説明

ハイブリッド抗原結合分子の組成物及び製造方法並びにその使用

本開示は、少なくとも2本のポリペプチド鎖を含んでなるハイブリッド抗原結合分子であって、少なくとも1本のポリペプチド鎖が、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットのアミノ酸配列に結合された抗原結合成分を含んでなる、ハイブリッド抗原結合分子に関する。また、かかるハイブリッド抗原結合分子を、診断及び/又は治療用に作製及び使用する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド抗原結合分子の組成物及び製造方法並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞表面分子にリガンドが結合すると、多くの場合はその結果として、細胞内シグナルの伝達が引き起こされる。多くの場合、かかる結合によって2次メッセンジャーの複雑なカスケードが始動し、最終的には細胞に対して刺激性又は阻害性の結果がもたらされる。リガンド結合は、通常は遺伝子転写の調節を通じて、例えば細胞の活性化状態、増殖、又は分化等を改変することにより、細胞恒常性を調節することができる。
【0003】
多数の細胞受容体やその他の細胞結合分子及びリガンド(例えばサイトカインや他の成長因子)に対する抗体が開発されている。これらの抗体のうち、あるものはシグナル伝達を刺激し、別のものは同族のリガンドの結合により伝達されるシグナルを阻止又は阻害する。更に別の抗体は、特定の細胞集団に結合するので、例えば、検出可能な標識を用いた視覚化や、細胞毒性薬による死滅化等を目的として、かかる細胞をインビボで標的化又は同定するのに有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる抗体の診断又は治療用途での開発は、半減期、標的部位での有効量、毒性等の問題によってたびたび妨害されてきた。抗原結合分子の開発や、かかる抗原結合分子の性質を改良可能な作製方法の開発は、診断薬や治療薬の開発に大いに有効であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも部分的には、非免疫グロブリンポリペプチド(例えばヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン)を、1又は2以上の抗原結合成分(例えば、これらに限定される訳ではないが、相補性決定領域(CDR)、可変重鎖(VH)及び軽鎖(VL)、工学操作された抗原結合成分、例えば単鎖抗体(ScFv)及び/又はその断片等)に融合させることにより、対応する非ハイブリッド体に比べて優れた性質を有するハイブリッド抗原結合分子が作製可能であるという知見に基づく。
【0006】
対象となるハイブリッド抗原結合分子は、ヘテロ二量体ホルモンのα及びβ鎖、又はその一部を、抗原結合成分が結合するための足場として利用する。ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの例としては、Campbellらの米国特許第6,194,177号に記載の、hCGを用いたヒト絨毛性ハイブリッドタンパク質が挙げられる。本文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
概して、本発明は、ヘテロ二量体ホルモンのα及びβポリペプチド鎖又はその一部を含んでなるハイブリッドタンパク質であって、少なくとも1本のポリペプチド鎖が、少なくとも1つの抗原結合成分を更に含んでなるハイブリッドタンパク質に関する。本発明のハイブリッドタンパク質はアンタゴニスト活性を有するので、特定のアンタゴニスト活性が所望される種々の疾患の治療に有用である。
【0008】
例えば、具体的な実施態様によれば、ハイブリッドタンパク質は2本のポリペプチド鎖を含有し、少なくとも1本の鎖が、表皮増殖因子受容体(EGFR)に特異的に結合する1又は2以上の抗原結合成分を更に含んでなり、ハイブリッドタンパク質がEGFRアンタゴニスト活性を有する。
【0009】
別の実施態様によれば、ハイブリッドタンパク質は2本のポリペプチド鎖を含有し、少なくとも1本の鎖は、インスリン様増殖因子−1受容体(IGF−1R)に特異的に結合する1又は2以上の抗原結合成分を更に含んでなり、ハイブリッドタンパク質はIGF−1Rアンタゴニスト活性を有する。
【0010】
別の実施態様によれば、ハイブリッドタンパク質は2本のポリペプチド鎖を含有し、少なくとも1本の鎖は、血管内皮増殖因子(VEGF)に特異的に結合する1又は2以上の抗原結合成分を更に含んでなり、ハイブリッドタンパク質はVEGFアンタゴニスト活性を有する。
【0011】
ある実施態様によれば、ハイブリッドタンパク質は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片に結合した第1の抗原結合成分を含んでなる1本のポリペプチド鎖と、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの別のサブユニット又はその断片に結合した第2の抗原結合成分を含んでなる第2のポリペプチド鎖とを含んでなる。例えば、本明細書記載の一部の実施態様によれば、第1の抗原結合成分は、EGFR、IGF−1R、及びVEGFを含んでなる標的の非限定群の1つに特異的に結合し、第2の抗原結合成分は、EGFR、IGF−1R、及びVEGFを含んでなる非限定的な標的群のうちの1つに特異的に結合する。ここで、第1及び第2の抗原結合成分が結合する標的は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0012】
抗原結合成分は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのアミノ末端又はカルボキシ末端のうち何れかに結合してもよく、両方の末端に結合してもよい。
【0013】
本発明のハイブリッドタンパク質は、1、2、3、又は4つの抗原結合成分を含んでなり、各々同一の標的或いは異なる標的に対する結合特異性を有する。
【0014】
本発明の抗原結合成分は、ペプチドリンカーを介してヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンに結合してもよい。一実施態様によれば、ペプチドリンカーは、切断可能なリンカーである。一実施態様によれば、切断可能なリンカーは、酵素的に切断可能である。別の実施態様によれば、リンカーは、IgGヒンジ領域又はその断片である。
【0015】
ある実施態様によれば、抗原結合成分は、少なくとも1、2、3又はそれ以上のCDRを含んでなる。本発明の抗原結合成分を含んでなるCDRは、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンに直接結合していてもよく、ペプチドリンカーを介して結合していてもよい。抗原結合成分を含んでなる各CDRは、互いに直接結合していてもよく、ペプチドリンカーを介して互いに結合していてもよい。
【0016】
ある実施態様によれば、抗原結合成分は、VLドメインに任意結合した1又は2以上のVHドメインを含んでなる。ある実施態様によれば、本発明のハイブリッドタンパク質は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの1本のポリペプチド鎖のアミノ末端に結合したVH領域と、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの他のポリペプチド鎖のアミノ末端に結合したVLドメインとを含んでなる。別の実施態様によれば、VH及びVLドメインは、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン鎖のカルボキシ末端に結合する。別の実施態様によれば、VH及びVLドメインは両方の末端に結合し、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの1本の鎖のアミノ末端に1つのVHドメインが結合し、カルボキシ末端に1つのVHドメインが結合し、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの他のポリペプチド鎖のアミノ末端に1つのVLドメインが結合し、カルボキシ末端に別のVLVLドメインが結合する。別の実施態様によれば、VHドメインはVLドメインに直接結合していてもよく、ペプチドリンカーを介して結合していてもよい。別の実施態様によれば、ScFv抗体は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの一方の鎖に結合していても、両方の鎖に結合していてもよく、また、アミノ末端、カルボキシ末端、又は両末端の何れに結合してもよい。
【0017】
ある実施態様によれば、本明細書記載のアンタゴニスト活性を有するハイブリッドタンパク質は少なくとも2本のポリペプチド鎖を含んでなり、各鎖は(a)抗原結合成分のアミノ酸配列と、(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片のアミノ酸配列とを含んでなり、抗原結合成分は特異的な標的に結合し、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片は、ホルモンの別のサブユニット又はその断片と二量体を形成し得る。ある実施態様によれば、ハイブリッドタンパク質は、抗原結合成分のアミノ酸配列と、リンカーペプチドにより結合したヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットのアミノ酸配列とを含んでなる。本発明で使用される抗原結合成分の特異的な標的の例としては、これらに限定されるものではないが、EGFR、IGF−1R、及びVEGFが挙げられる。本発明で使用されるタンパク質性ヘテロ二量体ホルモンとしては、これらに限定されるものではないが、FSH、インヒビン、TSH、hCG、及びLHが挙げられる。
【0018】
ある実施態様によれば、ハイブリッドタンパク質中のヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットの1つが、ホルモンの生物活性を低減又は消失させる1又は2以上の改変を含んでなるが、改変サブユニットがホルモンの他のサブユニットと二量体化する能力は保存される。ある実施態様によれば、改変サブユニットは、アミノ酸88〜92の欠失を含んでなるhCGのαサブユニットであり、これによって、hCGは生物学的に不活性となるが、αサブユニットがhCGのβサブユニットと二量体化する能力は保存される。別の実施態様によれば、改変サブユニットは、アミノ酸位置26位のシステイン残基をアラニンに置換する変異を含んでなるαサブユニットである。別の実施態様によれば、改変サブユニットは、アミノ酸88〜92の欠失と、アミノ酸位置26位のシステイン残基のアラニンへの変異とを含んでなるαサブユニットである。別の実施態様によれば、改変サブユニットは、アミノ酸104〜145の欠失を含んでなるβサブユニットである。本発明のハイブリッドタンパク質は、a)改変αサブユニットと未改変βサブユニット、b)改変αサブユニットと改変βサブユニット、c)未改変αサブユニットと改変βサブユニット、又は、d)未改変αサブユニットと未改変βサブユニットの何れを含んでいてもよい。
【0019】
本発明はまた、融合タンパク質をコード化する核酸分子、及びかかる核酸分子にコード化される融合タンパク質を含んでなる。ある実施態様によれば、融合タンパク質をコード化する単離核酸分子は、(a)抗原結合成分をコード化する第1のヌクレオチド配列と、(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片をコード化する第2のヌクレオチド配列とを含んでなり、前記サブユニット又はその断片はヘテロ二量体性ホルモンの別のサブユニットとヘテロ二量体を形成する能力を有するとともに、前記核酸分子がDNA分子である。第1及び第2のヌクレオチド配列は、互いに直接結合していてもよく、或いは第1及び第2のヌクレオチド配列の間に存在する、ペプチドリンカーをコード化するヌクレオチド配列を介して結合していてもよい。
【0020】
ある実施態様によれば、融合タンパク質は、(a)抗原結合成分の第1のアミノ酸配列と(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片の第2のアミノ酸配列を含んでなり、前記サブユニット又はその断片はホルモンの別のサブユニットとヘテロ二量体を形成する能力を有する。本発明で使用される抗原結合成分の特異的な標的の例としては、これらに限定されるものではないが、EGFR、IGF−1R、及びVEGFが挙げられる。本発明で使用されるタンパク質性ヘテロ二量体ホルモンの例としては、これらに限定されるものではないが、FSH、インヒビン、TSH、hCG、及びLHが挙げられる。
【0021】
本発明の融合タンパク質としては、これらに限定されるものではないが、(a)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片に結合した、EGFRに特異的に結合する抗原結合成分と、(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片に結合した、IGF−1Rに特異的に結合する抗原結合成分と、(c)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片に結合した、VEGFに特異的に結合する抗原結合成分とを含んでなる融合タンパク質が挙げられる。
【0022】
ある実施態様によれば、本発明の融合タンパク質は、抗原結合成分とヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットとの間に存在するリンカーペプチドを含んでなる。リンカーペプチドは、例えばトロンビン切断部位を含有し、酵素的に切断することが可能である。かかるリンカーのアミノ酸配列の限定的でない例としては、AA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCが挙げられる。
【0023】
また、融合タンパク質は、分泌されるものであってもよい。
【0024】
ある実施態様によれば、アンタゴニスト活性を有するハイブリッドタンパク質は、(a)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片のアミノ酸配列に結合した、抗原結合成分のアミノ酸配列を含んでなる第1の融合タンパク質と、(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片のアミノ酸配列に結合した、抗原結合成分のアミノ酸配列を含んでなる第2の融合タンパク質とを含んでなり、前記抗原結合成分は標的に特異的に結合可能であり、且つ、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットは互いに二量体を形成する能力を有する。
【0025】
本発明で使用される抗原結合成分の特異的な標的の例としては、これらに限定されるものではないが、EGFR、IGF−1R、及びVEGFが挙げられる。本発明で使用されるタンパク質性ヘテロ二量体ホルモンの例としては、これらに限定されるものではないが、FSH、インヒビン、TSH、hCG、及びLHが挙げられる。
【0026】
更に本発明は、本明細書記載の融合タンパク質又はハイブリッドタンパク質をコード化する核酸分子を含んでなる発現ベクターを含んでなる。更に本発明は、本明細書記載の1又は2以上の発現ベクターを含んでなる宿主細胞を含んでなる。宿主細胞は、ハイブリッドタンパク質を形成するポリペプチド鎖又は融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列を各々含んでなる2つの発現ベクターで同時にトランスフェクトしてもよく、これら2つの発現ベクターで連続的にトランスフェクトしてもよい。或いは宿主細胞は、ハイブリッドタンパク質を形成する2つの融合タンパク質又はポリペプチド鎖をコード化するヌクレオチド配列を含んでなる単一の発現ベクターを用いてトランスフェクトしてもよい。
【0027】
更に本発明は、サイトカイン活性に対する拮抗作用が所望される疾患を治療する方法を含んでなる。本発明の方法は、1又は2以上の標的(例えば、これらに限定されるものではないが、EGFR、IGF−1R、及びVEGF等)に対する拮抗作用によって治療期可能な疾患を含んでなる。
【0028】
EGFRの拮抗により治療できる疾患の例としては、これらに限定されるものではないが、癌及び他の細胞増殖性障害が挙げられる。
【0029】
IGF−1Rの拮抗により治療できる疾患の例としては、これらに限定されるものではないが、癌及び他の細胞増殖性障害、並びに巨人症や先端巨大症が挙げられる。
【0030】
VEGFの拮抗により治療できる疾患の例としては、これらに限定されるものではないが、癌及び他の細胞増殖性障害、並びに異常な又は無制限な血管形成(例えば糖尿病性網膜症)が挙げられる。
【0031】
本発明は、本明細書記載の1又は2以上のハイブリッドタンパク質の有効量を、医薬的に許容され得る担体との組み合わせで含んでなる医薬組成物を含んでなる。
【0032】
本発明は、本明細書記載のハイブリッドタンパク質を製造する方法を含んでなる。例えば、ある実施態様によれば、ハイブリッドタンパク質を製造する方法は、(a)細胞を2つのベクター(各ベクターは、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片に結合した抗原結合成分又はその断片のアミノ酸配列を含んでなる融合タンパク質をコード化する核酸分子を含んでなる)でトランスフェクトする工程と、(b)この細胞を適切な条件下で培養して、ハイブリッドタンパク質を産生する工程とを含んでなる。かかる方法は更に、ハイブリッドタンパク質のアンタゴニスト活性を試験する工程を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の少なくとも一部は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン等の非免疫グロブリンポリペプチドを用いることにより、治療特性が改善されたハイブリッド抗原結合分子を作製できるという知見に基づくものである。
【0034】
ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの一例として、hCGが挙げられる。hCGは妊娠マーカーとして重要な役割を担っており、このタンパク質のレベルを定量するための試薬や、このタンパク質をインビトロやインビボで研究するための試薬が、多数開発されている。hCGの研究には突然変異誘発が広く用いられているが、hCGのサブユニットの一方又は双方における幾つかの改変によって、ホルモンの生物活性が低減又は除去されるものの、ヘテロ二量体を形成する能力は保存されることが報告されている。更に、例えばαサブユニットのアミノ末端やカルボキシ末端において、軽微な挿入(最大30アミノ酸)が許容されることも証明されている。更に、αサブユニットをβサブユニットのカルボキシ末端に融合しても、ヘテロ二量体形成には殆ど影響が無い。従って、hCGや類似のヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンは、本明細書記載のハイブリッド抗原結合分子等の治療用ハイブリッドタンパク質を作製するための足場として、魅力的な候補である。
【0035】
本発明のハイブリッド抗原結合分子は、疾患又は障害の診断又は治療に使用した場合、非ハイブリッド体に比べて、より優れた効力を示す。例えば、かかるハイブリッド分子は半減期が延長されているので、非ハイブリッド抗原結合分子と比べて患者に投与する用量が少量で済むため、副作用を低減することが可能である。本発明のハイブリッド抗原結合分子が示す他の利点として、製造が容易であることが挙げられる。
【0036】
I.定義
まず、本開示の理解をより容易にするために、幾つかの語の定義を行なう。その他の定義は本開示を通じて提供される。
【0037】
「免疫グロブリン」及び「抗体」という語(本明細書では同義として使用される)は、抗原に特異的に結合する能力を有する、基本的な4ポリペプチド鎖構造を有する抗原結合ポリペプチドであって、2つの重鎖と2つの軽鎖からなり、これらの鎖が鎖内ジスルフィド結合等により安定化されたものを意味する。重鎖及び軽鎖は折り畳まれてドメインを形成する。「ドメイン」という語は、ポリペプチド(例えば重鎖又は軽鎖ポリペプチド)の球状領域であって、βプリーツシート及び/又は鎖内ジスルフィド結合等によって安定化された複数のペプチドループを含んでなる(例えば3〜4個のペプチドループを含んでなる)ものを意味する。抗体は「定常」及び「可変」領域の双方を含んでなる。軽鎖上の「定常」領域は「軽鎖定常領域」又は「CL」と呼ばれ、重鎖上の「定常」領域は「重鎖定常領域」又は「CH」と呼ばれる。軽鎖上の「可変」領域は「軽鎖可変領域」又は「VL」と呼ばれ、重鎖上の「可変」領域は「重鎖可変領域」又は「VH」と呼ばれる。本明細書で使用される「抗体」という語には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば2重特異的抗体)、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体が含まれる。抗体の例としては、例えばキメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、トランスジェニック動物により産生される抗体、合成抗体、工学操作抗体、単鎖抗体、修飾Fc領域を有する抗体、ラクダ様抗体がある。
【0038】
「領域」という語はポリペプチドの一部又は部分を意味し、例えば定常又は可変領域や、当該領域が更に分離された一部又は部分を含んでなる。例えば、軽鎖及び重鎖可変領域は、3つの「相補性決定領域」又は「CDR」と、非CDR「フレームワーク領域」又は「FR」とを含んでなる。
【0039】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」は、特定の抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位を1種のみ含有する抗体分子の集団である。
【0040】
「ポリクローナル抗体」は異種抗体の混合物である。一般にポリクローナル抗体は2つ以上の抗原エピトープを認識する。
【0041】
「ヒト化抗体」という語は、実質的にヒト抗体鎖(アクセプタ免疫グロブリン又は抗体と呼ぶ)由来の可変領域フレームワーク領域を含んでなる少なくとも1本の鎖と、実質的に非ヒト抗体(ドナー免疫グロブリン又は抗体と呼ぶ)由来の少なくとも1つの相補性決定領域とを含んでなる抗体を意味する。例えば、Queen等のProc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989)、米国特許第5,530,101号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,693,762号、Selick等の国際公開第90/07861号、及び、Winter等の米国特許第5,225,53号を参照(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。定常領域が存在する場合、これも実質的に、或いは完全に、ヒト免疫グロブリン由来である。
【0042】
本明細書で使用される「抗原結合成分」又は「抗原結合部分」という語は、抗原に特異的に結合することが可能なアミノ酸配列を意味する。好適な実施態様によれば、抗原結合成分は(少なくとも部分的に)、抗体可変領域又はそのCDRの少なくとも1つをコード化するヌクレオチド配列によってコード化される。ある実施態様によれば、抗原結合成分は、抗原結合を与えるのに充分な抗体可変領域を含んでなる抗体の抗原結合部分である。抗原結合部分は、組換えDNA技術によって作製してもよく、完全な抗体の酵素的又は化学的切断によって作製してもよい。抗体の抗原結合部分は、少なくとも1つの抗原結合部位を含んでなる抗体断片や工学操作分子、例えば抗体軽鎖(VL)、抗体重鎖(VH)、工学操作抗体、例えば単鎖抗体(ScFv)を含み、また、1又は2以上のCDRを含む。「抗原結合部分」という語は通常、免疫グロブリン又は抗体のポリペプチド断片であって、抗原に結合するもの、或いは、無傷抗体(即ち、前記ポリペプチド断片の由来源となる無傷抗体)と抗原結合(例えば特異的結合)において競合するものを意味する。
【0043】
