説明

ハンドオーバログ集計装置およびコンピュータプログラム

【課題】HO失敗原因別にHO失敗回数を集計したHO失敗ログを作成する際に、各MRの送信状態とHO失敗回数を関連付けることを図る。
【解決手段】移動端末毎にMRの送信状態を記録するMR送信状態管理部2と、ハンドオーバ失敗が検知されると、MR送信状態管理部2が記録した情報に基づいて、各MRの送信状態に関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成するハンドオーバ失敗ログ集計部3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドオーバログ集計装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
標準化団体の3GPP(3rd Generation Partnership Project)でLTE(Long Term Evolution)システムと呼ばれるセルラシステムが標準化されている。LTEシステムにおいて、移動端末が接続する基地局を切り替える動作であるハンドオーバ(Handover:HO)は、移動端末が送信したMR(Measurement Report)を基地局が受信することを契機にして実行される。MRには複数の種類が存在する。
【0003】
図18は、同一周波数帯内ハンドオーバ(Intra-Band HO)のシーケンスの一例を示す図である。Intra-Band HOは、移動端末が同一周波数帯のセル間で、接続する基地局を切り替える動作である。Intra-Band HOでは、移動端末(UE)が送信したMRを基地局が受信することを契機としてHO処理を開始する。図18に示す例では、HO元の基地局(Source eNB)が移動端末(UE)から「A3 MR」又は「A5 MR」を受信すると、HO処理が開始される。
【0004】
図19は、異周波数帯間ハンドオーバ(Inter-Band HO)及び異システム間ハンドオーバ(Inter-RAT HO)のシーケンスの一例を示す図である。異周波数帯間ハンドオーバ(Inter-Band HO)は、移動端末が異なる周波数帯のセル間で、接続する基地局を切り替える動作である。異システム間ハンドオーバ(Inter-RAT HO)は、移動端末が異なる無線通信システム間で、接続する基地局を切り替える動作である。図19に示す例では、Inter-Band HO及びInter-RAT HOは、HO元の基地局(Source eNB)が移動端末(UE)から「A2 MR」を受信すると、当該移動端末が接続する基地局と異なる周波数帯の電力測定を開始する。さらに、図18と同様に、HO元の基地局(Source eNB)が移動端末(UE)から「A3 MR」又は「A5 MR」を受信すると、HO処理が開始される。
【0005】
MRには、移動端末がMRを送信することを判定する際に用いる送信判定条件が定義されている(非特許文献1参照)。各MRの送信判定条件を以下に示す。
「A1 MR」:移動端末が接続する基地局(接続基地局)の評価指標が閾値を上回る。
「A2 MR」:接続基地局の評価指標が閾値を下回る。
「A3 MR」:接続基地局に隣接する基地局(隣接基地局)の評価指標が接続基地局の評価指標を閾値以上上回る。
「A4 MR」:隣接基地局の評価指標が閾値を上回る。
「A5 MR」:接続基地局の評価指標が第1の閾値を下回り、隣接基地局の評価指標が第2の閾値を上回る。
「B1 MR」:接続基地局と異なる無線通信システムの隣接基地局(異システム隣接基地局)の評価指標が閾値を上回る。
「B2 MR」:接続基地局の評価指標が第1の閾値を下回り、異システム隣接基地局 の評価指標が第2の閾値を上回る。
【0006】
上記の送信判定条件で用いる評価指標は、移動端末が受信する基地局の電力や通信品質を表す指標であり、例えばRSRP(Reference Signal Received Power)[dBm]又はRSRQ(Reference Signal Received Quality)[dB]である。また、各MRの送信判定条件の閾値は移動端末毎に個別に設定するものであり、それらの閾値は各MRを送信するタイミング、すなわち、異周波数帯の電力測定を開始するタイミングやHO処理を開始するタイミングを左右する。
【0007】
MR送信タイミングが不適切である場合、HO失敗や不必要なHOが発生してしまう。HOの失敗事象は、大きく分けて以下の3つに分類される(非特許文献2参照)。
【0008】
(1)「Too Late HO」:移動端末がセルAに接続中、もしくはセルAからセルBへのHO実行途中に無線リンク断(Radio Link Failure:RLF)が発生し、セルBと再接続する事象である。「Too Late HO」は、HOタイミングが遅すぎることが要因として考えられる。
【0009】
(2)「Too Early HO」:移動端末がセルAからセルBへのHO実行途中、もしくはセルAからセルBへのHOが成功した直後にRLFが発生し、セルAに再接続する事象である。「Too Early HO」は、HOタイミングが早すぎることが要因として考えられる。
【0010】
(3)「HO to Wrong Cell」:移動端末がセルAからセルBへのHO実行途中、もしくはセルAからセルBへのHOが成功した直後にRLFが発生し、セルA、Bとは異なるセルCと接続を再確立する事象である。セルBは「Target Cell」と呼ばれ、セルCは「Reconnection Cell」と呼ばれる。「HO to Wrong Cell」は、セルBへのHOタイミングが早すぎる、もしくは、セルCへのHOタイミングが遅すぎる、もしくは、その両方が要因として考えられる。
【0011】
又、例えば、移動端末がセルAからセルBへのHO完了後、短期間内に再びセルAにHOで再接続する事象(A→B→Aでもよいし、又は、例えばA→B→C→D→Aでもよい)は、不必要なHOであると考えられる。この事象は、セルAからセルBへのHOタイミングが早すぎることが要因として考えられる。
【0012】
MR送信タイミングは、各MRの送信判定条件の閾値を変更することによって調整することができる。HO失敗や不必要なHOの発生を低減することを目的としたHOパラメータ最適化技術として、各事象の発生に応じて、それらが解消するようにMR送信タイミングを調整する、すなわち、MR送信判定に用いる閾値を調整する技術が知られている(例えば、非特許文献3、4参照)。
【0013】
