説明

ニットウェアおよび、ニットウェアの編成方法

セットインスリーブとラグランスリーブが混在した無縫製のニットウェアおよびこのニットウェアの編成方法を提供する。本発明のニットウェアは、身頃と袖を具え、前身頃は、袖ぐり部とニットウェア装着時の肩ラインに沿う肩ライン部とを有し、後身頃は、襟ぐりから身頃脇部分まで傾斜して延びる傾斜ライン部を有する。前後の身頃が無縫製で筒状に編成され、袖が無縫製で筒状に編成される。袖が前後身頃の袖ぐり部と肩ライン部と傾斜ライン部とに無縫製で接合され、袖の一部で襟ぐりが形成される。袖を身頃の袖ぐり部に接合させている間の前後の身頃の編成コース数は、後身頃の編成コース数を前身頃の編成コース数より少なく編成する。袖を身頃の肩ライン部に接合させている間の前後の身頃の編成コース数は、後身頃の編成コース数を前身頃の編成コース数より多く編成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、袖を有するニットウェアおよび袖を有するニットウェアの編成方法に関する。特に本発明は、今までに無い袖付け形状を有するニットウェアおよびその編成方法を提供するものである。
【背景技術】
一般に、ニットウェアの袖付け形状は、例えば特公平4−15301号公報(特許文献1)や特開平11−61603号公報(特許文献2)に示すように、いわゆるセットインスリーブとラグランスリーブとに大きく分かれている。
セットインスリーブは、特許文献1の第1図または特許文献2の図1に示すように、前後の身頃は、裾部と脇部と脇部の上端部から形成される袖ぐり部とニットウェア装着時に肩ラインに沿う肩ライン部とを有するように編成している。袖ぐり部は、脇と同じ方向に延びる直線部分を有し、この直線部分の上端部から肩ライン部が襟ぐりに向けて形成されている。そして、袖を前後の身頃の袖ぐり部に沿って接合した後、前後の身頃の互いの肩ライン部を接合するようにしている。
また、ラグランスリーブは、特許文献1の第4図または特許文献2の図11に示すように、前後の身頃を、裾部と脇部と脇部の上端部から襟ぐりに向けて直線状に傾斜させて形成される傾斜ライン部とを有するように編成している。袖は、ニットウェア装着時に腕と肩を覆うように編成され、身頃の傾斜ライン部と接合させるとともに、袖の上端部に襟ぐりの一部を形成するようになっている。
ところで、一方の身頃の形状をセットインスリーブにし、他方の身頃の形状をラグランスリーブにしたデザインのものは今までに無かった。このようなデザインのニットウェアが無かった理由として以下の理由が挙げられる。
セットインスリーブの場合、袖ぐり部には、脇と同方向に伸びる直線部分があり、この直線部分に対して袖を接合する場合、袖を直線部分に対して直角に接合していく(特許文献2の図1参照)。
また、ラグランスリーブの場合、身頃と袖との接合は、身頃の傾斜ライン部に袖を接合していく。そのため、袖は、傾斜ライン部に対して斜めに接合していく(特許文献2の図11参照)。
それぞれについて、袖の身頃との接合部分の編地長さを比較すると、セットインスリーブの袖ぐり部の長さよりも、ラグランスリーブの傾斜ライン部の長さの方が長くなる。したがって、ラグランスリーブ側に接合させる袖の接合部分の長さも、セットインスリーブ側に接合させる袖の接合部分の長さよりも長くなる。
このように、セットインスリーブとラグランスリーブとでは、身頃と袖の接合部分の長さが異なる。そのため、前身頃と後身頃を同じコース数で並行して編成しながら、一方の身頃の形状をセットインスリーブにし、他方の身頃の形状をラグランスリーブにすると、接合部分の長さの違いによりラグランスリーブ側の身頃と袖との接合が良好に行えない問題が生じる。
また、セットインスリーブの場合、身頃と袖とを接合していく際の身頃の編成コース数と袖の編成コース数の比は、一般に2対1で編成する場合が多い。また、ラグランスリーブの場合は、身頃と袖とを接合していく際の身頃の編成コース数と袖の編成コース数の比は、一般に1対1で編成する場合が多い。
そして、一方の身頃の形状をセットインスリーブにし、他方の身頃の形状をラグランスリーブにする場合に、前後の身頃について、身頃の編成コース数と袖の編成コース数の比を2対1で編成すると、ラグランスリーブ側の身頃の接合部分にだぶつきが生じてしまう。
また、前身頃(セットインスリーブ)と袖の編成コース数の比を2対1、後身頃(ラグランスリーブ)と袖の編成コース数の比を1対1として編成した場合、肩部でセットインスリーブの肩部分とラグランスリーブの袖部分を接合するために必要な袖の編成コース数が決まり、袖と1対1の編成コース数の比で編成される後身頃の編成コース数も決まる。
このように前身頃の編成コース数と関係なく後身頃の編成コース数が決まってしまうため、後身頃の編成コース数が前身頃の編成コース数に対し多くなり後身頃にだぶつきが生じてしまう。
以上の理由から、セットインスリーブとラグランスリーブとが混在したニットウェアの製品化は行えなかった。
【発明の開示】
本発明は以上の実情に鑑みて開発したものであって、セットインスリーブとラグランスリーブが混在した無縫製のニットウェアおよびこのニットウェアの編成方法を提供することを目的とする。
本発明のニットウェアは、セットインスリーブとラグランスリーブが混在した無縫製のニットウェアである。本発明のニットウェアは、身頃と袖を具え、前身頃または後身頃のどちらか一方は、袖ぐり部とニットウェア装着時の肩ラインに沿う肩ライン部とを有し、他方の身頃は、襟ぐりから身頃脇部分まで傾斜して延びる傾斜ライン部を有している。
