説明

バイト切削装置

【課題】被加工物を保持する保持テーブルを有するバイト切削装置において、切削屑の厚みまで含んだ高さを保持テーブルの保持面の高さ位置と誤検出することを防ぐ。
【解決手段】バイト切削装置10の保持テーブル40は、保持部44の外周側が保持面より低く形成された切削屑落とし込み部43を有する枠体42と、切削屑落とし込み部43に配設され保持面45と同じ高さ位置の基準面を有する基準ピン46とを備え、保持テーブル40で保持された被加工物の上面高さ位置を検出するとともに基準ピン46の基準面高さ位置を検出することで被加工物厚みを検出する厚み検出手段50とを備える。厚み検出手段50は、被加工物接触部52bを有する被加工物高さ位置検出器52と、基準面接触ピン51bを有する基準面高さ位置検出器51とを備え、両検出器51,52による高さ位置の検出結果から被加工物の厚みを正確に算出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の厚みを正確に算出することができるバイト切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を所定の厚みに形成するための装置として、保持テーブルに保持された被加工物に対して被加工物の上面と平行な方向に回転するバイト切削刃を作用させるように構成したバイト切削装置が用いられることがある。バイト切削装置では、被加工物上面及び保持テーブルの上面の高さ位置をそれぞれ検出することにより、その2つの高さ位置の差を被加工物の厚みとして求めることができる(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−59523号公報
【特許文献2】特開2008−258321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、切削によって切削屑が生じると、その切削屑が保持テーブル上に付着することがあるため、切削屑まで含んだ高さ位置を保持テーブルの保持面上面の高さ位置として誤検出してしまい、被加工物の正確な厚みを算出できないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたのであり、その目的は、被加工物の厚みをより正確に算出することができるバイト切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバイト切削装置は、被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、保持テーブルに保持された被加工物を切削する切削刃を含むバイトホイールとバイトホイールを保持面と平行な面で回転させるスピンドルとからなる切削手段とを備えたバイト切削装置であって、保持テーブルは、被加工物を保持する保持面を含む保持部と、保持部を囲繞するとともに保持部の外周側が保持面より低く形成された切削屑落とし込み部を有する枠体と、切削屑落とし込み部に配設され切削屑落とし込み部から突出して保持面と同じ高さ位置の基準面を有する基準ピンと、からなり、保持テーブルで保持された被加工物の上面高さ位置を検出するとともに基準ピンの基準面高さ位置を検出することで被加工物厚みを検出する厚み検出手段とを備え、基準ピンはバイトホイールの回転方向上流側に配設されたことを特徴とする。
【0007】
上記厚み検出手段は、保持テーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を検出する被加工物高さ位置検出器と、基準ピンの基準面高さ位置を検出する基準面高さ位置検出器とを有する。
【0008】
被加工物高さ位置検出器は、被加工物の上面に接触する接触面を含む被加工物接触部を有し、被加工物の上面と面接触して被加工物の上面高さ位置を検出する。一方、基準面高さ位置検出器は、基準面に接触する基準面接触ピンを有し、基準面と点接触して基準面の高さ位置を検出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバイト切削装置は、保持テーブルの保持面上面と同じ高さ位置の基準面を有する基準ピンを備えているため、保持面上面の高さ位置を直接検出しなくても、基準ピンの基準面の高さを検出することで、保持面上面の高さ位置を検出することができる。また、当該基準ピンは、切削屑落とし込み部から突出した状態で、バイトホイールの回転方向上流側に配設されているため、バイトホイールに取り付けられた切削刃が上流側から下流側に向けて移動して切削が行われても、切削屑落とし込み部に落ちた切削屑が当該基準面上に付着することがない。したがって、基準ピンの基準面の高さ位置を検出することで、切削屑を含んだ保持面上面の高さを基準面の高さ位置として誤検出することがなく、保持テーブルの保持面の高さ位置を正確に検出して被加工物の厚みをより正確に求めることができる。
