説明

パターン検査装置および方法

【課題】検査対象パターン画像と、設計データ等の検査対象パターンを製造するために使用するデータを用いて検査対象パターンを検査するパターン検査装置および方法を提供する。
【解決手段】検査対象パターン画像と検査対象パターンを製造するために使用するデータを用いて検査するパターン検査装置であって、データから線分もしくは曲線で表現された基準パターンを生成する生成部11と、検査対象パターン画像を生成する画像生成装置7と、検査対象パターン画像のエッジを検出し、検査対象パターン画像のエッジと線分もしくは曲線で表現された基準パターンとを比較することにより、検査対象パターンを検査する検査部12とを備え、データに基づいて製造された半導体デバイスから欠陥情報を得て、得られた欠陥情報から、データを構成する同じ幾何学情報に関連する繰り返し発生する欠陥を認識する繰り返し欠陥認識部25を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査装置および方法に関し、より具体的には、例えば、設計データに基づき製造された、半導体集積回路(LSI)や液晶パネルおよびそれらのホトマスク(レチクル)などの微細パターンを検査するためのパターン検査装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造工程におけるウェーハのパターン検査、あるいはそのパターン形成用のホトマスクのパターン検査には、ダイ・ツー・ダイ(die to die)比較方法を用いた光学式パターン検査装置が使われている。このダイ・ツー・ダイ比較方法は、検査対象のダイと呼ばれる半導体デバイスとその近接ダイの同じ位置から得られる画像どうしを比較することで欠陥を検出する方法である。
【0003】
一方、近接ダイの存在しないレチクルと呼ばれるホトマスクの検査には、ダイ・ツー・データベース(die to database)比較と呼ばれる方法が使用されている。この方法は、マスクデータを画像に変換してダイ・ツー・ダイ比較方法で用いた近接ダイの画像の代わりとし、前述同様の検査をする方法である。マスクデータとは設計データにホトマスク用の補正を施して得られるデータである。当該技術は、たとえば米国特許第5563702号公報“Automated photomask inspection apparatus and method”に記載されている。
【0004】
しかし、ダイ・ツー・データベース比較方法をウェーハ検査に使用すると、実際にウェーハに形成されたパターンのコーナーラウンドが欠陥として検出される。ホトマスクの検査では、マスクデータから変換された画像にスムージングフィルタでコーナーラウンドをもたせる前処理でコーナーラウンドを欠陥として検出しないようにしている。しかしながら、ウェーハ検査では、この前処理によるコーナーラウンドは、ウェーハに形成されたそれぞれのパターンのコーナーラウンドに等しくないので、コーナーラウンドを欠陥として検出しないようにできないことがある。そこで、この違いを無視するように許容パターン変形量を設定すると、コーナー以外に存在する微少欠陥を検出できないという問題が発生している。
【0005】
ホトマスクはマスクデータに可能な限り一致する必要があるので、上記の問題はダイ・ツー・データベース比較ホトマスク検査では致命的ではない。よって、現在、ダイ・ツー・データベース比較ホトマスク検査が実用化されている。しかしながら、ウェーハに形成されたパターンは電気特性が保証される限りパターン変形が許されているので、上記の問題はダイ・ツー・データベース比較ウェーハ検査では致命的である。この許容パターン変形量はかなり大きい。また、実際に、ステッパーの露光条件の違いなどに起因して上記のパターン変形が発生している。よってダイ・ツー・データベース比較ウェーハ検査は実用化されていない。
【0006】
半導体集積回路生産での問題に注目すると、ゴミなどに起因するランダム欠陥よりも繰り返し発生する欠陥が重要視されている。繰り返し発生する欠陥(システマティック欠陥)とは、ホトマスク不良などを原因としてウェーハ上の全ダイにおいて繰り返し発生する欠陥と定義される。繰り返し発生する欠陥は検査対象のダイおよびその比較対象の近接ダイの両方に発生しているため、ダイ・ツー・データベース比較では検出できない。ゆえに、ダイ・ツー・データベース比較方式でのウェーハ検査が必要とされている。
【0007】
そこで、ダイ・ツー・データベース比較ウェーハ検査は、計算コストなどで問題があり実用化には至っていないが、設計データとウェーハ画像を使う検査方法が提案されている。たとえば、NEC技報Vol.50 No.6/1997の「電子ビームテスタを用いたロジックLSIの自動故障箇所トレース法」がある。この文献では、配線エッジのX,Y軸へのプロジェクションを用いる方法、配線コーナーに着目した方法、遺伝的アルゴリズムを応用した方法が記述されている。また、この文献で使用した方法として、エッジを直線近似した後に閉領域を抽出し、この閉領域を使うマッチング方法が説明されている。しかし、これらいずれの方法も高速検査に使用可能な検査速度を実現できず、さらに、パターン変形量を検出しながらマッチングすることができない。
【0008】
また現在では、欠陥を含む画像を使用する自動欠陥種分類(Automatic Defect Classification:ADC)が使われている。しかし、この方法では欠陥が回路のどの部分を破壊しているか認識できないので、致命的欠陥とそうでない欠陥の分類ができない。
【0009】
さらに、ダイ・ツー・ダイ比較での検査で得られる欠陥の位置は、検査装置のステージ精度および画像生成装置の精度に起因する誤差をもっており、その誤差は検査対象パターン線幅より10倍程度以上大きい。これらの誤差が原因で、欠陥位置を設計データに関連付けても、欠陥が設計データ上のどの位置に存在しているか分からない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5563702号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】NEC技報Vol.50 No.6/1997 「電子ビームテスタを用いたロジックLSIの自動故障箇所トレース法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、半導体集積回路の線幅はリソグラフィー工程で使用する光源波長を大きく下回るようになってきている。このようなリソグラフィー工程には、OPC(Optical Proximity Correction、光近接効果補正)パターンを付加する方法が使用されている。この方法は、設計データにOPCパターンを付加して生成したマスクデータを使用して製造されたホトマスクを用い、このホトマスクを使用して製造されるウェーハ上のパターンを設計データに可能なかぎり一致させることができる。OPCパターンを付加することは、ホトマスクを補正する最も重要な技術の一つである。
【0013】
OPCパターンがウェーハ上に形成されたパターンの補正として有効に作用していないとシステマティック欠陥が発生するが、ダイ・ツー・ダイ比較ウェーハ検査ではこの欠陥は検出できない。この解決として、許容パターン変形量を考慮して、ウェーハに形成されたパターンと設計データとを比較検査する方法が必要とされている。
【0014】
また、システムオンチップ(system-on-a-chip:SoC)生産工程などの多品種少量生産工程では、短納期が求められている。この生産工程では、最終検査である電気的検査でシステマティック欠陥を発見しても、短納期に応えられない場合がある。この対策として、リソグラフィー工程ごとにウェーハ上に形成されたパターンと設計データとの差異を検査することが必要とされる。この検査方法では、電気特性に影響しないパターン変形を許容パターン変形量として設定しておき、許容パターン変形量以上の変形を検出する必要がある。
【0015】
また、OPCパターンの評価として、リソグラフィ・シミュレータにより設計データとOPCパターンが付加されたマスクデータから得られたシミュレーションパターンとの比較検査が行われている。リソグラフィ・シミュレータはデバイス全体の検証が可能であるが、シミュレーションパターンは、必ずしも実際のパターンと等しくはない。また、リソグラフィ・シミュレータではOPCパターン以外の問題に起因する欠陥が検出できない。このような欠陥としてホトマスクに存在するランダム欠陥、ステッパーの歪などがある。
【0016】
さらに、このシミュレーションの正当性を検証するために、リソグラフィ・シミュレータが出力したシミュレーションパターンと実際にウェーハ上に形成されたパターンの画像との比較検討手段が必要とされている。また、設計データに対するパターン変形量を厳密に設定することにより、回路設計上の技術を向上させることがますます重要になっている。
【0017】
現在、半導体集積回路の製造工程における線幅管理用に、CD−SEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope)が用いられている。CD−SEMは、プロファイル(ラインプロファイル)を使って指定された位置にある直線形状パターンの線幅を自動的に測定するものである。CD−SEMを使ってステッパーの露光条件を管理するために、1ロットごとに、数枚のウェーハ上の数ショットの数ヶ所が測定される。
【0018】
半導体集積回路の製造工程における管理項目としては線幅以外にも、配線終端の縮み、孤立パターンの位置なども重要であるが、CD−SEMの自動測定機能は1次元対応で線幅など長さしか測定できない。したがって、これら2次元形状は、CD−SEMや他の顕微鏡から取得された画像を使って操作者が手動で検査している。
【0019】
孤立パターンには、ホールパターンと島パターンがある。島パターンはホールパターンのネガであることが多い。また、ホールパターンには、コンタクトホール/ビアホールとテストパターンがある。
【0020】
OPCパターンは、ゲート線幅の線幅を確保するのはもとより、コーナーや孤立パターンの形状形成にも重要な役目を担っている。またさらに、動作周波数の向上により現在では、ゲート線幅に加えて、エンドキャップと呼ばれるゲートパターンの終端や、フィールドエクステンションと呼ばれるゲートパターンの付け根の形状管理も重要になってきている。
【0021】
このような2次元パターンの検査は、製造工程での抜き取り検査でも、試作段階でも重要であり、特に試作段階では、ウェーハ上に形成された全パターンの検査が必要とされる。しかし、現在は、2次元形状の管理は人的作業により実施され、完全に実施されてはいない。この問題を解決するために、自動化されたダイ・ツー・データベース比較ウェーハ検査が求められている。
【0022】
これらの自動化の要請の具体的なものとして、以下の課題があげられる。
(1)検査対象パターンの線幅の1つの測定値の誤差が、プロセス条件の管理値の許容誤差に近づいてきた。検査対象パターンの線幅の測定値の平均値を使って、検査対象パターンの線幅の測定値の精度を向上する必要がある。
【0023】
(2)プロセス条件の変動が引き起こすウェーハの位置に依存する検査対象パターンの線幅の変動がより大きくなってきた。ウェーハ上の数ショットの数ヶ所の検査対象パターンの線幅の測定値では、前記の変動を管理するには不十分であり、数多くの検査領域に存在する検査対象パターンから検査対象パターンの線幅の測定値を得る必要がある。
【0024】
(3)プロセス条件の変動が引き起こす検査対象パターンの線幅の設計値に依存する検査対象パターンの線幅の変動がより大きくなってきた。ウェーハ上の数ショットの数ヶ所から得られるショットの数ヶ所から得られる検査対象パターンの線幅の測定値では前記の変動を管理するには不十分であり、数多くの異なる検査対象パターンの線幅の設計値をもつ検査対象パターンから検査対象パターンの線幅の測定値を得る必要がある。検査対象パターンの線幅設計値以外で検査対象パターンの線幅の変動に関係する項目は、検査対象パターンに対応する設計データのパターンの方向、検査対象パターンに対応する設計データのパターンの種類、検査対象パターンと近接するパターン間のスペ−ス幅の設計値もしくは、前記検査対象パターンに対応する設計データのパターンの近傍に存在するパターンの密度などである。
【0025】
(4)検査対象パターンの線幅の設計値の範囲に対応する測定値から統計量を得ると、異なる検査対象パターンの線幅の設計値に対応する分布が融合するので統計量の精度が低下する。
【0026】
(5)エッチングプロセス後の半導体デバイスから得られた測定値から得た統計量は、半導体デバイスの性能を管理する数値である。エッチングプロセス後の半導体デバイスから得られた測定値から得た統計量の成分には、エッチングプロセスの前の半導体デバイスが持つ成分とエッチングプロセスの効果の成分を含んでいる。より精度を高くエッチングプロセスを管理するには、エッチングプロセス前の半導体デバイスが持つ成分を除くことが望ましい。
【0027】
(6)幅の広い配線パターンである検査対象パターンが、検査対象パターンの線幅の設計値とはかなり違った線幅で形成されても、この検査対象パターンを含む半導体デバイスが正常に動作することがある。半導体デバイスが、このような状態で製造された場合に、検査対象パターンの線幅の測定値が検査対象パターンの線幅の変形量の許容値を超えることがあるので、欠陥が検出されることがある。
【0028】
(7)円形ではないコンタクトホールで使用されるようになったので、コンタクトホールの幅と高さの測定値は、プロセス条件の管理に使用する測定値として精度不足になってきている。
【0029】
(8)検査対象パターンの線幅の測定値を、検査対象パターンの線幅、方向、種類、検査対象パターンと近接するパターン間のスペ−スもしくは、前記検査対象パターンの近傍に存在するパターンの密度の少なくとも一つを使って分類している。しかし、前述の方法では、設計データの形状に起因する検査結果を解析するためには、分類が粗い。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、本発明のパターン検査装置の第1の態様は、検査対象パターン画像と前記検査対象パターンを製造するために使用するデータを用いて検査するパターン検査装置であって、前記データから線分もしくは曲線で表現された基準パターンを生成する生成手段と、前記検査対象パターン画像を生成する生成手段と、前記検査対象パターン画像のエッジを検出する手段と、前記検査対象パターン画像のエッジと前記線分もしくは曲線で表現された基準パターンとを比較することにより、前記検査対象パターンを検査する検査手段とを備え、前記検査対象パターンを検査する検査手段は、指定された領域に存在する検査対象パターンから得られた測定値から得られる統計量を使って検査することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の好ましい態様は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記得られた統計量を使って、前記検査対象パターンを製造するときに使用する条件を最適化することを特徴とする。
【0032】
また、本発明の好ましい態様は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記測定値として、検査対象パターンの線幅もしくはスペース幅の測定値、検査対象パターンから得られる最大空円の測定値、最小包含長方形の測定値うち、少なくとも一つを使うことを特徴とする。
【0033】
また、本発明の好ましい態様は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記測定値と前記測定値に対応する前記データから得られる値の差を使って統計量を得ることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の好ましい態様は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記得られた統計量として、平均値、標準偏差、最大値と、最小値のうち少なくとも一つを使うことを特徴とする。
【0035】
また、本発明の好ましい態様は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記指定された領域として、ウェーハ上のショット、前記ウェーハ上のダイ、前記ショットの一部分もしくは、前記ダイの一部分のうち少なくとも一つを使うことを特徴とする。
【0036】
また、本発明の好ましい態様は、請求項6に記載のパターン検査装置において、前記指定された領域として、一辺が1μm以上の領域を使うことを特徴とする。
【0037】
また、本発明の好ましい態様は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記測定値を、前記検査対象パターンに関する情報を使って分類し、前記分類した測定値から統計量を得ることを特徴とする。
【0038】
また、本発明の好ましい態様は、請求項8に記載のパターン検査装置において、前記検査対象パターンに関する前記情報として、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの線幅もしくはスペース幅、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの方向、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの種類、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの近傍に存在するパターンから得られる情報のうち少なくとも一つを使うことを特徴とする。
【0039】
また、本発明の好ましい態様は、請求項9に記載のパターン検査装置において、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの近傍に存在するパターンから得られる情報として、前記近傍から得られるスペ−ス幅もしくは線幅、前記近傍に存在するパターンの密度のうち少なくとも一つを使うことを特徴とする。
【0040】
また、本発明の好ましい態様は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記検査手段は、前記検査対象パターンを製造するプロセスの前後で前記検査対象パターンから測定値を得て、同じ検査対象パターンから得られた測定値の差分値を得て、前記得られた差分値から統計量を得ることを特徴とする。
【0041】
また、本発明の好ましい態様は、請求項1に記載のパターン検査装置において、前記検査手段は、前記データを用いて製造された複数のダイもしくはショットの検査対象パターンから得られた測定値を得て、ダイもしくはショットの同じ場所に存在する検査対象パターンから得られた測定値の差分値を得て、前記得られた差分値から統計量を得ることを特徴とする。
【0042】
本発明のパターン検査装置の第2の態様は、検査対象パターン画像と前記検査対象パターンを製造するために使用するデータを用いて検査するパターン検査装置であって、前記データから線分もしくは曲線で表現された基準パターンを生成する生成手段と、前記検査対象パターン画像を生成する生成手段と、前記検査対象パターン画像のエッジを検出する手段と、前記検査対象パターン画像のエッジと前記線分もしくは曲線で表現された基準パターンとを比較することにより、前記検査対象パターンを検査する検査手段とを備え、前記検査対象パターンを検査する検査手段は、検査対象パターンの最大空円の測定値、最小包含長方形の測定値のうち少なくとも一つを使用して検査することを特徴とする。
【0043】
本発明のパターン検査装置の第3の態様は、検査対象パターン画像と前記検査対象パターンを製造するために使用するデータを用いて検査するパターン検査装置であって、前記データから線分もしくは曲線で表現された基準パターンを生成する生成手段と、前記検査対象パターン画像を生成する生成手段と、前記検査対象パターン画像のエッジを検出する手段と、前記検査対象パターン画像のエッジと前記線分もしくは曲線で表現された基準パターンとを比較することにより、前記検査対象パターンを検査する検査手段とを備え、前記検査対象パターンを検査する検査手段は、前記検査手段で得られた結果に対応する前記データ、もしくは前記結果に対応する前記データを使って得られたシミュレーションパターンのうち少なくとも一つを使って得られた類似度を使って前記結果を分類することを特徴とする。
【0044】
