しているため、ボルト孔53,63とナット嵌め込み部3の位置に若干のずれがあっても、ボルト70のボルト軸部72の先端との接触によりナット80が最適な位置に移動することができる。一方で、ナット嵌め込み部3自体は、ボルト挿入方向と直交する方向への移動が制限されているため、ナット嵌め込み部3のずれやふらつきにより、ナット80がボルト孔53,63の位置から大きくずれてしまうことは防止される。また、ナット嵌め込み部3のボルト挿入方向への移動が制限されているため、ナット80はボルト挿入方向に沈み込むことなく保持される。これにより、作業者は容易にボルト70をナット80にねじ込むことができる。
【0054】
図4(c)に示すように、ナット嵌め込み部3に嵌め込まれたナット80のネジ孔内へボルト70をねじ込むと、ナット80はボルト70のねじ込みに対して共回りしない状態で保持されているので、同ボルト70の回転によりナット80がボルト70の頭部71へ移動する寄動力が生じる。この寄動力により係止部44は、弾性変形によって外側へ押し広げられ又は折れ曲がり、同係止部44はボルト・ナット間から押し退けられて同ナット80の抜け外れ防止状態が解除される。そのままねじ込みを続けると、ナット80の座面80aは角形鋼管50の平面部52Aの内面50aにしっかりと密着し、強固なボルト締めを行うことができる。
【0055】
角形鋼管50と接合相手部材60とのボルト接合が完了したら、吊り糸STを切断して角形鋼管50内に放置しておく、または上に引っ張って除去する。
【0056】
次に、本実施形態に係るナット保持具100及びナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dの作用・効果について説明する。
【0057】
本実施形態に係るナット保持具100では、角形鋼管50の管軸方向から見た形状が、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状である。従って、角形鋼管50内で、ナット嵌め込み部3に保持されたナット80をボルト孔53に対応する位置に配置しておけば、ボルト接合時にナット保持具100自体が大きくふらついたりずれたりすることがなく、安定したボルト接合作業が可能となる。また、溶接等を行わなくてもナット保持具100を角形鋼管50の中空部51に納めるだけでボルト接合作業ができるため、ボルト締結位置が角形鋼管50の延長方向の中間付近の場合などであっても、特別な設備や困難な作業を伴うことなく、容易なボルト接合作業が可能となる。
【0058】
ここで、ナット保持具を成形によって製造する場合、角形鋼管50の断面積が大きくなったときは、ナット保持具の形状を、ナット保持や角形鋼管50内での移動の制限に必要な部分を確保し不要な部分を除くような形状とすることで、材料を節約することができる。しかし、大きなナット保持具を一体型の成形で製造する場合、成形上の各種制約などを考慮しながら構造を設計する必要があり、成形金型が複雑化してコストが掛かってしまう可能性がある。また、ナット保持具の形状も、成形上の制限を受けたり、成形歪などの影響を受けることで、必要最低限の構造だけが確保されたような所望の形状に成形することが困難になる可能性がある。
【0059】
一方、本実施形態に係るナット保持具100の形状は、複数のナット保持組立部材1を互いに接続することで形成される。複数のナット保持組立部材1を接続する構造であれば、ナット保持具100の全体的な構造よりも個々のナット保持組立部材1の構造が単純になるため、一体型のナット保持具100の成形に比してナット保持組立部材1の成形は容易であり、コストを掛けることなく高い自由度でナット保持具100の形状を形成することが可能となる。従って、容易に材料の量を減らすことができる。また、ナット保持具100を一体型の成形とした場合、成形部材全体として大きくなるため、肉盗みにより材料を削減したとしても、大型で嵩張るため運搬や保管に広さを必要とし、コストが多く掛かる。しかし、ナット保持組立部材1の一つ一つは、一体型のナット保持具100と比べ成形部材が小型となる。従って、成形金型が小型となり、成形が容易となるので生産性、コストが改善される。また、小さいナット保持組立部材1は、一体型のナット保持具に比して運搬や保管に広さを必要とせず、運搬や保管効率が向上する。以上によって、容易なボルト接合作業が可能となると共に、生産性や取り扱い容易性が向上する。
【0060】
また、ナット嵌め込み部40がナット80を共回りしない程度に緩く保持することにより、ボルト70の挿入軸が保持されているナット80に対して多少傾いていても、ナット80がナット嵌め込み部40内部で寄り動くことで容易に締結が可能となる。すなわち、ボルト接合時に挿入したボルト70とナット80の芯合わせ及びボルト接合作業をボルト70の操作のみで同時に行うことができ、ボルト接合作業の初期段階の位置合わせ(ボルト70の先端部の探索ないし整合)も含めて的確に迅速に行うことができ、能率の良いボルト接合作業を行うことができる。更に、角形鋼管50と接合相手部材60との接合の施工誤差や、両部材に形成されたボルト孔の配置の公差により互いのボルト孔にずれが生じていても、ナット80自体がナット嵌め込み部40内部である程度移動することができるため、ボルト孔のずれなどの寸法誤差を吸収することができる。このような寸法誤差の吸収により、部材の加工時に過剰な寸法精度の確保が不要とされると共に、作業時における過剰な位置合わせも不要となり、製造や作業の効率が向上する。例えば、ナット保持具100に溶接等によりナットを固定するものを用いる場合、上述のような効果が得られないため、ナット保持具100自体の寸法精度を高くしなくてはならず、材料や加工などにおいてコストが掛かる。一方、本実施形態では、上述のような構成とすることで、ナット保持具100自体の寸法精度を高くする必要がない。従って、ナット保持組立部材1A,1B,1C,1Dの製造方法として、安価な樹脂を用いた成形による製造を採用することが可能となり、更に、部材同士の接続方法として、樹脂性の板状部材同士を直接嵌合して接続するという仮止め程度の簡易な接続方法を採用することが可能となり、コストを大幅に低減することができる。
