説明

バイオ燃料機関の排気浄化装置

【課題】内燃機関で使用される燃料の性状に応じた微粒子成分の捕集用のフィルタの再生処理を通じて、フィルタの機能を的確に維持することのできるバイオ燃料機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】制御器110は、DPF130の再生時にディーゼル機関100で利用される燃料の性状に応じて変化する再生所要時間を計測するとともに、この計測した変化推移に基づいてディーゼル機関100で利用される燃料の性状を特定する。そして、制御器110は、この特定した燃料の性状をもとに、DPF130の再生処理を開始する再生最低温度を定める。制御器110は、DPF130の堆積量が所定量に達し、DPF130の温度が再生最低温度に達したことを条件にDPF130の再生処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される排気浄化装置に関し、特に、燃料としてバイオディーゼルフューエルが使用されるバイオ燃料機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディーゼル機関を搭載した自動車等の車両には、ディーゼル機関の排気ガス中に含まれる微粒子成分(パティキュレート)を捕集するディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)が設けられている。このDPFは、例えばコーディエライト等のセラミックよりなるハニカム形状の筒体で形成されている。DPFは、排気管の下流側に設けられ、エンジンから排出される排気ガスを透過させ、その透過時に排気ガス中に含まれる微粒子成分を捕集する。そして、このDPFによる微粒子成分の捕集量が所定量に達すると、機能回復のためにDPFの再生処理が行われる。この再生処理では、DPFに対する燃料噴射等を通じて反応熱の発生等によってDPFが昇温され、DPFに捕集されているパティキュレートが燃焼されることにより、フィルタとしての機能が回復される。
【0003】
こうした再生処理に際しては、例えば、特許文献1に記載の排気浄化装置によるように、すなわちその構成を図14に示すように、ディーゼルエンジン1の排気管4の下流に設けられたフィルタ7に堆積している微粒子成分の堆積量が、同フィルタ7の前後に配置された圧力センサ8及び9の検出結果をもとに推定される。また、この排気浄化装置では、フィルタ7の前後に配置された温度センサ10及び11によって、同フィルタ7に流入する気体の温度、及び同フィルタ7から排出される気体の温度が検出される。そして、圧力センサ8により検出されるフィルタ7の気体流入側の圧力と圧力センサ9により検出されるフィルタ7の気体排出側の圧力との差圧を求め、この求めた差圧からフィルタ7に堆積されている微粒子成分の堆積量を推定するようにしている。また併せて、この特許文献1に記載の装置では、フィルタ7の温度特性を考慮し、温度センサ10及び11により検出されるフィルタ7の温度に基づいて、上記求めたフィルタ7前後の差圧を補正するようにしている。そして、こうした差圧から推定される微粒子成分の堆積量が所定量を超えたことを条件に、フィルタ7に燃料が噴射されるいわゆるポスト噴射が実行され、このポスト噴射を通じてフィルタ7に堆積された微粒子成分が燃焼されることにより、同フィルタ7に堆積された微粒子成分が除去されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−109818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、こうした排気浄化装置が搭載される自動車に搭載される内燃機関として、動植物油脂等を主原料にしたバイオディーゼルフューエル等のバイオ燃料を使用可能なバイオ燃料機関が普及し始めている。一方、こうしたバイオ燃料は化石系燃料である軽油とは異なる蒸発性を有しており、その混合比や種類によっても同バイオ燃料の蒸発性が相違する。このため、上記微粒子成分を捕集するフィルタの再生処理、換言すれば、同フィルタに対して行われるポスト噴射等を通じた昇温に際しては、フィルタの差圧や温度のみならず、こうしたバイオ燃料の蒸発性も加味して行う必要がある。すなわち、一般に燃料中のバイオ成分濃度が高いほどその蒸留温度も高くなる傾向にある。したがって、排気系にポスト噴射されるバイオ燃料を確実に蒸留させ、上記フィルタの温度を同蒸留温度に相関する上記フィルタの再生開始温度に到達させるためには、使用が想定されるバイオ燃料の中でもバイオ成分濃度が最高となるバイオ燃料の蒸留温度に基づいてフィルタの再生処理を行う必要があった。しかし、このように濃度が高いバイオ燃料の蒸留温度に基づきフィルタの再生処理を行うとなると、実際に使用されているバイオ燃料の蒸留温度が上記想定された濃度の高いバイオ燃料の蒸留温度よりも低いときには、フィルタの再生処理が実行可能であるにも拘わらず、同再生処理が実行されないこととなる。よって、排気系の温度が想定され得るバイオ燃料の蒸留温度に達するまでは微粒子成分がフィルタに堆積されることとなり、このフィルタに微粒子成分が過剰に堆積する虞があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関で使用される燃料の性状に応じた微粒子成分の捕集用のフィルタの再生処理を通じて、フィルタの機能を的確に維持することのできるバイオ燃料機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、バイオ燃料が混合利用される内燃機関の排気系に設置されて排気ガス中に含まれる微粒子成分を捕集するフィルタに対する還元剤の噴射もしくは昇温を通じて当該フィルタを再生処理する再生手段を備えたバイオ燃料機関の排気浄化装置であって、前記再生手段は、前記フィルタの再生時に前記内燃機関で利用される燃料の性状に応じて変化する変化要素の変化推移を計測するとともに、この計測した変化推移に基づいて前記燃料の性状を特定し、この特定した燃料の性状をもとに前記フィルタの再生処理の開始条件を定めることを要旨とする。
【0008】
上記バイオ燃料の各特性はその性状によって変化するものであり、こうした燃料の性状(燃料性状)は、同バイオ燃料の燃焼後に発生する微粒子成分の性状にも影響を及ぼす。さらに、こうした微粒子成分の性状は、この微粒子成分が捕集、堆積されるフィルタから同微粒子成分を除去するための再生処理にも影響を及ぼす。よって、フィルタの再生処理に際しては、微粒子成分の性状、換言すれば、バイオ燃料の燃料性状に応じた処理を施す必要がある。一方、フィルタの再生時において、各種変化要素の変化推移は、燃料性状に応じて変化する傾向にある。
【0009】
そこで、上記構成によるように、フィルタの再生処理の開始条件を定めるにあたり、フィルタの再生時における各種変化要素の変化推移を計測するとともに、この計測した変化推移に基づいて、各種変化要素の変化推移を決定する燃料性状を特定する。そして、この特定した燃料性状をもとにフィルタの再生処理を開始するための開始条件を定めることとすれば、内燃機関で利用される燃料の性状に応じてフィルタの再生処理を開始することが可能となる。このため、上記内燃機関で多種多様なバイオ燃料が利用される場合であれ、その燃料性状に応じてフィルタの再生処理を開始することが可能となる。よって、例えば、フィルタに相当量の微粒子成分が堆積されたことにより同微粒子成分の除去が必要になったときには、燃料性状に応じた開始条件が満たされた時点でフィルタの再生処理が開始される。これにより、内燃機関で使用される燃料の燃料性状に応じた微粒子成分のフィルタの再生処理を通じて、フィルタの機能を的確に維持することができるようになる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、前記燃料の性状が、燃料に含まれるバイオ成分の濃度を示すバイオ成分濃度であり、前記変化要素の変化推移が、前記バイオ成分濃度にしたがって変化する推移であることを要旨とする。
【0011】
上記変化要素の変化推移とは、バイオ燃料そのもののバイオ成分濃度や、こうしたバイオ燃料と軽油との混合比によって定まる燃料のバイオ成分濃度との相関性が強く、例えば、このバイオ成分濃度に比例もしくは反比例する態様で各種変化要素の変化推移も変化する。また、上記フィルタに堆積される微粒子成分の性状も燃料のバイオ成分濃度との相関性が強く、このバイオ成分濃度に応じてフィルタを再生可能な条件も変化する。
【0012】