本発明のパターン検査方法の第1の態様は、検査対象パターン画像を用いて検査するパターン検査方法であって、前記検査対象パターン画像を生成し、指定された領域に存在する検査対象パターンから測定値を得て、前記得られた測定値を前記検査対象パターンに関する情報を使って分類し、前記分類された測定値から統計量を得て検査することを特徴とする。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)一辺が1μm以上の検査領域に存在する検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所が自動的に設定できる。検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所が非常に多いので、本実施例を現実に実行するためには、検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所を自動的に設定しなければならない。検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値の平均値は、一ヶ所から得られる1つの検査対象パターンの線幅の測定値より高い精度である。得られた検査対象パターンの線幅の測定値の平均値は、より精度のよいプロセス条件の管理値になる。さらに、検査対象パターンの線幅の測定値の標準偏差、最大値、最小値を使えば、プロセス条件の原因がより特定しやすくなる。
【0046】
(2)ショット内に配置された数多くの検査領域に存在する検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所が自動的に設定できる。検査領域が増えるにつれて検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所は、更に多量になるので、自動設定の必要性がより高くなる。ショット内に配置された数多くの検査領域に存在する検査対象パターンから得られた検査対象パターンの線幅の測定値の統計量を使用すれば、プロセス条件の変動が引き起こすウェーハの位置に依存する検査対象パターンの線幅の変動がより精度よく解析できる。
【0047】
(3)検査対象パターンの線幅の変動に関係する項目ごとに検査対象パターンの線幅を分類して統計量を得る。プロセス条件の変動によって、前記の統計量の変動が異なる場合は、前記の統計量の変動からプロセス条件の変動の原因の特定が可能になる。
【0048】
(4)検査対象パターンの線幅の設計値の範囲に対応する測定値から統計量を得ると、異なる検査対象パターンの線幅の設計値に対応する分布が融合するので統計量の精度が低下する。この対策として、検査対象パターンの線幅の測定値と前記測定値に対応する設計値の差を使用すれば、設計値の違いが補正されるので統計量の精度が低下しない。得られた統計量を使えば、より少ない統計量でプロセス条件の変動の管理が出来るようになる。
【0049】
(5)エッチングプロセス前の半導体デバイスから得られる検査対象パターンの線幅の分布を含まないエッチングプロセスの効果による分布の変化が得られるので厳密にエッチングプロセスの管理ができる。
【0050】
(6)欠陥として認識する必要がない線幅の違いを無視できるので、欠陥数を低減できる。
【0051】
(7)コンタクトホールから得られた外形が円形状で近似できない場合に、コンタクトホール製造用のプロセス条件の管理により適した測定値が得られる。
【0052】
(8)検査結果を、設計データの形状によって自動的に分類することができる。分類した結果から、検査結果に関係する検査対象パターンの形状の特定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態におけるパターン検査装置の画像生成装置の基本構成を示す模式図である。
【図2】設計データから得られた基準パターンの例を示す模式図である。
【図3】設計データに基づいて製造された検査対象パターンの画像の例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態におけるパターン検査装置が行う検査処理の概要を示す模式図である。
【図5】図1で示す画像生成装置の2次電子検出器で検出した2次電子の強度を示す模式図である。
【図6】図5に示すパターンを90度回転させ、このパターンのプロファイルを取得した場合の2次電子の強度を示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態におけるパターン検査装置によりパターン検査を行う場合の走査領域を示す模式図である。
【図8】検査対象パターンについて、横方向(X方向)の走査を行った場合のエッジ検出精度を示す模式図である。
【図9】検査対象パターンについて、上方向に向かって縦方向(Y方向)の走査を行った場合のエッジ検出精度を示す模式図である。
【図10】検査対象パターンについて、双方向の走査を行う場合の模式図である。
【図11】45度、もしくは−45度方向の走査方法を示す模式図である。
【図12】0度方向の走査で得られた検査対象パターン画像もしくは90度方向の走査で得られた検査対象パターン画像を用いて検査されるべき線分の例を示す模式図である。
【図13】ピクセルの位置を置き換えることによって回転された検査対象パターン画像を得る方法を示す模式図である。
【図14】ピクセルの位置を置き換えることによって回転された検査対象パターン画像を得る別の方法を示す模式図である。
【図15】本発明の実施形態におけるパターン検査装置の基本構成例を示す模式図である。
【図16】本発明の実施形態におけるパターン検査装置の機能ブロック図を示す模式図である。
【図17】本発明の別の実施形態におけるパターン検査装置の機能ブロック図を示す模式図である。
【図18】基準パターンの補正例を示す模式図である。
【図19】基準パターンの例を示す模式図である。
【図20】図19の基準パターンをピクセルごとのエッジに変換した例を示す模式図である。
【図21】曲線を含む基準パターンをエッジベクトルに変換した例を示す模式図である。
【図22】本発明の実施形態におけるレシピ登録処理の例を示すフローチャートである。
【図23】逐次検査を示す模式図である。
【図24】ランダム検査を示す模式図である。
【図25】本発明の実施形態における基本検査処理の例を示すフローチャートである。
【図26】繰り返し発生する欠陥を認識する場合の検査処理の例を示すフローチャートのサブブロックである。
【図27】繰り返し発生する欠陥を認識する場合の検査処理の例を示すフローチャートのメインブロックである。
【図28】検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある検査対象パターン画像の例を示す模式図である。
【図29】図28の画像から検出したエッジを示す模式図である。
【図30】エッジが明るく検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがない検査対象パターン画像の例を示す模式図である。
【図31】図30の画像から検出したエッジを示す模式図である。
【図32】1次元の検査対象パターン画像のエッジの強度の例を示す模式図である。
【図33】図32のエッジを膨張させた例を示す模式図である。
【図34】1次元の基準パターンのエッジの例を示す模式図である。
【図35】図32のエッジを膨張させた別の例を示す模式図である。
【図36】1次元の基準パターンのエッジの別の例を示す模式図である。
【図37】図32のエッジを膨張させた別の例を示す模式図である。
【図38】スムージングフィルタの例を示す模式図である。
【図39】2次元の検査対象パターン画像のエッジの強度の例を示す模式図である。
【図40】図39のエッジを膨張させた例を示す模式図である。
【図41】図39のエッジを膨張させた別の例を示す模式図である。
【図42】2次元の検査対象パターン画像のエッジベクトルの例を示す模式図である。
【図43】図42のエッジベクトルを膨張させた例を示す模式図である。
【図44】図42のエッジベクトルを膨張させた別の例を示す模式図である。
【図45】図19の基準パターンをピクセル単位のエッジベクトルで表した図であり、図20の別の図である。
【図46】マッチングを説明するための図である。
【図47】図43と図45とを重ね合わせた模式図である。
【図48】図43と図45とを重ね合わせた別の模式図である。
【図49】(a)は基準パターンの例を示す模式図であり、(b)は検査対象パターン画像の例を示す模式図である。
【図50】線幅とスペース幅が同じ場合の例を示す模式図である。
【図51】(a)は基準パターンの例を示す模式図であり、(b)は(a)の基準パターンと検査対象パターン画像との関係の例を示す模式図である。
【図52】長方形が周期的に並んだパターンのマッチング評価値の計算方法を示す模式図である。
【図53】ユニークパターンの対であるネガティブパターンを使ってマッチング評価値を計算する方法を示す模式図である。
【図54】第1のエッジ検出で検出されたエッジの水平軸垂直軸への射影データを使ったマッチング方法を示す模式図である。
【図55】マッチング誤差値Epmの計算結果を示す模式図である。
【図56】マッチング誤差値Epmの中から選ばれたマッチングに適したシフト量を示す模式図である。
【図57】マッチング誤差値Epmを計算する方法を示す模式図である。
【図58】ホールパターンのマッチングの第1の方法を示す模式図である。
【図59】ホールパターンのマッチングの第2の方法を示す模式図である。
【図60】検査対象パターン画像のエッジと基準パターンのエッジとの対応づけの例を示す模式図である。
【図61】(a)は基準パターンのエッジの例を示す模式図であり、(b)は検査対象パターン画像のエッジの例を示す模式図である。
【図62】基準パターンのエッジの別の例を示す模式図である。
【図63】異常パターン変形量を持った欠陥を認識する方法を示す模式図である。
【図64】ピクセルの輝度分布を使う欠陥の認識方法を示す模式図である。
【図65】輝度値に対する頻度の分布の例を示す模式図である。
【図66】(a)は基準パターンのエッジ、および検査対象パターン画像のエッジの例を示す模式図であり、(b)は(a)に示すエッジ間のy=y0におけるベクトルd(x,y0)のX成分を回帰直線D(x)で近似した例を示す模式図である。
【図67】(a)は基準パターンのエッジ、および検査対象パターン画像のエッジの別の例を示す模式図であり、(b)は(a)に示すエッジ間のy=y0におけるベクトルd(x,y0)のX成分を回帰直線D(x)で近似した例を示す模式図である。
【図68】基準パターンの属性の例を示す模式図である。
【図69】終端のエッジプレイスメントエラーを示す模式図である。
【図70】孤立パターンのプレイスメントエラーを示す模式図である。
【図71】(a)は基準パターンのコーナーのエッジの例を示す模式図であり、(b)は検査対象パターン画像のコーナーのエッジの例を示す模式図である。
【図72】プロファイル取得区間の例を示す模式図である。
【図73】リソグラフィ・シミュレータで得られたシミュレーションパターンの外形を示す模式図である。
【図74】図72の一部(Bの部分)を拡大した模式図である。
【図75】図74の一部(Cの部分)を拡大した模式図である。
【図76】プロファイルの例を示す模式図である。
【図77】検出された第2のエッジを使って曲線近似(多角形近似を含む)を行い、検出された第2のエッジを連結した例を示す模式図である。
【図78】(a)はプロファイル取得区間の別の例を示す模式図であり、(b)は検査対象パターン画像の第1のエッジと第2の基準パターンとの関係の例を示す模式図である。
【図79】検査領域が4つの検査単位領域に分割されている場合を示す模式図である。
【図80】第1の半導体デバイスから得られた欠陥情報と第2の半導体デバイスから得られた欠陥情報を示す模式図である。
【図81】第1の半導体デバイスから得られた欠陥情報と第2の半導体デバイスの限定された部分から得られた欠陥情報を模式的に示す図である。
【図82】設計データの形状は同じパターンだが、異なったOPCパターンを持っているパターンの例を模式的に示す図である。
【図83】設計データに基づいて製造されたホトマスクパターンを複数もつホトマスクから製造された半導体デバイスの例を示す図である。
【図84】線幅検査用に適した基準パターンを設計データから自動的に抽出する規則を模式的に示す図である。
【図85】コーナーを持つ直線形状パターンを、コーナー部分で二つの長方形に分離する方法を模式的に示す図である。
【図86】スペース幅検査用に適した基準パターンを設計データから自動的に抽出する規則を模式的に示す図である。
【図87】線幅検査に適した基準パターンとスペース幅検査に適した基準パターンを使う検査方法を模式的に示す図である。
【図88】設計データのコーナー部分から線幅検査に適した基準パターンを得る手順を模式的に示す図である。
【図89】設計データのコーナー部分である曲線形状パターンの最小線幅検査の手順を模式的に示す図である。
【図90】Erosion演算を使用して設計データのコーナー部分である曲線形状パターンの最小線幅検査の手順を模式的に示す図である。
【図91】切断もしくは短絡しやすい部分の抽出方法を模式的に示す図である。
【図92】切断もしくは短絡しやすい部分の検査を行う手順を模式的に示す図である。
【図93】検査時の工程に関する基準パターンとその前後する工程に関する基準パターンとの論理積演算で得られた基準パターンを使用する検査方法を示す図である。
【図94】コンタクトホール/ビアホールに接する配線パターンの終端に対する許容パターン変形量の適応設定方法を模式的に示す図である。
【図95】接触面積を検査する方法を模式的に示す図である。
【図96】CD―SEMを使って検査対象パターンの線幅の測定値を得る位置の例を示す模式図である
【図97】検査対象パターンの線幅の測定値を得る検査領域の例を示す模式図である。
【図98】(a)は、全ての検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る例を示す模式図であり、(b)は、各ショット内の検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る例を示す模式図であり、(c)は、各検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る例を示す模式図である。
【図99】ゲートの両脇のスペース幅の例を示す模式図である。
【図100】検査対象パターンの近傍に存在するパターンの密度の例を示す模式図である。
【図101】検査対象パターンの線幅の測定値の分布を示す模式図である。
【図102】同じ半導体デバイスの位置であるが異なったショットの検査対象パターンの線幅の測定値の分布を示す模式図である。
【図103】(a)は、ショットごとの検査対象パターンの線幅の測定値の平均値の分布を示す模式図であり、(b)は、ショットごとの検査対象パターンの線幅の測定値の標準偏差の分布を示す模式図である。
【図104】コンタクトホールから得られる外形から得られる最大空円の測定値と、最小包含長方形の測定値を得る方法を示す模式図である。
【図105】コンタクトホールのCVD工程で欠陥が生じる例を示す模式図である。
【図106】欠陥の位置、クリッピングで使用される長方形、クリッピングされた設計データの例を示す模式図である。
【図107】クリッピングされた設計データのマッチングの例を示す模式図である。
【図108】クリッピングされた設計データ間の距離の例を示す模式図である。
【図109】マッチング後のクリッピングされた設計データ間の距離のテーブルの例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態について詳しく説明する。
【0055】
内容
1.概要
2.ハードウェア構成
2.1 画像生成装置の基本構成
2.2 画像生成装置の走査方法
2.3 パターン検査装置の基本構成
2.4 機能ブロック図
3.用語の説明
3.1 エッジ
3.2 基準パターン
3.3 レシピデータ
3.4 検査単位領域
3.5 検査結果
4.基本検査処理
4.1 第1のエッジ検出
4.1.1 第1のエッジ検出方法1
4.1.2 第1のエッジ検出方法2
4.2 直線形状パターンのマッチング方法
4.2.1 ユニークパターンを使うマッチング方法
4.2.2 ネガティブパターンを使うマッチング方法
4.2.3 エッジの水平軸垂直軸への射影データを使ったマッチング方法
4.3 幾何学情報を使う孤立パターンのマッチング方法
4.4 統計量を使う孤立パターンのマッチング方法
4.5 マッチング後の処理
4.6 第1の検査
4.6.1 異常パターン変形量を持った欠陥の認識方法
4.6.2 ピクセルの輝度分布を使う欠陥の認識方法
4.7 検査対象パターン画像から得られる特徴量を使った欠陥種の判定方法
4.8 検査単位領域全体から得られるパターン変形量
4.9 基準パターンの属性の抽出ルール
4.10 パターンの属性を使って欠陥を検出する方法
4.10.1 終端のエッジプレイスメントエラーを持った欠陥
4.10.2 直線部分、コーナーのエッジプレイスメントエラーを持った欠陥
4.10.3 孤立パターンのプレイスメントエラーを持った欠陥
4.10.4 孤立パターンの他の欠陥
4.10.5 コーナーの曲率異常欠陥
4.11 第2のエッジ検出
4.12 第2の検査
5.応用検査処理
5.1 繰り返し発生する欠陥の認識方法
5.1.1 第1の繰り返し発生する欠陥の認識方法
5.1.2 第2の繰り返し発生する欠陥の認識方法
5.1.3 第3の繰り返し発生する欠陥の認識方法
5.1.4 第4の繰り返し発生する欠陥の認識方法
5.2 領域検査方法
5.2.1 直線形状パターンの線幅検査方法、平均線幅検査方法、スペース幅検査方法、および平均スペース幅検査方法
5.2.2 曲線形状パターンの線幅検査方法、平均線幅検査方法、スペース幅検査方法、および平均スペース幅検査方法
5.2.3 切断もしくは短絡しやすい部分の検査方法
5.3 基準パターンの論理演算の結果を使用する検査方法
5.3.1 ゲート線幅検査方法
5.3.2 エンドキャップ検査方法
5.3.3 コンタクトホール/ビアホールに接する配線パターンの終端に対する許容パターン変形量の適応設定方法
5.3.4 接触面積の検査方法
5.4 検査対象パターンの線幅の測定値から得られた統計量を使ったプロセス条件の管理方法
5.5 検査対象パターンの個々の線幅の変化の管理方法
5.6 プロセス条件の管理に使用する孤立パターンから得られる測定値
5.7 設計データの類似度を使って検査結果を分類する方法
【0056】
1.概要
本発明の実施形態に係るパターン検査装置は、図1に示す画像生成装置7により得られた検査対象パターン画像を、基準パターンと比較して検査する。
【0057】
図2は、設計データから得られた基準パターンの例を示す模式図である。図3は、設計データに基づいて製造された検査対象パターンの画像の例を示す模式図である。図3に示すように、検査対象パターン画像には、短絡欠陥があったり、粒子付着による欠陥があったり、許容パターン変形量内の変形があったりする。特にコーナーには大きなコーナーラウンドがある。このように、検査対象パターン画像は、基準パターンとはかなり異なったものになる。
【0058】
図4は、本実施形態におけるパターン検査装置が行う検査処理の概要を示す模式図である。第1の検査処理では、まず、検査対象パターン画像から第1のエッジを検出する。次に、検出された第1のエッジと第1の基準パターンのエッジとを比較することにより、検査対象パターン画像と基準パターンとのマッチングを行う。マッチングを行った結果、シフト量S1が求まるので、このシフト量S1を用いて第1の基準パターンをシフトする。次に、検出された第1のエッジとシフトした第1の基準パターンのエッジとを比較することにより、検査対象パターンを検査する。この第1の検査では、検出された第1のエッジと第1の基準パターンのエッジとを比較することにより、パターン変形量を求め、求めたパターン変形量から欠陥を検出する。パターン変形量の1つとしてシフト量S2が求まる。
【0059】
次に、検査対象パターン画像から第2のエッジを検出するため、第2の基準パターンをシフト量S1+S2分シフトする。シフトした第2の基準パターンを用いて、検査対象パターン画像上でプロファイルを求め、第2のエッジを検出する。そして、検出された第2のエッジとシフトした第2の基準パターンのエッジとを比較することにより、検査対象パターンを検査する。この第2の検査においても、検出された第2のエッジと第2の基準パターンのエッジとを比較することにより、パターン変形量を求め、求めたパターン変形量から欠陥を検出する。パターン変形量の1つとしてシフト量S3が求まる。
【0060】
以上の方法により、検査対象パターン画像から、短絡欠陥、粒子付着による欠陥、パターン変形量を検出し、設計データの持つ属性などから欠陥やパターン変形量をクラス分けすることが可能になる。
【0061】
2.ハードウェア構成
【0062】
2.1 画像生成装置の基本構成
図1は、本発明の実施形態におけるパターン検査装置の画像生成装置の基本構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明のパターン検査装置における画像生成装置7は、照射系装置310と試料室320と2次電子検出器330とから構成されている。
【0063】
