説明

ハニカム構造体

【課題】 PMの捕集限界値が高く、クラックの発生しにくいハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】 多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された複数のハニカム焼成体が接着剤層を介して結束されたハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、上記ハニカム焼成体は、複数の第1セルが形成される第1セル領域と、上記第1セル領域の一部又は全部を取り囲むように、上記第1セル領域の外周に位置する第1外周セル壁と上記ハニカム焼成体の外周に位置する第2外周セル壁との間に存在し、かつ、複数の第2セルが形成される第2セル領域とを有し、上記第2セル領域を規定する上記第2外周セル壁の少なくとも一部は、上記接着剤層に接し、上記第1セル及び上記第2セルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されており、上記ハニカム構造体において、第1端面の開口率は第2端面の開口率より大きく、上記第1端面において、上記第2セル領域の開口率は、上記第1セル領域の開口率より大きいことを特徴とするハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中に含有されるスス等のパティキュレート(以下、PMともいう)及びその他の有害成分が環境及び人体に害を及ぼすことが最近問題となっている。そこで、排ガス中のPMを捕集して排ガスを浄化するハニカムフィルタとして、多孔質セラミックからなるハニカム構造体が種々提案されている。
【0003】
図12は、従来のハニカム構造体の一例(特許文献1参照)を模式的に示す斜視図であり、図13(a)は、上記従来のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、図13(b)は、そのA−A線断面図である。図12に示す従来のハニカム構造体70では、炭化ケイ素等からなるハニカム焼成体80が、接着剤層72を介して複数個結束されてハニカムブロック71が構成され、このハニカムブロック71の周囲にコート層73が形成されている(以下、複数のハニカム焼成体を含むハニカム構造体を集合型ハニカム構造体ともいう)。
【0004】
ハニカム焼成体80において、図13(a)及び図13(b)に示すように、多数のセル81は、排ガスの流入側及び流出側の端部のいずれか一方の端部が封止材82により封止され、一のセル81に流入した排ガスは、必ずセル81を隔てるセル壁83を通過した後、他のセル81から流出するようになっている。言い換えると、セル81同士を隔てるセル壁83が排ガス中のPMを捕集するフィルタとして機能するようになっている。
【0005】
フィルタとしての運転を続けてPMの捕集量が一定量に達した場合には、捕集したPMを燃焼除去するためハニカム構造体の再生処理を行う。ただ、再生処理を行うとPMの燃焼に多量のエネルギーが必要となる。そこで、再生処理の間隔を長くして内燃機関の運転効率を向上させるために、ハニカム構造体のPM捕集量を大きくすることが望まれる。一方、あまりに多くのPMを捕集して再生処理を行うと、PM燃焼に伴う熱量が大きくなりすぎて、熱応力ないし熱衝撃によるクラックが発生する。こうした事情を加味して、PMの捕集量としては最大限であって、かつ、クラックを発生させない捕集量としての捕集限界値は決定されている。
【0006】
この捕集限界値を高める方策として、排ガス流入側のセルの開口率を高めることにより、PMの捕集限界値を高めた集合型ハニカム構造体が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−255574号公報
【特許文献2】国際公開第2004/024293号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
捕集限界値を高める別の方策としては、例えば、ハニカム構造体の重量を増やして熱容量を上げることで、PM燃焼時の急激な熱応力の発生を抑制する方策等が挙げられる。ところが、この方策では次のような問題が生じやすくなっている:(1)セル壁量を増加させるためにセル密度を高くすると、ハニカム構造体の製造自体が困難となる;(2)セル壁を厚くして重量を増加させると、フィルタの別の要求性能である圧力損失値が大きくなってしまう;(3)ハニカム構造体の重量が増加させることにより、車両全体の軽量化を図れなくなったり、ハニカム構造体を設置するための装備の高規格化を余儀なくされて、費用面の負担が大きくなったりする。
【0009】
また、図12及び図13(a)、(b)に示すような従来の集合型ハニカム構造体では、複数のハニカム焼成体の間に接着剤層が形成されている。接着剤層はPM捕集機能を有していないので、ハニカム構造体の再生処理を行っても接着剤層ではPMの燃焼は生じない。一方で、PMを捕集したセル壁ではPMが燃焼することから、PM燃焼が生じているセル壁とPM燃焼の生じない接着剤層に近接するセル壁との間で温度差が発生し、この温度差によってハニカム構造体にクラックが発生する。
【0010】
そして、上記のような温度差によりクラックが発生するとなると、捕集限界値を下げざるを得なくなり、ハニカム構造体の捕集限界値を高くしてほしいという顧客の要望にも応えられなくなる。こうした現象は、開口率が排ガス流入側の端面と排ガス流出側の端面とで同じ従来の集合型ハニカム構造体であっても、特許文献2に記載の従来のハニカム構造体のような開口率が排ガス流入側の端面と排ガス流出側の端面とで異なる集合型ハニカム構造体であっても発生する。
【0011】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、PMの捕集限界値が高く、クラックの発生しにくいハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載のハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された複数のハニカム焼成体が接着剤層を介して結束されたハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、少なくとも上記ハニカム焼成体は、複数の第1セルが形成される第1セル領域と、上記第1セル領域の一部又は全部を取り囲むように、上記第1セル領域の外周に位置する第1外周セル壁と上記ハニカム焼成体の外周に位置する第2外周セル壁との間に存在し、かつ、複数の第2セルが形成される第2セル領域とを有し、上記第2セル領域を規定する上記第2外周セル壁の少なくとも一部は、上記接着剤層に接し、上記第1セル及び上記第2セルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されており、上記ハニカム構造体において、第1端面の開口率は第2端面の開口率より大きく、上記第1端面において、上記第2セル領域の開口率は、上記第1セル領域の開口率より大きいことを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載のハニカム構造体では、各ハニカム焼成体の中心部にある第1セル領域の周囲の一部又は全部を第2セル領域が取り囲み、同時に、第2セル領域は、接着剤層に接するハニカム焼成体の第2外周セル壁に隣接するとともに、第1セル領域より大きい開口率を有する。第2セル領域の開口率を第1セル領域の開口率より高くしているので、第2セル領域は第1セル領域より多くのPMを捕集することができる。これにより、再生処理時のPM燃焼により発生する熱量としては、ハニカム焼成体の中心部分である第1セル領域よりハニカム焼成体の外周部分である第2セル領域の方が大きくなり、第2外周セル壁を含む接着剤層周辺のセル壁の温度が充分に高くなって、熱の発生しない接着材層の温度を上昇させ、接着材層とハニカム焼成体との温度差を小さくするとともに、この熱伝導により第2セル領域の温度が少し低下し、第1セル領域と第2セル領域との間の温度差の発生が抑制される。従って、ハニカム構造体内部の温度が均一化される。
【0014】
また、第1セル領域の開口率より高い開口率を有する第2セル領域を設けていることから、例えば、第1セル領域の開口率を従来と同様の開口率とした場合は、端面全体でみた開口率も従来に比して高くすることができる。これによりハニカム構造体全体でのPM捕集量も増加するので、捕集限界値を向上させることができる。
【0015】
請求項2に記載のハニカム構造体のように、上記長手方向に垂直な断面において、上記第2セルとして、上記第1セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する第2大型セルと該第2大型セルのセル断面積より小さいセル断面積を有する第2小型セルとを設けることで、第2領域の開口率を第1領域の開口率より高くしてもよい。
【0016】
請求項3に記載のハニカム構造体では、上記長手方向に垂直な断面において、上記第2小型セルのセル断面積を、上記第1セルのセル断面積より小さくしている。ハニカム構造体の第1端面において、第2小型セルは封止される。すなわち、第2小型セルはPMの捕集には関与しないので、このような第2小型セルのセル断面積を第1セルのセル断面積より小さくすることにより、第1端面全体の開口率を高くすることができ、ひいてはPMの捕集量を増加させることができる。
【0017】
請求項4に記載のハニカム構造体によると、上記長手方向に垂直な断面において、上記第1セルのセル断面形状は略四角形であり、上記第2大型セルのセル断面形状は略八角形であり、かつ、上記第2小型セルのセル断面形状は略四角形である。第1セルのセル断面形状を略四角形として作製の容易性を確保しつつ、第2大型セルのセル断面形状を略八角形、第2小型セルのセル断面形状を略四角形として両者の対称性を高めることで、第2大型セルへの排ガスを偏りなく流入させることができ、加えて、ハニカム構造体のアイソスタティック強度及び圧縮強度を向上させることができる。