そこで、上記構成によるように、上記計測した変化要素の変化推移をもとに、同変化推移との相関性が強いバイオ成分濃度を特定し、このバイオ成分濃度に応じてフィルタの開始条件を定める。このため、上記計測された変化要素の変化推移に基づきバイオ成分濃度を特定することが可能になるとともに、この特定したバイオ成分濃度に応じてフィルタの開始条件を定めることが可能となる。これにより、変化要素の変化推移に基づく燃料性状の特定にかかる精度が向上されるようになるとともに、この特定された燃料性状に応じてフィルタの開始条件を的確に設定することができるようになる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、前記変化要素が、前記フィルタの再生処理において、当該フィルタの再生開始から再生終了までに要する再生所要時間、及び前記還元剤の噴射もしくは昇温に伴って前記フィルタに堆積されている微粒子成分の堆積量が減少を始めたときの同フィルタの排気温度の少なくとも一方であることを要旨とする。
【0014】
上記再生所要時間や排気温度は、上記変化要素の中でも燃料性状との相関性が強く、特にバイオ成分濃度に対して反比例する態様で変化することが発明者等によって確認されている。
【0015】
そこで、上記構成によるように、上記変化要素の変化推移として、フィルタの再生時におけるフィルタの再生所要時間や、燃料の添加等を通じてフィルタに堆積されている微粒子成分が減少し始めたときの同フィルタの排気温度を計測する。そして、この計測した再生所要時間や排気温度をもとに、例えば、それら再生所要時間や排気温度に反比例する燃料のバイオ成分濃度等を特定する。これにより、各種変化要素の中でもフィルタの再生時における燃料性状との相関性が特に高い変化要素に基づいて、同燃料性状を特定することが可能となり、その特定にかかる精度が好適に高められるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、前記変化要素が前記再生所要時間であるとき、前記再生手段は、前記内燃機関に供給され得る燃料のバイオ成分濃度が最高濃度であるときに最短となる前記再生所要時間と前記内燃機関に供給され得る燃料のバイオ燃料成分濃度が最低濃度であるときに最長となる前記再生所要時間とに対する前記計測した再生所要時間の比例配分を通じて、この再生所要時間に対応する燃料のバイオ成分濃度を特定することを要旨とする。
【0017】
上記フィルタの再生に要する再生所要時間は、バイオ成分濃度と反比例する傾向にあり、この再生所要時間の最長値と最短値とは、上記バイオ燃料機関で利用され得る燃料のバイオ成分濃度の最低値と最高値とに各々対応する。
【0018】
そこで、上記構成によれば、再生所要時間の最長値及び最短値に対し、上記計測した再生所要時間を比例配分することにより、燃料性状の特定の対象とする燃料が利用されたときのフィルタの再生所要時間を特定することが可能となる。そして、この特定した再生所要時間をもとに、同再生所要時間に対応する燃料のバイオ成分濃度を求めることが可能となる。これにより、バイオ燃料機関で利用され得る燃料のバイオ成分濃度に対応するフィルタの再生所要時間の最長値及び最短値さえ事前に特定できれば、上記計測される再生所要時間に基づく演算を通じて、バイオ燃料機関で利用中の燃料の性状を特定することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、前記変化要素が前記フィルタの排気温度であるとき、前記再生手段は、前記内燃機関に供給され得る燃料のバイオ成分濃度が最高濃度であるときに最低となる前記排気温度と前記内燃機関に供給され得る燃料のバイオ成分濃度が最低濃度であるときに最高となる前記排気温度とによって定まる温度幅に対する前記計測した前記排気温度の比例配分を通じて、この排気温度に対応する燃料のバイオ成分濃度を特定することを要旨とする。
【0020】
上記フィルタの昇温等を通じて同フィルタに堆積された微粒子成分が減少し始めるときのフィルタの排気温度とは、バイオ成分濃度と反比例する傾向にあり、この排気温度の最高値と最低値とはそれぞれ、上記バイオ燃料機関で利用され得る燃料のバイオ成分濃度の最低値と最高値とに対応する。
【0021】
そこで、上記構成によれば、排気温度の最高値及び最低値に対し、上記計測した排気温度を比例配分することにより、燃料性状の特定の対象とする燃料が利用されたときのフィルタの排気温度を特定することが可能となる。そして、この特定した排気温度をもとに、同排気温度に対応する燃料のバイオ成分濃度を求めることが可能となる。これにより、バイオ燃料機関で利用され得る燃料のバイオ成分濃度に対応するフィルタの排気温度の最高値及び最低値さえ事前に特定できれば、上記計測される排気温度に基づく演算を通じてバイオ燃料機関で利用中の燃料の性状を特定することが可能となる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか一項に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、前記フィルタを再生可能な最低温度である再生最低温度が、前記バイオ成分濃度に比例して変化するものであり、前記再生手段は、前記フィルタに吸入される気体の温度が、前記燃料の性状として特定されるバイオ成分濃度に応じたフィルタの再生最低温度に到達したことを開始条件として、前記フィルタの再生処理を実行することを要旨とする。
【0023】
一般に、フィルタの再生処理は、例えば、フィルタの温度が再生最低温度を超えていることを条件として排気系に還元剤が添加等されることにより行われる。そして、この添加された還元剤によるフィルタ内での反応熱により、同フィルタに堆積されている微粒子成分が燃焼される。こうしたことから、フィルタの再生を的確に行うためには、排気系への還元剤の添加に先立って、フィルタの温度を再生最低温度まで昇温する必要がある。一方、フィルタの再生処理を実行可能な再生最低温度とは、内燃機関で利用される燃料の性状に応じて変化するものであり、特に、バイオ成分濃度に比例する態様で変化することが発明者等によって確認されている。
【0024】
そこで、上記構成によるように、内燃機関で利用されている燃料のバイオ成分濃度を特定するとともに、この特定したバイオ成分濃度に対応するフィルタの再生最低温度を求める。そして、この求めたフィルタの再生最低温度をフィルタの開始条件として同フィルタの再生処理を実行することとすれば、フィルタの温度が燃料性状毎に特有の再生最低温度に到達したことをもって、フィルタの再生を開始することが可能となる。このため、フィルタが活性化されているために同フィルタでの酸化等が可能な状況下でのみ、排気系に還元剤が噴射されることとなる。すなわち、燃料性状に応じたフィルタの再生処理を実行可能な状況下でのみ、再生処理が実行されることとなる。一方、フィルタの温度が燃料性状毎に特有の再生最低温度に到達していないときには、排気系には還元剤が噴射されないこととなり、活性化が不十分なフィルタに還元剤が添加されることもない。これにより、フィルタに還元剤が添加されているにも拘わらず、同フィルタの再生が開始されないといった再生不良等が抑制されるようになる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、前記バイオ燃料が、脂肪酸メチルエステルが含有された燃料であり、前記変化要素が、前記脂肪酸メチルエステルの含有量に相関して変化するものであることを要旨とする。
【0026】
一般に、バイオ燃料としては、脂肪酸メチルエステルが含有された燃料が利用されることが多い。また、こうした脂肪酸メチルエステルの燃料における含有量は、上記変化要素の変化推移との相関性も強い。
【0027】
そこで、上記構成によれば、バイオ燃料としての利用可能性が高い脂肪酸メチルエステルが燃料に含有されている場合であれ、その性状に応じてフィルタの開始条件が定められることにより、上記排気浄化装置としての汎用性が高められるようになる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、前記内燃機関が搭載される車両に設けられた給油口の開閉を検出する給油検出センサをさらに備え、前記再生手段は、前記給油検出センサを通じて前記給油口の開閉が検出される都度、前記燃料の性状の特定し、この特定した燃料の性状に応じて前記再生処理の開始条件を変更することを要旨とする。
【0029】
内燃機関で利用される燃料の性状は、給油に伴って新しい燃料が供給されるときに変化することから、上記フィルタの再生処理を的確に実行するためには、その開始条件を燃料性状に応じて動的に変更することが望ましい。