そして、前身頃と後身頃とが無縫製で筒状に編成され、袖が無縫製で筒状に編成され、袖が前後身頃の袖ぐり部と肩ライン部と傾斜ライン部とに無縫製で接合され、袖の一部で襟ぐりが形成されている。袖を身頃の袖ぐり部に接合させている間の前後の身頃の編成コース数については、傾斜ライン部側の身頃の編成コース数を肩ライン部側の身頃の編成コース数より少なく編成されている。
また、袖を身頃の肩ライン部に接合させている間の前後の身頃の編成コース数については、傾斜ライン部側の身頃の編成コース数を肩ライン部側の身頃の編成コース数より多く編成されている。
この場合、肩ライン部と接合される部分の袖が、肩ライン部の接合の際に引きつらない編成コース数で編成されながら接合される。さらに、袖と傾斜ライン部側の身頃の各編成コース数に対する接合コース比率が、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置を一致させたときに、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合部分にたるみが生じない比率となるように袖と身頃とが接合されている。なお、ニットウェア装着時の肩ラインは、ニットウェアを着用した状態の着用者を基準にしている。
袖ぐり部とニットウェア装着時の肩ラインに沿う肩ライン部とを有している身頃がいわゆるセットインスリーブ用の身頃となる。
セットインスリーブ側の身頃は、裾部と脇部と脇部の上端部から形成される袖ぐり部とニットウェア装着時に肩ラインに沿う肩ライン部とを有するように編成されている。袖ぐり部は、脇と同じ方向に延びる直線部分を有し、この直線部分の上端部から肩ライン部が襟ぐりに向けて形成されている。
肩ライン部は、身頃の裾部と平行し、袖ぐり部の直線部分と直交するように形成してもよいし、肩落ちが形成されるように裾部に対して傾斜させるように形成してもよい。
また、襟ぐりから身頃脇部分まで傾斜して延びる傾斜ライン部を有する身頃が、いわゆるラグランスリーブ用の身頃となる。
ラグランスリーブ側の身頃は、裾部と脇部と脇部の上端部から襟ぐりに向けてほぼ直線状に傾斜させて形成される傾斜ライン部とを有するように編成されている。
さらに、袖における身頃と接合される部分の編成部は、袖ぐり部と接合される袖ぐり部接合部と、この袖ぐり部接合部に連続し、肩ライン部と接合される肩ライン部接合部と、傾斜ライン部と接合される傾斜ライン部接合部と、傾斜ライン部接合部の上端部と肩ライン部接合部の上端部との間に形成される襟ぐり形成部とを有するように編成することが好ましい。
具体的には、肩ライン部の位置がニットウェア装着時の肩ラインよりも下方に位置するように一方の身頃を形成する。
そして、袖における身頃との接合部分の編成部は、袖を前身頃側と後身頃側の半分に分けたとき次のように形成されている。肩ライン部と接合される側の袖の編成部は、前記袖ぐり部接合部を有する台形状編成部と、この台形状編成部の上方に連続して形成され、前記肩ライン部接合部を有する矩形状編成部とを有している。この場合、矩形状編成部は、肩ライン部との接合終了により上端部が襟ぐりの一部となる。
また、傾斜ライン部と接合される側の袖の編成部は、傾斜ライン部と接合させる三角状編成部を有している。なお、台形状編成部と矩形状編成部とは、三角状編成部と連続して編成されている。
このように袖を編成することにより、ニットウェア装着時において袖の一部で肩が覆われるようになっている。
さらに、袖を身頃の袖ぐり部に接合させている間の前後の身頃の編成コース数と、袖を身頃の肩ライン部に接合させている間の前後の身頃の編成コース数について、袖ぐり部への接合時には、肩ライン部側の身頃の編成コース数を少なくし、肩ライン部への接合時には、肩ライン部側の身頃の編成コース数を多くしている。
また、袖は、肩ライン部への接合時において、肩ライン部と接合される部分の袖を肩ライン部の接合の際に引きつらない編成コース数で編成しながら接合される。そして、袖と傾斜ライン部側の身頃の各編成コース数に対する接合コース比率を、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置を一致させたときに、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合部分にたるみが生じない比率として、袖と身頃とを接合していく。
具体的には、袖を肩ライン部へ接合する時には、袖は肩ラインの長さに応じて肩ライン部に接合するために必要な編成コース数が求められる。そして、前後の身頃における袖と身頃との接合開始から接合終了までの全編成コース数も、前後の身頃の形状より求められる。
そして、傾斜ライン部側の身頃については、この全編成コース数から後記する第3ステップでそれまでに編成したコース数を減じることにより、後記する第4ステップで編成すべき残りの編成コース数が算出される。
肩ライン部への接合時には、この算出された身頃の残りの編成コース数と、袖の編成コース数に基づいて、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置が一致し、かつ、袖と傾斜ライン部側の身頃の接合部分がたるまないように、袖の編成コース数と傾斜ライン部側の身頃の編成コース数の接合していく比率を決定する。