本明細書において「工学操作抗原結合成分」又は「工学操作抗体」は、人工的に作製された形態の抗体であって、抗体の抗原結合部分を含んでなるものを意味する。工学操作抗原結合成分の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば多重特異的抗体、ScFv分子(単鎖抗体)、ScFv二量体(ダイアボディ)、ScFv三量体(トリアボディ)、ScFv四量体(テトラボディ)、2つのCドメインにより結合された2つのScFvモジュールを含んでなるミニボディ、Fab二量体、Fab三量体、及びドメイン抗体(dAb)が挙げられる。かかる分子は本技術分野では周知であり、かかる分子を作製する方法も公知である。
【0044】
本発明の「ハイブリッド抗原結合分子」は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン又はその断片のポリペプチド鎖を少なくとも2本含んでなる。ここで、少なくとも1本のポリペプチド鎖が少なくとも1つの抗原結合成分を含んでなるとともに、これらのポリペプチド鎖がヘテロ二量体を形成する。本明細書で使用される「ハイブリッド抗原結合分子」という語は、二量体化してヘテロ二量体を形成し得るものを指す。ある実施態様によれば、2本のポリペプチド鎖の二量体化は、2本のポリペプチド鎖の間(例えばhCG等のヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのαサブユニットとβサブユニットとの間)の共有結合相互作用を用いて行なわれる。本発明のハイブリッド抗原結合分子は、少なくとも1つの抗原結合部位を含んでなる。
【0045】
「抗原」は、抗体が特異的に結合する成分である。
【0046】
「エピトープ」及び「抗原決定基」という語は、抗原結合分子(例えば抗体)が特異的に結合する抗原上の部位を意味する。エピトープは隣接するアミノ酸から、或いはポリペプチドの3次折り畳みにより並置された非隣接アミノ酸から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されたエピトープは、変性溶媒に暴露されても通常は保持されるが、3次折り畳みにより形成されたエピトープは、変性溶媒で処理すると通常は消失する。エピトープは通常、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のアミノ酸を、独自の空間的立体配置で含んでなる。
【0047】
同じエピトープを認識する抗体は、ある抗体が別の抗体の標的抗原への結合を阻止する能力を示す単純なイムノアッセイ、即ち、競合的結合アッセイにより同定することができる。競合的結合を測定するアッセイでは、試験対象の免疫グロブリンによって、基準抗体の共通抗原(例えばVEGF、EGFR、又はIGF−1R)への特異的結合を阻害させる。極めて多くの種類の競合的結合アッセイが公知であり、例えば固相直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素免疫定量法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242 (1983));固相直接ビオチン−アビジンEIA (Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614 (1986)参照);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)参照);I−125標識物を使用する固相直接標識RIA(Morel et al., Mol. Immunol. 25(1):7 (1988)参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546 (1990));及び直接標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77 (1990))。通常、かかるアッセイは、固相に結合した精製抗原、これらの何れかを有する細胞、非標識試験免疫グロブリン、及び標識参照免疫グロブリンの使用を含有する。競合的阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固相又は細胞に結合した標識物の量を定量することにより測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在させる。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、参照抗体の共通抗原への特異的結合は、少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、又はそれ以上阻害される。
【0048】
本明細書で使用される「結合する」という語は、第1の結合分子による第2の分子の認識又は接着を意味する。かかる結合は「実質的に特異的」又は「選択的」であり、第1の分子は試料中の異なる分子には実質的に結合しない(例えば、プロテインAはヒトIgG1の定常領域には「結合する」が、ニワトリIgGには結合しない)。特異的又は選択的結合は、かかる結合の測定のために本技術分野で認められた任意の手段に従って測定することができる。特異的結合の測定は、スキャチャード(Scatchard)分析及び/又は競合的結合アッセイにより行なうことが好ましい。他分子への結合のレベルは、バックグランドのレベルと比べて有意に高くないことが好ましい。
【0049】
実質的な「特異的結合」又は「選択的結合」を示す抗原結合分子は、抗原又は好適なエピトープに対して感知し得る親和性を有することが好ましく、また、有意な交差反応性を示さないことが好ましい。「感知し得る親和性」としては、例えば、少なくとも106、107、108、109-1、又は10-10-1の親和性を有する結合が挙げられる。107-1超(好ましくは108-1超)の親和性がより好ましい。本明細書記載の値の間に存在する値も、本発明の範囲内にあるものとする。即ち、好適な結合親和性は、結合親和性の範囲で示される。例えば、106〜1010-1、好ましくは107〜1010-1、更に好ましくは108〜1010-1の範囲である。
【0050】
本発明の抗原結合分子は、単一の抗原結合成分を含んでいてもよく、複数の抗原結合成分を含んでいてもよい。例えば、天然に存在する抗体は2価であるが、本発明のハイブリッド抗原結合分子は1価、2価、3価、4価等の何れでもよい。これらの抗原結合成分が有する特異性は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、天然に存在する抗体は、同一の結合部位を2つ有するため、単一特異的である。「多重特異的」抗体(例えば「2重特異的」又は「2官能性抗体」)は、2以上の抗原を認識する複数の結合部位を含んでなる人工抗体である。
【0051】
本明細書で使用される「融合タンパク質」という語は、フレーム内で互いに結合した2以上のポリペプチドを含んでなる分子を意味する。2以上のポリペプチドは、ペプチドリンカーを介して結合していてもよく、直接結合していてもよい。
【0052】
本明細書で使用される「ペプチドリンカー」は、抗原結合成分とヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンとの連結に使用される、1又は2以上のアミノ酸を指す。ある実施態様によれば、リンカーペプチドは、約2から15のアミノ酸の列を含んでなり、これらのアミノ酸は、例えば、ある実施形態によればグリシン及び/又はセリンである。別の実施態様によれば、本発明のリンカーペプチドは、配列SerCysAlaGlyAlaGlyを含んでなる。他のリンカー配列の例としては、2以上のアラニン残基を含んでなる配列、又は2以上のアラニン残基からなる配列が挙げられる。本発明での使用に適した他のペプチドリンカーは、本技術分野では公知である。かかるリンカーのアミノ酸配列の非限定的な例としては、AA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCが挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される「細胞結合分子」という語は、細胞の表面で発現される分子を意味する。細胞結合分子の例としては、これらに限定されるものではないが、細胞表面抗原(例えば、細胞表面受容体及び癌細胞特異的抗原等)が挙げられる。細胞結合分子の具体例としては、これらに限定されるものではないが、表皮増殖因子受容体(EGFR)及びインスリン様増殖因子1受容体(IGF−1R)が挙げられる。
【0054】
「可溶性分子」という語は、循環流中で可溶型で存在する分子(例えば、細胞に結合している分子ではなく、むしろ細胞により分泌される分子)を含んでなる。可溶性分子の例としては、成長因子が挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される「ヘテロ二量体」又は「ヘテロ二量体形成」という語は、共有結合又は非共有結合相互作用を介した、2以上の異なるポリペプチドの安定な対合を意味する。共有結合相互作用の例としては、ジスルフィド結合が挙げられる。例えば、本明細書記載のハイブリッド結合分子は2本のポリペプチド鎖を含んでなり、第1の鎖はヘテロ二量体ホルモンのα鎖を含んでなり、第2の鎖はヘテロ二量体ホルモンのβ鎖を含んでなる。
【0056】
「有効量」及び「有効投与量」という語は、所望の作用を達成し、或いは少なくとも部分的に達成するのに充分な量として定義される。「治療的有効投与量」及び「治療的有効量」は、疾患に既に罹患している患者の当該疾患又はその合併症を治癒し、或いは少なくとも部分的に抑止するのに充分な量を意味する。この用途に有効な量は、感染の重症度や患者自身の全体的な免疫系の状態に依存する。治療的有効量は対象や、治療される症状、対象の体重及び年齢、症状の重症度、投与方法等に依存して変化するが、当業者であれば容易に決定することができる。投与量範囲は、本発明のハイブリッド抗原結合分子が、例えば約1ng〜約10,000mg、約5ng〜約9,500mg、約10ng〜約9,000mg、約20ng〜約8,500mg、約30ng〜約7,500mg、約40ng〜約7,000mg、約50ng〜約6,500mg、約100ng〜約6,000mg、約200ng〜約5,500mg、約300ng〜約5,000mg、約400ng〜約4,500mg、約500ng〜約4,000mg、約1μg〜約3,500mg、約5μg〜約3,000mg、約10μg〜約2,600mg、約20μg〜約2,575mg、約30μg〜約2,550mg、約40μg〜約2,500mg、約50μg〜約2,475mg、約100μg〜約2,450mg、約200μg〜約2,425mg、約300μg〜約2,000mg、約400μg〜約1,175mg、約500μg〜約1,150mg、約0.5mg〜約1,125mg、約1mg〜約1,100mg、約1.25mg〜約1,075mg、約1.5mg〜約1,050mg、約2.0mg〜約1,025mg、約2.5mg〜約1,000mg、約3.0mg〜約975mg、約3.5mg〜約950mg、約4.0mg〜約925mg、約4.5mg〜約900mg、約5mg〜約875mg、約10mg〜約850mg、約20mg〜約825mg、約30mg〜約800mg、約40mg〜約775mg、約50mg〜約750mg、約100mg〜約725mg、約200mg〜約700mg、約300mg〜約675mg、約400mg〜約650mg、約500mg、又は約525mg〜約625mgである。
【0057】
「患者」という語には、予防的又は治療的処置を受けるヒト及び他の哺乳類の対象が含まれる。
【0058】
本明細書において「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という語は、刺激又は阻害受容体の活性の拮抗に基づく、疾患又は障害に関連する少なくとも1つの症状の(部分的な、或いは完全な)低下を意味する。例えば、VEGF、EGFR、又はIGF−1Rの拮抗作用を、細胞の増殖(例えば癌)に関連する疾患の治療に使用することができる。
【0059】
本明細書で使用される「医薬的に許容され得る担体」という語は、医薬製剤中の他の成分と適合性がある化合物であって、治療的有効量で投与した場合に対象に無害な化合物を含んでなる。
【0060】
本明細書で使用される「医薬的に許容され得る塩」という語は、対象により生理学的に許容される塩を意味する。かかる塩は通常、無機酸及び/又は有機酸から調製される。適当な無機酸の例としては、これらに限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、ヨー化水素酸、硝酸、硫酸、及びリン酸が挙げられる。有機酸としては、脂肪族酸、芳香族酸、カルボン酸、及び/又はスルホン酸が挙げられる。適当な有機酸としては、これらに限定されるものではないが、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、ムチン酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、パモン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などが挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される「アゴニスト」という語は、細胞の受容体に結合し、細胞による応答を誘発する化合物を意味する。アゴニストには、その受容体の天然リガンドの作用を模倣したものが多い。アゴニストは通常、アンタゴニストとは反対の作用を生じる。
【0062】
本明細書で使用される「アンタゴニスト」という語は、天然リガンドと競合してその受容体に結合するものの、その受容体を介したシグナル伝達を行なわず、又はシグナル伝達のレベルを天然リガンドよりも低減する化合物、或いは、リガンドに結合してリガンドがその受容体に結合するのを妨害する化合物を意味する。
【0063】
リガンドは、受容体が結合する天然リガンドでもよく、天然リガンドの機能類似体分子でもよい。機能類似体は、リガンドの構造を修飾したものでもよいが、全く無関係の分子であって、適切なリガンド結合決定基と相互作用する分子形を有するものでもよい。
【0064】
本明細書で使用される「アゴニスト活性」という語は、受容体を介してシグナルを伝達する化合物であって、その受容体への同族のリガンドの結合を模倣する化合物の活性を意味する。
【0065】
本明細書で使用される「アンタゴニスト活性」という語は、受容体のアンタゴニストとして、或いは受容体に結合するリガンドとして作用する化合物の活性を意味する。ある実施態様によれば、ヘテロ二量体性タンパク質様ホルモンからなる足場の少なくとも1本のポリペプチド鎖に結合した、少なくとも1つの抗原結合成分を含んでなる本発明のハイブリッド抗原結合分子は、アンタゴニスト活性を有する。かかるアンタゴニスト活性には、活性化受容体又は阻害性受容体の機能の拮抗が含まれる。かかるハイブリッド抗原結合分子は、VEGFアンタゴニスト活性、EGFRアンタゴニスト活性、及びIGF−1Rアンタゴニスト活性のうち、1又は2以上を有することが好ましい。
【0066】
本明細書で使用される「VEGFアンタゴニスト活性」という語は、当業者に公知の1又は2以上のアッセイにより測定される、ある分子(例えば、本明細書記載のVEGFハイブリッド抗原結合分子)がVEGFの正常な機能を妨害する能力を意味する。例えば、ある実施態様によれば、VEGFアンタゴニスト活性を有するハイブリッド抗原結合分子は、内皮細胞の増殖を阻害する。別の実施態様によれば、VEGFアンタゴニスト活性を有するハイブリッド抗原結合分子は、腫瘍細胞の増殖を阻害する。更に別の実施態様によれば、VEGFアンタゴニスト活性を有するハイブリッド抗原結合分子は、血管形成を阻害する。
【0067】
本明細書で使用される「EGFRアンタゴニスト活性」という語は、当業者に公知の1又は2以上のアッセイにより測定される、ある分子(例えば、本明細書記載のEGFRハイブリッド抗原結合分子)がEGFRの正常な機能を妨害する能力を意味する。例えば、ある実施態様によれば、EGFRアンタゴニスト活性を有するハイブリッド抗原結合分子は、腫瘍増殖を阻害する。
【0068】
本明細書で使用される「IGF−1Rアンタゴニスト活性」という語は、当業者に公知の1又は2以上のアッセイにより測定される、ある分子(例えば、本明細書記載のIGF−1Rハイブリッド抗原結合分子)がIGF−1Rの正常な機能を妨害する能力を意味する。例えば、ある実施態様によれば、IGF−1Rアンタゴニスト活性を有するハイブリッド抗原結合分子は、腫瘍増殖を阻害する。別の実施態様によれば、IGF−1Rアンタゴニスト活性を有するハイブリッド抗原結合分子は、先端巨大症や巨人症で見られる異常な細胞増殖を低減する。
【0069】
II.抗原結合成分
本発明のハイブリッド抗原結合分子は、少なくとも1つの抗原結合成分(例えば抗体の抗原結合部分、例えば1又は2以上のCDR、VH及びVL)又は工学操作された抗原結合成分(例えばScFv及び/又はその断片)を含んでなる。
【0070】
A.抗体の抗原結合部分
ある実施態様によれば、抗原結合成分は、抗体の抗原結合部分である。抗体の抗原結合部分は抗体の可変領域内に含有され、抗体に抗原特異性を付与する抗体の部分であり、例えば単独の又は互いに組合せたCDR、又はVH及び/又はVLである。
【0071】
一般的に、基本的な抗体の構造単位は、サブユニットの四量体を含んでなることが知られている。各四量体は、同一の2対のポリペプチド二量体からなり、各対は1本の「軽鎖」(約25kDa)と1本の「重鎖」(約50〜70kda)とを有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する、約100〜110以上のアミノ酸からなる可変領域を含んでなる。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を規定する。
【0072】
軽鎖はカッパ又はラムダに分類され、長さは約230残基である。重鎖はガンマ(γ)、ミュー(μ)、α(α)、デルタ(δ)、又はイプシロン(ε)に分類され、約450〜600残基の長さであり、それぞれIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEという抗体イソタイプを規定する。重鎖及び軽鎖は何れも折り畳まれてドメインを形成する。無傷の軽鎖は、例えば2つのドメイン(VL及びCL)を有し、無傷の重鎖は、例えば4つ又は5つのドメイン(VH、CH1、CH2、及びCH3)を有する。
【0073】
軽鎖及び重鎖内において、可変領域と定常領域とは、約12以上のアミノ酸からなる「J」領域により連結されている。また、重鎖は約10以上のアミノ酸からなる「D」領域を含んでなる。(総説については、Fundamental Immunology (Paul, W., ed., 第2版、Raven Press, N.Y. (1989)、第7章を参照のこと。本文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)
【0074】
各軽鎖/重鎖対の可変領域は抗原結合部位を形成する。即ち、無傷の抗体は2つの結合部位を有する。2官能性又は2重特異的抗体を除けば、2つの結合部位は同一である。何れの鎖もその大まかな構造は同じであり、比較的保存性の高いフレームワーク領域(FR)が、超可変領域(別名、相補性決定領域又はCDR)によって連結されてなる。天然鎖又は組換え作製した鎖は、発現時にはリーダー配列を有し、細胞プロセシング中にこのリーダー配列が除去されて成熟鎖が作製される。また、所望の特定の鎖の分泌増強又はプロセシング改変等の目的で、非天然リーダー配列を有する成熟鎖を組換え法により作製することもできる。
【0075】
各対の2本の成熟鎖のCDRは、フレームワーク領域によって整列される。軽鎖及び重鎖は何れも、N末端からC末端にかけて、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含んでなる。本技術分野では「FR4」は、可変重鎖のD/J領域及び可変軽鎖のJ領域とも呼ばれる。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat, Sequences of Polypeptides of Immunological Interest(米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)、Bethesda、MD、1987及び1991)による。Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901 (1987); Nature 342:878 (1989); 及び J. Mol. Biol. 186:651 (1989) は別の構造の定義を提案している。
【0076】
抗体は、細胞で産生し、精製してもよく、新規合成してもよい。
【0077】
一実施態様によれば、本発明のハイブリッド抗原結合分子は、ヒト抗体の抗原結合成分を含んでなる。別の実施態様によれば、本発明の抗原結合分子は、非ヒト抗体由来の抗原結合成分を含んでなる。一実施態様によれば、本技術分野で周知の方法を用いてキメラ抗体、ヒト化抗体、又は脱免疫抗体を作製する等の手法により、非ヒト抗体を改変してその免疫原性を低減する。
【0078】
B.工学操作抗原結合成分
一実施態様によれば、本発明の抗原結合成分は、工学操作された結合成分である。本明細書で使用される「工学操作結合成分」という語には、改変によって得られる、天然に存在しない合成型の抗体が含まれる。例としてはミニボディ、即ち、2以上の異なる抗原又は単一抗原の異なるエピトープに結合するように改変された多重特異型(例えば、2重特異的、3重特異的等)の抗体が挙げられる。更に、「工学操作結合成分」という語には、多価抗体(例えば3価、4価等、同じ抗原の3又は4つのコピーに結合する抗体)が含まれる。工学操作結合成分の例としては、scFv分子;ダイアボディ;scFv分子に結合された重鎖分子等が挙げられる。他の工学操作型の例としては、ジスルフィド結合scFv、タンデムscFv、dsFs−dsFv’、scFv−CL、scFv−CL/CH1、scFv−CH3−scFv−Fc、Fab−scFv、Fab−ScFv2、F(ab’)2−scFv、IgG−scFv、及びdAbが挙げられる。ドメイン抗体(□abs)は、既知の中では最小の抗原結合抗体断片である。□absは、免疫グロブリンの可変軽鎖又は可変重鎖から得られる。かかる抗体分子の構築法は、本技術分野では公知である。例えば、Antibody Engineering(Kontermann and Dubel, Springer lab manual, 2001)及び米国特許第6,696,245号を参照のこと。これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
かかる工学操作分子の作製法は、本技術分野では公知である。例えば、ScFv分子は本技術分野では公知であり、例えば米国特許第5,892,019号に記載されている。ScFv断片では、重鎖の可変ドメインが軽鎖の可変ドメインに、短いペプチドリンカーを介して共有結合している。このペプチドリンカーは、例えば組換えDNA技術により導入可能である。scFv断片は標準法によって精製及び検出することができる。かかる手法の例としては、N末端又はC末端に短いマーカー配列を追加する手法が挙げられる。
【0080】
一実施態様によれば、本発明に係る「工学操作結合成分」という語には、所望の生化学的特性を提供するべく、1又は2以上の定常領域ドメインの少なくとも一断片に欠失又は改変を導入した、免疫グロブリン、抗体、又は免疫反応性断片、又はこれらの組み換え体が含まれる。
【0081】
ダイアボディは、鎖のVHドメインとVLドメインとが互いに結合するのを防ぐために、重鎖の可変ドメインと軽鎖の可変ドメインとの間に非常に短いリンカーを配することにより、作製することができる。これによって二量体分子が形成されるとともに、2つの異なる鎖のVH及びVLドメインによって双頭分子が形成されることになる。2つの異なる非結合抗体特異性(例えばA及びB)を用い、同一細胞中でVHA−VLB及びVHB−VLAの順で発現させることにより、2重特異的ダイアボディを形成することができる。2つのVH−VL断片が追加のペプチドリンカー(1本鎖ダイアボディ、scDb)により共有結合される場合には、これらの二量体ダイアボディ分子を、モノマー分子を介して産生することも可能である。これらの二量体性2重特異的抗体は、各特異性について2価を有する。2重特異的ダイアボディ又は抗体を作製することで、価数に加えて安定性を上昇させることができ、ひいては治療可能性の向上が可能となる。
【0082】
C.抗原結合成分の特異性
