ナノインプリント転写用基板およびナノインプリント転写方法
【課題】ナノインプリント転写におけるスループットに優れ、かつ、被加工物の意図しない部位への露光を確実に抑制できるナノインプリント転写用基板と、この基板を用いたナノインプリント転写方法を提供する。
【解決手段】ナノインプリント転写用基板(1)を、基板本体(2)と、この基板本体(2)の表面(2a)の所定の部位に設けられた光反射膜(3)とを備えたものとし、光反射膜(3)は、使用するモールドのパターン領域と同じか、それよりも大きい領域の反射面(4)を有するものとした。
【解決手段】ナノインプリント転写用基板(1)を、基板本体(2)と、この基板本体(2)の表面(2a)の所定の部位に設けられた光反射膜(3)とを備えたものとし、光反射膜(3)は、使用するモールドのパターン領域と同じか、それよりも大きい領域の反射面(4)を有するものとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に所望のパターンを転写形成するナノインプリント転写に使用する基板と、この基板を用いたナノインプリント転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術として、近年ナノインプリント転写に注目が集まっている。ナノインプリント転写は、基材の表面に微細な凹凸構造を形成した型部材を用い、凹凸構造を被加工物に転写することで微細構造を等倍転写するパターン形成技術である(特許文献1)。
上記のナノインプリント転写の一つの方法として、光インプリント法が知られている。この光インプリント法では、例えば、基板に被加工物として光硬化性の樹脂層を形成し、この樹脂層に所望の凹凸構造を有するモールド(型部材)を押し当てる。そして、この状態でモールド側から樹脂層に紫外線を照射して樹脂層を硬化させ、その後、モールドを樹脂層から引き離す。これにより、モールドが有する凹凸が反転した凹凸構造を被加工物である樹脂層に形成することができる(特許文献2)。このような光インプリントは、従来のフォトリソグラフィ技術では形成が困難なナノメートルオーダーの微細パターンの形成が可能であり、次世代リソグラフィ技術として有望視されている。
【0003】
このような光インプリント法では、フォトリソグラフィ法とは異なり、一回の露光にてパターンを形成する領域に対し、パターン開口のみを露光し、それ以外の遮光された領域が露光されないよう制御を考慮する必要がない。少なくともモールドと転写樹脂とが接触するパターン形成領域の樹脂層を全て硬化させることでパターンの転写形成が可能である。したがって、光インプリント法ではモールドが接触した部分の樹脂層に紫外線を効率よく照射して硬化させ、モールドを離型することがスループット向上の点で重要である。
【0004】
一方、光インプリント法では、モールドが有する微細な凹凸構造を、被加工物上の複数の箇所へ形成する際に、ステップアンドリピート方式でパターン形成を行う場合がある。しかし、モールドの凹凸構造が形成されているパターン領域より外側を通過する光により、凹凸構造を形成すべき部位より外側の樹脂層も露光され、一度のパターン形成で硬化する領域はモールドのパターン領域よりも大きくなる。そして、光硬化性樹脂層が露光され硬化してしまうと、その箇所にはパターン形成が行えない。このため、隣接するパターンが形成された領域間の境界幅を大きく設定せざるを得ないという問題があった。また、モールドを樹脂層から離型する際に樹脂層が異物として付着し、次の加工領域に欠陥を生じるという問題もあった。このような問題を解消するために、パターン領域ではない部位(非パターン領域)に遮光部材を設けたモールドが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号
【特許文献2】特表2002−539604号公報
【特許文献3】特開2007−103924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このようなモールドを用いても、被加工物の意図しない部位の露光を確実に抑制することは困難であった。すなわち、従来は、光硬化性樹脂層を配設する基板の表面状態は考慮しておらず、例えば、基板に予め所望のパターン構造物が形成されている場合、照射された紫外線がモールド、樹脂層を透過し、樹脂層と基板との界面の上記パターン構造物で反射され、その反射光(散乱光)により意図しない領域の樹脂層まで硬化してしまうという問題があった。
また、上述のように、ナノインプリント転写では、樹脂層に紫外線を効率よく照射して硬化させることが重要であるが、従来は、樹脂層と基板との界面での反射光を利用することが考慮されておらず、意図する領域の樹脂層の硬化に要する時間、照射エネルギーの低減が要望されていた。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、ナノインプリント転写におけるスループットに優れ、かつ、被加工物の意図しない部位への露光を確実に抑制できるナノインプリント転写用基板と、この基板を用いたナノインプリント転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明のナノインプリント転写用基板は、被加工物を配設しモールドを用いたナノインプリント転写に供するためのナノインプリント転写用基板であって、基板本体と、該基板本体の表面に設けられた光反射膜と、を備え、該光反射膜は、使用するモールドのパターン領域と同じか、それよりも大きい領域の反射面を有するような構成とした。
【0008】
本発明の他の態様として、前記光反射膜の前記反射面を囲むように反射防止機能膜を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記反射防止機能膜は、前記光反射膜が設けられていない前記基板本体の表面に設けられているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記光反射膜は、前記基板本体の表面全域に設けられたものであり、前記光反射膜の前記反射面が露出するように、光反射膜上の所定の部位に前記反射防止機能膜が設けられているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記光反射膜は、前記基板本体の表面全域に設けられた前記反射防止機能膜を介して前記基板本体に設けられているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記光反射膜の前記反射面は、使用するモールドのパターン領域と同じ大きさであるとともに、表面が平坦であるような構成とした。
【0009】
本発明の他の態様として、前記光反射膜の前記反射面は、使用するモールドのパターン領域と同じ大きさの平坦領域と、該平坦領域を囲むように位置する周辺領域とからなり、該周辺領域は、前記モールドを介して前記反射面に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体の垂直方向乃至基板本体の垂直方向よりもモールドの中心側に傾斜した方向へ反射するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記周辺領域は傾斜面であり、該傾斜面と前記平坦領域とがなす角度はθ/2以上であるような構成とした。
【0010】
本発明の他の態様として、使用するモールドはパターン領域が凸状であるメサ構造を有しており、前記周辺領域の外側端部における前記光反射膜の厚みをhとし、前記基板本体の長さ、または前記基板本体が多面付けで区画されている場合の一面付けの基板本体の長さをBとし、被加工物に接触するモールドのパターン領域の長さをaとし、モールドの非パターン領域に位置する遮光膜の表面からパターン領域の表面までの厚み方向の距離をHとし、被加工物の厚みをtとし、ナノインプリント転写時の被加工物へのモールドの押し込み深さをdとし、モールドを介して被加工物に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、前記光反射膜の反射面の長さLを、下記の式(1)から算出される範囲内となるように設定するような構成とした。
a+2[(H+t)−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(1)
【0011】
本発明の他の態様として、使用するモールドはパターン領域と非パターン領域とが同一面をなす構造を有しており、前記周辺領域の外側端部における前記光反射膜の厚みをhとし、前記基板本体の長さ、または前記基板本体が多面付けで区画されている場合の一面付けの基板本体の長さをBとし、被加工物に接触するモールドのパターン領域の長さをaとし、被加工物の厚みをtとし、ナノインプリント転写時の被加工物へのモールドの押し込み深さをdとし、モールドを介して被加工物に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、前記光反射膜の反射面の長さLを、下記の式(2)から算出される範囲内となるように設定するような構成とした。
a+2[t−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(2)
【0012】
本発明のナノインプリント転写方法は、上述の本発明のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜形成面側の全面に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドのパターン領域の中心と前記反射面の中心が一致するように前記被加工物にモールドのパターン領域を押し当て、前記モールドを介し被加工物に光を照射して被加工物の所定領域を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離すような構成とした。
また、本発明のナノインプリント転写用基板は、前記基板本体が多面付けで区画されており、各面付け毎に前記反射面を備えるような構成とした。
【0013】
本発明のナノインプリント転写方法は、上述のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜形成面側の全面に被加工物を配設し、次いで、所望の面付けにおいて、該被加工物を介してモールドのパターン領域の中心と前記反射面の中心が一致するように前記被加工物にモールドのパターン領域を押し当て、前記モールドを介し被加工物に光を照射して被加工物の所定領域を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離す操作を、順次各面付けにおいて行うような構成とした。
【0014】
また、本発明のナノインプリント転写用基板は、被加工物を所望の箇所に配設しモールドを用いたナノインプリント転写に供するためのナノインプリント転写用基板であって、基板本体と、該基板本体の表面に設けられた光反射膜と、を備え、該光反射膜は平坦凹部と、該平坦凹部の周囲に位置する肉厚部と、該肉厚部と前記平坦凹部との境界に設けられた集光部とからなり、該平坦凹部は使用するモールドよりも大きく、該集光部は照射された光を基板本体の垂直方向よりも平坦凹部の中心側に傾斜した方向へ反射するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記境界部は傾斜面または湾曲面であるような構成とした。
【0015】
本発明のナノインプリント転写方法は、上述のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜の前記平坦凹部に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドの中心と前記平坦凹部の中心が一致するように前記被加工物にモールドを押し当て、前記モールド側から前記光反射膜に光を照射し、前記モールドを透過した光、および、前記モールドの周辺外側を通過して前記境界部に到達し反射した光によって被加工物を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離すような構成とした。
また、本発明のナノインプリント転写用基板は、前記基板本体が多面付けで区画されており、各面付け毎に前記光反射膜を備えるような構成とした。
【0016】
本発明のナノインプリント転写方法は、上述のナノインプリント転写用基板の所望の面付けにおいて、前記光反射膜の前記平坦凹部に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドの中心と前記平坦凹部の中心が一致するように前記被加工物にモールドを押し当て、前記モールド側から前記光反射膜に光を照射し、前記モールドを透過した光、および、前記モールドの周辺外側を通過して前記境界部に到達し反射した光によって被加工物を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離す操作を、順次各面付けにおいて行うような構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明のナノインプリント転写用基板では、光反射膜形成面側に被加工物を配設し、被加工物にモールドのパターン領域を押し当てた状態でモールドを介し被加工物に光を照射して硬化する際に、光反射膜による反射光も被加工物の硬化に利用することができるので、照射光の利用効率が高くなり、また、硬化後の被加工物とモールドとの離型が安定し、モールドとともに被加工物が基板から剥離することが防止され、ナノインプリント転写のスループットを向上させることが可能となる。また、モールドのパターン領域に相当する領域に基板本体が所望のパターン構造物を備える場合であっても、光反射膜の反射面が存在することにより、パターン構造物における光の反射(散乱光発生)が防止され、被加工物の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0018】
また、本発明のナノインプリント転写用基板では、光反射膜の平坦凹部に被加工物を配設し、被加工物にモールドを押し当てた状態でモールド側から光を照射して被加工物を硬化する際に、モールドを透過した光とともに、モールドの周辺外側を通過して集光部に到達し反射した光も被加工物の硬化に利用できるので、照射光の利用効率が高くなるとともに、モールド周辺の被加工物の硬化が生じ、硬化後の被加工物とモールドとの離型が安定し、モールドとともに被加工物が基板から剥離することが防止され、ナノインプリント転写のスループットを向上させることが可能となる。また、基板本体が所望のパターン構造物を備える場合であっても、光反射膜が存在することにより、パターン構造物における光の反射(散乱光発生)が防止され、照射光の利用効率が高いものとなる。
【0019】
本発明のナノインプリント転写方法では、ナノインプリント転写用基板の全面に被加工物を配設してパターン形成が行われ、照射光の利用効率が高く、硬化後の被加工物とモールドとの離型が安定し、モールドとともに被加工物が基板から剥離することが防止され、スループットの向上が可能となる。また、照射光による被加工物の意図しない部位の露光が確実に抑制され、ステップアンドリピート方式によるナノインプリント転写の効率が向上する。
また、本発明のナノインプリント転写方法では、ナノインプリント転写用基板の所望の箇所(光反射膜の平坦凹部)に被加工物を配設してパターン形成が行われ、照射光の利用効率が高く、モールド周辺の被加工物の硬化が生じ、硬化後の被加工物とモールドとの離型が安定し、モールドとともに被加工物が基板から剥離することが防止され、スループットの向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図6】図1に示されるナノインプリント転写用基板を例として、被加工物にモールドを押し当てた状態を示す図である。
【図7】メサ構造を有するモールドの一例を説明するための図である。
【図8】図6(A)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
【図9】図6(A)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
【図10】図9に示されるナノインプリント転写用基板の反射面の周辺領域について説明する図である。
【図11】図9に示されるナノインプリント転写用基板の反射面の周辺領域について説明する図である。
【図12】メサ構造ではないモールドの一例を説明するための図である。
【図13】図6(B)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
【図14】図6(B)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
【図15】メサ構造ではないモールドの他の例を説明するための図である。
【図16】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図17】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図18】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図19】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分平面図である。