【0010】
厚み検出手段は、保持テーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を検出する被加工物高さ位置検出器と、基準ピンの基準面高さ位置を検出する基準面高さ位置検出器とを有するため、被加工物高さ位置検出器により検出された被加工物の上面高さ位置と、基準面高さ位置検出器により検出された基準ピンの基準面高さ位置との差を算出することにより、被加工物の厚みを求めることができる。
【0011】
被加工物高さ位置検出器は、被加工物の上面に接触する接触面を含む被加工物接触部を有し、被加工物の上面と面接触して被加工物の上面高さ位置を検出するため、被加工物の上面に多少のうねりがあっても、そのうねりにならって上面の高さ位置を検出することができる。また、基準面高さ位置検出器は、基準面に接触する基準面接触ピンを有し、基準面と点接触して基準面の高さ位置を検出するため、基準面接触ピンの先端部に異物が付着しにくく、保持面の上面高さ位置を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】バイト切削装置の一例を示す斜視図である。
【図2】基板部厚さ測定手段の一例を示す正面図である。
【図3】保持テーブル及び切削手段の例を示す正面図である。
【図4】保持テーブルに保持された被加工物の厚みを厚み検出手段により検出する状態を示す正面図である。
【図5】被加工物の一例のウェーハを示す平面図である。
【図6】同ウェーハの拡大断面図である。
【図7】ウェーハを切削する状態を示す平面図である。
【図8】ウェーハを切削する状態を示す正面図である。
【図9】切削加工後の半導体ウェーハの拡大断面図である。
【図10】保持テーブルの第2の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1 バイト切削装置の構成
図1に示すバイト切削装置10は、被加工物が保持手段40に保持され、その被加工物に対して切削手段60によって切削加工を施す装置であり、Y軸方向に延びる直方体形状の基台11と、当該基台11の上面の一端に立設され鉛直方向(Z軸方向)に延びる立設基台15とを備えている。基台11の上面前部には、切削加工前の被加工物を収容する供給カセット12と、切削加工後の被加工物を収容する回収カセット18とを備えている。
【0014】
供給カセット12及び回収カセット18の近傍には、供給カセット12からの被加工物の搬出及び回収カセット18への被加工物の搬入を行う搬送ロボット13が配設されている。搬送ロボット13は、屈曲可能なアーム13aと、アーム13aの先端部に備えたハンド13bとを備え、供給カセット12及び回収カセット18にハンド13bが届くように搬送ロボット13が設置されている。また、ハンド13bの可動範囲には、切削加工後の被加工物を洗浄する洗浄装置17が配設されている。
【0015】
ハンド13bの可動範囲には、搬送ロボット13によって供給カセット12から搬出された被加工物を所定の位置に位置あわせする位置決め手段20が配設されている。位置決め手段20は、被加工物を保持して回転する回転テーブル21と、回転テーブル21の外周側に円弧状に配設された複数のピン22と、被加工物が半導体ウェーハである場合にその半導体ウェーハの結晶方位識別マーク(オリエンテーションフラット又はノッチ)の位置を検出する結晶方位センサ29とを備えている。ピン22は、回転テーブル21の径方向に進退移動可能となっている。また、結晶方位センサ29によって検出された結晶方位識別マークの位置情報は、制御部80に送信され記憶される。
【0016】
図2に示すように、回転テーブル21は、基台11上に配設された軸部23を介して基台11上に支持されている。軸部23、及び、モータ24の上部に取り付けられたプーリ24aの周囲には、ベルト25が掛けられている。モータ24の動力がベルト25を介して軸部23に伝わることにより、軸部23に支持された回転テーブル21が回転可能となっている。
【0017】
図2に示すように、位置決め手段20の周囲には、回転テーブル21に保持された被加工物の基板部の厚さを測定する基板部厚さ測定手段30が設けられている。基板部厚さ測定手段30は、基板上に突出物が形成されて構成される被加工物の当該基板の厚さを測定する機能を有し、鉛直方向に対向するリニアゲージ31及びサポートゲージ32と、これらと連結したフレーム33と、フレーム33を水平方向に移動させる移動機構34とを備えている。
【0018】
リニアゲージ31には、鉛直方向(矢印A1方向)に進退自在なプローブ31aを備え、サポートゲージ32には、鉛直方向(矢印A2方向)に進退自在なプローブ32aを備えている。リニアゲージ31及びサポートゲージ32は、フレーム33の上端と下端とにそれぞれ連結され、プローブ31aの先端部31bとプローブ32aの先端部32bとが互いに対向するように配置されている。