細胞結合性分子又は可溶性分子(又はこれらをコード化する核酸分子)に結合する抗原結合成分を用いれば、非ハイブリッド体に比べて幾つかの利点を有するハイブリッド抗原結合分子を作製することができる。かかる結合成分は、本出願に記載の細胞結合性分子又は可溶性分子のうち1又は2以上に結合し得る。これらの結合成分は、本技術分野で公知の抗体や新規の抗体を含んでなるものでもよく、或いはかかる抗体に由来するものでもよい。
【0083】
新規の抗体は、本技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。例えば、本技術分野で認められているプロトコールを用いて、関連する抗原(例えば精製された腫瘍関連抗原又はかかる抗原を含んでなる細胞又は細胞抽出物)をアジュバントとともに、哺乳類に複数回に亘って皮下又は腹腔内注射することにより、抗体を哺乳類に産生させることができる。この免疫化は通常、活性化脾臓細胞又はリンパ球からの抗原反応性抗体の産生を含んでなる免疫応答を誘発する。生じる抗体を動物の血清から採取してポリクローナル調製物を得てもよいが、多くの場合、脾臓、リンパ節、又は末梢血から個々のリンパ球を単離して、モノクローナル抗体(Mab)の均一調製物を得ることが好ましい。リンパ球は脾臓から得ることが好ましい。
【0084】
この周知の方法(Kohler et al., Nature, 256:495 (1975))によれば、抗原を注入注射した哺乳動物から得られた比較的短命の(或いは致死の)リンパ球を、不死の腫瘍細胞株(例えば骨髄腫細胞株)と融合することにより、遺伝子的にコード化されたB細胞抗体を産生可能な不死のハイブリッド細胞、即ち「ハイブリドーマ」が作製される。単一の抗体を形成させるべく、得られたハイブリッドを選択し、希釈し、再増殖させることにより、個々の株が各々特異的遺伝子を含んでなる、単一の遺伝子株に分離する。これらは所望の抗原に対して均一な抗体を産生するため、その純粋な遺伝的血統に因んで「モノクローナル」と呼ばれる。
【0085】
こうして調製されたハイブリドーマ細胞を、適切な培地に接種し、増殖させる。この培地は、非融合の親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する、1又は2以上の物質を含有することが好ましい。当業者には周知のように、ハイブリドーマの形成、選択、及び増殖のための試薬、細胞株、及び培地が、多数の供給業者から販売されており、標準化されたプロトコールが充分確立されている。一般には、ハイブリドーマ細胞が増殖している培地に、所望の抗原に対するモノクローナル抗体が産生されているか測定を行なう。ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定することが好ましい。所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定したら、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準法により増殖させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp 59-103 (Academic Press, 1986))。更に、これも周知ではあるが、サブクローンから分泌されるモノクローナル抗体は、従来の精製法(例えば、プロテインA、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又は親和性クロマトグラフィー)により、培地、腹水、又は血清から分離することができる。
【0086】
別の実施態様によれば、所望のモノクローナル抗体をコード化するDNAは、従来法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコード化する遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離し、配列決定することができる。単離され、サブクローン化されたハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好適な供給源となる。単離後のDNAを、発現ベクター内に導入し、続いて原核細胞又は真核宿主細胞(例えば、大腸菌(E. coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は免疫グロブリンを産生しない骨髄腫細胞)にトランスフェクトさせてもよい。より具体的には、単離されたDNA(これは本明細書記載のように修飾してもよい)を、Newman 等による米国特許第5,658,570号(1995年1月25日出願)(本文献は参照により本明細書に組み込まれる)の記載に従って、抗体製造用の定常領域及び可変領域配列のクローン化に使用してもよい。これは本質的には、選択された細胞からRNAを抽出し、cDNAに変換し、Ig特異的プライマーを使用してPCRにより増幅する工程を伴う。この目的に適したプライマーについても、米国特許第5,658,570号に記載されている。後に詳述するように、所望の抗体を発現する形質転換細胞を比較的多量に増殖させ、免疫グロブリンの臨床的及び商業的供給源としてもよい。
【0087】
また、これも当業者には周知であるが、抗体又は抗体断片をコード化するDNAは、抗体ファージライブラリーから、例えばpdファージ又はFdファジミド法を用いて得ることが可能である。これらの方法の例は、例えば、欧州特許第368684B1号;米国特許第5,969,108号、Hoogenboom, H.R. and Chames. 2000. Immunol. Today 21:371;Nagy et al. 2002. Nat. Med. 8:801;Huie et al. 2001. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:2682;Lui et al. 2002. J. Mol. Biol. 315:1063に記載されている。これらの各文献は、参照により本明細書に組み込まれる。幾つかの文献(例えばMarks et al. Bio/Technology 10:779-783 (1992))には、大型のファージライブラリーを構築するための方策として、高親和性ヒト抗体の鎖シャフリング(並びにコンビナトリアル感染及びインビボ組換え)による産生が記載されている(例えば、Hanes et al. 2000. Nat. Biotechnol. 18:1287;Wilson et al. 2001. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:3750;又はIrving et al. 2001 J. Immunol. Methods 248:31参照)。更に別の実施態様によれば、細胞表面ライブラリーについて抗体のスクリーニングを行なってもよい(Boder et al. 2000. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:10701; Daugherty et al. 2000 J. Immunol. Methods 243:211)。かかる方法は、モノクローナル抗体の単離及びそれに続くクローニングという伝統的なハイブリドーマ法に代わる方法となる。
【0088】
本発明の更に別の実施態様は、内因性免疫グロブリンを産生する能力を有さないトランスジェニック動物(例えばマウス)における、ヒト抗体又は実質的ヒト抗体の作製を含んでなる(例えば、米国特許第6,075,181号、5,939,598号、5,591,669号、及び5,589,369号を参照。これらの各文献は参照により本明細書に組み込まれる。)。例えば、キメラ及び生殖細胞系変異マウスの抗体重鎖結合領域のホモ接合型欠失によって、内因性抗体産生が完全に阻害されることが報告されている。かかる生殖細胞系変異マウスへにヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを導入すれば、抗原刺激に対してヒト抗体が産生されることになる。SCIDマウスを用いたヒト抗体作製の別の好適な手段は、米国特許第5,811,524号(これは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。当然ながら、これらのヒト抗体に関連する遺伝物質も、本明細書の記載に従って単離及び操作することが可能である。
【0089】
組換え抗体を作製するための更に別の手段として、Newman, Biotechnology, 10: 1455-1460 (1992)には、極めて効率的な手段が開示されている。具体的には、この方法によって、サルの可変ドメインとヒトの定常配列とを含有する霊長類化抗体が作製される。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。更に、この方法は、譲渡人共通の米国特許第5,658,570号、5,693,780号、及び5,756,096号に記載されている。これらの各文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
別の実施態様によれば、リンパ球をマイクロマニピュレーションにより選択し、可変遺伝子を単離することもできる。例えば、免疫哺乳動物から末梢血単核細胞を単離し、約7日間インビトロで培養すればよい。培養物をスクリーニングし、スクリーニング基準を満たす特異的IgGを得ることができる。陽性ウェル由来の細胞を単離することができる。FACSにより、或いは補体溶血プラークアッセイでの同定により、個々のIg産生B細胞を単離することができる。Ig産生B細胞を試験管内にマイクロマニピュレーションし、Vh遺伝子及びVl遺伝子を、例えばRT−PCRを用いて増幅することができる。VH及びVL遺伝子を抗体発現ベクターにクローン化し、発現用の細胞(例えば、真核細胞又は原核細胞)にトランスフェクトさせればよい。
【0091】
更に、本発明のポリペプチドの産生に有用な遺伝子配列は、多数の様々な供給源から取得することができる。例えば、先に広く説明したように、公的にアクセス可能な保管施設の形態で、種々のヒト抗体遺伝子を利用可能である。抗体及び抗体をコード化する遺伝子の配列は多数公表されており、これらの配列から本技術分野で認められた方法を用いて、適切な抗体遺伝子を化学的に合成することができる。本発明のこの態様に適合するオリゴヌクレオチド合成法は当業者には周知であり、幾つかの商用の自動合成機を用いて実施可能である。更に、本明細書記載の幾つかの種類の重鎖や軽鎖をコード化するDNA配列を、DNA合成業者のサービスを介して得ることができる。上記方法の何れかを使用して得られた遺伝物質に、更に改変又は修飾を加えて、本発明のポリペプチドとしてもよい。
【0092】
或いは、当業者に公知の方法を用いて、抗体産生細胞株を選択し、培養してもよい。かかる方法は、種々の実験室マニュアルや、主な刊行物に記載されている。この点で、以下に説明するような本発明での使用に適した方法は、Current Protocols in Immunology、Coligan等編、Green Publishing Associates and Wiley-Interscience、John Wiley and Sons、New York (1991) に記載されている。この文献は、増刊を含めてその全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
可変及び定常領域ドメインは、任意の供給源から取得し、本発明の修飾抗体に導入することができる。抗体をクローン化するには、ハイブリドーマ、脾臓、又はリンパ細胞からmRNAを単離し、逆転写してDNAとし、PCRにより抗体遺伝子を増幅することができる。PCRはコンセンサス定常領域プライマーにより行なってもよく、公表された重鎖及び軽鎖DNAやアミノ酸配列に基づく、より特異的なプライマーにより行なってもよい。上記したように、抗体の軽鎖及び重鎖をコード化するDNAクローンの単離にも、PCRが使用可能である。この場合、ライブラリーのスクリーニングには、コンセンサスプライマーを用いてもよく、より大きな同種のプローブ(例えばマウス定常領域プローブ)を用いてもよい。抗体遺伝子の増幅に適した膨大な数のプライマーセットが、本技術分野では周知である(例えば、精製抗体のN末端配列に基づく5’プライマー(Benhar and Pastan. 1994. Protein Engineering 7:1509);cDNA末端の迅速増幅(Ruberti, F. et al. 1994. J. Immunol. Methods 173:33);抗体リーダー配列(Larrick et al. 1989 Biochem. Biophys. Res. Commun. 160:1250);或いは、Kabat(Kabat et al. 1991. Sequences of Proteins of Immunological Interest. Bethesda, MD:JS Dep. Health Hum. Serv. 5th ed.)又はV-Baseデータベース(例えば、Orlandi et al. 1989. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833; Sblattero et al. 1998. Immunotechnology 3:271; or Krebber et al. 1997. J. Immunol. Methods 201:35)からの既知の可変領域フレームワークアミノ酸配列に基づくものが挙げられる。可変ドメイン及び定常ドメインは、例えば所望のドメインを増幅するように選択されたプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によってクローン化することができる。PCR増幅法については、米国特許第4,683,195号、4,683,202号、4,800,159号、4,965,188号、及び、例えば“PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications” Innis et al.編, Academic Press, San Diego, CA (1990); Ho et al. 1989. Gene 77:51; Horton et al. 1993. Methods Enzymol. 217:270 に詳細に記載されている。
【0094】
或いは、適切な動物のV遺伝子配列のライブラリーからVドメインを取得することもできる。ドメイン(例えばVH及びVLドメイン)をランダムな組み合わせで発現するライブラリーを所望の抗原でスクリーニングすることにより、所望の結合特性を有する要素を同定することができる。かかるスクリーニング法は本技術分野では周知である。例えば、抗体遺伝子レパートリーをλバクテリオファージ発現ベクター中にクローン化することができる(Huse, WD et al. 1989. Science 2476:1275)。更に、抗体を表面に発現している細胞(Boder and Wittrup. 1997. Nat. Biotechnol. 15:553; Daugtherty, P. et al. 2000. J. Immunol. Methods. 243:211; Francisco et al. 1994. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10444; Georgiou et al. 1997. Nature Biotechnology 15:29)又はウイルス(例えば Hoogenboom, HR. 1998 Immunotechnology 4:1 Winter et al. 1994. Annu. Rev. Immunol. 12:433; Griffiths, AD. 1998. Curr. Opin. Biotechnol. 9:102)をスクリーニングすることができる。抗体ライブラリーのスクリーニングには、リボゾーマル・ディスプレイを用いることもできる(Hanes J., et al. 1998. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:14130; Hanes, J. and Pluckthun. 1999. Curr. Top. Microbiol. Immunol. 243:107; He, M. and Taussig. 1997. Nucleic Acids Research 25:5132)。
【0095】
スクリーニングに好適なライブラリーとしては、ヒトV遺伝子ライブラリーが挙げられる。また、非ヒト由来のVL及びVHドメインを使用してもよい。一実施態様によれば、本技術分野で公知の方法を用いてかかる非ヒトVドメインを改変し、免疫原性を低下させることもできる。
【0096】
ライブラリーは、未処理(naive)でもよく、免疫化した対象由来のものでもよく、半合成のものでもよい(Hoogenboom, H.R. and Winter. 1992. J. Mol. Biol. 227:381; Griffiths, AD, et al. EMBO J. 13:3245; de Kruif, J. et al. 1995. J. Mol. Biol. 248:97; Barbas, C.F., et al. 1992. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4457)。更に、多数のVドメイン及びCドメインの配列が公知であり、かかるドメインは本技術分野で公知の方法を使用して合成することができる。
【0097】
一実施態様によれば、免疫グロブリンドメインに変異を作製することにより、より不均一性の高い核酸分子のライブラリーを作製することができる(Thompson, J., et al. 1996. J. Mol. Biol. 256:77; Lamminmaki, U. Et al. 1999. J. Mol. Biol. 291:589; Caldwell, R.C. and Joyce GF. 1992. PCR Methods Appl. 2:28; Caldwell RC and Joyce GF. 1994. PCR Methods Appl. 3:S136)。高親和性変種の選択には、標準的なスクリーニング法を用いることができる。一実施態様によれば、例えば結晶構造から得られる情報を使用し、本技術分野で公知の技術を用いることにより、VH及びVL配列に変更を加えて抗体の結合活性を上昇させることができる。
【0098】
別の実施態様によれば、本発明の抗原結合成分の作製に使用される1又は2以上の抗体が、本技術分野では周知である。本技術分野で認められている抗体(又はその部分)のうち、本発明のハイブリッド抗原結合分子での使用に適したものとしては、OKT3(抗CD3;Johnson & Johnson);Rituxan(抗CD20;Genentech);Zenpax(抗CD25;Hoffman La Roche);Simulect(抗CD25;Novartis);Remicade(抗TNFa;Centocor);Herceptin(抗HER2;Genentech);Mylotarg(抗CD33;Wyeth);Campath-1H(抗CD52;Genzyme);Humira(抗TNFa;Abbott);Xolair(抗IgE;Genentech) Raptiva(抗CD11a;Genentech);Tysabri(抗a4−インテグリン;Biogen Idec);AMG-162(抗RANKL;Amgen);Humax CD4(抗CD4;Genmab);Mepolizumab(抗IL5;GlaxoSmithKline);Lymphocide(抗CD22;Immunomedics);Cimzia(抗TNFa;UCB);Segard(抗TNFa;Abbott);Removab(2重特異的抗CD3/Epcam;Trion);Rencarex(抗カーボニックアンヒドラーゼIX;Wilex)及びPexelizumab(抗C5;Alexion)が挙げられる。
【0099】
一実施態様によれば、本技術分野で公知の抗体又はその一部をコード化する核酸分子と相同的な核酸分子を用いて、本発明の抗原結合成分をコード化してもよい。遺伝子に関して「相同体」とは、遺伝子の少なくとも一部が実質的に同一であるヌクレオチド配列、又はその相補鎖又はその一部を意味する。但し、このヌクレオチド配列は、相同な遺伝子によりコード化されるタンパク質と実質的に同じ活性/機能を有するタンパク質をコード化するものとする。抗体遺伝子の相同体は、推定される相同体のアミノ酸又はヌクレオチド配列と、対象遺伝子又はそれによりコード化されるタンパク質の配列との同一性パーセントに基づいて同定することができる。同一性パーセントは、例えば、目視検査により決定してもよく、本技術分野で公知の、或いは本明細書記載の種々のコンピュータープログラムを用いて決定してもよい。例えば、2つのヌクレオチド配列の同一性パーセントは、Devereux et al. (1984) Nucl. Acids. Res., 12:387 に開示される、University of Wisconsin Genetics Computer Group (UWGCG) から利用可能なGAPコンピュータープログラムを用いて、配列情報を比較することにより決定できる。また、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST(商標))プログラム(Tatusova et al. (1999) FEMS Microbiol. Lett., 174:247に開示)を用いて、2つのヌクレオチド配列を整列することにより、同一性パーセントを決定することもできる。例えば、BLAST(商標)プログラムを用いてヌクレオチド配列の整列を行なう場合、初期設定値としては:reward for match が2、penalty for mismatch が−2、open gap penalty 及び extension gap penalty がそれぞれ5及び2、gap times dropoff が50、expect が10、word size が11、filter が OFF である。
【0100】
別の実施態様によれば、既知の抗体分子又はその一部とアミノ酸同一性を有する抗原結合分子を、本明細書記載のハイブリッドタンパク質に使用してもよい。2つのアミノ酸配列の同一性パーセントを決定するには、最適な比較を行なうべく配列を整列させる(例えば、あるタンパク質のアミノ酸配列にギャップを導入し、他のタンパク質のアミノ酸配列との整列を最適化することができる)。次に、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。一の配列のある位置を占めるアミノ酸残基が、別の配列中の対応する位置を占めるアミノ酸残基と同一である場合、これらの分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列が共有する同一の位置の数の関数である(即ち、%同一性=同一の位置の#/位置の総#×100)。
【0101】
ある実施態様によれば、本明細書記載の分子の核酸及びアミノ酸配列は、本明細書記載の核酸又はアミノ酸配列の1つにハイブリダイズするか、或いは、本明細書記載の核酸又はアミノ酸配列の1つと少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上同一であるヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を含んでなる。
【0102】
別の実施態様によれば、本発明の融合タンパク質における使用に適した核酸分子は、抗体分子又はその一部(例えば、CDR、可変領域、又は他の部分)をコード化する核酸分子の相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含んでなる。本明細書で使用される「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という語は、少なくとも約70%、更に好ましくは少なくとも約80%、更に好ましくは少なくとも約85%又は90%の相同性を互いに有する複数のヌクレオチド配列が、互いにハイブリダイズした状態で維持されるハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件を表わす意である。かかるストリンジェントな条件は当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6.に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好適な例としては、これに限定されるものではないが、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でハイブリダイズし、次に0.2×SSC、0.1%SDS中50〜65℃で1回又は2回以上洗浄するという条件が挙げられる。