照射系装置310は、電子銃311と、電子銃311から放出された1次電子を集束する集束レンズ312と、電子線(荷電粒子線)を,X方向,Y方向に偏向するX偏向器313およびY偏向器314と、対物レンズ315とから構成されている。試料室320はX方向,Y方向に可動のXYステージ321を備えている。試料室320にはウェーハ搬送装置340によって試料であるウェーハWが搬出入されるようになっている。
【0064】
照射系装置310においては、電子銃311から放出された1次電子は集束レンズ312で集束された後に、X偏向器313およびY偏向器314で偏向されつつ対物レンズ315により集束されて試料であるウェーハWの表面に照射される。
【0065】
ウェーハWに1次電子が照射されるとウェーハWからは2次電子が放出され、2次電子は2次電子検出器330により検出される。集束レンズ312および対物レンズ315はレンズ制御装置316に接続され、このレンズ制御装置316は制御コンピュータ350に接続されている。2次電子検出器330は画像取得装置317に接続され、この画像取得装置317も同様に制御コンピュータ350に接続されている。2次電子検出器330で検出された2次電子強度が画像取得装置317によって検査対象パターン画像に変換される。歪みの無い最大の検査対象パターン画像を取得できる1次電子の照射領域を視野と定義する。
【0066】
前記X偏向器313およびY偏向器314は、偏向制御装置318に接続され、この偏向制御装置318も同様に制御コンピュータ350に接続されている。XYステージ321は、XYステージ制御装置322に接続され、このXYステージ制御装置322も同様に制御コンピュータ350に接続されている。またウェーハ搬送装置340も同様に制御コンピュータ350に接続されている。制御コンピュータ350は、操作コンピュータ360に接続されている。
【0067】
2.2 画像生成装置の走査方法
図5は、図1で示す画像生成装置の2次電子検出器330で検出した2次電子の強度を示す模式図である。図5は、検査対象パターンPについて1本の電子線をX方向に走査した場合の2次電子検出器330によって得られた2次電子の強度を示している。図5に示すように、エッジ効果により、検査対象パターンPのエッジから発生する2次電子の強度が、検査対象パターンPの中心部から発生する2次電子の強度より強い。また、検査対象パターンの左側から発生する2次電子の強度と右側から発生する2次電子の強度では2次電子の強度は対称ではない。例えば、電子線が検査対象パターンPに進入する側である図5の左側のエッジから発生する2次電子の強度より、電子線がパターンから進出する側である図5の右側のエッジ(反対側のエッジ)から発生する2次電子の強度が弱い。
【0068】
図6は、図5に示す検査対象パターンPを90度回転させ、この検査対象パターンPのプロファイルを取得した場合の2次電子の強度を示す模式図である。図6は、検査対象パターンPについてX方向に複数の電子線を走査することにより、2次電子検出器330で検出される2次電子の強度を図示したものである。図6に示すように、走査方向に近い方向を持つ検査対象パターンPのエッジでは図5に比べてエッジ効果を明瞭に得ることが難しい。
【0069】
図7は、本発明の実施形態におけるパターン検査装置によって検査対象パターンの検査を行う場合の走査領域を示す模式図である。図7において、点線で書かれている長方形は、3.4 検査単位領域で後述する検査領域である。検査領域の中に、実線で書かれている検査対象パターンPがある。検査領域は視野で分割して得られる検査単位領域ごとに検査される。走査領域は1回の走査によって走査される領域である。走査領域の最大の大きさは視野である。検査領域の境界内部の検査単位領域と走査領域は同じである。検査領域の境界を含む走査領域の場合は、走査領域で、かつ、検査領域である領域が検査単位領域になる。図7の一点鎖線で書かれている縦3つ横3つの計9つのブロックB1からB9は、走査領域を示している。
【0070】
検査対象パターン画像のエッジの近傍から得られるプロファイルのピークとボトムに差があるほどエッジ検出精度は高くなる。図8は、検査対象パターンについて横方向(X方向)の走査を行った場合のエッジ検出精度を示す模式図である。図8に示すように、横方向に検査対象パターンを走査した場合、図5と同様に縦方向のエッジについてのエッジ検出精度は良好であるが、横方向のエッジについては良好なエッジ検出精度が得られない。
【0071】
図9は、検査対象パターンについて上方向に向かって縦方向(Y方向)の走査を行った場合のエッジ検出精度を示す模式図である。図9に示すように、縦方向に検査対象パターンを走査した場合、横方向のエッジについてのエッジ検出精度は良好であるが、縦方向のエッジについては良好なエッジ検出精度が得られない。
【0072】
縦横方向のエッジがある図7の左下のブロックB7においては、縦横両方向のエッジについて良好なエッジ検出精度を得ようとすると、図8に示す横方向の走査と図9に示す縦方向の走査の2方向の走査が必要である。ブロックB7の右隣に示す横方向のエッジのみのブロックB8においては、図9に示す縦方向の走査が必要である。また、中段1番左に示す縦方向のエッジのみのブロックB4においては、図8に示す横方向の走査が必要である。これらの例では、検査対象パターンを構成するエッジの方向のすべてにより垂直になる走査方向が選択されている。このように、横方向、縦方向のいずれかの走査を行う、あるいは横方向および縦方向の2方向の走査が、基準パターンを構成するエッジの方向の分布を使って採択される。
【0073】
半導体集積回路(LSI)や液晶パネルの検査対象パターンの大部分は、横縦方向のエッジで構成されているために、これらの横縦方向のエッジを持つ検査対象パターン画像のエッジを精度良く検出するためには、検査対象パターンに横方向および縦方向の走査をする必要がある。
【0074】
図10は、検査対象パターンについて双方向の走査を行う方法の模式図である。図5を使って説明したように、電子線の進入側のエッジ(図5の左側のエッジ)が、反対側のエッジ(図5の右側のエッジ)に比べて2次電子の強度が弱く観測される。そこで、図10に示すように、走査方向を交互に逆転して検査対象パターン画像を取得する。すなわち、左方向と右方向の交互の走査を行って検査対象パターン画像を取得する。左方向走査の検査対象パターン画像で検査対象パターンの左側のエッジを計測し、右方向走査の検査対象パターン画像で検査対象パターンの右側のエッジを計測することにより、右側左側いずれのエッジにおいても良好なエッジ検出精度を得ることができる。
【0075】
図11(a)、図11(b)および図11(c)は、45度、もしくは−45度方向の走査方法を示す模式図である。図11(a)で示される横縦方向のエッジから成る検査対象パターンP1については図11(b)に示す45度方向、もしくは図11(c)に示す−45度方向の走査を1回行うことによって良好な縦横方向のエッジについてのエッジ検出精度を得ることができる。
【0076】
もし、図11(a)で示される45度方向のエッジから成る検査対象パターンP2があった場合、検査対象パターンP2に対する45度と−45度方向の2方向の走査を行う必要があるが、検査対象パターンP2に対する2方向の走査が必要とされる頻度は、縦横方向のエッジのみの検査対象パターンP1に対する1方向の走査が必要とされる頻度より少ないことが期待される。よって、一方向の走査の場合は、45度方向または−45度方向の走査がエッジ検出精度を得る方法として有効である。
【0077】
次に、45度方向と−45度方向の走査が実施される場合を説明する。検査対象パターンP2を成す右下方向(−45度)のエッジについての良好なエッジ検出精度は、図11(b)に示す45度方向の走査で得られるが、図11(c)に示す−45度方向の走査では、走査方向と検出すべきエッジが平行なので得られない。検査領域を−45度方向の走査で検査している場合は、検査対象パターンP2を含む検査単位領域を45度方向と−45度方向の走査で検査する。一般に、45度方向と−45度方向の走査が必要な頻度は、0度方向、90度方向の走査が必要な頻度に比べて少ない。
【0078】
図5から図11で説明したように、画像生成装置7は、以下の3方法のいずれかによって検査対象パターン画像を得る。
(1)走査方法1
0度、90度、45度あるいは−45度方向の1方向の走査
(2)走査方法2
0度と180度方向の交互の走査
(3)走査方法3
0度および90度方向の2方向の走査もしくは45度と−45度方向の2方向の走査
【0079】
座標系は、設計データと同じく、X軸を右方向、Y方向を上方向に取る。エッジ方向は、右手側が検査対象パターン内部になるような方向として定義する。図7のブロックB4には、縦方向のエッジが2本あるが、左側のエッジの方向が90度、右側のエッジの方向が270度となる。
【0080】
4.1 第1のエッジ検出で後述するように、第1のエッジは局所的な検査対象パターン画像から検出されたエッジである。この第1のエッジの方向は検出された時点で決められる。以下では、前記走査方法1から前記走査方法3で得られた検査対象パターン画像から第1のエッジを検出する方法を説明する。
【0081】
前記走査方法1である1方向の走査と前記走査方法2である交互の走査では、1枚の検査対象パターン画像からエッジを検出する。前記走査方法3である2方向の走査では、2枚の検査対象パターン画像からエッジを検出し、検出されたエッジ情報を融合させる。0度および90度方向の2方向の走査の場合は、0度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から45度から135度と、225度から−45度の間のエッジを抽出し、90度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から135度から225度と、−45度から45度の間のエッジを抽出し、両者を合成して1検査対象パターン画像から検出されたエッジとして扱う。
【0082】
45度および−45度方向の2方向の走査の場合は、45度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から90度から180度と270度から360度の間のエッジを抽出し、−45度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から0度から90度と180度から270度の間のエッジを抽出し、両者を合成して、1検査対象パターン画像から検出されたエッジとして扱う。
【0083】
4.11 第2のエッジ検出で後述するように、第2のエッジはプロファイル(1次元データ)から検出されたエッジである。この第2のエッジの方向はプロファイルが設定された時点で決められる。以下では、前記走査方法1から前記走査方法3で得られたプロファイルから第2のエッジを検出する方法を説明する。
【0084】
前記走査方法1である1方向の走査では、プロファイルは同一の検査対象パターン画像から求める。
前記走査方法2である0度、180度交互の走査では右側のエッジ(180度から360度のエッジ)を得るプロファイルを0度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から、左側のエッジ(0度から180度のエッジ)を得るプロファイルを180度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から求める。
【0085】
前記走査方法3である2方向の走査では、45度から135度と、225度から−45度の間のエッジを検出するプロファイルを0度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から、135度から225度と、−45度から45度の間のエッジを検出するプロファイルを90度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から求める。
【0086】
図12は、0度方向の走査で得られた検査対象パターン画像もしくは90度方向の走査で得られた検査対象パターン画像を用いて検査されるべき線分の例を示す模式図である。図12で示されるように、0度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から縦方向(90度または270度の方向)、左上方向(135度)、右下方向(−45度)の直線部分、コーナー、終端の線分を検査すれば良い。また、90度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から横方向(0度または180度)、右上方向(45度)、左下方向(225度)の直線部分、コーナー、終端の線分を検査すれば良い。
【0087】
45度および−45度の2方向の走査の場合は、90度から180度と270度から360度の間のエッジを検出するプロファイルを45度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から、0度から90度と180度から270度の間のエッジを検出するプロファイルを−45度方向の走査で得られた検査対象パターン画像から求める。
【0088】
このように、検査対象パターン画像のエッジは、複数の走査方向のうちの一方向で生成された検査対象パターン画像から検出される。選択された走査方向は、基準パターンのエッジにより垂直になる方向である。
【0089】
検査対象パターン画像が45度もしくは−45度方向の走査で得られた場合においては、設計データと検査対象パターン画像の間に回転が存在するので、その回転を補正する必要がある。回転補正の方法として、設計データを回転する方法が使用できるが、設計データを回転すると傾斜画像が最終出力となるので見難いという欠点がある。そこで、本実施例では検査対象パターン画像を回転する方法を採用した。しかしながら、X,Y方向に均等にサンプリングする走査をした場合に、その検査対象パターン画像を回転すると、ピクセル間の内挿値を回転した検査対象パターン画像の値として用いなければならない。この場合には、回転された検査対象パターン画像が内挿によってぼけたりする弊害があるので、本実施例では内挿を用いずに、ピクセルの位置を置き換えることによってのみ回転された検査対象パターン画像を得る方法を採用した。この方法を用いる場合は、次に述べるような特別な走査方法を採用する必要がある。
【0090】
図13はピクセルの位置を置き換えることによって回転された検査対象パターン画像を得る方法を示す模式図である。図13の左側に示された45度傾斜走査方法の図は図13の右側に示された45度傾斜画像の図と全く同じものを45度回転して描いてある。最終的に取得しようとする検査対象パターン画像は右側の形のものである。図中、碁盤の目の格子点はX,Y方向に均等にサンプリングされて得られるべき検査対象パターン画像の位置である。黒丸(●)は実際にサンプリングされる位置を示している。黒丸が無い位置はこの走査方法ではサンプリングされない位置である。この右側の形の検査対象パターン画像を取得するために左側の走査方法で行う。
【0091】
この場合は、X方向のサンプリング間隔Sは各々の走査線で同一であるが、Y方向のサンプリング間隔についてはX方向のサンプリング間隔Sの半分である。また奇数行と偶数行では、サンプリングされる位置がX方向にサンプリング間隔Sの半分だけずれている。このサンプリング間隔Sは、右側のピクセル間隔に√2をかけたものになる。そうすると、左側の図を横に寝かせるだけで所望の検査対象パターン画像が得られるということになる。この場合は、実際にサンプリングされた順番とは違う順番で値を入れていく作業が必要となる。
【0092】
図13は45度の角度の走査方法を示すものであるが、図14は、arctan(2)の角度の走査方法および回転された検査対象パターン画像を示す模式図である。
本実施例を使用すれば、検査対象パターン画像を得るために、最小限度の電子線(荷電粒子線)を走査すればよく、したがって最小の時間で検査対象パターン画像を得ることができる。また、内挿による画質低下を伴わない検査対象パターンの回転画像を取得することができ、エッジの検出精度の低下を避けられる。
【0093】
2.3 パターン検査装置の基本構成
図15は、本実施形態におけるパターン検査装置の基本構成を示す模式図である。本実施形態におけるパターン検査装置は、主制御部1、記憶装置2、入出力制御部3、入力装置4、表示装置5、印刷装置6および、図1に示す画像生成装置7を備える。
【0094】
主制御部1はCPU(Central Processing Unit)等により構成され、装置全体を統括的に制御する。主制御部1には記憶装置2が接続されている。記憶装置2は、ハードディスク、フレキシブルディスク、光ディスク等の形態をとることができる。また、主制御部1には、入出力制御部3を介して、キーボード、マウス等の入力装置4、入力データ、計算結果等を表示するディスプレイ等の表示装置5、および検査結果等を印刷するプリンタ等の印刷装置6が接続されている。
【0095】
主制御部1は、OS(Operating System)等の制御プログラム、パターン検査のためのプログラム、および所要データ等を格納するための内部メモリ(内部記憶装置)を有し、これらプログラム等によりパターン検査を実現している。これらのプログラムは、フレキシブルディスク、光ディスク等に記憶しておき、実行前にメモリ、ハードディスク等に読み込ませて実行されるようにすることができる。
【0096】
2.4 機能ブロック図
図16は、本実施形態におけるパターン検査装置の機能ブロック図を示す模式図である。基準パターン生成部11、検査部12、出力部13および欠陥種認識部14はプログラムにより実現されている。基幹データベース21、レシピデータベース22および欠陥種参照データベース23は記憶装置2内に設けられている。
基幹データベース21を外部に設け、パターン検査装置がLAN(Local Area Network)を経由して基幹データベース21にアクセスするようにしても良い。
【0097】
図17は、本発明の別の実施形態におけるパターン検査装置の機能ブロック図を示す模式図である。図17に示す例は、繰り返し発生する欠陥を認識する機能を有した構成を示す模式図であり、図16の機能ブロック図に対して、欠陥情報記憶部24と、繰り返し発生する欠陥を認識する繰り返し欠陥認識部25とが追加されている。
【0098】
3.用語の説明
【0099】
3.1 エッジ
エッジは、検査対象パターンの内部と下地の境を意味する。エッジとして、検査対象パターン画像のエッジと基準パターンのエッジが使用される。検査対象パターン画像のエッジは、エッジ検出方法で検出され、基準パターンのエッジは直線もしくは曲線で表現された基準パターンをピクセル単位で分割して得られる。後述の4.6 第1の検査の図60で示されるように、検査対象パターン画像のエッジと基準パターンのエッジとを対応づけて検査が行われる。
【0100】
エッジは、ピクセルごとに開始点(サブピクセル精度)、方向、および強度の情報を有するベクトルで表現される。検査対象パターン画像のエッジの場合は、強度は、ベクトルの長さとエッジの明確さを乗じた値である。ここで、エッジの明確さは実際にエッジである確からしさと定義される。また、基準パターンのエッジの場合は、強度は、ベクトルの長さとマッチングに寄与する度合いを乗じた値である。
【0101】
3.2 基準パターン
基準パターンとは線分もしくは曲線で表現されたもので、検査対象パターン画像と比較されるものである。基準パターンにもっとも適したものとして設計データが使われる。この設計データとして、たとえばGDSII(Graphic Design System II)データストリ−ム形式のレイアウトデータに、レイアの融合やフラクチャリングを行ったものが使える。
【0102】
まず、検査対象パターン画像から検出されるエッジ位置に最も適したように設計データに対し、シュリンク処理(設計データの倍率を変える処理)、サイズ処理(線幅を変える処理)などを施す。また、第1のエッジ検出と第2のエッジ検出とでは一般的に検出されるエッジ位置が異なるので、第1エッジ検出用、および第2エッジ検出用に基準パターンを2種類用意する。
【0103】
次に、この処理で得られた多角形を、視野にXYステージ321の誤差および検査対象パターンの最大許容パターン変形量を加えた長さを一辺とする長方形領域でクリッピングする。
【0104】
次に、得られた多角形のコーナーに丸みがつけられる。図18に示すように、通常、設計データは、鋭角をもった多角形(図中点線)である一方、ウェーハに形成される検査対象パターンのコーナーはコーナーラウンド(図中実線)がつく。そこで、得られた多角形のコーナー部分に円、楕円、直線、もしくは他の方法で記述した曲線を適用し、検査対象パターンに近くなるように補正する。
【0105】
最後に、以上で得られた結果を基準パターンとし、レシピデータベース22に登録する。XYステージ321の誤差が無視できる場合は、パターン変形の絶対座標値が計測できる。本実施形態では、XYステージ321の誤差および検査対象パターンの最大許容パターン変形量を考慮し、基準パターンを検査対象パターン画像よりも大きくとって検査に使用しているが、代わりに検査対象パターン画像を基準パターンよりも大きくとって検査に使用しても良い。
