説明

バイオガス発電装置

【課題】生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を低濃度廃水に混合する割合を制御することができ、混合廃水のBODが高くなるのを防止し、発酵効率を向上させるバイオガス発電装置を提供する。
【解決手段】低濃度廃水処理槽5と、第一水位センサ31と、高濃度廃水処理槽6と、第二水位センサ32と、酸発酵槽7と、第一ポンプ33と、第二ポンプ34と、メタン発酵槽11と、精製装置12と、ガスエンジン発電機61と、第一水位センサ31、第二水位センサ32、第一ポンプ33及び第二ポンプ34と接続された制御装置18とを備え、制御装置18によって、低濃度廃水処理槽5の水位h1が第一駆動許可水位H1以上である場合には、第一ポンプ33を駆動させ、第一ポンプ33を駆動させている状態で、高濃度廃水処理槽6の水位h2が第二駆動許可水位H2以上である場合には、第二ポンプ34を所定時間T1駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガス発電装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥、有機性廃水、厨芥類等の食品残渣及び糞尿等の廃棄されていた有機廃棄物を、嫌気性細菌を利用してメタン発酵することでメタンガス(気体状態のメタン)を主成分とした混合気体であるバイオガスを発生させ、該バイオガスを炭化水素系化石燃料ガスの代わりに使用して、発電等に利用するバイオガス発電装置が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。また、前記バイオガス発電装置の一例として、該バイオガスを炭化水素系化石燃料ガスの代わりに使用して、ガスエンジン発電機を駆動させ、発電するバイオガス発電装置は公知となっている(例えば、特許文献2または特許文献3参照)。
【0003】
また、前記有機廃棄物を含む有機性廃水をメタン発酵させるメタン発酵槽の一例として、沈降速度の大きい粒子化(グラニュール化)したメタン発酵菌を高濃度に保持し、廃水を高効率にメタン発酵処理するという特徴を持つ菌体グラニュールを使用した廃水処理方法、例えばUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)法を使用した発酵槽が公知となっている。
【0004】
また、有機性廃棄物を含む有機性廃水は、原料によって生物化学的酸素要求量(BOD)が異なる。例えば、食品工場で使用される処理水等はBODが比較的低く、食品工場で廃棄される有機ゴミ(残渣)等はBODが比較的高い。BODが比較的高い有機性廃水(以下、高濃度廃水という)はBODが比較的低い廃水(以下、低濃度廃水という)と比べて、粘度が高く、流動性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−272160号公報
【特許文献2】特開2004−293465号公報
【特許文献3】特開2000−152799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高濃度廃水を利用してUASB法を使用したメタン発酵槽内でメタン発酵を行う際には、低濃度廃水とともにメタン発酵槽に投入する。メタン発酵槽内では、高濃度廃水と低濃度廃水とは混合された有機性廃水(以下、混合廃水という)となりメタン発酵槽内を流動することができる。混合廃水のBODは変動せず一定であることが望ましい。例えば、混合廃水中の高濃度廃水の割合が適当であれば、メタン発酵槽内のメタン発酵菌の活動が活発になり、低濃度廃水のみをメタン発酵槽に投入した場合と比べて、メタン発酵の効率が向上する。しかし、混合廃水中の高濃度廃水の割合が適当な割合よりも高くなると、混合廃水のBODが上昇し、メタン発酵槽内を流動しにくくなり、メタン発酵槽内に付着して詰まりの原因になる。