【0061】
また、本実施形態に係るナット保持具100では、対向構造21によって、角形鋼管50の平面部52に挿入されるボルト70に対し、ナット80が向かい合うようにナット嵌め込み部3で当該ナット80を保持することができる。また、第1の移動制限構造22によって、ボルトの挿入に対して反力を発生させ、ボルト挿入時にナットが沈み込むことを防止できる。また、第2の移動制限構造23によって、当該挿入方向に直交する方向へナット80がふらつくことを防止できる。
【0062】
また、本実施形態に係るナット保持具100では、ナット保持具100の形状は、角形環状の形状を有している。角形環状の形状によれば、ボルト70が挿入される平面部52と対向する辺でボルト70を保持することができ、各辺が角形鋼管50の内面50aへ(本実施形態では突出部4を介して間接的に)接することによって、ボルト70の挿入方向及び当該挿入方向に直交する方向への移動を制限することができる。更に、ボルト保持や移動制限に寄与しない中央付近の材料を節約することができる。特に、断面積の大きい角形鋼管50では、大幅に材料を節約することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態に係るナット保持具100では、ナット保持組立部材1が板状である。これによって、ナット保持組立部材1の成形が容易になると共に、複数のナット保持組立部材1を重ね合わせた状態で運搬及び保管が可能となるため、取り扱い性が向上する。
【0064】
また、本実施形態に係るナット保持具100では、一のナット保持組立部材1に形成された嵌合部6の凹状の切欠部6bと、他のナット保持組立部材1に形成された嵌合部6の凸部6aとを、嵌合させることによって、各ナット保持組立部材1を接続する接続構造が採用されている。これにより、接着剤や接続のための設備などが無くても、ナット保持具100を組み立てることができる。なお、接続手段として接着剤などを用いてもよいが、接続を解除できる仮止め程度の固定とすることが好ましい。
【0065】
また、本実施形態に係るナット保持具100は、外面1aから外側へ突出する突出部4を有し、突出部4は角形鋼管50の内面50aと接することによって、ナット保持具100のコーナー部31を角形鋼管50の内面50aのコーナー部54から離間させている。これにより、角形鋼管50のコーナー部54にRが形成されていても、ナット保持具100のコーナー部31が当該Rと干渉することを防止できる。
【0066】
[第2実施形態]
図5及び図6を参照して第2実施形態に係るナット保持具200、ナット保持組立部材201について説明する。第2実施形態に係るナット保持具200、ナット保持組立部材201は、嵌合部206の構造が第1実施形態と主に相違している。
【0067】
図5に示すように、ナット保持組立部材201A,201Bは、長方形板状の形状をなしている。一方、ナット保持組立部材201C,201Dは、両端側が板厚分だけナット保持組立部材201A,201Bよりも短くされた長方形板状の形状をなしている。ナット保持組立部材201Aがナット保持具200の側壁部202Aを構成し、ナット保持組立部材201Bがナット保持具200の側壁部202Bを構成し、ナット保持組立部材201Cがナット保持具200の側壁部202Cを構成し、ナット保持組立201Dがナット保持具200の側壁部202Dを構成する。
【0068】
図6に示すように、ナット保持組立部材201Aは、両端側に板厚方向に貫通する貫通孔206bを有した嵌合部206が形成されている。一方、ナット保持組立部材201Cは、両端面から突出した棒状の凸部206aを有した嵌合部206が形成されている。従って、組み立て時は、ナット保持組立部材201Cの嵌合部206の凸部206aを、ナット保持組立部材201Aの嵌合部206の貫通孔206bに嵌合させることによって、ナット保持組立部材201A,201Cを接続する。ナット保持組立部材201B,201Dも同様の構成を有する。その他の部分の構成については第1実施形態と同様であり、同様な作用・効果を得ることができる。このような棒状凸部による嵌合構造を用いた接続手段でも、(取付金具などの)接続のための別部材を用いることなく、部材自体を互いに直接接続することができる。また、このような接続手段は、一度接続しても当該接続を解除することができる。特に、各ナット保持組立部材の材質に樹脂を用いることで、樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合とすることができ、ナット保持組立部材201A,201B,201C,201D同士の接続を十分な強度で容易に行うことができる。また、接続の解除も樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合なので容易である。
【0069】
[第3実施形態]
図7及び図8を参照して第3実施形態に係るナット保持具300、ナット保持組立部材301について説明する。第3実施形態に係るナット保持具300、ナット保持組立部材301は、スリット状の凹部を有する嵌合部306を有している点で、第1実施形態と主に相違している。
【0070】