【0103】
一実施態様によれば、抗原結合成分はEGFRに結合する。一実施態様によれば、本明細書記載のハイブリッドタンパク質は、その受容体への結合についてEGFと競合する。EGFは、他の全ての成長因子と同様、応答細胞表面上の特異的な高親和性且つ低容量の受容体に結合する。EGF受容体は固有のチロシンキナーゼ活性を有し、これはEGF結合に応答して活性化される。EGF受容体のキナーゼドメインは、EGF受容体自体(自己リン酸化)と、活性化後に受容体に結合する(シグナル伝達カスケード内の)他のタンパク質をリン酸化する。EGFは中胚葉及び外胚葉起源の細胞(特にケラチン細胞及び繊維芽細胞)に対する増殖作用を有する。EGFは幾つかの癌及び毛包細胞に対して負の増殖作用を示す。EGFに対する増殖関連応答には、核プロト癌遺伝子発現(例えばFos、Jun及びMyc)の誘導が含まれる。また、EGFは、胃酸分泌を低下させる作用を有する。
【0104】
抗EGFR抗体の例としては、Erbitux(Imclone Systems)及びPanitumumab(Abgenix)が挙げられる。EGFRに特異的な他の抗原結合成分を使用してもよい。
【0105】
一実施態様によれば、抗原結合成分はVEGFに結合する。更に別の実施態様によれば、本明細書記載のハイブリッドタンパク質は、VEGFがその受容体に結合するのを阻害する。VEGFは相対分子量が45,000のホモ二量体糖タンパク質であり、内皮細胞に特異的に作用する。VEGFはインビボにおける腫瘍血管形成の主な制御物質であることが報告されている。
【0106】
本発明のハイブリッド抗原結合分子に使用できるVEGF抗体の例としては、例えばAVASTIN(登録商標)(bevacizumab; Genentech)及び Lucentis(Genentech)が挙げられる。一実施態様によれば、ハイブリッド抗原結合分子は、VEGF結合抗体の抗原結合部分(例えばAVASTIN(登録商標)等)を含んでなり、これは種々の癌(例えば結腸直腸癌等)の治療に使用できる。一実施態様によれば、本明細書記載のハイブリッド抗原は半減期が長く、効力に優れているので、AVASTIN(登録商標)を結腸直腸癌の治療に使用する場合でも、化学療法剤と併用する必要がない。また、VEGFに特異的な他の抗原結合成分を使用してもよい。
【0107】
別の実施態様によれば、本発明の抗原結合成分はIGF−1Rに結合する。別の実施態様によれば、本明細書記載のハイブリッドタンパク質は、その受容体に対する結合についてIGFと競合する。IGF(当初の名称はソマトメジンC)は、インスリンと構造的に関連する成長因子である。IGFは成長ホルモン(GH)に対する細胞の応答に関与する主要なタンパク質である。IGFはGHに応答して産生され、それに続く細胞活性、特に骨の成長を誘導する。IGFは、当初観察された骨に対する内分泌活性以外に、オートクリン及びパラクリン活性の双方を有することが報告されている。IGF受容体は、インシュリン受容体と同様、固有のチロシンキナーゼ活性を有する。IGFはその構造類似性ゆえにインスリン受容体に結合するが、その結合親和性はインスリン自体よりはるかに小さい。
【0108】
抗IGFRの例としては、WO02/053596に記載されたものが挙げられる。IGF−1Rに特異的な他の抗原結合成分も使用される。
【0109】
III.ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの例
ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの例としては、FSH、インヒビン、TSH、hCG、及びLHが挙げられる。
【0110】
これらのホルモンや他のホルモンの配列が、当業者には容易に利用可能である。例えば、hCGのαサブユニット及びβサブユニットのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、ジーンバンク(GenBank)データベースから、それぞれ受入番号J00117;gi:180436及び受入番号CAA23777;gi:31869として得られる。また、例えば Morgan et al., J. Biol. Chem., 250(13):5247-58 (1975) 及び Fiddes et al., Nature, 281(5730):351-6 (1979) も参照のこと。
【0111】
一実施態様によれば、hCGのαサブユニットのアミノ酸20〜161と、hCGのβサブユニットのアミノ酸20〜161を、本明細書記載のハイブリッド抗原結合分子中に含めてもよい。
【0112】
ヘテロ二量体ホルモンhCG、TSH、FSH、及びLHは、αサブユニットは共通であり、各々対応するβサブユニットとヘテロ二量体化する。ヒトFSHのβサブユニットのヌクレオチド及びアミノ酸配列の例は、ジーンバンク(GenBank)のデータベースから得られる(受入番号NM_000510;gi:66528900)。一実施態様によれば、ヒトFSHコード領域は、Watkins, P.C. et al., DNA 6:205-212 (1987) に記載の15BゲノムクローンのDeI−Sau3A1サブ断片に由来する。一実施態様によれば、FSHのアミノ酸1〜111(シグナル配列を除く)が、本明細書記載のハイブリッド抗原結合分子に導入される。ヒトTSHのβサブユニットのヌクレオチド及びアミノ酸配列の例は、ジーンバンク(GenBank)のデータベースから得られる(受入番号NM_000549;gi:42490754)。ヒトLHのβサブユニットのヌクレオチド配列とアミノ酸配列の例は、ジーンバンク(GenBank)のデータベースから得られる(受入番号X00264;gi:34351)。
【0113】
ヒトインヒビンのα鎖の核酸及びアミノ酸配列の例は、ジーンバンク(GenBank)のデータベースから得られる(受入番号M13981;gi:186410)。ヒトインヒビンのβ鎖の核酸及びアミノ酸配列の例は、ジーンバンク(GenBank)のデータベースから得られる(受入番号M31669;gi:186419)。
【0114】
ある実施態様によれば、ハイブリッド抗原結合分子のヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの1又は2以上のサブユニットは、天然の配列に対する1又は2以上の改変を含んでなり、これによってホルモンの生物活性は低減又は消失するが、改変サブユニットがホルモンの別のサブユニットと二量体化してヘテロ二量体を形成する能力は保存される。
【0115】
例えば、hCGのサブユニットのカルボキシ側最末端の僅か5個の残基を除去すると、ヘテロ二量体を形成する能力を保存しつつ、その生物活性を有効に消失させることができるとの報告がある。一実施態様によれば、改変サブユニットは、アミノ酸88〜92(del88−92)の欠失を含んでなるhCGのαサブユニットであり、これによりhCGは生物学的に不活性となるが、αサブユニットがhCGのβサブユニットと二量体化する能力は保存されるので、ハイブリッド抗原結合分子の形成が可能となる。別の実施態様によれば、改変サブユニットは、アミノ酸位置26のシステイン残基のアラニンによる置換(C26A)を含んでなるαサブユニットである。別の実施態様によれば、改変サブユニットは、アミノ酸88〜92(del88−92)の欠失とアミノ酸位置26のシステイン残基のアラニンによる置換(C26A)とを含んでなるαサブユニットである。別の実施態様によれば、改変サブユニットは、アミノ酸104〜145(del104−145)の欠失を含んでなるβサブユニットである。本発明のハイブリッド抗原結合分子は、a)改変αサブユニット及び非改変βサブユニット;b)改変αサブユニット及び改変βサブユニット;c)非改変αサブユニット及び改変βサブユニット;又はd)非改変αサブユニット及び非改変βサブユニットを含んでなる。
【0116】
当業者には周知のように、上記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの相同体は、置換されていてもよい(抗体及びその部分に関する相同体の議論を参照、前述)。
【0117】
IV.細胞結合及び可溶性分子の例
A.細胞結合分子
一実施態様によれば、ハイブリッド抗原結合分子は、細胞結合分子への結合に使用することができる。ハイブリッド抗原結合分子を用いて検出又は測定することが可能な細胞結合分子の例としては、これらに限定されるものではないが、細胞表面抗原(例えば、細胞表面受容体)及び癌細胞特異的抗原が挙げられる。細胞結合分子の例について、以下により詳しく説明する。
【0118】
1.受容体
一実施態様によれば、本発明の抗原結合分子は、受容体、例えばサイトカイン受容体に結合する。受容体の例としては、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、及びIL−18、コロニー刺激因子(CSF)(例えば、顆粒球CSF(M−CSF)、顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)、及び単球マクロファージCSF(M−CSF)等)、腫瘍壊死因子(TNF)α及びβ、並びにインターフェロンα、β、又はγ等のインターフェロンが挙げられる。
【0119】
サイトカイン受容体は通常、リガンド特異的なα鎖と、共通のβ鎖とからなる。サイトカイン受容体の例としては、GM−CSFに対するもの、IL−3(米国特許第5,639,605号)、IL−4(米国特許第5,599,905号)、IL−5(米国特許第5,453,491号)、IFNγ(EP0240975)、及びTNFファミリーの受容体(例えば、TNFα(例えばTNFR−1(EP417,563)、TNFR−2(EP417,014)、リンホトキシンβ受容体)が挙げられる。
【0120】
別の実施態様によれば、本発明の抗原結合分子は、接着分子である受容体に結合する。接着分子は、複数の細胞が互いに相互作用するのを可能にする膜結合タンパク質である。白血球ホーミング受容体は、炎症の際に白血球細胞表面に発現される受容体であり、細胞外マトリックス成分への結合を仲介するβ−1インテグリン(例えばVLA−1、2、3、4、5、及び6)と、血管内皮上の細胞接着分子(CAM)に結合するβ2−インテグリン(例えばLFA−1、LPAM−1、CR3、及びCR4)とが挙げられる。CAMの例としては、ICAM−1、ICAM−2、VCAM−1、及びMAdCAM−1が挙げられる。他のCAMとしては、E−セレクチン、L−セレクチン、及びP−セレクチンを含んでなるセレクチンファミリーのものが挙げられる。
【0121】
別の実施態様によれば、本発明の抗原結合分子は、ケモカイン受容体に結合する。ケモカインは、炎症部位への白血球の遊走を刺激する化学走化性タンパク質であり、本発明の融合タンパク質にも導入可能である。ケモカイン受容体の例としては、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1及びMIP−1−β)、好中球化学走化性因子、及びRANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted)が挙げられる。
【0122】
別の実施態様によれば、本発明の抗原結合分子は成長因子受容体に結合する。成長因子受容体の例としては、EGF受容体;VEGF受容体(例えばFlt1又はFlk1/KDR)、PDGF受容体(WO90/14425)、HGF受容体(米国特許第5,648,273号及び第5,686,292号)、及び神経栄養性受容体、例えば低親和性受容体(LNGFR)(別名p75NTR又はp75。これはNGF、BDNF、及びNT−3に結合する)、及び、受容体チロシンキナーゼのtrkファミリーのメンバーである高親和性受容体(例えばtrkA、trkB(EP455,460)、trkC(EP522,530))が挙げられる。
【0123】
2.癌細胞特異的抗原
一実施態様によれば、本発明のハイブリッド抗原結合分子は、癌細胞特異的抗原に結合する。癌細胞特異的抗原は、癌細胞上に優先的に発現され、或いは排他的に発現されるものである。かかる抗原を、例えば癌の検出又は治療に、或いは癌治療後の患者の追跡に用いることができる。一実施態様によれば、本発明のハイブリッド抗原結合分子を用いて癌細胞特異的抗原の存在を検出し、それを癌の存在の指標とすることができる。更に別の実施態様によれば、本発明のハイブリッド抗原結合分子を用いて、細胞上の抗原の発現の欠如を示すことにより、それを癌の存在の指標とすることができる。癌細胞特異的抗原の発現を、癌治療後における患者の追跡に使用することもできる。
【0124】
例えばある実施態様によれば、乳癌の殆どで見つかる癌胎児性抗原(CEA)に特異的に結合するハイブリッド抗原結合分子は、患者の乳癌の検出のために使用される。かかるハイブリッド抗原結合分子は、例えば放射能標識物のような標識物に結合することができ、乳癌の診断及び/又は治療後の患者の追跡に使用することができる。
【0125】
癌細胞上に存在する他の抗原の例としては、抗体Lym1及びLym2(Techniclone)、LL2(Immunomedics Corp., New Jersey)、HER2(Herceptin(登録商標), Genentech Inc., South San Francisco)、B1(Bexxar(登録商標), Coulter Pharm., San Francisco)、Campath(登録商標)(Millennium Pharmaceuticals, Cambridge)、MB1、BH3、B4、B72.3(Cytogen Corp.)、CC49(National Cancer Institute)、及び5E10(University of Iowa)によって認識されるものが挙げられる。対象結合分子に導入可能な他の抗体結合部位としては、Orthoclone OKT3(CD3)、ReoPro(GpIIb/gIIa)、Zenapax(C25)、Remicade(TNF−a)、Simulect(CD25)、Synagis(RSV)、Mylotarg(CD33)、及びCampath(CD52)が挙げられる。
【0126】
B.可溶性分子
ある実施態様によれば、ハイブリッド抗原結合分子は、可溶性分子への結合に使用することができる。ハイブリッド抗原結合分子を用いて結合可能な可溶性分子の例としては、これらに限定されるものではないが、サイトカインや他の成長因子が挙げられる。細胞結合分子の例について、以下により詳しく説明する。
【0127】
1.サイトカイン
サイトカインは、多様な生物活性タンパク質及びペプチドからなる大グループである。これらは概して分子量が比較的小さく、多数の細胞活動を調節する。例えば、サイトカインはBリンパ球による免疫グロブリン産生を制御し、種々の細胞の生合成活性を制御する。サイトカインは通常、サイトカイン産生細胞の(おそらくは細胞表面受容体を介した)活性化又は刺激に応答して産生される。特性解析がより進んでいるサイトカインの多くが免疫系細胞で産生されるのに対して、サイトカインは一般に様々な細胞で産生される。サイトカインの最も大きなグループは、免疫細胞の増殖及び分化を刺激するものである。このグループには、T細胞を活性化するインターロイキン1(IL−1)、抗原活性化T細胞及びB細胞の増殖を刺激するIL−2、B細胞の増殖及び分化を刺激するIL−4、IL−5、及びIL−6、マクロファージを活性化するインターフェロンガンマ(IFNg)、及び造血を刺激するIL−3、IL−7、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)が含まれる。
【0128】
他のサイトカインのグループとしては、インターフェロン及びケモカインが挙げられる。インターフェロンIFNα及びIFNβが感染細胞中のウイルス複製を阻害するのに対して、IFNγは抗原提示細胞のMHC発現を刺激する。ケモカインは白血球を感染部位に誘引する。代表的なサイトカインとしては、C−Cケモカイン(RANTES、MCP−1、MIP−1a、及びMIP−1b)、C−X−Cケモカイン(IL−8)、Cケモカイン(リンホタクチン(Lymphotactin))、及びCXXXCケモカイン(フラクタルキン(Fractalkine))が挙げられる。サイトカインの中には、主に阻害性を示すものがある。例えば、IL−10及びIL−13は、マクロファージによる炎症性サイトカイン産生を阻害する。
【0129】
サイトカインは、広範な種類の免疫応答及び炎症性応答に関与しており、リンパ球の増殖、分化、及び機能的活性化に対して多面発現効果を有する。
【0130】
2.成長因子
成長因子は細胞表面上の受容体に結合するタンパク質であり、その主な結果として、細胞増殖及び/又は分化の活性化を引き起こす。成長因子の多くは高い万能性を有し、多種多様な細胞種の細胞分裂を刺激するのに対し、他の成長因子は、特定の細胞種に対する特異性を示す。成長因子の例としては、血小板由来増殖因子(PDGF)、表皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、エリスロポエチン(EPO)、及び血管内皮増殖因子(VEGF)が挙げられる。
【0131】
V.融合タンパク質
一実施態様によれば、融合タンパク質は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの鎖に結合した抗原に選択的に結合する抗原結合成分を含んでなるポリペプチド鎖を含んでなる。対象となる融合タンパク質は、本技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。例えば、本発明の融合タンパク質は、米国特許第6,194,177号及び米国仮特許出願第60/728,184号の記載に従って構築することができる。これらの文献は何れもその全体が参照により本明細書に組み込まれる。或いは、対象となる融合タンパク質は、キメラ抗体(ある種の抗体由来の可変ドメインを別の種の可変ドメインと置換した抗体)の作製に用いられる方法を使用して作製することができる。例えば、EP0125023;Munro, Nature 312:597 (1984); Neuberger et al., Nature 312:604-608 (1984); Sharon et al., Nature 309:364-367 (1984); Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984); Morrison et al., Science 229:1202-1207 (1985); 及び Boulianne et al., Nature 312:643-646 (1984) を参照のこと。一般的には、抗体又はその抗原結合断片の可変鎖(例えば重鎖又は軽鎖)をコード化する核酸分子を、例えばPCRによりクローン化し、ヘテロ二量体ホルモンα又はβ鎖をコード化する核酸分子と(インフレームで)連結する。その後、融合タンパク質をコード化する核酸分子を、発現用の宿主細胞にトランスフェクトさせる。最終構築体の配列は、配列決定法により確認することができる。
【0132】
一実施態様によれば、本発明の融合タンパク質を調製する際に、抗体の抗原結合断片をコード化する核酸分子を、ホルモンをコード化する核酸分子に、C末端においてインフレームで融合させる。また、抗体の抗原結合部分をホルモンのN末端に融合するN末端融合も可能である。融合を行なう正確な部位はそれほど重要ではない。具体的な部位は周知であり、分子の生物活性、分泌、又は結合特性を最適化するように選択すればよい。融合タンパク質を作製する方法は、本技術分野では周知である。
【0133】
一実施態様によれば、ホルモンのアミノ酸配列を本発明のハイブリッド抗原結合分子に導入する前に、タンパク質系ホルモンのシグナル配列を排除する。異種シグナル配列(例えばhGHに由来する配列)は含まれるが、ハイブリッド抗原結合分子の分泌を所望する場合には、かかる配列を除去し、異なるポリペプチドのシグナル配列で置換してもよい。
【0134】
別の実施態様によれば、融合タンパク質を作製するべく構築体に導入する前に、抗体又は抗原結合断片成分及びホルモン成分の何れか一方又は両方から、イントロンを除去してもよい。
【0135】
一実施態様によれば、抗原結合成分のアミノ酸配列を、ペプチドリンカーを介してヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットに結合させる。ペプチドリンカーの例は本技術分野では周知であり、例えば、2以上のアラニン残基、又は数個のGly及び数個のSer残基(例えばGlyGlyGlySerSerGlyGlyGlySerGly)が挙げられる。一実施態様によれば、本発明の融合タンパク質で使用されるペプチドリンカーは、柔軟性のあるヒンジとして機能する。ペプチドリンカーの例としては、これらに限定されるものではないが、AA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCが挙げられる。
【0136】
別の実施態様によれば、本発明の融合タンパク質で使用されるペプチドリンカーは、インビボで(例えば酵素により)切断可能である。切断可能なリンカーの例としては、トロンビン切断部位を含んでなるリンカーが挙げられる。別の実施態様によれば、リンカーは、循環流中に存在する天然の因子により分解可能である。
【0137】
抗体成分がホルモン成分に結合する部位は様々であるが、特定の結果を得るための最適部位は、当業者であれば容易に決定することができる。例示の実施態様によれば、抗体成分は、ペプチドリンカーを介して、hCGのαサブユニット及びβサブユニットに対して、それぞれαサブユニットの残基Ala1及びβサブユニットのSer1において結合させることができる。
【0138】
VI.ハイブリッド抗原結合分子
本発明の融合タンパク質は多量体、特にヘテロ二量体として構成される。本明細書記載のヘテロ二量体性ハイブリッド抗原結合分子は、通常はヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン受容体の2本のポリペプチド鎖を含んでなり、少なくとも1本の鎖が抗原結合成分を含んでなる。対象となる構築体において、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの2つのサブユニットは、二量体化してハイブリッド抗原結合分子を形成し得る。
【0139】
ある実施態様によれば、本発明のハイブリッド抗原結合分子は、ハイブリッド抗原結合分子を形成する少なくとも2本のポリペプチド鎖間を非共有結合することにより形成される。ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの2つのサブユニット間に、1又は2以上の共有結合を追加することにより、得られるハイブリッド抗原結合分子の安定性を向上させることも可能である。このためには、例えば、1又は2以上の外来性の鎖内ジスルフィド結合を付加すればよい。当業者であれば、かかる架橋に適した部位を、例えばヘテロ二量体ホルモンの既知の構造に基づいて、容易に同定することが可能である。例えば、hCG分子のαサブユニットのLys45及びβサブユニットのGlu21にシステイン残基を導入することにより、塩結合(非共有結合)をジスルフィド結合(共有結合)で置換することができる。システイン残基の挿入法は本技術分野では周知である。他の型の修飾としてはPEG化や、その他の種類のハイブリッドポリペプチドの化学修飾が挙げられる。
【0140】
一実施態様によれば、ハイブリッド抗原結合分子の一部を形成する1又は2以上の分子の活性を低減し、或いは不活性化させるために、ポリペプチド骨格の化学的又はプロテアーゼ切断、或いは幾つかのアミノ酸側鎖の化学的又は酵素的修飾等の修飾を行なってもよい。また、かかる修飾はハイブリッドDNA法を用いて、例えばハイブリッド抗原結合分子の一部を形成する1又は2以上の分子のコード配列を改変することにより行なうことができ、これによっても、ハイブリッド抗原結合分子の一部を形成する分子の活性を低減し、或いは分子を不活性化することができる。或いはかかる修飾によって、その後の化学的又は酵素的修飾に対するハイブリッド抗原結合分子の受容性を高めることも可能となる。
【0141】
本発明のハイブリッド抗原結合分子は、1官能性、2官能性、多官能性の何れでもよい。これは、二量体性タンパク質系ホルモンの官能性の有無、及び、使用される抗原結合成分の特異性に応じて異なる。例えば、一実施態様によれば、2つ以上の抗原結合成分が含まれ、各々が(例えば、異なる抗原に結合する等により)分子に異なる機能を付与する。
【0142】
VII.抗原結合分子の構成例
A.単一の抗原結合成分の配置