【0106】
基準パターンに設計データを使えば、ウェーハ上に形成された検査対象パターンと設計データとを比較する欠陥検査が実行できる。この場合は、許容パターン変形量として電気特性に影響しない許容量を設定する。この許容パターン変形量は、基準パターンの属性ごとに設定でき、さらに、検査対象パターンの込み入っている場所とそうでない場所とで可変にすることも可能である。
【0107】
基準パターンにリソグラフィ・シミュレータで得られたシミュレーションパターンの外形を形成する曲線(図73の実線)を使えば、シミュレーションの正当性を検証できる。シミュレーションパターンはマスクデータを使って、光学的にシミュレートして得られた光強度分布から得られる。この分布から外形の曲線を得る。この場合の許容パターン変形量は、シミュレーションで許される誤差量を設定する。
本実施形態においては、基準パターンとして設計データを使う方法を説明する。
【0108】
図19は基準パターンの例を示す模式図であり、図20は図19の基準パターンSをピクセルごとのエッジに変換した例を示す模式図である。図19において、基準パターンS(点線)はサブピクセル精度で示されている。通常、基準パターンのエッジ方向は、ピクセルの横方向(X方向)または縦方向(Y方向)に平行である。基準パターンのエッジも、検査対象パターン画像のエッジと同様に、ピクセルごとに開始点(サブピクセル精度)、方向、および強度の情報を有する。本実施形態においては、後述の4.2.1 ユニークパターンを使うマッチング方法4.2.2 ネガティブパターンを使うマッチング方法を除いて基準パターンのエッジの強度をすべて1にしている。
【0109】
図21に示すように、基準パターンは、コーナー部分に曲線が含まれる。基準パターンの曲線部分を基準パターンのエッジに変換するために、ピクセルの中心261に最も近い基準パターン上の点262での接線263を生成する。
【0110】
3.3 レシピデータ
検査の前に、以下のレシピデータと称される検査パラメータの組を設定する。レシピデータの内でオペレータ入力パラメータとして、設計データ検索用パラメータ、画像取得パラメータ、およびにエッジ検出および検査のためのパラメータがある。また、レシピデータの内で出力データとして、基準パターン生成部11が生成する基準パターンがある。
【0111】
設計データ検索用パラメータとして、検査対象ウェーハ(試料)のデバイス名、およびプロセス名を指定するパラメータを設定する。画像取得パラメータとして、ウェーハを特定するためのスロット番号、照射系装置310の条件設定パラメータ、ピクセル間隔、ピクセル数、および検査領域を設定する。
【0112】
ピクセル間隔とは、検査対象パターン画像のピクセル間隔に対するウェーハ上の距離を意味する。ピクセル数には、1024×1024、8192×8192などの値が使われる。ピクセル間隔にピクセル数を乗じた数は、検査対象パターン画像の大きさになる。この大きさを持つ領域は、前述の2.1 画像生成装置の基本構成で説明した視野である。例えば、ピクセル間隔が9nmでピクセル数が8192×8192であれば、視野は約70μm×70μmである。
【0113】
エッジ検出および検査のためのパラメータとして、以下のパラメータを設定する。
(1)検査すべきパターン変形量
エッジプレイスメントエラー
線幅の変形量
最小線幅
スペース幅の変形量
最小スペース幅
接触面積検査比
孤立パターンの場合の検査対象パターンの重心のプレイスメントエラーと直径変形量
ウェーハに形成されてはならない補正パターンの欠陥判断係数
【0114】
(2)上記パターン変形量に対応する許容パターン変形量の−側の限界値および+側の限界値、ならびにマッチングで使用するエッジの許容方向差の限界値
これらのパターン変形量は、基準パターンの属性ごとに設定される。
【0115】
(3)検査対象パターン画像から経験的に決められる第1のエッジ検出パラメータ
第1のエッジ検出方法
エッジ膨張用のフィルタ係数
検査対象パターン画像のエッジの2値化しきい値
検査対象パターン画像のエッジの2値化で使われるpタイル法の係数p
【0116】
(4)基準パターンの属性(直線部分、コーナー、終端、孤立パターン等)を認識するための抽出ルールが使用するパラメータ
基準パターンの属性は、基準パターンの一部もしくは全部を区別するために使用される。典型的な基準パターンの一部を区別するために使用する属性は3種類ある。1つ目は、直線部分(基準パターンの終端に対応しない直線部分)である。2つ目はコーナー(終端の属性を持つ直線部分に接触しない頂点の部分)である。3つ目は終端(基準パターンの終端に対応する直線部分)である。基準パターンの全部を区別するために使用する属性として、孤立パターン(他のパターンから孤立しているパターン)がある。
【0117】
(5)領域検査に適した部分を認識するための抽出ルールが使用するパラメータ
線幅検査用に適した基準パターンの最大線幅、最小線長、終端非使用長
スペース検査用に適した基準パターンの最大線幅、最小線長、終端非使用長
切断しやすい部分の最大線幅
切断しやすい部分の最大線長
短絡しやすい部分の最大スペース幅
短絡しやすい部分の最大スペース長
【0118】
(6)検査対象パターン画像から経験的に決められる第2のエッジ検出パラメータ
プロファイル取得区間の長さ
プロファイル取得区間の間隔
プロファイル取得区間内のサンプリングポイントの間隔
プロファイルからエッジを認識する方法(しきい値法を使うかなど)
プロファイル取得区間をレシピデータ設定時に設定するか第1のエッジを検出してから設定するかのフラグ
【0119】
(7)孤立パターンの大きさの最小値と最大値および安全係数
(8)大域的変形量を求めるために使用する検査単位領域の数
(9)欠陥画像の最大登録数
【0120】
(10)再検査対象とする欠陥の最大登録数
(11)自動コントラスト・ブライトネス調整、自動フォーカス調整、および自動非点収差調整に適した領域
(12)歪補正回路が持つ代表歪ベクトルの間隔
【0121】
レシピデータは、設計データ検索用パラメータであるデバイス名、プロセス名、および検査モードをキーにして管理される。検査モードとは、画像取得パラメータとエッジ検出および検査のためのパラメータを総称した名前である。
【0122】
図22は、本実施形態におけるレシピ登録処理の例を示すフローチャートである。まず、オペレータは、入力装置4を介して基準パターン生成部11に、オペレータ入力パラメータ(設計データ検索用パラメータ等)を入力する(ステップS202)。
【0123】
基準パターン生成部11は、設計データ検索用パラメータ(デバイス名、およびプロセス名)をキーとして基幹データベース21を検索し、設計データを取り出す(ステップS204)。基幹データベース21は、基準パターンに対応する設計データを格納したデータベースである。次に、基準パターン生成部11は、設計データから基準パターンを生成する(ステップS206)。
【0124】
最後に、基準パターン生成部11は、基準パターンとオペレータ入力パラメータを、レシピデータとして、レシピデータベース22に登録する(ステップS208)
【0125】
3.4 検査単位領域
検査は、入力された検査領域を、視野で分割して得られる検査単位領域ごとに行われるので、基準パターンは検査単位領域ごとに生成される。検査には、逐次検査およびランダム検査がある。
【0126】
図23は、逐次検査を示す模式図である。検査領域は、図23で示されるようにウェーハ全面を単位として設定されるのではなく、長方形で指定された複数の領域(図23のように上側の短い長方形と下側の長い長方形など)として設定されるので、その領域を高速検査するために、検査単位領域ごとに逐次走査を実施する。検査単位領域ごとに基準パターンを作成する。
【0127】
図24は、ランダム検査を示す模式図である。ランダム検査においては、ある領域を逐次に検査するのではなく、限定された領域を検査する。図24では、検査単位領域301から304についてのみ検査を行う。
【0128】
3.5 検査結果
検査結果として、以下の種類の基本情報がある。
(1)異常パターン変形量を持った欠陥の情報
(2)ピクセルの輝度分布から検出される欠陥の情報
(3)検査単位領域全体から得られるパターン変形量
基準パターンの属性に関するパターン変形量を使用して得られる以下の情報がある。
(4)基準パターンの属性を使って検出される欠陥の情報
対向するエッジを使用して得られる以下の情報がある。
(5)領域検査方法で検出される欠陥の情報
【0129】
4.基本検査処理
図25は、本実施形態における基本検査処理の例を示すフローチャートである。図26および図27は、本実施形態における検査処理の他の例を示すフローチャートであり、繰り返し発生する欠陥を認識する場合の検査処理の例を示すフローチャートである。図27のブロックAは図26のブロックAと同じものであり、検査の前に準備する工程を示している。図27のブロックBは図26のブロックBと同じものであり、各検査領域の検査の工程を示している。
【0130】
図25に示すフローチャートに基づく基本検査処理において、まず、オペレータは、入力装置4を介して検査部12に、レシピ検索用パラメータ(デバイス名、プロセス名および検査モード)を入力する(ステップS302)。
【0131】
検査部12は、レシピ検察用パラメータをキーとしてレシピデータベース22を検索し、基準パターンを含むレシピデータを取り出す(ステップS304)。そして、検査部12は、検査対象パターン画像を取得するため、画像生成装置7に対して画像取得パラメータを設定し、ウェーハ搬送、アライメント、および照射系装置310の条件設定を指示する(ステップS306)。
【0132】
アライメントとは、設計データが使用している座標系とウェーハ(試料)の観察位置を管理する座標系との変換係数を求める方法をいう。これはCAD(Computer Aided Design)ナビゲーションで具現化されている。CADナビゲーションは、アライメントの後に、CADデータ上の観察したい座標値を、ウェーハ観察位置を管理する座標値に変換し、その位置へ画像生成装置の視野を移動させて、その位置の画像を入手する方法で、よく知られているものである。
【0133】
画像生成装置7としては、図1に示す走査型電子顕微鏡が最も適しているが、走査型フォーカスイオンビーム顕微鏡、走査型レーザー顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡などの各種の走査型顕微鏡もしくは各種顕微鏡を使用することができる。
画像生成装置7は、検査単位領域ごとに、検査対象パターン画像および画像の中心位置を検査部12に出力する(ステップS308)。
【0134】
4.1 第1のエッジ検出
次に、検査部12は、検査対象パターン画像から第1のエッジを検出する(ステップS310)。第1のエッジ検出として次の2つのエッジ検出方法が使用できる。第1のエッジ検出方法は、前述の3.3 レシピデータ「(3)第1のエッジ検出方法」によって選択される。
【0135】
4.1.1 第1のエッジ検出方法1
1つは、検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある画像に適した方法である。このような画像の多くは2値化処理でエッジを検出できるが、コントラストが比較的明瞭でない場合は明確にエッジを検出できない。このときに、[文献1]:R.M.Haralick, “Digital step edges from ZERO crossing of second directional derivatives”, IEEE Trans. Pattern Anal. Machine Intell., vol. PAMI-6,No.1,pp.58-68,1984に開示の方法を応用してエッジを検出することができる。この方法を応用すれば、エッジ部分の変曲点をサブピクセル精度で検出することができる。
【0136】
4.1.2 第1のエッジ検出方法2
もう1つは、エッジが明るく検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがない画像からエッジを検出する方法である。例えば、[文献2]:“Cartan Steger. An unbiased detector of curvilinear structures”, IEEE Trans. Pattern Anal. Machine Intell., 20(2), February 1998に開示の方法が使用できる。この方法によれば、エッジ部分の峰をサブピクセル精度で検出することができる。ただし、この方法では検査対象パターンの内部と下地を区別できないのでエッジの方向は0度から180度の値のみをもつ。
【0137】
前述の4.1.1 第1のエッジ検出方法1の別の方法として前述の文献2の方法を使用しても良い。この場合は検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある画像に微分フィルタ(例えば、Sobelフィルタやバンドパスフィルタ)をかけてエッジ強度画像を得て、得られたエッジ強度画像からエッジが検出される。この場合は検査対象パターン内部と下地を区別できる。
【0138】
これらの方法はある程度大きな窓を使った処理であるので、サブピクセル精度が得られるだけでなく、エッジの方向も安定している。ゆえに、エッジ検出精度を向上するために、エッジを連結し、連結したエッジを直線近似する方法は必ずしも必要ではない。
【0139】
ステップS310の第1のエッジ検出では、検査対象パターン画像からピクセル単位でエッジの強度および方向を求める。強度は、3.1 エッジで説明したように、ベクトルの長さとエッジの明確さを乗じた値である。前述の4.1.1 第1のエッジ検出方法1で説明した検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある画像の場合は、前述の文献1の方法を用いて、画像の1次微分値の絶対値をエッジの明確さとし、画像の2次微分値のゼロクロス点をエッジ位置とするエッジが認識される。
【0140】
一方、前述の4.1.2 第1のエッジ検出方法2で説明したエッジが明るく検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがない画像の場合には、前述の文献2の方法を用いて、画像の2次微分値の符号反転値(絶対値)をエッジの明確さとし、画像の1次微分値のゼロクロス点をエッジ位置とするエッジが認識される。いずれの画像もエッジはサブピクセル精度で得られる。
【0141】
図28は、前述の4.1.1 第1のエッジ検出方法1で説明した検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある検査対象パターン画像の例を示す模式図であり、図29は図28の画像から検出したエッジを示す模式図である。図28には、ピクセルごとにその輝度値が示されている。輝度値は2次電子強度をデジタル化した値である。図29に示すように、エッジはピクセルごとに検出され、ピクセルごとに開始点(サブピクセル精度)、方向(0度から360度)、および強度の情報が得られる。強度は、前述のように、明確なエッジであるほど大きい値を取る。
【0142】
図30は、前述の4.1.2 第1のエッジ検出方法2で説明した、エッジが明るく検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがない検査対象パターン画像の例を示す模式図であり、図31は図30の画像から検出したエッジを示す模式図である。図30においても、ピクセルごとにその輝度値が示されている。また、図31に示すように、エッジはピクセルごとに検出され、ピクセルごとに開始点(サブピクセル精度)、方向(0度から180度)、および強度の情報が得られる。
【0143】
4.2 直線形状パターンのマッチング方法
次に、検査部12は、検査対象パターン画像のエッジを膨張させる。以降、得られた結果を膨張エッジと呼ぶ(ステップS312)。本実施形態においては、エッジは、電気特性的に影響しない許容パターン変形量分膨張させている。この段階では許容パターン変形量は正の整数である。この値は、前述の3.3 レシピデータ「(2)許容パターン変形量の−側の限界値および+側の限界値」の値の最大値を整数化した値である。エッジを、許容パターン変形量分膨張させることにより、電気特性的に影響を与えないパターン変形を許容してマッチングすることができる。
【0144】
膨張エッジを得る方法を説明する。図32は1次元の検査対象パターン画像のエッジの強度の例を示す模式図であり、図33は図32のエッジを膨張させた例を示す模式図である。図33が膨張エッジを示している。図32および図33では、説明を簡単にするために、1次元データが使用されている。図32から図33を得る方法として以下の方法が使用できる。これらの方法では、エッジの強度を示す図を画像として扱い、適切なフィルタを考察している。
【0145】
許容パターン変形量内の変形を無視するために、許容パターン変形量の2倍の大きさの窓を持った最大値フィルタによって、図32に示されたエッジの強度を示す図が処理され、図33に示された膨張エッジを得る。最大値フィルタとは、対象となるピクセルの近傍である窓の中の各ピクセルが持つ値の最大値を求め、求めた最大値をフィルタ後のピクセルの値とするものである。図33では、図32の検査対象パターン画像のエッジを左右に2ピクセル分膨張させている。これは許容パターン変形量が2ピクセルの場合の例である。
【0146】
基準パターンのエッジが図34で示される場合を考察する。まず、図34をシフトして得られる図を作成する。シフト量はおのおの左方向に2ピクセルから右方向に2ピクセルである。次に、図33およびシフトされた各図からマッチング評価値を求めると、各マッチング評価値は同じ値になる。よって、シフト量は一意的に決められない。マッチング評価値は後述する。
【0147】
この問題を解決するために、図35に示すように、図32のエッジに重み付けをしてエッジを膨張する。図35の膨張を実現するには、係数が0.5、0.75、1.0、0.75、0.5のスムージングフィルタを用いれば良い。図35で示した例の場合、図34(基準パターンのエッジ)が左右に1ピクセル以上シフトすると評価値が下がる。
【0148】
次に、図36に示すように、図34で示された基準パターンのエッジに対して2ピクセル分広がった基準パターンのエッジを考察する。まず、図36をシフトして得られる図を作成する。シフト量は左方向に1ピクセルと右方向に1ピクセルである。次に、図35およびシフトされた各図から後述するマッチング評価値を求めると、各マッチング評価値は同じ値になる。よって、シフト量は一意的に決められない。
【0149】
この問題を解決するために、図37に示すように、図32のエッジに重み付けをして膨張すれば良い。図37の膨張を実現するには、係数が0.5、0.9、1.0、0.9、0.5のスムージングフィルタ(図38)を用いれば良い。
【0150】
以上の考察から、図37に示すような膨張が最も適している。処理速度やエッジの込み具合などの観点から図33や図35に示すような膨張を用いても良い。
スムージングフィルタの係数を決めた後、係数は、前述の3.3 レシピデータ「(3)エッジ膨張用のフィルタ係数」に登録されて使用される。
【0151】
図39は2次元の検査対象パターン画像のエッジの強度の例を示す模式図であり、図40および図41は図39のエッジを膨張させた例を示す模式図である。図39において、エッジの強度は、20のところ以外はすべて0である。図40は図33と同様の膨張を行った場合の結果を示し、図41は図37と同様の膨張を行った場合の結果を示す。
【0152】
図42は2次元の検査対象パターン画像のエッジベクトルの例を示す模式図であり、図43および図44は図42のエッジを膨張させた例を示す模式図である。図43は図33と同様の膨張を行った場合の結果を示し、図44は図37と同様の膨張を行った場合の結果を示す。膨張はX、Y成分ごとに行っている。
【0153】
検査部12は、膨張エッジと基準パターンのエッジとを比較して、検査対象パターン画像と基準パターンとのピクセル単位でのマッチングを行う(ステップS314)。
【0154】
本実施形態においては、後述する4.8 検査単位領域全体から得られるパターン変形量の中で説明するように、サブピクセル精度でのシフト量S2を使用してマッチングを行う。よって、ここでは高速化を目的としてピクセル単位でのマッチングを行う。したがって、図45で示すように、図20の基準パターンのエッジベクトルをピクセル単位で表したエッジベクトルを使用してマッチングを実施する。
【0155】
本実施形態におけるマッチングでは、評価値F0が最大になる位置を得るために、検査対象パターン画像に対して基準パターンをピクセルごとに上下左右にシフトし、得られた評価値F0が最大になる位置をマッチング位置とする(図46)。本実施形態においては、以下の式で示すように、基準パターンのエッジが存在するピクセルにおける膨張エッジの強度の総和を評価値F0としている。
【0156】
【数1】