また、混合廃水のBODが高すぎるとメタン発酵菌の活動がにぶくなり、メタン発生量が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑み、生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を低濃度廃水に混合する割合を制御することができ、混合廃水のBODが高くなるのを防止し、発酵効率を向上させるバイオガス発電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、有機物を含む廃水であって生物化学的酸素要求量(BOD)が低い低濃度廃水を貯溜する低濃度廃水処理槽と、前記低濃度廃水処理槽の水位を計測する第一水位センサと、前記低濃度廃水よりも生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を貯溜する高濃度廃水処理槽と、前記高濃度廃水処理槽の水位を計測する第二水位センサと、前記低濃度廃水処理槽及び高濃度廃水処理槽と連結する酸発酵槽と、前記低濃度廃水処理槽と前記酸発酵槽との間に設けられた第一ポンプと、前記高濃度廃水処理槽と前記酸発酵槽との間に設けられた第二ポンプと、前記酸発酵槽と連結する、バイオガスを発生させるためのメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽と連結する精製装置と、前記バイオガスと空気とを燃焼させて、ガスエンジンを駆動して発電機を駆動させるガスエンジン発電機と、前記第一水位センサ、第二水位センサ、第一ポンプ及び第二ポンプと接続された制御装置とを備え、前記制御装置によって、前記低濃度廃水処理槽の水位が第一駆動許可水位以上である場合には、前記第一ポンプを駆動させ、前記第一ポンプを駆動させている状態で、前記高濃度廃水処理槽の水位が第二駆動許可水位以上である場合には、前記第二ポンプを所定時間駆動させるものである。
【0010】
請求項2においては、前記低濃度廃水処理槽と前記酸発酵槽との間に廃水流量センサを設け、前記廃水流量センサは、前記制御装置と接続され、前記制御装置によって、前記低濃度廃水処理槽の水位が第一駆動許可水位以上である場合には、前記第一ポンプを駆動させ、前記第一ポンプを駆動させている状態で、前記高濃度廃水処理槽の水位が第二駆動許可水位以上であり、かつ、前記廃水流量センサによって計測された低濃度廃水の積算流量が所定値以上となった場合には、前記第二ポンプを所定時間駆動させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を低濃度廃水に混合する際に、混合廃水のBODが高くなるのを防止する。混合廃水のBODが適当な値になることにより、発酵効率が向上する。また、混合廃水のBODが高くなり、粘度が高くなって酸発酵槽内に付着するのを防止することができる。
【0013】
請求項2においては、生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を低濃度廃水に混合する際に、混合廃水のBODが高くなるのを確実に防止する。混合廃水のBODが適当な値になることにより、発酵効率が向上する。また、混合廃水のBODが高くなり、粘度が高くなって酸発酵槽内に付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかるバイオガス発電装置の全体的な構成を示したブロック図。
【図2】制御装置のブロック図。
【図3】低濃度廃水処理槽及び高濃度廃水処理槽からの廃水注水の制御のフローチャート図。
【図4】低濃度廃水処理槽及び高濃度廃水処理槽からの廃水注水の制御のフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかるバイオガス発電装置1について説明する。
図1に示すように、バイオガス発電装置1は、有機物を含む廃水であって生物化学的酸素要求量(BOD)が低い低濃度廃水を貯溜する低濃度廃水処理槽5と、低濃度廃水処理槽5の水位を計測する第一水位センサ31と、前記低濃度廃水よりも生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を貯溜する高濃度廃水処理槽6と、高濃度廃水処理槽6の水位を計測する第二水位センサ32と、低濃度廃水処理槽5及び高濃度廃水処理槽6と連結する酸発酵槽7と、低濃度廃水処理槽5と酸発酵槽7との間に設けられた第一ポンプ33と、高濃度廃水処理槽6と酸発酵槽7との間に設けられた第二ポンプ34と、低濃度廃水処理槽5と酸発酵槽7との間に設けられた廃水流量センサ35とを備える。
【0016】
