説明

バレル研磨機用バレルケース

【課題】バレルの着脱が簡単且つ迅速に行うことができ、しかも研磨中にガタツキ音の発生もないバレル研磨機用バレルケースを提供する。
【解決手段】バレル50を装入可能なバレルケース30に、このバレルケース30の回転軸心に対して半径方向に移動可能なスライダー36を設け、さらにスライダー36にクランプ爪37とガイドピン38を設け、その一方でガイドピン38にガイドピン38が挿通した長穴を有するガイド盤40を回転可能に設けてある。またバレルケース30にはバレル50を支持する補強リング46を設ける。バレル50を装入すると、補強リング46でバレルの段差部51aが支持される。次にガイド盤40を回転すると、長穴に沿ってガイドピン38とスライダー36が前記半径方向に移動し、バレル50の係止部51bにクランプ爪37が係止してバレル50を確実に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレル研磨の分野で使用され、バレルを迅速、確実に着脱できるバレル研磨機用バレルケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバレルケース(特公昭46−1960号公報参照)は、図9〜11に示すように、図10のバレル8を図9のバレルケース1の口部より押し込み、その後、バレルの鈎部9、9’がバレルケースの突起4、5に当接するまでバレルを回転し、スプリング6の反力でバレルケース1内に掛止していた。詳述すると、図11のようにバレル8の外壁端には切欠部11が設けてあり、バレル8の押し込み時は、この切欠部11と前記突起4、5を摺動させながら行う。続いてバレル8の底がバレルケース1の底部に当たったら、バレルを約15度回転してバレル8の外壁に設けた鈎部9、9’とバレルケース1の内壁に設けた突起4、5とを当接させる。そして押し込み力を開放すると、スプリング6の反力によりバレル8が押出され、鈎部9、9’と突起4、5が掛止して、バレル8がバレルケース1内に確実に保持された。
【0003】
しかし、従来のバレルケースには次のような問題があった。即ち、作業者はバレル8を手で持ってバレルケース1内へ押し込み、その後、押し込み力を維持したまま約15度回転する必要があった。この際、スプリング6の反力は相当に大きいため、装着作業は作業者にとって大きな負担となっていた。同様に、バレル研磨が終わってバレル8を取り出す場合も、前記と逆の動作を行うため、相当な労力を強いられた。通常、このバレルケースが用いられるバレル研磨機は、公転するターレット上に等間隔に4個のバレルケースを有するため、作業者は前記着脱作業を4回繰り返さなければならず、その負担はいっそう大きなものとなっていた。
【0004】
またバレル8の掛止は、バレルケースの3箇所に設けた突起4、5と、対するバレルの鈎部9、9’で行う。これらを掛止可能とするには互いに若干の遊嵌構造とする必要がある。一方でバレル研磨中は、研磨機の自転及び公転作用により、バレルの半径方向に揺動作用が生じる。そのため、バレル8がバレルケース1内で微振動をしてガタツキ音が生じることがあった。この度重なる微振動によって、時には突起4、5や鈎部9、9’が偏磨耗してバレル8やバレルケース1の交換を余儀なくされた。
【特許文献1】特公昭46−1960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上より本発明が解決しようとする課題は、バレルの着脱が簡単且つ迅速に行うことができ、しかも研磨中にガタツキ音の発生もないことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、バレル50を装入可能なバレルケース30に、このバレルケース30の回転軸心の半径方向に移動可能なクランプ爪37とガイドピン38を設け、このガイドピン38にガイドピン38が挿通した長穴40aを有するガイド盤40を回転可能に設けて、このガイド盤40を回転することによって長穴40aに沿ってガイドピン38とクランプ爪37を前記半径方向に移動し、バレル50の係止部51bにクランプ爪37を係止してバレル50を固定することを特徴としたものである。
【0007】
次に請求項2の発明は、請求項1記載のバレル研磨機用バレルケースにおいて、ガイド盤40を回転することによって長穴40aに沿ってガイドピン38とクランプ爪37を前記半径方向に移動し、バレル50の係止部51bにクランプ爪37が最も接近する上死点を越えた位置でバレル50を固定することを特徴としたものである。