一実施態様によれば、抗原結合成分は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットのN末端に結合される。別の実施態様によれば、抗原結合成分は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットのC末端に結合される。
【0143】
例えば、一実施態様によれば、抗原結合成分は、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン(例えばhCG)のαサブユニット及び/又はβサブユニット(のN末端又はC末端)に結合した抗体(例えばVEGF、EGFR、又はIGF−1Rに選択的に結合する抗体)の1又は2以上のCDR、VH及び/又はVL、及びScFv断片から選択される。
【0144】
B.2以上の抗原結合成分の配置
一実施態様によれば、本発明のハイブリッド抗原結合分子は、2つ以上の抗原結合成分を含んでなる。一実施態様によれば、本発明の抗原結合分子は、少なくとも2つの抗原結合成分を含んでなる。別の実施態様によれば、本発明の抗原結合分子は、少なくとも3、4、又はそれ以上の抗原結合成分を含んでなる。
【0145】
一実施態様によれば、抗原結合成分は、ポリペプチド鎖の1つ、例えばα鎖又はβ鎖又はその一部に存在する。
【0146】
別の実施態様によれば、抗原成分は、α鎖又はβ鎖又はその一部のN末端及びC末端の両方に存在する。
【0147】
別の実施態様によれば、抗原結合成分は、ポリペプチド鎖の2つ(即ち、α鎖とβ鎖の両方)に存在する。
【0148】
別の実施態様によれば、抗原結合成分は、α鎖及びβ鎖の両方のN末端に存在する。更に別の実施態様によれば、抗原結合成分は、一方の鎖(例えばα鎖又はβ鎖)のN末端、及び、他方の鎖(例えばα鎖又はβ鎖)のC末端に存在する。
【0149】
一実施態様によれば、抗原結合成分は、α鎖及びβ鎖の両方のN末端及びC末端に存在する。また、α鎖及びβ鎖の一方(抗原結合成分に結合していない他の鎖と二量体を形成する)のみに1又は2以上の抗原結合成分を含有するハイブリッド分子も、本発明に包含される。
【0150】
一実施態様によれば、抗原結合成分は同一の特異性を有する。別の実施態様によれば、抗原結合成分は異なる特異性(例えば同じ抗原上の異なるエピトープに対する特異性、或いは異なる抗原に対する特異性)を有する。即ち、得られるハイブリッド構築体は、多重特異性(同一抗原上の2以上のエピトープ又は2以上の抗原に対する特異性)を有する。多重特異性組換え抗体、抗体断片、又は工学操作多重特異性抗体を産生するには、種々の方策を利用することができる。例えば、2つの異なる結合部位が、ハイブリッド抗原結合分子の1本のポリペプチド鎖に存在して(例えば、2つの抗原結合成分が、α鎖に結合して)いてもよく、或いは、α鎖とβ鎖とに、異なる抗原結合成分が結合していてもよい。
【0151】
C.好適なハイブリッド抗原結合分子
本発明の好適なハイブリッド抗原結合分子において、抗原結合成分は、VEGF、EGFR、又はIGF−1Rに選択的に結合する抗体から選択される。
【0152】
1.ハイブリッドEGFR結合分子
例えば、本明細書記載の或るハイブリッド抗原結合分子において、EGFRに選択的に結合する抗体(EGFR抗体)の可変軽鎖ドメインは、2つのアラニンを含有するアラニンリンカーを介して、hCGのαサブユニット(即ちα(1−87))に結合し、これは、3つのリンカーを含有するアラニンリンカーを介してEGFR抗体の可変重鎖ドメインに結合したhCGのβサブユニットと二量体化する。
【0153】
別の実施態様によれば、EGFR抗体のScFv断片は、2つのアラニンを含有するアラニンリンカーを介してhCGのαサブユニット(1−87)に結合し、これは、3つのアラニンを含有するアラニンリンカーを介して別のScFv分子と結合したhCGのβサブユニットと二量体化する。
【0154】
本明細書記載の他のハイブリッド抗原結合分子において、EGFR抗体のScFv鎖は、リンカー(GADK−AA)及びGADK−AAAを介して、hCGのα(1−87)サブユニットに結合し、αとβサブユニットとが二量体化してハイブリッド分子を形成する。
【0155】
更に別の実施態様によれば、EGFR抗体の軽鎖可変ドメインは、hCGのα(1−87)サブユニットに結合し、これがhCGのβサブユニットとヘテロ二量体化する。
【0156】
更に別の実施態様によれば、ハイブリッドEGFR結合分子は、hCGのβサブユニットに結合したEGFR抗体の重鎖可変ドメインを含んでなり、このβサブユニットが、hCGのα(1−87)サブユニットとヘテロ二量体化する。
【0157】
更に別の実施態様によれば、ハイブリッドEGFR結合分子は、hCGのβサブユニットに結合したEGFR抗体のScFv断片を含んでなり、このβサブユニットが、hCGのα(1−97)サブユニットとヘテロ二量体化する。
【0158】
更に、hCGの1つのサブユニット(例えばα又はβ)に結合した抗体のEGFR結合成分と、hCGのβサブユニットに結合した異なる抗原(例えばIGF−1R又はVEGF)に結合する抗原結合成分とを含んでなる、2重特異的ハイブリッド分子も本明細書で報告される。
【0159】
上述の分子は、上述のリンカーを有していてもいなくてもよい。当該リンカーは、AA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCから選択される。
【0160】
かかる分子については、後述の実施例において、より詳細に説明する。
【0161】
2.ハイブリッドIGF−1R結合分子
他の実施態様によれば、hCGのβサブユニットに結合したIGF−1Rに選択的に結合する抗体(例えばIGF−1R抗体)の可変重鎖と、hCGのαサブユニットに結合したIGF−1R抗体の可変軽鎖とを含んでなる、ハイブリッドIGF−1R結合分子が記載される。ここで、αサブユニットとβサブユニットは二量体化して、IGF−1Rに結合するハイブリッド抗原結合分子を形成する。
【0162】
本明細書記載の他のハイブリッドIGF−1R結合分子の例としては、例えば(1)hCGのαサブユニットに結合したIGF−1R抗体の可変重鎖、及び、hCGのβサブユニットに結合したIGF−1R抗体の可変軽鎖、(2)hCGのαサブユニット及びβサブユニットの両方に結合したIGF−1R抗体のScFv断片(リンカーの有無は問わない)、(3)hCGのβサブユニットに結合したIGF−1R抗体の可変重鎖、及び、hCGのαサブユニットに結合したEGFR抗体の可変重鎖、(4)hCGのβサブユニットに結合したIGF−1R抗体の可変軽鎖、及び、hCGのαサブユニットに結合したEGFR抗体の可変軽鎖、(5)hCGのαサブユニットに結合したIGF−1R抗体のScFv断片、及び、hCGのβサブユニットに結合したEGFR抗体のScFv断片、並びに、(6)hCGのβサブユニットに結合したIGF−1R抗体のScFv断片、及び、hCGのαサブユニットに結合したEGFR抗体のScFv断片が挙げられる。これらの分子はリンカーを有していてもいなくてもよく、当該リンカーは、AA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCから選択される。
【0163】
3.ハイブリッドVEGF結合分子
ある実施態様によれば、hCGのβサブユニットに結合したVEGFに選択的に結合する抗体(例えばVEGF抗体)の可変重鎖と、hCGのαサブユニットに結合したVEGF抗体の可変軽鎖とを含んでなる、ハイブリッドVEGF結合分子が記載される。ここで、αサブユニットとβサブユニットとは二量体化して、VEGFに結合するハイブリッド抗原結合分子を形成する。
【0164】
本明細書記載の他のハイブリッドVEGF結合分子の例としては、例えば、(1)hCGのαサブユニットに結合したVEGF抗体の可変重鎖、及び、hCGのβサブユニットに結合したVEGF抗体の可変軽鎖、(2)hCGのαサブユニットとβサブユニットの両方に結合したVEGF抗体のScFv断片(リンカーの有無は問わない)、(3)hCGのβサブユニットに結合したVEGF抗体の可変重鎖、及び、hCGのαサブユニットに結合したEGFR抗体の可変重鎖、(4)hCGのβサブユニットに結合したVEGF抗体の可変軽鎖、及び、hCGのαサブユニットに結合したEGFR抗体の可変軽鎖、(5)hCGのαサブユニットに結合したVEGF抗体のScFv断片、及び、hCGのβサブユニットに結合したEGFR抗体のScFv断片、並びに、(6)hCGのβサブユニットに結合したVEGF抗体のScFv断片、及び、hCGのαサブユニットに結合したEGFR抗体のScFv断片が挙げられる。これらの分子はリンカーを有していてもいなくてもよく、当該リンカーは、AA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCから選択される。
【0165】
VIII.融合タンパク質及びハイブリッド抗原結合分子の発現
また、本発明は、例えばハイブリッド抗原結合分子のポリペプチド鎖をコード化する、単離された核酸分子を含有する。2つの単離された核酸分子(各々が、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットをコード化するヌクレオチド配列に結合した抗原結合断片をコード化するヌクレオチド配列を含んでなる)を同時発現させてもよく、或いはこれらを別々に発現させてもよい。別の実施態様によれば、かかる核酸分子を(例えば核酸に基づく治療中に)対象において発現させてもよい。
【0166】
本発明の融合又はハイブリッド抗原結合分子を発現させるために、上述のいずれかの方法により得られたDNA分子、或いは本技術分野で公知のDNA分子を、本技術分野で公知の方法により適切な発現ベクターに挿入してもよい。例えば、2本鎖cDNAの場合、ホモポリマーテーリングにより、或いは、合成DNAリンカーを用いた制限酵素結合又は平滑末端結合により、適切なベクターにクローン化することができる。DNA分子の結合には通常DNAリガーゼが使用され、アルカリホスファターゼ処理によって、好ましくない結合を避けることができる。
【0167】
従って本発明は、本明細書記載の核酸分子(例えば遺伝子又は遺伝子を含んでなる組換え核酸分子)を有するベクター(例えば組換えプラスミド及びバクテリオファージ)を含有する。「組換えベクター」という語は、ベクター(例えば、プラスミド、ファージ、ファスミド、ウイルス、コスミド、ホスミド、又は他の精製された核酸ベクター)を改変、修飾、又は工学操作した結果、組換えベクターの由来する元の核酸分子又は天然の核酸分子に含有される核酸配列に比べて、核酸配列がより多く、或いはより少なくなり、或いは異なる核酸配列を含有するようになったベクターを含む。例えば、一実施態様によれば、組換えベクターは、本明細書記載の制御配列(例えば、プロモーター配列、ターミネーター配列、及び/又は人工的リボゾーム結合部位(RBS))に作動式に結合した抗原結合成分をコード化する核酸配列を含んでなる。更に「組換えベクター」は、本技術分野で公知の及び本明細書記載の制御配列に作動式に結合したヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片をコード化する核酸分子を含む。更に「組換えベクター」は、制御配列に作動式に結合したヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片をコード化する核酸分子に結合した抗原結合成分をコード化する核酸分子を含む。包有する遺伝子又は核酸の発現を可能にする組換えベクターは「発現ベクター」と呼ばれる。
【0168】
真核生物宿主の場合、宿主の性質に応じて、異なる転写及び翻訳制御配列を使用してもよい。かかる配列は、制御シグナルが高レベルの発現を有する特定の遺伝子に関連している、ウイルス源(例えばアデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、シミアンウイルスなど)に由来するものでもよい。例としては、これらに限定されるものではないが、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40早期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーター等が挙げられる。遺伝子発現が調節できるように、抑制又は活性化が可能な転写開始制御シグナルを選択してもよい。
【0169】
一実施態様によれば、ハイブリッド抗原結合分子の1又は2以上のポリペプチド鎖をコード化するヌクレオチド配列を含んでなる1又は2以上のDNA分子が、1又は2以上の制御配列に作動式に結合されたものを用いて、所望のDNA分子を宿主細胞中に導入することができる。導入されたDNAにより安定に形質転換された細胞は、例えば発現ベクターを含有する宿主細胞の選択を可能にする1又は2以上のマーカーを導入することにより選択することができる。選択マーカー遺伝子は、発現される核酸配列に直接結合させてもよく、同時トランスフェクションにより同じ細胞に導入してもよい。本明細書記載のポリペプチド及び抗体の最適な合成には、追加の要素が必要な場合もある。必要な場合に、どの要素を追加するかは、当業者には明らかであろう。
【0170】
特定のプラスミド又はウイルスベクターを選択する上で重要な因子としては、これらに限定されるものではないが、ベクターを含有する受容細胞の認識容易性、及び、ベクターを含有しない受容細胞からの選択容易性;特定の宿主において所望されるベクターのコピー数;並びに、異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」させ得ることが望まれるか否か、等が挙げられる。
【0171】
発現用のDNA配列を含有するベクターを構築したら、本技術分野で公知の種々の方法のうち1又は2以上を用い、適切な宿主細胞中に導入する。かかる方法としては、これらに限定されるものではないが、例えば形質転換、トランスフェクション、結合体生成、プロトプラスト融合、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入法等が挙げられる。
【0172】
宿主細胞は原核生物でも真核生物でもよい。真核宿主細胞の例としては、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト、サル、マウス、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。かかる細胞によれば、ポリペプチドの翻訳後修飾(例えば、適切な折り畳み又はグリコシル化)が容易となる。更には酵母細胞を用いて、本発明のハイブリッドポリペプチドを発現させることもできる。大部分の哺乳動物細胞と同様、酵母細胞によっても、ポリペプチドの翻訳後修飾(例えばグリコシル化等)が可能となる。酵母内でのポリペプチド産生に使用し得る強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを用いた組換えDNA法が多数存在する。酵母の転写及び翻訳機構は、クローン化された哺乳動物遺伝子産物上のリーダー配列を認識できるので、リーダー配列を有するポリペプチド(即ちプレペプチド)の分泌が可能となる。本発明のハイブリッド抗原結合分子を高収率で産生する方法の1つとして、米国特許第4,889,803号記載の、メソトレキセートのレベルを連続的に増加させて用いることによる、DHGR欠損CHO細胞内でのジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)増幅の使用がある。
【0173】
1又は2以上のベクターの導入後、通常は、ベクター含有細胞を選択的に増殖させる選択培地で、宿主細胞を培養する。組換え抗体の精製には、本技術分野で公知の方法(例えば、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、及び電気泳動等)のうち、任意の方法で行なうことができる。抗体の精製に使用し得る別の精製法として、既知の抗原を用いた親和性クロマトグラフィーが挙げられる。概説すると、組換え抗体を含有する粗調製物を、適当な抗原が固定化されたカラムに通過させる。抗体は通常、特異的抗原を介してカラムに結合するのに対し、不純物は通過する。カラムを洗浄した後、例えばpH又はイオン強度を変化させることにより、抗体をゲルから溶出させる。
【0174】
IX.ハイブリッド抗原結合分子の活性についての試験
対象となる抗原結合分子が標的抗原に結合し、受容体活性を作動させ、又は受容体活性に拮抗する能力は、本技術分野で公知の方法を用いて試験することができる。
【0175】
結合は、例えば結合アッセイを用いて測定することができる。別の実施態様によれば、競合的結合アッセイを使用することができる。例えば、一実施態様によれば、結合の検出は以下により行なうことができる。即ち、標的分子を発現する細胞に、標的に対する標識リガンド(例えば放射能標識物)を接触させるとともに、同じ標的への結合について競合する非標識ハイブリッド抗原結合分子を、その濃度を増加させながら加える。続いて、細胞を洗浄し、標識リガンドを測定する。非標識ハイブリッド抗原結合分子の存在下で標識リガンドの量に低下が見られれば、ハイブリッド抗原結合分子が結合に競合していることが示される。
【0176】
受容体の生物活性の作用(agonism)又は拮抗作用(antagonism)は、例えば、細胞増殖等の細胞応答を調べることにより測定できる。一実施態様によれば、アゴニストは、同種のリガンドの細胞応答を模倣する能力により同定される。別の実施態様によれば、同族のリガンドをアンタゴニスト候補とともに細胞に接触させ、細胞応答を測定する。リガンド単独の場合に誘導される応答と比べて、ハイブリッド抗原結合分子の存在下で細胞応答が低下すれば、ハイブリッド抗原結合分子がアンタゴニスト活性を有することが示される。また、受容体による2次メッセンジャー産生の変化を、アゴニスト又はアンタゴニスト活性の指標として測定することもできる。
【0177】
X.医薬組成物
また、本発明は、本明細書記載の1又は2以上のハイブリッド抗原結合分子と、医薬的に許容され得る希釈剤又は担体とを含んでなる医薬組成物にも関する。かかる医薬組成物は、キット又は容器に含まれるものでもよい。かかるキット又は容器を、ハイブリッド抗原結合分子の延長されたインビボ半減期又はインビトロ保管寿命に関する指示書とともに包装してもよい。かかる組成物は、患者(好ましくは哺乳動物及び最も好ましくはヒト)に医薬組成物を投与することにより、患者の疾患又は症状を治療、予防、又は改善する方法において使用することができる。
【0178】
一般に、本発明の医薬組成物の治療的有効量は、約0.0001mg/Kg〜0.001mg/Kg;約0.001mg/Kg〜約10mg/Kg体重、又は約0.02mg/Kg〜約5mg/Kg体重である。一実施態様によれば、ハイブリッド抗原結合分子の治療的有効量は、約0.001mg〜約0.01mg、約0.01mg〜約100mg、約100mg〜約1000mgである。
【0179】
一実施態様によれば、本明細書記載のハイブリッド抗原結合分子の治療的有効量は、対応する非ハイブリッド抗原結合分子の量よりも少ない。
【0180】
ハイブリッド抗原結合分子の最適製剤は、投与経路や所望の投与量に応じて、当業者が決定することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990), Mack Publishing Co., Easton, Pa.を参照。本文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0181】
本明細書記載の方法又は組成物に使用される本発明のハイブリッド抗原結合分子は、最も有効な投与経路(例えば、経口、経皮、舌下、頬、非経口、直腸、鼻内、気管支内又は肺内投与)に応じて製剤することができる。
【0182】
本発明及び本明細書記載のハイブリッド抗原結合分子は、単独で投与してもよく、治療対象となる疾患の治療に有用であることが知られている他の治療薬と組み合わせて投与してもよい。例えば、一実施態様によれば、本明細書記載のハイブリッド抗原結合分子は、化学療法剤と一緒に使用される。
【0183】
XI.治療法又は診断法
本明細書記載のハイブリッド抗原結合分子は、例えば診断法及び/又は治療法(例えば、癌又は他の増殖性疾患の診断及び/又は治療)に使用することができる。
【0184】
一実施態様によれば、本明細書記載のハイブリッド抗原結合分子は、細胞上に特異的又は優先的に発現される抗原(例えば癌細胞特異的抗原)の検出に使用される。例えば、ハイブリッド抗原結合分子は、検出可能な成分(例えば放射性核種)で標識することができる。放射性核種の例としては、123ヨード、125ヨード、131ヨード、105ロジウム、67ガリウム、153Sm、177Lu、186Re、188Re、166Ho、67Cu、90Y、111インジウム、18フッ素、又は99mテクネチウム(Tc99m)が挙げられる。一実施態様によれば、かかる放射性核種をハイブリッド抗原結合分子に(直接又は間接的に)結合させることができる。ここで、ハイブリッド抗原結合分子は、癌細胞上に排他的又は優先的に発現される抗原に対して、特異的に結合する分子である。かかるハイブリッド抗原結合分子は、癌細胞特異的抗原を発現する細胞の検出に(例えば診断法において)使用することができる。或いは、かかる分子は、かかる細胞を細胞毒性で(例えば治療法において)死滅させるために使用することもできる。
【0185】
また、分光分析プローブを本発明のハイブリッド抗原結合分子に結合させてもよい。これは例えば、ハイブリッド抗原分子が結合する細胞を検出するためのイメージング法に使用される。分光分析プローブの例としては、これらに限定されるものではないが、蛍光物質(例えばフルオレセイン)、発色物質(例えば、ルミナーツ、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリン)、磁性プローブ、及び造影試薬(例えば、MRI造影試薬)が挙げられる。分光分析プローブの他の例としては、これらに限定されるものではないが、PET標識物のような燐光性プローブが挙げられる。
【0186】
一実施態様によれば、本発明のハイブリッド抗原結合分子は、受容体機能に相乗作用又は拮抗作用をもたらすために使用される。
【0187】
一実施態様によれば、本発明は、細胞(例えば癌)の増殖が引き起こす障害を治療する方法を含んでなる。本発明のハイブリッド抗原結合分子は、例えば、VEGF、EGFR、及びIGF−1Rからなる群より選択される分子の少なくとも1つの生物活性に拮抗する。
【0188】
ある実施態様によれば、ハイブリッド抗原結合分子は、任意の機能性成分を含んでなる。対象となるハイブリッド抗原結合分子に好適に結合される物質としては、細胞毒性剤が挙げられる。更に、細胞毒性成分を本発明のハイブリッド抗原結合分子に結合させてもよい。細胞毒性成分は一般的に、細胞の成長及び増殖に有害な物質であり、細胞又は悪性腫瘍を低減、阻害、又は破壊する作用を有し得る。細胞毒素の例としては、これらに限定されるものではないが、幾つかの放射性核種、生体毒素、酵素活性毒素、細胞静止剤又は細胞毒性治療薬、プロドラッグ、免疫活性リガンド、及びサイトカイン等の生物学的応答調節物質が挙げられる。
【0189】
細胞毒素の例としては、一般に、細胞静止剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗増殖剤、チューブリン結合物質、ホルモン、及びホルモンアンタゴニスト等が挙げられる。本発明に適合する細胞静止剤の例としては、アルキル化物質、例えばメクロルエタミン、トリエチレンホスホラミミド、シクロホスファミド、イホスファミド、クロランブシル、ブスルファン、メルファラン、又はトリアジクオン、ニトロソ尿素化合物、例えばカルムスチン、ロムスチン、又はセムスチンが挙げられる。他の好適な細胞毒性剤群としては、例えばメイタンシノイド群の薬剤が挙げられる。他の好適な細胞毒性剤群としては、例えばアントラサイクリン群の薬物、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオチド、プテリジン群の薬物、ジネネス(diynenes)、及びポドイロトキシンが挙げられる。これらの群の特に有用なメンバーとしては、例えばアドリアマイシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン、アミノプテリン、メソトレキセート、メソプテリン、ミトラマイシン、ストレプトニグリン、ジクロロメソトレキセート、マイトマイシンC、アクチノマイシン−D、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、フルキスリジン、フトラフール、6−メルカプトプリン、シタラビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシン、又はポドフィロトキシン誘導体(例えばエトポシド又はエトポシドホスフェート)、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ビンデシン、ロイロシン等が挙げられる。本明細書の教示に適合する更に別の細胞毒素としては、タキソール、タキサン、サイトカラシンB,グラミシジンD、臭化エチジウム、アメチン、テノポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びプロマイシン、及びこれらの類似体又は同族体が挙げられる。また、ホルモン及びホルモンアンタゴニスト(例えば、コルチコステロイド、例えばプレドニソン、プロゲスチン、例えばヒドロキシプロゲステロン又はメドロプロゲステロン、エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロール、アンチエストロゲン、例えばタモキシフェン、アンドロゲン、例えばテストステロン、及びアロマターゼインヒビター、例えばアミノグルテチミド)も、本明細書の教示に適合する。前述したように、当業者であれば、本発明の結合体を調製する目的に応じて、所望の化合物の反応の利便性を向上させるべく、その化合物に化学的修飾を加えることも可能である。