【0157】
ここで、E(x,y)は、膨張エッジの強度をその大きさとして持ち、膨張エッジの方向をその方向として持つベクトルである。エッジの存在しない場所ではE(x,y)の大きさは0である。R(x+xs,y+ys)は、基準パターンのエッジ方向をその方向として持つベクトルである。ただし、R(x+xs,y+ys)の大きさは、基準パターンのピクセル内での長さである。ここで、ベクトル(xs,ys)は基準パターンのエッジのシフト量S1である。
【0158】
評価値F0の計算においてR(x,y)が0でないピクセルのみを記憶すれば、高速に計算が行え、記憶領域が少なくてすむ。さらに、残差逐次検定法(SSDA:Sequential Similarity Detection Algorithm)で使われている計算の打切りを用いれば計算がさらに高速化される。
【0159】
図47および図48は、図43(膨張エッジ)と図45(基準パターンのエッジ)とを重ね合わせた模式図である。図47において、ピクセル254は、図43のピクセル251および図45のピクセル252に対応する。図48は、図47で示される位置関係から図43を右に1ピクセル、下に1ピクセルシフトさせた場合の図43および図45の位置関係を示している。したがって、ピクセル255は、図43のピクセル251および図45のピクセル253に対応する。評価値F0を用いれば、エッジの存在するピクセルが重なり合う度合いが大きいほど、評価値が高くなる。評価値F0を用いる場合には、図39から図41で示したような膨張処理を行えば良い。なお、評価値F0は、前述の4.1.1 第1のエッジ検出方法1と前述の4.1.2 第1のエッジ検出方法2で説明したいずれの画像にも適用可能である。
【0160】
本実施形態においては、上記評価値F0を用いているが、他の評価値を用いることもできる。例えば、前述の4.1.1 第1のエッジ検出方法1で説明した検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある画像の場合には、以下の評価値Faを用いることができる。
【0161】
【数2】