このように編成されているので、本発明のニットウェアは、セットインスリーブとラグランスリーブが混在した無縫製のニットウェアでありながら、一方の身頃にだぶつきが生じない。
また、縫製作業を行うことなくセットインスリーブとラグランスリーブが混在した袖付きニットウェアを編成できるようにするため、本発明は以下に示すニットウェアの編成方法を提供する。
本発明の編成方法は、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床の少なくとも一方が左右にラッキング可能で、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて形成される袖を有するニットウェアの編成方法である。
そして、前身頃または後身頃のどちらか一方に、袖ぐり部とニットウェア装着時の肩ラインに沿う肩ライン部とを形成し、他方の身頃に、襟ぐりから身頃脇部分まで傾斜して延びる傾斜ライン部を形成するために、以下のステップを含むことを特徴としている。
1) 身頃と袖の接合開始位置まで、前身頃と後身頃とを裾部から筒状に編成していき、袖も袖口から筒状に編成していく第1ステップ。
2) 身頃と袖との接合開始部から袖ぐり部の途中までは、前後の身頃および袖の編成コース数を同数で編成しながら袖を袖ぐり部と傾斜ライン部とに接合していく第2ステップ。
3) 第2ステップ以降の袖ぐり部から肩ライン部開始位置までは、肩ライン部を有する身頃の編成コース数を傾斜ライン部を有する身頃の編成コース数よりも多く編成するととともに、袖を編成しながら袖を袖ぐり部と傾斜ライン部とに接合していく第3ステップ。
4) 傾斜ライン部を有する身頃の編成を肩ライン部を有する身頃の編成よりも編成コース数を多くして編成し、肩ライン部と接合される部分の袖を、肩ライン部の接合の際に引きつらない編成コース数で編成しながら接合するとともに、袖と傾斜ライン部側の身頃の各編成コース数に対する接合コース比率を、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置を一致させたときに、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合部分にたるみが生じない比率として、袖を編成しながら袖を肩ライン部と傾斜ライン部とに接合していく第4ステップ。
前記第1ステップでは、前身頃と後身頃との筒状編成と、袖の筒状編成を並行して行う。
前記第2ステップでは、前後の身頃と袖とは、目を減らしながら編成しつつ、身頃と袖とを接合していく。
前記第3ステップでは、肩ライン部を有する身頃は、袖ぐり部が形成される部分の編み目(ウェール)は同じまま編成する。この袖ぐり部と接合する側の袖編成部(前記台形状編成部)は、編み目は減らしながら編成し、袖を袖ぐり部に接合していく。
同じく第3ステップでは、傾斜ライン部を有する身頃は、袖との接合側の編み目を所定コースごとに減らしながら編成する。袖の傾斜ライン部と接合する側の袖編成部(前記三角状編成部)も、編み目を傾斜ライン部側よりも減らす回数が多くなるように減らしていく。
さらに、第3ステップでは、肩ライン部を有する身頃の編成コース数と傾斜ライン部を有する身頃の編成コース数の比が例えば2対1となるように編成することが好ましい。ただし、身頃の形状によっては、前記コース数の比は、異なる比率と同じ比率(たとえば2対1と1対1)が交互に繰り返されるように編成するようにしてもよい。
また、第3ステップでは、肩ライン部を有する身頃の編成コース数と傾斜ライン部を有する身頃の編成コース数と袖の編成コース数の比が4対3対2となるように編成することが好ましい。
第3ステップにより、袖ぐり部側の身頃の編成コース数より傾斜ライン部側の身頃の編成コース数が少ないので、身頃と袖を接合しても一方の身頃にだぶつきは生じない。
前記第4ステップは、肩ライン部を有する身頃に肩落ちを形成する場合には、袖との接合側の編み目を減らしながら肩ライン部が形成されるように身頃を編成し、また、肩落ちを形成しない場合には、編成を行うことなく目を編針に預けておく。袖の肩ライン部と接合する側の編成部(前記矩形状編成部)は、編み目(ウェール)は同じまま矩形状に編成し、肩ライン部と接合していく。
同じく第4ステップでは、第3ステップと同様に、傾斜ライン部を有する身頃は、袖との接合側の編み目を所定コースごとに減らしながら編成する。袖の傾斜ライン部と接合する側の袖編成部(前記三角状編成部)も、編み目を傾斜ライン部側よりも減らす回数が多くなるように減らしていく。
さらに、第4ステップでは、肩ライン部を有する身頃の編成コース数と傾斜ライン部を有する身頃の編成コース数の比が例えば1対2となるように編成することが好ましい。ただし、身頃の形状によっては、前記コース数の比は、異なる比率と同じ比率(たとえば1対2と1対1)が交互に繰り返されるように編成するようにしてもよい。
また、肩落ちを形成しない場合には、肩ライン部を有する身頃の編成コース数はゼロとなり、傾斜ライン部を有する身頃のみ編成を行う。第4ステップでは、傾斜ライン部を有する身頃の編成を行いながら、袖の編成も行っていく。
さらに、第4ステップでは、肩ライン部と接合される部分の袖を、肩ライン部の接合の際に引きつらない編成コース数で編成しながら接合する。そして、袖と傾斜ライン部側の身頃の各編成コース数に対する接合コース比率を、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置を一致させたときに、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合部分にたるみが生じない比率となるように袖と傾斜ライン部側の身頃とを接合していく。