非特許文献3、4に示されるMR送信判定条件の最適化手法では、HO失敗発生時の失敗原因に応じて、それらが解消するように送信判定に用いる閾値を調整する。そのため、入力情報としてHOの失敗原因と失敗回数などの情報が必要である。非特許文献5では、例えば図20に示されるように、HO元のセル(セルA)とHO先のセル(セルB、C、・・・)のセルペア毎に、HO失敗原因(Too Late HO、Too Early HO、HO to Wrong Cell)別に発生回数(HO失敗回数)を集計した「HO失敗ログ」を作成している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】3GPP TS36.331, v9.3.0, 2010.06
【非特許文献2】3GPP TS36.300, v9.4.0, 2010.06
【非特許文献3】"移動局の位置を考慮したハンドオーバ・パラメータの自己最適化", 2010年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会, B-5-90
【非特許文献4】"Self-optimization for handover oscillation control in LTE", Network Operations and Management Symposium (NOMS), 2010 IEEE
【非特許文献5】3GPP TS32.425, v9.5.0. 2010-10.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、非特許文献5に開示されるHO失敗ログでは、HO失敗回数が各MRの送信状態と関連付けて管理されていないため、どのMR送信判定条件の設定が不適切であったためにHO失敗が発生したのかを判断することができない。また、HO to Wrong Cellについては、HOタイミングが早すぎたセル(Target Cell)についてのみログ集計しており、HOタイミングが遅すぎたセルについてはログ集計されていない。
【0016】
例えば、Inter-Band HOを実施するためには、まず異周波数帯の電力測定を開始するための契機であるMRを送信し、さらにHO処理を開始するための契機であるMRを送信する必要がある。このとき、HOタイミングが遅すぎることが原因で発生するHO失敗(Too Late HOとHO to Wrong Cellの一部)が発生した場合に、異周波数帯の電力測定を開始するためのMRとHO処理を開始するためのMRのうち、どちらのMRの送信タイミングが不適切であった(遅すぎた)のか、原因を特定することができない。このため、どのMR送信判定条件を最適化すればHO失敗を低減することができるのかを判断することができない。
【0017】
また、HO処理を開始するための契機として複数のMRを利用する場合には、いずれかのMR受信を契機としてHO処理が開始される。このとき、HOタイミングが早すぎることが原因で発生するHO失敗(Too Early HOとHO to Wrong Cellの一部)が発生した場合に、複数あるMRのうち、どのMRの送信タイミングが不適切であった(早すぎた)のか、原因を特定することができない。このため、どのMR送信判定条件を最適化すればHO失敗を低減することができるのかを判断することができない。
【0018】
あるMRの送信判定条件を最適化するためには、当該MRの送信タイミングが不適切であったことが原因で発生したHO失敗のみの情報を利用することが肝要である。仮に当該MR以外の送信タイミングが不適切であったことが原因で発生したHO失敗の情報も利用して最適化を実施してしまうと、当該MRの送信判定条件が適切に調整されず、逆にHO失敗や不必要なHOを増大させてしまう可能性がある。
【0019】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、HO失敗原因(Too Late HO、Too Early HO、HO to Wrong Cell)別にHO失敗回数を集計した「HO失敗ログ」を作成する際に、各MRの送信状態とHO失敗回数を関連付けることができる、ハンドオーバログ集計装置およびコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明に係るハンドオーバログ集計装置は、移動端末が送信したMR(Measurement Report)を基地局が受信することを契機にして実行されるハンドオーバの失敗原因別にハンドオーバ失敗回数を集計したハンドオーバ失敗ログを作成するハンドオーバログ集計装置において、移動端末毎にMRの送信状態を記録するMR送信状態管理部と、ハンドオーバ失敗が検知されると、前記MR送信状態管理部が記録した情報に基づいて、各MRの送信状態に関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成するハンドオーバ失敗ログ集計部と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明に係るハンドオーバログ集計装置において、ハンドオーバ処理を開始するまでに複数のステップでMR送受信が必要となる場合に、前記MR送信状態管理部は、移動端末毎に、移動端末が接続しているセルにおける移動端末IDと各MRの送信状態とを関連付けて記録し、前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、ハンドオーバタイミングが遅すぎることが原因で発生したハンドオーバ失敗が検知された場合に、当該ハンドオーバ失敗が発生した移動端末IDと前記MR送信状態管理部が記録した情報とに基づいてハンドオーバ失敗の発生原因であるMRを特定し、特定したMRに関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成する、ことを特徴とする。
【0022】
本発明に係るハンドオーバログ集計装置において、前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、Too Late HOの発生が検知された場合に、RLF Indicationにより通知された移動端末IDを使用する、ことを特徴とする。
【0023】
本発明に係るハンドオーバログ集計装置において、前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、HO to Wrong Cellの発生が検知された場合に、Target Cell又はReconnection Cellとの情報交換により得られたハンドオーバ先のセルIDおよび移動端末IDを使用し、前記特定したMRに関連付けた、Reconnection Cellに関するハンドオーバ失敗ログを作成する、ことを特徴とする。
【0024】