【0018】
請求項5に記載のハニカム構造体のように、上記長手方向に垂直な断面において、上記第1セルのセル断面形状は略四角形であり、上記第2大型セル及び上記第2小型セルのセル断面形状は曲線で囲まれた形状であってもよい。
このような形状とすることにより、第1セルのセル断面形状を一般的な略四角形として製造の容易性を確保しつつ、第2大型セル及び第2小型セルのセル断面形状を曲線で囲まれた形状として両者の対称性を高めることで、第2大型セルへの排ガスを偏りなく流入させることができ、加えて、ハニカム構造体のアイソスタティック強度及び圧縮強度を向上させることができる。
【0019】
請求項6に記載のハニカム構造体のように、上記長手方向に垂直な断面において、上記第1セル、上記第2大型セル、及び、上記第2小型セルのそれぞれのセル断面形状を略四角形としてもよい。
【0020】
請求項7に記載のハニカム構造体では、上記長手方向に垂直な断面において、上記第1セルは、第1大型セルと第1小型セルとを含み、上記第1大型セルのセル断面積は上記第1小型セルのセル断面積より大きくしている。このように、第2セル領域に加えて、第1セル領域の第1セルに大小関係を付与してもよい。第1セル領域の第1セルに大小関係を付与することで、第2セル領域におけるのと同様に第1端面における開口率をより高めることができる。
【0021】
請求項8に記載のハニカム構造体によると、上記第1端面において、上記第1外周セル壁は、上記第2外周セル壁の相似形である。言い換えると、第1セル領域は第1端面の相似形となっており、このようにすることで、第2セル領域の幅(第1外周セル壁と第2外周セル壁との間の最短距離)を第2セル領域全周にわたって概ね一定とすることができ、PM燃焼による燃焼熱を第2セル領域において一様に発生させることができる。反対に、第1セル領域が第1端面の相似形となっていないと、第2セル領域の幅が大きい箇所と小さい箇所とが存在する場合が生じることになる。そうすると、セル領域の幅が大きい箇所ではPM燃焼熱が大きくなる一方、セル領域の幅が小さい箇所ではPM燃焼熱が小さくなり、第2セル領域の中で温度差が生じることになって、この温度差に起因してクラックが発生する。
【0022】
請求項9に記載のハニカム構造体では、上記第1端面において、上記第1外周セル壁は、上記接着剤層に接する上記第2外周セル壁の内側を規定する内側規定線上の任意の点から、上記ハニカム焼成体の端面の重心と上記任意の点とを結んだ線分の1/6の距離だけ離れた前記線分上の点と、1/2の距離だけ離れた前記線分上の点のそれぞれが、上記任意の点が上記内側規定線に沿って移動した際に描くそれぞれの軌跡(うち、上記重心に近い方の軌跡を内軌跡(ここでは、上記1/2の距離だけ離れた点の軌跡)ともいい、上記重心からより離れた方の軌跡を外軌跡(ここでは、上記1/6の距離だけ離れた点の軌跡)ともいう)の間に少なくとも形成されている。第1外周セル壁が外軌跡より外側(第2外周セル壁側)に形成される場合は、第2セル領域の形成面積が小さくなり、第2セル領域におけるPM燃焼熱の上昇効果が不充分となって、クラックの原因となる内外セル壁における温度差が生じる。一方、第1外周セル壁が内軌跡より内側(重心側)に形成される場合は、第2セル領域において発生するPM燃焼熱が第1セル領域において発生するPM燃焼熱より大きくなって、第1セル領域と第2セル領域との間の温度差が生じる。
【0023】
請求項10に記載のハニカム構造体では、上記第1端面において、上記第1外周セル壁は、上記接着剤層に接する上記第2外周セル壁の内側を規定する内側規定線上の任意の点から、上記ハニカム焼成体の端面の重心と上記任意の点とを結んだ線分の1/4の距離だけ離れた前記線分上の点と、1/3の距離だけ離れた前記線分上の点のそれぞれが、上記任意の点が上記内側規定線に沿って移動した際に描くそれぞれの軌跡の間に少なくとも形成されている。第1外周セル壁の形成位置をこのような範囲におくことで、第2セル領域においてPM燃焼熱を充分に発生させつつ、第1セル領域と第2セル領域との間の温度差の発生を抑制することができる。
【0024】
請求項11に記載のハニカム構造体では、さらに、上記ハニカムブロックの外周に外周コート層が形成され、上記第2セル領域を規定する上記第2外周セル壁の少なくとも一部は、上記外周コート層に接する。
このように外周コート層を形成することにより、熱の放散が抑制され、ハニカム構造体内の温度差(ハニカム焼成体の内部と接着材層との温度差及び中心部分と周囲の外周コート層付近との温度差)をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例をそれぞれ模式的に示した斜視図である。
【図3】(a)は、図2(a)に示したハニカム焼成体の端面を模式的に示す正面図であり、(b)は、図2(a)に示したハニカム焼成体のX−X線断面図である。
【図4】図2(b)に示したハニカム焼成体の端面を模式的に示す正面図である。
【図5】図2(c)に示したハニカム焼成体の端面を模式的に示す正面図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明に係るハニカム焼成体における第2セル領域の形成範囲を決定する手順を示す説明図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明に係る別のハニカム焼成体における第2セル領域の形成範囲を決定する手順を示す説明図である。
【図8−1】(a)は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図8−2】(b)は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の外周に位置するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、(c)は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の外周に位置する別のハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図9】(a)は、本発明の第三実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、本発明の第三実施形態のハニカム構造体の外周に位置するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図10】本発明の第四実施形態のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す正面図である。
【図11】実施例1、比較例1及び比較例2におけるハニカム構造体を再生する際の温度測定結果を示すグラフである。
【図12】従来のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図13】(a)は、従来のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、図13(a)に示した従来のハニカム構造体のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
以下、本発明のハニカム構造体の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のハニカム構造体は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された複数のハニカム焼成体が接着剤層を介して結束されたハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、少なくとも1つの上記ハニカム焼成体は、複数の第1セルが形成される第1セル領域と、上記第1セル領域の一部又は全部を取り囲むように、上記第1セル領域の外周に位置する第1外周セル壁と上記ハニカム焼成体の外周に位置する第2外周セル壁との間に存在し、かつ、複数の第2セルが形成される第2セル領域とを有し、上記第2セル領域を規定する上記第2外周セル壁の少なくとも一部は、上記接着剤層に接し、上記第1セル及び上記第2セルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されており、上記ハニカム構造体において、第1端面の開口率は第2端面の開口率より大きく、上記第1端面において、上記第2セル領域の開口率は、上記第1セル領域の開口率より大きいことを特徴とする。
【0027】
図1は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2(a)〜(c)は、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例をそれぞれ模式的に示した斜視図である。図1に示すハニカム構造体10では、多孔質炭化ケイ素からなる柱状のハニカム焼成体100、200、300が接着剤層11を介して複数個結束されてハニカムブロック13を構成し、さらに、このハニカムブロック13の外周にコート層12が形成されている。
【0028】
図2(a)に示すハニカム焼成体100は、複数の第1セルが形成される第1セル領域110と、第1セル領域110の全部(又は全周)を取り囲みかつ複数の第2セルが形成される第2セル領域120とを有している。第2セル領域120は、第1セル領域110の外周に位置する第1外周セル壁111とハニカム焼成体100の外周に位置する第2外周セル壁121との間に広がって存在している。第2セル領域120を規定する第2外周セル壁121は、図1に示されるように、四方全部で接着剤層11と接している。また、第1外周セル壁111は、第2外周セル壁121の相似形となっており、このことは、第1セル領域110がハニカム焼成体100の端面と相似形であることをも意味する。