【0030】
そこで、上記構成によれば、給油検出センサを通じて給油口の開閉が検出されたとき、換言すれば、内燃機関への給油が推定されるときには、給油後の燃料の性状が特定され、一旦定められた開始条件が変更される。これにより、内燃機関で利用される燃料の性状が給油に伴って変化したとしても、その性状に応じたフィルタの再生処理が実行されるようになる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、前記内燃機関がディーゼル機関であり、前記フィルタがディーゼル・パティキュレート・フィルタであることを要旨とする。
【0032】
一般に、ディーゼル機関にあっては、燃料の燃焼に伴う微粒子成分の発生量が多く、この微粒子成分の大気中への放出を抑制すべく、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)が設けられていることが多い。また、こうしたDPFにあっては、燃料の燃焼に伴って同フィルタに堆積される微粒子成分の堆積量が多いことから、同DPFの浄化性能を維持すべくその再生処理を的確に実行する必要がある。
【0033】
そこで、上記構成によれば、ディーゼル機関に搭載されるDPFについても、的確な再生処理を通じてその再生機能を的確に維持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置の第1の実施の形態について、同排気浄化装置が設けられるディーゼル機関の排気系の概略構成を模式的に示す図。
【図2】フィルタの再生所要時間の推移例を示すグラフ。
【図3】ディーゼル機関に供給される燃料の性状の特性例として、脂肪酸メチルエステルと再生所要時間との関係を示す図。
【図4】燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度とフィルタの再生最低温度との関係の一例を示すグラフ。
【図5】同実施の形態の排気浄化装置によるフィルタの再生手順の一例を示すフローチャート。
【図6】本発明にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置の第2の実施の形態について、同排気浄化装置が設けられるディーゼル機関の排気系の概略構成を模式的に示す図。
【図7】(a)は、再生時における微粒子成分の堆積量の減少推移の一例を示すグラフ。(b)は、再生時におけるフィルタの排気温度の推移例を示すグラフ。
【図8】燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度とフィルタの排気温度との関係の一例を示すグラフ。
【図9】同実施の形態の排気浄化装置によるフィルタの再生手順の一例を示すフローチャート。
【図10】本発明にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置の第3の実施の形態について、同排気浄化装置が設けられるディーゼル機関の排気系の概略構成を模式的に示す図。
【図11】同実施の形態の排気浄化装置によるフィルタの再生手順の一例を示すフローチャート。
【図12】本発明にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置の他の実施の形態について、同排気浄化装置が設けられるディーゼル機関の排気系の概略構成を模式的に示す図。
【図13】本発明にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置の他の実施の形態について、同排気浄化装置が設けられるディーゼル機関の排気系の概略構成を模式的に示す図。
【図14】従来の排気浄化装置が設けられる内燃機関の排気系の概略構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置を具体化した第1の実施の形態について図1〜図5を参照して説明する。なお、本実施の形態の排気浄化装置は、ディーゼル機関を駆動源とした自動車に搭載されるものである。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態の排気浄化装置が適用される自動車には、ディーゼル機関100が搭載されている。ディーゼル機関100には、燃料が燃焼される各燃焼室101に燃料を噴射する複数の燃料噴射装置102が設けられている。
【0037】
各燃料噴射装置102は、それら燃料噴射装置102による燃料の噴射態様を制御する制御器110から入力される信号に基づき、図示を省略する燃料タンクに貯留されている燃料を、燃焼室101に噴射する。なお、本実施の形態の燃料タンクには、こうした燃料として例えば、脂肪酸メチルエステルを主成分としたバイオ燃料100%の燃料、あるいは、こうしたバイオ燃料と軽油とが所定の割合で混合された混合燃料が貯留されている。
【0038】
また、ディーゼル機関100の排気系には、燃焼室101から排出される排気ガスを大気中に排出する排気管120が接続されている。排気管120の途中には、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)130が設けられている。
【0039】
DPF130は、内部がハニカム形状の筒体であって、排気管120に連結された収容筒131の内部に配設されている。DPF130は、ディーゼル機関100から排出される排気ガスを透過させ、その透過時に排気ガス中に含まれる可溶性有機成分(SOF)や煤(SOOT)などの微粒子成分を捕集する。このDPF130を透過した排気ガスは、同DPF130を透過する際に浄化されて大気中に放出される。
【0040】
DPF130には、同DPF130により捕集された微粒子成分の堆積量を検出する堆積量検出手段132が取り付けられている。堆積量検出手段132は、例えば、DPF130に吸入される吸入空気量を検出するセンサによって構成されており、その検出結果に応じた信号を上記制御器110に出力する。
【0041】
また、DPF130の吸気側には、同DPF130に吸入される排気の温度を検出する温度センサ等によって構成される入口温度検出手段133が設けられている。入口温度検出手段133は、DPF130に吸入される排気の温度を検出し、その検出結果に応じた信号を制御器110に出力する。
【0042】
制御器110は、入口温度検出手段133から入力される信号に基づいてDPF130の温度を監視する。制御器110は、例えば、入口温度検出手段133により検出されたDPF130に吸入される排気の温度を、同DPF130の温度として取り扱う。また、制御器110は、堆積量検出手段132から入力される信号に基づき、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量を監視する。すなわち、DPF130の吸入空気量は、DPF130に堆積される微粒子成分の堆積量と相関することから、制御器110は、例えば、堆積量検出手段132から入力されるDPF130の吸入空気量を示す信号に基づいて同DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量を測定する。
【0043】
また、本実施の形態の制御器110は、堆積量検出手段132の検出結果に基づき、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が所定量を超えている旨認識すると、入口温度検出手段133の検出結果をもとに、DPF130の温度が同DPF130の再生処理の開始条件である最低開始温度に到達しているか否かを判断する。そして、例えば、ディーゼル機関100から排出される排気ガスの熱エネルギーによってDPF130の温度が再生最低温度を超えると、制御器110は、ディーゼル機関100の膨張工程において燃料噴射装置102を通じた燃料噴射、いわゆるポスト噴射を行う。そして、このポスト噴射を通じてDPF130に燃料が添加されることにより、この燃料がDPF130内で燃焼される。こうして、DPF130が高温状態に維持され、DPF130に堆積されている微粒子成分が燃焼されることによってDPF130が再生される。このように本実施の形態では、ポスト噴射等によるDPF130の温度管理を通じて、同DPF130の再生処理が実行される。
【0044】
さらに、本実施の形態の制御器110は、DPF130の再生処理の開始条件を定めるべく、ディーゼル機関100に供給される燃料の性状を特定する。そして、制御器110は、この特定した燃料の性状に応じてDPF130の開始条件を定めるようにしている。なお、本実施の形態では、こうした制御器110によって上記再生手段が構成される。