【0008】
次に請求項3の発明は、請求項1又は2記載のバレル研磨機用バレルケースにおいて、バレルケース30にバレル50を支持する支持体46を設け、さらにクランプ爪37にバレルケース30の回転軸心に向けた傾斜面37aを付けて、支持体46とクランプ爪の傾斜面37aによりバレル50を固定することを特徴としたものである。
【0009】
次に請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のバレル研磨機用バレルケースにおいて、バレルケース30とバレル50の互いに当接する部位は、少なくともいずれか一方が弾性体であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、バレル50の着脱は、バレル50をバレルケース30に装入してガイド盤40を回転すれば、クランプ爪37がバレル50の係止部51bに係止してバレル50を固定するので、小さな力で作業が行なえ、簡単且つ迅速である。
【0011】
次に請求項2の発明によれば、バレル50の係止部51bにクランプ爪37が最も接近する上死点を越えてバレル50を固定するので、何らかの外力が働いてもクランプ爪が戻ることがなく、バレル50の固定が確実に行なえる。
【0012】
次に請求項3の発明によれば、バレル50の支持体46とクランプ爪の傾斜面37aにより、バレル50を垂直方向と水平方向から確実に固定できる。
【0013】
次に請求項4の発明によれば、バレルケース30とバレル50の互いに当接する部位は、少なくともいずれか一方が弾性体であるから、バレルの固定が小さい力で確実に行なえ、しかもガタツキ音が発生しないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いるバレル研磨機用バレルケースの構造を図1、2に沿って説明する。図1は、本発明のバレルケース30でバレル50を装着した一部正面断面図である。回転軸31は、不図示のバレル研磨機の公転するターレットに自転可能に取り付けられる。この回転軸31には基板リング32が結合され、基板リング32にケース基板33がボルト固定されている。ケース基板33の上面にはガイド34がボルト固定されるが、この例では4個のガイド34が取り付けられ、円周上に互いに60度、120度、60度、120度の間隔で位置している。各ガイド34に対して、スライド基体35が摺動可能となっており、スライド機体35にはスライダー36がボルト固定されている。そしてスライダー36には、バレル50を把持するクランプ爪37がボルト固定されている。なお、ガイドの取り付け個数は4個に限らず、状況に応じて適宜選択できる。
【0015】
一方でスライダー36には、ガイドピン38が、樹脂製の大径ワッシャー39、ガイド盤40の長穴40a(図2)、及び樹脂製の小径ワッシャー41を通してねじ込まれている。ガイドピン38の上部は小径ワッシャー41等の抜け防止のためのヘッド38aとなっていて、その下部からスライダー36へのねじ込み箇所までの範囲は摺動部38bとなっている。つまり、ガイド盤40を回した時にガイド盤40が滑りやすいように、摺動部38b、大径ワッシャー39、及び小径ワッシャー41でその滑りを許容するようになっている。
【0016】
前記ガイド盤40には、各ガイドピン38が挿通した直線状の長穴40aが穿設されて、ガイド盤40はこの長穴40aを介してガイドピン38に設けられている。その一方でガイド盤40にはボルトとナットを介して第一支柱42が2つ立設されている。第一支柱42の上端にはボルトで上部リング43が固定され、上部リング43にハンドル44がボルトとナットで固定されている。つまり、ハンドル44を回すと、上部リング43、第一支柱42を介してガイド盤40が回るようになっている。一方、前記ケース基板33には、ボルトとナットを介して第二支柱45が4つ立設され、その上端にはバレル50の段差部51aを支持する補強リング46(請求項の支持体46)がボルト固定されている。
【0017】