【0029】
図2(b)に示すハニカム焼成体200も同様に、中心部に第1セル領域210と、第1セル領域210の全部(全周囲)を取り囲む第2セル領域220とを有している。第2セル領域220は、第1セル領域210の外周に位置する第1外周セル壁211とハニカム焼成体200の外周に位置する第2外周セル壁221との間に存在している。また、図1に示されるように、第2セル領域220を規定する第2外周セル壁221は三方で接着剤層11と接している。なお、第1外周セル壁211は、第2外周セル壁221の相似形とはなっていない。
【0030】
図2(c)に示すハニカム焼成体300は、第2セル領域が第1セル領域の全部を取り囲んでいるハニカム焼成体100、200とは異なり、第1セル領域310と第1セル領域310の周囲の一部を取り囲む第2セル領域320とを有している。第2セル領域320は、第1セル領域310の外周に位置する第1外周セル壁311とハニカム焼成体300の外周に位置し、かつ、接着剤層11に接する第2外周セル壁321との間に存在している。すなわち、図1に示されるように、第2セル領域320を規定する第2外周セル壁321は二方で接着剤層11と接している。
【0031】
本実施形態のハニカム構造体では、第1セル領域に形成された第1セル及び第2セル領域に形成された第2セルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されているとともに、排ガス流入側の端面となる第1端面において、第2セル領域の開口率は、第1セル領域の開口率より大きくなっている。これらの具体的構成を図3〜5を参照しつつ説明する。
なお、本明細書において開口率とは、ハニカム構造体の端面の外周により規定される当該端面の面積(A)に対する当該端面において開口したセルのセル断面積の合計(B)の比(B/A)のことをいう。
【0032】
図3(a)は、図2(a)に示したハニカム焼成体の端面を模式的に示す正面図であり、図3(b)は、図2(a)に示したハニカム焼成体のX−X線断面図であり、図4は、図2(b)に示したハニカム焼成体の端面を模式的に示す正面図であり、図5は、図2(c)に示したハニカム焼成体の端面を模式的に示す正面図である。
なお、本明細書において端面とは、ハニカム構造体又はハニカム焼成体の外面のうち、セルが開口している面のことをいい、側面とは、端面以外のセル開口のない面をいう。
【0033】
図3(a)、(b)に示すように、ハニカム焼成体100では、セル断面形状が略四角形である第1セル113(セル113a、113b)が第1外周セル壁111に囲まれて第1セル領域110を構成している。セル113aは図3に示した第1端面側で開口する一方、セル113bは第1端面側では封止されており、第2端面側で開口している。すなわち、セル113aとセル113bとはチェッカーボード状に交互に封止されている。セル113aのセル断面積とセル113bのセル断面積とはほぼ等しく、両者の間に大小関係はないことから、第1セル領域の第1端面側及び第2端面側の両方において開口率の差はほとんどない。
【0034】
上述したように、第1セル領域110のセル113のセル断面形状は略四角形であるが、第1セル領域110の四隅に存在するセル113cのセル断面形状は、四角形の一角が切り落とされた略五角形となっている。従って、厳密にいうと、第1セル領域110に存在する全てのセル113のセル断面形状が略四角形であるわけではなく、多数の略四角形と少数の略五角形が混在した状態となっている。本発明では、このようにセル断面形状が略四角形でないセルを含んでいても、基本的なセルの形成パターンとしてセル断面形状が略四角形のセルが繰り返されている場合(以下、第1セル領域のセルの形成パターンを第1形成パターンともいう)は、そのセル領域のセルのセル断面形状は略四角形であるということとする。見方を変えれば、形成パターンに則ったセル断面形状を有しないセルは、形成パターンに則ったセル断面形状を有するセルが第1外周セル壁又は第2外周セル壁に接することで変形して得られたセルということもできる。セル形成パターンのセル断面形状としては略四角形に限らず、略三角形、略五角形、略六角形、略八角形、略円形、略楕円形、直線と曲線で囲まれた形状、曲線のみで囲まれた形状若しくはこれらと実質的に同視し得る形状、又は、これらの形状の組み合わせ等、任意の形状であればよい。
なお、本明細書において断面とは、ハニカム焼成体の長手方向に垂直なハニカム構造体の断面のことをいう。
【0035】
第2セル領域120は、ハニカム焼成体100において、第1セル領域110の全部を取り囲むように、第1外周セル壁111と第2外周セル壁121との間に帯状になって存在している。また、第2セル領域120を規定する第2外周セル壁121は、全周で接着剤層11と接している。第2セル領域120には、セル断面形状が略八角形の第2セル123aと、セル断面形状が略四角形の第2セル123bとが形成されている。第2セル123aのセル断面積は第2セル123bのセル断面積より大きくなっているので、本実施形態では、第2セル123aを第2大型セルといい、第2セル123bを第2小型セルという。第2大型セル123aは図3(a)に示した第1端面側で開口する一方、第2小型セル123bは第1端面側では封止されており、第2端面側で開口している。すなわち、第2大型セル123aと第2小型セル123bとは交互に封止されている。
【0036】
図3(a)に示すように、第2セル領域120のセルの形成パターン(以下、第2形成パターンともいう)としては、セル断面形状が略八角形の第2大型セル123aとセル断面形状が略四角形の第2小型セル123bとが繰り返し存在する形成パターンとなっている。この他に、第2セル領域120には、第1外周セル壁111に接するセル断面形状が略六角形の第2セル123cや、第2外周セル壁121に接するセル断面形状が略六角形の第2セル123d、さらに第2セル領域120の四隅にセル断面形状が略五角形の第2セル123eが存在している。これらの第2セル123c、123d、123eは、第2形成パターンに則ったセル断面形状を有していないものの、第2大型セル123aが第2形成パターンに従って順次形成され、それらが第1外周セル壁111又は第2外周セル壁121に接することで変形した第2セルと考えることもできる。本実施形態ではこの考え方に基づき、第2セル領域120の第2セルのセル断面形状としては、略八角形と略四角形であるということとする。
【0037】
本実施形態のハニカム焼成体100において、第2大型セル123aのセル断面積は、第1セル113のセル断面積より大きい。また上述のように、第2大型セル123aのセル断面積は第2小型セル123bのセル断面積より大きい。さらに、第2小型セル123bのセル断面積は、第1セル113のセル断面積より小さくなっている。すなわち、セル断面積の大きさの順序としては、第2大型セル123aが最も大きく、次いで、第1セル113が大きく、第2小型セル123bが最も小さくなっている。このように、まず第2大型セル123aのセル断面積を第1セル113より大きくし、第2小型セル123bのセル断面積を第2大型セル123aより小さくすることで、第1セル領域110の開口率より第2セル領域120の開口率を高めることができる。さらに、第2小型セル123bのセル断面積を第1セル113のセル断面積より小さくすることで、第2セル領域120において開口率の向上に寄与しない封止された第2小型セル123bの割合を小さくすることができ、全体として第2セル領域120の開口率を第1セル領域110の開口率より効率良く大きくすることができる。
【0038】
図4に示すように、ハニカム焼成体200においても、第1外周セル壁211に囲まれるようにして、セル断面形状が四角形の第1セル213(213a、213b)が第1セル領域210を構成している。第2セル領域220は、第1セル領域210の全部を取り囲むように設けられている。また、第2セル領域220には、セル断面形状が略八角形の第2大型セル223aとセル断面形状が略四角形の第2小型セル223bとが形成されている。
【0039】
第1セル領域210のセルの第1形成パターンは、略四角形のセルが繰り返されるパターンであり、第2セル領域220のセルの第2形成パターンは、略八角形及び略四角形のセルが繰り返されるパターンである。ハニカム焼成体200においても、第1形成パターン及び第2形成パターンから外れたセル断面形状を有するセルが存在することはハニカム焼成体100と同様である。特に、ハニカム焼成体200では、第2外周セル壁221に曲線となる部分221aが存在するので、曲線部221aに接する第2セルも変形して第2セル223c及び第2セル223dのような形状となる。しかしながら、第2セル223c及び第2セル223dも、第2形成パターンに則った第2大型セル223a及び第2小型セル223bが変形した第2セルと考えればよいので、本実施形態では第2セルのセル断面形状は略八角形及び略四角形であるといえる。
【0040】
ハニカム焼成体200において、第2大型セル223aのセル断面積は第1セル213のセル断面積より大きく、第2小型セル223bのセル断面積は第1セル213のセル断面積より小さくなっている。これにより、ハニカム焼成体100と同様に、第2セル領域の開口率を第1セル領域の開口率より効率良く大きくすることができる。
【0041】