【0162】
また、例えば、前述の4.1.2 第1のエッジ検出方法2で説明したエッジが明るく検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがない画像の場合には、以下の評価値Fbを用いることができる。
【0163】
【数3】

【0164】
評価値FaまたはFbを用いる場合には、図42から図44で示したような膨張処理を行えば良い。
【0165】
評価値F0、Fa、およびFbを考察する。評価値F0はデータがスカラのため高速計算に関して有利である。一方、評価値FaおよびFbは、例えば、図49に示すような場合に有効である。評価値FaおよびFbを用いた場合には、基準パターン(図49(a))の縦線部分のエッジ(ベクトル)と検査対象パターン画像(図49(b))の横線部分のエッジ(ベクトル)との内積をとると0に近くなるため、101の部分と102の部分とがうまくマッチングする。しかし、評価値F0を用いた場合には、方向は関係なく強度のみで判断するため、101の部分と103の部分とが誤ってマッチングする可能性がある。
【0166】
評価値Faは検査対象パターン内部と下地の区別がつくので評価値Fbよりマッチングが堅牢である。例えば、図50に示すように、線幅111、113とスペース幅112、114が同じ場合にFaを用いると、どちらがラインかスペースかの区別がつくのでFbより望ましい結果が得られる。
本実施形態においては、検査対象パターン画像のエッジを膨張してマッチングを行っているが、代わりに基準パターンのエッジを膨張してマッチングを行うこともできる。
【0167】
4.2.1 ユニークパターンを使うマッチング方法
前述のマッチング方法では全ての基準パターンのエッジの強度を同等に扱って処理を実施した。前述の3.1 エッジで説明したように、強度はベクトルの長さとマッチングに寄与する度合を乗じた値である。前述の方法とは別の方法として、基準パターンのエッジの強度に異なる値を与えてマッチングがより堅牢になるマッチング方法が使用できる。この方法は図51を用いて以下の手順で実施される。
【0168】
図51の(a)は基準パターンの例を示す模式図であり、図51の(b)は(a)の基準パターン(点線)と検査対象パターン画像(実線)との関係の例を示す模式図である。図51(a)に示す基準パターンは周期的なパターンであるが、1ヶ所ギャップがある。この基準パターンと検査対象パターン画像とのマッチングを行う際に、図51(b)に示すように、両パターンが1周期ずれていても、ギャップの部分以外は一致するので、マッチングの評価値は高くなってしまう。そこで、このギャップの部分に対応する基準パターンのエッジのマッチングに寄与する度合を大きくして、検査対象パターン画像のギャップと基準パターンのギャップとが一致しない場合にはマッチング評価値が大きく低下するようにする。
【0169】
まず自己相関法で基準パターンの周期を求める。次に、もとの基準パターンと一周期ずらした基準パターンを比較してもとの基準パターンにあって1周期ずらした基準パターンにないパターンを求める。求めたパターンをユニークパターンとして認識する。ユニークパターンのエッジのマッチングに寄与する度合を他の基準パターンより大きい値にする。この値は1より大きい値にする。この値として経験から得られた固定値もしくは、固定値÷全基準パターン中のユニークパターンの比率などが使用できる。
【0170】
4.2.2 ネガティブパターンを使うマッチング方法
ユニークパターンをより効率的に使う方法として、ユニークパターンの対であるネガティブパターンを使うマッチング方法が使用できる。図52(a)および図52(b)は長方形パターンが周期的に並んでいる基準パターンのマッチング評価値の計算方法を示す模式図である。図52(a)および図52(b)に示された検査対象パターンの右側にも長方形パターンが周期的に並んでいるが、画像が限定されているので、右側の長方形パターンの終わりがどこか分からない。このような場合に、前述の4.2.1 ユニークパターンを使うマッチング方法を使ってマッチングを施すと図52の(a)と(b)とではマッチング評価値がほぼ同じになり、マッチング位置が一意的に決まらない。
【0171】
この対策として以下の手順でユニークパターンの対であるネガティブパターンを抽出してマッチング評価値計算に使用する。
図53(a)、図53(b)および図53(c)はユニークパターンの対であるネガティブパターンを使ってマッチング評価値を計算する方法を示す模式図である。もとの基準パターンから左方向に一周期ずれた部分に基準パターンが無い場合に、もとの基準パターンの位置はユニークパターン(点線で示された長方形)とする。ユニークパターンを左側に一周期ずらした部分をネガティブパターン(実線で示された長方形)とする。同様に、右方向、上方向、下方向などの他の方向についても実施する。
【0172】
ユニークパターンについては、前述のようにマッチングに寄与する度合いを1より大きい値にする。一方、ネガティブパターンについては、マッチングに寄与する度合を前述の1より大きい値に(−1)を乗じた値にする。
【0173】
ネガティブパターンを使う評価値を考察する。1つのユニークパターンに検査対象パターンが存在しているときの評価値をF1とする。図53(a)の評価値は(3・F1)、図53(b)の評価値は(0)である。図53(c)の評価値は(3・F1)-(3・F1)≒(0)である。この計算から、図53(a)がマッチング位置と判断される。
【0174】
本実施例によれば、ネガティブパターンが最適なマッチング位置からの一周期のズレに対して大きなペナルティーを課すので、周期的に同じパターンが並んだ部分とそうでない部分の境界を正確にマッチングできる。
【0175】
4.2.3 エッジの水平軸垂直軸への射影データを使ったマッチング方法
以上のマッチング方法は十分高速であるが、より高速に実行できる方法が求められる。高速化するために、ステップS314の中の「ピクセルごとにマッチングを行う」部分を改良する。
【0176】
設計データの多くは横線と縦線である。この性質を使って、基準パターンのエッジの水平軸垂直軸への射影データと検査対象パターン画像から検出されたエッジの水平軸垂直軸への射影データを使ってより高速にマッチングをすることが可能になる。
【0177】
図54(a)および図54(b)は前述の4.1 第1のエッジ検出方法で検出されたエッジの水平軸垂直軸への射影データをつかったマッチング方法を示す模式図である。本実施例では、4.1.1 第1のエッジ検出方法1で説明した検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある画像に適したエッジ検出を用いて説明する。また基準パターンを成す線分は上下左右の4方向があるが、ここでは代表例として上方向の線分を例にマッチングの方法を説明する。
【0178】
(1)基準パターンを成す全ての線分の線分長の合計値Lrpを求める。次に4.1.1 第1のエッジ検出方法1で検出されたエッジを強度ごとにソートする。ソートされたエッジを強度がより大きいものからLrp個選んでエッジとして残し他のエッジを消去する。基準パターンはピクセル単位の座標系で表現されていて、基準パターンと検査対象パターン画像の大きさは大よそ同じだから、選択されたエッジは、大よそ基準パターンのエッジに対応する。
【0179】
(2)基準パターンを成す線分で上方向の線分を抽出する。抽出された線分を水平軸(X軸)に射影して1次元データを作成する。この1次元データは配列の形でインデックスはX座標値で要素は線分の長さになる。同様に、この線分を垂直軸(Y軸)に射影して1次元データを作成する。この1次元データは配列の形でインデックスはY座標値で要素は線分の長さになる。この結果は図54(a)に示すものになる。
【0180】
(3)前述の選ばれたエッジから上方向エッジを抽出する。このエッジを水平軸(X軸)に射影して1次元データを作成する。この1次元データは配列の形でインデックスはX座標値で要素の値はエッジ(ベクトル)のY成分になる。同様に、このエッジを垂直軸(Y軸)に射影して1次元データを作成する。この1次元データは配列の形でインデックスはY座標値で要素の値はエッジ(ベクトル)のY成分になる。この結果は図54(b)に示すものになる。
【0181】
(4)上方向エッジの水平軸への射影データを図46に示すX方向の範囲の中をシフトさせながら、上方向のエッジの水平軸への射影データと上方向線分の水平軸への射影データとのX方向のマッチング誤差値Epmを計算する。同様に、上方向エッジの垂直軸への射影データを図46に示すY方向の範囲の中をシフトさせながら、上方向エッジの垂直軸への射影データと上方向線分の垂直軸への射影データとのY方向のマッチング誤差値Epmを計算する。マッチング誤差値Epmの計算結果が図55に示されている。マッチング誤差値Epmは後述する。
【0182】
(5)X方向のマッチング誤差値Epmの最大値EpmMaxと最小値EpmMinを求めてしきい値を以下の式で求める。Y方向のしきい値も同様に求める。
【数4】

【0183】
このしきい値以下のマッチング誤差値Epmをもつシフト量がマッチングに適したシフト量と判断される。係数kmtは経験的に決められる値で0から1の間の値を取り、0に近いほどマッチングに適したと判断されたシフト量の数が多くなる。図56の矢印で示したシフト量がマッチングに適したと判断されたシフト量である。
【0184】
(6)次に、(5)で得られたマッチングに適したと判断されたシフト量から最適解を求める。前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法では、「本実施形態におけるマッチングでは、評価値F0が最大になる位置を得るために、検査対象パターン画像に対して基準パターンをピクセルごとに上下左右にシフトし、得られた評価値F0が最大になる位置をマッチング位置とする(図46)。」と説明した。本方法を採用すると、この部分を「本実施形態におけるマッチングでは、評価値F0が最大になる位置を得るために、検査対象パターン画像に対して基準パターンを上記(5)で得られたシフト量ごとに上下左右にシフトし、得られた評価値F0が最大になる位置をマッチング位置とする(図46)。」と読み替えて前述の直線形状パターンのマッチング方法を実施することになる。
【0185】
マッチング誤差値Epmは図57(a)に示す方法で計算される。本実施例では、代表例として、上方向線分の水平軸への射影データの要素Rp[i]、上方向エッジの水平軸への射影データの要素Ep[i]と、シフト量Spを使用する方法を示す。単純なマッチング誤差値EpmSは、上方向線分の水平軸への射影データの要素Rp[i]とこれに対応するシフトされた上方向エッジの水平軸への射影データの要素Ep[i+Sp]を使い次の式で求められる。
【数5】

総和Σは、全ての要素Ep[i]に対する和を意味する。
【0186】
ステップS312(検査対象パターン画像のエッジを膨張させて、膨張エッジを求める。)で説明したように、電気特性的に影響しない許容パターン変形量内のパターン変形を無視する必要がある。ステップS312と同様の方法を使用しても良いが、他の方法として以下の方法を使用する。
【0187】
ここでは、許容パターン変形量が1ピクセルの場合を説明する。まず、以下の計算を全ての要素Ep[i]に対して実行する。
(1)もし、
【数6】