本発明に係るハンドオーバログ集計装置において、ハンドオーバ処理を開始するための契機であるMRが複数定義される場合に、前記MR送信状態管理部は、ハンドオーバが発生する度に、移動端末IDと、ハンドオーバ処理を開始する契機となったMRの種類と、ハンドオーバ先のセルIDおよび移動端末IDとを関連付けて記録し、前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、ハンドオーバタイミングが早すぎることが原因で発生したハンドオーバ失敗が検知された場合に、当該ハンドオーバ失敗のハンドオーバ先のセルIDおよび移動端末IDと、当該ハンドオーバ失敗が発生した移動端末IDと、前記MR送信状態管理部が記録した情報とに基づいてハンドオーバ失敗の発生原因であるMRを特定し、特定したMRに関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成する、ことを特徴とする。
【0025】
本発明に係るハンドオーバログ集計装置において、前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、Too Early HOの発生が検知された場合に、再接続メッセージにより通知されたハンドオーバ先のセルIDおよび移動端末IDを使用する、ことを特徴とする。
【0026】
本発明に係るハンドオーバログ集計装置において、前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、HO to Wrong Cellの発生が検知された場合に、Target Cell又はReconnection Cellとの情報交換により得られたハンドオーバ先のセルIDと移動端末IDを使用し、前記特定したMRに関連付けた、Target Cellに関するハンドオーバ失敗ログを作成する、ことを特徴とする。
【0027】
本発明に係るハンドオーバログ集計装置において、前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、HO to Wrong Cellの発生が検知された場合に、Target CellとReconnection Cellとを区別してハンドオーバ失敗ログを作成する、ことを特徴とする。
【0028】
本発明に係るハンドオーバログ集計装置において、移動端末毎にセル接続確立時刻を記録する接続確立時刻管理部を備え、前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、Too Late HOの発生が検知された場合に、RLF Indicationにより通知された移動端末IDに関する前記接続確立時刻に基づいて、接続確立時刻から一定期間超過後である場合にのみハンドオーバ失敗ログを作成する、ことを特徴とする。
【0029】
本発明に係るコンピュータプログラムは、移動端末が送信したMR(Measurement Report)を基地局が受信することを契機にして実行されるハンドオーバの失敗原因別にハンドオーバ失敗回数を集計したハンドオーバ失敗ログを作成するハンドオーバログ集計処理を行うためのコンピュータプログラムであって、移動端末毎にMRの送信状態を記録するステップと、ハンドオーバ失敗が検知されると、前記記録した情報に基づいて、各MRの送信状態に関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成するステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
これにより、前述のハンドオーバログ集計装置がコンピュータを利用して実現できるようになる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ハンドオーバ失敗原因別にハンドオーバ失敗回数を集計したハンドオーバ失敗ログを作成する際に、各MRの送信状態とハンドオーバ失敗回数を関連付けることができる。これにより、ハンドオーバ失敗や不要なハンドオーバの発生を適切に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハンドオーバログ集計装置(HOログ集計装置)1の構成図である。
【図2】Too Late HOの発生と検知の手順を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るMR送信状態管理リストの構成例である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るHO失敗ログの構成例である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るHOログ集計装置11の構成図である。
【図6】Too Early HOの発生と検知の手順を示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るMR送信状態管理リストの構成例である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るHO失敗ログの構成例である。
【図9】HO to Wrong Cellの発生と検知の手順を示す説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るHO失敗ログの構成例である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るHO失敗ログの構成例である。
【図12】本発明の第3実施形態に係るHOログ集計装置110の構成図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係るMR送信状態管理リストの構成例である。
【図14】本発明の第3実施形態に係るHO失敗ログの構成例である。
【図15】A3 MRの送信判定条件を示す説明図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係るHOログ集計装置21の構成図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係る接続確立時刻管理リストの構成例である。
【図18】同一周波数帯内ハンドオーバ(Intra-Band HO)のシーケンス図である。
【図19】異周波数帯間ハンドオーバ(Inter-Band HO)及び異システム間ハンドオーバ(Inter-RAT HO)のシーケンス図である。
【図20】従来のHO失敗ログの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
[第1実施形態]
第1実施形態では、Too Late HOが発生したときに、発生原因となったMRを判別してログを集計する。図1は、本発明の第1実施形態に係るハンドオーバログ集計装置(HOログ集計装置)1の構成図である。図1において、HOログ集計装置1は、MR送信状態管理部2とHO失敗ログ集計部3を備える。HOログ集計装置1は、各セルの基地局に設けられる。