【図20】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す断面図である。
【図21】図20に示されるナノインプリント転写用基板の集光部の他の例を説明するための図である。
【図22】図20に示されるナノインプリント転写用基板を例として、被加工物にモールドを押し当てた状態を示す図である。
【図23】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分平面図である。
【図24】本発明のナノインプリント転写方法の実施形態を説明するための工程図である。
【図25】本発明のナノインプリント転写方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[ナノインプリント転写用基板]
図1〜図4は、本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
図1において、ナノインプリント転写用基板1は、基板本体2と、この基板本体2の表面2aの所定の部位に設けられた光反射膜3とを備えている。この光反射膜3は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面4を有しており、ナノインプリント転写用基板1では、光反射膜3の全域が反射面4となっている。尚、図1では、光反射膜3がモールドのパターン領域61と同じ大きさの反射面4を有する状態を示している。
【0022】
また、図2において、ナノインプリント転写用基板11は、基板本体12と、この基板本体12の表面12aの所定の部位に設けられた光反射膜13と、光反射膜13が設けられていない部位に形成され、露光に用いられる光の反射を低減する機能を有した反射防止機能膜15とを備えている。そして、光反射膜13は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面14を有している。このナノインプリント転写用基板11では、光反射膜13の全域が反射面14となっている。尚、図2では、光反射膜13がモールドのパターン領域61と同じ大きさの反射面14を有する状態を示している。
【0023】
また、図3において、ナノインプリント転写用基板21は、基板本体22と、この基板本体22の表面22aの全域に設けられた光反射膜23と、光反射膜23の所定の部位を露出するように光反射膜23上に設けられた反射防止機能膜25とを備えている。そして、光反射膜23は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面24を有している。このナノインプリント転写用基板21では、光反射膜23の一部(反射防止機能膜25が形成されていない部位)が反射面24となっている。尚、図3では、光反射膜23がモールドのパターン領域61と同じ大きさの反射面24を有する状態を示している。
【0024】
また、図4において、ナノインプリント転写用基板31は、基板本体32と、この基板本体32の表面32aの全域に設けられた反射防止機能膜35と、反射防止機能膜35の所定の部位に設けられた光反射膜33とを備えている。この光反射膜33は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面34を有しており、ナノインプリント転写用基板31では、光反射膜33の全域が反射面34となっている。尚、図4では、光反射膜33がモールドのパターン領域61と同じ大きさの反射面34を有する状態を示している。
【0025】
上述のようなナノインプリント転写用基板1,11,21,31を構成する基板本体2,12,22,32は、例えば、石英やソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス、シリコンやガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基板、あるいは、これらの材料の任意の組み合わせからなる複合材料基板であってよい。更に、金属は一般的に絶対反射率が高いことが知られているが、例えば、酸化物や窒化物となり反射率が低下する場合や、表面に凹凸が存在して光が乱反射される場合には、基板本体として使用し、本発明を適用することができる。加えて、金属同士を比較した場合、一般に遷移金属は光の吸収成分を有するため、他の金属が有する絶対反射率に比べて、最大で10%程度小さい絶対反射率を有している。このため、遷移金属を基板本体として使用し、他の金属からなる光反射膜との反射率の差を利用することもできる。また、図5にナノインプリント転写用基板1を例として示されるように、基板本体は所望のパターン構造物7が表面2a側に形成されたものであってもよい。パターン構造物7としては、特に限定されず、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等が挙げられる。
【0026】
また、基板本体の表面が反射作用を有する場合には、図3に示したナノインプリント転写用基板21の光反射膜23を形成することなく、基板本体22の表面22aの反射作用を利用し、反射防止機能膜25を基板本体22に直接設けてもよい。但し、上記のように、基板本体が所望のパターン構造物を表面に備える場合、基板本体の表面が反射作用を有していても、パターン構造物における光の散乱による被加工物の意図しない部位の露光を防止する目的で、光反射膜を設ける必要がある。ここで、上記の反射作用とは、波長が200〜400nm程度の紫外線を照射した場合の照射光に対する反射光の光量比率が少なくとも10%以上、好ましくは30%以上であり、照射光に対する絶対反射率が50%以上であることを意味する。
【0027】
さらに、基板本体の表面が反射防止作用を有する場合には、図4に示したナノインプリント転写用基板31の反射防止機能膜35を形成することなく、基板本体32の表面32aの反射防止作用を利用し、光反射膜33を基板本体32に直接設けてもよい。この場合、構造的には、図1に示したナノインプリント転写用基板1と同じものとなる。ここで、上記の反射防止作用とは、波長が200〜400nm程度の紫外線を照射した場合の照射光に対する反射光の光量比率が10%以下、好ましくは30%以下であることを意味する。
基板本体2,12,22,32の厚みは、材質、強度、面積等を考慮して適宜設定することができる。
【0028】
また、ナノインプリント転写用基板1,11,21,31を構成する光反射膜3,13,23,33の材質としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、銀、クロム、白金等の金属、これらの金属の合金、酸化物、窒化物等を挙げることができる。また、光反射膜3,13,23,33は多層薄膜であってもよく、この場合、上記の材質の中で屈折率の異なる材質の薄膜が積層されたものとすることできる。さらに、多層薄膜を構成する材質は、上記の材質のように単層で光を反射するものに限定されず、例えば、酸化ケイ素のように照射光を透過する物質が多層薄膜の構成に含まれていてもよい。このような光反射膜は、例えば、真空成膜法、塗布法、めっき法等により形成することができ、光反射膜の厚みは、例えば単層膜である場合、3〜100nm程度の範囲で適宜設定することができる。但し、上記のように基板本体2が所望のパターン構造物7を表面に備える場合、このパターン構造物7の表面形状が光反射膜3に現われない程度の厚みとする必要がある。尚、光反射膜の反射面の形状については後述する。
【0029】
また、反射防止機能膜15,25,35は、ナノインプリント転写用基板と被加工物との界面での照射光の不要な反射を防止したり、ナノインプリント転写用基板と被加工物との界面における伝播光を阻止したり、基板本体が照射光により変質する場合に基板本体を保護するための部材である。このような反射防止機能膜は、光吸収膜あるいは低反射膜とすることができる。
反射防止機能膜が光吸収膜である場合、例えば、紫外線を吸収する作用がある二酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の無機材料、トリアジン化合物、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の有機材料の1種であってよく、また、これらの2種以上の組み合わせからなるものであってよい。また、酸化亜鉛、酸化チタン等の微粒子をバインダ樹脂中に含有させたものであってもよい。このような光吸収膜の厚みは、例えば、波長が200〜400nm程度の紫外線に対する光吸収率が70%以上、好ましくは80%以上となるように設定することができる。
【0030】
一方、反射防止機能膜が低反射膜である場合、基板本体の屈折率より小さい屈折率を有する膜とすることができる。また、低反射膜は、低屈折率薄膜と高屈折率薄膜とが積層されたもの、あるいは、2回以上の繰り返しで積層されたものであり、膜厚を被吸収光の1/4波長の倍数としたものであってもよい。この場合、例えば、フッ化マグネシウム(低屈折率(1.38)薄膜)と酸化ケイ素(高屈折率(1.52)薄膜)との組み合わせ、酸化アルミニウム(低屈折率(1.65)薄膜)と酸化チタン(高屈折率(2.25)薄膜)との組み合わせ等を挙げることができる。
さらに、低反射膜は、その表面(基板本体とは反対側の面)に被吸収光の波長以下の微細な凹凸構造を有するものであってもよい。
【0031】
尚、本発明で必須である光反射膜が基板本体に存在しない場合の反射防止機能膜の存在について以下に説明する。まず、基板本体が所望のパターン構造物を表面に備える場合には、パターン構造物における光の散乱による被加工物の意図しない部位の露光を防止したり、ナノインプリント転写用基板と被加工物との界面における伝播光を阻止する目的で、反射防止機能膜を設けることが好ましい。また、基板本体が照射光により変質する場合にも、基板本体を保護する目的で、反射防止機能膜を設けることが好ましい。一方、基板本体が所望のパターン構造物を表面に備えていない場合には、反射防止機能膜が存在しなくてもよいが、照射光の斜入射成分がナノインプリント転写用基板と被加工物との界面において反射したり伝播光となり被加工物の意図しない部位を露光するときには、反射防止機能膜を設けることが好ましい。また、基板本体が照射光により変質する場合にも、基板本体を保護する目的で、反射防止機能膜を設けることが好ましい。
【0032】
次に、光反射膜の反射面について説明する。
上述のように、光反射膜3,13,23,33は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面4,14,24,34を有している。図6は図1に示されるナノインプリント転写用基板1を例として、被加工物にモールドを押し当てた状態を示す図である。図6(A)では、ナノインプリント転写用基板1の表面2a側に被加工物51が配設されており、この被加工物51を介してメサ構造を有するモールド71のパターン領域61の中心と反射面4の中心が一致するようにモールド71が押し当てられている。また、図6(B)では、ナノインプリント転写用基板1の表面2a側に被加工物51が配設されており、この被加工物51を介してメサ構造ではないモールド81のパターン領域61の中心と反射面4の中心が一致するようにモールド71が押し当てられている。尚、図6(A)および図6(B)では、光反射膜3がモールド71,81のパターン領域61と同じ大きさの反射面4を有する状態を示している。
【0033】
まず、図6(A)に示すような、メサ構造を有するモールド71を使用した場合の光反射膜3の反射面4について説明する。
ここでは、まず、モールド71について説明する。図7は、メサ構造を有するモールド71の一例を説明するための図である。図7において、メサ構造を有するモールド71は、透明な基材72を有し、この基材72の表面72aは凹凸パターン73を備えていて、パターン領域61をなしている。また、表面72a(パターン領域61)の周囲は、壁面72cを介して表面72a′に連続しており、この表面72a′には遮光膜77が形成され、非パターン領域62をなしている。このように、モールド71では、パターン領域61が非パターン領域62に対して凸状となっている。
【0034】
このようなモールド71では、裏面72b側から照射された光が透過して表面72a側から出射される。照射光が斜入射成分のない平行光αである場合、モールド71を透過する光は表面72a(パターン領域61)から出射され、表面72a′に達した光は遮光膜77で遮光される。一方、照射光が斜入射成分を含む光βである場合、表面72a′に達した光は遮光膜77で遮光されるものの、斜入射成分は壁面72cを透過することができる。このため、モールド71を透過する光は、表面72aから出射される他に、壁面72cからも出射される。したがって、モールド71の透過光はパターン領域61よりも広いものとなる。
【0035】
次に、図6(A)に示される反射面4について説明する。図8および図9は、図6(A)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
まず、図8について説明する。図8に示される光反射膜3は、反射面4がモールド71のパターン領域61と同じ大きさ(反射面4の長さLがモールド71のパターン領域61(表面72a)の長さaと同じ)であるとともに、平坦なものである。このような光反射膜3を備えたナノインプリント転写用基板1は、照射光が斜入射成分のない平行光αである場合に使用することができる。すなわち、照射光αは、モールド71を透過して表面72a(パターン領域61)から出射され、被加工物51を露光して硬化させる。また、被加工物51を透過して光反射膜3の到達した光は、反射面4で反射されるが、反射面4が平坦なので、反射光が被加工物51の全面に効率よく照射されて硬化に供され、照射光の利用効率が高いものになるとともに、被加工物51の硬化が確実に行なわれ、硬化後の被加工物51とモールド71との離型が安定する。また、基板本体2が所望のパターン構造物7(図8に鎖線で表示した)を表面2aに備える場合であっても、パターン構造物7を被覆するように光反射膜3が存在するので、パターン構造物7における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物51の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0036】
次に、図9について説明する。図9に示される光反射膜3は、反射面4がモールド71のパターン領域61と同じ大きさの平坦領域4aと、この平坦領域4aを囲むように位置する周辺領域4bとからなっている。したがって、反射面4の長さLはモールド71のパターン領域61(表面72a)の長さaよりも大きいものである。また、周辺領域4bは、モールド71を介して反射面4に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射するように構成されている。このような光反射膜3を備えたナノインプリント転写用基板1は、照射光が斜入射成分を含む光βである場合に使用することができる。すなわち、照射光βのうち、モールド71を透過して表面72a(パターン領域61)から出射された光は、被加工物51を露光して硬化させる。そして、さらに被加工物51を透過して光反射膜3に到達した光は、反射面4の平坦領域4aで反射され被加工物51の硬化に供される。一方、照射光βの斜入射成分であって、モールド71を透過して壁面72cから出射された光は、モールド71の周辺の被加工物51を露光して硬化させる。そして、さらに被加工物51を透過して光反射膜3に到達した光は、反射面4の周辺領域4bで反射され、基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ進んで被加工物51の硬化に供される。したがって、照射光の利用効率が高いものとなり、また、反射面4の周辺領域4bで反射された光によりモールド71の周辺の被加工物51の硬化が生じ、硬化後の被加工物51とモールド71との離型が安定するとともに、被加工物51の意図しない部位の露光は確実に抑制される。また、基板本体2が所望のパターン構造物(図示せず)を表面2aに備える場合であっても、パターン構造物を被覆するように光反射膜3が存在するので、パターン構造物における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物51の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0037】
ここで、光反射膜3がモールド71のパターン領域61よりも大きい領域の反射面4を有する場合の反射面4の長さLの設定について、図9を参照しながら説明する。図9において、周辺領域4bの外側端部の光反射膜3の厚みをhとし、基板本体2の長さをBとし、被加工物51に接触するモールド71のパターン領域61(表面72a)の長さをaとし、モールド71の非パターン領域62(表面72a′)に位置する遮光膜77の表面からパターン領域61の表面72aまでの厚み方向の距離をHとし、被加工物51の厚みをtとし、被加工物51へのモールド71の押し込み深さをdとし、モールド71を介して被加工物51に照射された光βの斜入射成分の最大入射角度をθとする。そして、照射光βの斜入射成分であって、モールド71を透過して壁面72cから出射された光を制御するためには、遮光膜77の端部近傍から最大入射角度θで入射した斜入射成分が反射面4の周辺領域4bの外側端部以内に到達する必要がある。したがって、遮光膜77の内側の端部を点xとし、壁面72cの延長線と周辺領域4bの外側端部の基板本体2に平行な線との交点を点yとし、周辺領域4bの外側端部を点zとし、直角三角形xyzを想定すると、下記の式(1′)が成立する。