【0045】
以下、本実施の形態のバイオ燃料機関の排気浄化装置の燃料性状の特定原理を図2〜図4を参照して詳述する。なお、図2において、第1の推移例Laは、ディーゼル機関100に供給される燃料に含有される脂肪酸メチルエステルの濃度が、同ディーゼル機関100で利用され得る最低の濃度(例えば「0%」)であるときの、DPF130における微粒子成分の堆積量の推移を示している。すなわち、第1の推移例Laは、ディーゼル機関100に供給される燃料が、例えば軽油のみであるときのDPF130における微粒子成分の堆積量の推移を示している。一方、第2の推移例Lbは、ディーゼル機関100に供給される燃料に含有される脂肪酸メチルエステルの濃度が、同ディーゼル機関100で利用され得る最高の濃度(例えば「100%」)であるときの、DPF130における微粒子成分の堆積量の推移を示している。また、第3の推移例Lxは、ディーゼル機関100に供給される燃料に含有される脂肪酸メチルエステルの濃度が所定量であるときの、DPF130における微粒子成分の堆積量の推移を示している。
【0046】
図2に示すように、例えば、タイミングt1において微粒子成分の堆積量がDPF130の浄化機能を維持する上で再生が必要になる堆積量を示す閾値Mmを超えると、例えばDPF130の温度が再生最低温度を超えていることを条件にポスト噴射が開始される。
【0047】
こうして、ポスト噴射された燃料がDPF130に添加され、この添加された燃料がDPF130内で燃焼される。これにより、DPF130に堆積されている微粒子成分が燃焼されることにより、タイミングt2以降、第1の推移例La、第2の推移例Lb、第3の推移例Lxとして示すように、微粒子成分の堆積量が次第に減少を始める。その後、タイミングt3、t4、t5において、それぞれ第2の推移例Lb、第3の推移例Lx、第1の推移例Laとして示される微粒子成分の堆積量が約「0」となり、DPF130の再生が完了する。
【0048】
なおこのとき、同図2から明らかなように、各推移例La、Lb、Lxは、燃料に含有される脂肪酸メチルエステルの濃度差に起因して異なる推移を示すようになっている。よって、本実施の形態では、こうした推移に基づきディーゼル機関100で利用される燃料の性状を特定すべく、DPF130の再生に要する時間である再生所要時間を計測する。また、本実施の形態では、例えば、推移例La、Lb、Lxにおいて、DPF130の微粒子成分の堆積量が、同DPF130の再生開始直後の堆積量M1からDPF130の再生完了直前の堆積量M2まで減少するまでの時間を、DPF130の再生所要時間として計測する。
【0049】
そして、ここでの例では、第2の推移例Lbとして示すように、燃料中の脂肪酸メチルエステルの濃度が最高濃度であるときには、DPF130に堆積されている微粒子成分の単位時間当たりの減少量が最も多く、DPF130の再生所要時間Tbは各推移の中でも最短となっている。
【0050】
一方、第1の推移例Laとして示すように、燃料に脂肪酸メチルエステルが含有されていないときは、DPF130に堆積されている微粒子成分の単位時間当たりの減少量が最も少なく、DPF130の再生に要する再生所要時間Taは各推移の中でも最長となっている。
【0051】
また、第3の推移例Lxとして示すように、燃料に所定量の脂肪酸メチルエステルが含有されているときの再生所要時間Txは、上記最短となる再生所要時間Tbよりも長く、上記最長となる再生所要時間Taよりも短くなっている。さらに、この燃料に含有される脂肪酸メチルエステルの濃度は、同燃料に基づく再生所要時間Txを、上記最長となる再生所要時間Taと上記最短となる再生所要時間Tbとに対して比例配分した値に相関するものとなっている。
【0052】
すなわち、図3に示すように、燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度が「0%」から「100%」にかけて増加するにつれて、これに対応するDPF130の再生所要時間は、最長再生所要時間Taから最短再生所要時間Tbへと次第に短縮される。
【0053】
そして、DPF130の再生所要時間Txが例えば最長再生所要時間Taと最短再生所要時間Tbとを平均した時間に等しく、同再生所要時間Txが想定される再生所要時間の中で中央値付近に位置するときには、ディーゼル機関100で利用されている燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度がその中央値の約「50%」であるとして特定される。
【0054】
このように、DPF130の再生所要時間は、燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度に反比例する態様で変化することから、上記計測した再生所要時間Txの最長再生所要時間Taと最短再生所要時間Tbとに対する相対時間を求めることで、同再生所要時間Txに対応する燃料中の脂肪酸メチルエステルの濃度を推定することが可能となる。
【0055】
なお、こうした再生所要時間の特性は、ディーゼル機関100で燃焼される燃料、ひいては、この燃料の燃焼に伴って発生する微粒子成分の性状によるものであり、ポスト噴射等を通じてDPF130に添加される燃料の性状の影響は受けないものとなっている。
【0056】
次に、DPF130の再生が開始されるときの再生最低温度とディーゼル機関100で利用される燃料の性状との関係を図4を参照して説明する。
図4に示すように、DPF130を再生可能な再生最低温度Tim、すなわち、DPF130の再生が行われる再生領域の下限値は、燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度が高まるにつれて、これに比例して高くなる傾向にある。これは、脂肪酸メチルエステルの濃度が高まるほど燃料の蒸留温度が高まることに起因している。
【0057】
よって、DPF130の再生最低温度Timは、燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度が最低値Paであるときに最小値Tim(A)となり、燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度が最高値Pbであるときに最大値Tim(B)となる。
【0058】
本実施の形態ではこのような特性をもとに、ディーゼル機関100で利用される燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度が先の図2に示した再生所要時間Txに基づき特定されたPxであるときにはDPF130の再生最低温度が例えばTmin(X)として求められる。
【0059】
以下、本実施の形態のバイオ燃料機関の排気浄化装置の作用を図5を参照して説明する。
図5に示すように、まずステップS100において、上記堆積量検出手段132の検出結果に基づき、ディーゼル機関100の運転に伴ってDPF130に捕集、堆積された微粒子成分の堆積量が算出される。ここでは、例えば、DPF130の吸入吸気量が増大するほど、同算出される微粒子成分の堆積量も増大することとなる。
【0060】
そして、この算出された微粒子成分の堆積量がDPF130の再生処理の要否を判定する再生閾値Mm以上に到達すると(ステップS101:YES)、DPF130に吸入される排気の温度である入口排気温度Tiが測定される(ステップS102)。次いで、この測定された入口排気温度TiがDPF130の再生最低温度Tim以上であるかが判定される(ステップS103)。なお、DPF130の再生最低温度Timは、ディーゼル機関100に供給される燃料の性状の特定前においては、例えば、上記最大値Tim(B)が設定されている。これにより、燃料性状の特定前においては、ディーゼル機関100で利用される燃料性状に拘わらず、DPF130の確実な再生が促されるようになっている。
【0061】
そして、ディーゼル機関100の運転等に伴って、入口排気温度TiがDPF130の再生最低温度Tim以上となると(ステップS103:YES)、上記燃料噴射装置102によるポスト噴射が実行されることにより、DPF130に燃料が添加される(ステップS104)。また、DPF130に添加された燃料が燃焼することにより同DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が減少を始め、この堆積量が上記堆積量M1以下となると、DPF130の再生所要時間の計測が開始される(ステップS105)。
【0062】