【0034】
ここで、図2を参照して、Too Late HOについて説明する。図2は、Too Late HOの発生と検知の手順を示す説明図である。まず、セルAに接続していた移動端末MSがHO処理を開始する前又は開始した直後に、セルAとの接続断が発生し、HOに失敗する(ステップS1)。その後、移動端末MSはセルBと再接続する(ステップS2)。これがToo Late HOの発生の手順である。再接続されたセルBはセルAに対してRLF Indicationを送信する(ステップS3)。RLF Indicationを受信したセルAは、セルBに対するToo Late HOの発生を検知する。
【0035】
Too Late HOの発生原因を判別する必要が生じるのは、Inter-Band HOやInter-RAT HOのようにHO処理を開始するまでに複数のステップでMR送受信が必要となる場合である。
【0036】
図1において、HOログ集計装置1には、MR受信に関する情報とHO失敗検知に関する情報とが入力される。HOログ集計装置1は、HO失敗原因(Too Late HO、Too Early HO、HO to Wrong Cell)別にHO失敗回数を集計したHO失敗ログであって、各MRの送信状態とHO失敗回数とを関連付けたHO失敗ログを出力する。
【0037】
MR送信状態管理部2は、MR受信に関する情報を入力情報とし、移動端末毎に各MRの送信状態を管理する。MR送信状態管理部2は、MR送信状態管理リストを保持する。図3は、本実施形態に係るMR送信状態管理リストの構成例である。図3の例は、Inter-Band HOにおいて、異周波数帯の電力測定を開始するための契機としてA2 MR、HO処理を開始するための契機としてA3 MRを用いた場合を示している。
【0038】
図3に示されるように、MR送信状態管理部2は、自セルに接続している各移動端末について、移動端末の識別子(ID(図3の例ではLTEシステムにおける移動端末IDであるC-RNTI))と各MRの送信状態(送信済み又は未送信)とをMR送信状態管理リストに記録する。MR送信状態管理部2は、複数のステップのMR送受信のうち、最後のステップを除く全てのMR送受信についてのMR送信状態を、MR送信状態管理リストに記録する。
【0039】
本実施形態では、MR送受信の発生順序は、図19に示されるように、まずA2 MR、ついでA3 MRの順である。従って、MR送信状態管理リストには、図3に例示されるように、A2 MRのみの送信状態が記録される。
【0040】
MR送信状態管理部2は、MR送信状態管理リストにおいて、ある移動端末に関する記録内容を、当該移動端末の登録が自セルから消去されるときに同時に削除する。なお、Inter-Band HOやInter-RAT HOにおいて、例えばA1 MRの受信を契機として異周波数帯の電力測定を停止する場合には、MR送信状態管理部2は、異周波数帯の電力測定を停止するときに、MR送信状態管理リストにおける該当する移動端末に関する記録内容について、異周波数帯の電力測定を開始するための契機となるMR(図3の例ではA2 MR)の送信状態を未送信に変更する。
【0041】
HO失敗ログ集計部3は、HO失敗検知に関する情報と、MR送信状態管理リストとを用いて、HO失敗ログを作成する。図4は、本実施形態に係るHO失敗ログの構成例である。図4の例は、Inter-Band HOにおいて、異周波数帯の電力測定を開始するための契機であるA2 MR、及び、HO処理を開始するための契機であるA3 MR、の送信状態を利用する場合である。
【0042】
図2を参照してHO失敗ログ集計部3の動作を説明する。
Too Late HOにより接続断となった移動端末MSは、セルBに再接続する(ステップS2)。この再接続処理において、移動端末MSは、セルBに対して、HO元のセル(ここではセルA)のIDとHO元のセルAでの移動端末IDとを通知する。そして、ステップS3でセルBからセルAに送信されるRLF Indicationは、発生したToo Late HOに関するHO元のセルAのIDと、HO元のセルAでの移動端末IDとを有する。
【0043】
セルAのHO失敗ログ集計部3は、RLF Indicationに含まれる移動端末IDをMR送信状態管理リストに記録されている移動端末IDと照合し、MR送信状態管理リストにおいて合致した移動端末IDのA2 MRの送信状態を確認する。この結果、セルAのHO失敗ログ集計部3は、該移動端末IDのA2 MRの送信状態が送信済みであるならば、Too Late HOの発生原因となったMRをA3 MRであると判定する。一方、A2 MRが未送信であるならば、Too Late HOの発生原因となったMRをA2 MRであると判定する。次いで、セルAのHO失敗ログ集計部3は、図4のHO失敗ログにおいて、Too Late HOの再接続先のセルB、且つ、Too Late HOの発生原因のMR(対象MR)に関連付けられるHO失敗回数(発生回数)に1を加算する。これにより、Too Late HOが発生したときに、発生原因となったMRを判別してHO失敗ログを集計することができる。
【0044】
上述した第1実施形態によれば、Inter-Band HOやInter-RAT HOのようにHO処理を開始するまでに複数のステップでMR送受信が必要となる場合に、HO失敗ログに基づいて、Too Late HOの発生原因となったMRを特定して送信判定条件を最適化することができる。これにより、HO失敗や不要なHOの発生を適切に低減することが可能となる。
【0045】
[第2実施形態]
第2実施形態では、Too Early HOが発生したときに、発生原因となったMRを判別してログを集計する。図5は、本発明の第2実施形態に係るHOログ集計装置11の構成図である。図5において、HOログ集計装置11は、MR送信状態管理部12とHO失敗ログ集計部13を備える。HOログ集計装置11は、各セルの基地局に設けられる。
【0046】
ここで、図6を参照して、Too Early HOについて説明する。図6は、Too Early HOの発生と検知の手順を示す説明図である。まず、セルAに接続していた移動端末MSは、HO処理を開始するための契機となるMRの送信判定条件を満たすと、セルAにMRを送信し(ステップS11)、セルBへのHO処理を開始する(ステップS12)。次いで、移動端末MSは、HO処理の開始直後、又はHO処理完了直後に、セルBとの接続断が発生し(ステップS13)、セルAに再接続する(ステップS14)。これがToo Early HOの発生の手順である。再接続されたセルAは、セルBに対してRLF Indicationを送信する(ステップS15)。セルBは、ステップS12のHO処理実施後、一定の保留期間以内にRLF Indicationを受信した場合には、セルAに対してHandover Reportを送信する(ステップS16)。Handover Reportを受信したセルAは、セルBに対するToo Early HOの発生を検知する。