【0190】
特に好適な細胞毒素の一例としては、エンジイン群の抗腫瘍抗生物質のメンバー又は誘導体(例えばカリケアミシン、エスペラミシン、又はジネミシン等)が挙げられる。これらの毒素は極めて強力で、核DNAを切断することにより細胞死滅を招く作用を有する。タンパク質毒素がインビボで切断されて、不活性であるが免疫原性を有する多数のペプチド断片を生じるのとは異なり、カリケアミシン、エスペラミシン、及び他のエネジンは、基本的に非免疫原性の小分子である。
【0191】
上記したように、適合性細胞毒素は、プロドラッグを含んでいてもよい。本明細書で使用される「プロドラッグ」という語は、親薬剤と比べて腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素的に活性化又は変換されてより高活性の親形態に移行し得る、医薬活性物質の前駆体又は誘導体型を意味する。本発明に適合するプロドラッグとしては、これらに限定されるものではないが、より高活性の細胞毒性の遊離薬剤に変換することが可能な、リン酸塩含有プロドラッグ、チオリン酸塩含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、又は置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシン及び他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられる。本発明で使用されるプロドラッグ型に誘導体化することが可能な細胞毒性剤の更なる例には、上記の化学療法剤が含まれる。
【0192】
他の細胞毒素の中でも、当然ながら、生体毒素(例えば、リシンサブユニットA、アブリン、ジフテリア毒素、ボツリヌス、シアンギノシン、サキトキシン、シガトキシン、破傷風、テトロドトキシン、トリコテセン、ベルコロゲン、又は毒性酵素)にポリペプチドを結合させてもよい。かかる構築体は、結合分子−毒素構築体の直接発現を可能にする遺伝子工学的手法を用いて作製することが好ましい。
【0193】
本発明のポリペプチドに結合させることが可能な他の生物学的応答調節物質には、リンホカインやインターフェロン等のサイトカインが含まれる。当業者であれば、本開示に基づき、かかる構築体を従来法を用いて容易に作製できるであろう。
【0194】
開示されたポリペプチドと組み合わせて使用可能な別の群の適合性の細胞毒素としては、腫瘍又は免疫反応性細胞に有効に指向し得る放射線感受性薬剤が挙げられる。かかる薬剤は電離放射線に対する感受性を増強するので、放射線療法の効力を向上させることが可能となる。腫瘍細胞内部に導入された結合体は、放射線感受性が最大である核の近くに放射線増感剤を送達する。放射線増感剤を結合しない状態で担持する本発明のポリペプチドは、血液から迅速に除去されるので、残存する放射線増感剤を標的の腫瘍に局在化させ、正常組織での取り込みを最小にすることができる。血液からの迅速な排除の後、以下の3つの方法のうち1つによって、補助的な放射線療法を行なう。即ち、1)腫瘍に特異的に指向された外部放射線、2)腫瘍中に直接埋め込まれた放射活性、又は3)同じ標的化分子を用いた全身性放射免疫療法。本アプローチの極めて魅力的な変法として、治療用ラジオアイソトープを放射線増感した免疫結合体に結合させることにより、単一薬剤での投与を可能として、患者の利便性を向上させてもよい。
【0195】
対象となる任意の機能性成分は、本技術分野で公知の方法を用いて、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン受容体の抗原結合成分に、或いはかかる受容体の1又は2以上の鎖に結合させることができる。
【0196】
一実施態様によれば、本発明のハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、各ポリペプチド鎖は、これらに限定されるものではないが、hCG、FSH、LH、TSH、インヒビンからなる群より選択されるヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はこれらの断片のアミノ酸配列に結合したVEGF又はVEGF結合断片に選択的に結合する抗体のアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはVEGFアンタゴニスト活性を有する。
【0197】
一実施態様によれば、VEGFの拮抗作用により利益を受ける疾患は、これらに限定されるものではないが、癌又は前癌症状である。一実施態様によれば、癌は結腸直腸癌である。別の実施態様によれば、疾患は、(例えば糖尿病性網膜症の場合のような)その他の好ましくない血管増殖を含んでなる。
【0198】
一実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したEGFRに選択的に結合する抗原結合成分の可変重鎖又は可変軽鎖のアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したEGFRに選択的に結合する抗原結合成分の可変重鎖又は可変軽鎖のアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはEGFRアンタゴニスト活性を有する。
【0199】
別の実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したEGFRに選択的に結合する抗原結合成分の可変軽鎖のアミノ酸配列に結合した可変重鎖のアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したEGFRに選択的に結合する抗原結合成分の可変軽鎖のアミノ酸配列に結合した可変重鎖のアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはEGFRアンタゴニスト活性を有する。
【0200】
別の実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したEGFRに選択的に結合するScFvのアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したEGFRに選択的に結合するScFvのアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはEGFRアンタゴニスト活性を有する。
【0201】
一実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したIGF−1Rに選択的に結合する抗原結合成分の可変重鎖又は可変軽鎖のアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したIGF−1Rに選択的に結合する抗体の可変重鎖又は可変軽鎖のアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはIGF−1Rアンタゴニスト活性を有する。
【0202】
別の実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したIGF−1Rに選択的に結合する抗原結合成分の可変軽鎖のアミノ酸配列に結合した可変重鎖のアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したIGF−1Rに選択的に結合する抗原結合成分の可変軽鎖のアミノ酸配列に結合した可変重鎖のアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはIGF−1Rアンタゴニスト活性を有する。
【0203】
別の実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したIGF−1Rに選択的に結合するScFvのアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したIGF−1Rに選択的に結合するScFvのアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはIGF−1Rアンタゴニスト活性を有する。
【0204】
一実施態様によれば、癌、又は、異常血管形成に関連する任意の症状(例えば糖尿病性網膜症)を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したVEGFに選択的に結合する抗原結合成分の可変重鎖又は可変軽鎖のアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したVEGFに選択的に結合する抗体の可変重鎖又は可変軽鎖のアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはVEGFアンタゴニスト活性を有する。
【0205】
別の実施態様によれば、癌、又は、異常血管形成に関連する任意の症状(例えば糖尿病性網膜症)を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したVEGFに選択的に結合する抗原結合成分の可変軽鎖のアミノ酸配列に結合した可変重鎖のアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したVEGFに選択的に結合する抗原結合成分の可変軽鎖のアミノ酸配列に結合した可変重鎖のアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはVEGFアンタゴニスト活性を有する。
【0206】
別の実施態様によれば、癌、又は、異常血管形成に関連する任意の症状(例えば糖尿病性網膜症)を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は2本のポリペプチド鎖を含んでなり、1本の鎖は、hCGのαサブユニットに結合したVEGFに選択的に結合するScFvのアミノ酸配列を含んでなり、第2の鎖は、hCGのβサブユニットに結合したVEGFに選択的に結合するScFvのアミノ酸配列を含んでなり、ここでハイブリッドポリペプチドはVEGFアンタゴニスト活性を有する。
【0207】
本発明の別の実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原分子は、1又は2以上のEGFR結合成分と1又は2以上のIGF−1R結合成分とを含んでなる。
【0208】
本発明の別の実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、1又は2以上のEGFR結合成分と1又は2以上のVEGF結合成分を含んでなる。
【0209】
本発明の別の実施態様によれば、癌を治療する方法に使用されるハイブリッド抗原結合分子は、1又は2以上のIGF−1R結合成分と1又は2以上のVEGF結合成分を含んでなる。
【0210】
本発明を以下の実施例により更に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定するものと解してはならない。本出願を通じて引用される全ての文献、特許、及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0211】
実施例1:EGFRハイブリッド抗原結合分子の構築
【0212】
抗EGFR抗体、即ち225抗体(ATCC HB8505)に対応するVH及びVL領域のヌクレオチド配列が新規合成された。これはpUC18minusMCS(BLUE HERON BIOTECHNOLOGY, Bothell, WA)として提供される。合成VH及びVL断片のDNA配列をそれぞれ図1及び図2に示す。
【0213】
これらのVH及びVL領域のクローンをPCR反応の鋳型として、以下の融合分子の作製に使用可能な断片を合成した。即ち、EGFR VH−AAA−hCGβ;EGFR−VL AA α(1−87)、EGFR ScFv−AA−α(1−87)、及びEGFR ScFv−AAA−hCGβ。アラニン(AAA及びAA)は、NotIクローニング部位により導入された、V領域とhCGサブユニットドメインとの間のリンカーである。このリンカーは完全に除去してもよく、また、サイズや構造が異なる別のリンカーをドメイン間に導入することも可能であると考えられる。本実施例では異なるリンカーの使用を例示する。第1は短い柔軟性のあるリンカー分節GADK(配列番号1)であり、第2は、ヒト血清アルブミン内に存在する伸長構造を有する長いリンカー、DETYVPKEFNAE(配列番号2)(以後HSAと略す)である。融合構築体のPCR断片を合成するために使用したプライマーを以下に示す。
【0214】
VH領域−断片1(VH−NotI):
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTGAAGCAGTC−3’(配列番号3)及び
5’−GCGGCCGCTGCAGAGACAGTGACCAGAGTC−3’(配列番号4)
【0215】
VH断片2(VH−リンカー):
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTGAAGCAGTC−3’(配列番号3)及び
5’−CAGCAAGATGTCAGATCCGCCGCCACCCGACCCACCACCGCCCGAGCCACCGCCACCTGCAGAGACAGTGACCAGAGTCCCTTGG−3’(配列番号5)
【0216】
VL領域断片1(VL−NotI):
5’−AGATCTGCCGACATCTTGCTGACTCAGTCTC−3’(配列番号6)及び
5’−GCGGCCGCTTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(配列番号7)
【0217】
VL領域断片2(リンカー−VL):
5’−GCGGATCTGACATCTTGCTGACTCAGTCTCC−3’(配列番号8)及び
5’−GCGGCCGCTTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(配列番号7)
【0218】
VL領域断片3(リンカー−VL−GADK−NotI):
5’−GCGGATCTGACATCTTGCTGACTCAGTCTCC−3’(配列番号8)及び
5’−GCGGCCGCTTTATCGGCGCCTTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(配列番号9)
【0219】
VL領域断片4(リンカー−VL−HSA−NotI):
5’−GCGGATCTGACATCTTGCTGACTCAGTCTCC−3’(配列番号8)及び
5’−GCGGCCGCTTCAGCATTAAACTCTTTGGGAACGTATGTTTCATCTTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(配列番号10)
【0220】
得られたVH及びVL領域のPCR断片を、アガロースゲルでのサイズ分画及びWizard PCRカラム(PROMEGA)精製によりゲル精製した。ScFv融合体は、N末端にVH領域を配し、(Gly4Ser)3及びVL領域が続くように設計した。VL−(Gly4Ser)3−VHの構成を使用することもでき、また、V領域間のリンカーのサイズや配列も変更することが可能である。本実施例で使用されるScFv融合体は、以下の2工程PCR反応により作製した。
【0221】
EGFR ScFv−NotI:
プライマー:
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTGAAGCAGTC−3’(配列番号11)及び
5’−GCGGCCGCTTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(配列番号12)
鋳型:VH断片2及びVL断片2
【0222】
EGFR ScFv GADK−NotI
プライマー:
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTGAAGCAGTC−3’(配列番号11)及び
5’−GCGGCCGCTTTATCGGCGCCTTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(配列番号13)
鋳型:VH断片2及びVL断片3
【0223】
EGFR ScFv−HSA−NotI
プライマー:
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTGAAGCAGTC−3’(配列番号11)及び
5’−GCGGCCGCTTCAGCATTAAACTCTTTGGGAACGTATGTTTCATCTTTCAGCTCCAGCTTGGTCCCAG−3’(配列番号14)
鋳型:VH断片2及びVL断片4
【0224】
VH断片1、VL断片1、及びScFv融合体をpCR4Blunt−TOPOにクローン化し、DNA配列決定を行った。適切なクローンを同定し、挿入体をBglII及びNotIの2重消化により切り出した。精製した断片を、BamHI及びNotIで2重消化したpENTR1aベクター(INVITROGEN)にクローン化し、図3及び図4に示すATTL部位の間に挿入して、hCGのαサブユニット及びβサブユニットへの融合体を作製した。本実施例で使用したαサブユニットは、5アミノ酸のC末端欠失を有し、hCG足場の生物活性が低下している。また、pENTR1a挿入体にはhGHシグナルペプチドもコード化され、融合タンパク質の分泌を指令するために使用される。
【0225】
hCGβ及びα(1−87)にそれぞれ融合したEGFR VH及びVL領域、並びにアラニンリンカーを含んでなるEGFR ScFv構築体のDNA及びアミノ酸配列を、図5A〜図8Bに示す。GADKとHSAリンカーを有するScFv−hCGサブユニット融合体も同様に調製した。
【0226】
実施例2:VEGFハイブリッド抗原結合分子の構築
【0227】
VEGF VH及びVEGF VLのアミノ酸配列のコドン最適化解析(BLUE HERON BIOTECHNOLOGY)を行ない、得られたDNA配列を新規合成した。VEGF VHのDNA配列を図9に、VEGF VLのDNA配列を図10に示す。
【0228】
コドン最適化したVH及びVL領域は、以下の組成を有するScFv分子をコード化するように作製した:VH−(Gly4Ser)3−VL及びVL−(Gly4Ser)3−VH。これらも新規合成した(BLUE HERON BIOTECHNOLOGY)。IgG1ヒンジ領域(hng)の一部を3’末端に付加してリンカーとして使用した。このリンカーは完全に除去してもよく、また、サイズや構造が異なる別のリンカーをドメイン間に導入することも可能であると考えられる。VH−VL及びVL−VH VEGF ScFv分子のDNA配列をそれぞれ図11及び12に示す。
【0229】
新規合成したDNA断片をpUCminusMCS(BLUE HERON BIOTECHNOLOGY, Bothell, WA)中のクローンとして受領した。hGHシグナルペプチドとα(1−87)及びhCGβサブユニットへの融合体の作製は、挿入体をBglII及びNotIの2重消化により切り出し、これらを、BamHI及びNotIで2重消化したpENTR1aベクター(INVITROGEN)にクローン化し、図3及び図4に示すATTL部位の間に挿入することにより行なった。本実施例で使用したαサブユニットは、5アミノ酸のC末端欠失を有し、hCG足場の生物活性が低下している。
【0230】
更に、V領域とhCGサブユニットドメインとの間にリンカーを有する構築体及び有しない構築体を、新規合成DNAクローンを鋳型とした2工程PCRにより作製する。
【0231】
実施例3.IGF−1Rハイブリッド抗原結合分子の構築
【0232】
IGF−1R VH及びIGF−1R VLのアミノ酸配列(WO03059951)を新規合成した(BLUE HERON BIOTECHNOLOGY)。IGF−1R VH及びIGF−1R VLのDNA配列を図13及び図14に示す。新規合成したDNA断片をpUCminusMCS(BLUE HERON BIOTECHNOLOGY)中のクローンとして受領した。hGHシグナルペプチドとα(1−87)及びhCGβサブユニットへの融合体の作製は、BglIIとNotIの2重消化により挿入体を切り出し、これらを、BamHI及びNotIで2重消化したpENTR1aベクター(INVITROGEN)にクローン化し、図3及び図4に示すATTL部位の間に挿入して作製した。本実施例で使用したαサブユニットは、5アミノ酸のC末端欠失を有し、hCG足場の生物活性が低下している。NotIクローニング部位は、V領域ドメインとhCGβサブユニット及びα(1−87)サブユニットとの間に、それぞれ3つのアラニン及び2つのアラニンを導入する。IGF−1R VH領域及びIGF−1R VL領域の、α(1−87)及びhCGβサブユニットとの融合体のDNA及びアミノ酸配列を図15A〜18Bに示す。
【0233】
pUCminusMCS内のIGF−1Rクローンを2工程PCRの鋳型として用い、VH−(GLy4Ser)3−VLという組成からなるScFv断片を構築した。本実施例では3つのScFv構築体を試験した。1つはC末端にNotIクローニング部位を有し、これによってV領域とhCGサブユニットドメインとの間に3つ及び2つのアラニンリンカーが挿入される。このリンカーは完全に除去してもよく、また、サイズや構造が異なる別のリンカーをドメイン間に導入することも可能であると考えられる。他のリンカーの例としては、合成された他の2つのScFv分子により示されるものが挙げられる。第2のScFvはNotI部位以外に、短い柔軟性のあるリンカー分節GADK(配列番号1)を有するものであった。第3のScFvは、NotI部位でコード化されるアラニン以外に、ヒト血清アルブミン内に存在する伸長構造を有する長いリンカー、DETYVPKEFNAE(配列番号2)(以後HSAと略す)を有するものであった。融合構築体の工程1のPCR断片を合成するために使用したプライマーを以下に示す。
【0234】
VH断片
プライマー:
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTTCAG−3’(配列番号15)及び
5’−CCACCACCGCCCGAGCCACCGCCACCTGAGGAGACGGTGACCAGGGT−3’(配列番号16)
鋳型:IGF−1R VHをコード化するプラスミド
【0235】
VL断片1(NotI):
プライマー:
5’−TGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCGGGTGGCGGCGGATCTGATATTGTGATGACTCAGTCTCCACTC−3’及び(配列番号17)及び
5’−GCGGCCGCTTTGATTTCCACCTTGGTCCCTTGGC−3’(配列番号18)
鋳型:IGF−1R VLをコード化するプラスミド
【0236】
VL断片2(GADK−NotI):
プライマー:
5’−TGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCGGGTGGCGGCGGATCTGATATTGTGATGACTCAGTCTCCACTC−3’(配列番号17)及び
5’−GCGGCCGCTTTATCGGCGCCTTTGATTTCCACCTTGGTCCCTTGGC−3’(配列番号19)
鋳型:IGF−1R VL2をコード化するプラスミド