第4ステップでは、編成前に、肩ラインの長さに応じて袖を肩ライン部に接合するために必要な編成コース数が求められ、かつ、前後の身頃における袖と身頃との接合開始から接合終了までの全編成コース数も前後の身頃の形状より求められる。
そして、傾斜ライン部側の身頃については、この全編成コース数から第3ステップでそれまでに編成したコース数を減じることにより、第4ステップで編成すべき残りの編成コース数を算出することができる。
第4ステップでは、この算出された身頃の残りの編成コース数と、袖の編成コース数に基づいて、袖の編成コース数と傾斜ライン部側の身頃の編成コース数の接合していく比率を決定する。この比率は、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置が一致し、かつ、袖と傾斜ライン部側の身頃の接合部分がたるまない比率とする。この比率で袖と身頃とを接合していく。
第3ステップにおいて、傾斜ライン部側の身頃の編成コース数が肩ライン部側の身頃に対して少ないので、第4ステップにおいて、傾斜ライン部側の身頃の編成コース数を多く編成することにより、前後の身頃の編み目の数の差を無くすことができる。
さらに、前後の身頃への袖の接合が完了すると、前記矩形状編成部の上端部により襟ぐりの一部が形成される。この矩形状編成部の襟ぐり部と、前後の身頃に形成された襟ぐり部とが連続接合されて襟ぐりが形成される。
本発明のニットウェアでは、前身頃にセットインスリーブを形成し、後身頃にラグランスリーブを形成するように編成することもできるし、前身頃にラグランスリーブを形成し、後身頃にセットインスリーブを形成するように編成することもできる。
以上のごとく本発明によれば、一方の身頃にだぶつきが生じることなく、セットインスリーブとラグランスリーブが混在した無縫製のニットウェアを提供できる。
本発明のニットウェアの編成方法では、第3ステップにより、袖ぐり部側の身頃の編成コース数より傾斜ライン部側の身頃の編成コース数が少ないので、身頃と袖を接合しても一方の身頃にだぶつきが生じないようにすることができる。
さらに、第3ステップにおいて、傾斜ライン部側の身頃の編成コース数が肩ライン部側の身頃に対して少ないので、第4ステップにおいて、傾斜ライン部側の身頃の編成コース数を多く編成することで、前後の身頃の編み目の数の差を無くすことができる。
さらに、第4ステップにおいて、肩ライン部と接合される部分の袖を、肩ライン部の接合の際に引きつらない編成コース数で編成しながら接合するとともに、袖と傾斜ライン部側の身頃の各編成コース数に対する接合コース比率を、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置を一致させたときに、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合部分にたるみが生じない比率として、袖を編成しながら袖を肩ライン部と傾斜ライン部とに接合していくので、身頃と袖を接合しても一方の身頃にだぶつきが、他方にひきつりが生じないようにすることができる。
以上のように、本発明の編成方法によれば、セットインスリーブとラグランスリーブが混在した無縫製のニットウェアを一方の身頃にだぶつきが生ずることなく編成できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明にかかるニットウェアの実施形態であって、セーターを前身頃側から見た正面図(a)と、後身頃側から見た背面図(b)とを示している。第2図は、本発明にかかるニットウェアの実施形態であって、セーターを構成する各パーツを横編み機上で編成される状態を示している。第3図は、本発明にかかるニットウェアの実施形態であって、前後の身頃と袖との接合部分における各パーツの部分拡大図を示している。第4図は、本発明のニットウェアの編成方法の第3ステップの編成工程図を示している。第5図は、本発明のニットウェアの編成方法の第4ステップの編成工程図を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明にかかる袖を有するニットウェアおよびその編成方法についての実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態は、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する前後一対の針床を有し、後針床が左右にラッキング可能で、しかも、前後の針床間で編目の目移しが可能ないわゆる2枚ベッドの横編機を用いてニットウェアを編成する。
2枚ベッドの横編機は、筒状のニットウェアを編成する場合、前後の各針床においてそれぞれ1本おきの針を用いて編成を行うようにしている。例えば、前針床の奇数番目の針を主として前身頃や袖の前部などニットウェアの前側部分の編地を編成するために用い、後針床の偶数番目の針を主として後身頃や袖の後部などのニットウェアの後側部分を編成するために用いる。
さらに、前後の針床は、一方の針床の編成用に用いられる針に対向する他方の針床の針を空針としており、この空針を目移しやリブ編み等をするために用いるようになっている。
これら空針を用いることにより、リンクス、ガーター、リブなどの表目と裏目が混在した組織柄を編成したり、袖や身頃の編目をコース方向に移動させて互いに接合することができるようになっている。