【0047】
Too Early HOの発生原因を判別する必要が生じるのは、HO処理を開始するための契機であるMRが複数定義される場合である。
【0048】
図5において、HOログ集計装置11には、MR受信に関する情報と、HO処理に関する情報と、HO失敗検知に関する情報とが入力される。HOログ集計装置11は、HO失敗原因(Too Late HO、Too Early HO、HO to Wrong Cell)別にHO失敗回数を集計したHO失敗ログであって、各MRの送信状態とHO失敗回数とを関連付けたHO失敗ログを出力する。
【0049】
MR送信状態管理部12は、MR受信に関する情報とHO処理に関する情報を入力情報とし、移動端末毎に各MRの送信状態を管理する。MR送信状態管理部2は、MR送信状態管理リストを保持する。図7は、本実施形態に係るMR送信状態管理リストの構成例である。図7の例は、HO処理を開始するための契機であるA3 MR及びA5 MRの送信状態を管理するものである。
【0050】
図7に示されるように、MR送信状態管理部2は、自セルに接続している各移動端末について、隣接セルへのHOの処理の開始時に、移動端末ID(図7の例ではLTEシステムにおける端末IDであるC-RNTI)と、HO処理を開始する契機となったMRの種類と、HO先となるセルのIDと、HO先セルで割り当てられる移動端末IDとをMR送信状態管理リストに記録する。
【0051】
MRを送信した移動端末の移動端末ID、受信したMRの種類、及びHO先となるセルのIDについては、図6のステップS11におけるMR送受信から取得可能である。HO先セルで割り当てられる移動端末IDについては、図6のステップS12における基地局間ネットワークを介したHO先セルとの通信で得られるHO処理情報から取得可能である。
【0052】
MR送信状態管理部12は、MR送信状態管理リストにおいて、ある移動端末に関する記録内容を、当該移動端末のToo Early HOがカウントされるか、又はToo Early HOをカウントするための保留時間(Too Early HOであると判定する条件である待ち時間)を超過したときに、削除する。
【0053】
HO失敗ログ集計部13は、HO失敗検知に関する情報と、MR送信状態管理リストとを用いて、HO失敗ログを作成する。図8は、本実施形態に係るHO失敗ログの構成例である。図8の例は、HO処理を開始するための契機であるA3 MR及びA5 MRの送信状態を利用する場合である。
【0054】
図6を参照してHO失敗ログ集計部13の動作を説明する。
Too Early HOにより接続断となった移動端末MSは、セルAに再接続する(ステップS14)。この再接続処理において、移動端末MSは、セルAに対して、HO先のセル(ここではセルB)のIDとHO先のセルBでの移動端末IDとを通知する。
【0055】
セルAのHO失敗ログ集計部13は、ステップS14で再接続メッセージにより移動端末MSから通知されたHO先のセルBのID及び移動端末IDを、送信状態管理リストに記録されているHO先のセルのID(HO先セルのPhysical Cell ID)及びHO先のセルでの移動端末ID(HO先セルでのC-RNTI)と照合し、MR送信状態管理リストにおいて合致した「HO先のセルのID及びHO先のセルでの移動端末ID」に関連付けられているMRの種類を確認する。この結果、セルAのHO失敗ログ集計部3は、該「HO先のセルのID及びHO先のセルでの移動端末ID」に関連付けられているMRを、Too Early HOの発生原因となったMRであると判定する。
【0056】
次いで、セルAのHO失敗ログ集計部3は、図8のHO失敗ログにおいて、Too Early HOのHO先のセルB、且つ、Too Early HOの発生原因のMR(対象MR)に関連付けられるHO失敗回数(発生回数)に1を加算する。これにより、Too Early HOが発生したときに、発生原因となったMRを判別してHO失敗ログを集計することができる。
【0057】
上述した第2実施形態によれば、HO処理を開始するための契機であるMRが複数定義される場合に、HO失敗ログに基づいて、Too Early HOの発生原因となったMRを特定して送信判定条件を最適化することができる。これにより、HO失敗や不要なHOの発生を適切に低減することが可能となる。
【0058】
[第3実施形態]
第3実施形態では、HO to Wrong Cellが発生したときに、発生原因となったMRを判別してログを集計する。
【0059】
ここで、図9を参照して、HO to Wrong Cellについて説明する。図9は、HO to Wrong Cellの発生と検知の手順を示す説明図である。まず、セルAに接続していた移動端末MSは、セルBへのHO処理を開始するための契機となるMRの送信判定条件を満たすと、セルAにMRを送信し(ステップS21)、セルBへのHO処理を開始する(ステップS22)。次いで、移動端末MSは、HO処理の開始直後、又はHO処理完了直後に、セルBとの接続断が発生し(ステップS23)、セルCに再接続する(ステップS24)。これがHO to Wrong Cellの発生の手順である。
【0060】
再接続されたセルCは、セルBに対してRLF Indicationを送信する(ステップS25)。セルBは、ステップS22のHO処理実施後、一定の保留期間以内にRLF Indicationを受信した場合には、セルAに対してHandover Reportを送信する(ステップS26)。Handover Reportを受信したセルAは、セルBをTarget Cellとし、セルCをReconnection CellとするHO to Wrong Cellの発生を検知する。
【0061】
HO to Wrong Cellは3つの異なるセルの間で発生する事象であり、その発生原因は、Target CellへのHOタイミングが早すぎる、又は、Reconnection CellへのHOタイミングが遅すぎる、又は、その両方である。しかしながら、非特許文献5に開示される従来のHO失敗ログ(図20参照)では、Target Cellに対するHO失敗としてのみ記録され、Reconnection Cellに対するHO失敗としては記録されない。
【0062】