図7及び図8(b)に示すように、ナット保持組立部材301は、長方形板状の形状を有しており、中心付近の領域にナット嵌め込み部3が形成される。ナット保持組立部材301の両端側の嵌合部306は、上端面から下方へ向かって延びる凹状のスリット306bと、ナット保持領域との間でスリット306bを挟み込む側縁部306aと、を有している。スリット306bは、ナット保持組立部材301の上下方向の中央まで延びている。また、ナット保持組立部材301の幅方向の中央には、長方形状の貫通孔311が設けられている。この貫通孔311は、ナット保持組立部材301の上端面より下側へ離間する位置から、上下方向の中央まで延びている。
【0071】
図7及び図8(a)に示すように、前述の形状を有するナット保持組立部材301A,301B,301C,301Dを互いに接続することによって、ナット保持具300が形成される。ナット保持組立部材301A,301Bは、スリット306bを下向きにして組み立てる。ナット保持組立部材301Aの両側の嵌合部306のスリット306bは、ナット保持組立部材301C,301Dの嵌合部306のスリット306bと上方から向かい合い、そのまま下方へ降ろされることで、ナット保持組立部材301A,301Bの嵌合部306とナット保持組立部材301C,301Dの嵌合部306がそれぞれ嵌合される。このとき、ナット保持組立部材301A,301Bの側縁部306aは、ナット保持組立部材301C,301Dの外面からそれぞれ突出する突出部304となる。また、ナット保持組立部材301C,301Dの側縁部306aは、ナット保持組立部材301A,301Bの外面からそれぞれ突出する突出部304となる。また、ナット保持組立部材301C,301Dの貫通孔311には、吊り部材308が取り付けられる。吊り部材308は、両端側の上端面にスリット309を有しており、当該スリット309が、貫通孔311の上側の残部と嵌合する。吊り部材308には孔が形成されており、当該孔に吊り糸STがかけられる。
【0072】
上述のように構成されることにより、角形鋼管50の管軸方向から見たナット保持具300の形状は、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状となる。このような形状が、複数のナット保持組立部材301A,301B,301C,301Dを互いに嵌合部306を嵌合して接続することで形成される。本実施形態では、管軸方向から見たナット保持具300の形状は、側壁部302A,302B,302C,302Dを四辺とした正方形環状(角形環状)の形状と、各側壁部302A,302B,302C,302Dのコーナー部331から角形鋼管50の各平面部52A,52B,52C,52Dへ延びる突出部304による突出形状と、を有している。ナット保持組立部材301Aが側壁部302Aを構成し、ナット保持組立部材301Bが側壁部302Bを構成し、ナット保持組立部材301Cが側壁部302Cを構成し、ナット保持組立部材301Dが側壁部302Dを構成している。ナット保持具300は、角形鋼管50の各平面部52A,52B,52C,52Dによって描かれる正方形よりも小さい正方形の形状となっているため、角形鋼管50の内面50aへ突出部304を介して内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動が制限される。また、ナット保持具300のコーナー部331は、突出部304によって角形鋼管50のコーナー部54の内面50aから離間する。これにより、コーナー部331が角形鋼管50のコーナー部54のRと干渉することが防止される。
【0073】
本実施形態について、どの部分の形状が対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23、を構成しているかを説明する。角形鋼管50の平面部52Aからボルト70を挿入する場合、対向構造21は、主に、側壁部302Aによって構成されている。第1の移動制限構造22は、主に、ボルト挿入方向DAへ延在する側壁部302C,302Dと、各側壁部302C,302Dからそのまま延びて平面部52Aと接する突出部304及び平面部52Bと接する突出部304と、によって構成されている。第2の移動制限構造23は、主に、ボルト挿入方向DAと直交する方向へ延在する側壁部302A,302Bと、各側壁部302A,302Bからそのまま延びて平面部52Cと接する突出部304及び平面部52Dと接する突出部304と、によって構成されている。なお、本実施形態に係るナット保持具300は四方に対して略対称な構造であるため、角形鋼管50の平面部52B,52C,52Dからボルト70を挿入する場合については、平面部52Aからの挿入と対応する部分が、それぞれ対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23を構成する。
【0074】
以上のような構成を有することで、第3実施形態に係るナット保持具300も、第1実施形態に係るナット保持具100と同様な作用・効果を得ることができる。このようなスリットによる嵌合構造を用いた接続手段でも、(取付金具などの)接続のための別部材を用いることなく、部材自体を互いに直接接続することができる。また、このような接続手段は、一度接続しても当該接続を解除することができる。特に、各ナット保持組立部材の材質に樹脂を用いることで、樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合とすることができ、ナット保持組立部材301A,301B,301C,301D同士の接続を十分な強度で容易に行うことができる。また、接続の解除も樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合なので容易である。なお、第3実施形態に係るナット保持組立部材301のスリット構造は特に図8(b)に示すものに限定されず、例えば図8(c)に示すように、両端側でスリット306bがそれぞれ上下逆になっていてもよい。