【0237】
VL断片3(HSA−NotI):
プライマー:
5’−TGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCGGGTGGCGGCGGATCTGATATTGTGATGACTCAGTCTCCACTC−3’(配列番号17)及び
5’−GCGGCCGCTTCAGCATTAAACTCTTTGGGAACGTATGTTTCATCTTTGATTTCCACCTTGGTCCCTTGGC−3’(配列番号20)
鋳型:IGF−1R VL2をコード化するプラスミド
【0238】
融合構築体の工程2のPCRでScFv断片を合成するために使用したプライマーを以下に示す。
【0239】
IGF−1R ScFv−NotI
プライマー:
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTTCAG−3’(配列番号21)、及び5’−GCGGCCGCTTTGATTTCCACCTTGGTCCCTTGGC−3’(配列番号22)
鋳型:VH断片とVL断片1
【0240】
IGF−1R ScFv−GADK−NotI
プライマー:
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTTCAG−3’(配列番号21)及び
5’−GCGGCCGCTTTATCGGCGCCTTTGATTTCCACCTTGGTCCCTTGGC−3’(配列番号23)
鋳型:VH断片とVL断片2
【0241】
IGF−1R ScFv−HSA−NotI
プライマー:
5’−AGATCTGCCCAGGTGCAGCTTCAG−3’(配列番号21)及び
5’−GCGGCCGCTTCAGCATTAAACTCTTTGGGAACGTATGTTTCATCTTTGATTTCCACCTTGGTCCCTTGGC−3’(配列番号24)
鋳型:VH断片とVL断片3
【0242】
ScFv融合体をコード化するPCR断片をpCR4Blunt−TOPO(INVITROGEN)にクローン化し、DNA配列解析を行なった。適切なクローンを同定し、挿入体をBglII及びNotIの2重消化により切り出した。精製した断片を、BamHI及びNotIで2重消化したpENTR1a/α(1−87)とpENTR1a/βベクター(図3及び図4)にクローン化して、hGHシグナルペプチドとhCGのα及びβサブユニットへの融合体を作製した。IGF−1R ScFv−NotI−α(1−87)及びIGF−1R ScFv−NotI−hCGβ構築体のDNA及びアミノ酸配列を図19及び図20に示す。
【0243】
実施例4:ELISAを用いたEGFRハイブリッド抗原結合分子産生の確認
【0244】
EGFR V領域−hCG融合タンパク質を、LR反応(INVITROGEN)によりGateway修飾ベクター発現ベクターpEAK12d内にクローン化した。293−EBNA細胞(INVITROGEN)で一過性トランスフェクションを行なって、ポリペプチド産生、二量体化、及びインビトロ活性を評価した。リポフェクタミン2000試薬(INVITROGEN)を用いてトランスフェクションを行なった。細胞培養及び細胞トランスフェクションには、製造業者の提供するプロトコールを使用した。Opti−MEM培地(INVITROGEN)の添加の2〜5日後に調整培地を採取した。未変性hCGに特異的なELISA(DSL)を用いて、EGFRハイブリッド抗原結合分子の産生を測定した。hCGを標準物質として使用して測定した試料11[α(1−87)+hCGβ]以外は、アッセイの標準物質としてTBP hCG融合タンパク質を使用した。結果を以下の表1に示す。
【0245】
【表1】

【0246】
表1に纏めたように、対照、モック及びGFPを除き、そしておそらくはVH−AAA−hCGβ+α(1−87)を除き、全ての試料においてハイブリッド抗原結合分子が検出可能であった。
【0247】
実施例5:ELISAを用いたIGF−1Rハイブリッド抗原結合分子の産生の確認
【0248】
IGF−1R V領域−hCG融合タンパク質を、LR反応(INVITROGEN)によりGateway修飾ベクター発現ベクターpEAK12d中にクローン化した。293−EBNA細胞(INVITROGEN)で一過性トランスフェクションを行なって、ポリペプチド産生、二量体化、及びインビトロ活性を評価した。トランスフェクションにはリポフェクタミン2000試薬(INVITROGEN)を使用した。細胞培養と細胞のトランスフェクション用に、製造業者の提供するプロトコールを使用した。Opti−MEM培地(INVITROGEN)の添加の2〜5日後に調整培地を採取した。未変性hCGに特異的なELISA(DSL)を用いて、ハイブリッド抗原結合分子の産生を測定した。トランスフェクション6及び7は、EGFR特異抗体225由来のVLα(1−87)融合体を、それぞれIGF−1R VHβ及びVLβと組み合わせで含有させ、IGF−1RにもEGFRにも結合しない対照とした。トランスフェクション8及び9において産生されるIGF−1Rハイブリッド抗原結合分子は、IGF−1Rに特異的なScFv融合体1つと、EGFRに特異的な融合体1つとを含有することから、両方の受容体に結合するはずである。
【0249】
【表2】

【0250】
表2に纏めたように、全てのトランスフェクションにおいて、IGF−1R抗体が検出可能であった。
【0251】
実施例6:EGFRハイブリッド抗原結合分子はA431細胞の表面からAlexa fluor488標識EGFを除去可能である
【0252】
293−EBNA細胞により産生されたEGFR V領域hCGサブユニット融合タンパク質の活性を競合的結合アッセイにより評価した。Centriprep YM-10カラム(MILLIPORE)を用いて培養上清を約10倍濃縮した。Alexa fluor488標識EGF複合体(MOLECULAR PROBES)を精製抗EGFR M225抗体(CALBIOCHEM カタログ番号GR13)又は濃縮培養上清と混合した。各試料に20,000〜40,000のA431細胞(ATCC CRL−1555)を加え、室温で1時間インキュベートした。EGF複合体の最終濃度は100ng/mlであった。平均蛍光強度(MFI)をGuava Easycyteを用いて測定した。代表的なアッセイの結果を図21及び図22に示す。
【0253】
図21に示すように、得られた結果は、1価VH−AAA−hCGβ+VL−AA−α(1−87)ヘテロ二量体、及び、βサブユニットに融合したScFv分子のヘテロ二量体(2価構築体、トランスフェクション2〜4)が、M225抗体対照の種々の希釈物と同様に、EGF結合の良好な競合物であることを示していた。また、1価のScFv分子を含有する培養上清(トランスフェクト7〜10)も、A431細胞の表面からEGFを除去したが、それほど有効ではなかった。VH−AAA−hCGβ+α(1−87)、VL−AA−α(1−87)+hCGβ、hCG足場単独(試料#11)を含有する培養上清、及び、モックトランスフェクト細胞由来の培養上清は、EGF除去活性を示さなかった。
【0254】
図22に示すように、トランスフェクション1〜4及び11の濃縮培養上清の2倍連続希釈物の競合的結合活性を、精製M225抗体の希釈物と比較した。結果は、図21に示す結果と一致しており、EGFR VH/VL−hCG抗体及びEGFR ScFv−hCG抗体が適切に折り畳まれて分泌され、EGFRに結合してEGFを除去し得る分子を形成したことを示している。
【0255】
実施例7:hCGα(1−87)とhCGβサブユニットのC末端へのEGFR可変領域の融合
【0256】
また、EGFR V領域を、hCGサブユニットのC末端、或いはN末端及びC末端の両方に融合してもよい。本実施例では、以下の組成を有するC末端融合体:hCGサブユニット−(+/−リンカー)−VH−リンカー−VL;hCGサブユニット−(+/−リンカー)−VH;及びhCGサブユニット−(+/−リンカー)−VLについて説明する。この構成は限定的なものではない。リンカー含有又は非含有の他の組成、例えばhCGサブユニット−(+/−リンカー)−VL−リンカー−VHも考えられる。
【0257】
融合タンパク質をクローニング又は構築するためのPCR断片は、以下のプライマー及び鋳型を用いて合成することができる。
【0258】
EGFR VL断片1(hCGβへの融合):
5’−CGATCCTCCCACAAGACATCTTGCTGACTCAGTCTCCAGTC−3’(配列番号25)及び
EGFR VLsal又はEGFRVLxho
鋳型:VL領域をコード化するプラスミド
【0259】
EGFR ScFv断片1(リンカーの無いα(1−87)への融合):
5’−GCGTGCCACTGCAGTACTTGTCAGGTGCAGCTGAAGCAGTCAG−3’(配列番号26)及び
EGFRVLsal又はEGFRVLxho
鋳型:EGFR ScFv(VH−リンカー−VL)をコード化するプラスミド
【0260】
EGFR ScFv断片2(GFSASPAFFリンカーを有するα(1−87)への融合):
5’−GGTTTTAGCGCTTCTCCAGCATTCTTCCAGGTGCAGCTGAAGCAGTCAG−3’(配列番号27)及び
EGFR VLsal又はEGFR VLxho
鋳型:EGFR ScFv(VH−リンカー−VL)をコード化するプラスミド
【0261】
EGFR ScFv断片3(hCGβへの融合):
5’−ACACCCCGATCCTCCCACAACAGGTGCAGCTGAAGCAGTCAG−3’(配列番号28)及び
EGFR VLsal又はEGFR VLxho
【0262】
α(1−87)断片1(リンカー無し):
プライマー:hGHsp(−int)+
5’−CTGACTGCTTCAGCTGCACCTGACAAGTACTGCAGTGGCACGC−3’(配列番号29)
鋳型:hGHシグナルペプチドを有するα(1−87)をコード化するプラスミド
【0263】
α(1−87)断片2(リンカー有り):
プライマー:hGHsp(−int)+
5’−CTGACTGCTTCAGCTGCACCTGGAAGAATGCTGGAGAAGCGCTAAAACC−3’(配列番号30)
鋳型:hGHシグナルペプチドを有するα(1−87)をコード化するプラスミド
【0264】
HCGβ断片1(VL融合体):
hGHsp(−int)及び
5’−CTGAGTCAGCAAGATGTCTTGTGGGAGGATCGGGGTGTCCGA−3’(配列番号31)
鋳型:hGHシグナルペプチドを有するhCGβをコード化するプラスミド
【0265】
HCGβ断片2(ScFv融合体):
hGHsp(−int)及び
5’−CTGACTGCTTCAGCTGCACCTGTTGTGGGAGGATCGGGGTGT−3’(配列番号32)
鋳型:hGHシグナルペプチドを有するhCGβをコード化するプラスミド
【0266】
α(1−87)−EGFR ScFv 構築体については、第2工程PCRは以下の通り行なうことができる。
【0267】
プライマー:hGH(+int)sp、及び、225VLsal又は225Vlxho
鋳型:α(1−87)断片1(リンカー無し)、及び、EGFR ScFv断片1(リンカー無しでα(1−87)に融合)
【0268】
α(1−87)−GFSASPAFF EGFR ScFv構築体については、第2工程PCRは以下の通り行なうことができる。
【0269】
プライマー:hGH(+int)sp、及び、EGFR VLsal又はEGFR Vlxho
鋳型:α(1−87)断片2(リンカー有り)、及び、EGFR ScFv断片2(リンカーを介しα(1−87)に融合)
【0270】
α(1−87)−EGFR VH構築体については、PCRは以下の通り行なうことができる。
【0271】
プライマー:hGH(+int)sp、及び、VHstop
鋳型:α(1−87) EGFR ScFv
【0272】
hCGβ−EGFR ScFv構築体については、第2工程PCRは以下の通り行なうことができる。
【0273】
プライマー:hGH(+int)sp、及び、EGFR VLsal又はEGFR Vlxho
鋳型:EGFR ScFv断片3(hCGβへの融合)、及び、hCGβ断片2(ScFv融合体)
【0274】
hCGβ−EGFR VL構築体については、第2工程PCRは以下の通り行なうことができる。
【0275】
プライマー:hGH(+int)sp、及び、EGFR VLsal又はEGFR Vlxho
鋳型:HCGβ断片1(VL融合)、及び、EGFR VL断片1(hCGβに融合)
【0276】
製造業者の提供するプロトコールを用いて、PCR断片をpENTR/D−TOPO(INVITROGEN)にクローン化した。DNA配列解析を用いて、正しく構成された構築体であることを確認した。融合タンパク質をコード化する領域を、実施例1に記載のようにGateway修飾哺乳動物細胞発現ベクターに移送した。
【0277】
実施例8:4価ハイブリッド分子
【0278】
以下は、hCGのαサブユニット又はβサブユニットと、VEGF特異的抗原結合成分及びEGFR特異的抗原結合成分とを含んでなる、本発明の非限定な実施例である。
【0279】
Fab12scFvHL−α(1−87)(GGGS)4−EGFRscFV(図28)
【0280】
Fab12scFvHL−hCGβ−EGFRscFV(図29)
【0281】
VEGF(2)scFvHL−AA−α(1−87)−(GGGS)4−225scFvHL(図30)
【0282】
VEGF(2)scFvHL−AAA−hCGβ−EGFRscFvHL(図31)
【0283】
VEGF(2)scFvLH−AA−α(1−87)−(GGGS)4−225scFvHL(図32)
【0284】
VEGF(2)scFvLH−AAA−hCGβ−EGFRscFvHL(図33)
【0285】
V2LH−AA−α(1−87)−TOM−LH(図34)
【0286】
V2−LH−hCGβ−TOM LH(図35)
【0287】
TOM−α−V2−LH(図36)
【0288】
TOM hCGβ−V2−LH(図37)
【0289】
ある非限定的な実施例によれば、上述の図に示すポリペプチドをコード化する構築体を、同一ベクター上又は異なるベクター上で、上記修飾α鎖の1つ及び上記修飾β鎖の1つと同時発現させることにより、本発明のハイブリッド分子を形成した。得られるハイブリッド分子は、VEGF及びEGFRの両方に結合することができる。
【0290】
【表3】

【0291】
実施例9:ヒト化EGFR特異的ハイブリッド分子
【0292】
EGFR特異的抗原結合成分のCDRをヒト抗体の可変領域フレームワークにグラフト化することにより、該抗原結合成分のヒト化体を調製した。得られたヒト化EGFR特異的抗原結合成分(huEGFR)を、hCGのα(1−87)又はβサブユニットに融合させた。huEGFR−α(1−87)のアミノ酸配列を図38に、huEGFR−hCGβのアミノ酸配列を図39に示す。両方の鎖を同時発現させると、生じたハイブリッド分子は高度に発現され、安定であった。
【0293】
実施例10:huEGFRを含んでなる4価ハイブリッド分子
【0294】
以下は、hCGのα鎖又はβ鎖、VEGF特異的抗原結合成分、及びEGFR特異的抗原結合成分を含んでなる、本発明の非限定な実施例である。
【0295】
huEGFR−α(1−87)−V2LH(図40)
【0296】
huEGFR−hCGβ−V2−LH(図41)
【0297】
ある非限定な実施例によれば、上述の図に示すポリペプチドをコード化する構築体を、同一ベクター上又は異なるベクター上で、上記修飾α鎖の1つ及び上記修飾β鎖の1つと同時発現させることにより、本発明のハイブリッド分子を形成した。得られたハイブリッド分子は、VEGF及びEGFRの両方に結合することが可能である。
【0298】
【表4】

【0299】
実施例11:IGF−1R特異的抗原結合成分を含んでなるハイブリッド分子
【0300】
以下は、hCGのα鎖又はβ鎖の何れかとIGF−1R特異的抗原結合成分とを含んでなる、本発明の非限定な実施例である。
【0301】
A12(LH)α(1−87)(図42)
【0302】
A12(LH)hCGβ(図43)
【0303】
EM164(LH)scFv−α(1−87)(図44)
【0304】
EM164(LH)scFv−hCGβ(図45)
【0305】
19D12(LH)scFvα(1−87)(図46)
【0306】
19D12(LH)scFv−hCGβ(図47)
【0307】
ある非限定な実施例によれば、上述の図に示すポリペプチドをコード化する構築体を、同一ベクター上又は異なるベクター上で、上記修飾α鎖の1つと上記修飾β鎖の1つを同時発現させることにより、本発明のハイブリッド分子を形成した。得られたハイブリッド分子は、IGF−1Rに結合することが可能である。
【0308】
【表5】

【0309】
実施例11:安定化変異
【0310】
ScFv等の抗原結合成分の安定化は、以下にEGFR特異的ScFvについて例示するように、VH領域とVL領域との間にジスルフィド結合を導入することにより行なうことができる。
【0311】
EGFR scFv VH−E105C/VL−H34C変異体(図48)
【0312】
EGFR scFv VH−W109C/VL−S43C変異体(図49)
【0313】
EGFR scFv VH−A107C/VL−L46C変異体(図50)
【0314】
EGFR scFv VH−L45C/VL−F98C変異体(図51)
【0315】
EGFR scFv VH−G112C/VL−S43C変異体(図52)
【0316】
実施例12:EGFR特異的ハイブリッド抗原結合分子のインビボでの効力
【0317】
本発明のEGFR特異的ハイブリッド抗原結合分子(EGFR−SHARC)について、ヒト類表皮癌異種移植腫瘍モデルであるA431中の腫瘍細胞に対するインビボでの効力を試験した。要約:すると、A431細胞を10%RPMIを用いてコンフルエンスになるまで増殖させ、トリプシン処理して採取した。トリパンブルー排除により細胞の生存活性を試験し、洗浄し、PBSに再懸濁させた。無胸腺ヌードマウスに1匹当たり5×106個のA431細胞を腹腔内注射し、種々の用量のErbitux、PBS、又はEGFR−SHARCで処理した。デジタルカリパスを用いて週に2回腫瘍サイズを測定し、腫瘍容積を測定した。試験の15日目にマウスを安楽死させ、腫瘍を切り出し、重量を測定した。EGFR−SHARCはPBS単独の陰性対照と比較してA431細胞の腫瘍増殖を完全に阻害した。各群15匹の無胸腺マウスの5群を以下に従って処理した。
【0318】
【表6】

【0319】
本明細書を最大限に理解するには、本明細書で引用した文献の教示を考慮する必要がある。これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の実施態様は、本開示における実施態様を例示するものであり、決してその範囲を限定するものではない。当業者であれば容易に認識するように、本発明の実施態様は他にも多数存在する。本開示において引用された刊行物及び特許、並びに受入番号又はデータベース参照番号で特定される配列は、何れもその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における文献の引用は、かかる文献が本開示の先行技術であることを認めるものではない。
【0320】
別途明記される場合を除き、本明細書(及び特許請求の範囲)で使用される、成分、細胞培養物、処理条件等の量を示す全ての数値は、如何なる場合にも「約」という語で修飾されると解すべきである。従って、別途明記される場合を除き、数値パラメータは近似値であり、本発明で得ようとする所望の性質に応じて変動する。別途明記される場合を除き、一群の要素に先行する「少なくとも」という語は、その群中の全ての要素を指すものと理解すべきである。当業者は、本発明の明細書に記載された具体的な実施態様と同等の多数の態様を認識し、或いは定型的な実験法の範囲を超えない実験によって確認し得るであろう。添付の特許請求の範囲は、かかる同等の態様を包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0321】
【図1】EGFRに選択的に結合する抗体(EGFR抗体)の可変重鎖をコード化する新規合成ヌクレオチド配列を示す。
【図2】EGFRに選択的に結合する抗体(EGFR抗体)の可変軽鎖をコード化する新規合成ヌクレオチド配列を示す。
【図3】hCGのαサブユニットのアミノ酸1〜87に結合したhGHシグナルペプチドをコード化するヌクレオチド構築体を含んでなるpENTR1aベクター(INVITROGEN)の一部を示す。hCGのαサブユニットのアミノ酸1〜87に結合したhGHシグナルペプチドのアミノ酸配列も示される。
【図4】図4は、hCGのβサブユニットに結合したhGHシグナルペプチドをコード化するヌクレオチド構築体を含んでなるpENTR1aベクター(INVITROGEN)の一部を示す。hCGのβサブユニットに結合したhGHシグナルペプチドのアミノ酸配列も示される。
【図5A】アラニンリンカーを介してhCGのβサブユニットに結合したEGFRに選択的に結合する分子由来のVH領域をコード化するヌクレオチド配列を示す。
【図5B】図5Aに示した構築体によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図6A】アラニンリンカーを介してhCGのα(1−87)サブユニットに結合したEGFRに選択的に結合する分子由来のVL領域をコード化するヌクレオチド配列を示す。
【図6B】図6Aに示した構築体によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図7A】hCGのα(1−87)サブユニットに結合したEGFR抗体由来の可変領域を含んでなるScFv分子をコード化する構築体の核酸配列を示す。
【図7B】図7Aに示した構築体によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図8A】hCGのβサブユニットに結合したEGFR抗体由来の可変領域を含んでなるScFv分子をコード化する構築体の核酸配列を示す。
【図8B】図8Aに示した構築体によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図9】VEGFに選択的に結合する抗体の可変重鎖をコード化する新規合成ヌクレオチド配列を示す。
【図10】VEGFに選択的に結合する抗体の可変軽鎖をコード化する新規合成ヌクレオチド配列を示す。
【図11】VEGFに選択的に結合し、3’末端にIgG1ヒンジ領域(hng)を含むScFv分子(VH−VL)をコード化する新規合成ヌクレオチド配列を示す。
【図12】VEGFに選択的に結合し、3’末端にIgG1ヒンジ領域(hng)を含むScFv分子(VL−VH)をコード化する新規合成ヌクレオチド配列を示す。
【図13】IGF−1Rに選択的に結合する抗体のVH部分をコード化する新規合成ヌクレオチド配列を示す。
【図14】IGF−1Rに選択的に結合する抗体のVL部分をコード化する新規合成ヌクレオチド配列を示す。
【図15A】IGF−1RVHα(1−87)をコード化する核酸配列を示す。
【図15B】図15Aの核酸配列にコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図16A】IGF−1RVHhCGβをコード化する核酸配列を示す。
【図16B】図16Aの核酸配列にコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図17A】IGF−1RVLα(1−87)をコード化する核酸配列を示す。
【図17B】図17Aの核酸配列にコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図18A】IGF−1RVLhCGβをコード化する核酸配列を示す。
【図18B】図18Aの核酸配列にコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図19A】IGF−1RScFvhCGα(1−87)をコード化する核酸配列を示す。
【図19B】図19Aの核酸配列にコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図20A】IGF−1RScFvhCGβをコード化する核酸配列を示す。
【図20B】図20Bの核酸配列にコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図21】種々のEGFR可変領域ハイブリッド抗原結合分子構築体でトランスフェクトした細胞に由来する10×濃縮条件培養上清により、alexa fluor 488標識EGFをA431細胞の表面から除去した実験の結果を要約する棒グラフを示す。市販のEGFR抗体であるM225を対照として使用した。