そこで、本実施形態では、HO失敗ログ集計部は、図10に示されるように、HO to Wrong Cellの発生回数を、Target CellとReconnection Cellとを区別してHO失敗ログに記録する。これにより、Target CellへのHOタイミングが早いことが原因で発生したHO to Wrong Cellと、Reconnection CellへのHOタイミングが遅いことが原因で発生したHO to Wrong Cellとを区別してログ集計することができる。この結果として、HO to Wrong Cellの発生を解消するために、HO元のセル(Source Cell)とTarget Cell間のHOパラメータに加えて、HO元のセル(Source Cell)とReconnection Cell間のHOパラメータをも対象として、HOパラメータの最適化を実施することが可能となる。
【0063】
次に、Target Cellを対象としたログ集計とReconnection Cellを対象としたログ集計とにおいて、それぞれ失敗原因となったMRの種類を判別する方法を説明する。
【0064】
まず、Target Cellの場合を説明する。
HO to Wrong CellのTarget Cellについては、Too Early HOと同様に、HO処理を開始するための契機であるMRが複数定義される場合に、発生原因となったMRを判別する。このHOログ集計装置は、図5に示すHOログ集計装置11と同様であり、各セルの基地局に設けられる。MR送信状態管理部12は、図7に示されるMR送信状態管理リストの形式で、MR送信状態管理リストを作成する。ここでは、HO処理を開始するための契機であるA3 MR及びA5 MRの送信状態を管理する。
【0065】
図9を参照して、HO失敗ログ集計部13の動作を説明する。
HO to Wrong Cellにより接続断となった移動端末MSは、セルCに再接続する(ステップS24)。この再接続処理において、移動端末MSは、セルCに対して、HO先のセル(ここではセルB)のIDとHO先のセルBでの移動端末IDを通知する。セルCは、ステップS24で再接続メッセージにより移動端末MSから通知されたHO先のセルBのID及び移動端末IDを、セルAのHOログ集計装置11へ送信する。又は、ステップS25でRLF IndicationによりセルCからセルBに通知されたHO先のセルBのID及び移動端末IDを、セルBがセルAのHOログ集計装置11へ送信する。
【0066】
セルAのHOログ集計装置11は、セルC又はセルBから受信したHO先のセルBのID及び移動端末IDを、MR送信状態管理リスト(図7参照)に記録されているHO先のセルのID(HO先セルのPhysical Cell ID)及びHO先のセルでの移動端末ID(HO先セルでのC-RNTI)と照合する。次いで、セルAのHO失敗ログ集計部13は、そのMR送信状態管理リストにおいて合致した「HO先のセルのID及びHO先のセルでの移動端末ID」に関連付けられているMRの種類を確認する。この結果、セルAのHO失敗ログ集計部3は、該「HO先のセルのID及びHO先のセルでの移動端末ID」に関連付けられているMRを、Too Early HOの発生原因となったMRであると判定する。
【0067】
次いで、セルAのHO失敗ログ集計部3は、図11のHO失敗ログにおいて、HO to Wrong CellのTarget CellであるセルB、且つ、HO to Wrong CellのTarget Cellの発生原因のMR(対象MR)に関連付けられるHO失敗回数(発生回数)に1を加算する。これにより、HO to Wrong Cellが発生したときに、Target Cellの発生原因となったMRを判別してHO失敗ログを集計することができる。
【0068】
なお、セルC又はセルBがHO先のセルのID及び移動端末IDをセルAのHOログ集計装置11に送信する必要があるため、セルAとセルC又はセルBが情報交換するためのリンクを張るか、又は複数セルの上位に設置される集中サーバにおいて再接続メッセージを集中管理する。又は、該集中サーバがMR送信状態管理リストを集中管理してもよい。
【0069】
次に、Reconnection Cellの場合を説明する。
HO to Wrong CellのReconnection Cellについては、Too Late HOと同様に、Inter-Band HOやInter-RAT HOのようにHO処理を開始するまでに複数のステップでMR送受信が必要となる場合に、発生原因となったMRを判別する。このHOログ集計装置110を図12に示す。HOログ集計装置110は各セルの基地局に設けられる。図12において、HOログ集計装置110は、MR送信状態管理部120とHO失敗ログ集計部130を備える。MR送信状態管理部120は、図13に示されるMR送信状態管理リストの形式で、MR送信状態管理リストを作成する。ここでは、Inter-Band HOにおいて、異周波数帯の電力測定を開始するための契機としてA2 MR、HO処理を開始するための契機としてA3 MRを用いた場合の例を示している。
【0070】
図13に示されるように、MR送信状態管理部120は、自セルに接続している各移動端末について、隣接セルへのHOの処理の開始時に、移動端末ID(図13の例ではLTEシステムにおける端末IDであるC-RNTI)と、各MRの送信状態(送信済み又は未送信)と、HO先となるセルのIDと、HO先セルで割り当てられる移動端末IDとをMR送信状態管理リストに記録する。MR送信状態管理部120は、複数のステップのMR送受信のうち、最後のステップを除く全てのMR送受信についてのMR送信状態をMR送信状態管理リストに記録する。
【0071】
MRを送信した移動端末の移動端末ID、受信したMRの種類、及びHO先となるセルのIDについては、図9のステップS21におけるMR送受信から取得可能である。HO先セルで割り当てられる移動端末IDについては、図9のステップS22における基地局間ネットワークを介したHO先セルとの通信で得られるHO処理情報から取得可能である。
【0072】
MR送信状態管理部120は、MR送信状態管理リストにおいて、ある移動端末に関する記録内容を、当該移動端末のHO to Wrong Cellがカウントされるか、又はHO to Wrong Cellをカウントするための保留時間(HO to Wrong Cellであると判定する条件である待ち時間)を超過したときに、削除する。
【0073】
図9を参照して、HO失敗ログ集計部130の動作を説明する。
HO to Wrong Cellにより接続断となった移動端末MSは、セルCに再接続する(ステップS24)。この再接続処理において、移動端末MSは、セルCに対して、HO先のセル(ここではセルB)のIDとHO先のセルBでの移動端末IDを通知する。又、ステップS25において、セルCからセルBに送信されるRLF Indicationは、発生したHO to Wrong Cellに関するHO先のセルBのIDとHO先のセルBでの移動端末IDを有する。セルC又はセルBは、HO先のセルBのIDとHO先のセルBでの移動端末IDを、セルAのHOログ集計装置A1へ送信する。