tanθ ≦[(L−a)/2]/[(H+t)−(d+h)]
=(L−a)/2[(H+t)−(d+h)] 式(1′)
この式(1′)をLが右辺となるように整理すると、下記の式(1″)となる。
a+2[(H+t)−(d+h)]tanθ ≦ L 式(1″)
【0038】
また、光反射膜3の反射面4の長さLの上限は、反射防止機能膜を反射面4の周辺に設ける場合により適宜設定することができるが、基板本体2の長さBを超えることはできない。したがって、光反射膜3の反射面4の長さLは、下記の式(1)から算出される範囲内となるように設定することができる。
a+2[(H+t)−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(1)
【0039】
次に、反射面4の周辺領域4bについて説明する。周辺領域4bは、上述のようにモールド71を介して反射面4に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射するように構成されている。このような周辺領域4bは、例えば、図10に示されるように傾斜面とすることができる。この図10は、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向に反射する場合の周辺領域4bを示す図である。この場合、傾斜面である周辺領域4bが平坦領域4aとなす角度はθ/2となる。そして、最大入射角度θよりも小さい斜入射角度で入射した光は、図10に鎖線で示すように、基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射する。したがって、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射するように傾斜面である周辺領域4bを構成するためには、周辺領域4bが平坦領域4aとなす角度をθ/2以上となるように設定する。
【0040】
また、周辺領域4bは、例えば、図11に示されるように凹面としてもよい。この場合も、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射するように凹面形状を設定する。このような凹面形状では、遮光膜77の端部近傍よりも低い位置(モールド71の表面72a寄りの位置)から最大入射角度θで入射した斜入射成分(図11に鎖線で示す)は、基板本体2の垂直方向よりも外側に傾斜した方向へ反射することになる。しかし、このような外側方向への反射光は、遮光膜77の端部近傍から最大入射角度θで入射した斜入射成分(図11に実線で示す)が周辺領域4bで反射され被加工物51内を進む領域(基板本体2の垂直方向に反射された場合が最大領域となる)の中に位置しているので問題はない。
【0041】
上述にような傾斜面あるいは凹面の形状である周辺領域4bと平坦領域4aとを有する反射面4を備えた光反射膜3は、例えば、CVDやスパッタリング等の薄膜形成技術、リソグラフィ、インプリント等のパターン形成技術を組み合わせることにより形成することができる。まず、薄膜形成とリソグラフィを使用する場合を説明する。この場合、まず、基板全体に薄膜を形成した後、形成した薄膜をリソグラフィにより周辺領域4bにのみ残るように処理する。この状態で、更に光反射膜3となる薄膜を形成した後、不要な薄膜部分をリソグラフィにより除去する。これにより、先に周辺領域4bにのみ残されている薄膜の存在によって、周辺領域4bの光反射膜3は、平坦領域4aの光反射膜3に比べて隆起した構造となる。次に、インプリントを利用した場合を説明する。この場合、光反射膜3となる薄膜を形成した後、平坦領域4aと、周辺領域4bとの凹凸関係が反転したパターンを有するモールドを用いて薄膜にパターン形成を行った後、不要部分をリソグラフィにより除去することで、目的の構造が得られる。
【0042】
次に、図6(B)に示すような、モールド81を使用した場合の光反射膜3の反射面4について説明する。
図12は、メサ構造を有していないモールド81の一例を説明するための図である。図12において、モールド81は、透明な基材82を有し、この基材82の表面82aの中央の所定領域は凹凸パターン83を備えていて、パターン領域61をなしている。また、表面82aの周辺側には遮光膜87が形成されて非パターン領域62をなしており、パターン領域61と非パターン領域62とが同一面をなす構造を有している。
このようなモールド81では、裏面82b側から照射された光が透過して表面82a側から出射される。照射光が斜入射成分のない平行光αである場合、非パターン領域62に照射された光は遮光膜87で遮光されるので、モールド81を透過する光は、表面82aのパターン領域61のみから出射される。一方、照射光が斜入射成分を含む光βである場合、表面82aのパターン領域61から出射される透過光には、非パターン領域62方向へ広がる斜入射成分が含まれる。したがって、モールド81の透過光はパターン領域61よりも広いものとなる。
【0043】
次に、図6(B)に示される反射面4について説明する。図13および図14は、図6(B)において鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
まず、図13について説明する。図13に示される光反射膜3は、反射面4がモールド81のパターン領域61と同じ大きさ(反射面4の長さLがモールド81のパターン領域61(遮光膜87が形成されていない表面82aの領域)の長さaと同じ)であるとともに、平坦なものである。このような光反射膜3を備えたナノインプリント転写用基板1は、照射光が斜入射成分のない平行光αである場合に使用することができる。すなわち、照射光αは、モールド81を透過して表面82a(パターン領域61)から出射され、被加工物51を露光して硬化させる。また、被加工物51を透過して光反射膜3の到達した光は、反射面4で反射され被加工物51の硬化に供されるので、照射光の利用効率が高いものとなる。また、基板本体2が所望のパターン構造物7(図13に鎖線で表示した)を表面2aに備える場合であっても、パターン構造物7を被覆するように光反射膜3が存在するので、パターン構造物7における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物51の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0044】
次に、図14について説明する。図14に示される光反射膜3は、反射面4がモールド81のパターン領域61と同じ大きさの平坦領域4aと、この平坦領域4aを囲むように位置する周辺領域4bとからなっている。したがって、反射面4の長さLはモールド81のパターン領域61(遮光膜87が形成されていない表面82aの領域)の長さaよりも大きいものである。また、周辺領域4bは、モールド81を介して反射面4に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド81の中心側に傾斜した方向へ反射するように構成されている。このような光反射膜3を備えたナノインプリント転写用基板1は、照射光が斜入射成分を含む光βである場合に使用することができる。すなわち、照射光βのうち、モールド81を透過して表面82a(パターン領域61)から出射された光は、被加工物51を露光して硬化させる。そして、さらに被加工物51を透過して光反射膜3に到達した光は、反射面4の平坦領域4aで反射され被加工物51の硬化に供される。一方、照射光βの斜入射成分であって、モールド81のパターン領域61の遮光膜87の端部近傍から被加工物51に照射された光は、パターン領域61よりも外側に位置する被加工物51を露光して硬化させる。そして、さらに被加工物51を透過して光反射膜3に到達した光は、反射面4の周辺領域4bで反射され、基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド81の中心側に傾斜した方向へ進んで被加工物51の硬化に供される。したがって、照射光の利用効率が高いものとなる。また、基板本体2が所望のパターン構造物(図示せず)を表面2aに備える場合であっても、パターン構造物を被覆するように光反射膜3が存在するので、パターン構造物における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物51の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0045】
ここで、光反射膜3がモールド81のパターン領域61よりも大きい領域の反射面4を有する場合の反射面4の長さLの設定について、図14を参照しながら説明する。図14において、周辺領域4bの外側端部の光反射膜3の厚みをhとし、基板本体2の長さをBとし、被加工物51に接触するモールド81のパターン領域61(遮光膜87が形成されていない表面82aの領域)の長さをaとし、被加工物51の厚みをtとし、被加工物51へのモールド81の押し込み深さをdとし、モールド81を介して被加工物51に照射された光βの斜入射成分の最大入射角度をθとする。そして、照射光βの斜入射成分であって、モールド81を透過して遮光膜87の端部近傍から被加工物51に照射される光を制御するためには、最大入射角度θで入射した斜入射成分が反射面4の周辺領域4bの外側端部以内に到達する必要がある。したがって、遮光膜87の内側の端部を点xとし、この点xから基板本体2へ降ろした垂線と周辺領域4bの外側端部の基板本体2に平行な線との交点を点yとし、周辺領域4bの外側端部を点zとし、直角三角形xyzを想定すると、下記の式(2′)が成立する。
tanθ ≦[(L−a)/2]/[t−(d+h)]
=(L−a)/2[t−(d+h)] 式(2′)
この式(2′)をLが右辺となるように整理すると、下記の式(2″)となる。
a+2[t−(d+h)]tanθ ≦ L 式(2″)
【0046】
また、光反射膜3の反射面4の長さLの上限は、反射防止機能膜を反射面4の周辺に設ける場合等によって適宜設定することができるが、基板本体2の長さBを超えることはできない。したがって、光反射膜3の反射面4の長さLは、下記の式(2)から算出される範囲内となるように設定することができる。
a+2[t−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(2)
このようなモールド81を使用する場合の反射面4の周辺領域4bの形状は、メサ構造を有するモールド71を使用する場合の上述の周辺領域4bの形状と同様とすることができる。
【0047】
また、図15に示すモールド81′では、凹凸パターン83を備える表面82aから凸状となるように遮光膜87が形成されている。しかし、このようなモールド81′を使用する場合も、斜入射成分はモールド81′を透過して遮光膜87の端部近傍から被加工物51に照射されると考えられる。すなわち、表面82aから凸状に遮光膜87が形成されているモールド81′も、上述のモールド81と同様に、パターン領域61と非パターン領域62とが同一面をなす構造を有しているとみなすことができる。したがって、光反射膜3がモールド81のパターン領域61よりも大きい領域の反射面4を有する場合の反射面4の長さLは、上記の式(2)から算出される範囲内となるように設定することができる。
【0048】
尚、上述の図6〜図15を用いた反射面4の説明は、図1に示したナノインプリント転写用基板1を例としたものであるが、図2〜図4に示したようなナノインプリント転写用基板11,21,31においても、その反射面14,24,34を上述の反射面4と同様の構成することができる。例えば、ナノインプリント転写用基板11では、図16に示されるように、光反射膜13の全域を反射面14とし、反射面14を平坦領域14aとこの平坦領域14aを囲むように位置する周辺領域14bとからなるものとし、周辺領域14bの外側領域に反射防止機能膜15を備えたものとすることができる。図示例では、反射防止機能膜15の厚みが、周辺領域14bの外側端部における光反射膜13の厚みと同じであるが、これに限定されるものではない。また、ナノインプリント転写用基板21では、図17に示されるように、基板本体22の全面に設けた光反射膜13の所定領域に、平坦領域24aとこの平坦領域24aを囲むように位置する周辺領域24bとからなる反射面24を設け、周辺領域24bの外側領域に反射防止機能膜25を備えたものとすることができる。さらに、ナノインプリント転写用基板31では、図18に示されるように、基板本体22の全面に設けた反射防止機能膜35の所定領域に光反射膜33を設け、この光反射膜33の全域を反射面34とし、反射面34を平坦領域34aとこの平坦領域34aを囲むように位置する周辺領域34bとからなるものとすることができる。
【0049】
図19は、本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分平面図である。このナノインプリント転写用基板1′は、鎖線で示すように、基板本体が多面付けで区画されており、各面付けが上述のナノインプリント転写用基板1に相当する。したがって、各面付け毎に反射面4を備えており、反射面4が平坦領域4aと周辺領域4bからなる場合の反射面4の長さLは、一面付けに相当する基板本体の長さをBとして、上記の式(1)、式(2)から算出される範囲内となるように設定することができる。
【0050】
図20は、本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す断面図である。
図20において、ナノインプリント転写用基板41は、基板本体42と、この基板本体42の表面42aに設けられた光反射膜43とを備えている。光反射膜43は、平坦凹部44aと、この平坦凹部44aの周囲に位置する肉厚部44bと、この肉厚部44bと平坦凹部44aとの境界に設けられた集光部44cとからなる。
このようなナノインプリント転写用基板41を構成する基板本体42の材質は、上述のナノインプリント転写用基板の基板本体2,12,22,32と同様の材質であってよい。また、図20に鎖線で示したように、基板本体42は所望のパターン構造物47が表面42a側に形成されたものであってもよい。パターン構造物47としては、特に限定されず、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等が挙げられる。
基板本体42の厚みは、材質、強度、面積等を考慮して適宜設定することができる。
【0051】
また、ナノインプリント転写用基板41を構成する光反射膜43の材質は、上述のナノインプリント転写用基板の光反射膜3,13,23,33と同様の材質であってよい。このようは光反射膜43は、例えば、真空成膜法、塗布法、めっき法等により形成することができ、光反射膜43の平坦凹部44aの厚みは、例えば、3〜100nm程度の範囲で適宜設定することができ、また、肉厚部44bは集光部44cの形状等を考慮して、例えば、5〜200nm程度の範囲で適宜設定することができる。但し、上記のように基板本体42が所望のパターン構造物47を表面に備える場合、このパターン構造物47の表面形状が光反射膜43に現われない程度の厚みとする必要がある。
【0052】
この光反射膜43の平坦凹部44aは、使用するモールドよりも大きいものである。また、光反射膜43の集光部44cは、図20に一点鎖線で示したように、照射された光を基板本体42の垂直方向よりも平坦凹部44aの中心側に傾斜した方向へ反射するものである。そして、光反射膜43の平坦凹部44aの大きさは、上記のように集光部44cで反射された光が被加工物に照射されるように、使用するモールドの大きさを考慮して設定することができる。尚、図20では、集光部44cは凹面形状の湾曲面となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図21(A)に示されるように、集光部44cが凸面形状の湾曲面であってもよく、また、図21(B)に示されるように、集光部44cが傾斜面であってもよい。このような傾斜面あるいは湾曲面である集光部44cを有する光反射膜43は、例えば、CVDやスパッタリング等の薄膜形成技術、リソグラフィ、インプリント等のパターン形成技術を組み合わせることにより形成することができる。
【0053】
このような光反射膜43を備えたナノインプリント転写用基板41は、図22に示すように、光反射膜43の平坦凹部44aに被加工物101を配設し、被加工物101にモールド91を押し当てた状態でモールド91側から光を照射して被加工物101を硬化する際に、モールド91を透過して被加工物101に照射された光とともに、被加工物101を透過して平坦凹部44aで反射した光、および、モールド91の周辺外側を通過して集光部44cに到達し反射した光も被加工物101の硬化に利用できるので、照射光の利用効率が高いものとなる。また、モールド91の周辺の被加工物101の硬化が生じ、硬化後の被加工物101とモールド91との離型が安定する。また、基板本体42が所望のパターン構造物47(図22に鎖線で表示した)を表面42aに備える場合であっても、パターン構造物47を被覆するように光反射膜43が存在するので、パターン構造物47における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物101の硬化に利用できる照射光の効率が高いものとなる。