次に、ハニカム焼成体300の詳細な構成について説明する。図5に示すように、第1外周セル壁311及び第2外周セル壁の曲線部321aに囲まれるようにして、セル断面形状が略四角形の第1セル313(313a、313b)が第1セル領域310を構成している。換言すると、第2外周セル壁の曲線部321aは、第2セル領域320を規定するセル壁であるとともに、第1セル領域310を規定するセル壁でもある。第2セル領域320は、第2セル領域320を規定する二方の直線状の第2外周セル壁321に沿う形で、第1セル領域310の一部を取り囲むように設けられている。また、第2セル領域320には、セル断面形状が略八角形の第2大型セル323aとセル断面形状が略四角形の第2小型セル323bとが形成されている。
【0042】
第1セル領域310のセルの第1形成パターンは、略四角形のセルが繰り返されるパターンであり、第2セル領域320のセルの第2形成パターンは、略八角形及び略四角形のセルが繰り返されるパターンである。ハニカム焼成体300においても、第1形成パターン及び第2形成パターンから外れたセル断面形状を有するセルが存在することはハニカム焼成体100と同様である。特に、ハニカム焼成体300では、第2外周セル壁321に曲線部321aが存在するので、曲線部321aに接する第1セル及び第2セルも変形して、それぞれ第1セル313c及び第1セル313d、第2セル323c及び第2セル323dのような形状となる。しかしながら、第1セル313c及び第1セル313dは、第1形成パターンに則った第1セル313が変形した第1セルと考え、第2セル323c及び第2セル323dも、第2形成パターンに則った第2大型セル323a及び第2小型セル323bが変形した第2セルと考えればよいので、本実施形態では第1セルのセル断面形状は四角形であり、第2セルのセル断面形状は略八角形及び略四角形であるといえる。
【0043】
ハニカム焼成体300において、第2大型セル323aのセル断面積は第1セル313のセル断面積より大きく、第2小型セル323bのセル断面積は第1セル313のセル断面積より小さくなっている。これにより、ハニカム焼成体100と同様に、第2セル領域の開口率を第1セル領域の開口率より効率良く大きくすることができる。
【0044】
ハニカム焼成体100、200、300のそれぞれの開口率が高い方の端面が集合したハニカム構造体の端面を第1端面という。これにより、ハニカム構造体の端面全体で開口率を向上させることができ、ひいてはPM捕集量を向上させることができる。
【0045】
第2セル領域の形成範囲を規定する第1外周セル壁の形成位置としては、第2セル領域でのPM捕集量の増加に伴う燃焼熱の増加の効果が得られ、かつ、第2セル領域が過大になり、ほとんどのセルが第2セルとなって従来品と相違ないレベルとならない限り、特に限定されない。ただ、これら2点を考慮すると、ハニカム構造体の第1端面において、上記第1外周セル壁は、上記接着剤層に接する上記第2外周セル壁の内側を規定する内側規定線上の任意の点から上記ハニカム焼成体の端面の重心に向かって所定距離離れた2点のそれぞれが、上記任意の点が上記内側規定線に沿って移動した際に描くそれぞれの軌跡(すなわち、外軌跡及び内軌跡)の間に少なくとも形成されていることが望ましい。この第1外周セル壁の設けるのに好適な範囲の決め方を以下に説明する。図6(a)〜(c)は、本発明に係るハニカム焼成体における第2セル領域の形成範囲を決定する手順を示す説明図であり、図7(a)〜(c)は、本発明に係る別のハニカム焼成体における第2セル領域の形成範囲を決定する手順を示す説明図である。
【0046】
図6(a)では、ハニカム焼成体100(図2、3参照)をハニカム構造体の第1端面側からみており、接着剤層に接する第2外周セル壁の内側(第2外周セル壁の接着剤層に接する側とは反対側)を規定する内側規定線130が示されている。ハニカム焼成体100の第2外周セル壁121は全て接着剤層11に接するので、それに応じて内側規定線130も第2外周セル壁121全体にわたって存在する。なお、第2外周セル壁の内側には、第2外周セル壁121とセル壁122とが連結するT字部分(図3参照)が存在するが、このT字部分ではセル壁122は存在しないものと仮定して内側規定線130を定める。内側規定線130上に任意の点Aをとり、ハニカム焼成体の端面の重心Gと任意の点Aとを結ぶ線分AG上に、外軌跡及び内軌跡を規定することになる点O及び点Iをそれぞれ定める。点Oは、線分AGの長さの所定割合S分だけ任意の点Aから離れた位置にある点であり、点Iは、線分AGの長さの所定割合L(L>S)分だけ任意の点Aから離れた位置にある点である。
【0047】
次に、図6(b)に示すように、任意の点Aが内側規定線130に沿って移動すると、任意の点Aの移動に応じて点O及び点Iも移動し、それぞれ軌跡(外軌跡)132及び軌跡(内軌跡)131を描くようになる。
【0048】
そして、図6(c)に示すように、任意の点Aが内側規定線130の全体に沿って移動すると、点O及び点Iも移動してそれぞれ閉じた軌跡、すなわち外軌跡132及び内軌跡131を描く。こうして描かれた外軌跡132と内軌跡131との間の領域133に、第1外周セル壁が形成される。
【0049】
図1、図2(a)及び図3に示すハニカム焼成体100では、第2セル領域120は第1セル領域110の全部を取り囲むとともに、第2外周セル壁121全体が接着剤層11に接する。これに対し、図1、図2(c)及び図5に示すハニカム焼成体300では、第2セル領域320は第1セル領域310の一部を取り囲むとともに、第2外周セル壁321の曲線部321aを除いた部分が接着剤層11に接する。以下、ハニカム焼成体300のように、第2セル領域が第1セル領域の一部を取り囲み、かつ、第2外周セル壁の一部が接着剤層に接する場合の第1外周セル壁の形成範囲の決定方法について説明する。
【0050】
図7(a)に示すように、ハニカム焼成体100と同様、内側規定線330上に任意の点Aをとり、ハニカム焼成体300の端面の重心Gと任意の点Aとを結ぶ線分AG上に点O及び点Iを定める。次に、図7(b)に示すように、任意の点Aが、第2外周セル壁のうち、曲線部321aを除く接着剤層11に接する部分に対応する内側規定線330に沿って移動することにより、点O及び点Iのそれぞれが外軌跡332及び内軌跡331を描くようになる。次いで、図7(c)に示すように、任意の点Aが内側規定線330全体に沿って移動することにより、点O及び点Iも移動してそれぞれハニカム焼成体100とは異なり、閉じていない軌跡、外軌跡332及び内軌跡331を描く。少なくともこうして描かれた外軌跡332と内軌跡331との間の領域333に、第1外周セル壁が形成される。外軌跡332と内軌跡331との間の領域333以外の部分では、上記のようにして形成した第1外周セル壁311の端部を曲線部321aに接するまで延長すればよい。
【0051】
点O及び点Iの任意の点Aからの距離は上述のように特に限定されないが、それぞれ線分AGの1/6の距離及び1/2の距離だけ離れていることが望ましく、それぞれ線分AGの1/4の距離及び1/3の距離だけ離れていることがさらに望ましい。第1外周セル壁が上記距離だけ離れた点Oが描く外軌跡より外側に形成される場合は、第2セル領域の形成面積が小さくなり、第2セル領域におけるPM燃焼熱の上昇効果が不充分となって、クラックの原因となる内外セル壁における温度差が生じる。一方、第1外周セル壁が上記距離だけ離れた点Iが描く内軌跡より内側に形成される場合は、第2セル領域において発生するPM燃焼熱が第1セル領域において発生するPM燃焼熱より大きくなって、第1セル領域と第2セル領域との間の温度差が生じる。
【0052】
また、第1セル領域の開口率より高い開口率を有する第2セル領域を設けていることから、例えば、第1セル領域の開口率を従来と同様の開口率とした場合は、端面全体でみた開口率も従来に比して高くすることができる。これによりハニカム構造体全体でのPM捕集量も増加するので、捕集限界値を向上させることができる。
【0053】
次に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について説明する。
(1)セラミック粉末とバインダとを含む湿潤混合物を押出成形することによってハニカム成形体を作製する成形工程を行う。具体的には、まず、セラミック粉末として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末と、有機バインダと液状の可塑剤と潤滑剤と水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入する。上記湿潤混合物を押出成形機に投入し、押出成形することにより図3に示した形状であってセルの封止をしていないハニカム成形体を作製する。
【0054】
(2)次に、ハニカム成形体を所定の長さに切断し、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させた後、所定のセルに封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを目封じする封止工程を行う。切断工程、乾燥工程、封止工程の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0055】
(3)その後、ハニカム成形体中の有機物を脱脂炉中で加熱する脱脂工程を行い、焼成炉に搬送し、焼成工程を行ってハニカム焼成体を作製する。脱脂工程及び焼成工程の条件としては、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0056】