こうして、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が、同DPF130から微粒子成分が略消滅したときの堆積量に相当する消滅相当値Mn以下となると(ステップS106:YES)、燃料噴射装置102によるポスト噴射が中止されることにより、DPF130に対する燃料の添加が中止される(ステップS107)。また併せて、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が上記堆積量M2まで減少した時点で上記計測している再生所要時間の計測が終了される。こうして、DPF130に堆積された微粒子成分の除去に要した再生所要時間Txが算出される(ステップS108)。
【0063】
そして、この算出された再生所要時間Txと例えば制御器110に保有されている先の図2及び図3に示したマップ等とに基づいて、ディーゼル機関100で利用されている燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度が特定される(ステップS109)。次いで、この特定された脂肪酸メチルエステルの濃度に対応するDPF130の再生最低温度Timが、例えば制御器110に保有されている先の図4に示したマップ等に基づいて算出される(ステップS110)。そして、この算出された再生最低温度Timが、初期値として設定されていた上記最大値Timに代えて、DPF130の再生処理を開始する際の設定温度(開始条件)として更新される(ステップS111)。
【0064】
こうして、以後のDPF130の再生処理が、DPF130の入口排気温度Tiが設定温度として更新された再生最低温度Tim以上となったことを条件に行われるようになる。これにより、DPF130の入口排気温度Tiが上記更新された再生最低温度Timまで上昇しさえすれば、同入口排気温度Tiが上記最大値Tim(B)に到達するまでもなく、DPF130の再生処理が実行されるようになる。この結果、ディーゼル機関100で利用されている燃料の性状に応じた的確なタイミングでのDPF130の再生が促され、その浄化機能が好適に維持されるようになる。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)DPF130の再生時にディーゼル機関100で利用される燃料の性状に応じて変化する変化要素の変化推移を計測するとともに、この計測した変化推移に基づいて燃料性状を特定した。そして、この特定した燃料の性状をもとにDPF130の再生処理の開始条件を定めることとした。このため、DPF130に相当量の微粒子成分が堆積されたことにより同微粒子成分の除去が必要になったときには、ディーゼル機関100で利用されている燃料の性状に応じた開始条件が満たされた時点でフィルタの再生処理が開始される。これにより、DPF130の機能を的確に維持することができるようになる。
【0066】
(2)上記燃料の性状として、燃料に含まれるバイオ成分の濃度を示すバイオ成分濃度を特定した。また、バイオ成分濃度にしたがって変化する推移に基づいて、同バイオ成分濃度を特定することとした。このため、上記計測された変化要素の変化推移に基づきバイオ成分濃度を特定することが可能になるとともに、この特定したバイオ成分濃度に応じてフィルタの開始条件を定めることが可能となる。これにより、変化要素の変化推移に基づく燃料性状の特定にかかる精度が向上されるようになるとともに、この特定された燃料性状に応じてDPF130の開始条件を的確に設定することができるようになる。
【0067】
(3)上記変化要素として、DPF130の再生開始から再生終了までに要する再生所要時間を用いることとした。これにより、各種変化要素の中でもDPF130の再生時における燃料性状との相関性が特に高い変化要素に基づいて、同燃料性状を特定することが可能となり、その特定にかかる精度が好適に高められるようになる。
【0068】
(4)上記バイオ成分濃度を、予め計測された最長の再生所要時間Taと最短の再生所要時間Tbとに対する上記計測した再生所要時間Txの比例配分を通じて特定した。これにより、予め計測された各再生所要時間Ta及びTbと上記計測された再生所要時間Txとに基づく演算を通じて、ディーゼル機関100で利用されている燃料の性状を特定することが可能となる。
【0069】
(5)上記特定した燃料性状に基づき、同燃料性状が反映されるDPF130の再生最低温度Timを求めた。そして、DPF130に吸入される排気の温度が再生最低温度Timに到達したことをもって、DPF130の再生処理を実行することとした。このため、ディーゼル機関100に供給される燃料の性状に相関して変化する再生最低温度Timに応じて、DPF130の再生処理を実行することが可能となる。これにより、DPF130の温度が再生最低温度Timに達しているときには、速やかに同DPF130の再生処理が開始され、DPF130の浄化機能が的確に維持されることとなる。またこれにより、DPF130の温度が再生最低温度Timに達していないにも拘わらず同DPF130に燃料が添加されることもなく、DPF130に添加される燃料の燃焼不良が抑制され、ひいては、DPF130の再生不良等が抑制されるようになる。
【0070】
(6)上記バイオ燃料として、脂肪酸メチルエステルが含有された燃料を用いることとした。また、上記変化要素として、脂肪酸メチルエステルの含有量に相関して変化する要素を用いることとした。これにより、バイオ燃料としての利用可能性が高い脂肪酸メチルエステルが燃料に含有されている場合であれ、その性状に応じてDPF130の開始条件が定められることにより、上記排気浄化装置としての汎用性が高められるようになる。
【0071】
(7)上記内燃機関として、自動車に搭載されるディーゼル機関100を採用するとともに、上記フィルタとしてDPF130を採用することとした。これにより、ディーゼル機関100での微粒子成分の発生が顕著なために、排気の浄化機能が特に要求されるDPF130についても、その浄化機能を的確に維持することができるようになる。
【0072】
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置の第2の実施の形態を、第1の実施の形態との相違点を中心に、図6〜図9を参照して説明する。なお、この実施の形態にかかる排気浄化装置も、その基本的な構成は第1の実施の形態と同等であり、図6においても第1の実施の形態と実質的に同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、重複する説明は割愛する。
【0073】
図6に示すように、本実施の形態ではさらに、DPF130から排出される排気の温度を検出する出口温度検出手段134がDPF130の排気側(出口側)に設けられる構成となっている。この出口温度検出手段134は、DPF130を透過した排気の温度を検出し、その検出結果に応じた信号を制御器110Aに出力する。
【0074】
制御器110Aは、出口温度検出手段134から入力される信号に基づきDPF130の排気温度を監視する。また、本実施の形態の制御器110Aは、この排気温度の推移を、ディーゼル機関100で利用される燃料性状に応じて変化する変化要素の変化推移として計測し、この計測結果に応じてDPF130の開始条件を更新する。
【0075】
以下、本実施の形態のバイオ燃料機関の排気浄化装置の燃料性状の特定原理を図7及び図8を参照して詳述する。
図7(a)にDPF130の再生時における微粒子成分の堆積量の推移を示すように、微粒子成分の堆積量がDPF130の浄化機能を維持する上で再生が必要になる堆積量を示す閾値Mmを超えると、例えば、DPF130の温度が再生最低温度を超えていることを条件にポスト噴射が開始される(タイミングtp)。
【0076】
この結果、上記出口温度検出手段134により検出されるDPF130の排気温度の推移を図7(b)に示すように、DPF130にポスト噴射された燃料が同DPF130内で燃焼されることによってDPF130の温度が上昇し、その排気温度も次第に上昇する。
【0077】
そして、DPF130の排気温度が同DPF130に堆積されている微粒子成分を燃焼する上で指標となる目標温度Totに到達すると、このDPF130の排気温度を同目標温度Totに維持するように燃料噴射装置102による燃料の噴射量が制御される。
【0078】
なおこのとき、図7(a)に示すように、DPF130に堆積されている微粒子成分は、DPF130の排気温度が目標温度Totに到達する直前に減少し始める(タイミングt5)。すなわち、図7(b)に示すように、DPF130の排気温度が目標温度Totよりも僅かに低い温度である再生開始温度Tosに到達したときに、DPF130は再生を開始する。