【0019】
移動機構34は、基台11上の支持基台35と、支持基台35に沿って移動するスライダ36とを備えており、スライダ36は、支持基台35上を水平方向に移動することにより、リニアゲージ31及びサポートゲージ32を、被加工物の基板部の厚さを測定できる位置に移動させることができる。
【0020】
図1に示すように、位置決め手段20と被加工物を保持する保持手段(保持テーブル)40との間の位置には、被加工物を位置決め手段20から保持テーブル40へ搬送する第1搬送装置14が配設されている。また、保持テーブル40と洗浄装置17との間の位置には、被加工物を保持テーブル40から洗浄装置17へ搬送する第2搬送装置16が配設されている。
【0021】
保持テーブル40は、Y軸方向に移動可能な移動基台49によって支持されており、移動基台49の移動経路にはカバー48が敷かれている。保持テーブル40の移動経路のY軸方向前方、すなわち、保持テーブル40に対する被加工物の着脱が行われる位置である着脱位置P1の近傍には、保持テーブル40を洗浄する洗浄ノズル19が配設されている。
【0022】
切削手段60は、保持手段40のY軸方向移動経路の後方の上方に配設されている。切削手段60は、Z軸方向に延びるスピンドルハウジング61と、スピンドルハウジング61によって回転可能に支持されたスピンドル62と、スピンドル62の上端に連結されたサーボモータ63と、スピンドル62の下端に連結されたバイトホイール64と、バイトホイール64の下面側に着脱可能に装着された切削刃であるバイト65とを備えている。
【0023】
切削手段60は、立設基台15の側部において送り手段70を介して支持されている。送り手段70は、Z軸方向に延びるボールスクリュー71と、ボールスクリュー71と平行に配設された一対のガイドレール72と、ボールスクリュー71の一端に接続されたモータ73と、バイト65の高さ位置を制御するための昇降基台74とを備えている。昇降基台74の一方の面には、一対のガイドレール72が摺接し、中央部分に図示しないナット構造が形成されており、当該ナット構造にボールスクリュー71が螺合している。そして、サーボモータ73によって回転駆動されたボールスクリュー71が回動することにより、昇降基台74がガイドレール72にガイドされてZ軸方向に移動し、併せて切削手段60をZ軸方向に昇降させることができる。
【0024】
図3に示すように、保持テーブル40は、ウェーハ1を保持する保持面45を有する保持部44と、保持部44を囲繞するとともに保持部44の外周側が保持面45より低く形成された切削屑落とし込み部43を有する枠体42と、切削屑落とし込み部43から上方に突出する基準ピン46とを備えている。
【0025】
基準ピン46の上端には、保持面45と同じ高さ位置Hとなる基準面47を備えており、基準ピン46は、切削落とし込み部43に立設され、切削落とし込み部43から上方に突出した状態で形成されている。
【0026】
基準ピン46は、バイトホイール64の回転方向の上流側Uに配設されている。上流側Uとは、図3に示すように、バイトホイール64が回転してバイト65が被加工物に対して接触を始める側を意味する。一方、下流側Dとは、バイトホイール64が回転してバイト65が被加工物に対する接触が終了する側を意味する。切削手段60を構成するスピンドル62は、バイトホイール64を保持面45と平行な面で回転させることができる。
【0027】
切削屑落とし込み部43は、枠体42の周縁部上部を直角に切り欠くことにより、保持面45の高さ位置よりも低く形成されている。保持テーブル40に切削屑落とし込み部43を設けたことにより、バイト切削加工により生じた切削屑が切削屑落とし込み部43に落ちるため、切削屑が保持面45に残存しにくくなる。
【0028】
保持部44は、図3に示すように、微小な孔を無数に設けた多孔質部材により形成されている。保持テーブル40の中央部には、被加工物の被保持面側を吸引するための吸引通路41が形成され、吸引通路41の上部は保持部44の下部に連結され、下部は図示しない吸引源に連通している。なお、図示はしないが、保持テーブル40を構成する保持部44は、ピンチャック部材で構成されてもよい。保持部44をピンチャック部材とした場合には、ピンを直角に複数立設させ、隣接するピンを等間隔に設けて保持部44が形成される。ピンチャック部材によれば、複数のピンの先端により被加工物を保持することができる。
【0029】