【0054】
図23は、本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分平面図である。このナノインプリント転写用基板41′は、鎖線で示されるように、基板本体が多面付けで区画されており、各面付けが上述のナノインプリント転写用基板41に相当する。したがって、各面付け毎に平坦凹部44aと、この平坦凹部44aの周囲に位置する肉厚部44bと、この肉厚部44bと平坦凹部44aとの境界に設けられた集光部44cとからなる光反射膜43を備えている。尚、図示例では、平坦凹部44aの外形が円形であり、これを囲むように環状の集光部44cが形成されているが、平坦凹部44aの外形がこれに限定されるものではない。
【0055】
[ナノインプリント転写方法]
図24は、本発明のナノインプリント転写方法の実施形態を説明するための工程図であり、上述の多面付けのナノインプリント用転写基板1′(図19参照)を用いた例である。
本発明では、ナノインプリント転写用基板1′の光反射膜3の形成面側の全面に被加工物として光硬化性の樹脂層51を配設する(図24(A))。
次に、樹脂層51を介してモールド71のパターン領域61の中心と、ナノインプリント用転写基板1′の所望の面付けにおける反射面4の中心が一致するように樹脂層51にモールド71のパターン領域61を押し当て所定の深さまで押し込む。そして、この状態で照明光学系(図示せず)からモールド71を介し樹脂層51に光を照射し、樹脂層51を硬化させる(図21(B))。ここでは、照明光学系が斜入射成分のない平行光を照射するものである場合には、図8に示されるように、光反射膜3の反射面4がモールド71のパターン領域61と同じ大きさであるとともに、平坦なものとする。また、照明光学系の照射光に斜入射成分が含まれる場合には、図9に示されるように、光反射膜3の反射面4がモールド71のパターン領域61と同じ大きさの平坦領域4aと、この平坦領域4aを囲むように位置する周辺領域4bとからなるものとする。
【0056】
次いで、モールド71を樹脂層51から引き離すことにより、モールド71が有する凹凸パターン73が反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層51に転写形成される(図24(C))。
その後、他の面付け位置においてモールド71を用いて同様の操作を順次行う(図24(D))。
このような本発明のナノインプリント転写方法では、照射光の利用効率が高く、また、モールド71周辺の樹脂層51の硬化が生じ、硬化後の樹脂層51とモールド71との離型が安定し、モールド71とともに樹脂層51が基板1′から剥離することが防止され、スループットの向上が可能となる。また、照射光による樹脂層51の意図しない部位の露光が確実に抑制され、ステップアンドリピート方式によるナノインプリント転写の効率が向上する。
【0057】
図25は、本発明のナノインプリント転写方法の実施形態を説明するための工程図であり、上述の多面付けのナノインプリント用転写基板41′(図23参照)を用いた例である。
本発明では、多面付けナノインプリント転写用基板41′の所望の面付け位置において、光反射膜43の平坦凹部44aに被加工物として光硬化性樹脂を供給して樹脂層101を配設する(図25(A))。光硬化性樹脂の供給手段は特に制限されず、例えば、インクジェット、ディスペンス等を用いることができる。
次に、樹脂層101を介してモールド91の中心と平坦凹部44aの中心が一致するように樹脂層101にモールド91を押し当て所定の深さまで押し込む。そして、この状態で照明光学系(図示せず)から光を照射し、樹脂層101を硬化させる(図25(B))。
【0058】
次いで、モールド91を樹脂層101から引き離すことにより、モールド91が有する凹凸パターン93が反転した凹凸構造103が被加工物である樹脂層101に転写形成される(図25(C))。
その後、別の面付け位置において樹脂層101を配設し、モールド91を用いて同様の操作を行う(図25(D))。
このような本発明のナノインプリント転写方法では、照射光の利用効率が高く、モールド91の周辺の樹脂層101の硬化が生じ、硬化後の樹脂層101とモールド91との離型が安定し、モールド91とともに樹脂層101が基板41′から剥離することが防止され、スループットの向上が可能となる。
上述の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例]
厚み6.35mmの石英ガラスを用いて図7に示されるようなメサ構造を有するモールドを作製した。このモールドは、全体の大きさが46mm×46mmであった。また、モールドのパターン領域は、大きさが25mm×25mmであり、深さ100nm、ライン/スペースが100nm/100nmの凹凸パターンを備えるものであった。また、パターン領域の周囲の非パターン領域(幅が10.5mmの回廊形状)には、遮光膜として、厚み50nmのクロム薄膜が存在するものであった。尚、非パターン領域からのパターン領域の突出高さは3mmであった。
【0060】
一方、基板本体として、厚み725μmの石英ウエハを100mm×100mmの寸法としたものを準備した。この基板本体の一方の面に、スパッタリング法によりアルミニウム薄膜を厚み50nmで形成して光反射膜とした。次いで、この光反射膜上にフォトレジスト(AZエレクトロニック マテリアルズ(株)製 AZ5206)を塗布し、所定のフォトマスクを介して露光し現像することにより、上記のパターン領域に対応する大きさのレジストパターンを形成した。このレジストパターンをマスクとして、リン酸、硝酸、酢酸および水からなる混酸を用いて露出している光反射膜をエッチングした。これにより、基板本体の中央に30mm×30mmの平坦な光反射膜を有する図1、図8に示されるようなナノインプリント転写用基板を作製した。
【0061】
[比較例]
ナノインプリント転写用基板の基板本体に光反射膜を形成しない他は、実施例1と同様にして、ナノインプリント転写用基板を作製した。
【0062】
[ナノインプリント転写による評価]
上記にように作製したナノインプリント転写用基板の表面(実施例のナノインプリント転写用基板では、光反射膜を形成した面)の全域に厚み0.7μmの光硬化性樹脂層(東洋合成工業(株)製 PAK−01)を被加工物として配設し、基板側が当接するようにインプリント装置の基板ステージに載置した。
次いで、光硬化性樹脂層に上記のモールドを押し込んだ(光硬化性樹脂層への押し込み深さd=0.2μm)。この状態でインプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)を照射した。ここでは、照射時間を調整することにより下記の表1に示される各照射量で照射を行った。
照射後、モールドを樹脂層から引き離し、ナノインプリント転写用基板上の樹脂層をアセトン中に1分間浸漬し、その後、十分に乾燥した。そして、形成されたパターンについて、パターン寸法と欠陥率を下記のように測定して、結果を下記の表1に示した。
【0063】
(パターン寸法の測定)
計測器(CD−SEM)を用いて、パターンを測定した。測定結果の「0.0」は、パターンが樹脂層に転写形成されていない場合と、パターンは転写形成されているものの、残膜部(樹脂層)ごとアセトンで洗い流された箇所が存在することを意味する。また、モールドのライン/スペースが100nm/100nmでありながら、測定結果が100nmを超える数値が含まれるが、これは、設計値に対するモールド作製時の誤差、および計測器(CD−SEM)起因の誤差が含まれているためである。測定したパターン寸法が小さい程、パターン形成が不安定であることを意味する。
【0064】
(欠陥率の測定)
光学顕微鏡でパターン領域内を5箇所観察し、一つの観察箇所(1.0mm×1.0mm)内で、樹脂層の剥がれや、パターン欠損が確認できた面積の割合を測定した。したがって、この欠陥率が大きい程、欠陥が多いことを意味し、本発明では、欠陥率が0.1未満を実用レベルと判定する。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示されるように、照射量が少ないほど、パターン寸法が小さく、欠陥率が大きくなる点は、実施例と比較例とで共通している。
しかし、照射量が多くなるにつれ、実施例と比較例の差が広がり、照射量60mL/cm2で、実施例は安定したパターン形成が可能であり、かつ欠陥率も低く、実用レベルにある。これに対して、比較例では、実用レベルに達するためには照射量が150mL/cm2を超える必要があった。この結果から、実施例のナノインプリント転写用基板は、照射紫外線の利用効率が高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
ナノインプリント技術を用いた微細加工に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,1′,11,21,31,44,41′…ナノインプリント転写用基板
2,12,22,32,42…基板本体
3,13,23,33,43…光反射膜
4,14,24,34…反射面
4a…平坦領域
4b…周辺領域
15,25,35…反射防止機能膜
44a…平坦凹部
44c…集光部
51,101…被加工物
61…パターン領域
62…非パターン領域
71,81,91…モールド
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に所望のパターンを転写形成するナノインプリント転写に使用する基板と、この基板を用いたナノインプリント転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術として、近年ナノインプリント転写に注目が集まっている。ナノインプリント転写は、基材の表面に微細な凹凸構造を形成した型部材を用い、凹凸構造を被加工物に転写することで微細構造を等倍転写するパターン形成技術である(特許文献1)。
上記のナノインプリント転写の一つの方法として、光インプリント法が知られている。この光インプリント法では、例えば、基板に被加工物として光硬化性の樹脂層を形成し、この樹脂層に所望の凹凸構造を有するモールド(型部材)を押し当てる。そして、この状態でモールド側から樹脂層に紫外線を照射して樹脂層を硬化させ、その後、モールドを樹脂層から引き離す。これにより、モールドが有する凹凸が反転した凹凸構造を被加工物である樹脂層に形成することができる(特許文献2)。このような光インプリントは、従来のフォトリソグラフィ技術では形成が困難なナノメートルオーダーの微細パターンの形成が可能であり、次世代リソグラフィ技術として有望視されている。
【0003】
このような光インプリント法では、フォトリソグラフィ法とは異なり、一回の露光にてパターンを形成する領域に対し、パターン開口のみを露光し、それ以外の遮光された領域が露光されないよう制御を考慮する必要がない。少なくともモールドと転写樹脂とが接触するパターン形成領域の樹脂層を全て硬化させることでパターンの転写形成が可能である。したがって、光インプリント法ではモールドが接触した部分の樹脂層に紫外線を効率よく照射して硬化させ、モールドを離型することがスループット向上の点で重要である。
【0004】
一方、光インプリント法では、モールドが有する微細な凹凸構造を、被加工物上の複数の箇所へ形成する際に、ステップアンドリピート方式でパターン形成を行う場合がある。しかし、モールドの凹凸構造が形成されているパターン領域より外側を通過する光により、凹凸構造を形成すべき部位より外側の樹脂層も露光され、一度のパターン形成で硬化する領域はモールドのパターン領域よりも大きくなる。そして、光硬化性樹脂層が露光され硬化してしまうと、その箇所にはパターン形成が行えない。このため、隣接するパターンが形成された領域間の境界幅を大きく設定せざるを得ないという問題があった。また、モールドを樹脂層から離型する際に樹脂層が異物として付着し、次の加工領域に欠陥を生じるという問題もあった。このような問題を解消するために、パターン領域ではない部位(非パターン領域)に遮光部材を設けたモールドが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号
【特許文献2】特表2002−539604号公報
【特許文献3】特開2007−103924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このようなモールドを用いても、被加工物の意図しない部位の露光を確実に抑制することは困難であった。すなわち、従来は、光硬化性樹脂層を配設する基板の表面状態は考慮しておらず、例えば、基板に予め所望のパターン構造物が形成されている場合、照射された紫外線がモールド、樹脂層を透過し、樹脂層と基板との界面の上記パターン構造物で反射され、その反射光(散乱光)により意図しない領域の樹脂層まで硬化してしまうという問題があった。
また、上述のように、ナノインプリント転写では、樹脂層に紫外線を効率よく照射して硬化させることが重要であるが、従来は、樹脂層と基板との界面での反射光を利用することが考慮されておらず、意図する領域の樹脂層の硬化に要する時間、照射エネルギーの低減が要望されていた。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、ナノインプリント転写におけるスループットに優れ、かつ、被加工物の意図しない部位への露光を確実に抑制できるナノインプリント転写用基板と、この基板を用いたナノインプリント転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明のナノインプリント転写用基板は、被加工物を配設しモールドを用いたナノインプリント転写に供するためのナノインプリント転写用基板であって、基板本体と、該基板本体の表面に設けられた光反射膜と、を備え、該光反射膜は、使用するモールドのパターン領域と同じか、それよりも大きい領域の反射面を有するような構成とした。
【0008】
本発明の他の態様として、前記光反射膜の前記反射面を囲むように反射防止機能膜を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記反射防止機能膜は、前記光反射膜が設けられていない前記基板本体の表面に設けられているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記光反射膜は、前記基板本体の表面全域に設けられたものであり、前記光反射膜の前記反射面が露出するように、光反射膜上の所定の部位に前記反射防止機能膜が設けられているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記光反射膜は、前記基板本体の表面全域に設けられた前記反射防止機能膜を介して前記基板本体に設けられているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記光反射膜の前記反射面は、使用するモールドのパターン領域と同じ大きさであるとともに、表面が平坦であるような構成とした。
【0009】
本発明の他の態様として、前記光反射膜の前記反射面は、使用するモールドのパターン領域と同じ大きさの平坦領域と、該平坦領域を囲むように位置する周辺領域とからなり、該周辺領域は、前記モールドを介して前記反射面に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体の垂直方向乃至基板本体の垂直方向よりもモールドの中心側に傾斜した方向へ反射するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記周辺領域は傾斜面であり、該傾斜面と前記平坦領域とがなす角度はθ/2以上であるような構成とした。
【0010】
本発明の他の態様として、使用するモールドはパターン領域が凸状であるメサ構造を有しており、前記周辺領域の外側端部における前記光反射膜の厚みをhとし、前記基板本体の長さ、または前記基板本体が多面付けで区画されている場合の一面付けの基板本体の長さをBとし、被加工物に接触するモールドのパターン領域の長さをaとし、モールドの非パターン領域に位置する遮光膜の表面からパターン領域の表面までの厚み方向の距離をHとし、被加工物の厚みをtとし、ナノインプリント転写時の被加工物へのモールドの押し込み深さをdとし、モールドを介して被加工物に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、前記光反射膜の反射面の長さLを、下記の式(1)から算出される範囲内となるように設定するような構成とした。
a+2[(H+t)−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(1)
【0011】
本発明の他の態様として、使用するモールドはパターン領域と非パターン領域とが同一面をなす構造を有しており、前記周辺領域の外側端部における前記光反射膜の厚みをhとし、前記基板本体の長さ、または前記基板本体が多面付けで区画されている場合の一面付けの基板本体の長さをBとし、被加工物に接触するモールドのパターン領域の長さをaとし、被加工物の厚みをtとし、ナノインプリント転写時の被加工物へのモールドの押し込み深さをdとし、モールドを介して被加工物に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、前記光反射膜の反射面の長さLを、下記の式(2)から算出される範囲内となるように設定するような構成とした。
