説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】無段変速モードを実現可能なハイブリッド車両において燃費を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置(100)は、無段変速モードを実現可能なハイブリッド車両(1)の制御装置であって、内燃機関(200)の回転数及びトルクに基づいて最適熱効率を算出する最適熱効率算出手段(110)と、内燃機関の回転数及び要求パワに基づいて推定熱効率を算出する推定熱効率算出手段(120)と、最適熱効率及び推定熱効率の熱効率差を算出する熱効率差算出手段(130)と、熱効率差が所定の閾値以上であるか否かを判定する判定手段(140)と、熱効率差が所定の閾値以上である場合には、内燃機関の回転数を最適燃費線上の回転数になるよう制御し、熱効率差が所定の閾値以上でない場合には、内燃機関の回転数を保持するように制御する回転数制御手段(150)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関及び回転電機を備えたハイブリッド車両を制御する制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハイブリッド車両では、変速比を連続的に変化させる無段変速機が用いられる。無段変速機では、例えば内燃機関の熱効率に基づく最適燃費線を利用して動作点を決定することで、燃費の向上が図られている。例えば特許文献1では、実用域において低回転側の最適燃費線を利用することで、イナーシャトルク分の燃料消費量を抑制するという技術が提案されている。他方で、例えば特許文献2では、発電効率及び充電効率を考慮し、燃料消費に関して最も効率よく充電できるように内燃機関の出力を設定するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−328464号公報
【特許文献2】特開平09−098516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に係る技術では、要求エンジンパワに対するエンジン動作点が一つに限定されている。このため、アクセル操作等により要求エンジンパワが変化すると、エンジン回転数も合わせて変化することになり、結果的にイナーシャトルク分のエネルギが必要となってしまう。このように、上述した特許文献1に係る技術には、燃費を十分に向上させることができないという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、燃費を効果的に向上させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は上記課題を解決するために、内燃機関及び回転電機を動力要素として備えており、無段変速モードを実現可能なハイブリッド車両の制御装置であって、前記内燃機関の回転数及びトルクに基づいて最適熱効率を算出する最適熱効率算出手段と、前記内燃機関の回転数及び要求パワに基づいて推定熱効率を算出する推定熱効率算出手段と、前記最適熱効率及び前記推定熱効率の熱効率差を算出する熱効率差算出手段と、前記熱効率差が所定の閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、前記熱効率差が所定の閾値以上である場合には、前記内燃機関の回転数を最適燃費線上の回転数になるよう制御し、前記熱効率差が所定の閾値以上でない場合には、前記内燃機関の回転数を保持するように制御する回転数制御手段とを備える。
【0007】
本発明に係るハイブリッド車両は、駆動軸に対し動力を供給可能な動力要素として、燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等を問わない各種の態様を採り得る内燃機関と、例えばモータジェネレータ等の電動発電機として構成され得る回転電機とを少なくとも備えた車両である。尚、内燃機関及び回転電機は、例えば遊星歯車機構等として構成される動力伝達機構に夫々接続され、回転電機から出力される動力を内燃機関に伝達可能とされている。動力伝達機構は、無段変速モード(即ち、変速比を連続的に変化させるモード)を実現可能に構成されている。
【0008】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、このようなハイブリッド車両を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
【0009】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の動作時には、先ず最適熱効率算出手段によって最適熱効率が算出される。最適熱効率は、最適燃費線上の熱効率であり、内燃機関の回転数及びトルクに基づいて算出される。
【0010】
他方で、推定熱効率算出手段によって推定熱効率が算出される。推定熱効率は、現在の内燃機関の回転数で要求パワ(即ち、内燃機関に求められる出力)を実現した場合の熱効率の推定値であり、内燃機関の回転数及び要求パワに基づいて算出される。
【0011】
最適熱効率及び推定熱効率が算出されると、熱効率差算出手段によって最適熱効率と推定熱効率との熱効率差が算出される。熱効率差は、現在の内燃機関の回転数を保持した状態で要求パワを実現した場合の熱効率(即ち、推定熱効率)が、最適燃費線上の熱効率(即ち、最適熱効率)から、どの程度乖離しているかを示す値である。
【0012】
熱効率差が算出されると、判定手段によって熱効率差が所定の閾値以上であるか否かが判定される。尚、ここでの「所定の閾値」は、後述する回転数制御手段による2種類の制御のうち、いずれの制御を行う方が燃費を向上させることができるかを判定するための閾値であり、内燃機関や動力伝達機構の仕様等に応じて、理論的、実験的、或いは経験的に適宜設定することができる。
【0013】
本発明では特に、熱効率差が所定の閾値以上である場合には、回転数制御手段によって、内燃機関の回転数が最適燃費線上の回転数になるよう制御される。即ち、推定熱効率が最適熱効率から比較的大きく乖離している場合には、内燃機関の回転数が最適燃費線上の回転数となるように変化させられる。これにより、最適燃費線を大きく外れることによる燃費の悪化を防止できる。
【0014】
一方で、熱効率差が所定の閾値以上でない場合には、回転数制御手段によって、内燃機関が現在の回転数を保持するように制御される。即ち、内燃機関の回転数は変化させられない。この場合、内燃機関の回転数が最適燃費線上からは多少外れてしまうものの、回転数を変化させない分、バッテリへの電力入出力が抑制される。従って、ハイブリッド車両における燃料消費全体として考えれば、内燃機関の回転数を最適燃費線上の回転数へと変化させる場合と比べて、燃費を向上させることができる。
【0015】
以上説明したように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、最適熱効率を考慮した上で内燃機関の回転数を変化させるか否かが決定される。従って、燃費を好適に向上させることが可能である。