また、バイオガス発電装置1は、有機廃棄物よりメタンガスを主成分とする混合気体であるバイオガスを発生させるメタン発酵槽11と、メタン発酵槽11で発生したバイオガスから有害な気体を分離して除去する精製装置12と、バイオガスの圧力を検出する圧力検出装置13と、有害な気体及び酸素の濃度を連続的に確認するために有害な気体及び酸素の濃度の計測を行う連続モニタリング装置14と、バイオガスを貯蔵するガス貯蔵装置15と、バイオガスの流量を検出する気体流量センサ16と、ガス貯蔵装置15から供給されるバイオガスに含まれるメタンガスを燃焼してガスエンジン41を駆動して発電機51を駆動させるガスエンジン発電機61と、第一水位センサ31、第二水位センサ32、第一ポンプ33、第二ポンプ34、圧力検出装置13、及び連続モニタリング装置14と接続された制御装置18とを具備する。
【0017】
<低濃度廃水処理槽>
低濃度廃水処理槽5は、低濃度廃水を貯蔵するものである。低濃度廃水は、例えば、食品工場で使用される処理水であり、低濃度廃水のBODは3000mg〜7000mg/Lである。低濃度廃水処理槽5は、酸発酵槽7と低濃度廃水通路36を介して連結されており、低濃度廃水通路36の中途部に第一ポンプ33が設けられている。
【0018】
第一ポンプ33は、低濃度廃水を低濃度廃水処理槽5から酸発酵槽7へ圧送するためのポンプである。第一ポンプ33は、制御装置18と接続されており、制御装置18は第一ポンプ33の図示せぬ電動弁を開閉量を制御することにより、第一ポンプ33の吐出量を調節することができる。
【0019】
また、低濃度廃水通路36の中途部に廃水流量センサ35が設けられている。廃水流量センサ35は、低濃度廃水通路36内を通過する低濃度廃水の単位時間あたりの流量を計測する装置である。廃水流量センサ35は、制御装置18と接続されており、廃水流量センサ35の計測した計測値は制御装置18の記憶手段28(図2参照)に記憶される。
【0020】
<高濃度廃水処理槽>
高濃度廃水処理槽6は、高濃度廃水を貯蔵するものである。高濃度廃水は、例えば、食品工場で廃棄される有機ゴミ(残渣)であり、高濃度廃水のBODは80000mg〜300000mg/Lである。高濃度廃水処理槽6は、酸発酵槽7と高濃度廃水通路37を介して連結されており、高濃度廃水通路37の中途部に第二ポンプ34が設けられている。
【0021】
第二ポンプ34は、高濃度廃水を高濃度廃水処理槽6から酸発酵槽7へ圧送するためのポンプであり、低濃度廃水より粘度の高い高濃度廃水を圧送するため、第一ポンプ33よりも高い圧送性能を有する。第二ポンプ34は、制御装置18と接続されており、制御装置18は第二ポンプ34の図示せぬ電動弁を開閉量を制御することにより、第二ポンプ34の吐出量を調節することができる。但し、前記第一ポンプ33及び第二ポンプ34の吐出量の調節は、回転数を変更することでも調節でき限定するものではない。
【0022】
<酸発酵槽>
酸発酵槽7は、低濃度廃水処理槽5からの低濃度廃水及び高濃度廃水処理槽6からの高濃度廃水を槽内に導入し、図示せぬ撹拌機により撹拌しながら、汚泥中の有機物を酸生成菌により酸発酵させて有機酸を生成する(発酵工程)槽である。酸発酵槽7では、15〜40℃で馴養された酸生成菌によって酸発酵反応が行われる。酸発酵槽7はメタン発酵槽11と連結されており、酸発酵槽7で生成された有機酸廃水は、メタン発酵槽11へと送られる。
【0023】
<メタン発酵槽>
メタン発酵槽11は、酸発酵槽7で生成された有機酸廃水を投入し、メタン発酵を行いバイオガスを発生させるものである。メタン発酵槽11の一例として、沈降速度の大きい粒子化(グラニュール化)したメタン発酵菌を高濃度に保持し、有機酸廃水を高効率にメタン発酵処理するという特徴を持つ菌体グラニュールを使用した廃水処理方法、例えばUASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)法を使用した発酵槽がある。メタン発酵槽11より発生したメタンガスを含む混合気体であるバイオガスは配管21を通って精製装置12へと送られる。
【0024】
配管21には、手動弁23が設けられており、ガスエンジン発電機61が停止している際には、手動弁23を閉じることによりメタン発酵槽11からのバイオガスの供給を停止させることが可能となっている。
【0025】
<精製装置>