a+2[t−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(2)
【0012】
本発明のナノインプリント転写方法は、上述の本発明のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜形成面側の全面に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドのパターン領域の中心と前記反射面の中心が一致するように前記被加工物にモールドのパターン領域を押し当て、前記モールドを介し被加工物に光を照射して被加工物の所定領域を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離すような構成とした。
また、本発明のナノインプリント転写用基板は、前記基板本体が多面付けで区画されており、各面付け毎に前記反射面を備えるような構成とした。
【0013】
本発明のナノインプリント転写方法は、上述のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜形成面側の全面に被加工物を配設し、次いで、所望の面付けにおいて、該被加工物を介してモールドのパターン領域の中心と前記反射面の中心が一致するように前記被加工物にモールドのパターン領域を押し当て、前記モールドを介し被加工物に光を照射して被加工物の所定領域を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離す操作を、順次各面付けにおいて行うような構成とした。
【0014】
また、本発明のナノインプリント転写用基板は、被加工物を所望の箇所に配設しモールドを用いたナノインプリント転写に供するためのナノインプリント転写用基板であって、基板本体と、該基板本体の表面に設けられた光反射膜と、を備え、該光反射膜は平坦凹部と、該平坦凹部の周囲に位置する肉厚部と、該肉厚部と前記平坦凹部との境界に設けられた集光部とからなり、該平坦凹部は使用するモールドよりも大きく、該集光部は照射された光を基板本体の垂直方向よりも平坦凹部の中心側に傾斜した方向へ反射するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記境界部は傾斜面または湾曲面であるような構成とした。
【0015】
本発明のナノインプリント転写方法は、上述のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜の前記平坦凹部に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドの中心と前記平坦凹部の中心が一致するように前記被加工物にモールドを押し当て、前記モールド側から前記光反射膜に光を照射し、前記モールドを透過した光、および、前記モールドの周辺外側を通過して前記境界部に到達し反射した光によって被加工物を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離すような構成とした。
また、本発明のナノインプリント転写用基板は、前記基板本体が多面付けで区画されており、各面付け毎に前記光反射膜を備えるような構成とした。
【0016】
本発明のナノインプリント転写方法は、上述のナノインプリント転写用基板の所望の面付けにおいて、前記光反射膜の前記平坦凹部に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドの中心と前記平坦凹部の中心が一致するように前記被加工物にモールドを押し当て、前記モールド側から前記光反射膜に光を照射し、前記モールドを透過した光、および、前記モールドの周辺外側を通過して前記境界部に到達し反射した光によって被加工物を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離す操作を、順次各面付けにおいて行うような構成とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明のナノインプリント転写用基板では、光反射膜形成面側に被加工物を配設し、被加工物にモールドのパターン領域を押し当てた状態でモールドを介し被加工物に光を照射して硬化する際に、光反射膜による反射光も被加工物の硬化に利用することができるので、照射光の利用効率が高くなり、また、硬化後の被加工物とモールドとの離型が安定し、モールドとともに被加工物が基板から剥離することが防止され、ナノインプリント転写のスループットを向上させることが可能となる。また、モールドのパターン領域に相当する領域に基板本体が所望のパターン構造物を備える場合であっても、光反射膜の反射面が存在することにより、パターン構造物における光の反射(散乱光発生)が防止され、被加工物の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0018】
また、本発明のナノインプリント転写用基板では、光反射膜の平坦凹部に被加工物を配設し、被加工物にモールドを押し当てた状態でモールド側から光を照射して被加工物を硬化する際に、モールドを透過した光とともに、モールドの周辺外側を通過して集光部に到達し反射した光も被加工物の硬化に利用できるので、照射光の利用効率が高くなるとともに、モールド周辺の被加工物の硬化が生じ、硬化後の被加工物とモールドとの離型が安定し、モールドとともに被加工物が基板から剥離することが防止され、ナノインプリント転写のスループットを向上させることが可能となる。また、基板本体が所望のパターン構造物を備える場合であっても、光反射膜が存在することにより、パターン構造物における光の反射(散乱光発生)が防止され、照射光の利用効率が高いものとなる。
【0019】
本発明のナノインプリント転写方法では、ナノインプリント転写用基板の全面に被加工物を配設してパターン形成が行われ、照射光の利用効率が高く、硬化後の被加工物とモールドとの離型が安定し、モールドとともに被加工物が基板から剥離することが防止され、スループットの向上が可能となる。また、照射光による被加工物の意図しない部位の露光が確実に抑制され、ステップアンドリピート方式によるナノインプリント転写の効率が向上する。
また、本発明のナノインプリント転写方法では、ナノインプリント転写用基板の所望の箇所(光反射膜の平坦凹部)に被加工物を配設してパターン形成が行われ、照射光の利用効率が高く、モールド周辺の被加工物の硬化が生じ、硬化後の被加工物とモールドとの離型が安定し、モールドとともに被加工物が基板から剥離することが防止され、スループットの向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
【図6】図1に示されるナノインプリント転写用基板を例として、被加工物にモールドを押し当てた状態を示す図である。
【図7】メサ構造を有するモールドの一例を説明するための図である。
【図8】図6(A)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
【図9】図6(A)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
【図10】図9に示されるナノインプリント転写用基板の反射面の周辺領域について説明する図である。
【図11】図9に示されるナノインプリント転写用基板の反射面の周辺領域について説明する図である。
【図12】メサ構造ではないモールドの一例を説明するための図である。
【図13】図6(B)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
【図14】図6(B)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
【図15】メサ構造ではないモールドの他の例を説明するための図である。
【図16】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図17】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図18】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分断面図である。
【図19】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分平面図である。
【図20】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す断面図である。
【図21】図20に示されるナノインプリント転写用基板の集光部の他の例を説明するための図である。
【図22】図20に示されるナノインプリント転写用基板を例として、被加工物にモールドを押し当てた状態を示す図である。
【図23】本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分平面図である。
【図24】本発明のナノインプリント転写方法の実施形態を説明するための工程図である。
【図25】本発明のナノインプリント転写方法の他の実施形態を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[ナノインプリント転写用基板]
図1〜図4は、本発明のナノインプリント転写用基板の実施形態を示す断面図である。
図1において、ナノインプリント転写用基板1は、基板本体2と、この基板本体2の表面2aの所定の部位に設けられた光反射膜3とを備えている。この光反射膜3は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面4を有しており、ナノインプリント転写用基板1では、光反射膜3の全域が反射面4となっている。尚、図1では、光反射膜3がモールドのパターン領域61と同じ大きさの反射面4を有する状態を示している。
【0022】
また、図2において、ナノインプリント転写用基板11は、基板本体12と、この基板本体12の表面12aの所定の部位に設けられた光反射膜13と、光反射膜13が設けられていない部位に形成され、露光に用いられる光の反射を低減する機能を有した反射防止機能膜15とを備えている。そして、光反射膜13は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面14を有している。このナノインプリント転写用基板11では、光反射膜13の全域が反射面14となっている。尚、図2では、光反射膜13がモールドのパターン領域61と同じ大きさの反射面14を有する状態を示している。
【0023】
また、図3において、ナノインプリント転写用基板21は、基板本体22と、この基板本体22の表面22aの全域に設けられた光反射膜23と、光反射膜23の所定の部位を露出するように光反射膜23上に設けられた反射防止機能膜25とを備えている。そして、光反射膜23は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面24を有している。このナノインプリント転写用基板21では、光反射膜23の一部(反射防止機能膜25が形成されていない部位)が反射面24となっている。尚、図3では、光反射膜23がモールドのパターン領域61と同じ大きさの反射面24を有する状態を示している。
【0024】
また、図4において、ナノインプリント転写用基板31は、基板本体32と、この基板本体32の表面32aの全域に設けられた反射防止機能膜35と、反射防止機能膜35の所定の部位に設けられた光反射膜33とを備えている。この光反射膜33は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面34を有しており、ナノインプリント転写用基板31では、光反射膜33の全域が反射面34となっている。尚、図4では、光反射膜33がモールドのパターン領域61と同じ大きさの反射面34を有する状態を示している。
【0025】
上述のようなナノインプリント転写用基板1,11,21,31を構成する基板本体2,12,22,32は、例えば、石英やソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス等のガラス、シリコンやガリウム砒素、窒化ガリウム等の半導体、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂基板、あるいは、これらの材料の任意の組み合わせからなる複合材料基板であってよい。更に、金属は一般的に絶対反射率が高いことが知られているが、例えば、酸化物や窒化物となり反射率が低下する場合や、表面に凹凸が存在して光が乱反射される場合には、基板本体として使用し、本発明を適用することができる。加えて、金属同士を比較した場合、一般に遷移金属は光の吸収成分を有するため、他の金属が有する絶対反射率に比べて、最大で10%程度小さい絶対反射率を有している。このため、遷移金属を基板本体として使用し、他の金属からなる光反射膜との反射率の差を利用することもできる。また、図5にナノインプリント転写用基板1を例として示されるように、基板本体は所望のパターン構造物7が表面2a側に形成されたものであってもよい。パターン構造物7としては、特に限定されず、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等が挙げられる。
【0026】
また、基板本体の表面が反射作用を有する場合には、図3に示したナノインプリント転写用基板21の光反射膜23を形成することなく、基板本体22の表面22aの反射作用を利用し、反射防止機能膜25を基板本体22に直接設けてもよい。但し、上記のように、基板本体が所望のパターン構造物を表面に備える場合、基板本体の表面が反射作用を有していても、パターン構造物における光の散乱による被加工物の意図しない部位の露光を防止する目的で、光反射膜を設ける必要がある。ここで、上記の反射作用とは、波長が200〜400nm程度の紫外線を照射した場合の照射光に対する反射光の光量比率が少なくとも10%以上、好ましくは30%以上であり、照射光に対する絶対反射率が50%以上であることを意味する。
【0027】
さらに、基板本体の表面が反射防止作用を有する場合には、図4に示したナノインプリント転写用基板31の反射防止機能膜35を形成することなく、基板本体32の表面32aの反射防止作用を利用し、光反射膜33を基板本体32に直接設けてもよい。この場合、構造的には、図1に示したナノインプリント転写用基板1と同じものとなる。ここで、上記の反射防止作用とは、波長が200〜400nm程度の紫外線を照射した場合の照射光に対する反射光の光量比率が10%以下、好ましくは30%以下であることを意味する。
基板本体2,12,22,32の厚みは、材質、強度、面積等を考慮して適宜設定することができる。
【0028】
また、ナノインプリント転写用基板1,11,21,31を構成する光反射膜3,13,23,33の材質としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、銀、クロム、白金等の金属、これらの金属の合金、酸化物、窒化物等を挙げることができる。また、光反射膜3,13,23,33は多層薄膜であってもよく、この場合、上記の材質の中で屈折率の異なる材質の薄膜が積層されたものとすることできる。さらに、多層薄膜を構成する材質は、上記の材質のように単層で光を反射するものに限定されず、例えば、酸化ケイ素のように照射光を透過する物質が多層薄膜の構成に含まれていてもよい。このような光反射膜は、例えば、真空成膜法、塗布法、めっき法等により形成することができ、光反射膜の厚みは、例えば単層膜である場合、3〜100nm程度の範囲で適宜設定することができる。但し、上記のように基板本体2が所望のパターン構造物7を表面に備える場合、このパターン構造物7の表面形状が光反射膜3に現われない程度の厚みとする必要がある。尚、光反射膜の反射面の形状については後述する。
【0029】
また、反射防止機能膜15,25,35は、ナノインプリント転写用基板と被加工物との界面での照射光の不要な反射を防止したり、ナノインプリント転写用基板と被加工物との界面における伝播光を阻止したり、基板本体が照射光により変質する場合に基板本体を保護するための部材である。このような反射防止機能膜は、光吸収膜あるいは低反射膜とすることができる。
反射防止機能膜が光吸収膜である場合、例えば、紫外線を吸収する作用がある二酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の無機材料、トリアジン化合物、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の有機材料の1種であってよく、また、これらの2種以上の組み合わせからなるものであってよい。また、酸化亜鉛、酸化チタン等の微粒子をバインダ樹脂中に含有させたものであってもよい。このような光吸収膜の厚みは、例えば、波長が200〜400nm程度の紫外線に対する光吸収率が70%以上、好ましくは80%以上となるように設定することができる。
【0030】