【0074】
セルAのHO失敗ログ集計部130は、セルC又はセルBから受信したHO先のセルBのIDとHO先のセルBでの移動端末IDを、MR送信状態管理リスト(図13参照)に記録されているセルIDおよび移動端末ID(C-RNTI)と照合し、MR送信状態管理リストにおいて合致した移動端末IDのA2 MRの送信状態を確認する。この結果、セルAのHO失敗ログ集計部3は、該移動端末IDのA2 MRの送信状態が送信済みであるならば、HO to Wrong Cellの発生原因となったMRをA3 MRであると判定する。一方、A2 MRが未送信であるならば、HO to Wrong Cellの発生原因となったMRをA2 MRであると判定する。
【0075】
次いで、セルAのHO失敗ログ集計部130は、図14のHO失敗ログにおいて、HO to Wrong CellのReconnection CellであるセルC、且つ、HO to Wrong CellのReconnection Cellの発生原因のMR(対象MR)に関連付けられるHO失敗回数(発生回数)に1を加算する。これにより、HO to Wrong Cellが発生したときに、Reconnection Cellの発生原因となったMRを判別してHO失敗ログを集計することができる。
【0076】
なお、セルC又はセルBは、HO先のセルBのIDとHO先のセルBでの移動端末IDを、セルAのHOログ集計装置1へ送信する必要があるため、セルAとセルC又はセルBが情報交換するためのリンクを張るか、又は複数セルの上位に設置される集中サーバにおいて再接続メッセージを集中管理する。又は、該集中サーバがMR送信状態管理リストを集中管理してもよい。
【0077】
上述した第3実施形態によれば、HO失敗ログに基づいて、HO to Wrong Cellの発生原因となったMRを特定して送信判定条件を最適化することができる。これにより、HO失敗や不要なHOの発生を適切に低減することが可能となる。
【0078】
[第4実施形態]
第4実施形態では、Too Late HOが発生したときに、HOタイミングが遅すぎたことが原因ではない事象を除外してログを集計する。
【0079】
図15は、HO処理を開始するための契機であるA3 MRの送信判定条件を示す説明図である。図15において、時刻t1でセルAに接続していた移動端末は、時刻t2で条件1の「隣接セルと接続セルの電力差が閾値以上となる」を満たし、さらに時刻t3で条件2の「条件1を一定時間以上満たす」を満たすことによって、A3 MRを送信する。
【0080】
ここで、条件1の閾値が意味を持つのは、条件1を満たす時刻t2以前に、移動端末がセルAに接続している場合のみである。例えば移動端末の電源オンや他セルからのHOなどにより、移動端末がセルAに接続した時点で条件1を満たしている場合を考える。図15において、時刻t4で移動端末がセルAに接続した時点において条件1を満たしている。この時刻t4からA3 MRの送信判定条件を判定し、結果的にHOタイミングが遅れてToo Late HOと判定されたとしても、このToo Late HOの発生原因は、A3 MRの送信判定条件が不適切だったことではないと考えられる。そこで、本実施形態では、そのようなHO失敗はToo Late HOとしてカウントしないことにする。
【0081】
図16は、本発明の第4実施形態に係るHOログ集計装置21の構成図である。図16において、HOログ集計装置21は、接続確立時刻管理部22とHO失敗ログ集計部23を備える。HOログ集計装置21は、各セルの基地局に設けられる。
【0082】
HOログ集計装置21には、移動端末が自セルへの接続を確立したことを示す接続情報と、HO失敗検知に関する情報とが入力される。HOログ集計装置21は、図20に示される、HO失敗原因(Too Late HO、Too Early HO、HO to Wrong Cell)別にHO失敗回数を集計したHO失敗ログを出力する。
【0083】
接続確立時刻管理部22は、移動端末毎に、自セルへの接続を確立した時刻を接続確立時刻管理リストに記録する。図17は、接続確立時刻管理リストの構成例である。接続確立時刻管理部22は、接続確立時刻管理リストにおいて、ある移動端末の記録内容を、当該移動端末の登録が自セルから消去されるときに同時に削除する。
【0084】
HO失敗ログ集計部23は、HO失敗検知に関する情報と、接続確立時刻管理リストとを用いて、HO失敗ログを作成する。HO失敗ログ集計部23は、移動端末の接続確立直後に発生したToo Late HOをHO失敗ログに含めないようにする。
【0085】
図2を参照してHO失敗ログ集計部23の動作を説明する。
Too Late HOにより接続断となった移動端末MSは、セルBに再接続する(ステップS2)。この再接続処理において、移動端末MSは、セルBに対して、HO元のセル(ここではセルA)のIDとHO元のセルAでの移動端末IDとを通知する。そして、ステップS3でセルBからセルAに送信されるRLF Indicationは、発生したToo Late HOに関するHO元のセルAのIDと、HO元のセルAでの移動端末IDとを有する。
【0086】
セルAのHO失敗ログ集計部23は、RLF Indicationに含まれる移動端末IDを接続確立時刻管理リストに記録されている移動端末IDと照合し、接続確立時刻管理リストにおいて合致した移動端末IDの接続確立時刻を確認する。この結果、セルAのHO失敗ログ集計部23は、現在時刻が該移動端末IDの接続確立時刻から一定期間以内であるならば、Too Late HOではないと判定する。一方、セルAのHO失敗ログ集計部23は、現在時刻が該移動端末IDの接続確立時刻から一定期間経過後であるならば、Too Late HOの発生原因となったMRをA3 MRであると判定し、図20のHO失敗ログにおいて該移動端末IDのToo Late HOのHO失敗回数(発生回数)に1を加算する。該一定期間とは、例えば図15において条件2の一定時間に対して一定の処理遅延時間を加えた時間とすることが挙げられる。
【0087】
これにより、Too Late HOが発生したときに、HOタイミングが遅すぎたことが原因ではない事象を除外してログを集計することができる。
【0088】
上述した第4実施形態によれば、HO失敗ログに基づいて、Too Late HOの発生原因となったMRを特定して送信判定条件を最適化するときの精度を向上させることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