【0016】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図2】ハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図3】エンジンの一断面構成を例示する模式図である。
【図4】実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の一連の動作を示すフローチャートである。
【図6】エンジンの熱効率を示すマップである。
【図7】エンジン回転数制御の具体例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0019】
先ず、本実施形態に係るハイブリッド車両の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、ハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0020】
図1において、本実施形態に係るハイブリッド車両1は、ハイブリッド駆動装置10、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13、車速センサ14及びECU100を備えて構成されている。
【0021】
ECU100は、CPU、ROM及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明の「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、例えばROM等に格納された制御プログラムに従って、ハイブリッド車両1における各種制御を実行可能に構成されている。
【0022】
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給する。また、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給することが可能な不図示のインバータを含んでいる。即ち、PCU11は、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された電力制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
【0023】
バッテリ12は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する充電可能な蓄電手段である。バッテリ12の蓄電量は、ECU100等において検出可能とされている。
【0024】
アクセル開度センサ13は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
【0025】
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
【0026】
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1のパワートレインとして機能する動力ユニットである。ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0027】
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、主にエンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、入力軸400、駆動軸500、減速機構600を備えて構成されている。
【0028】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成されている。ここで、図3を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、エンジンの一断面構成を例示する模式図である。
【0029】
尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも一の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。係る概念を満たす限りにおいて、本発明に係る内燃機関の構成は、エンジン200のものに限定されず各種の態様を有してよい。また、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図3においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。
【0030】
図3において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介して、クランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。
【0031】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転数NEが算出される構成となっている。
【0032】
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。一方、吸気ポート210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、吸気ポート210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
【0033】
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
【0034】
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的には不図示のアクセルペダルの開度(即ち、上述したアクセル開度Ta)に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
【0035】
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出される排気中のNOx(窒素酸化物)を還元すると同時に、排気中のCO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)を酸化可能に構成された触媒装置である。尚、触媒装置の採り得る形態は、このような三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
【0036】
排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。これら空燃比センサ217及び水温センサ218は、夫々ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比及び冷却水温は、夫々ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
【0037】