一方、反射防止機能膜が低反射膜である場合、基板本体の屈折率より小さい屈折率を有する膜とすることができる。また、低反射膜は、低屈折率薄膜と高屈折率薄膜とが積層されたもの、あるいは、2回以上の繰り返しで積層されたものであり、膜厚を被吸収光の1/4波長の倍数としたものであってもよい。この場合、例えば、フッ化マグネシウム(低屈折率(1.38)薄膜)と酸化ケイ素(高屈折率(1.52)薄膜)との組み合わせ、酸化アルミニウム(低屈折率(1.65)薄膜)と酸化チタン(高屈折率(2.25)薄膜)との組み合わせ等を挙げることができる。
さらに、低反射膜は、その表面(基板本体とは反対側の面)に被吸収光の波長以下の微細な凹凸構造を有するものであってもよい。
【0031】
尚、本発明で必須である光反射膜が基板本体に存在しない場合の反射防止機能膜の存在について以下に説明する。まず、基板本体が所望のパターン構造物を表面に備える場合には、パターン構造物における光の散乱による被加工物の意図しない部位の露光を防止したり、ナノインプリント転写用基板と被加工物との界面における伝播光を阻止する目的で、反射防止機能膜を設けることが好ましい。また、基板本体が照射光により変質する場合にも、基板本体を保護する目的で、反射防止機能膜を設けることが好ましい。一方、基板本体が所望のパターン構造物を表面に備えていない場合には、反射防止機能膜が存在しなくてもよいが、照射光の斜入射成分がナノインプリント転写用基板と被加工物との界面において反射したり伝播光となり被加工物の意図しない部位を露光するときには、反射防止機能膜を設けることが好ましい。また、基板本体が照射光により変質する場合にも、基板本体を保護する目的で、反射防止機能膜を設けることが好ましい。
【0032】
次に、光反射膜の反射面について説明する。
上述のように、光反射膜3,13,23,33は、使用するモールドのパターン領域61と同じか、それよりも大きい領域の反射面4,14,24,34を有している。図6は図1に示されるナノインプリント転写用基板1を例として、被加工物にモールドを押し当てた状態を示す図である。図6(A)では、ナノインプリント転写用基板1の表面2a側に被加工物51が配設されており、この被加工物51を介してメサ構造を有するモールド71のパターン領域61の中心と反射面4の中心が一致するようにモールド71が押し当てられている。また、図6(B)では、ナノインプリント転写用基板1の表面2a側に被加工物51が配設されており、この被加工物51を介してメサ構造ではないモールド81のパターン領域61の中心と反射面4の中心が一致するようにモールド71が押し当てられている。尚、図6(A)および図6(B)では、光反射膜3がモールド71,81のパターン領域61と同じ大きさの反射面4を有する状態を示している。
【0033】
まず、図6(A)に示すような、メサ構造を有するモールド71を使用した場合の光反射膜3の反射面4について説明する。
ここでは、まず、モールド71について説明する。図7は、メサ構造を有するモールド71の一例を説明するための図である。図7において、メサ構造を有するモールド71は、透明な基材72を有し、この基材72の表面72aは凹凸パターン73を備えていて、パターン領域61をなしている。また、表面72a(パターン領域61)の周囲は、壁面72cを介して表面72a′に連続しており、この表面72a′には遮光膜77が形成され、非パターン領域62をなしている。このように、モールド71では、パターン領域61が非パターン領域62に対して凸状となっている。
【0034】
このようなモールド71では、裏面72b側から照射された光が透過して表面72a側から出射される。照射光が斜入射成分のない平行光αである場合、モールド71を透過する光は表面72a(パターン領域61)から出射され、表面72a′に達した光は遮光膜77で遮光される。一方、照射光が斜入射成分を含む光βである場合、表面72a′に達した光は遮光膜77で遮光されるものの、斜入射成分は壁面72cを透過することができる。このため、モールド71を透過する光は、表面72aから出射される他に、壁面72cからも出射される。したがって、モールド71の透過光はパターン領域61よりも広いものとなる。
【0035】
次に、図6(A)に示される反射面4について説明する。図8および図9は、図6(A)で鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
まず、図8について説明する。図8に示される光反射膜3は、反射面4がモールド71のパターン領域61と同じ大きさ(反射面4の長さLがモールド71のパターン領域61(表面72a)の長さaと同じ)であるとともに、平坦なものである。このような光反射膜3を備えたナノインプリント転写用基板1は、照射光が斜入射成分のない平行光αである場合に使用することができる。すなわち、照射光αは、モールド71を透過して表面72a(パターン領域61)から出射され、被加工物51を露光して硬化させる。また、被加工物51を透過して光反射膜3の到達した光は、反射面4で反射されるが、反射面4が平坦なので、反射光が被加工物51の全面に効率よく照射されて硬化に供され、照射光の利用効率が高いものになるとともに、被加工物51の硬化が確実に行なわれ、硬化後の被加工物51とモールド71との離型が安定する。また、基板本体2が所望のパターン構造物7(図8に鎖線で表示した)を表面2aに備える場合であっても、パターン構造物7を被覆するように光反射膜3が存在するので、パターン構造物7における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物51の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0036】
次に、図9について説明する。図9に示される光反射膜3は、反射面4がモールド71のパターン領域61と同じ大きさの平坦領域4aと、この平坦領域4aを囲むように位置する周辺領域4bとからなっている。したがって、反射面4の長さLはモールド71のパターン領域61(表面72a)の長さaよりも大きいものである。また、周辺領域4bは、モールド71を介して反射面4に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射するように構成されている。このような光反射膜3を備えたナノインプリント転写用基板1は、照射光が斜入射成分を含む光βである場合に使用することができる。すなわち、照射光βのうち、モールド71を透過して表面72a(パターン領域61)から出射された光は、被加工物51を露光して硬化させる。そして、さらに被加工物51を透過して光反射膜3に到達した光は、反射面4の平坦領域4aで反射され被加工物51の硬化に供される。一方、照射光βの斜入射成分であって、モールド71を透過して壁面72cから出射された光は、モールド71の周辺の被加工物51を露光して硬化させる。そして、さらに被加工物51を透過して光反射膜3に到達した光は、反射面4の周辺領域4bで反射され、基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ進んで被加工物51の硬化に供される。したがって、照射光の利用効率が高いものとなり、また、反射面4の周辺領域4bで反射された光によりモールド71の周辺の被加工物51の硬化が生じ、硬化後の被加工物51とモールド71との離型が安定するとともに、被加工物51の意図しない部位の露光は確実に抑制される。また、基板本体2が所望のパターン構造物(図示せず)を表面2aに備える場合であっても、パターン構造物を被覆するように光反射膜3が存在するので、パターン構造物における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物51の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0037】
ここで、光反射膜3がモールド71のパターン領域61よりも大きい領域の反射面4を有する場合の反射面4の長さLの設定について、図9を参照しながら説明する。図9において、周辺領域4bの外側端部の光反射膜3の厚みをhとし、基板本体2の長さをBとし、被加工物51に接触するモールド71のパターン領域61(表面72a)の長さをaとし、モールド71の非パターン領域62(表面72a′)に位置する遮光膜77の表面からパターン領域61の表面72aまでの厚み方向の距離をHとし、被加工物51の厚みをtとし、被加工物51へのモールド71の押し込み深さをdとし、モールド71を介して被加工物51に照射された光βの斜入射成分の最大入射角度をθとする。そして、照射光βの斜入射成分であって、モールド71を透過して壁面72cから出射された光を制御するためには、遮光膜77の端部近傍から最大入射角度θで入射した斜入射成分が反射面4の周辺領域4bの外側端部以内に到達する必要がある。したがって、遮光膜77の内側の端部を点xとし、壁面72cの延長線と周辺領域4bの外側端部の基板本体2に平行な線との交点を点yとし、周辺領域4bの外側端部を点zとし、直角三角形xyzを想定すると、下記の式(1′)が成立する。
tanθ ≦[(L−a)/2]/[(H+t)−(d+h)]
=(L−a)/2[(H+t)−(d+h)] 式(1′)
この式(1′)をLが右辺となるように整理すると、下記の式(1″)となる。
a+2[(H+t)−(d+h)]tanθ ≦ L 式(1″)
【0038】
また、光反射膜3の反射面4の長さLの上限は、反射防止機能膜を反射面4の周辺に設ける場合により適宜設定することができるが、基板本体2の長さBを超えることはできない。したがって、光反射膜3の反射面4の長さLは、下記の式(1)から算出される範囲内となるように設定することができる。
a+2[(H+t)−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(1)
【0039】
次に、反射面4の周辺領域4bについて説明する。周辺領域4bは、上述のようにモールド71を介して反射面4に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射するように構成されている。このような周辺領域4bは、例えば、図10に示されるように傾斜面とすることができる。この図10は、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向に反射する場合の周辺領域4bを示す図である。この場合、傾斜面である周辺領域4bが平坦領域4aとなす角度はθ/2となる。そして、最大入射角度θよりも小さい斜入射角度で入射した光は、図10に鎖線で示すように、基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射する。したがって、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射するように傾斜面である周辺領域4bを構成するためには、周辺領域4bが平坦領域4aとなす角度をθ/2以上となるように設定する。
【0040】
また、周辺領域4bは、例えば、図11に示されるように凹面としてもよい。この場合も、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド71の中心側に傾斜した方向へ反射するように凹面形状を設定する。このような凹面形状では、遮光膜77の端部近傍よりも低い位置(モールド71の表面72a寄りの位置)から最大入射角度θで入射した斜入射成分(図11に鎖線で示す)は、基板本体2の垂直方向よりも外側に傾斜した方向へ反射することになる。しかし、このような外側方向への反射光は、遮光膜77の端部近傍から最大入射角度θで入射した斜入射成分(図11に実線で示す)が周辺領域4bで反射され被加工物51内を進む領域(基板本体2の垂直方向に反射された場合が最大領域となる)の中に位置しているので問題はない。
【0041】
上述にような傾斜面あるいは凹面の形状である周辺領域4bと平坦領域4aとを有する反射面4を備えた光反射膜3は、例えば、CVDやスパッタリング等の薄膜形成技術、リソグラフィ、インプリント等のパターン形成技術を組み合わせることにより形成することができる。まず、薄膜形成とリソグラフィを使用する場合を説明する。この場合、まず、基板全体に薄膜を形成した後、形成した薄膜をリソグラフィにより周辺領域4bにのみ残るように処理する。この状態で、更に光反射膜3となる薄膜を形成した後、不要な薄膜部分をリソグラフィにより除去する。これにより、先に周辺領域4bにのみ残されている薄膜の存在によって、周辺領域4bの光反射膜3は、平坦領域4aの光反射膜3に比べて隆起した構造となる。次に、インプリントを利用した場合を説明する。この場合、光反射膜3となる薄膜を形成した後、平坦領域4aと、周辺領域4bとの凹凸関係が反転したパターンを有するモールドを用いて薄膜にパターン形成を行った後、不要部分をリソグラフィにより除去することで、目的の構造が得られる。
【0042】
次に、図6(B)に示すような、モールド81を使用した場合の光反射膜3の反射面4について説明する。
図12は、メサ構造を有していないモールド81の一例を説明するための図である。図12において、モールド81は、透明な基材82を有し、この基材82の表面82aの中央の所定領域は凹凸パターン83を備えていて、パターン領域61をなしている。また、表面82aの周辺側には遮光膜87が形成されて非パターン領域62をなしており、パターン領域61と非パターン領域62とが同一面をなす構造を有している。
このようなモールド81では、裏面82b側から照射された光が透過して表面82a側から出射される。照射光が斜入射成分のない平行光αである場合、非パターン領域62に照射された光は遮光膜87で遮光されるので、モールド81を透過する光は、表面82aのパターン領域61のみから出射される。一方、照射光が斜入射成分を含む光βである場合、表面82aのパターン領域61から出射される透過光には、非パターン領域62方向へ広がる斜入射成分が含まれる。したがって、モールド81の透過光はパターン領域61よりも広いものとなる。
【0043】
次に、図6(B)に示される反射面4について説明する。図13および図14は、図6(B)において鎖線で囲まれた部位の部分拡大図である。
まず、図13について説明する。図13に示される光反射膜3は、反射面4がモールド81のパターン領域61と同じ大きさ(反射面4の長さLがモールド81のパターン領域61(遮光膜87が形成されていない表面82aの領域)の長さaと同じ)であるとともに、平坦なものである。このような光反射膜3を備えたナノインプリント転写用基板1は、照射光が斜入射成分のない平行光αである場合に使用することができる。すなわち、照射光αは、モールド81を透過して表面82a(パターン領域61)から出射され、被加工物51を露光して硬化させる。また、被加工物51を透過して光反射膜3の到達した光は、反射面4で反射され被加工物51の硬化に供されるので、照射光の利用効率が高いものとなる。また、基板本体2が所望のパターン構造物7(図13に鎖線で表示した)を表面2aに備える場合であっても、パターン構造物7を被覆するように光反射膜3が存在するので、パターン構造物7における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物51の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0044】
次に、図14について説明する。図14に示される光反射膜3は、反射面4がモールド81のパターン領域61と同じ大きさの平坦領域4aと、この平坦領域4aを囲むように位置する周辺領域4bとからなっている。したがって、反射面4の長さLはモールド81のパターン領域61(遮光膜87が形成されていない表面82aの領域)の長さaよりも大きいものである。また、周辺領域4bは、モールド81を介して反射面4に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド81の中心側に傾斜した方向へ反射するように構成されている。このような光反射膜3を備えたナノインプリント転写用基板1は、照射光が斜入射成分を含む光βである場合に使用することができる。すなわち、照射光βのうち、モールド81を透過して表面82a(パターン領域61)から出射された光は、被加工物51を露光して硬化させる。そして、さらに被加工物51を透過して光反射膜3に到達した光は、反射面4の平坦領域4aで反射され被加工物51の硬化に供される。一方、照射光βの斜入射成分であって、モールド81のパターン領域61の遮光膜87の端部近傍から被加工物51に照射された光は、パターン領域61よりも外側に位置する被加工物51を露光して硬化させる。そして、さらに被加工物51を透過して光反射膜3に到達した光は、反射面4の周辺領域4bで反射され、基板本体2の垂直方向乃至基板本体2の垂直方向よりもモールド81の中心側に傾斜した方向へ進んで被加工物51の硬化に供される。したがって、照射光の利用効率が高いものとなる。また、基板本体2が所望のパターン構造物(図示せず)を表面2aに備える場合であっても、パターン構造物を被覆するように光反射膜3が存在するので、パターン構造物における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物51の意図しない部位の露光が確実に抑制される。
【0045】