また、上述した各実施形態に係るHOログ集計装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、HOログ集計処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0090】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0091】
1,11,21,110…HOログ集計装置、2,12,120…MR送信状態管理部、3,13,23,130…HO失敗ログ集計部、22…接続確立時刻管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末が送信したMR(Measurement Report)を基地局が受信することを契機にして実行されるハンドオーバの失敗原因別にハンドオーバ失敗回数を集計したハンドオーバ失敗ログを作成するハンドオーバログ集計装置において、
移動端末毎にMRの送信状態を記録するMR送信状態管理部と、
ハンドオーバ失敗が検知されると、前記MR送信状態管理部が記録した情報に基づいて、各MRの送信状態に関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成するハンドオーバ失敗ログ集計部と、
を備えたことを特徴とするハンドオーバログ集計装置。
【請求項2】
ハンドオーバ処理を開始するまでに複数のステップでMR送受信が必要となる場合に、
前記MR送信状態管理部は、移動端末毎に、移動端末が接続しているセルにおける移動端末IDと各MRの送信状態とを関連付けて記録し、
前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、ハンドオーバタイミングが遅すぎることが原因で発生したハンドオーバ失敗が検知された場合に、当該ハンドオーバ失敗が発生した移動端末IDと前記MR送信状態管理部が記録した情報とに基づいてハンドオーバ失敗の発生原因であるMRを特定し、特定したMRに関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のハンドオーバログ集計装置。
【請求項3】
前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、Too Late HOの発生が検知された場合に、RLF Indicationにより通知された移動端末IDを使用する、
ことを特徴とする請求項2に記載のハンドオーバログ集計装置。
【請求項4】
前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、HO to Wrong Cellの発生が検知された場合に、Target Cell又はReconnection Cellとの情報交換により得られたハンドオーバ先のセルIDおよび移動端末IDを使用し、前記特定したMRに関連付けた、Reconnection Cellに関するハンドオーバ失敗ログを作成する、
ことを特徴とする請求項2に記載のハンドオーバログ集計装置。
【請求項5】
ハンドオーバ処理を開始するための契機であるMRが複数定義される場合に、
前記MR送信状態管理部は、ハンドオーバが発生する度に、移動端末IDと、ハンドオーバ処理を開始する契機となったMRの種類と、ハンドオーバ先のセルIDおよび移動端末IDとを関連付けて記録し、
前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、ハンドオーバタイミングが早すぎることが原因で発生したハンドオーバ失敗が検知された場合に、当該ハンドオーバ失敗のハンドオーバ先のセルIDおよび移動端末IDと、当該ハンドオーバ失敗が発生した移動端末IDと、前記MR送信状態管理部が記録した情報とに基づいてハンドオーバ失敗の発生原因であるMRを特定し、特定したMRに関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のハンドオーバログ集計装置。
【請求項6】
前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、Too Early HOの発生が検知された場合に、再接続メッセージにより通知されたハンドオーバ先のセルIDおよび移動端末IDを使用する、
ことを特徴とする請求項5に記載のハンドオーバログ集計装置。
【請求項7】
前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、HO to Wrong Cellの発生が検知された場合に、Target Cell又はReconnection Cellとの情報交換により得られたハンドオーバ先のセルIDと移動端末IDを使用し、前記特定したMRに関連付けた、Target Cellに関するハンドオーバ失敗ログを作成する、
ことを特徴とする請求項5に記載のハンドオーバログ集計装置。
【請求項8】
前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、HO to Wrong Cellの発生が検知された場合に、Target CellとReconnection Cellとを区別してハンドオーバ失敗ログを作成する、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のハンドオーバログ集計装置。
【請求項9】
移動端末毎にセル接続確立時刻を記録する接続確立時刻管理部を備え、
前記ハンドオーバ失敗ログ集計部は、Too Late HOの発生が検知された場合に、RLF Indicationにより通知された移動端末IDに関する前記接続確立時刻に基づいて、接続確立時刻から一定期間超過後である場合にのみハンドオーバ失敗ログを作成する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のハンドオーバログ集計装置。
【請求項10】
移動端末が送信したMR(Measurement Report)を基地局が受信することを契機にして実行されるハンドオーバの失敗原因別にハンドオーバ失敗回数を集計したハンドオーバ失敗ログを作成するハンドオーバログ集計処理を行うためのコンピュータプログラムであって、
移動端末毎にMRの送信状態を記録するステップと、
ハンドオーバ失敗が検知されると、前記記録した情報に基づいて、各MRの送信状態に関連付けたハンドオーバ失敗ログを作成するステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−9085(P2013−9085A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139446(P2011−139446)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】