図2に戻り、モータジェネレータMG1は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた電動発電機である。モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた電動発電機である。尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、他の構成を有していてもよい。モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、本発明に係る「回転電機」の一例である。
【0038】
動力分割機構300は、中心部に設けられたサンギヤS1と、サンギヤS1の外周に同心円状に設けられた、リングギヤR1と、サンギヤS1とリングギヤR1との間に配置されてサンギヤS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギヤP1と、これら各ピニオンギヤの回転軸を軸支するキャリアC1とを備えている。
【0039】
ここで、サンギヤS1は、サンギヤ軸310を介してMG1のロータRT1に連結されており、その回転数はMG1の回転数Nmg1(以下、適宜「MG1回転数Nmg1」と称する)と等価である。また、リングギヤR1は、クラッチ710、駆動軸500及び減速機構600を介してMG2のロータRT2に結合されており、その回転数はMG2の回転数Nmg2(以下、適宜「MG2回転数Nmg2」と称する)と一義的な関係にある。更に、キャリアC1は、エンジン200の先に述べたクランクシャフト205に連結された入力軸400と連結されており、その回転数は、エンジン200の機関回転数NEと等価である。尚、ハイブリッド駆動装置10において、MG1回転数Nmg1及びMG2回転数Nmg2は、夫々レゾルバ等の回転センサにより一定の周期で検出されており、ECU100に一定又は不定の周期で送出されている。
【0040】
一方、駆動軸500は、ハイブリッド車両1の駆動輪たる右前輪FR及び左前輪FLを夫々駆動するドライブシャフトSFR及びSFLと、各種減速ギヤ及び差動ギヤを含む減速装置としての減速機構600を介して連結されている。従って、モータジェネレータMG2から駆動軸500に供給されるモータトルクTmg2は、減速機構600を介して各ドライブシャフトへと伝達され、各ドライブシャフトを介して伝達される各駆動輪からの駆動力は、同様に減速機構600及び駆動軸500を介してモータジェネレータMG2に入力される。従って、MG2回転数Nmg2は、ハイブリッド車両1の車速Vと一義的な関係にある。
【0041】
動力分割機構300は、係る構成の下で、エンジン200からクランクシャフト205を介して入力軸400に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1とピニオンギヤP1とによってサンギヤS1及びリングギヤR1に所定の比率(各ギヤ相互間のギヤ比に応じた比率)で分配し、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能となっている。
【0042】
以上説明したハイブリッド駆動装置10によれば、動力分割機構300の状態を変化させることで、無段変速モードを実現することができる。尚、動力分割機構300の構成は、図3で示した構成に限られない。
【0043】
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の一例であるECU100の具体的な構成について、図4を参照して説明する。ここに図4は、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
【0044】
図4において、ECU100は、最適熱効率算出部110、推定熱効率算出部120、熱高率差算出部130、判定部140、及び回転数制御部150を備えて構成されている。
【0045】
最適熱効率算出部110は、本発明の「最適熱効率算出手段」の一例であり、現在のエンジン200の回転数及びトルクに基づいて、最適熱効率ηoptを算出する。算出された最適熱効率ηoptの値は、熱効率差算出部130に出力される。
【0046】
推定熱効率算出部120は、本発明の「推定熱効率算出手段」の一例であり、現在のエンジン200の回転数及び要求エンジンパワ(即ち、エンジン200に求められる出力)に基づいて、推定熱効率ηpreを算出する。算出された最適熱効率ηpreの値は、熱効率差算出部130に出力される。
【0047】
熱効率差算出部130は、本発明の「熱効率差算出手段」の一例であり、最適熱効率算出部110において算出された最適熱効率ηoptと、推定熱効率算出部120において算出された最適熱効率ηpreとの差を算出する。算出された熱効率差の値は、判定部140に出力される。
【0048】
判定部140は、本発明の「判定手段」の一例であり、熱効率差算出部130において算出された熱効率差(即ち、ηopt−ηpre)の値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。ここでの判定結果は、回転数制御部150に出力される。尚、所定の閾値は、例えばエンジン200や動力分割機構300等の仕様に基づいて予め設定され、判定部140が有するメモリ等に記憶されている。
【0049】
回転数制御部150は、本発明の「回転数制御手段」の一例であり、判定部140の判定結果に応じてエンジン200の回転数を制御する。回転数制御部150における具体的な制御方法については、後に詳述する。
【0050】
尚、ECU100は、上述した各部位を含んで構成された一体の電子制御ユニットであり、上記各部位に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記部位の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
【0051】
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作について、図5及び図6を参照して説明する。ここに図5は、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の一連の動作を示すフローチャートである。また図6は、エンジンの熱効率を示すマップである。
【0052】
図5において、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作時には、先ずエンジン200の状態(具体的には、回転数、トルク、要求エンジンパワ等)が、エンジン200に設けられた各種センサ等によって検出され、最適熱効率算出部110及び推定熱効率手段120に夫々入力される(ステップS01)。このようなエンジン200の状態検出は、典型的には、ハイブリッド車両1の走行中に定期的に行われる。
【0053】
エンジン状態が入力されると、最適熱効率算出部110では、現在のエンジン200の回転数及びトルクに基づいて最適熱効率ηoptが算出される(ステップS01)。一方で、推定熱効率算出部120では、現在のエンジン200の回転数及び要求エンジンパワに基づいて、推定熱効率ηpreが算出される(ステップS03)。
【0054】