ここで、光反射膜3がモールド81のパターン領域61よりも大きい領域の反射面4を有する場合の反射面4の長さLの設定について、図14を参照しながら説明する。図14において、周辺領域4bの外側端部の光反射膜3の厚みをhとし、基板本体2の長さをBとし、被加工物51に接触するモールド81のパターン領域61(遮光膜87が形成されていない表面82aの領域)の長さをaとし、被加工物51の厚みをtとし、被加工物51へのモールド81の押し込み深さをdとし、モールド81を介して被加工物51に照射された光βの斜入射成分の最大入射角度をθとする。そして、照射光βの斜入射成分であって、モールド81を透過して遮光膜87の端部近傍から被加工物51に照射される光を制御するためには、最大入射角度θで入射した斜入射成分が反射面4の周辺領域4bの外側端部以内に到達する必要がある。したがって、遮光膜87の内側の端部を点xとし、この点xから基板本体2へ降ろした垂線と周辺領域4bの外側端部の基板本体2に平行な線との交点を点yとし、周辺領域4bの外側端部を点zとし、直角三角形xyzを想定すると、下記の式(2′)が成立する。
tanθ ≦[(L−a)/2]/[t−(d+h)]
=(L−a)/2[t−(d+h)] 式(2′)
この式(2′)をLが右辺となるように整理すると、下記の式(2″)となる。
a+2[t−(d+h)]tanθ ≦ L 式(2″)
【0046】
また、光反射膜3の反射面4の長さLの上限は、反射防止機能膜を反射面4の周辺に設ける場合等によって適宜設定することができるが、基板本体2の長さBを超えることはできない。したがって、光反射膜3の反射面4の長さLは、下記の式(2)から算出される範囲内となるように設定することができる。
a+2[t−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(2)
このようなモールド81を使用する場合の反射面4の周辺領域4bの形状は、メサ構造を有するモールド71を使用する場合の上述の周辺領域4bの形状と同様とすることができる。
【0047】
また、図15に示すモールド81′では、凹凸パターン83を備える表面82aから凸状となるように遮光膜87が形成されている。しかし、このようなモールド81′を使用する場合も、斜入射成分はモールド81′を透過して遮光膜87の端部近傍から被加工物51に照射されると考えられる。すなわち、表面82aから凸状に遮光膜87が形成されているモールド81′も、上述のモールド81と同様に、パターン領域61と非パターン領域62とが同一面をなす構造を有しているとみなすことができる。したがって、光反射膜3がモールド81のパターン領域61よりも大きい領域の反射面4を有する場合の反射面4の長さLは、上記の式(2)から算出される範囲内となるように設定することができる。
【0048】
尚、上述の図6〜図15を用いた反射面4の説明は、図1に示したナノインプリント転写用基板1を例としたものであるが、図2〜図4に示したようなナノインプリント転写用基板11,21,31においても、その反射面14,24,34を上述の反射面4と同様の構成することができる。例えば、ナノインプリント転写用基板11では、図16に示されるように、光反射膜13の全域を反射面14とし、反射面14を平坦領域14aとこの平坦領域14aを囲むように位置する周辺領域14bとからなるものとし、周辺領域14bの外側領域に反射防止機能膜15を備えたものとすることができる。図示例では、反射防止機能膜15の厚みが、周辺領域14bの外側端部における光反射膜13の厚みと同じであるが、これに限定されるものではない。また、ナノインプリント転写用基板21では、図17に示されるように、基板本体22の全面に設けた光反射膜13の所定領域に、平坦領域24aとこの平坦領域24aを囲むように位置する周辺領域24bとからなる反射面24を設け、周辺領域24bの外側領域に反射防止機能膜25を備えたものとすることができる。さらに、ナノインプリント転写用基板31では、図18に示されるように、基板本体22の全面に設けた反射防止機能膜35の所定領域に光反射膜33を設け、この光反射膜33の全域を反射面34とし、反射面34を平坦領域34aとこの平坦領域34aを囲むように位置する周辺領域34bとからなるものとすることができる。
【0049】
図19は、本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分平面図である。このナノインプリント転写用基板1′は、鎖線で示すように、基板本体が多面付けで区画されており、各面付けが上述のナノインプリント転写用基板1に相当する。したがって、各面付け毎に反射面4を備えており、反射面4が平坦領域4aと周辺領域4bからなる場合の反射面4の長さLは、一面付けに相当する基板本体の長さをBとして、上記の式(1)、式(2)から算出される範囲内となるように設定することができる。
【0050】
図20は、本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す断面図である。
図20において、ナノインプリント転写用基板41は、基板本体42と、この基板本体42の表面42aに設けられた光反射膜43とを備えている。光反射膜43は、平坦凹部44aと、この平坦凹部44aの周囲に位置する肉厚部44bと、この肉厚部44bと平坦凹部44aとの境界に設けられた集光部44cとからなる。
このようなナノインプリント転写用基板41を構成する基板本体42の材質は、上述のナノインプリント転写用基板の基板本体2,12,22,32と同様の材質であってよい。また、図20に鎖線で示したように、基板本体42は所望のパターン構造物47が表面42a側に形成されたものであってもよい。パターン構造物47としては、特に限定されず、半導体やディスプレイ等に用いられる微細配線や、フォトニック結晶構造、光導波路、ホログラフィのような光学的構造等が挙げられる。
基板本体42の厚みは、材質、強度、面積等を考慮して適宜設定することができる。
【0051】
また、ナノインプリント転写用基板41を構成する光反射膜43の材質は、上述のナノインプリント転写用基板の光反射膜3,13,23,33と同様の材質であってよい。このようは光反射膜43は、例えば、真空成膜法、塗布法、めっき法等により形成することができ、光反射膜43の平坦凹部44aの厚みは、例えば、3〜100nm程度の範囲で適宜設定することができ、また、肉厚部44bは集光部44cの形状等を考慮して、例えば、5〜200nm程度の範囲で適宜設定することができる。但し、上記のように基板本体42が所望のパターン構造物47を表面に備える場合、このパターン構造物47の表面形状が光反射膜43に現われない程度の厚みとする必要がある。
【0052】
この光反射膜43の平坦凹部44aは、使用するモールドよりも大きいものである。また、光反射膜43の集光部44cは、図20に一点鎖線で示したように、照射された光を基板本体42の垂直方向よりも平坦凹部44aの中心側に傾斜した方向へ反射するものである。そして、光反射膜43の平坦凹部44aの大きさは、上記のように集光部44cで反射された光が被加工物に照射されるように、使用するモールドの大きさを考慮して設定することができる。尚、図20では、集光部44cは凹面形状の湾曲面となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図21(A)に示されるように、集光部44cが凸面形状の湾曲面であってもよく、また、図21(B)に示されるように、集光部44cが傾斜面であってもよい。このような傾斜面あるいは湾曲面である集光部44cを有する光反射膜43は、例えば、CVDやスパッタリング等の薄膜形成技術、リソグラフィ、インプリント等のパターン形成技術を組み合わせることにより形成することができる。
【0053】
このような光反射膜43を備えたナノインプリント転写用基板41は、図22に示すように、光反射膜43の平坦凹部44aに被加工物101を配設し、被加工物101にモールド91を押し当てた状態でモールド91側から光を照射して被加工物101を硬化する際に、モールド91を透過して被加工物101に照射された光とともに、被加工物101を透過して平坦凹部44aで反射した光、および、モールド91の周辺外側を通過して集光部44cに到達し反射した光も被加工物101の硬化に利用できるので、照射光の利用効率が高いものとなる。また、モールド91の周辺の被加工物101の硬化が生じ、硬化後の被加工物101とモールド91との離型が安定する。また、基板本体42が所望のパターン構造物47(図22に鎖線で表示した)を表面42aに備える場合であっても、パターン構造物47を被覆するように光反射膜43が存在するので、パターン構造物47における顕著な散乱光発生が防止され、被加工物101の硬化に利用できる照射光の効率が高いものとなる。
【0054】
図23は、本発明のナノインプリント転写用基板の他の実施形態を示す部分平面図である。このナノインプリント転写用基板41′は、鎖線で示されるように、基板本体が多面付けで区画されており、各面付けが上述のナノインプリント転写用基板41に相当する。したがって、各面付け毎に平坦凹部44aと、この平坦凹部44aの周囲に位置する肉厚部44bと、この肉厚部44bと平坦凹部44aとの境界に設けられた集光部44cとからなる光反射膜43を備えている。尚、図示例では、平坦凹部44aの外形が円形であり、これを囲むように環状の集光部44cが形成されているが、平坦凹部44aの外形がこれに限定されるものではない。
【0055】
[ナノインプリント転写方法]
図24は、本発明のナノインプリント転写方法の実施形態を説明するための工程図であり、上述の多面付けのナノインプリント用転写基板1′(図19参照)を用いた例である。
本発明では、ナノインプリント転写用基板1′の光反射膜3の形成面側の全面に被加工物として光硬化性の樹脂層51を配設する(図24(A))。
次に、樹脂層51を介してモールド71のパターン領域61の中心と、ナノインプリント用転写基板1′の所望の面付けにおける反射面4の中心が一致するように樹脂層51にモールド71のパターン領域61を押し当て所定の深さまで押し込む。そして、この状態で照明光学系(図示せず)からモールド71を介し樹脂層51に光を照射し、樹脂層51を硬化させる(図21(B))。ここでは、照明光学系が斜入射成分のない平行光を照射するものである場合には、図8に示されるように、光反射膜3の反射面4がモールド71のパターン領域61と同じ大きさであるとともに、平坦なものとする。また、照明光学系の照射光に斜入射成分が含まれる場合には、図9に示されるように、光反射膜3の反射面4がモールド71のパターン領域61と同じ大きさの平坦領域4aと、この平坦領域4aを囲むように位置する周辺領域4bとからなるものとする。
【0056】
次いで、モールド71を樹脂層51から引き離すことにより、モールド71が有する凹凸パターン73が反転した凹凸構造53が被加工物である樹脂層51に転写形成される(図24(C))。
その後、他の面付け位置においてモールド71を用いて同様の操作を順次行う(図24(D))。
このような本発明のナノインプリント転写方法では、照射光の利用効率が高く、また、モールド71周辺の樹脂層51の硬化が生じ、硬化後の樹脂層51とモールド71との離型が安定し、モールド71とともに樹脂層51が基板1′から剥離することが防止され、スループットの向上が可能となる。また、照射光による樹脂層51の意図しない部位の露光が確実に抑制され、ステップアンドリピート方式によるナノインプリント転写の効率が向上する。
【0057】
図25は、本発明のナノインプリント転写方法の実施形態を説明するための工程図であり、上述の多面付けのナノインプリント用転写基板41′(図23参照)を用いた例である。
本発明では、多面付けナノインプリント転写用基板41′の所望の面付け位置において、光反射膜43の平坦凹部44aに被加工物として光硬化性樹脂を供給して樹脂層101を配設する(図25(A))。光硬化性樹脂の供給手段は特に制限されず、例えば、インクジェット、ディスペンス等を用いることができる。
次に、樹脂層101を介してモールド91の中心と平坦凹部44aの中心が一致するように樹脂層101にモールド91を押し当て所定の深さまで押し込む。そして、この状態で照明光学系(図示せず)から光を照射し、樹脂層101を硬化させる(図25(B))。
【0058】
次いで、モールド91を樹脂層101から引き離すことにより、モールド91が有する凹凸パターン93が反転した凹凸構造103が被加工物である樹脂層101に転写形成される(図25(C))。
その後、別の面付け位置において樹脂層101を配設し、モールド91を用いて同様の操作を行う(図25(D))。
このような本発明のナノインプリント転写方法では、照射光の利用効率が高く、モールド91の周辺の樹脂層101の硬化が生じ、硬化後の樹脂層101とモールド91との離型が安定し、モールド91とともに樹脂層101が基板41′から剥離することが防止され、スループットの向上が可能となる。
上述の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例]
厚み6.35mmの石英ガラスを用いて図7に示されるようなメサ構造を有するモールドを作製した。このモールドは、全体の大きさが46mm×46mmであった。また、モールドのパターン領域は、大きさが25mm×25mmであり、深さ100nm、ライン/スペースが100nm/100nmの凹凸パターンを備えるものであった。また、パターン領域の周囲の非パターン領域(幅が10.5mmの回廊形状)には、遮光膜として、厚み50nmのクロム薄膜が存在するものであった。尚、非パターン領域からのパターン領域の突出高さは3mmであった。
【0060】
一方、基板本体として、厚み725μmの石英ウエハを100mm×100mmの寸法としたものを準備した。この基板本体の一方の面に、スパッタリング法によりアルミニウム薄膜を厚み50nmで形成して光反射膜とした。次いで、この光反射膜上にフォトレジスト(AZエレクトロニック マテリアルズ(株)製 AZ5206)を塗布し、所定のフォトマスクを介して露光し現像することにより、上記のパターン領域に対応する大きさのレジストパターンを形成した。このレジストパターンをマスクとして、リン酸、硝酸、酢酸および水からなる混酸を用いて露出している光反射膜をエッチングした。これにより、基板本体の中央に30mm×30mmの平坦な光反射膜を有する図1、図8に示されるようなナノインプリント転写用基板を作製した。
【0061】
[比較例]
ナノインプリント転写用基板の基板本体に光反射膜を形成しない他は、実施例1と同様にして、ナノインプリント転写用基板を作製した。
【0062】
[ナノインプリント転写による評価]
上記にように作製したナノインプリント転写用基板の表面(実施例のナノインプリント転写用基板では、光反射膜を形成した面)の全域に厚み0.7μmの光硬化性樹脂層(東洋合成工業(株)製 PAK−01)を被加工物として配設し、基板側が当接するようにインプリント装置の基板ステージに載置した。
次いで、光硬化性樹脂層に上記のモールドを押し込んだ(光硬化性樹脂層への押し込み深さd=0.2μm)。この状態でインプリント装置の照明光学系から平行光(ピーク波長が365nmの紫外線)を照射した。ここでは、照射時間を調整することにより下記の表1に示される各照射量で照射を行った。
照射後、モールドを樹脂層から引き離し、ナノインプリント転写用基板上の樹脂層をアセトン中に1分間浸漬し、その後、十分に乾燥した。そして、形成されたパターンについて、パターン寸法と欠陥率を下記のように測定して、結果を下記の表1に示した。
【0063】
(パターン寸法の測定)
計測器(CD−SEM)を用いて、パターンを測定した。測定結果の「0.0」は、パターンが樹脂層に転写形成されていない場合と、パターンは転写形成されているものの、残膜部(樹脂層)ごとアセトンで洗い流された箇所が存在することを意味する。また、モールドのライン/スペースが100nm/100nmでありながら、測定結果が100nmを超える数値が含まれるが、これは、設計値に対するモールド作製時の誤差、および計測器(CD−SEM)起因の誤差が含まれているためである。測定したパターン寸法が小さい程、パターン形成が不安定であることを意味する。
【0064】
(欠陥率の測定)
光学顕微鏡でパターン領域内を5箇所観察し、一つの観察箇所(1.0mm×1.0mm)内で、樹脂層の剥がれや、パターン欠損が確認できた面積の割合を測定した。したがって、この欠陥率が大きい程、欠陥が多いことを意味し、本発明では、欠陥率が0.1未満を実用レベルと判定する。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示されるように、照射量が少ないほど、パターン寸法が小さく、欠陥率が大きくなる点は、実施例と比較例とで共通している。
しかし、照射量が多くなるにつれ、実施例と比較例の差が広がり、照射量60mL/cm2で、実施例は安定したパターン形成が可能であり、かつ欠陥率も低く、実用レベルにある。これに対して、比較例では、実用レベルに達するためには照射量が150mL/cm2を超える必要があった。この結果から、実施例のナノインプリント転写用基板は、照射紫外線の利用効率が高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