精製装置12において、触媒や吸着等の作用によってバイオガスから硫化水素が除去され、シロキサン(ケイ素化合物)が除去される。前記バイオガスからシロキサン及び硫化水素が除去されることにより、ガスエンジン41内部でシロキサンが固化すること及び腐食することを防止することができる。
【0026】
<ガス貯蔵装置>
精製装置12と連通する配管22には蓄圧手段となるガス貯蔵装置15が連通している。ガス貯蔵装置15は、例えば、前記バイオガスの圧力が高くなると大きく膨らみ、バイオガスの圧力が低下すると小さく萎むガス不透過物で構成されている。ガス貯蔵装置15は球状や円筒状に構成されて、二重構造となっており外側の袋と内側の袋との間に一定の圧力で圧力調整気体を充填しておくことにより、前記圧力調整気体の圧力よりもバイオガスの圧力が大きい場合にはガス貯蔵装置15は膨らみバイオガスが貯蔵され、一方、ガスエンジン発電機61の駆動により、前記圧力調整気体の圧力よりもバイオガスの圧力が小さくなった場合にはガス貯蔵装置15は萎んで、ガス貯蔵装置15から配管22へと貯蔵されていたバイオガスが供給されることとなる。但し、この構成は限定するものではなく、必要とするガス量を収容できる容器内を弾性体膜で仕切る構成としたりすることもできる。
【0027】
<ガスエンジン発電機>
精製装置12にガスエンジン発電機61が配管22を介して連通されている。ここで本実施形態ではガスエンジン発電機は一台設けている。
なおガスエンジン発電機の数は一台に限定するものではなく、前記バイオガス発電装置1は二台以上のガスエンジン発電機を具備する構成とすることも可能である。
配管22には、ガス貯蔵装置15とガスエンジン発電機61との間に電磁弁71が介装され、電磁弁71に設けたソレノイド71aは制御装置18と接続されている。
【0028】
次にガスエンジン発電機61の構成について説明する。
ガスエンジン発電機61は、ガスエンジン41、発電機51、及び始動・停止装置81とを具備している。ガスエンジン41と発電機51は直結して配設されており、ガスエンジン41の出力軸の回転により発電機51の磁石またはコイルが回転されることによって発電が可能となる。ガスエンジン41には始動・停止装置81が設けられて、制御装置18と接続されている。制御装置18は圧力検出装置13による検出値が駆動許可圧力V1以上であるとソレノイド71aに信号を送り電磁弁71を開き、始動・停止装置81によりガスエンジン41を始動する。駆動禁止圧力V2以下となると電磁弁71を閉じてガスエンジン41も停止させる。
【0029】
また、精製装置12とガス貯蔵装置15及びガスエンジン発電機61と連通する配管22の中途部には、配管22内のバイオガスの圧力Vを計測する圧力検出装置13が設けられている。圧力検出装置13は検出した圧力Vを制御装置18へと入力する。
また、精製装置12とガス貯蔵装置15及びガスエンジン発電機61と連通する配管22の中途部には、連続モニタリング装置14が設けられている。連続モニタリング装置14は精製装置12によって精製されたバイオガスを連続モニタリングし、有害物質である硫化水素の濃度を計測するものである。また、連続モニタリング装置14はバイオガスに含まれる酸素の濃度を計測するものである。連続モニタリング装置14は検出した硫化水素の濃度及び酸素の濃度を制御装置18へと入力する。硫化水素の濃度及び酸素の濃度が設定値以上となると、制御装置18はガスエンジン発電機61を停止させ、設定値以下となると駆動させる。
【0030】
また、精製装置12とガス貯蔵装置15及びガスエンジン発電機61と連通する配管22の中途部には、気体流量センサ16が設けられている。気体流量センサ16はバイオガスの単位時間あたりの体積である流量を計測して流量を制御装置18へと入力する。
【0031】
<制御装置>
次に制御装置18について説明する。
図2に示すように制御装置18には入力側に圧力検出装置13、連続モニタリング装置14、気体流量センサ16、第一水位センサ31、第二水位センサ32、及び廃水流量センサ35が接続されており、出力側に第一ポンプ33、第二ポンプ34、始動・停止装置81、及びソレノイド71aが接続されている。また、制御装置18は記憶手段28と入力手段29とを有している。