(4)続いて、各セルの所定の端部が封止されたハニカム焼成体のそれぞれの所定の側面に、接着剤ペーストを塗布して接着剤ペースト層を形成し、この接着剤ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返して所定数のハニカム焼成体が結束されたハニカム焼成体の集合体を作製する結束工程を行う。ここで接着剤ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着剤ペーストはさらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0057】
(5)このハニカム焼成体の集合体を加熱して接着剤ペースト層を乾燥、固化させて接着剤層とし、ハニカムブロックを作製する。さらに、ハニカムブロックの側面をダイヤモンドカッター等を用いて加工して円柱状にする外周加工工程を行う。
【0058】
(6)最後に、円柱状としたハニカムブロックの外周に、コート材ペーストを塗布し、乾燥、固化してコート層を形成するコート層形成工程を行う。コート材ペーストとしては、上記接着剤ペーストと同様の組成ペ−スト又は異なる組成のペーストを使用する。なお、コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。以上の工程によって、本実施形態のハニカム構造体を作製することができる。
【0059】
以下、本実施形態のハニカム構造体の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態のハニカム構造体では、中心部にある第1セル領域の周囲の一部又は全部を第2セル領域が取り囲み、同時に、第2セル領域は、接着剤層に接するハニカム焼成体の第2外周セル壁に隣接するとともに、第1セル領域より大きい開口率を有する。第2セル領域の開口率を第1セル領域の開口率より高くしているので、単位面積当たりに流入するガス量が少ないにも拘わらず、第1セル領域と同量のPMを捕集することができる。これにより、再生処理時のPM燃焼により発生する熱量としては、ハニカム焼成体の中心部分である第1セル領域とハニカム焼成体の外周部分である第2セル領域とが等しくなり、第2外周セル壁を含む接着剤層周辺のセル壁の温度が充分に高くなって、熱の発生しない接着材層の温度を上昇させ、接着材層とハニカム焼成体との温度差を小さくするとともに、この熱伝導により第2セル領域の温度が少し低下し、第1セル領域と第2セル領域との間の温度差の発生が抑制される。従って、ハニカム構造体内部の温度が均一化される。
【0060】
(2)また、第1セル領域の開口率より高い開口率を有する第2セル領域を設けていることから、例えば、第1セル領域の開口率を従来と同様の開口率とした場合は、端面全体でみた開口率も従来に比して高くすることができる。これによりハニカム構造体全体でのPM捕集量も増加するので、捕集限界値を向上させることができる。
【0061】
(3)本実施形態のハニカム構造体では、上記長手方向に垂直な断面において、上記第2小型セルのセル断面積を、上記第1セルのセル断面積より小さくしている。ハニカム構造体の第1端面において、第2小型セルは封止される。すなわち、第2小型セルはPMの捕集には関与しないので、このような第2小型セルのセル断面積を第1セルのセル断面積より小さくすることにより、第1端面全体の開口率を高くすることができ、ひいてはPMの捕集量を増加させて捕集量を向上させることができる。
【0062】
(4)本実施形態のハニカム構造体によると、上記長手方向に垂直な断面において、上記第1セルのセル断面形状は略四角形であり、上記第2大型セルのセル断面形状は略八角形であり、かつ、上記第2小型セルのセル断面形状は略四角形である。第1セルのセル断面形状を略四角形として作製の容易性を確保しつつ、第2大型セルのセル断面形状を略八角形、第2小型セルのセル断面形状を略四角形として両者の対称性を高めることで、第2大型セルへの排ガスを偏りなく流入させることができ、加えて、ハニカム構造体のアイソスタティック強度及び圧縮強度を向上させることができる。
【0063】
(5)本実施形態のハニカム構造体では、上記第1端面において、上記第1外周セル壁は、上記第2外周セル壁の相似形である。これにより、第2セル領域の幅(第1外周セル壁と第2外周セル壁との間の最短距離)を第2セル領域全周にわたって概ね一定とすることができ、PM燃焼による燃焼熱を第2セル領域において一様に発生させることができる。
【0064】
(6)本実施形態のハニカム構造体では、上記第1端面において、上記第1外周セル壁は、上記接着剤層に接する上記第2外周セル壁の内側を規定する内側規定線から所定距離離れた、上記ハニカム焼成体の端面の重心と上記内側規定線上の任意の点とを結んだ線分上の2点のそれぞれが、上記任意の点が上記内側規定線に沿って移動した際に描くそれぞれの軌跡の間に少なくとも形成されている。第1外周セル壁の形成位置をこのような範囲におくことで、第2セル領域においてPM燃焼熱を充分に発生させつつ、第1セル領域と第2セル領域との間の温度差の発生を抑制することができる。
【0065】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、アクリル樹脂2.1重量%、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)2.8重量%、グリセリン1.3重量%、及び、水13.8重量%を加えて混練して混合組成物(湿潤混合物)を得た後、押出成形を行い、図2(a)〜(c)(図3〜図5参照)に示す断面形状と略同様の断面形状であってセルの封止がされていない生のハニカム成形体を作製した。
【0067】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記ハニカム成形体を乾燥し、乾燥したハニカム成形体の所定のセルに上記生成形体と同様の組成のペーストを充填してセルの封止を行い、再び乾燥機を用いて乾燥した。
【0068】
乾燥したハニカム成形体を400℃で脱脂し、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成を行うことにより、気孔率が45%、平均気孔径が15μm、高さ34.3mm×幅34.3mm×長さ150mm、第1セル領域及び第2セル領域のセルの数(セル密度)がそれぞれ46.5個/cm及び46.5個/cm、第1セル領域及び第2セル領域のセル壁の厚さがそれぞれ0.25mm及び0.25mmの炭化ケイ素焼結体からなるハニカム焼成体を作製した。
このハニカム焼成体の第1セル領域のセルは、断面形状が四角形からなり、第2セル領域のセルは、周辺の切断された部分を除いて断面形状が四角形、五角形、八角形からなる。
【0069】
平均繊維径5μm、平均繊維長20μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒子径0.6μmの炭化ケイ素粒子21重量%、シリカゾル(固形分30重量%)15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性の接着剤ペーストを用いて、ハニカム焼成体を多数接着させた。さらに、この接着物を120℃で乾燥させ、続いて、ダイヤモンドカッターを用いて切断することにより、接着剤層の厚さ1.0mmの円柱状のハニカムブロックを作製した。
【0070】
次に、上記接着剤ペーストを用いて、ハニカムブロックの外周部に厚さ0.2mm(セル壁を切断した部分では、セル壁先端凸部からの厚さ)のコート材ペースト層を形成した。そして、このコート材ペースト層を120℃で乾燥して、外周にコート層が形成された直径143.8mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体を作製した。
【0071】
(比較例1)
全てのセルのセル断面形状を実施例1における第1セル領域のセルのセル断面形状とすること以外は実施例1と同様にハニカム構造体を作製した。このハニカム焼成体のセルの断面形状は、周辺の切断された部分を除いて四角形からなる。
【0072】
(比較例2)
全てのセルのセル断面形状を実施例1における第2セル領域のセルのセル断面形状とすること以外は実施例1と同様にハニカム構造体を作製した。このハニカム焼成体のセル領域の断面形状は周辺の切断された部分を除いて四角形、八角形、及び、五角形からなる。
【0073】
(温度測定)
実施例1及び比較例1、2のハニカム構造体の中心部の排ガス流入側セル及び最外周の排ガス流入側セルのそれぞれに熱電対を差し込んだサンプルを用いて、ハニカム構造体の中心部と外周部の温度を測定した。PM捕集(11g/L)の再生処理開始時から終了時までの温度プロファイルを計測し、そこから各部の最高温度を決定した。各ハニカム構造体の中心部の最高温度と外周部の最高温度からハニカム構造体の最高温度差を求めた。
【0074】
(再生率測定)
予め、パティキュレートを未堆積の状態で実施例1及び比較例1、2のハニカム構造体の重量を測定しておく。次に、回転数が2000min−1、トルクが40Nmで1.6Lエンジンを所定時間運転するという捕集条件で、所定量のPMをハニカム構造体に捕集させた。ここで、一旦、ハニカム構造体を取りだし、その重量を測定した。その後、ポストインジェクション方式で、エンジンを10分間運転することにより、ハニカム構造体に再生処理を施し、再生処理後のハニカム構造体の重量を測定した。そして、減少したPM重量から下記式(1)を用いて再生率(%)を算出した。
再生率(%)=(再生前PM重量−再生後PM重量)/再生前PM重量・・・(1)
【0075】
(PM捕集限界値の測定)
再生率測定方法とほぼ同様の方法を用い、実施例1及び比較例1、2のハニカム構造体のPM捕集限界値を測定した。すなわち、上記再生率測定方法と同様の条件でエンジンを所定時間運転し、再生処理を行い、その前後でハニカム構造体の重量を測定する操作をエンジンの運転時間を次第に延ばしながら繰り返し、再生処理時に外観を観察するとともに、ハニカム構造体にクラックが発生したか否かを接着材層部分で切断して、ハニカム焼成体を目視することにより確認し、クラックが発生した捕集量をPM捕集限界値とした。