【0075】
[第4実施形態]
図9及び図10を参照して第4実施形態に係るナット保持具400、ナット保持組立部材401について説明する。第4実施形態に係るナット保持具400、ナット保持組立部材401は、ナット保持組立部材401が板状でない点、及び側壁部自体が角形鋼管50の内面50aと接する点で、第1実施形態と主に相違している。
【0076】
図9及び図10(b)に示すように、ナット保持組立部材401は、角形鋼管50の管軸方向から見てH字状の断面形状を有しており、各フランジ部の外面にナット嵌め込み部3が形成される。ナット保持組立部材401のウェブ部407,408の中央位置には嵌合部406が形成されており、当該嵌合部406は、上端面から下方へ向かって延びる凹状のスリット406bと、当該スリット406bを挟み込む側部406aと、を有している。スリット406bは、ナット保持組立部材401の上下方向の中心まで延びている。
【0077】
図9及び図10(a)に示すように、前述の形状を有するナット保持組立部材401A,401Bを互いに接続することによって、ナット保持具400が形成される。ナット保持組立部材401Bは、スリット406bを下向きにして組み立てられる。ナット保持組立部材401Bの嵌合部406のスリット406bは、ナット保持組立部材401Aの嵌合部406のスリット406bと上方から向かい合い、そのまま下方へ降ろされることで、ナット保持組立部材401Aの嵌合部406とナット保持組立部材401Bの嵌合部406がそれぞれ嵌合される。スリット406b付近には吊り糸ST用の貫通孔411が設けられており、当該貫通孔411に吊り糸STがかけられる。
【0078】
上述のように構成されることにより、角形鋼管50の管軸方向から見たナット保持具400の形状は、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状となる。このような形状が、複数のナット保持組立部材401A,401Bを互いに嵌合部406を嵌合して接続することで形成される。本実施形態では、管軸方向から見たナット保持具400の形状は、側壁部402A,402B,402C,402Dを四辺とした略正方形環状(ただし、各辺はコーナー部で非連続となっている)の形状と、当該略正方形環状内に形成される十字状の形状と、を有している。当該十字状の形状は、側壁部402Aと側壁部402Bとを幅方向における中央で連結するウェブ部407と、側壁部402Cと側壁部402Dとを幅方向における中央で連結するウェブ部408と、によって構成されている。側壁部402A,402Bは、ナット保持組立部材401Aのフランジ部によってそれぞれ構成され、側壁部402C,402Dは、ナット保持組立部材401Bのフランジ部によってそれぞれ構成される。ナット保持具400は、各平面部52A,52B,52C,52Dによって描かれる正方形より僅かに小さい(角形鋼管50の内面50aと各側壁部402の外面が略接触する)正方形の形状となっているため、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動が制限される。また、各側壁部402の幅は、角形鋼管50のコーナー部54のRを避けるように狭くされており、隣り合う他の側壁部402と直接連結されていないため、ナット保持具400のコーナー部431は、内側へ窪む形状をなしている。これにより、コーナー部431が角形鋼管50のコーナー部54のRと干渉することが防止される。
【0079】
本実施形態について、どの部分の形状が対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23、を構成しているかを説明する。角形鋼管50の平面部52Aからボルト70を挿入する場合、対向構造21は、主に、側壁部402Aによって構成されている。第1の移動制限構造22は、主に、ボルト挿入方向DAへ延在するウェブ部407と、当該ウェブ部407の一端側で平面部52Aと接する側壁部402Aと、他端側で平面部52Bと接する側壁部402Bと、によって構成されている。第2の移動制限構造23は、主に、ボルト挿入方向DAと直交する方向へ延在するウェブ部408と、当該ウェブ部408の一端側で平面部52Cと接する側壁部402Cと、他端側で平面部52Dと接する側壁部402Dと、によって構成されている。なお、本実施形態に係るナット保持具400は四方に対して略対称な構造であるため、角形鋼管50の平面部52B,52C,52Dからボルト70を挿入する場合については、平面部52Aからの挿入と対応する部分が、それぞれ対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23を構成する。
【0080】
以上のような構成を有することで、第4実施形態に係るナット保持具400も、第1実施形態に係るナット保持具100と同様な作用・効果を得ることができる。このようなスリットによる嵌合構造を用いた接続手段でも、(取付金具などの)接続のための別部材を用いることなく、部材自体を互いに直接接続することができる。また、接続手段は、一度接続しても当該接続を解除することができる。特に、各ナット保持組立部材の材質に樹脂を用いることで、樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合とすることができ、ナット保持組立部材401A,401B,401C,401D同士の接続を十分な強度で容易に行うことができる。また、接続の解除も樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合なので容易である。なお、ナット保持組立部材401は、板状ではなく断面H型の部材であるため、板状の場合と比べてコンパクトな重ね合わせはできない。