記憶手段28には、第二ポンプ34の駆動時間である所定時間T1が記憶されている。所定時間T1は、出荷時に予め入力されているが、入力手段29を用いて変更することもできる。また、記憶手段28には、廃水流量センサ35から送信された計測値が記憶されており、当該計測値より制御装置18において積算流量が算出される。
【0032】
次に、制御装置18を用いた低濃度廃水処理槽5及び高濃度廃水処理槽6からの廃水注水の制御方法について説明する。
まず、第一水位センサ31によって計測された低濃度廃水処理槽5の水位h1が第一駆動許可水位H1以上であるか否かについて判断する(ステップS10)。ここで第一駆動許可水位H1は、酸発酵槽7における酸発酵を開始するのに充分な低濃度廃水が低濃度廃水処理槽5内に貯溜されている場合の下限水位である。言い換えれば低濃度廃水処理槽5の水位h1が第一駆動許可水位H1以上であれば、酸発酵槽7において正常に酸発酵が行われる。
ステップS10において、水位h1が第一駆動許可水位H1よりも低ければ、酸発酵槽7における酸発酵を開始するのに充分な低濃度廃水が低濃度廃水処理槽5内に貯溜されていないとして、再び、ステップS10の判断を行う。
ステップS10において、水位h1が第一駆動許可水位H1以上であれば、酸発酵槽7における酸発酵を開始するのに充分な低濃度廃水が低濃度廃水処理槽5内に貯溜されているとして、第一ポンプ33を駆動する(ステップS20)。これにより、低濃度廃水処理槽5内の低濃度廃水が酸発酵槽7内に注入されて酸発酵が開始される。
【0033】
次に、第二水位センサ32によって計測された高濃度廃水処理槽6の水位h2が第二駆動許可水位H2以上であるか否かについて判断する(ステップS30)。ここで第二駆動許可水位H2は、酸発酵槽7において低濃度廃水に混合することができる高濃度廃水が高濃度廃水処理槽6内に貯溜されている場合の下限水位である。言い換えれば、高濃度廃水処理槽6の水位h2が第二駆動許可水位H2以上であれば、酸発酵槽7において低濃度廃水と高濃度廃水とを混合した混合廃水のBODが適当な値となる。例えば、低濃度廃水のBODが5000mg/L、高濃度廃水のBODが100000mg/Lであって、混合廃水の適当なBODが10000mg/Lである場合に、低濃度廃水の想定量を200Lとした場合には、適当な高濃度廃水の量は約11Lとなる。この場合高濃度廃水処理槽6の中に約11Lの高濃度廃水を貯溜した際の水位が第二駆動許可水位H2となる。
【0034】
ステップS30において、水位h2が第二駆動許可水位H2よりも低ければ、酸発酵槽7において低濃度廃水に混合することができる高濃度廃水が高濃度廃水処理槽6内に貯溜されていないとして、再び、ステップS30の判断を行う。
ステップS30において、水位h2が第二駆動許可水位H2以上であれば、酸発酵槽7において低濃度廃水に混合することができる高濃度廃水が高濃度廃水処理槽6内に貯溜されているとして、第二ポンプ34を駆動する(ステップS40)。これにより、高濃度廃水処理槽6内の高濃度廃水が酸発酵槽7内に注入されて酸発酵槽7内において混合廃水が生成される。
【0035】
次に、第二ポンプ34を駆動してから所定時間T1が経過したか否かについて判断する(ステップS50)。ここで、所定時間T1とは制御装置18の記憶手段28に記憶された値である。所定時間T1は、第二ポンプ34の単位時間あたりの送水量と所定時間T1との積が酸発酵槽7において低濃度廃水に混合することができる高濃度廃水の量となるような時間である。例えば、前記のとおり、高濃度廃水が約11L必要な場合であって、第二ポンプの単位時間あたりの送水量が100L/hである場合には約6.6分に設定されている。所定時間T1は、入力手段29により変更することも可能である。
【0036】
ステップS50において、所定時間T1が経過していない場合には、再びステップS40に戻って判断する。
ステップS50において、所定時間T1が経過した場合には、酸発酵槽7において低濃度廃水に混合することができる高濃度廃水の量が注水されたと判断し、第二ポンプ34を停止する(ステップS60)。
【0037】
次に、第一水位センサ31によって計測された低濃度廃水処理槽5の水位h1が第一駆動停止水位H3以下であるか否かについて判断する(ステップS70)。ここで第一駆動停止水位H3は、酸発酵槽7における酸発酵を継続するために必要な低濃度排水が低濃度排水処理槽5内に貯溜されている場合の下限水位である。言い換えれば低濃度排水処理槽5の水位h1が第一駆動停止水位H3以下であれば、酸発酵槽7において正常に酸発酵が行われない。本実施形態においては、第一駆動停止水位H3は第一駆動許可水位H1と同じ値である。なお、第一駆動停止水位H3と第一駆動許可水位H1とは異なる値であってもよい。