【図22】種々のEGFR可変領域ハイブリッド抗原結合分子構築体でトランスフェクトした細胞に由来する連続希釈10×濃縮条件培養上清により、alexa fluor 488標識EGFをA431細胞の表面から除去した実験の結果を要約する棒グラフを示す。市販のEGFR抗体であるM225を対照として使用した。
【図23A】hCGα(1−87)−ScFv EGFRをコード化する核酸配列を示す。
【図23B】図23Aの核酸配列によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図24A】hCGα(1−87)GFASPAFF−ScFv EGFRをコード化する核酸配列を示す。
【図24B】図24Aの核酸分子によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図25A】α(1−87)−EGFRVHをコード化する核酸配列を示す。
【図25B】図25Aの分子によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図26A】hCGβ−ScFvEGFRをコード化する核酸配列を示す。
【図26B】図26Aの分子によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図27A】hCGβ−EGFRVLをコード化する核酸配列を示す。
【図27B】図27Bの分子によりコード化されるアミノ酸配列を示す。
【図28】VEGF特異的抗原結合成分、EGFR特異的抗原結合成分、及びリンカーを含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図29】VEGF特異的抗原結合成分及びEGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図30】VEGF特異的抗原結合成分、EGFR特異的抗原結合成分、及びリンカーを含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図31】VEGF特異的抗原結合成分、EGFR特異的抗原結合成分、及びリンカーを含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図32】VEGF特異的抗原結合成分、EGFR特異的抗原結合成分、及びリンカーを含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図33】VEGF特異的抗原結合成分、EGFR特異的抗原結合成分、及びリンカーを含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図34】VEGF特異的抗原結合成分、EGFR特異的抗原結合成分、及びリンカーを含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図35】VEGF特異的抗原結合成分及びEGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図36】VEGF特異的抗原結合成分及びEGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図37】VEGF特異的抗原結合成分及びEGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図38】ヒト化EGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図39】ヒト化EGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図40】ヒト化EGFR特異的抗原結合成分及びVEGF特異的抗原結合成分を含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図41】ヒト化EGFR特異的抗原結合成分及びVEGF特異的抗原結合成分を含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図42】IGF−1R特異的抗原結合成分を含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図43】IGF−1R特異的抗原結合成分を含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図44】IGF−1R特異的抗原結合成分を含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図45】IGF−1R特異的抗原結合成分を含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図46】IGF−1R特異的抗原結合成分を含んでなるhCGα鎖(1−87)のアミノ酸配列を示す。
【図47】IGF−1R特異的抗原結合成分を含んでなるhCGβ鎖のアミノ酸配列を示す。
【図48】EGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCG変異体のアミノ酸配列を示す。
【図49】EGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCG変異体のアミノ酸配列を示す。
【図50】EGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCG変異体のアミノ酸配列を示す。
【図51】EGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCG変異体のアミノ酸配列を示す。
【図52】EGFR特異的抗原結合成分を含んでなるhCG変異体のアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン又はその断片の2本のポリペプチド鎖を含んでなるハイブリッド抗原結合分子であって、前記ポリペプチド鎖の少なくとも1本が抗原結合成分を含んでなり、前記2本のポリペプチド鎖が二量体化してヘテロ二量体を形成する分子。
【請求項2】
抗原結合成分とヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンとの間に挿入されたリンカーペプチドを更に含んでなる、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項3】
リンカーペプチドがAA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCからなる群より選択される、請求項2記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項4】
前記抗原結合成分が少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含んでなる、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項5】
前記抗原結合成分が抗体の抗原結合部分である、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項6】
前記抗原結合成分が、工学操作された抗原結合成分である、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項7】
前記抗原結合成分が可溶性分子に選択的に結合する、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項8】
前記抗原結合成分が、サイトカイン及び成長因子からなる群より選択される可溶性分子に選択的に結合する、請求項7記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項9】
前記可溶性分子がVEGFである、請求項7記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項10】
前記抗原結合成分が細胞結合分子に選択的に結合する、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項11】
前記細胞結合分子が細胞表面受容体である、請求項10記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項12】
前記細胞表面受容体がEGF受容体及びIGF受容体からなる群より選択される、請求項11記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項13】
前記タンパク質性ヘテロ二量体ホルモンが、FSH、インヒビン、hCG、LHからなる群より選択される、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項14】
前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの生物活性が低減又は消失するように、前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの少なくとも1本のポリペプチド鎖が、1又は2以上の改変を含んでなる、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項15】
前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンがhCGである、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項16】
前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンが、αサブユニット及びβサブユニットを含んでなるhCGであり、hCGのαサブユニットが、その生物活性を低減又は消失させる1又は2以上の改変を含んでなる、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項17】
前記1又は2以上の改変が、hCGのα鎖のアミノ酸88〜92の欠失を含んでなる、請求項16記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項18】
少なくとも1つの抗原結合成分が、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン又はその断片の少なくとも1本のポリペプチドのアミノ末端に結合している、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項19】
少なくとも1つの抗原結合成分が、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン又はその断片の少なくとも1つのアミノポリペプチド鎖のカルボキシ末端に結合している、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項20】
少なくとも1つの抗原結合成分が、重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメイン、相補性決定領域、Fab断片、及びscFv分子からなる群より選択される、請求項1記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項21】
融合タンパク質をコード化する単離DNA分子であって、
(a)可溶性分子に選択的に結合する抗原結合成分をコード化する第1のヌクレオチド配列、及び
(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片をコード化する第2のヌクレオチド配列を含んでなり、
前記のサブユニット又はその断片が、ヘテロ二量体性ホルモンの別のサブユニットとヘテロ二量体を形成し得る、単離DNA分子。
【請求項22】
前記可溶性分子が、サイトカイン及び成長ホルモンからなる群より選択される、請求項21記載の単離DNA分子。
【請求項23】
前記可溶性分子がVEGFである、請求項22の単離DNA分子。
【請求項24】
融合タンパク質をコード化する単離DNA分子であって、
(a)細胞結合分子に選択的に結合する抗原結合成分をコード化する第1のヌクレオチド配列、及び
(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片をコード化する第2のヌクレオチド配列を含んでなり、
前記のサブユニット又はその断片が、ヘテロ二量体性ホルモンの別のサブユニットとヘテロ二量体を形成し得る、単離DNA分子。
【請求項25】
前記細胞結合分子が細胞表面受容体である、請求項24記載の単離DNA分子。
【請求項26】
前記細胞表面受容体が、EGFR及びIGFRからなる群より選択される、請求項25記載の単離DNA分子。
【請求項27】
請求項21又は請求項24に記載の核酸分子によりコード化される融合タンパク質。
【請求項28】
前記第1のヌクレオチド配列と前記第2のヌクレオチド配列とが互いに直接結合している、請求項21又は請求項24に記載の単離核酸分子。
【請求項29】
前記第1のヌクレオチド配列と前記第2のヌクレオチド配列との間に挿入された、ペプチドリンカーをコード化するヌクレオチド配列を更に含んでなる、請求項21又は請求項24に記載の単離核酸分子。
【請求項30】
(a)可溶性分子に選択的に結合する抗原結合成分の第1のアミノ酸配列、及び
(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片の第2のアミノ酸配列を含んでなり、
前記のサブユニット又はその断片が、ホルモンの別のサブユニットとヘテロ二量体を形成し得る、融合タンパク質。
【請求項31】
前記可溶性分子が、サイトカイン及び成長ホルモンからなる群より選択される、請求項30記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記可溶性分子がVEGFである、請求項31記載の融合タンパク質。
【請求項33】
(a)細胞結合分子に選択的に結合する抗原結合成分の第1のアミノ酸配列、及び
(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片の第2のアミノ酸配列を含んでなり、
前記のサブユニット又はその断片は、ホルモンの別のサブユニットとヘテロ二量体を形成し得る、融合タンパク質。
【請求項34】
前記細胞結合分子が細胞表面受容体である、請求項33記載の融合タンパク質。
【請求項35】
前記細胞表面受容体が、EGFR及びIGFRからなる群より選択される、請求項34記載の融合タンパク質。
【請求項36】
(a)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片のアミノ酸配列に結合してなる、VEGF結合成分のアミノ酸配列;
(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片のアミノ酸配列に結合してなる、EGFR結合成分のアミノ酸配列;及び
(c)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片のアミノ酸配列に結合してなる、IGFR結合成分のアミノ酸配列;
からなる群より選択される融合タンパク質。
【請求項37】
アミノ酸配列の間に挿入されたリンカーペプチドを更に含んでなる、請求項36記載の融合タンパク質。
【請求項38】
前記リンカーペプチドが、AA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCからなる群より選択される、請求項37記載の融合タンパク質。
【請求項39】
前記融合タンパク質が分泌される、請求項36記載の融合タンパク質。
【請求項40】
前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンが、hCG、FSH、LH、TSH、及びインヒビンからなる群より選択される、請求項36記載の融合タンパク質。
【請求項41】
(a)第1のヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン又はその断片のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;及び
(b)前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの第2のサブユニット又はその断片のアミノ酸配列に結合した少なくとも1つの可溶性分子に選択的に結合する抗原結合成分のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを含んでなり、
前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの第1及び第2のサブユニットが、互いに二量体化し得る、ハイブリッド抗原結合分子。
【請求項42】
(a)第1のヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン又はその断片のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;及び
(b)ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの第2のサブユニット又はその断片のアミノ酸配列に結合した少なくとも1つの細胞結合分子に選択的に結合する抗原結合成分のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを含んでなり、
前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンの第1及び第2のサブユニットが、互いに二量体化し得る、ハイブリッド抗原結合分子。
【請求項43】
前記抗原結合成分のアミノ酸配列が、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニットのアミノ酸配列に、ペプチドリンカーを介して結合している、請求項41又は請求項42のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項44】
前記ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンが、LH、FSH、インヒビン、及びhCGからなる群より選択される、請求項41又は請求項42に記載のハイブリッド抗原結合分子。
【請求項45】
前記ペプチドリンカーが、AA、AAA、GADK、GFASPAFF、DETYVPKEFNAE、DKTHTCPPCPAPELLGGAA、DKTHTCPPCPAPELLGGAAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAA、DKTHTSPPSPAPELLGGAAA、GGGS、(GGGS)2、GGGGS、(GGGGS)2、(GGGGS)4、GGGGCからなる群より選択される、請求項41又は請求項42に記載のハイブリッドポリペプチド。
【請求項46】
融合タンパク質をコード化する核酸分子を含んでなる発現ベクターであって、前記融合タンパク質が、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片のアミノ酸配列に結合した抗原結合成分のアミノ酸配列を含んでなる、発現ベクター。
【請求項47】
ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン受容体のポリペプチドサブユニット又はその断片をコード化する少なくとも2つの核酸分子を含んでなる発現ベクターであって、前記核酸分子の少なくとも1つが、抗原結合成分のアミノ酸配列を更にコード化するとともに、前記2つの核酸分子によりコード化されるポリペプチドがヘテロ二量体を形成し得る、発現ベクター。
【請求項48】
請求項47又は請求項48に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
【請求項49】
2本のポリペプチド鎖を含んでなるハイブリッド抗原結合分子の有効量を含んでなる医薬組成物であって、各ポリペプチド鎖が、VEGF、EGFR、及びIGF−1Rから選択される分子であって、hCG、FSH、LH、TSH、インヒビンからなる群より選択されるヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのサブユニット又はその断片に結合した分子に、選択的に結合する抗原結合成分のアミノ酸配列を含んでなり、前記ハイブリッド抗原結合分子が、VEGF、EGFR、及びIGF−1Rのうち1又は2以上の活性に拮抗する、医薬組成物。
【請求項50】
ハイブリッド抗原結合分子を作製する方法であって:
(a)細胞を2つのベクターでトランスフェクトする工程であって、各ベクターが、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン又はその断片のポリペプチド鎖をコード化する核酸分子を含んでなり、前記核酸分子の少なくとも1つが、抗原結合分子をコード化するアミノ酸配列を更にコード化する、工程;及び
(b)細胞を適切な条件下で培養することにより、ハイブリッド抗原結合分子を産生する工程を含んでなる方法。
【請求項51】
前記ハイブリッド抗原結合分子の活性を調べる工程を更に含んでなる、請求項51記載の方法。
【請求項52】
対象中の細胞増殖を調節する方法であって、
ハイブリッド抗原結合分子を対象に投与する工程を含んでなり、
前記ハイブリッド抗原結合分子が、
a)細胞増殖を調節する分子であって、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのαサブユニットのアミノ酸配列に結合した分子に結合する0〜2の抗原結合成分を含んでなる、第1のポリペプチド鎖と、
b)細胞増殖を調節する分子であって、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのβサブユニットのアミノ酸配列に結合した分子に結合する0〜2の抗原結合成分を含んでなる、第2のポリペプチド鎖とを含んでなり、
前記対象の細胞増殖が調節されるように、前記ハイブリッド抗原結合分子が少なくとも1つの抗原結合成分を含んでなり、ヘテロ二量体を形成する、方法。
【請求項53】
癌細胞の増殖が低減される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
対象中の細胞増殖を調節する方法であって、
ハイブリッド抗原結合分子を対象に投与する工程を含んでなり、
前記ハイブリッド抗原結合分子が、
a)細胞増殖を調節する分子であって、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのαサブユニットのアミノ酸配列に結合した分子に結合する0〜4の抗原結合成分を含んでなる、第1のポリペプチド鎖と、
b)細胞増殖を調節する分子であって、ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモンのβサブユニットのアミノ酸配列に結合した分子に結合する0〜4の抗原結合成分を含んでなる、第2のポリペプチド鎖とを含んでなり、
前記ハイブリッド抗原結合分子が少なくとも1つの抗原結合成分を含んでなり、ヘテロ二量体を形成し、且つ、前記対象において抗原を発現する細胞集団が検出されるように、前記ハイブリッド抗原結合分子が検出可能に標識される、方法。
【請求項55】
癌細胞集団が検出される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
ヘテロ二量体性タンパク質系ホルモン又はその断片の2本のポリペプチド鎖を含んでなるハイブリッド抗原結合分子であって、前記ポリペプチド鎖が何れも抗原結合成分を含んでなり、前記2本のポリペプチド鎖が二量体化してヘテロ二量体を形成する、分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【公表番号】特表2009−516513(P2009−516513A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541421(P2008−541421)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045056
【国際公開番号】WO2007/062037
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507348713)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (29)
【Fターム(参考)】