上記したそれぞれの評価結果(最高温度、最高温度差、再生率、PM捕集限界値等)を表1に示す。
また、図11に実施例1、比較例1及び比較例2におけるハニカム構造体を再生する際の温度測定結果のグラフを示す。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例1のハニカム構造体では、最高温度差が42℃、再生率が76%であり、PM捕集量12g/Lでハニカム構造体にクラックは発生しなかった。一方、比較例1のハニカム構造体では、最高温度差が67℃と大きく、再生率が77%であり、PM捕集量12g/Lでハニカム構造体にクラックが発生した。これは、比較例1のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体では、中心部と外周部に一様にPMが捕集されていることから、熱の発生しない接着材層に接するハニカム焼成体の外周部におけるPM燃焼熱の不足分を補うことができず、ハニカム構造体の中心部と外周部との間の温度差の上昇により熱応力も増大したことが原因であると考えられる。実施例1の最高温度差が42℃であるのに対し、比較例1の最高温度差が67℃に上昇していることからも上記推測が裏付けられる。
【0078】
また、比較例2では、再生率が76%であり、PM捕集量12g/Lでハニカム構造体にクラックが発生した。比較例2の最高温度差は60℃であった。
ハニカム構造体にクラックが発生した原因については、以下のように考えることができる。
すなわち、比較例1及び2の場合には、ハニカム焼成体の全てのセルの断面積が同じであるので、各ハニカム焼成体のセル壁に均一にPMが堆積し、再生の際のPMの燃焼によりハニカム焼成体の内部で均一な熱が発生するが、ハニカム焼成体を接着している接着材層の部分では熱が発生しないため、ハニカム焼成体の外周近くに発生した熱は、接着材層に熱を奪われ、結果的にハニカム構造体の内部の接着材層の部分とハニカム焼成体の中心に近い部分とで、温度差が大きくなり(大きな温度勾配が発生し)、ハニカム構造体の内部でより大きな温度分布が発生し、ハニカム構造体にクラックが発生し易くなると考えられる。
【0079】
一方、実施例1の場合には、ハニカム焼成体の中心第1セル領域と、その周りを取り囲む第2外周セル領域との間に開口率の相違が存在し、第2セル領域の開口率は、前記第1セル領域の開口率より大きい。すなわち、ハニカム焼成体の第2セル領域では、排ガスの入り口側が開口しているセルの断面積が排ガスの出口が開口しているセルの断面積よりも大きいので、PMの堆積量が大きく、再生の際のPMの燃焼によりハニカム焼成体の外周部分(接着材層に接している部分)により多くの熱が発生し、接着材層の温度が上昇し、ハニカム構造体の内部の接着材層部分とハニカム焼成体の中心に近い部分との温度差は小さくなり(温度勾配は発生しにくく)、ハニカム構造体の内部の温度が均一化され、ハニカム構造体にクラックが発生しにくくなると考えられる。
【0080】
図8及び図9に示すハニカム構造体においても、同様にハニカム焼成体の中心第1セル領域と、その周りを取り囲む第2外周セル領域との間に開口率の相違が存在し、第2セル領域の開口率は、前記第1セル領域の開口率より大きい。従って、ハニカム構造体の内部のセルの断面積が全て同じものと比較して、同様のメカニズムにより、ハニカム構造体の内部の接着材層の部分とハニカム焼成体の中心に近い部分との温度差は小さくなり(温度勾配は発生しにくく)、ハニカム構造体の内部の温度が均一化され、ハニカム構造体にクラックが発生しにいと考えられる。
【0081】
以上の考えは、第1セル領域の開口率より高い開口率を有する第2セル領域が設けられた種々の本発明のハニカム構造体のでも妥当すると考えられる。
【0082】
(第二実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第二実施形態について説明する。本発明の第一実施形態では複数のハニカム焼成体の集合体に切削加工を施すことでハニカムブロックを作製しているのに対し、本実施形態では、複数組み合わせると略円柱状になるような形状のハニカム焼成体を用いてハニカムブロックを作製した点で、本実施形態は本発明の第一実施形態と異なる。
【0083】
図8−1(a)は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図8−2(b)は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の外周に位置するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、図8−2(c)は、本発明の第二実施形態のハニカム構造体の外周に位置する別のハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0084】
図8−1(a)に示したハニカム構造体20では、図8−2(b)、(c)に示すような形状のハニカム焼成体500、600がそれぞれ6個と、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成する図3に示したような形状のハニカム焼成体400が4個とが着剤層21を介して結束されてハニカムブロック23を構成し、さらに、このハニカムブロック23の外周にコート層22が形成されている。ハニカム焼成体500、600は、ハニカムブロック23の外周を構成している。ハニカム焼成体500、600は、多孔質炭化ケイ素焼結体からなる。なお、ハニカム焼成体400については本発明の第一実施形態の図3に示した形状のハニカム焼成体と同様の構成であるので、ここでは省略する。
【0085】
図8−2(b)に示すように、ハニカム焼成体500には、第1外周セル壁511に囲まれた第1セル領域510と、第1セル領域510の全部を取り囲むように第2セル領域520とが設けられている。第2セル領域520を規定する第2外周セル壁521は、接着剤層21に接するとともに、コート層22にも接している。
【0086】
本発明の第一実施形態のハニカム焼成体と同様、第1セル領域510の第1セルのセル断面形状は略四角形であり、第2セル領域520の第2セルのセル断面形状は、略八角形及び略四角形である。このようなセルの大小関係により、第2セル領域520の開口率は第1セル領域510の開口率より大きくなっている。なお、ハニカム焼成体500においても、第1外周セル壁511及び第2外周セル壁521に曲線部が存在することから、セル断面形状が略四角形や略八角形とは異なるセルが存在している。しかし、本発明の第一実施形態と同様に、そのように変形したセルが存在しても、セルの基本的な形成パターンが第1セル領域510では略四角形、第2セル領域520では略八角形及び略四角形であることから、第1セル領域510の第1セルのセル断面形状は略四角形、第2セル領域520の第2セルのセル断面形状は略八角形及び略四角形とする。
【0087】
ハニカム焼成体500では、第1外周セル壁511は第2外周セル壁521の相似形であり、言い換えると、第1セル領域510はハニカム焼成体500の端面の相似形となっている。
【0088】
図8−2(c)に示すハニカム焼成体600にも第1セル領域610及び第1セル領域610全部を取り囲む第2セル領域620が設けられている。ハニカム焼成体500と同様、第1外周セル壁611及び第2外周セル壁621のいずれにも曲線部が存在し、その曲線部により変形したセルが生じるものの、第1形成パターンは略四角形であり、第2形成パターンは略八角形及び略四角形である。第2セル領域620の開口率は第1セル領域610の開口率より大きい。
【0089】
ハニカム焼成体600では、第1外周セル壁611は第2外周セル壁621の相似形であり、言い換えると、第1セル領域610はハニカム焼成体600の端面の相似形となっている。
【0090】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、押出成形に用いるダイスの形状を変更して、図3及び図8−2(b)、(c)に示した形状のハニカム成形体を作製する他は本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム焼成体を作製する。これらのハニカム焼成体を結束することで、外周の切削工程を経ることなくハニカムブロックを作製することができる。そして、ハニカムブロックの外周面にコート材ペーストを塗布してコート材ペースト層を形成し、コ−ト材ペースト層を乾燥してコート層を形成することで本実施形態のハニカム構造体を作製する。
【0091】
本実施形態においても、本発明の第一実施形態において説明した作用効果(1)〜(6)を発揮することができる。
【0092】
(第三実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第三実施形態について説明する。本実施形態も本発明の第二実施形態と同様、複数組み合わせると略円柱状になるような形状のハニカム焼成体を用いてハニカムブロックを作製した点で、本実施形態は本発明の第一実施形態と異なる。
【0093】
図9(a)は、本発明の第三実施形態のハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図であり、図9(b)は、本発明の第三実施形態のハニカム構造体の外周に位置するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0094】