【0079】
そして、タイミングt6においてDPF130の排気温度が目標温度Totに到達すると、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が消滅相当値Mnまで減少するまでDPF130の温度が目標温度Totに維持される。その後、タイミングt7においてDPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が消滅相当値Mnまで減少すると、燃料噴射装置102によるポスト噴射が中止され、DPF130の排気温度が低下することとなる。
【0080】
次に、再生開始温度Tosとディーゼル機関100で利用される燃料の性状との関係を図8を参照して説明する。
図8に示すように、DPF130への燃料の添加時において同DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が減少し始めるときのDPF130の排気温度To(再生開始温度Tos)は、燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度が高まるにつれて同濃度に反比例する態様で低下する傾向にある。すなわち、再生開始温度Tosは、燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度が最も低いとき(例えば「0%」)に最高値Tos(A)となる。一方、再生開始温度Tosは、燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度が最も高いとき(例えば100%)には最低値Tos(B)となる。
【0081】
また、上記ディーゼル機関100で或る燃料が利用されているときに計測されたDPF130の排気温度は、例えば、最高値Tos(A)と最低値Tos(B)との間での中央値付近の温度Tos(X)となっている。よって、このときにディーゼル機関100に利用されている燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度Pxは、同濃度の最高値と最低値との間での中央値、すなわち、「50%」であると特定することが可能である。
【0082】
そこで、本実施の形態の制御器110Aは、特定対象とする燃料の使用時における再生開始温度Tosを計測し、この計測した再生開始温度Tosに基づく上記最高値Tos(A)と最低値Tos(B)とに対する比例配分を通じて、同再生開始温度Tosに反比例する燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度Pxを特定する。
【0083】
以下、本実施の形態のバイオ燃料機関の排気浄化装置の作用を図9を参照して説明する。
図9に示すように、まずステップS200において、上記堆積量検出手段132の検出結果に基づいて、ディーゼル機関100の運転に伴ってDPF130に捕集、堆積された微粒子成分の堆積量が算出される。
【0084】
そして、この算出された微粒子成分の堆積量がDPF130の再生処理の要否を判定する再生閾値Mm以上に到達すると(ステップS201:YES)、DPF130に吸入される排気の温度である入口排気温度Tiが測定される(ステップS202)。次いで、この測定された入口排気温度TiがDPF130の再生最低温度Tim以上であるかが判定される(ステップS203)。なお、DPF130の再生最低温度Timは、ディーゼル機関100に供給される燃料の性状の特定前においては、例えば、上記最大値Tim(B)が設定されている。
【0085】
そして、ディーゼル機関100の運転等に伴って、入口排気温度TiがDPF130の再生最低温度Tim以上となると(ステップS203:YES)、上記燃料噴射装置102によるポスト噴射が実行されることにより、DPF130に燃料が添加される(ステップS204)。また、DPF130の排気温度Toが計測されるとともに、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が減少し始めたか否かが判定される(ステップS205、S206)。そして、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が減少し始めたときのDPF130の排気温度Toに基づいて、再生開始温度Tosが特定される(ステップS206:YES、S207)。
【0086】
その後、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が、同DPF130から微粒子成分が略消滅したときの堆積量に相当する消滅相当値Mn以下となると(ステップS208:YES)、燃料噴射装置102によるポスト噴射が中止され、DPF130に対する燃料の添加が中止される(ステップS209)。
【0087】
そして、上記特定された再生開始温度Tosと例えば制御器110に保有されている先の図8に示したマップ等とに基づいて、ディーゼル機関100で利用されている燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度が特定される(ステップS210)。次いで、この特定された脂肪酸メチルエステルの濃度に対応するDPF130の再生最低温度Timが、例えば制御器110に保有されている先の図4に示したマップ等に基づいて算出される(ステップS211)。そして、この算出された再生最低温度Timが、初期値として設定されていた上記最大値Timに代えてDPF130の再生処理を開始する設定温度(開始条件)として更新される(ステップS212)。こうして、以後のDPF130の再生処理が、同DPF130の入口排気温度Tiが設定温度として更新された再生最低温度Tim以上となったことを条件に行われるようになる。これにより、DPF130の入口排気温度Tiが更新された再生最低温度Tim以上となりさえすれば、入口排気温度Tiが上記初期値として設定されていた最大値Tim(B)に到達するまでもなく、DPF130の再生処理が実行されるようになる。この結果、ディーゼル機関100で利用されている燃料の性状に応じた再生処理が実行され、的確なタイミングでのDPF130の再生が促され、その浄化機能が好適に維持されるようになる。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置によれば、前記(1)、(2)、(5)〜(7)に準じた効果が得られるとともに、前記(3)、(4)に代えて以下の効果が得られるようになる。
【0089】
(3A)上記変化要素として、ポスト噴射に伴ってDPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が減少し始めたときの再生開始温度Tosを用いることとした。これにより、各種変化要素の中でもDPF130の再生時における燃料性状との相関性が特に高い変化要素に基づいて、同燃料性状を特定することが可能となり、その特性にかかる精度が好適に高められるようになる。
【0090】
(4A)上記バイオ成分濃度を、予め計測された再生開始温度の最高値Tos(A)及び最低値Tos(B)に対する上記計測した再生開始温度Tos(X)の比例配分を通じて特定した。これにより、予め計測された再生開始温度の最高値Tos(A)及び最低値Tos(B)と上記計測された再生開始温度Tos(X)とに基づく演算を通じて、ディーゼル機関100で利用されている燃料の性状を特定することが可能となる。
【0091】
(第3の実施の形態)
次に、本発明にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置の第3の実施の形態を、第1の実施の形態との相違点を中心に、図10及び図11を参照して説明する。なお、本実施の形態にかかる排気浄化装置も、その基本的な構成は第1の実施の形態と同等であり、図10においても第1の実施の形態と実質的に同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、重複する説明は割愛する。
【0092】
図10に示すように、本実施の形態の排気浄化装置はさらに、ディーゼル機関100が搭載される自動車に設けられた給油口の開閉を検出する給油検出センサ135を備える構成となっている。この給油検出センサ135は、ディーゼル機関100への給油に際して給油口が開閉されると、給油口が開閉された旨を示す信号を制御器110Bに出力する。
【0093】