図1に示すように、着脱位置P1には、被加工物の厚みを検出する厚み検出手段50を備えている。厚み検出手段50は、被加工物の上面高さ位置を検出する被加工物高さ位置検出器52と、図2に示した基準ピン46の基準面47を検出する基準面高さ位置検出器51とを備えている。被加工物高さ位置検出器52と基準面高さ位置検出器51とは、着脱位置P1に位置する保持テーブル40を跨いだ状態で配設されたフレーム55に沿って移動可能となっている。
【0030】
被加工物高さ位置検出器52は、図4に示すように、本体部52aと、本体部52aに対して鉛直方向に進退自在な接触部52bとを備えている。図4に示すように、接触部52bの先端は、ウェーハ1の上面と平行に面接触できるように、平坦面52cを形成している。平坦面52cは、例えば直径3mm程度の円形に形成される。一方、接触ピン51bは、基準面47と点接触できるようにその先端が尖った形状に形成されている。
【0031】
2 バイト切削装置の動作例
図5に示すウェーハ1は、本発明に係るバイト切削装置によって、切削加工が施される被加工物の一例である。ウェーハ1は、略円盤形状の基板部2を備え、その表面に格子状に形成されたストリート4によって複数のデバイス3が区画されている。また、ウェーハ1の外周の一端部には、結晶方位を識別するためのマークとなるノッチ6が形成されている。デバイス3の表面には、図5において拡大して示すように、複数の突起状の電極であるバンプ5が形成されている。
【0032】
図6に示すように、バンプ5は、基板部2の表面から突出するように形成されており、バンプ5の高さがそれぞれ不均一となっている場合がある。また、基板部2の表面は、樹脂膜Mで覆われており、樹脂膜Mからバンプ5が露出している形状を含めて、これをウェーハ1の上面Nとする。なお、図示はしていないが、バンプ5は、デバイス3に形成された電子回路の電極に連結されている。以下では、このように構成されるウェーハ1の上面Nを切削してバンプ5の高さを揃える場合について説明する。
【0033】
切削加工前のウェーハ1は、図1に示した搬送ロボット13によって供給カセット12から一枚ずつ取り出されて位置決め手段20に搬送され、ウェーハ1の表面N側を上向きにした状態で回転テーブル21に載置される。そして、ピン22が回転テーブル21へ向けて移動すると、ピン22に押圧されてウェーハ1が一定の位置に位置決めされる。また、ウェーハ1に形成されたノッチ6の位置は、回転テーブル21が回転することで結晶方位センサ29によって検出され、ノッチ6の位置データが制御部80に送信されて記憶される。その後、ウェーハ1は、回転テーブル21に保持される。
【0034】
次に、基板部厚さ測定手段30において、基板部2の厚さが測定される。図2に示したように、スライダ36を回転テーブル21側へ移動させてプローブ31a及びプローブ32aをそれぞれ基板部2の上方及び下方に位置づける。そして、プローブ31a、32aを互いが近づく方向に移動させ、プローブ31aの先端部31bを基板部2の上面に接触させるとともに、プローブ32aの先端部32bを基板部2の下面に接触させて基板部2を挟み込む。この状態における先端部31b及び先端部32bの位置情報から、基板部2の厚さt1が算出される。当該算出は、制御部80によって行われ、算出結果が制御部80に備えた記憶素子に記憶される。なお、各ゲージ31、32による基板部2の測定点は、2〜4箇所の複数が好ましく、その場合には、測定値の平均が基板部2の厚さとして制御部80に記憶される。測定点を複数とする場合には、回転テーブル21を間欠的に回転させ、その停止時に測定することが望ましい。
【0035】
ウェーハ1の基板部2の厚さt1を算出後、ウェーハ1は、図1に示した第1搬送装置14によって保持テーブル40に搬送され、表面Nが露出した状態で保持される。保持テーブル40の保持部44が多孔質部材で形成されている場合には、図示しない吸引源から発生する吸引力によって、図3に示した保持テーブル40の中央に形成される吸引通路41及び保持部44を構成する多孔質部材の孔を通じてウェーハ1の被保持面(裏面)を吸着させる。また、保持テーブル40の保持部44がピンチャック部材で形成されている場合には、図示しない吸引源から発生する吸引力によって、保持テーブル40の中央に形成される吸引通路41及び複数のピンの間を通じてウェーハ1の被保持面をピンチャック部材に吸着させる。これにより、ウェーハ1は、切削加工時に保持テーブル40からずれることなく安定的に保持される。
【0036】
次に、図1及び図4に示す被加工物厚み検出手段50において、ウェーハ1の厚み(総厚)が検出される。図4に示すように、基準面高さ位置検出器51を切削屑落とし込み部43に配設された基準ピン46の上方に移動させ、接触ピン51bを基準ピン46の基準面47に向けて、下降させる。そして、基準面47に接触ピン51bが接触点51cにおいて点接触すると、下降を停止する。このようにして基準面47に接触ピン51bが接触した時の接触点51cの高さ位置が認識されて、その測定値(基準面の高さB)が保持テーブル40の保持面45の高さとして制御部80に送信される。接触点51cは尖った形状に形成されているため、異物が付着しにくく、接触点51cの高さ位置を正確に計測することができる。