また、2枚ベッドの横編機を用いる場合、前後針床の一方または両方の上位にトランスファージャックを列設したトランスファージャックベッドを設けて編地を編成するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、2枚ベッドの横編機を用いてニットウェアを編成するようにしているが、本発明は、上部前針床、下部前針床、上部後針床、そして下部後針床からなる4枚ベッドの横編機を用いて編成することもできる。
4枚ベッドの横編機を用いる場合には、例えば、下部前針床に編地の前側部分を付属させ、下部後針床に編地の後側部分を付属させる。そして、上部後針床を前側部分の編地を編成する際の空針として前側部分の編地の目移し等に用い、上部前針床を後側部分の編地を編成する際の空針として後側部分の編地の目移し等に用いる。
本実施形態は、上記2枚ベッドの横編機を用いて、ニットウェアを構成する身頃および袖を継ぎ目の無い連続した筒状となるようにシームレスに編成する方法およびこの編成方法で編成されるニットウェアを示す。
本発明の実施形態について、第1図から第5図に基づいて説明する。なお、第4図および第5図において、編成の流れを示す線上の○印は、身頃または袖の減らし目を行う位置を示している。
本実施形態で編成されるセーター1はVネックの襟ぐりを有する長袖タイプのセーターである。本実施形態のセーター1は、身頃2と、左袖3、右袖13と、襟ぐり4を有している。
前身頃2aと後身頃2bとは、第2図において、袖接合開始位置である点A,a,G,gより上方の形状が異なる。
前身頃2aは、第2図に示すように、裾部21aと脇部22aと袖ぐり部23と肩ライン部24とを有している。前身頃2aは、いわゆるセットインスリーブ用の身頃となる。
袖ぐり部23は、脇部22a,22bの上端部(第2図のA,a位置)から形成され、脇と同じ方向に延びる直線部分(第2図のB−C,b−c)を有している。この直線部分の上端部(第2図のC,c位置)から肩ライン部24が襟ぐり4に向けて形成されている。肩ライン部24は、ニットウェア装着時の肩ラインに沿うように形成されている。肩ライン部24は、前身頃2aの肩部分に肩落ち編成部25を形成することにより、襟ぐり4から下方に向けて傾斜させている。さらに、前身頃2aは、肩ライン部24の位置がニットウェア装着時の肩ラインよりも下方に位置するように形成している。
後身頃2bは、第2図に示すように、裾部21bと脇部22bと襟ぐり4(第2図のK,k位置)から身頃脇部分(第2図のG,g位置)まで傾斜して延びる傾斜ライン部26とを有している。後身頃2bが、いわゆるラグランスリーブ用の身頃となる。
左右の袖3,13の身頃2と接合される部分の編成部分は、第2図および第3図に示すように、袖ぐり部23と接合される袖ぐり部接合部31と、肩ライン部24と接合される肩ライン部接合部32と、傾斜ライン部26と接合される傾斜ライン部接合部33と、襟ぐり形成部34とを有している。
肩ライン部接合部32は、袖ぐり部接合部31から連続して形成されている。襟ぐり形成部34は、傾斜ライン部接合部33の上端部と肩ライン部接合部32の上端部との間に形成される。
さらに、左右の袖3,13における身頃2との接合部分の編成部分は、第3図に示すように、袖ぐり部接合部31を有する台形状編成部35と、肩ライン部接合部32を有する矩形状編成部36と、傾斜ライン部接合部33を有する三角状編成部37とを有している。
矩形状編成部36は、台形状編成部35の上方に連続して編成され、台形状編成部35と矩形状編成部36とは、三角状編成部37と横方向に連続して編成されている。矩形状編成部36は、肩ライン部24との接合終了により上端部が襟ぐりの一部となる襟ぐり形成部34となる。
本実施形態では、前身頃2aと後身頃2bとが無縫製で筒状に編成され、袖3,13が無縫製で筒状に編成される。そして、袖3,13は、前身頃2aの袖ぐり部23と肩ライン部24と、そ、して、後身頃2bの傾斜ライン部26と無縫製で接合される。
袖3,13を身頃2と接合していく際、袖3,13を前身頃2aの袖ぐり部23に接合させている間の前身頃2aと後身頃2bの編成コース数については、後身頃2bの編成コース数を前身頃2aの編成コース数より少なく編成している。袖3,13を前身頃2aの肩ライン部24に接合させている間の前身頃2aと後身頃2bの編成コース数については、後身頃2bの編成コース数を前身頃2aの編成コース数より多く編成している。
そして、袖3,13と身頃2との接合が完了すると襟ぐり形成部34で襟ぐり4の一部が形成される。
なお、本実施形態において、身頃や袖の左右を表す用語、例えば、左袖3や右袖13などの右と左や、ニットウェア装着時の肩ラインは、セーター1を着用した状態の着用者を基準にしている。
次に、本実施形態のセーター1の編成手順について説明する。本実施形態では、後身頃2b、右袖後部13b、左袖後部3bは、主として後針床上の奇数番目の針を使用して編成され、前身頃2a、右袖前部13a、左袖前部3aは、主として前針床上の偶数番目の針を使用して編成される。
セーター1における前身頃2a、後身頃2bおよび袖3,13の編み組織は、説明の便宜上、平編みの無地とし、身頃2の裾部と袖3,13の袖口はリブ編としているが、前身頃2a、後身頃2bおよび袖3,13は、ジャガードやリブ等の組織柄のものであってもよい。