次に本発明に用いるバレル50について図3、4に沿って説明する。バレル50は、図3に示すように、バレル本体51と蓋60とから成る。バレル本体51は、円筒状にウレタン成型されたもので、上部にサポートリング52が取り付けられ、サポートリング52の下部には、前記補強リング46が当接する段差部51aとさらにその下方に前記クランプ爪37が係止する係止部51bが形成されている。係止部51bはこの例では、60度間隔で6箇所形成され、この内の4箇所でクランプ爪37が係止する。またバレル本体51の内壁部は6角形(図4)に形成されている。前記サポートリング52には、湾曲した板状部材53が2つ、ねじ止め固定され、その上端に水平状に取っ手54が取り付けられている。取っ手54には、締付レバー67を回り止めする固定突起55が2個設けられ、固定突起55が設けられた面は締付レバー67の掛止面54aとなっている。
【0018】
上記バレル本体51に被冠する蓋60の主要部は、蓋体61とバレル本体51側にウレタンライニング62が施行された物よりなる。蓋体61の上面にはハウジング63がボルト固定され、ここに押ネジ64が貫通して、その下端には押ネジ64がハウジング63から抜けないようにストッパー65が結合されている。また押ネジ64には螺送体66が螺合し、螺送体66に締付レバー67が結合され、押ネジ64を回すと締付レバー67が上下動して前記固定突起55で回り止めされるとともに掛止面54aに掛止されるようになっている。なお、押ネジ64の上部には押ネジを手で回せるように締付ハンドル68がボルト固定されている。
【0019】
次に前記バレル研磨機用バレルケースにバレルを着脱する動作説明をする。まず図3、4において、バレル50内に研磨石と被加工物、要すれば水、コンパウンドを投入する。次に蓋60をバレル本体51の開口部に被冠する。締付ハンドル68を回すと押ネジ64が螺送され、締付レバー67が上昇するとともに掛止面54aと固定突起55で止められて蓋60がバレル本体51に締付固定される。蓋60が完全に固定されたら、バレル50をバレルケース30に装入する。
【0020】
次に図1、2において、バレル50をバレルケース30に装入すると、バレルの段差部51aが補強リング46に支持されてこれ以上の装入が阻止される。次にハンドル44を回すと上部リング43、第一支柱42を介してガイド盤40が回転する。これによりガイド盤40の長穴40aに沿ってガイドピン38とスライダー36がガイド34上をケース基板33の回転軸心の半径方向に移動する。その結果、クランプ爪37が、弾性体であるバレル本体の係止部51bに食い込んでバレル50が確実に固定される。
【0021】
この装着状況を詳述すると、最初にバレル50を装入した状態は図5のようになっている。即ち、クランプ爪37は開いた状態(図5b)で、ガイドピン38は長穴40aの右端に位置し、ケース基板33の軸心からガイドピン38の軸心までの直線と長穴40aの軸線とでなす角度αはα>90度となっている(図5a)。次にハンドル44を回してガイド盤40を回転すると、ガイドピン38とスライダー36がガイド34に沿って半径方向に移動する。すると、α=90度でクランプ爪37はバレル50に最も食い込み(上死点)、最大のクランプ力を発揮する(図6)。さらにガイド盤40を回転すると、ガイドピン38は長穴40aの左端に位置し、角度α<90度となる(図7)。この時のクランプ力はα=90度の時より若干弱まるが、角度αが90度よりも小さくなることから、長穴40aにかかるクランプ反力は、図7aにおいて、ガイド盤40を時計回りに動かすように働き、その結果、ガイドピン38は長穴40aの左端で固定される。しかも図6の状態に移行するために必要な外力は、バレル50を図7aと反対方向に公転しない限り一切働かないため、結果としてバレル50は完全に固定される。以上によりバレル50の装着が完了するが、バレル研磨が終了して取り外す場合は前記と逆の動作を行なえばよい。
【0022】
なお、バレル50の固定力は補強リング46の高さを変えることによって調整可能である。つまりバレル50の固定力は、補強リング46に支持されたバレル50を、バレルケース30の回転軸心方向で且つ下方に向けた傾斜面37aによって、下方(垂直方向)と軸心方向(水平方向)に押圧するので、補強リング46の高さを高くすれば、より強固な固定力となり、逆に低くすれば、固定力は弱まるのである。また補強リング46によりバレル50の装入時の位置を規制することもできる。
【0023】
さらにガイドピン38に保持されたガイド盤40の回転中心は特に定めない構造としてあるが、このようにすることによって、バレル50の装入位置が若干ずれても、クランプ爪37の片当たりが防止され、バレル50が確実に固定されるとともにガタツキ音の発生もないという効果がある。
【0024】