【0038】
ステップS70において、水位h1が第一駆動停止水位H3よりも高ければ、酸発酵槽7における酸発酵を継続するのに充分な低濃度廃水が低濃度廃水処理槽5内に貯溜されているとして、再び、ステップS70の判断を行う。
ステップS70において、水位h1が第一駆動停止水位H3以下であれば、酸発酵槽7における酸発酵を継続するのに充分な低濃度廃水が低濃度廃水処理槽5内に貯溜されていないとして、第一ポンプ33を停止する(ステップS80)。これにより、低濃度廃水処理槽5内の低濃度廃水が酸発酵槽7内に注入されて酸発酵が開始される。
【0039】
また、別の実施形態における制御装置18を用いた低濃度廃水処理槽5及び高濃度廃水処理槽6からの廃水注水の制御方法について説明する。
ステップS10において、水位h1が第一駆動許可水位H1よりも低ければ、酸発酵槽7における酸発酵を開始するのに充分な低濃度廃水が低濃度廃水処理槽5内に貯溜されていないとして、再び、ステップS10の判断を行う。
ステップS10において、水位h1が第一駆動許可水位H1以上であれば、酸発酵槽7における酸発酵を開始するのに充分な低濃度廃水が低濃度廃水処理槽5内に貯溜されているとして、第一ポンプ33を駆動する(ステップS20)。これにより、低濃度廃水処理槽5内の低濃度廃水が酸発酵槽7内に注入されて酸発酵が開始される。
次に、ステップS20において第一ポンプ33を駆動した時点からの低濃度廃水の積算流量qが所定値Q1以上であるか否かについて判断する(ステップS25)。ここで、所定値Q1とは、酸発酵槽7における混合廃水の濃度を適当な濃度とするために必要な低濃度廃水の量である。言い換えれば、前述のステップS30において高濃度廃水の流入量を決定するために想定した低濃度廃水の流入量であり、前述の例によれば、所定値Q1は200Lである。積算流量qは、廃水流量センサ35において計測され、記憶手段28において記憶された値に基づいて制御装置18によって算出される。
【0040】
ステップS25において、低濃度廃水の積算流量qが所定値Q1より少ない場合には、再びステップS25に戻って判断する。
ステップS25において、低濃度廃水の積算流量qが所定値Q1以上である場合には、ステップS30の処理を行う。ステップS30からステップS80の処理は、前述のステップS40からステップS60の処理と同様であるので説明を省略する。
【0041】
このように構成することにより、ステップS40において第二ポンプ34を駆動する際に確実に低濃度廃水が想定した流入量以上酸発酵槽7内に流入しており、高濃度廃水を低濃度廃水に混合する割合を制御することができ、混合廃水のBODが高くなるのをより確実に防止することができる。
【0042】
以上のように、バイオガス発電装置1は、有機物を含む低濃度の廃水を貯溜する低濃度廃水処理槽5と、低濃度廃水処理槽5の水位h1を計測する第一水位センサ31と、低濃度廃水よりも生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を貯溜する高濃度廃水処理槽6と、高濃度廃水処理槽6の水位h2を計測する第二水位センサ32と、低濃度廃水処理槽5及び高濃度廃水処理槽6と連結する酸発酵槽7と、低濃度廃水処理槽5と酸発酵槽7との間に設けられた第一ポンプ33と、高濃度廃水処理槽6と酸発酵槽7との間に設けられた第二ポンプ34と、酸発酵槽7と連結する、バイオガスを発生させるためのメタン発酵槽11と、メタン発酵槽11と連結する精製装置12と、バイオガスと空気とを燃焼させて、ガスエンジン41を駆動して発電機51を駆動させるガスエンジン発電機61と、第一水位センサ31、第二水位センサ32、第一ポンプ33及び第二ポンプ34と接続された制御装置18とを備え、制御装置18によって、低濃度廃水処理槽5の水位h1が第一駆動許可水位H1以上である場合には、第一ポンプ33を駆動させ、第一ポンプ33を駆動させている状態で、高濃度廃水処理槽6の水位h2が第二駆動許可水位H2以上である場合には、第二ポンプ34を所定時間T1駆動させるものである。