まず、身頃編成用と袖編成用にそれぞれ用意した給糸口(図示せず)から編糸を前身頃編成用の各針に供給した後、給糸口を反転させて後身頃編成用の各針へ編糸を供給する編成を繰り返して、筒状体の身頃と左右の筒状体の袖とを編成していく。
具体的には、前身頃2aと後身頃2bとは、裾から袖との接合開始位置(A,a,G,g)まで筒状に編成していく。左袖前部3aと左袖後部3bとは、袖口から身頃との接合開始位置(K,P)まで筒状に編成していく。右袖前部13aと右袖後部13bとは、袖口から身頃との接合開始位置(k,p)まで筒状に編成していく(第1ステップ)。なお、身頃の裾と袖口はゴム編で編成する。
セーター1は、前身頃2aの各点A,aが、左袖前部3aおよび右袖前部13aの各点K,kと接合され、後身頃2bの各点G,gが、左袖後部3bおよび右袖後部13bの各点P,pと接合される。身頃2に左袖3と右袖13とが接合され始めたときに、身頃2と左袖3と右袖13とが統合させて1つの筒状体となる。
身頃2と袖3,13との接合開始部(A−K,a−k,G−P,g−p)から袖ぐり部23の途中(B,b)および傾斜ライン部26の途中(H,h)までは、前身頃2aと後身頃2bと袖3,13の編成コース数を同数で編成しながら、袖3,13を袖ぐり部23と傾斜ライン部26とに接合していく(第2ステップ)。
第2ステップでは、左袖3はL−Qまで、右袖13はl−qまで編成される。さらに、第2ステップでは、前身頃2a、後身頃2b、袖3,13のそれぞれは接合部分の編み目を減らしていく。
次に、第2ステップ以降の袖ぐり部23(B,b)から肩ライン部24開始位置(C,c)までは、前身頃2aの編成コース数を後身頃2bの編成コース数よりも多く編成するとともに、袖3,13を編成しながら袖3,13を袖ぐり部23と傾斜ライン部26とに接合していく(第3ステップ)。
また、前身頃2aにおいて襟ぐり4の形成が開始された後は、身頃2および袖3,13の編成は、前身頃2aの左側、左袖前部3a、左袖後部3b、後身頃2b、右袖後部13b、右袖前部13a、前身頃2aの右側の順に編成した後、その反対の順に編成する。そして、このように編成しながら、前身頃2aと左袖前部3aとを接合し、後身頃2bに左袖後部3bと右袖後部13bとを接合し、前身頃2aと右袖前部13aとを接合していく。
第3ステップの編成について、第4図に基づいて具体的に説明する。第4図において、太い線は、後身頃2bと、左袖後部3bと、右袖後部13bとを示し、細い線は、前身頃2aと、左袖前部3aと、右袖前部13aとを示している。なお、第4図は、前身頃2aにおいて襟ぐり4が形成され始めた状態を示している。
第3ステップでは、aのパターンの編成とbのパターンの編成とを交互に繰り返したり、または、a・bパターンを繰り返す途中でbパターンのみを数回繰り返して編成していく。
aパターン編成は、右袖後部13b、後身頃2b、左袖後部3bの順に後側を1コース編成した後、左袖前部3aを1コース編成し、前身頃2aの左側半分を引き返し編みで合計4コース編成した後、左袖前部3aを1コース編成する。次に、左袖後部3bを1コース編成し、後身頃2bを引き返し編みで3コース編成した後、右袖後部13bを1コース編成する。次に、右袖前部13aを1コース編成し、前身頃2aの右側半分を引き返し編みで合計4コース編成した後、右袖前部13aを1コース編成してaパターン編成が終了する。
aパターン編成では、前身頃2aと後身頃2bの編成コース数の比率が1対1となり、前身頃2aと前側の袖3a,13aの編成コース数の比率が2対1となり、後身頃2bと後側の袖3b,13bの編成コース数の比率が2対1となっている。
bパターン編成は、右袖後部13b、後身頃2b、左袖後部3bの順に後側を1コース編成した後、左袖前部3aを1コース編成し、前身頃2aの左側半分を引き返し編みで合計4コース編成した後、左袖前部3aを1コース編成する。次に、左袖後部3b、後身頃2b、右袖後部13bの順に後側を1コース編成した後、右袖前部13aを1コース編成し、前身頃2aの右側半分を引き返し編みで合計4コース編成した後、右袖前部13aを1コース編成してbパターン編成が終了する。
bパターン編成では、前身頃2aと後身頃2bの編成コース数の比率が2対1となり、前身頃2aと前側の袖3a,13aの編成コース数の比率が2対1となり、後身頃2bと後側の袖3b,13bの編成コース数の比率が1対1となっている。
第3ステップでは、第3図に示すように、袖3(13)に、袖ぐり部接合部31を有する台形状編成部35と、傾斜ライン部接合部33を有する三角状編成部37の一部が編成される。さらに、第3ステップでは、後身頃2b、袖3,13は、身頃と袖との接合側の端部の編み目を減らしていき、前身頃2aの身頃と袖との接合側の端部の編み目は同じウェールとなるように編成している。
第3ステップにより、前身頃2aと前側の袖3a,13aの編成コース数の比率を2対1とし、後身頃2bと後側の袖3b,13bの編成コース数の比率を3対2としても、前身頃2aの編成コース数より後身頃2bの編成コース数が少ないので、身頃2と袖3,13を接合しても後身頃2bにだぶつきは生じない。
そして、第3ステップによって袖3,13と身頃2との接合を肩ライン部24開始位置(C,c)まで行った後、次に第4ステップに移る。