【0081】
[第5実施形態]
図11及び図12を参照して第5実施形態に係るナット保持具500、ナット保持組立部材501について説明する。第5実施形態に係るナット保持具500、ナット保持組立部材501は、ナット保持組立部材501がL字状に構成される点、及び側壁部自体が角形鋼管50の内面50aと接する点で、第1実施形態と主に相違している。
【0082】
図11及び図12(a)に示すように、ナット保持組立部材501は、角形鋼管50の管軸方向から見てL字状の断面形状を有しており、各辺のそれぞれの外面に上下一つずつナット嵌め込み部3が形成される。ナット保持組立部材501の両端には接続部506が形成されており、当該接続部506は、相欠き構造となっており、凸部506aと、切欠部506bと、を有している。なお、当該接続部506には切欠き面などに、嵌合構造や係止構造などを設けてよい。このような接続手段でも、(取付金具などの)接続のための別部材を用いることなく、部材自体を互いに直接接続することができる。また、このような接続手段は、一度接続しても当該接続を解除することができる。
【0083】
前述の形状を有するナット保持組立部材501A,501B,501C,501Dを互いに接続することによって、ナット保持具500が形成される。各ナット保持組立部材501A,501B,501C,501Dの接続部506の凸部506aと切欠部506b同士を重ね合わせて接続する。ナット保持組立部材501A,501B,501C,501Dのコーナー部の上端側には、貫通孔511が形成され、当該貫通孔511の下側に貫通孔512が形成される。ナット保持組立部材501B,501Dの貫通孔511に吊り棒507が挿入される。ナット保持組立部材501A,501Cの貫通孔512に吊り棒508が挿入される。これらの吊り棒507,508に吊り糸STがかけられる。
【0084】
上述のように構成されることにより、角形鋼管50の管軸方向から見たナット保持具500の形状は、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状となる。このような形状が、複数のナット保持組立部材501A,501B,501C,501Dを互いに接続することで形成される。本実施形態では、管軸方向から見たナット保持具500の形状は、側壁部502A,502B,502C,502Dを四辺とした略正方形環状(コーナー部にはRが設けられている)の形状を有している。側壁部502Aはナット保持組立部材501A,501Bで構成され、側壁部502Bはナット保持組立部材501C,501Dで構成され、側壁部502Cはナット保持組立部材501A,501Dで構成され、側壁部502Dはナット保持組立部材501B,501Cで構成される。ナット保持具500は、角形鋼管50の各平面部52A,52B,52C,52Dによって描かれる正方形より僅かに小さい(角形鋼管50の内面50aと各側壁部502の外面が略接触する)正方形の形状となっているため、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動が制限される。また、ナット保持具500のコーナー部531は、角形鋼管50のコーナー部54に合わせてRが形成されている。これにより、コーナー部531が角形鋼管50のコーナー部54のRと干渉することが防止される。
【0085】
本実施形態について、どの部分の形状が対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23、を構成しているかを説明する。角形鋼管50の平面部52Aからボルト70を挿入する場合、対向構造21は、主に、側壁部502Aによって構成されている。第1の移動制限構造22は、主に、ボルト挿入方向DAへ延在する側壁部502C,502Dと、当該側壁部502C,502Dの一端側で平面部52Aと接する側壁部502Aと、他端側で平面部52Bと接する側壁部502Bと、によって構成されている。第2の移動制限構造23は、主に、ボルト挿入方向DAと直交する方向へ延在する側壁部502A,502Bと、当該側壁部502A,502Bの一端側で平面部52Cと接する側壁部502Cと、他端側で平面部52Dと接する側壁部502Dと、によって構成されている。なお、本実施形態に係るナット保持具500は四方に対して略対称な構造であるため、角形鋼管50の平面部52B,52C,52Dからボルト70を挿入する場合については、平面部52Aからの挿入と対応する部分が、それぞれ対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23を構成する。
【0086】
以上のような構成を有することで、第5実施形態に係るナット保持具500も、第1実施形態に係るナット保持具100と同様な作用・効果を得ることができる。なお、ナット保持組立部材501は、平板状ではないが、直角に屈曲した断面L型の板状部材であるため、運搬時や保管時に重ね合わせることができる。また、ナット保持組立部材501同士の接続部の構造も特に限定されず、図12(b)に示すように、端面に棒状の凸部506aと、当該凸部506aを嵌めるための凹部506bを有する嵌合部506を設けてもよい。このような棒状の凸部による嵌合構造を用いた接続手段でも、(取付金具などの)接続のための別部材を用いることなく、部材自体を互いに直接接続することができる。また、このような嵌合による接続手段は、一度接続しても当該接続を解除することができる。特に、各ナット保持組立部材の材質に樹脂を用いることで、樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合とすることができ、ナット保持組立部材501A,501B,501C,501D同士の接続を十分な強度で容易に行うことができる。また、接続の解除も樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合なので容易である。