であれば、以下の計算を実行する。
【数7】

【0188】
(2)もし、
【数8】

で、次のδRが正であれば、以下のρ-1からのEp[i+Sp]の計算を実行する。
【数9】

【0189】
(3)もし、
【数10】

で、δRが負であれば、以下の計算を実行する。
【数11】

【0190】
以上の計算が終了した後、許容パターン変形量を考慮したマッチング誤差値EpmDを、下記の式で求める。
【数12】

【0191】
この計算の結果が図57(b)、(c)に示されている。図57(b)ではRp[i]とEp[i+Sp]がマッチングに適した位置に置かれている。一方、図57(c)ではRp[i]とEp[i+Sp]がマッチングに適した位置から1ピクセルずれた位置に置かれている。図57(b)、(c)に示されるように、許容パターン変形量を考慮したマッチング誤差値EpmDは、単純なマッチング誤差値EpmSより許容パターン変形量を考慮して対応付けられた量だけ小さな値になっている。よって、マッチング誤差値Epmとして許容パターン変形量を考慮したマッチング誤差値EpmDが適している。
【0192】
許容パターン変形量が1ピクセルより大きい場合は、Rp[i-1]、Rp[i+1]の他にRp[i-2]、Rp[i+2]、などを使用して処理を行えば良い。
【0193】
以上のマッチング誤差値Epmの、計算を下方向左方向右方向のエッジと線分にも実施する。また、他の方向例えば45度の倍数の方向の線分を使用しても良い。
【0194】
本実施例では上方向下方向のエッジなど180度逆方向のエッジの区別がつくが、4.1.2 第1のエッジ検出方法2を使用する場合は、180度逆方向のエッジの区別がつかない。この場合は、180度逆のエッジを混合して計算する。
【0195】
図46では、検査対象パターン画像に対して基準パターンをピクセルごとに上下左右にシフトして、評価値F0が最大になる位置をマッチング位置とする方法を示した。しかし、本実施例によれば、ピクセルごとにシフトする代わりに、飛び飛びのピクセルの間隔でシフトできるので計算時間が大幅に短縮できる。
【0196】
4.3 幾何学情報を使う孤立パターンのマッチング方法
前述のマッチング方法は、直線形状パターンには最適である。しかし、孤立パターンであるホールパターン、島パターンのマッチングには別の方法が使用可能である。ホールパターン、島パターンとは、長方形であって、長辺と短辺とも最小線幅の2,3倍以下のパターンである。ホールパターン、島パターンは直線形状パターンより小さく、かつ、より多いので、マッチングにはより計算時間が必要とされる。この課題を解決するために、前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法に比べて計算量が減らせて高速化が可能な以下の方法が使用できる。
【0197】
この方法は全ての検査対象パターンがホールパターン、島パターンである場合に使用することができる。また、通常、ホールパターンと、島パターンとは同時には存在しない。よって、本実施例では全ての検査対象パターンがホールパターンの場合の方法を説明する。島パターンについては本実施例のホールを島に読み替えればホールパターンのマッチング方法が使用できる。
【0198】
ホールパターンのマッチングの第1の方法は検査対象パターン画像のエッジから得られた幾何学情報を使用する方法である。図58はホールパターンのマッチングの第1の方法を示す模式図である。図58(a)には、検査対象パターン画像から検出されたエッジが太線で表示されている。また、そのエッジの重心が黒丸(●)点で示されている。
【0199】
第1段階として、図58(a)で示すようにエッジを検出して、連結しているエッジの最外枠と重心を求める。検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある画像の場合は、前述の4.1.1 第1のエッジ検出方法1で説明したエッジ検出が使用できる。
【0200】
前述の4.1.2 第1のエッジ検出方法2で、説明したエッジが明るく検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがない画像の場合は、前述の4.1.2 第1のエッジ検出方法2で説明したエッジ検出が使用できる。この場合は、エッジは必ずしも連結したピクセルとして認識されないので、エッジを膨張して連結した後に、ラベリング処理をして連結したピクセルを求めて、これらの連結したピクセルの最外枠と重心を求めエッジの最外枠と重心とする。ラベリング処理とは、4近傍もしくは8近傍で連結しているピクセルに同一の値を書き込み、連結ピクセル群を生成する方法である。
【0201】
第2段階として、得られたエッジを、図58(b)を使って、次の手順で選別する。
(1)予め、前述の3.3 レシピデータ「(7)孤立パターンの大きさの最小値Shmaxと最大値Shminおよび安全係数khmin、khmax」を決めて登録しておく。
【0202】
(2)エッジの最外枠の大きさがShmax×khmaxより大きい場合は、エッジはホールパターンのエッジとは見なさない。安全係数khmaxは、1から2程度の値で経験的に決められる値である。
【0203】
(3)また、エッジの最外枠の大きさがShmin×khminより小さい場合は、ノイズやゴミとみなしホールパターンのエッジとは見なさない。安全係数khminは、0.5から1程度の値で経験的に決められる値である。
【0204】
(4)連結したエッジが、リング状を成さねば、ホールパターンのエッジとは見なさない。
(5)検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがある画像の場合は、上記の(4)のリング状の内部がホールか島の判定ができる。もしリング状の内部がホールでない場合は、エッジをホールパターンのエッジとは見なさない。
【0205】
本実施例は、前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法で使用したF0、FaおよびFbの代わりに評価値Fhを使ってマッチングが実施される。評価値にFhを使用すること以外は、前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法と同様の処理を使用する。本実施例では基準パターンは単純に設計データを変換して得る。評価値Fhは以下の方法で得られた値を全てのホールパターンである基準パターンについて求めて総和をとった値である。
【0206】
(1)図58(c)の第1列で示すように基準パターン内にエッジの重心が存在しなければ値は0になる。
(2)図58(c)の第2列のように基準パターン内に重心が存在すれば値は1になる。
【0207】
前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法で使用した4.2.1 ユニークパターンを使うマッチング方法4.2.2 ネガティブパターンを使うマッチング方法を本例に使用するために、以下の2計算を追加する。ユニークパターンとネガティブパターンの認識法とマッチングに寄与する度合の設定は前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法と同じである。
【0208】
(3)ユニークパターンに重心が存在すれば、値は前述のマッチングに寄与する度合になる。
(4)ネガティブパターンに重心が存在すれば、値は前述のマッチングに寄与する度合×(−1)になる。
【0209】
本実施例を使用すれば、複数のエッジをまとめた情報を使用してマッチングする方法が実現できる。この方法は、個々のエッジを使用してマッチングする方法に比べて高速に実行できる。さらに、大幅に計算コストが減らせる。
【0210】
さらに、前述の4.2.3 エッジの水平軸垂直軸への射影データを使ったマッチング方法を応用して高速化な計算が可能である。この場合は、エッジの射影データではなくて、エッジの重心の射影データが使用される。
【0211】
4.4 統計量を使う孤立パターンのマッチング方法
ホールパターンのマッチングの第2の方法は基準パターンの内部に相当する検査対象パターン画像の統計量と、基準パターンの外部に相当する検査対象パターン画像の統計量とを比較する方法である。図59はホールパターンのマッチングの第2の方法を示す模式図である。図59(a)は、本実施例で使用する基準パターンを表している。これらの基準パターンは、設計データにサイズ処理を実施して得られる。サイズ処理で大きくする量は、3.3 レシピデータ「(2)孤立パターンの場合の許容直径変形量」の+側の限界値の半分未満の量である。図59(b)は、典型的なホールパターンの検査対象パターン画像である。ホールパターンのエッジは下地より明るく、ホールパターンの内部は下地より暗い。
【0212】
本実施例は、前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法で使用したF0、FaおよびFbの代わりに評価値Fdを使ってマッチングが実施される。評価値にFdを使用すること以外の処理は前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法と同様の処理を使用する。評価値Fdは、以下の手順で得られる。
【0213】
(1)図59(c)のように全ての基準パターンの内部に対応するホールパターンの検査対象パターン画像のピクセルに対してヒストグラムHinsideを求める。得られたヒストグラムHinsideを規格化する。
【0214】
(2)全ての基準パターンの外部に対応するホールパターンの検査対象パターン画像のピクセルに対してヒストグラムHoutsideを求める。得られたヒストグラムHoutsideを規格化する。
【0215】
(3)各差分ヒストグラムHdifferenceの要素は、それぞれ差分ヒストグラムHdifferenceの要素に対応するヒストグラムHinsideの要素とヒストグラムHoutsideの要素の差として計算される。差分ヒストグラムHdifferenceの各要素の絶対値の和を評価値Fdとする。
【0216】
前述の4.2 直線形状パターンのマッチング方法で使用した4.2.1 ユニークパターンを使うマッチング方法4.2.2 ネガティブパターンを使うマッチング方法を本実施例に使用するために、以下の2計算を追加する。ユニークパターンとネガティブパターンの認識法とマッチングに寄与する度合いの設定は4.2 直線形状パターンのマッチング方法と同じである。
【0217】
(4)ユニークパターンの内部に対応するホールパターンの検査対象パターン画像のピクセルの場合は、これらの各ピクセルを前述のマッチングに寄与する度合に相当する数のピクセルに換算し、換算したピクセルを使ってヒストグラムHinsideを求める。
【0218】
(5)ネガティブパターンの内部に対応するホールパターンの検査対象パターン画像のピクセルの場合は、これらの各ピクセルを前述のマッチングに寄与する度合に相当する数×(−1)のピクセルに換算し、換算したピクセルを使ってヒストグラムHinsideを求める。
【0219】
上記の(5)の計算が意味することは以下である。ネガティブパターン内にホールが存在するとヒストグラムHinsideの要素の総和は減るが形はあまり変わらない。よって、この場合は、評価値Fdはネガティブパターンの計算前の評価値Fdとほぼ等しい。一方、ネガティブパターン内にホールが存在しないとヒストグラムHinsideは差分ヒストグラムHdifferenceに似てくる。差分ヒストグラムHdifference(手順(1)で作成されるHinsideのかわりに使用される。)とヒストグラムHoutsideを使った評価値Fdは、ヒストグラムHinsideとヒストグラムHoutsideを使った評価値Fdより大きい。ゆえにこの場合は、評価値Fdはネガティブパターンの計算前の評価値Fdより大きくなる。
【0220】
ホールパターン、島パターンは、帯電現象などの影響で下地部分の画像の明るさの分布が場所によって変化する。このことはヒストグラムHoutsideが広がることを意味している。しかし、ヒストグラムHoutsideが広がることによる評価値Fdの影響はあまり大きくない。
【0221】
本実施例によれば、評価値としてホールパターン、島パターンの内部と外部の差分ヒストグラムを使用しているので、帯電現象などの影響で下地部分の画像の明るさの分布が場所によって変化しても影響を受けにくいマッチング方法が実現できる。なお、本方法は、直線形状パターンのマッチングとして使用することも可能である。
【0222】
4.5 マッチング後の処理
マッチングを行い、最大の評価値をとるシフト量S1=(xs,ys)が求まったら、シフト量S1の分だけ基準パターンをシフトさせる。以後の処理は、このシフトを行った状態で行う。シフト量S1は検査結果として、表示装置5および印刷装置6に出力することができる。
【0223】
マッチングが終わった後、検査対象パターン画像のエッジを2値化する。この2値化は、検査対象パターン画像のエッジの強度に対して前述の3.3 レシピデータ「(3)検査対象パターン画像のエッジの2値化しきい値」を使用して実行される。すなわち、検査対象パターン画像のエッジの強度が、前述の3.3 レシピデータ「(3)検査対象パターン画像のエッジの2値化しきい値」より大きい検査対象パターン画像のエッジを2値化処理後の検査対象パターン画像のエッジとし、そうでなければ、2値化処理後の検査対象パターン画像のエッジとしない。以降の処理では、検査対象パターン画像のエッジの強度は使用されない。
【0224】
2値化の方法の別の方法としてpタイル法が使用できる。この方法では、検査対象パターン画像のエッジの個数が、基準パターンのエッジに相当するピクセル数×p個になるようにする。すなわち、検査対象パターン画像のエッジの強度の大きい順に、基準パターンのエッジに相当するピクセル数×p個分の検査対象パターン画像のエッジを、2値化処理後の検査対象パターン画像のエッジとし、残りを2値化処理後の検査対象パターン画像のエッジとしない。ここで係数pは通常0.9から1.1程度の数で、3.3 レシピデータ「(3)検査対象パターン画像のエッジのpタイル法の係数p」に設定されて使用される。
【0225】
4.6 第1の検査
次に、検査部12は、第1の検査を行う。具体的には、パターン変形量の計算、欠陥検出、および欠陥種の認識を行う。検査部12は、まず、検査対象パターン画像のエッジと基準パターンのエッジとの対応づけを行う(ステップS318)。エッジ位置は、サブピクセル精度で扱われる。したがって、エッジ間の距離もサブピクセル精度で得られる。エッジの方向は、右方向を0度として0度から360度の値として決定される。
【0226】
本実施形態においては、検査対象パターン画像のエッジとシフト量S1シフトされた基準パターンのエッジとの距離、および両エッジの方向を考慮して対応づけを以下の手順で実施している。
【0227】
基準パターンの各エッジについて、前述の3.3 レシピデータ「(2)許容パターン変形量」の距離内にある検査対象パターン画像のエッジを探す。そして、検出されたエッジの中で基準パターンのエッジとの方向差が前述の3.3 レシピデータ「(2)エッジの許容方向差」以下のものを、許容パターン変形量内のエッジとして対応づける。対応づけた両エッジ間のベクトルd(x,y)は、パターン変形量を求めるのに用いることができる。なお、前述の手順で複数のエッジが認識された場合は、最も距離が短く、最も方向差が小さいエッジを採用する。
【0228】
図60は、検査対象パターン画像のエッジと基準パターンのエッジとの対応づけの例を示す模式図である。図60においては、方向を示すために、エッジを矢印で示している。図60の例では、基準パターンのエッジを含む各ピクセルにおいて、基準パターンのエッジの中心から、エッジ方向と垂直な方向に検査対象パターン画像のエッジを探していくことにより、対応づけを行っている。基準パターンのエッジの中心からの距離が許容パターン変形量以下であり、かつ、方向の差がエッジの許容方向差以下である検査対象パターン画像のエッジが見つかれば、両エッジを対応づける。図60においてエッジ間のベクトルd(x,y)が、前記のベクトルの例である。
【0229】
図61において、(a)は基準パターンのエッジの例を示し、(b)は(a)の基準パターンに対応する検査対象パターン画像のエッジの例を示している。図61を用いて、両エッジの対応づけの例を説明する。この例では、許容パターン変形量は1ピクセル分とする。また、エッジの許容方向差は60度とする。例えば、基準パターンのエッジ81に対応する検査対象パターン画像のエッジを探したところ、エッジ68がエッジ81の許容パターン変形量の距離内にあり、かつ、方向の差がエッジの許容方向差以下であることから、エッジ68はエッジ81に対応するエッジと認定される。基準パターンのエッジ84についても、対応する検査対象パターン画像のエッジとしてエッジ70が認定される。
【0230】
基準パターンのエッジ82に対して、エッジ61は許容パターン変形量の距離内にない。エッジ64は、許容パターン変形量の距離内になく、方向差もエッジの許容方向差より大きい。また、エッジ66および69は、許容パターン変形量の距離内にはあるが、方向差がエッジの許容方向差より大きい。したがって、エッジ82に対応するエッジは得られない。エッジ83に対応するエッジについても同様に得られない。
【0231】
なお、図61(a)および図61(b)の例はパターンの内側か外側かを区別しない方法で、方向が0から180度の範囲の値のみをもつ場合であるが、パターン内外を区別する方法とすることも可能である。例えば、エッジ方向はパターン内側を必ずエッジの右手におくように決定しておけば、図61(a)の基準パターンのエッジは、図62のようになり、対応づけをより厳密に実行することができる。
【0232】
次に、検査部12は、欠陥検出を行う(ステップS320)。欠陥検出には次の2つの方法が使用できる。
【0233】
4.6.1 異常パターン変形量を持った欠陥の認識方法
欠陥検出の第1の方法として以下の手順で、異常パターン変形量を持つ欠陥を認識する。図63は、異常パターン変形量を持った欠陥を認識する方法を示す模式図である。検査部12は、基準パターンと対応づけができなかった検査対象パターン画像のエッジ(例えば、図61(b)のエッジ61から67、69および75)を、欠陥ピクセルとして認識する。上記の欠陥ピクセルを表現する2値化ビットマップを得る。
【0234】
次に、図63(a)で示すように得られた2値化ビットマップを膨張幅Wdilation分(本図では2ピクセル)膨張させ、欠陥ピクセルどうしを連結する。膨張させた2値化ビットマップは、2値化ビットマップのDilation演算の結果として得ることができる。このDilation演算はモルフォロジーの代表的な演算の一つである。
【0235】
図63(b)で示すように欠陥検出時にはノイズ等の要因で欠陥が分断されて検出されることがある。この場合は、分断されて検出された部分を経験的な値である膨張幅Wdilationを使って融合して、融合された部分である領域を1個の欠陥として認識する。
【0236】
モルフォロジーの代表的な演算であるDilation演算とErosion演算を説明する。Dilation演算δとErosion演算εとはAを対象画像(2値化ビットマップ)、Bを構造要素(2値化ビットマップ)とすると以下の結果を出力する演算である。
【数13】