第4ステップは、後身頃2bの編成を前身頃2aの編成よりも編成コース数を多く編成し、肩ライン部と接合される部分の袖を、肩ライン部の接合の際に引きつらない編成コース数で編成しながら接合していく。さらに、袖3,13と後身頃2bの各編成コース数に対する接合コース比率を、袖3,13と後身頃2bとの接合開始位置および接合終了位置を一致させたときに、袖3,13と後身頃2bとの接合部分にたるみが生じない比率として、袖3,13を編成しながら袖3,13を肩ライン部24と傾斜ライン部26とに接合していく。
さらに、第4ステップの編成について、第5図に基づいて具体的に説明する。第5図においても、太い線は、後身頃2bと、左袖後部3bと、右袖後部13bとを示し、細い線は、前身頃2aと、左袖前部3aと、右袖前部13aとを示している。なお、第5図は、前身頃2aにおいて肩落ち編成部25が形成され始めた状態を示している。
第4ステップでは、cのパターンの編成とdのパターンの編成とを交互に繰り返したり、または、c・dパターンを繰り返す途中でdパターンのみを数回繰り返して編成していく。
cパターン編成は、右袖後部13b、後身頃2b、左袖後部3bの順に後側を1コース編成した後、左袖前部3aを引き返し編みで2コース編成し、左袖後部3bを引き返し編みで2コース編成する。次に、左袖前部3a、前身頃2aの左側半分を1コース編成して引き返し、前身頃2aの左側半分、左袖前部3aを1コース編成する。次に、左袖後部3b、後身頃2b、右袖後部13bの順に後側を1コース編成した後、右袖前部13aを引き返し編みで2コース編成し、右袖後部13bを引き返し編みで2コース編成する。次に、右袖前部13a、前身頃2aの右側半分を1コース編成して引き返し、前身頃2aの右側半分、右袖前部13aを1コース編成してcパターン編成が終了する。
cパターン編成では、前身頃2aと後身頃2bの編成コース数の比率が1対1となり、前身頃2aと前側の袖3a,13aの編成コース数の比率が1対2となり、後身頃2bと後側の袖3b,13bの編成コース数の比率が1対2となっている。
dパターン編成は、右袖後部13b、後身頃2b、左袖後部3bの順に後側を1コース編成した後、左袖前部3aを引き返し編みで2コース編成する。次に、左袖後部3b、後身頃2b、右袖後部13bの順に後側を1コース編成した後、右袖前部13aを引き返し編みで2コース編成する。次に、右袖後部13b、後身頃2b、左袖後部3bの順に後側を1コース編成した後、次に、左袖前部3aと前身頃2aの左側半分を1コース編成して引き返し、前身頃2aの左側半分と左袖前部3aを1コース編成する。次に、左袖後部3b、後身頃2b、右袖後部13bの順に後側を1コース編成した後、右袖前部13aと前身頃2aの右側半分を1コース編成して引き返し、前身頃2aの右側半分と右袖前部13aを1コース編成してdパターン編成が終了する。
dパターン編成では、前身頃2aと後身頃2bの編成コース数の比率が1対2となり、前身頃2aと前側の袖3a,13aの編成コース数の比率が1対2となり、後身頃2bと後側の袖3b,13bの編成コース数の比率が1対1となっている。
さらに、第4ステップでは、袖3(13)には、台形状編成部35の上方に連続編成される矩形状編成部36と、三角状編成部37とが編成される。そして、袖3,13は、肩ライン部接合部32を肩ライン部24と接合し、傾斜ライン部接合部33を傾斜ライン部26と接合していく。これらの接合終了時に肩ライン部接合部32と傾斜ライン部接合部33との間に襟ぐり形成部34が形成される。第4ステップでは、前身頃2aの肩落ち編成部25と、後身頃2bと、袖3,13の後部3b,13bについて、身頃と袖の接合側の編み目を減らしていく。
さらに、第4ステップでは、編成前に、肩ラインの長さに応じて袖3,13を肩ライン部24に接合するために必要な編成コース数が求められる。例えば、肩ライン部24のウェール数を20目とした場合、袖3,13をその倍の40コース編成する。
そして、前後の身頃における袖と身頃との接合開始から接合終了までの全編成コース数も前後の身頃の形状から求められる。例えば、第2図おいて、前身頃2aのF,fの位置からD,dまでのコース数(例えば64目)に袖3,13のT,Uまたはt,u間のウェール数(例えば14目)を加算した目数が全編成コース数(78目)となる。
そして、後身頃2bについては、この全編成コース数(78目)から第3ステップでそれまでに編成したコース数(例えば48目)を減じることにより、第4ステップで編成すべき残りの編成コース数(30目)を算出することができる。
第4ステップでは、この算出された身頃の残りの編成コース数(30目)と、袖の編成コース数(40目)に基づいて、袖3,13と後身頃2bとの接合開始位置および接合終了位置が一致し、かつ、袖3,13と後身頃2bの接合部分がたるまないように、袖3,13および後身頃2bの編成コース数の接合していく比率を4対3に決定する。そして、この比率で袖と身頃とを接合していく。
第4ステップでは、第3ステップにおいて、後身頃2bの編成コース数が前身頃2aに対して少ないので、第4ステップにおいて、後身頃2bの編成コース数を多く編成することにより、前身頃2aとの編み目の数の差を無くすことができる。
身頃2と袖3,13との接合が完了すると、後針床には後身頃2bの襟ぐり(第2図のK−k)の編目が係止される。矩形状編成部36を形成した場合には、前後の身頃2と袖3,13により襟ぐり4が形成される。また、矩形状編成部を形成せず、袖の中央まで第3ステップの編成方法で袖と身頃を接合した場合には、第3図のD,K,Sが接合されて、前後の身頃により襟ぐりが形成される。