このように構成することにより、生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を低濃度廃水に混合する際に、混合廃水のBODが高くなるのを防止する。混合廃水のBODが適当な値になることにより、発酵効率が向上する。また、混合廃水のBODが高くなり、粘度が高くなって酸発酵槽7内に付着するのを防止することができる。
【0043】
低濃度廃水処理槽5と前記酸発酵槽7との間に廃水流量センサ35を設け、廃水流量センサ35は、制御装置18と接続され、制御装置18によって、低濃度廃水処理槽5の水位が第一駆動許可水位H1以上である場合には、第一ポンプ33を駆動させ、第一ポンプ33を駆動させている状態で、高濃度廃水処理槽6の水位が第二駆動許可水位H2以上であり、かつ、廃水流量センサ35によって計測された低濃度廃水の積算流量qが所定値Q1以上となった場合には、前記第二ポンプを所定時間T1駆動させるものである。
このように構成することにより、生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を低濃度廃水に混合する際に、混合廃水のBODが高くなるのを確実に防止する。混合廃水のBODが適当な値になることにより、発酵効率が向上する。また、混合廃水のBODが高くなり、粘度が高くなって酸発酵槽7内に付着するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 バイオガス発電装置
5 低濃度廃水処理槽
6 高濃度廃水処理槽
7 酸発酵槽
11 メタン発酵槽
12 精製装置
18 制御装置
31 第一水位センサ
32 第二水位センサ
33 第一ポンプ
34 第二ポンプ
35 廃水流量センサ
41 ガスエンジン
51 発電機
61 ガスエンジン発電機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む廃水であって生物化学的酸素要求量(BOD)が低い低濃度廃水を貯溜する低濃度廃水処理槽と、
前記低濃度廃水処理槽の水位を計測する第一水位センサと、
前記低濃度廃水よりも生物化学的酸素要求量(BOD)が高い高濃度廃水を貯溜する高濃度廃水処理槽と、
前記高濃度廃水処理槽の水位を計測する第二水位センサと、
前記低濃度廃水処理槽及び高濃度廃水処理槽と連結する酸発酵槽と、
前記低濃度廃水処理槽と前記酸発酵槽との間に設けられた第一ポンプと、
前記高濃度廃水処理槽と前記酸発酵槽との間に設けられた第二ポンプと、
前記酸発酵槽と連結する、バイオガスを発生させるためのメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽と連結する精製装置と、
前記バイオガスと空気とを燃焼させて、ガスエンジンを駆動して発電機を駆動させるガスエンジン発電機と、
前記第一水位センサ、第二水位センサ、第一ポンプ及び第二ポンプと接続された制御装置とを備え、
前記制御装置によって、
前記低濃度廃水処理槽の水位が第一駆動許可水位以上である場合には、前記第一ポンプを駆動させ、
前記第一ポンプを駆動させている状態で、前記高濃度廃水処理槽の水位が第二駆動許可水位以上である場合には、前記第二ポンプを所定時間駆動させるバイオガス発電装置。
【請求項2】
前記低濃度廃水処理槽と前記酸発酵槽との間に廃水流量センサを設け、
前記廃水流量センサは、前記制御装置と接続され、
前記制御装置によって、
前記低濃度廃水処理槽の水位が第一駆動許可水位以上である場合には、前記第一ポンプを駆動させ、
前記第一ポンプを駆動させている状態で、前記高濃度廃水処理槽の水位が第二駆動許可水位以上であり、かつ、前記廃水流量センサによって計測された低濃度廃水の積算流量が所定値以上となった場合には、前記第二ポンプを所定時間駆動させる請求項1に記載のバイオガス発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−217896(P2012−217896A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84512(P2011−84512)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】