【0087】
[第6実施形態]
図13及び図14を参照して第6実施形態に係るナット保持具600、ナット保持組立部材601について説明する。第6実施形態に係るナット保持具600、ナット保持組立部材601は、一対のL字状のナット保持組立部材601で略正方形状が形成される点で第5実施形態と主に相違している。
【0088】
図13及び図14に示すように、ナット保持組立部材601は、角形鋼管50の管軸方向から見てL字状の断面形状を有しており、各辺のそれぞれの外面に上下二つずつナット嵌め込み部3が形成される。また、各辺の幅方向の略中央には、上側に貫通孔611が形成され、下側に貫通孔612が形成される。
【0089】
前述の形状を有するナット保持組立部材601A,601Bを、十字状の吊り棒606を介して互いに接続することによって、ナット保持具600が形成される。吊り棒606は、一方に延びる棒状部607と、当該棒状部607と直交する方向へ延びる棒状部608を有している。一方の方向で互いに対向する貫通孔611には棒状部607の両端部がそれぞれ挿入され、直交する方向で互いに対向する貫通孔611には棒状部608の両端部がそれぞれ挿入される。また、下側の貫通孔612にも、同様に吊り棒606が挿入される。上側の吊り棒606に吊り糸STがかけられる。このような棒状部の挿入による接続手段でも、(取付金具などの)接続のための別部材を用いることなく、荷重伝達に用いられる部材自体を互いに直接接続することができる。また、このような嵌合による接続手段は、一度接続しても当該接続を解除することができる。特に、各ナット保持組立部材の材質に樹脂を用いることで、樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合とすることができ、ナット保持組立部材601A,601B,601C,601D同士の接続を十分な強度で容易に行うことができる。また、接続の解除も樹脂の弾性を利用した嵌め込み嵌合なので容易である。
【0090】
上述のように構成されることにより、角形鋼管50の管軸方向から見たナット保持具600の形状は、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状となる。このような形状が、複数のナット保持組立部材601A,601Bを互いに接続することで形成される。本実施形態では、管軸方向から見たナット保持具600の形状は、側壁部602A,602B,602C,602Dを四辺とした略正方形環状(ただし、部材同士の間のコーナー部で非連続となっている)の形状と、当該略正方形環状内に形成される十字状の形状と、を有している。当該十字状の形状は、側壁部602Aと側壁部602Bとを幅方向における中央で連結する吊り棒606の棒状部607と、側壁部602Cと側壁部602Dとを幅方向における中央で連結する吊り棒606の棒状部608と、によって構成されている。側壁部602A,602Dは、ナット保持組立部材601Aによってそれぞれ構成され、側壁部602B,602Cは、ナット保持組立部材601Bによってそれぞれ構成される。ナット保持具600は、各角形鋼管50の各平面部52A,52B,52C,52Dによって描かれる正方形より僅かに小さい(角形鋼管50の内面50aと各側壁部602の外面が略接触する)正方形の形状となっているため、角形鋼管50の内面50aへ内側から接することによって、当該角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動が制限される。側壁部602Aと側壁部602Cとの間のコーナー部631における各端面と、側壁部602Bと側壁部602Dとの間のコーナー部631における各端面は、角形鋼管50のコーナー部54のRを避けるように互いに離間し、直接連結されていない。従って当該位置におけるコーナー部631は、内側へ窪む形状をなしている。これにより、これらのコーナー部631が角形鋼管50のコーナー部54のRと干渉することが防止される。一方、ナット保持組立部材601Aのコーナー部に該当する側壁部602Aと側壁部602Dとの間のコーナー部631、ナット保持組立部材601Bのコーナー部に該当する側壁部602Bと側壁部602Cとの間のコーナー部631には、角形鋼管50のコーナー部54のRに沿ったRが形成されている。これにより、これらのコーナー部631が角形鋼管50のコーナー部54のRと干渉することが防止される。
【0091】
本実施形態について、どの部分の形状が対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23、を構成しているかを説明する。角形鋼管50の平面部52Aからボルト70を挿入する場合、対向構造21は、主に、側壁部602Aによって構成されている。第1の移動制限構造22は、主に、ボルト挿入方向DAへ延在する側壁部602C,602D(吊り棒606を介してボルト挿入方向DAへ反力を発生する)と、吊り棒606の棒状部607と、当該側壁部602C,602D及び棒状部607の一端側で平面部52Aと接する側壁部602Aと、他端側で平面部52Bと接する側壁部602Bと、によって構成されている。第2の移動制限構造23は、主に、ボルト挿入方向DAと直交する方向へ延在する側壁部602A,602B(吊り棒606を介してボルト挿入方向DAと直交する方向への反力を発生する)と、吊り棒606の棒状部608と、当該側壁部602A,602B及び棒状部608の一端側で平面部52Cと接する側壁部602Cと、他端側で平面部52Dと接する側壁部602Dと、によって構成されている。なお、本実施形態に係るナット保持具600は四方に対して略対称な構造であるため、角形鋼管50の平面部52B,52C,52Dからボルト70を挿入する場合については、平面部52Aからの挿入と対応する部分が、それぞれ対向構造21、第1の移動制限構造22、第2の移動制限構造23を構成する。