前針床には、前身頃2aの襟ぐり(第2図のD−E−F−f−e−d)、左袖前部3aの矩形状編成部36の襟ぐり形成部34(第2図のT−U)、右袖前部13aの矩形状編成部36の襟ぐり形成部34(第2図のt−u)の編目が係止された状態となる。この状態で、ゴム編みの襟ぐりを編成していく。
本実施形態では、肩ライン部24は、肩落ち編成部25により肩落ちが形成されるように裾部に対して傾斜させるように形成したが、肩落ち編成部を編成しないで肩ライン部を身頃の裾部と平行させ、袖ぐり部の直線部分と直交するように形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
本発明は、横編機を用いて、一方の身頃にだぶつきが生じることのないセットインスリーブとラグランスリーブが混在した無縫製のニットウェアを編成することに適している。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
身頃と袖を具え、
前身頃または後身頃のどちらか一方は、袖ぐり部とニットウェア装着時の肩ラインに沿う肩ライン部とを有し、
他方の身頃は、襟ぐりから身頃脇部分まで傾斜して延びる傾斜ライン部を有し、
前身頃と後身頃とが無縫製で筒状に編成され、
袖が無縫製で筒状に編成され、
袖が前後身頃の袖ぐり部と肩ライン部と傾斜ライン部とに無縫製で接合され、袖の一部で襟ぐりが形成されており、
袖を身頃の袖ぐり部に接合させている間の前後の身頃の編成コース数については、傾斜ライン部側の身頃の編成コース数が肩ライン部側の身頃の編成コース数より少なく編成され、
袖を身頃の肩ライン部に接合させている間は、前後の身頃の編成コース数については、傾斜ライン部側の身頃の編成コース数が肩ライン部側の身頃の編成コース数より多く編成され、肩ライン部と接合される部分の袖が、肩ライン部の接合の際に引きつらない編成コース数で編成しながら接合されているとともに、袖と傾斜ライン部側の身頃の各編成コース数に対する接合コース比率が、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置を一致させたときに、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合部分にたるみが生じない比率となるように袖と身頃とが接合されていることを特徴とするニットウェア。
【請求項2】
袖における身頃と接合される部分の編成部は、
袖ぐり部と接合される袖ぐり部接合部と、
この袖ぐり部接合部に連続し、肩ライン部と接合される肩ライン部接合部と、
傾斜ライン部と接合される傾斜ライン部接合部と、
傾斜ライン部接合部の上端部と肩ライン部接合部の上端部とを結び、襟ぐりを形成する襟ぐり形成部とを有していることを特徴とする請求項1に記載のニットウェア。
【請求項3】
左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床の少なくとも一方が左右にラッキング可能で、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて形成される袖を有するニットウェアの編成方法であって、
前身頃または後身頃のどちらか一方に、袖ぐり部とニットウェア装着時の肩ラインに沿う肩ライン部とを形成し、他方の身頃に、襟ぐりから身頃脇部分まで傾斜して延びる傾斜ライン部を形成するために、以下のステップを含むことを特徴とする。
1) 身頃と袖の接合開始位置まで、前身頃と後身頃とを裾部から筒状に編成していき、袖も袖口から筒状に編成していく第1ステップ、
2) 身頃と袖との接合開始部から袖ぐり部の途中までは、前後の身頃および袖の編成コース数を同数で編成しながら袖を袖ぐり部と傾斜ライン部とに接合していく第2ステップ、
3) 第2ステップ以降の袖ぐり部から肩ライン部開始位置までは、肩ライン部を有する身頃の編成コース数を傾斜ライン部を有する身頃の編成コース数よりも多く編成するととともに、袖を編成しながら袖を袖ぐり部と傾斜ライン部とに接合していく第3ステップ、
4) 傾斜ライン部を有する身頃の編成を肩ライン部を有する身頃の編成よりも編成コース数を多くして編成し、肩ライン部と接合される部分の袖を、肩ライン部の接合の際に引きつらない編成コース数で編成しながら接合するとともに、袖と傾斜ライン部側の身頃の各編成コース数に対する接合コース比率を、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合開始位置および接合終了位置を一致させたときに、袖と傾斜ライン部側の身頃との接合部分にたるみが生じない比率として、袖を編成しながら袖を肩ライン部と傾斜ライン部とに接合していく第4ステップ。
【請求項4】
請求項3に記載のニットウェアの編成方法の前記第4ステップにおいて、
袖は、肩ライン部と接合される肩ライン部接合部と、傾斜ライン部と接合される傾斜ライン部接合部とを有し、これらの接合終了時に肩ライン部接合部と傾斜ライン部接合部との間に襟ぐりが形成されるように袖を編成していくことを特徴とする。

【国際公開番号】WO2004/072344
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504942(P2005−504942)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000968
【国際出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】