本実施の形態の制御器110Bは、給油検出センサ135から入力される信号に基づき、給油の有無、換言すれば、ディーゼル機関100に供給される燃料の性状の変化の有無を監視する。そして、制御器110Bは、こうした監視を通じて、ディーゼル機関100に供給される燃料の性状の変化が推定されるとき、DPF130の再生処理の開始条件を更新する。
【0094】
以下、本実施の形態のバイオ燃料機関の排気浄化装置の作用を図11を参照して説明する。
図11に示すように、ステップS300において、上記給油検出センサ135の検出結果に基づきディーゼル機関100が搭載される自動車に対する給油の有無が監視される。こうして、自動車に対する給油に伴って給油口が開閉されると、給油に伴ってディーゼル機関100に供給される燃料の性状が変化したと判断される(ステップS300:YES)。
【0095】
そして、燃料性状の特定を通じて更新された上記再生最低温度Timが、一旦、燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度が最高濃度であるときに対応する上記最大値Tim(B)に設定される(ステップS301)。その後、ディーゼル機関100の運転に伴ってDPF130の微粒子成分の堆積量が再生閾値Mmに到達したこと等により、給油後に初回のDPF130の再生処理が実行されると(ステップS302)、例えば先の図5に示した手順により、給油後にディーゼル機関100で利用される燃料の性状が特定される(ステップS303)。そして、この特定された燃料の性状に応じて、再生最低温度Timが更新される(ステップS304)。こうして、本実施の形態では、給油検出センサ135の検出結果に基づきディーゼル機関100に供給される燃料の性状の変化が検知される都度、再生最低温度Timが更新されるようになる。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態にかかるバイオ燃料機関の排気浄化装置によれば、前記(1)〜(7)の効果が得られるとともに、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0097】
(8)上記給油検出センサ135の検出結果に基づいて、ディーゼル機関100が搭載される自動車での給油の有無を監視した。そして、給油検出センサ135の検出結果に基づき自動車への給油が検知されたとき、ディーゼル機関100で利用される燃料の性状が変化したとして給油後の燃料性状を再特定し、この特定した燃料性状に応じて再生最低温度Timを更新することとした。このため、燃料の給油に伴ってディーゼル機関100に供給される燃料の性状が変化したとしても、この変化に応じて上記再生最低温度Timを動的に変更することが可能となる。これにより、ディーゼル機関100に供給される燃料の性状に応じて、DPF130の再生処理の開始条件を好適に維持することが可能となる。またこれにより、ディーゼル機関100が搭載される自動車に対する給油が検知できたことをもって上記燃料性状の特定にかかる演算を実行することが可能となり、必要最小限の演算回数で燃料性状の特定及び再生最低温度Timの更新を行うことが可能となる。
(9)上記給油検出センサ135の検出結果に基づき自動車への給油が検知されたとき、初回のDPF130の再生処理において、再生最低温度Timを上記最大値Tim(B)に初期化することとした。このため、給油に伴ってディーゼル機関100に供給される燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度が高まり、同燃料に基づくDPF130の再生最低温度Timが上昇したとしても、DPF130の温度が同再生最低温度Timよりも確実に高まっていることを条件としてDPF130の再生処理が実行される。これにより、DPF130の再生に必要な温度条件が確実に満たされている状況下で同DPF130の再生処理が開始されることとなり、DPF130の再生不良等を抑制することができるようになる。
【0098】
(他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記各実施の形態では、上記DPF130に堆積される微粒子成分の堆積量を、上記堆積量検出手段132により検出されるDPF130の吸入空気量に基づいて算出した。これに限らず、先の図1に対応する図として例えば図12に示すように、DPF130の入口側の排気管120内の圧力を検出する入口圧力センサ136をDPF130の入口側(吸気側)に設ける構成としてもよい。また、DPF130の出口側の排気管120内の圧力を検出する出口圧力センサ137を、DPF130の出口側(排気側)に設ける構成としてもよい。そして、入口圧力センサ136及び出口圧力センサ137の検出結果に基づき、DPF130の入口側と出口側との圧力差を求め、この圧力差が増大したことをもって、DPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が増大したことを検知するようにしてもよい。
【0099】
・上記各実施の形態では、上記燃料噴射装置102によるポスト噴射を通じて、DPF130に燃料を添加することとした。これに限らず、先の図1に対応する図として例えば図13に示すように、排気管120内に燃料を直接添加可能な専用の燃料添加装置140を、DPF130の上流に設ける構成としてもよい。この場合には、DPF130の再生処理に際しては、制御器110によって燃料添加装置140による燃料の添加態様が制御され、例えば、DPF130の温度が再生最低温度Timに上昇したことをもって燃料添加装置140によるDPF130への燃料の添加が開始される。これにより、DPF130への燃料添加をより的確に行うことができるようになる。
【0100】
・上記各実施の形態では、再生処理に先立つDPF130の昇温を、ディーゼル機関100から排出される排気によって行うこととした。これに限らず、例えば、DPF130を加熱するヒータ等をDPF130に隣接する構成とし、このヒータによってDPF130を昇温するようにしてもよい。この場合には、ディーゼル機関100の運転状態に依存することなくDPF130の昇温を行うことが可能となり、所望のタイミングでDPF130の昇温を通じた再生処理を実行することが可能となる。
【0101】
・上記第3の実施の形態では、上記変化要素が再生所要時間Txであるときに、給油検出センサ135の検出結果に基づいて給油の有無を監視することとした。これに限らず、先の第2の実施の形態の排気浄化装置においても、給油検出センサ135を設ける構成とし、この給油検出センサ135の検出結果に基づいて給油の有無を監視するようにしてもよい。この場合であれ、前記(8)、(9)に準じた効果を得ることは可能である。
【0102】
・上記各実施の形態では、DPF130の再生処理の開始条件として、DPF130の温度が再生最低温度Timに到達することを規定した。これに限らず、DPF130の再生処理の開始条件としては、ディーゼル機関100で利用される燃料性状に応じて変化し、かつ、DPF130の再生に必要な要素であればよく、適宜、変更もしくは追加することが可能である。
【0103】
・上記第1及び第3の実施の形態では、上記変化要素としてDPF130の再生に要する再生所要時間Txを用いることとした。また、上記第2の実施の形態では、上記変化要素としてDPF130の再生開始温度Tosを用いることとした。これに限らず、例えば、これら再生所要時間Txと再生開始温度Tosとの双方を上記変化要素として用いるようにしてもよい。この場合には、例えば、再生所要時間Txに基づき特定された燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度と再生開始温度Tosに基づき特定された燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度とが相違するとき、各々特定された濃度の平均値を、ディーゼル機関100で利用されている燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度として特定するようにしてもよい。またこの場合には、再生所要時間Txに基づき特定された燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度と再生開始温度Tosに基づき特定された燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度との濃度差が所定値を超えたときには、それら再生所要時間Tx及び再生開始温度Tosを再計測し、燃料の脂肪酸メチルエステルを再算出するようにしてもよい。これにより、ディーゼル機関100で利用される燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度を、2つの要素に基づいて特定することが可能となり、ひいては、同特定結果に対する信頼性の向上が図られるようになる。