【0092】
以上のような構成を有することで、第6実施形態に係るナット保持具600も、第1実施形態に係るナット保持具100と同様な作用・効果を得ることができる。なお、ナット保持組立部材601は、平板状ではないが、直角に屈曲した断面L型の板状部材であるため、運搬時や保管時に重ね合わせることができる。
【0093】
なお、上述の各実施形態では、吊り棒は主に吊り糸STを吊るためのものとして機能しているが、ナット保持具の移動を制限するための支持部材としての機能も有しているため、吊り棒もナット保持具の形状の一部を構成する「ナット保持組立部材」の一種であるとみなしてよい。
【0094】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0095】
例えば、上述の各実施形態では、角形鋼管の管軸方向から見たナット保持具の形状が、角形環状の形状を有するものであった。しかし、角形鋼管50の管軸に対して直交する方向への移動を制限することのできる形状であれば特に限定されず、あらゆる形状を採用することができる。例えば、図15(a)に示すようなH字状の形状のナット保持具700を採用してもよい。このナット保持具700は、角形鋼管50の平面部52Cと対向して接する側壁部702Cを構成するナット保持組立部材701Aと、角形鋼管50の平面部52Dと対向して接する側壁部702Dを構成するナット保持組立部材701Bと、側壁部702C,702Dを幅方向の中央で連結支持する支持部707を構成するナット保持組立部材701Cと、を備えている。このような構成でも、ボルト挿入方向DC,DDからのボルト70の挿入に対し、ボルト挿入方向DC,DDへの移動が制限され、当該方向と直交する方向への移動が制限される。あるいは、図15(b)に示すようなT字状の形状のナット保持具800を採用してもよい。このナット保持具800は、角形鋼管50の平面部52Cと対向して接する側壁部802Cを構成するナット保持組立部材801Aと、側壁部802Cを幅方向の中央で支持する支持部807を構成するナット保持組立部材801Bと、を備えている。このような構成でも、ボルト挿入方向DCからのボルト70の挿入に対し、ボルト挿入方向DCへの移動が制限され、当該方向と直交する方向への移動が制限される。
【0096】
また、吊り糸STを引っ掛ける構造として、吊り棒を例示したが、引っ掛けることができるものであれば特に限定されない。例えば、図15(c)に示すように側壁部2の貫通孔に直接吊り糸STを引っ掛けてもよく、図15(d)に示すように側壁部2に形成されたフック14に引っ掛けてもよい。
【0097】
また、上述の各実施形態では、ナット保持組立部材の肉盗みに関しては特に言及していなかったが、ナット保持具全体を一体型の成形部材とする場合に比して小さく単純化された成形部材であるため、ナット保持組立部材自体の肉盗みが容易にできることは言うまでもない。従って、各実施形態のナット保持組立部材に対して、あらゆる態様にて肉盗みを行ってもよい。例えば第1実施形態のナット保持組立部材1を肉盗みした態様の一例を、図16に示す。図16に示すナット保持組立部材901は、第1実施形態のナット保持組立部材1を肉盗みしたものである。図16においてハッチングを付した部分を貫通、又は溝を設けるようにしてよい。
【0098】
また、一の側壁部に形成されるナット嵌め込み部の数や大きさや位置関係も限定されず、対象となる角形鋼管にあわせて適宜変更可能である。また、角形鋼管の平面部がボルト接合されるものでない場合、当該平面部と対向する側壁部については、ナット嵌め込み部を設けなくともよい。また、ナットを回り止め状態に保持できる構造であれば、ナット嵌め込み部はどのような構造であってもよい。
【0099】
ここで、角形鋼管とは、少なくとも接合相手部材を接合するための平面部を有した断面多角形状の鋼管である。従って、上述の実施形態では角形鋼管として四角形のものを例示したが、特に限定されず、三角形の角形鋼管でもよく、五角形以上の角形鋼管であってもよい。
【0100】
上述の実施形態では、ナット保持組立部材同士を接続するための接続手段として、部材同士の嵌合部を嵌合することによって接続する接続構造を例示したが、特に限定されず、例えば接着、溶着、ボルト止め、クリップ止めなど、あらゆる接続手段を採用してよい。
【0101】
また、上述の各実施形態で示したナット保持組立部材を更に細かい組立部材に分けてもよい。例えば、ナット保持具の一の側壁部を複数のナット保持組立部材を接続することによって構成してもよい。また、玩具のブロックピースのように、例えば、ナット嵌め込み部が形成されたブロックピース、ナット嵌め込み部が形成されていない位置調節用のブロックピース、コーナー部用のブロックピースなどを用意し、角形鋼管の断面形状、大きさ、ボルト孔数などに合わせて自由自在にピースを組み立ててよい。このようにすれば、規格部品として数種類のブロックピースを大量に製造し、納入された作業現場での角形鋼管にあわせて、あらゆる形状のナット保持具を組み立てることができる。更には、ナット嵌め込み部が一つだけ形成されたブロックピースを一種類だけ製造し、当該ブロックピースを組み合わせることで対抗構造を構成して、あらゆる角形鋼管に対応してもよい。
【0102】