図6において、エンジン200の回転数及びトルク、並びにエンジン200における熱効率及び出力には、図に示すような関係が成立する。最適熱効率算出部110及び推定熱効率算出部120の各々は、図6に示すようなマップ、或いはこのような関係を数式化したものを用いて、最適熱効率ηopt及び推定熱効率ηpreを夫々算出する。
【0055】
図5に戻り、最適熱効率ηopt及び推定熱効率ηpreが算出されると、熱効率差算出部130において、最適熱効率ηoptと推定熱効率ηpreとの差が算出される(ステップS04)。即ち、推定熱効率ηpreが、最適熱効率ηoptに対してどの程度乖離しているかが算出される。
【0056】
熱効率差が算出されると、判定部140において、熱効率差ηopt−ηpreが、所定の閾値以上であるか否かが判定される(ステップS05)。
【0057】
ここで本実施形態では特に、熱効率差ηopt−ηpreが所定の閾値以上である場合には(ステップS05:YES)、エンジン200の目標回転数が最適燃費線上に設定される(ステップS06)。従って、回転数制御部150によって、エンジン100の回転数が最適燃費線上の回転数になるよう制御される。このように、推定熱効率ηpreが最適熱効率ηoptから比較的大きく乖離している場合には、エンジン200の回転数が最適燃費線上の回転数となるように変化させられる。これにより、最適燃費線を大きく外れることによる燃費の悪化を防止できる。
【0058】
一方で、熱効率差ηopt−ηpreが所定の閾値以上でない場合には(ステップS05:NO)、回転数制御部150によって、エンジン200が現在の回転数を保持するように制御される。即ち、エンジン200の回転数は変化させられない。この場合、エンジン200の回転数が最適燃費線上からは多少外れてしまうものの、エンジン200の回転数を変化させない分、バッテリ12(図1参照)への電力入出力が抑制される。従って、ハイブリッド車両1における燃料消費全体として考えれば、エンジン200の回転数を最適燃費線上の回転数へと変化させる場合と比べて、燃費を向上させることができる。
【0059】
以下では、上述した回転数制御部150の具体的な制御について、図7を参照して説明する。ここに図7は、エンジン回転数制御の具体例を示すタイムチャートである。尚、図7では、常に最適燃費線上の動作点を実現しようとする比較例に係る制御を実線で示し、本実施形態に係る制御を破線で示している。
【0060】
図7において、ハイブリッド車両1の運転者のアクセル操作により、図に示すようにアクセル開度が変化させられたとする。この場合、時刻t1における比較的小さいアクセル開度の低下時には、エンジン200の熱効率(即ち、推定熱効率ηpre)がわずかしか変動しないため、閾値ラインを超えない。即ち、熱効率差ηopt−ηpreが所定の閾値以上とならない。このため、時刻t1では、エンジン200の回転数は保持される。
【0061】
一方で、比較例に係る制御では、最適燃費線上の動作点を実現するため、時刻t1においてエンジンの回転数が低下させられる。このような制御によれば、エンジンの熱効率は最適となるものの、バッテリ12における入出力に起因して全体的な燃費は悪化してしまう。これに対し、本実施形態に係る制御では、エンジン200の回転数を変化させない分、バッテリ12の入出力を抑制することができ、結果的に燃費を向上させることができる。
【0062】
アクセル開度が比較的小さく上昇する時刻t2においても、上述した時刻t1の場合と同様のことが言える。即ち、比較例に係る制御では、最適燃費線上の動作点を実現するため、時刻t2においてエンジンの回転数が上昇させられる。このような制御によれば、エンジンの熱効率は最適となるものの、バッテリ12における入出力に起因して全体的な燃費は悪化してしまう。これに対し、本実施形態に係る制御では、エンジン200の回転数を変化させない分、バッテリ12の入出力を抑制することができ、結果的に燃費を向上させることができる。
【0063】
続いて、比較的大きくアクセル開度が低下させられると、時刻t3においてエンジン200の熱効率が閾値ラインを超える。即ち、熱効率差ηopt−ηpreが所定の閾値以上となる。このため、時刻t3では、エンジン200の回転数は最適燃費線上の回転数へと速やかに低下させられる。よって、エンジン200の熱効率が最適熱効率ηoptと大きく乖離してしまうことによる燃費の悪化を防止することができる。
【0064】
同様に、比較的大きくアクセル開度が上昇させられると、時刻t4においてエンジン200の熱効率が閾値ラインを超える。即ち、熱効率差ηopt−ηpreが所定の閾値以上となる。このため、時刻t4では、エンジン200の回転数は最適燃費線上の回転数へと速やかに上昇させられる。よって、ここでもエンジン200の熱効率が最適熱効率ηoptと大きく乖離してしまうことによる燃費の悪化を防止することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、最適熱効率ηoptを考慮した上でエンジン200の回転数を変化させるか否かが決定される。従って、燃費を好適に向上させることが可能である。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1…ハイブリッド車両、10…ハイブリッド駆動装置、11…PCU、12…バッテリ、13…アクセル開度センサ、14…車速センサ、100…ECU、110…最適熱効率算出部、120…推定熱効率算出部、130…熱効率差算出部、140…判定部、150…回転数制御部、200…エンジン、300…動力分割機構、S1…サンギヤ、C1…キャリア、R1…リングギヤ、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、400…入力軸、500…駆動軸、600…減速機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関及び回転電機を動力要素として備えており、無段変速モードを実現可能なハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関の回転数及びトルクに基づいて最適熱効率を算出する最適熱効率算出手段と、
前記内燃機関の回転数及び要求パワに基づいて推定熱効率を算出する推定熱効率算出手段と、
前記最適熱効率及び前記推定熱効率の熱効率差を算出する熱効率差算出手段と、
前記熱効率差が所定の閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記熱効率差が所定の閾値以上である場合には、前記内燃機関の回転数を最適燃費線上の回転数になるよう制御し、前記熱効率差が所定の閾値以上でない場合には、前記内燃機関の回転数を保持するように制御する回転数制御手段と
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171598(P2012−171598A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38706(P2011−38706)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】