【0104】
・上記第1及び第3の実施の形態では、上記燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度を、予め計測された最長の再生所要時間Taと最短の再生所要時間Tbとに対する上記計測した再生所要時間Txの比例配分を通じて特定した。また、上記第2の実施の形態では、上記燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度を、予め計測された再生開始温度の最高値Tos(A)及び最低値Tos(B)に対する上記計測した再生開始温度Tos(X)の比例配分を通じて特定した。これに限らず、脂肪酸メチルエステルの濃度の特定は、この脂肪酸メチルエステルの濃度と、再生所要時間Txや再生開始温度Tos(X)との相関性に基づき行うものであればよい。
【0105】
・上記第1及び第3の実施の形態では、上記変化要素として、DPF130の再生開始から再生終了までに要する再生所要時間Txを用いることとした。また、上記第2の実施の形態では、上記変化要素として、ポスト噴射に伴ってDPF130に堆積されている微粒子成分の堆積量が減少し始めたときの再生開始温度Tosを用いることとした。これに限らず、上記変化要素としては、燃料性状に応じて変化推移が変化する要素であればよい。
【0106】
・上記燃料の性状として、燃料に含まれる脂肪酸メチルエステルの濃度を特定することとした。これに限らず、特定すべき燃料の性状とは、DPF130の再生処理を実行開始可能な要素に影響を及ぼす性状であればよく、例えば、ディーゼル機関100で利用される燃料の蒸留温度であってもよい。
【0107】
・上記各実施の形態では、DPF130に添加する還元剤として、ディーゼル機関100で利用される燃料を利用した。これに限らず、DPF130に添加することによって同DPF130の昇温を図ることができる各種還元剤であれば、DPF130の再生処理に用いることは可能である。
【0108】
・上記各実施の形態では、ディーゼル機関100の燃料として脂肪酸メチルエステルを主成分とするバイオ燃料を用いることとした。そして、上記燃料性状として、ディーゼル機関100で利用される燃料の脂肪酸メチルエステルの濃度を特定することとした。これに限らず、ディーゼル機関100の燃料としては、例えば、脂肪酸エチルエステル、炭化水素油、トリグリセライド等の油脂(バイオオイル)等の各種バイオ燃料を用いることができる。要は、ディーゼル機関100で利用可能で、かつ、性状に応じて変化する変化要素を有する燃料であれば、上記バイオ燃料として採用することが可能である。
【0109】
・上記各実施の形態では、上記フィルタとしてDPF130を採用することとした。これに限らず、再生処理の対象となるフィルタとしては、微粒子成分の捕集機能を有するフィルタであればよく、適宜変更することが可能である。
【0110】
・上記各実施の形態では、上記内燃機関としてディーゼル機関100を採用することとした。これに限らず、燃料の燃焼に伴って微粒子成分が発生する内燃機関であれば、上記排気浄化装置を設けることは可能である。
【符号の説明】
【0111】
100…ディーゼル機関、101…燃焼室、102…燃料噴射装置、110、110A、110B…制御器、120…排気管、130…DPF、131…収容筒、132…堆積量検出手段、133…入口温度検出手段、134…出口温度検出手段、135…給油検出センサ、136…入口圧力センサ、137…出口圧力センサ、140…燃料添加装置、Ta…最長再生所要時間、Tb…最短再生所要時間、Ti…入口排気温度、To…排気温度、Tx…再生所要時間、Tim…再生最低温度、Tos…再生開始温度、Tot…目標温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ燃料が混合利用される内燃機関の排気系に設置されて排気ガス中に含まれる微粒子成分を捕集するフィルタに対する還元剤の噴射もしくは昇温を通じて当該フィルタを再生処理する再生手段を備えたバイオ燃料機関の排気浄化装置であって、
前記再生手段は、前記フィルタの再生時に前記内燃機関で利用される燃料の性状に応じて変化する変化要素の変化推移を計測するとともに、この計測した変化推移に基づいて前記燃料の性状を特定し、この特定した燃料の性状をもとに前記フィルタの再生処理の開始条件を定める
ことを特徴とするバイオ燃料機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記燃料の性状が、燃料に含まれるバイオ成分の濃度を示すバイオ成分濃度であり、
前記変化要素の変化推移が、前記バイオ成分濃度にしたがって変化する推移である
請求項1に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記変化要素が、前記フィルタの再生処理において、当該フィルタの再生開始から再生終了までに要する再生所要時間、及び前記還元剤の噴射もしくは昇温に伴って前記フィルタに堆積されている微粒子成分の堆積量が減少を始めたときの同フィルタの排気温度の少なくとも一方である
請求項2に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記変化要素が前記再生所要時間であるとき、
前記再生手段は、前記内燃機関に供給され得る燃料のバイオ成分濃度が最高濃度であるときに最短となる前記再生所要時間と前記内燃機関に供給され得る燃料のバイオ燃料成分濃度が最低濃度であるときに最長となる前記再生所要時間とに対する前記計測した再生所要時間の比例配分を通じて、この再生所要時間に対応する燃料のバイオ成分濃度を特定する
請求項3に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記変化要素が前記フィルタの排気温度であるとき、
前記再生手段は、前記内燃機関に供給され得る燃料のバイオ成分濃度が最高濃度であるときに最低となる前記排気温度と前記内燃機関に供給され得る燃料のバイオ成分濃度が最低濃度であるときに最高となる前記排気温度とによって定まる温度幅に対する前記計測した前記排気温度の比例配分を通じて、この排気温度に対応する燃料のバイオ成分濃度を特定する
請求項3に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記フィルタを再生可能な最低温度である再生最低温度が、前記バイオ成分濃度に比例して変化するものであり、
前記再生手段は、前記フィルタに吸入される気体の温度が、前記燃料の性状として特定されるバイオ成分濃度に応じたフィルタの再生最低温度に到達したことを開始条件として、前記フィルタの再生処理を実行する
請求項2〜5のいずれか一項に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記バイオ燃料が、脂肪酸メチルエステルが含有された燃料であり、
前記変化要素が、前記脂肪酸メチルエステルの含有量に相関して変化するものである
請求項1〜6のいずれか一項に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置において、
前記内燃機関が搭載される車両に設けられた給油口の開閉を検出する給油検出センサをさらに備え、
前記再生手段は、前記給油検出センサを通じて前記給油口の開閉が検出される都度、前記燃料の性状の特定し、この特定した燃料の性状に応じて前記再生処理の開始条件を変更する
ことを特徴とするバイオ燃料機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記内燃機関がディーゼル機関であり、
前記フィルタがディーゼル・パティキュレート・フィルタである
請求項1〜8のいずれか一項に記載のバイオ燃料機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−19283(P2013−19283A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151470(P2011−151470)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】