【0037】
図4に示すように、被加工物高さ位置検出器52を保持部44に保持されたウェーハ1の上方に移動させ、接触部52bを上面Nに向けて、下降させる。そして、上面Nに接触部52bが面接触すると、下降を停止する。このようにして上面Nに接触部52bが面接触した時の平坦面52cの高さ位置が、バンプ5の高さも含めたウェーハ1の上面Nの高さCとして認識され、制御部80に送信される。ウェーハ1の上面Nにうねりがあったとしても、平坦面52cは上面Nと面接触するため、うねりにならって上面Nの高さ位置を検出することができる。
【0038】
こうしてウェーハ1の上面Nの高さ位置C及び保持面45の高さ位置Bが求まると、上面Nの高さ位置Cの値から保持面45の高さ位置Bの値を引くことにより、ウェーハ1の総厚t2が算出される。この算出は、制御部80において行われる。また、ウェーハ1の総厚t2から、図2に示した基板部厚さ測定手段30によって計測された基板部2の厚さt1を引くことにより、バンプ5の高さを求めることもできる。なお、被加工物高さ位置検出器52による上面Nの高さ位置検出は、複数箇所に対して行うことが望ましく、例えば、ウェーハ1の上面N上において2〜4箇所程度の測定を行うことが好適である。その場合には、測定値の平均がそれぞれの高さ位置として制御部80に送信される。
【0039】
こうしてウェーハ1の厚みt2の測定が行われると、図1に示す移動基台49がY軸方向に水平移動し、保持テーブル40に保持されたウェーハ1は、バイト切削手段60の下方へ移動する。
【0040】
図7に示すように、保持テーブル40がY軸方向に水平移動してウェーハ1が切削領域P2に到達すると、バイトホイール64が高速回転するとともに、図1に示したモータ73の駆動によって、バイトホイール64がウェーハ1へ向けて下降する。このとき、バイト65の下端部を、ウェーハ1を所望の厚さに形成できる高さに位置づける。
【0041】
そして、図7に示すように、バイトホイール64を、矢印に示す方向である上流側Uから下流側Dにかけて回転させる。そうすると、バイトホイール64に取り付けられたバイト65も同様に上流側Uから下流側Dにかけて円弧を描いて移動する。
【0042】
図8(a)に示すように、バイト65は、バイトホイール64の回転方向の上流側Uにある状態から、図8(b)に示すように下流側Dに向けて回転しながら、基板部2の表面から露出したバンプ5を切削していく。保持テーブル40には、切削屑落とし込み部43が形成されているため、バイト65による切削によって生じた切削屑は、バイトホイール64の回転方向側、すなわち上流側Uから下流側Dへと押し出され、切削屑落とし込み部43に落とされる。したがって、バイト切削加工後の保持テーブル40の上面に切削屑が付着するのを防ぐことができる。そして、保持テーブル40をY軸方向に水平移動させながら、ウェーハ1の上面Nに対してバイト切削加工を繰り返し、不均一の高さに形成されたバンプ5をすべて切削する。その結果、図9に示すように、上面Nの高さが均一となる。
【0043】
全てのバンプ5に対する切削加工が終わると、バイトホイール64を上昇させ、保持テーブル40はY軸方向に移動して図1に示したウェーハ1の着脱位置P1に戻る。ここで、ウェーハ1が所望の厚さになっているかを確認するために、被加工物厚み検出手段50によるウェーハ1の総厚さの測定が再度行われる。測定は、切削前における測定と同様の方法により行われる。
【0044】
制御部80は、算出された厚さt2が所望の厚さであるか否かを判定する。制御部80によって厚さt2が所望の厚さであると判断されると、ウェーハ1が第2搬送装置16によって洗浄装置17に搬送される。一方、制御部80によってウェーハ1の総厚t2(図4参照)が所望の厚さより厚いと判断されると、ウェーハ1が再度切削領域P2に搬送されてバイト65による切削が行われる。そして、被加工物厚み検出手段50によるウェーハ1の総厚さの測定が再度行われ、所望の厚さに形成されたことが確認されると、第2搬送装置16によって洗浄装置17に搬送される。厚さt2が所望の厚さより薄いと判断されると、切削不良として扱われる。
【0045】
洗浄装置17に搬送されたウェーハ1は、洗浄され、乾燥処理が施される。その後、ウェーハ1は、搬送ロボット13のハンド13bによって、洗浄装置17から取り出され、回収カセット18に収容される。
【0046】
本実施形態では、バンプ5の高さを均一に切削する場合について説明したが、バイト切削装置10の用途は、これに限定されるものでなく、例えば、金属を所望の厚さに形成する場合等にも使用することができる。