図9(a)に示したハニカム構造体30では、図9(b)に示すような形状のハニカム焼成体800が8個と、本発明の第一実施形態のハニカム構造体を構成する図3に示したような形状のハニカム焼成体700が4個とが着剤層31を介して結束されてハニカムブロック33を構成し、さらに、このハニカムブロック33の外周にコート層32が形成されている。ハニカム焼成体800は、ハニカムブロック33の外周を構成している。ハニカム焼成体800は、多孔質炭化ケイ素焼結体からなる。
【0095】
図9(b)に示すように、ハニカム焼成体800には、第1外周セル壁811に囲まれた第1セル領域810と、第1セル領域810の全部を取り囲むように第2セル領域820とが設けられている。第2セル領域820を規定する第2外周セル壁821は、接着剤層31に接するとともに、コート層32にも接している。
【0096】
本発明の第一実施形態のハニカム焼成体と同様、第1セル領域810の第1セルのセル断面形状は略四角形であり、第2セル領域820の第2セルのセル断面形状は、略八角形及び略四角形である。このようなセルの大小関係により、第2セル領域820の開口率は第1セル領域810の開口率より大きくなっている。なお、ハニカム焼成体800においても、第1外周セル壁811及び第2外周セル壁821に曲線部が存在することから、セル断面形状が略四角形や略八角形とは異なるセルが存在している。しかし、本発明の第一実施形態と同様に、そのように変形したセルが存在しても、セルの基本的な形成パターンが第1セル領域810では略四角形、第2セル領域820では略八角形及び略四角形であることから、第1セル領域810のセルのセル断面形状は略四角形、第2セル領域820のセルのセル断面形状は略八角形及び略四角形とする。
【0097】
ハニカム焼成体800では、第1外周セル壁811は第2外周セル壁821の相似形であり、言い換えると、第1セル領域810はハニカム焼成体800の端面の相似形となっている。
【0098】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においても、押出成形に用いるダイスの形状を変更して、図3及び図9(b)に示した形状のハニカム成形体を作製する他は本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム焼成体を作製する。これらのハニカム焼成体を結束することで、外周の切削工程を経ることなくハニカムブロックを作製することができる。そして、ハニカムブロックの外周面にコート材ペーストを塗布してコート材ペースト層を形成し、コ−ト材ペースト層を乾燥、固化してコート層を形成することで本実施形態のハニカム構造体を作製する。
【0099】
本実施形態においても、本発明の第一実施形態において説明した作用効果(1)〜(6)を発揮することができる。
【0100】
(第四実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第四実施形態について説明する。本実施形態は、本発明の第2セル領域を形成するセル壁が波形である点で、本実施形態は本発明の第一実施形態と異なる。
【0101】
図10は、本発明の第四実施形態のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す正面図である。図10に示すように、ハニカム焼成体900には、第1外周セル壁911に囲まれた第1セル領域910と、第1セル領域910の全部を取り囲むように第2セル領域920とが設けられている。
【0102】
ハニカム焼成体900では、第1セル領域910の第1セルのセル断面形状は略四角形であるのに対し、第2セル領域920の第2大型セル923a及び第2小型セル923bのセル断面形状は、いずれも曲線(図では波状線)で囲まれた形状である。第2大型セル923aのセル断面形状は、セル壁922がセル断面の中心から外側に向かって凸の形状であり、一方、第2小型セル923bのセル断面形状は、セル壁922がセル断面の中心に向かうように凸の形状である。
【0103】
セル壁922は、2組の対向する第2外周セル壁921間に波形状(正弦曲線状)に延びており、隣り合うセル壁922の波形の山の部分(正弦曲線でいう振幅の極大値の部分)が互いに最近接することで、セル断面形状が外側に膨らんだ第2大型セル923aと内側に凹んだ第2小型セル923bとが形成される。なお、振幅は一定でもよくまた変化してもよいが、一定であることが好ましい。
【0104】
こうしたセルの大小関係により、ハニカム焼成体において、第2セル領域920の開口率は第1セル領域910の開口率より大きくなっている。なお、ハニカム焼成体900においても、第1形成パターンや第2形成パターンとは異なるセル断面形状のセルが存在している。しかし、本発明の第一実施形態と同様に、そのように変形したセルが存在しても、セルの基本的な形成パターンが第1セル領域910では略四角形、第2セル領域920では波形線で囲まれた形状であることから、第1セル領域910の第1セルのセル断面形状は略四角形、第2セル領域920の第2セルのセル断面形状は波形線で囲まれた形状とする。
【0105】
ハニカム焼成体900では、第1外周セル壁911は第2外周セル壁921の相似形であり、言い換えると、第1セル領域910はハニカム焼成体900の端面の相似形となっている。
【0106】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においても、押出成形に用いるダイスの形状を変更して、図10に示した形状のハニカム成形体を作製する他は本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム焼成体を作製する。これらのハニカム焼成体を複数個結束し、結束したハニカム焼成体の外周に切削加工を施すことでハニカムブロックを作製することができる。そして、ハニカムブロックの外周面にコート材ペーストを塗布してコート材ペースト層を形成し、コ−ト材ペースト層を乾燥、固化してコート層を形成することで本実施形態のハニカム構造体を作製する。
【0107】
本実施形態においても、本発明の第一実施形態において説明した作用効果(1)〜(3)及び(5)、(6)を発揮することができるともに、作用効果(7)を発揮することができる。
【0108】
(7)本実施形態のハニカム構造体では、ハニカム焼成体の第1セルのセル断面形状を略四角形としてハニカム焼成体の製造の容易性を確保しつつ、ハニカム焼成体の第2大型セル及び第2小型セルのセル断面形状を曲線で囲まれた形状として両者の対称性を高めることで、ハニカム焼成体の第2大型セルへの排ガスを偏りなく流入させることができ、加えて、ハニカム構造体のアイソスタティック強度及び圧縮強度を向上させることができる。
【0109】
(その他の実施形態)
本発明のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の気孔率は特に限定されないが、35〜60%であることが望ましい。
ハニカム焼成体の気孔率が35%未満であると、ハニカム焼成体がすぐに目詰まりを起こすことがある。一方、ハニカム焼成体の気孔率が60%を超えると、ハニカム焼成体の強度が低下して容易に破壊されやすくなる。
【0110】
上記ハニカム焼成体の平均気孔径は5〜30μmであることが望ましい。
ハニカム焼成体の平均気孔径が5μm未満であると、パティキュレートが容易に目詰まりを起こすことがあり、一方、ハニカム焼成体の平均気孔径が30μmを超えると、パティキュレートが気孔を通り抜けてしまい、該パティキュレートを捕集することができず、フィルタとして機能することができない。
【0111】
なお、本発明では、上記気孔率及び気孔径は、水銀圧入法による従来公知の方法により測定することができる。
【0112】
本発明のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体のセル壁の厚さは、特に限定されないが、0.2〜0.4mmが望ましい。
ハニカム焼成体のセル壁の厚さが0.2mm未満であると、ハニカム構造を支持するセル壁の厚さが薄くなり、ハニカム焼成体の強度を保つことができなくなり、一方、ハニカム焼成体のセル壁の厚さが0.4mmを超えると、ハニカム構造体の圧力損失の上昇を引き起こす。
【0113】
また、本発明のハニカム構造体を構成するハニカム焼成体が有する外壁(外周壁)の厚さは、特に限定されるものではないが、ハニカム焼成体のセル壁の厚さと同様に0.2〜0.4mmであることが望ましい。
【0114】
また、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面における第1セル領域のセル密度は特に限定されないが、望ましい下限は、31.0個/cm(200個/in)、望ましい上限は、93.0個/cm(600個/in)、より望ましい下限は、38.8個/cm(250個/in)、より望ましい上限は、77.5個/cm(500個/in)である。
【0115】
ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の長手方向に垂直な断面における第2セル領域のセル密度は特に限定されないが、望ましい下限は、24.8個cm(160個/in)、望ましい上限は、93.0個/cm(600個/in)、より望ましい下限は、38.8個/cm(250個/in)、より望ましい上限は、77.5個/cm(500個/in)である。
【0116】
ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等のセラミック粉末が挙げられる。これらのなかでは、非酸化物セラミックが好ましく、炭化ケイ素が特に好ましい。耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。なお、上述したセラミックに金属ケイ素を配合したケイ素含有セラミック、ケイ素やケイ酸塩化合物で結合されたセラミック等のセラミック原料も構成材料として挙げられ、これらのなかでは、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたもの(ケイ素含有炭化ケイ素)が望ましい。特に、炭化ケイ素を60wt%以上含むケイ素含有炭化ケイ素質セラミックが望ましい。