<他の実施の形態>
上記実施形態ではバレル50を弾性体としたが、例えばバレル50を金属製の筐体とし、クランプ爪37や補強リング46の当接部位だけをウレタンなどの弾性体としても良い。またバレル50、クランプ爪37及び補強リング46の全ての当接部位を弾性体としても良い。さらに補強リング46を支持する第二支柱45自身を弾性体(例えばウレタン製の支柱や支柱にバネを設けて、その付勢力によってバレル50を支持する)構造としても良い。また支持体46が図2のような環状ではなく、ケース基板33の上面に直接取り付けて、バレル50の底面を支持する円筒体としても良い。この場合、バレル50には段差部51aは不要となる(図8)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】バレルをバレルケースに装着した状態を示す正面断面図
【図2】バレルケースの一部部品を取り除いた平面図
【図3】バレルの一部を断面とした正面図
【図4】バレルの一部蓋を切り欠いた平面図
【図5】バレルをバレルケースに固定する前の状態を示した模式図
【図6】バレルをバレルケースに固定して上死点となった模式図
【図7】バレルをバレルケースに完全に固定した模式図
【図8】他の実施例のバレルをバレルケースに装着した状態を示す正面断面図
【図9】従来技術のバレルケースの断面図
【図10】同じく蓋付バレルの側面図
【図11】図10の矢視F−F’における断面図
【符号の説明】
【0026】
30 バレルケース
31 回転軸
32 基板リング
33 ケース基板
34 ガイド
35 スライド基体
36 スライダー
37 クランプ爪
37a 傾斜面
38 ガイドピン
39 大径ワッシャー
40 ガイド盤
40a 長穴
41 小径ワッシャー
42 第一支柱
43 上部リング
44 ハンドル
45 第二支柱
46 補強リング(支持体)
50 バレル
51 バレル本体
51b 係止部
52 サポートリング
53 板状部材
54 取っ手
54a 掛止面
55 固定突起
60 蓋
61 蓋体
62 ウレタンライニング
63 ハウジング
64 押ネジ
65 ストッパー
66 螺送体
67 締付レバー
68 締付ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル50を装入可能なバレルケース30に、このバレルケース30の回転軸心の半径方向に移動可能なクランプ爪37とガイドピン38を設け、このガイドピン38にガイドピン38が挿通した長穴40aを有するガイド盤40を回転可能に設けて、このガイド盤40を回転することによって長穴40aに沿ってガイドピン38とクランプ爪37を前記半径方向に移動し、バレル50の係止部51bにクランプ爪37を係止してバレル50を固定することを特徴としたバレル研磨機用バレルケース。
【請求項2】
請求項1記載のバレル研磨機用バレルケースにおいて、ガイド盤40を回転することによって長穴40aに沿ってガイドピン38とクランプ爪37を前記半径方向に移動し、バレル50の係止部51bにクランプ爪37が最も接近する上死点を越えた位置でバレル50を固定することを特徴としたバレル研磨機用バレルケース。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバレル研磨機用バレルケースにおいて、バレルケース30にバレル50を支持する支持体46を設け、さらにクランプ爪37にバレルケース30の回転軸心に向けた傾斜面37aを付けて、支持体46とクランプ爪の傾斜面37aによりバレル50を固定することを特徴としたバレル研磨機用バレルケース。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のバレル研磨機用バレルケースにおいて、バレルケース30とバレル50の互いに当接する部位は、少なくともいずれか一方が弾性体であることを特徴としたバレル研磨機用バレルケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−21260(P2006−21260A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199799(P2004−199799)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(396019631)株式会社チップトン (33)
【Fターム(参考)】