【0047】
図10に示す保持テーブル40aは、本発明にかかる保持テーブルの第二例である。この保持テーブル40aは、ウェーハ1を保持する保持面45aを有する保持部44aと、保持部44aを囲繞するとともに保持部44aの外周側が該保持面45aより低く形成された切削屑落とし込み部43aを有する枠体42aと、保持面45aと同じ高さ位置の基準面47aを有する基準ピン46aとを備える。
【0048】
保持テーブル40aについては、切削屑落とし込み部43aの形状が、図3,4及び8に示した保持テーブル40の切削屑落とし込み部43とは異なる。具体的には、切削屑落とし込み部43aは、図10に示すように、外周側に向けて下降する矢印E方向の傾斜を設けて、切削屑が矢印E方向に滑り落ちるように構成されている。このように、保持テーブル40aに当該切削屑落とし込み部43aを設けたことにより、バイト切削加工により生じた切削屑が切削屑落とし込み部43aを矢印E方向に滑り落ちるため、切削屑が切削屑落とし込み部43aに溜まることがない。したがって、基準ピン46aの基準面47a上に切削屑が溜まることもないため、保持テーブルの上面の高さ位置を常に正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:ウェーハ
2:基板部 3:デバイス 4:ストリート 5:バンプ 6:ノッチ
10:バイト切削装置 11:基台 12:供給カセット
13:搬送ロボット 13a:アーム 13b:ハンド
14:第1搬送装置 14a:吸着部
15:立設基台
16:第2搬送装置 16a:吸着部
17:洗浄装置 18:回収カセット 19:洗浄ノズル
20:位置決め手段
21:回転テーブル 22:ピン 23:軸部 24:モータ 24a:プーリ
25:ベルト 29:結晶方位センサ
30:基板部厚さ測定手段
31:リニアゲージ 31a:接触部 31b:先端部
32:サポートゲージ 32a:接触部 32b:先端部
33:フレーム 34:移動機構 35:支持基台 36:スライダ
40,40a:保持テーブル
41,41a:吸引通路 42,42a:枠体 43、43a:切削屑落とし込み部
44,44a:保持部 45,45a:保持面 46,46a:基準ピン
47,47a:基準面 48:カバー 49:移動基台
P1:着脱位置 P2:切削領域
U:上流側 D:下流側
50:被加工物厚み検出手段
51:基準面高さ位置検出器 51a:本体 51b:接触ピン 51c:接触点
52:被加工物高さ位置検出器 52a:本体 52b:接触部 52c:平坦面
55:フレーム
60:切削手段 61:スピンドルハウジング 62:スピンドル 63:モータ
64:バイトホイール 65:バイト
70:送り手段 71:ボールスクリュー 72:ガイドレール 73:モータ
74:移動基台
80:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を切削する切削刃を含むバイトホイールと該バイトホイールを該保持面と平行な面で回転させるスピンドルとからなる切削手段とを備えたバイト切削装置であって、
該保持テーブルは、被加工物を保持する該保持面を含む保持部と、
該保持部を囲繞するとともに該保持部の外周側が該保持面より低く形成された切削屑落とし込み部を有する枠体と、
該切削屑落とし込み部に配設され該切削屑落とし込み部から突出して該保持面と同じ高さ位置の基準面を有する基準ピンと、からなり、
該保持テーブルで保持された被加工物の上面高さ位置を検出するとともに該基準ピンの該基準面の高さ位置を検出することで被加工物厚みを検出する厚み検出手段とを備え、
該基準ピンは、該バイトホイールの回転方向上流側に配設されたバイト切削装置。
【請求項2】
前記厚み検出手段は、
前記保持テーブルに保持された被加工物の上面高さ位置を検出する被加工物高さ位置検出器と、
前記基準ピンの前記基準面高さ位置を検出する基準面高さ位置検出器と、
を有する請求項1に記載のバイト切削装置。
【請求項3】
前記被加工物高さ位置検出器は、被加工物の上面に接触する接触面を含む被加工物接触部を有し、被加工物の上面と面接触して被加工物の上面高さ位置を検出し、
前記基準面高さ位置検出器は、前記基準面に接触する基準面接触ピンを有し、該基準面と点接触して該基準面の高さ位置を検出する請求項2に記載のバイト切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−22673(P2013−22673A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158893(P2011−158893)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】