また、ナットが納められたナット保持具を角形鋼管に挿入する際、角形鋼管を寝かした(横にした)状態で挿入してもよい。この場合、工場もしくは建設現場にて当該挿入作業がなされる。まず、組み立てたナット保持具を角型鋼管の内部へ棒などを用いることによって押し入れる。次に、所定位置までナット保持具が押し入れられたら、角形鋼管の外側から仮固定ボルトによってナット嵌め込み部に納められたナットに締結することで、当該ナット保持具を角型鋼管の所定位置に仮固定する。そして、角型鋼管を建設位置に配置し、接合する面ごとに作業の邪魔となる仮固定ボルトを外し、接合相手部材を当接させて本締めしていく。
【0103】
また、上述の実施形態では、接合相手部材として梁を固定するための継手を例示していたが、どのようなものであってもよい。例えば、径が大きい角形鋼管の端部に径が小さい角形鋼管の端部を一部挿入し(大きい角形鋼管の内径と小さい角形鋼管の外径が略同じ)、当該重なり部分をボルト接合する場合に、ナット保持具を用いてもよい。このとき、小さい角形鋼管の内部にナット保持具を挿入し、大きい角形鋼管の外側からボルトを挿入する。
【符号の説明】
【0104】
1,201,301,401,501,601,701,801…ナット保持組立部材、3…ナット嵌め込み部、4,304…突出部、6,206,306,406,506…嵌合部、21…対向構造、22…第1の移動制限構造、23…第2の移動制限構造、31,331,431,531,631…コーナー部、50…角形鋼管、52…平面部、54…コーナー部、60…接合相手部材、70…ボルト、80…ナット、100,200,300,400,500,600,700,800…ナット保持具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管とその接合相手部材とをボルトとナットで接合する際に、前記角形鋼管の中空部内に納めて使用されるナット保持具であって、
前記角形鋼管の管軸方向から見た前記ナット保持具の形状は、前記角形鋼管の内面へ内側から接することによって、当該角形鋼管の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状であり、
前記ナット保持具は、前記ナットを納める凹部として形成されたナット嵌め込み部を有し、
前記ナット保持具の前記形状は、複数のナット保持組立部材を互いに接続手段により接続することで形成され、
前記ナット嵌め込み部は、前記ナットが納められた際に、ねじ込まれる前記ボルトに対して共回りしない程度に緩くナットを保持すること
を特徴とするナット保持具。
【請求項2】
前記角形鋼管は、前記接合相手部材と接合され、前記角形鋼管の外側から内側へ向かって前記ボルトが挿入される平面部を有し、
前記ナット保持具の前記形状は、
前記ナット嵌め込み部が複数形成されるとともに、前記平面部に対して前記角形鋼管の内側から対向する対向構造と、
前記ボルトが挿入される方向への前記ナット嵌め込み部の移動を制限する第1の移動制限構造と、
前記管軸方向から見て前記ボルトが挿入される方向に対して直交する方向への前記ナット嵌め込み部の移動を制限する第2の移動制限構造と、を構成すること
を特徴とする請求項1記載のナット保持具。
【請求項3】
前記ナット保持具の前記形状は、前記角形鋼管の断面形状に対応する角形環状の形状を有すること
を特徴とする請求項1または2記載のナット保持具。
【請求項4】
前記ナット保持組立部材は、板状であること
を特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載のナット保持具。
【請求項5】
前記接続手段は、一の前記ナット保持組立部材に形成された嵌合部と、他の前記ナット保持組立部材に形成された嵌合部との嵌合による接続構造によって構成されること
を特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載のナット保持具。
【請求項6】
前記ナット保持具は、外面から外側へ突出する突出部を有し、
前記突出部は前記角形鋼管の前記内面と接することによって、前記ナット保持具のコーナー部を前記角形鋼管の前記内面のコーナー部から離間させること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載のナット保持具。
【請求項7】
前記ナット保持具のコーナー部は、前記角形鋼管の前記内面のコーナー部に沿って湾曲していること
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載のナット保持具。
【請求項8】
前記ナット保持具のコーナー部は内側へ窪む形状をなすこと
を特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載のナット保持具。
【請求項9】
角形鋼管とその接合相手部材とをボルトとナットで接合する際に、前記角形鋼管の中空部内に納めて使用されるナット保持具を構成するナット保持組立部材であって、
前記ナットを納める凹部として形成されたナット嵌め込み部を有し、
接続手段により他のナット保持組立部材と接続されることにより、前記角形鋼管の管軸方向から見て、前記角形鋼管の内面へ内側から接することによって、当該角形鋼管の管軸に対して直交する方向への移動を制限する形状を形成し、
前記ナット嵌め込み部は、前記ナットが納められた際に、ねじ込まれる前記ボルトに対して共回りしない程度に緩くナットを保持すること
を特徴とするナット保持組立部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−87846(P2013−87846A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228119(P2011−228119)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】