ナノインプリント技術を用いた微細加工に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,1′,11,21,31,44,41′…ナノインプリント転写用基板
2,12,22,32,42…基板本体
3,13,23,33,43…光反射膜
4,14,24,34…反射面
4a…平坦領域
4b…周辺領域
15,25,35…反射防止機能膜
44a…平坦凹部
44c…集光部
51,101…被加工物
61…パターン領域
62…非パターン領域
71,81,91…モールド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を配設しモールドを用いたナノインプリント転写に供するためのナノインプリント転写用基板において、
基板本体と、該基板本体の表面に設けられた光反射膜と、を備え、該光反射膜は、使用するモールドのパターン領域と同じか、それよりも大きい領域の反射面を有することを特徴とするナノインプリント転写用基板。
【請求項2】
前記光反射膜の前記反射面を囲むように反射防止機能膜を有することを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項3】
前記反射防止機能膜は、前記光反射膜が設けられていない前記基板本体の表面に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項4】
前記光反射膜は、前記基板本体の表面全域に設けられたものであり、前記光反射膜の前記反射面が露出するように、光反射膜上の所定の部位に前記反射防止機能膜が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項5】
前記光反射膜は、前記基板本体の表面全域に設けられた前記反射防止機能膜を介して前記基板本体に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項6】
前記光反射膜の前記反射面は、使用するモールドのパターン領域と同じ大きさであるとともに、表面が平坦であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項7】
前記光反射膜の前記反射面は、使用するモールドのパターン領域と同じ大きさの平坦領域と、該平坦領域を囲むように位置する周辺領域とからなり、該周辺領域は、前記モールドを介して前記反射面に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体の垂直方向乃至基板本体の垂直方向よりもモールドの中心側に傾斜した方向へ反射するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項8】
前記周辺領域は傾斜面であり、該傾斜面と前記平坦領域とがなす角度はθ/2以上であることを特徴とした請求項7に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項9】
使用するモールドはパターン領域が凸状であるメサ構造を有しており、前記周辺領域の外側端部における前記光反射膜の厚みをhとし、前記基板本体の長さ、または前記基板本体が多面付けで区画されている場合の一面付けの基板本体の長さをBとし、被加工物に接触するモールドのパターン領域の長さをaとし、モールドの非パターン領域に位置する遮光膜の表面からパターン領域の表面までの厚み方向の距離をHとし、被加工物の厚みをtとし、ナノインプリント転写時の被加工物へのモールドの押し込み深さをdとし、モールドを介して被加工物に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、前記光反射膜の反射面の長さLを、下記の式(1)から算出される範囲内となるように設定することを特徴とした請求項7または請求項8に記載のナノインプリント転写用基板。
a+2[(H+t)−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(1)
【請求項10】
使用するモールドはパターン領域と非パターン領域とが同一面をなす構造を有しており、前記周辺領域の外側端部における前記光反射膜の厚みをhとし、前記基板本体の長さ、または前記基板本体が多面付けで区画されている場合の一面付けの基板本体の長さをBとし、被加工物に接触するモールドのパターン領域の長さをaとし、被加工物の厚みをtとし、ナノインプリント転写時の被加工物へのモールドの押し込み深さをdとし、モールドを介して被加工物に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、前記光反射膜の反射面の長さLを、下記の式(2)から算出される範囲内となるように設定することを特徴とした請求項7または請求項8に記載のナノインプリント転写用基板。
a+2[t−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(2)
【請求項11】
前記基板本体は、多面付けで区画されており、各面付け毎に前記反射面を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項12】
被加工物を所望の箇所に配設しモールドを用いたナノインプリント転写に供するためのナノインプリント転写用基板において、
基板本体と、該基板本体の表面に設けられた光反射膜と、を備え、該光反射膜は平坦凹部と、該平坦凹部の周囲に位置する肉厚部と、該肉厚部と前記平坦凹部との境界に設けられた集光部とからなり、該平坦凹部は使用するモールドよりも大きく、該集光部は照射された光を基板本体の垂直方向よりも平坦凹部の中心側に傾斜した方向へ反射するものであることを特徴とするナノインプリント転写用基板。
【請求項13】
前記境界部は傾斜面または湾曲面であることを特徴とした請求項12に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項14】
前記基板本体は、多面付けで区画されており、各面付け毎に前記光反射膜を備えることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項15】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜形成面側の全面に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドのパターン領域の中心と前記反射面の中心が一致するように前記被加工物にモールドのパターン領域を押し当て、前記モールドを介し被加工物に光を照射して被加工物の所定領域を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離すことを特徴とするナノインプリント転写方法。
【請求項16】
請求項11に記載のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜形成面側の全面に被加工物を配設し、次いで、所望の面付けにおいて、該被加工物を介してモールドのパターン領域の中心と前記反射面の中心が一致するように前記被加工物にモールドのパターン領域を押し当て、前記モールドを介し被加工物に光を照射して被加工物の所定領域を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離す操作を、順次各面付けにおいて行うことを特徴とするナノインプリント転写方法。
【請求項17】
請求項12または請求項13に記載のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜の前記平坦凹部に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドの中心と前記平坦凹部の中心が一致するように前記被加工物にモールドを押し当て、前記モールド側から前記光反射膜に光を照射し、前記モールドを透過した光、および、前記モールドの周辺外側を通過して前記境界部に到達し反射した光によって被加工物を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離すことを特徴とするナノインプリント転写方法。
【請求項18】
請求項14に記載のナノインプリント転写用基板の所望の面付けにおいて、前記光反射膜の前記平坦凹部に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドの中心と前記平坦凹部の中心が一致するように前記被加工物にモールドを押し当て、前記モールド側から前記光反射膜に光を照射し、前記モールドを透過した光、および、前記モールドの周辺外側を通過して前記境界部に到達し反射した光によって被加工物を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離す操作を、順次各面付けにおいて行うことを特徴とするナノインプリント転写方法。
【請求項1】
被加工物を配設しモールドを用いたナノインプリント転写に供するためのナノインプリント転写用基板において、
基板本体と、該基板本体の表面に設けられた光反射膜と、を備え、該光反射膜は、使用するモールドのパターン領域と同じか、それよりも大きい領域の反射面を有することを特徴とするナノインプリント転写用基板。
【請求項2】
前記光反射膜の前記反射面を囲むように反射防止機能膜を有することを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項3】
前記反射防止機能膜は、前記光反射膜が設けられていない前記基板本体の表面に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項4】
前記光反射膜は、前記基板本体の表面全域に設けられたものであり、前記光反射膜の前記反射面が露出するように、光反射膜上の所定の部位に前記反射防止機能膜が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項5】
前記光反射膜は、前記基板本体の表面全域に設けられた前記反射防止機能膜を介して前記基板本体に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項6】
前記光反射膜の前記反射面は、使用するモールドのパターン領域と同じ大きさであるとともに、表面が平坦であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項7】
前記光反射膜の前記反射面は、使用するモールドのパターン領域と同じ大きさの平坦領域と、該平坦領域を囲むように位置する周辺領域とからなり、該周辺領域は、前記モールドを介して前記反射面に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、最大入射角度θで入射した斜入射成分を基板本体の垂直方向乃至基板本体の垂直方向よりもモールドの中心側に傾斜した方向へ反射するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項8】
前記周辺領域は傾斜面であり、該傾斜面と前記平坦領域とがなす角度はθ/2以上であることを特徴とした請求項7に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項9】
使用するモールドはパターン領域が凸状であるメサ構造を有しており、前記周辺領域の外側端部における前記光反射膜の厚みをhとし、前記基板本体の長さ、または前記基板本体が多面付けで区画されている場合の一面付けの基板本体の長さをBとし、被加工物に接触するモールドのパターン領域の長さをaとし、モールドの非パターン領域に位置する遮光膜の表面からパターン領域の表面までの厚み方向の距離をHとし、被加工物の厚みをtとし、ナノインプリント転写時の被加工物へのモールドの押し込み深さをdとし、モールドを介して被加工物に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、前記光反射膜の反射面の長さLを、下記の式(1)から算出される範囲内となるように設定することを特徴とした請求項7または請求項8に記載のナノインプリント転写用基板。
a+2[(H+t)−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(1)
【請求項10】
使用するモールドはパターン領域と非パターン領域とが同一面をなす構造を有しており、前記周辺領域の外側端部における前記光反射膜の厚みをhとし、前記基板本体の長さ、または前記基板本体が多面付けで区画されている場合の一面付けの基板本体の長さをBとし、被加工物に接触するモールドのパターン領域の長さをaとし、被加工物の厚みをtとし、ナノインプリント転写時の被加工物へのモールドの押し込み深さをdとし、モールドを介して被加工物に照射された光の斜入射成分の最大入射角度をθとしたとき、前記光反射膜の反射面の長さLを、下記の式(2)から算出される範囲内となるように設定することを特徴とした請求項7または請求項8に記載のナノインプリント転写用基板。
a+2[t−(d+h)]tanθ ≦ L ≦ B 式(2)
【請求項11】
前記基板本体は、多面付けで区画されており、各面付け毎に前記反射面を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項12】
被加工物を所望の箇所に配設しモールドを用いたナノインプリント転写に供するためのナノインプリント転写用基板において、
基板本体と、該基板本体の表面に設けられた光反射膜と、を備え、該光反射膜は平坦凹部と、該平坦凹部の周囲に位置する肉厚部と、該肉厚部と前記平坦凹部との境界に設けられた集光部とからなり、該平坦凹部は使用するモールドよりも大きく、該集光部は照射された光を基板本体の垂直方向よりも平坦凹部の中心側に傾斜した方向へ反射するものであることを特徴とするナノインプリント転写用基板。
【請求項13】
前記境界部は傾斜面または湾曲面であることを特徴とした請求項12に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項14】
前記基板本体は、多面付けで区画されており、各面付け毎に前記光反射膜を備えることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のナノインプリント転写用基板。
【請求項15】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜形成面側の全面に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドのパターン領域の中心と前記反射面の中心が一致するように前記被加工物にモールドのパターン領域を押し当て、前記モールドを介し被加工物に光を照射して被加工物の所定領域を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離すことを特徴とするナノインプリント転写方法。
【請求項16】
請求項11に記載のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜形成面側の全面に被加工物を配設し、次いで、所望の面付けにおいて、該被加工物を介してモールドのパターン領域の中心と前記反射面の中心が一致するように前記被加工物にモールドのパターン領域を押し当て、前記モールドを介し被加工物に光を照射して被加工物の所定領域を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離す操作を、順次各面付けにおいて行うことを特徴とするナノインプリント転写方法。
【請求項17】
請求項12または請求項13に記載のナノインプリント転写用基板の前記光反射膜の前記平坦凹部に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドの中心と前記平坦凹部の中心が一致するように前記被加工物にモールドを押し当て、前記モールド側から前記光反射膜に光を照射し、前記モールドを透過した光、および、前記モールドの周辺外側を通過して前記境界部に到達し反射した光によって被加工物を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離すことを特徴とするナノインプリント転写方法。
【請求項18】
請求項14に記載のナノインプリント転写用基板の所望の面付けにおいて、前記光反射膜の前記平坦凹部に被加工物を配設し、該被加工物を介してモールドの中心と前記平坦凹部の中心が一致するように前記被加工物にモールドを押し当て、前記モールド側から前記光反射膜に光を照射し、前記モールドを透過した光、および、前記モールドの周辺外側を通過して前記境界部に到達し反射した光によって被加工物を硬化させ、その後、前記モールドを被加工物から引き離す操作を、順次各面付けにおいて行うことを特徴とするナノインプリント転写方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−258259(P2010−258259A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107409(P2009−107409)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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