【0117】
また、セラミック粉末の粒径は特に限定されないが、後の焼成工程で収縮の少ないものが好ましく、例えば、1.0〜50μmの平均粒径を有する相対的に粒径の大きい粉末100重量部と0.1〜1.0μmの平均粒径を有する相対的に粒径の小さい粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが好ましい。ハニカム焼成体の気孔径等を調節するためには、焼成温度を調節する必要があるが、セラミック粉末の粒径を調節することにより、気孔径を調節することができる。
【0118】
湿潤混合物における有機バインダとしては特に限定されず、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらのなかでは、メチルセルロースが望ましい。有機バインダの配合量は、通常、セラミック粉末100重量部に対して、1〜10重量部が望ましい。
【0119】
湿潤混合物における可塑剤は、特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。また、潤滑剤は特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
なお、可塑剤、潤滑剤は、場合によっては、湿潤混合物に含まれていなくてもよい。
【0120】
また、湿潤混合物を調製する際には、分散媒液を使用してもよく、分散媒液としては、例えば、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられる。さらに、湿潤混合物中には、成形助剤が添加されていてもよい。成形助剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0121】
さらに、湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーン、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0122】
接着剤ペースト及びコート材ペーストにおける無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。
【0123】
接着剤ペースト及びコート材ペーストにおける有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0124】
接着剤ペースト及びコート材ペーストにおける無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維のなかでは、アルミナファイバが望ましい。
【0125】
接着剤ペースト及びコート材ペーストにおける無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる無機粉末等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
【0126】
さらに、接着剤ペースト及びコート材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーン、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0127】
また、本発明のハニカム構造体には、触媒が担持されていてもよい。
本発明のハニカム構造体では、CO、HC及びNOx等の排ガス中の有害なガス成分を浄化することが可能となる触媒を担持させることにより、触媒反応により排ガス中の有害なガス成分を充分に浄化することが可能となる。また、PMの燃焼を助ける触媒を担持させることにより、PMをより容易に燃焼除去することが可能となる。
【符号の説明】
【0128】
10、20、30 ハニカム構造体
11、21、31、41、51 接着剤層
13、23、33 ハニカムブロック
100、200、300、400、500、600、700、800、900 ハニカム焼成体
110、210、310、410、510、610、710、810、910 第1セル領域
111、211、311、411、511、611、711、811、911 第1外周セル壁
113、213、313 第1セル
120、220、320、420、520、620、720、820、920 第2セル領域
121、221、321、421、521、621、721、821、921 第2外周セル壁
123、223、323、923 第2セル
123a、223a、323a、923a 第2大型セル
123b、223b、323b、923b 第2小型セル
130 内側規定線
131、331 (内)軌跡
132、332 (外)軌跡
A 任意の点
G ハニカム焼成体の端面の重心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された複数のハニカム焼成体が接着剤層を介して結束されたハニカムブロックからなるハニカム構造体であって、
少なくとも1つの前記ハニカム焼成体は、複数の第1セルが形成される第1セル領域と、
前記第1セル領域の一部又は全部を取り囲むように、前記第1セル領域の外周に位置する第1外周セル壁と前記ハニカム焼成体の外周に位置する第2外周セル壁との間に存在し、かつ、複数の第2セルが形成される第2セル領域とを有し、
前記第2セル領域を規定する前記第2外周セル壁の少なくとも一部は、前記接着剤層に接し、
前記第1セル及び前記第2セルのそれぞれの一方の端部は交互に封止されており、
前記ハニカム構造体において、第1端面の開口率は第2端面の開口率より大きく、
前記第1端面において、前記第2セル領域の開口率は、前記第1セル領域の開口率より大きいことを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記長手方向に垂直な断面において、前記第2セルは、前記第1セルのセル断面積より大きいセル断面積を有する第2大型セルと該第2大型セルのセル断面積より小さいセル断面積を有する第2小型セルとを含む請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記長手方向に垂直な断面において、前記第2小型セルのセル断面積は、前記第1セルのセル断面積より小さい請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記長手方向に垂直な断面において、前記第1セルのセル断面形状は略四角形であり、前記第2大型セルのセル断面形状は略八角形であり、かつ、前記第2小型セルのセル断面形状は略四角形である請求項2又は3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記長手方向に垂直な断面において、前記第1セルのセル断面形状は略四角形であり、前記第2大型セル及び前記第2小型セルのセル断面形状は曲線で囲まれた形状である請求項2又は3に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記長手方向に垂直な断面において、前記第1セル、前記第2大型セル、及び、前記第2小型セルのそれぞれのセル断面形状は略四角形である請求項2又は3に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記長手方向に垂直な断面において、前記第1セルは、第1大型セルと第1小型セルとを含み、前記第1大型セルのセル断面積は前記第1小型セルのセル断面積より大きい請求項1〜6のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記第1端面において、前記第1外周セル壁は、前記第2外周セル壁の相似形である請求項1〜7のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記第1端面において、前記第1外周セル壁は、前記接着剤層に接する前記第2外周セル壁の内側を規定する内側規定線上の任意の点から、前記ハニカム焼成体の端面の重心と前記任意の点とを結んだ線分の1/6の距離だけ離れた前記線分上の点と、1/2の距離だけ離れた前記線分上の点のそれぞれが、前記任意の点が前記内側規定線に沿って移動した際に描くそれぞれの軌跡の間に少なくとも形成される請求項1〜8のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記第1端面において、前記第1外周セル壁は、前記接着剤層に接する前記第2外周セル壁の内側を規定する内側規定線上の任意の点から、前記ハニカム焼成体の端面の重心と前記任意の点とを結んだ線分の1/4の距離だけ離れた前記線分上の点と、1/3の距離だけ離れた前記線分上の点のそれぞれが、前記任意の点が前記内側規定線に沿って移動した際に描くそれぞれの軌跡の間に少なくとも形成される請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
さらに、前記ハニカムブロックの外周に外周コート層が形成され、
前記第2セル領域を規定する前記第2外周セル壁の少なくとも一部は、前記外周コート層に接する請求項1〜10のいずれかに記載のハニカム構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−224542(P2011−224542A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293615(P2010−293615)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】