【0237】
(A)-bはAを-b平行移動することを意味する。また、∪、∩は、b∈Bを満たす全てのbに対する2値化ビットマップの和演算(OR)、積演算(AND)を意味する。
【0238】
次に、ラベリング処理で互いに連結されたピクセルを1つの領域として認識する。ラベリング処理とは、4近傍もしくは8近傍で連結しているピクセルに同一の値を書き込み、連結ピクセル群を生成する方法である。互いに連結していない連結ピクセル群に別の値を与えることで、各連結ピクセル群を区別できる。この連結ピクセル群を欠陥が存在する領域と認識し、欠陥の外接長方形を求める。欠陥の外接長方形とは、連結ピクセル群を含む最小の長方形を意味する。
【0239】
以上の手順は、図63(b)で示すように実行される。図63(b)では、基準パターンの右下方向(−45度)の線分に対応する欠陥が不連続に存在している。これらの欠陥は本来1つの欠陥であるが分断されている。まず、欠陥と認識された領域を二値化画像(黒いピクセルで示す)として求める。この二値化画像を膨張幅Wdilation分ふくらませると白いピクセルで示された領域ができる。次に黒いピクセルと白いピクセルとをラベリング処理で領域として認識して、この認識された領域を包含する最小の長方形領域が外接長方形として得られる。
【0240】
最後に、外接長方形の中心を計算して欠陥位置とし、外接長方形の大きさを計算して欠陥サイズとする。得られた欠陥位置と欠陥サイズを欠陥情報とする。
【0241】
4.6.2 ピクセルの輝度分布を使う欠陥の認識方法
欠陥検出の第2の方法として以下の手順で、ピクセルの輝度分布を使い欠陥を認識する。まず、基準パターンとの対応づけが行われた検査対象パターン画像のエッジを連結して領域を求める。得られた領域の内側と外側の部分に存在するピクセルの輝度値を求める。各々の輝度値の分布は欠陥が無ければ正規分布をなす。よって、正規分布ではない輝度値を持つピクセルを欠陥ピクセルとして認識することが可能である。
【0242】
正規分布ではない輝度値を持つピクセルを検出し、それらをラベリング処理で領域として認識して、この認識された領域を包含する最小の長方形領域が外接長方形として得られる。最後に、外接長方形の中心を計算して欠陥位置とし、外接長方形の大きさを計算して欠陥サイズとする。得られた欠陥位置と欠陥サイズを欠陥情報とする。
【0243】
図64は、ピクセルの輝度分布を使う欠陥の認識方法を示す模式図である。破線201は検査対象パターン画像のエッジを示す。破線201の両サイドの実線202、203は、エッジを指定幅太らせてできた領域の境界であり、実線202、203で囲まれた部分をエッジ領域と認識する。下地204と検査対象パターン内部205の輝度値は、おおよそ正規分布をなす。
【0244】
図65に示すように、輝度値の分布が±3σ程度を越した部分Dは欠陥である可能性が高い。区間Dにはノイズも含まれるが、ノイズは領域内に比較的均一に存在する一方、欠陥は固まって存在する。区間Dに対応する輝度値を持つピクセルを1、それ以外の輝度値を持つピクセルを0とした2値化マップを作成する。指定された大きさ(例えば2×2ピクセル)以下の輝度値1を持ったピクセルの固まり(例えば、図64のピクセルの固まり207)を消去する。この処理にはミディアンフィルタなどが使用できる。このフィルタのウインドウサイズは検出したい欠陥の大きさを考慮した経験値である。残った輝度値1を持ったピクセルの固まり(例えば、図64のピクセルの固まり206)を欠陥と認識する。
【0245】
前述の4.6.1 異常パターン変形量を持った欠陥の認識方法は、基準パターンのエッジの近傍の欠陥を検出する。一方、本方法であるピクセルの輝度分布を使う欠陥の認識方法は、基準パターンのエッジの近傍以外の場所に存在する欠陥を検出する。
【0246】
欠陥が検出された場合には、欠陥情報(欠陥位置、欠陥サイズ、および、欠陥を含む画像)を欠陥種認識部14に出力する(ステップS322、324)。
【0247】
4.7 検査対象パターン画像から得られる特徴量を使った欠陥種の判定方法
欠陥種認識部14は、欠陥情報および欠陥種参照データベース23の情報を使用して欠陥種を判定する(ステップS326)。具体的には、欠陥に対応する検査対象パターン画像の部分から特徴量を得て、基準となる特徴量と比較して欠陥種を判定する。基準となる特徴量は、典型的な各種の欠陥に対応する検査対象パターン画像の部分から得られた特徴量であり、欠陥種参照データベース23に蓄積されている。欠陥種認識部14は、欠陥情報(欠陥位置、欠陥サイズ、および、欠陥を含む画像)および欠陥種を、出力部13を介して表示装置5および印刷装置6に出力する(ステップS328)。欠陥種参照データベース23は、既に取得された画像を欠陥種ごとに登録したデータベースである。
【0248】
欠陥種認識部14は、以下の手順で欠陥種を判定する。
欠陥と認識された連結したピクセルの幾何学情報を得る。幾何学情報は特徴量の一種である。得られた幾何学情報から、丸い、細長いなど欠陥の形状的特徴を認識することができ、丸ければ異物など、細長ければスクラッチなどと認識できる。欠陥と認識されたピクセルを検査対象パタ−ンの内側、外側、境界の3部分に区分する。これらの各部分ごとに、検査対象パターン画像のピクセルの輝度値を使ったピクセルの特徴量を得る。ここで得られる特徴量により、異物が金属片であるか有機物(例えば人間のあか)であるかなどの判断をつけることができる。すなわち、異物が金属であれば明るく、有機物であれば暗いということで種類を判別することができる。
【0249】
また、検査対象パターンの内部に異物がある場合は、異物と認識されたピクセルの輝度値の変化が大きい場合に、異物が検査対象パターンの上に存在している可能性が高いと判断され、逆に、輝度値の変化が小さい場合は、異物が検査対象パターンの下に存在している可能性が高いと判断される。欠陥が検査対象パターン内部に存在するか外部に存在するか、検査対象パターン画像だけでは区別できないので、この処理は従来のダイ・ツー・ダイ法では困難である。本方法は、これらの特徴量を使い、良く知られた分類法で欠陥種を判定する。その分類法として、k最短距離法が使用できる。
【0250】
上記の欠陥種判定方法は、従来行われている光学方式、SEM方式のADC(Automatic Defect Classification)を基にした方法であるが、本実施例によれば、設計データを使って検査対象パターンの内部と外部が認識できるので、各部分の特徴量が正確に得られ、分類精度が向上する。
【0251】
4.8 検査単位領域全体から得られるパターン変形量
次に、検査部12は、対応づけを行った検査対象パターン画像のエッジと基準パターンのエッジとの関係からパターン変形量を求める(ステップS330)。パターン変形量は、欠陥が検出されなかった部分から求める。そして、パターン変形量を、出力部13を介して表示装置5および印刷装置6に出力する(ステップS332)。
【0252】
パターン変形量には、検査単位領域全体から得られるパターン変形量と、基準パターンの属性を使って検出されるパターン変形量の2種類がある。検査単位領域全体から得られるパターン変形量としては、例えば、エッジプレイスメントエラーの平均値、倍率変化量、および線幅の変形量が使用できる。
【0253】
エッジプレイスメントエラーの平均値は、対応づけを行った検査対象パターン画像のエッジと基準パターンのエッジ間のベクトルd(x,y)の平均値として求められる。このエッジプレイスメントエラーの平均値はサブピクセル精度でのシフト量S2となる。このシフト量S24.5 マッチング後の処理で説明したシフト量S1を加えたものがサブピクセル精度でのシフト量になる。XYステージ321の誤差が無視できる場合は、シフト量S1+S2が検査単位領域ごとに検査対象パターンのエッジプレイスメントエラーの平均値になる。
【0254】
XYステージ321の誤差が無視できなくて、検査をサブピクセル精度で実施する場合は、ここでシフト量S1+S2の値をシフト量S1に代入し、基準パターンをシフト量S1シフトさせて、ステップS318からS330を再度実行する。
【0255】
X方向の倍率変化量を求めるには、縦方向の基準パターンの線分に関するベクトルd(x,y)のX成分を回帰直線で近似して回帰直線D(x)を求める。そして、回帰直線の勾配をX方向の倍率変化量とする。Y方向の倍率変化量についても同様の手順である。
【0256】
図66において、(a)は基準パターンのエッジ(破線)、および検査対象パターン画像のエッジ(実線)の例を示し、(b)は(a)に示すエッジ間のy=y0におけるベクトルd(x,y0)のX成分を回帰直線D(x)で近似した例を示す。ベクトルd(x,y0)のX成分を回帰直線D(x)=ax+bで近似すると、傾きaが倍率変化量に相当する。図66(a)の例では、検査対象パターンが基準パターンよりも全体に大きいことがわかる。
【0257】
図67において、(a)は基準パターンのエッジ(破線)、および検査対象パターン画像のエッジ(実線)の別の例を示し、(b)は(a)に示すエッジ間のy=y0におけるベクトルd(x,y0)のX成分を回帰直線D(x)で近似した例を示す。図67(a)の例では、検査対象パターン画像のパターンが基準パターンよりも全体に大きいことに加えて、直線形状パターンの幅が太っている。図67(a)において、基準パターンの直線形状パターン121、122、123は、それぞれ検査対象パターン画像の直線形状パターン124、125、126に対応する。
【0258】
X方向の線幅の変形量は、例えば、sign(x,y0)・{d(x,y0)のX成分-D(x)}の平均値として求めることができる。ここで、sign(x,y0)は、(x,y0)の位置がラインの左側であれば−1をとり、ラインの右側であれば1をとる。なお、線幅の変形量に関して、sign(x,y0)・{d(x,y0)のX成分-D(x)}の標準偏差を求めれば、線幅の標準偏差が得られる。
【0259】
4.9 基準パターンの属性の抽出ルール
前述の3.3 レシピデータ「(4)基準パターンの属性(直線部分、コーナー、終端、孤立パターン等)を認識するための抽出ルールが使用するパラメータ」の例を図68に従い説明する。直線部分171は、所定長L以上の長さをもつ線分として抽出される。コーナー172は、所定角度(90度、135度や270度など)で接触する2線分の接点近傍にある部分として抽出される。終端173は、所定長L以下の長さをもつ線分で、直線部分171,171と90度の角度をもって接する両端173t,173tをもつ線分として抽出される。終端173と二つの直線部分171,171はコの字型の形状をなす。孤立パターンは、所定面積以下の閉図形として抽出される。
【0260】
4.10 基準パターンの属性を使って欠陥を検出する方法
図68で示したように、基準パターンの属性として、直線部分171、コーナー172、終端173、孤立パターン174などを使用する。基準パターンに基準パターンの属性を自動的に付加して検査時に使用する。
【0261】
基準パターンの属性に関するパターン変形量として、前述の4.8 検査単位領域全体から得られるパターン変形量で説明したエッジプレイスメントエラーの平均値、倍率変化量、および線幅の変形量のほか、直径、面積、周囲長、円形度、モーメント、曲率半径などの特徴量の変形量が使用できる。
【0262】
4.10.1 終端のエッジプレイスメントエラーを持った欠陥
図69(a)および(b)は、終端のエッジプレイスメントエラーを示す模式図である。終端のエッジプレイスメントエラーは、図69(a)に示すように、基準パターンの終端を構成するエッジ164と検査対象パターン画像のエッジ163の間の最小距離である。
【0263】
他の方法として、図69(b)に示すように、任意の幅をもった区間157に対応する複数の距離の平均値、最大値、最小値、または、中央値などを、終端のエッジプレイスメントエラーとしても良い。
【0264】
もし、エッジプレイスメントエラーが、3.3 レシピデータ「(2)許容パターン変形量の−側の限界値および+側の限界値」の中の終端の許容エッジプレイスメントエラーの範囲になければ、この終端は欠陥を持っていると認識される。
【0265】
4.10.2 直線部分、コーナーのエッジプレイスメントエラーを持った欠陥
図69(a)および(b)では、終端のエッジプレイスメントエラーについて説明したが、直線部分、コーナーも同様にエッジプレイスメントエラーを測定できる。直線部分については直線部分に対応する区間について得たエッジプレイスメントエラーから欠陥を検出する。コーナーについては、コーナーの成す角度の半分の角度もしくは指定した角度を持つ方向でのエッジプレイスメントエラーを求めて欠陥を検出する。
【0266】
これらの場合は、終端の許容エッジプレイスメントエラーの代わりに、それぞれ、直線部分、コーナーの許容エッジプレイスメントエラーを使用する。
【0267】
4.10.3 孤立パターンのプレイスメントエラーを持った欠陥
図70は、孤立パターンのプレイスメントエラーを示す模式図である。プレイスメントエラーは、(孤立パターンを構成する)基準パターンのエッジ160の重心162と、(孤立パターンを構成する)検査対象パターン画像のエッジ159の重心161との距離である。
【0268】
もし、プレイスメントエラーが、3.3 レシピデータ「(2)許容パターン変形量の−側の限界値および+側の限界値」の中の孤立パターンの許容プレイスメントエラーの範囲になければ、この孤立パターンは欠陥を持っていると認識される。
【0269】
4.10.4 孤立パターンの他の欠陥
また、孤立パターンから得られる特徴量の変形量を検査することができる。特徴量として、直径、面積、周囲長、円形度、モーメントなどが使用できる。図70で示すように、基準パターンのエッジ160と検査対象パターン画像のエッジ159から前記の特徴量を計算して、両者の特徴量の差異を検査して欠陥を検出することができる。
【0270】
4.10.5 コーナーの曲率異常欠陥
図71において、(a)は基準パターンのコーナーのエッジの例を示し、(b)は検査対象パターン画像のコーナーのエッジの例を示す。図71(a)に示す基準パターンのエッジ166のコーナーには半径R1の丸みをつける処理がなされている。検査対象パターン画像のエッジ165の曲率半径として、最小自乗近似して得られた半径R2が得られる。半径R2の代わりに、コーナーの曲線を楕円で最小自乗近似して得られた長径、短径を用いても良い。半径R1と半径R2の差異を検査して欠陥を検出することができる。
【0271】
以上の検査は、視野内の複数の箇所に対し同時に実行される。検査項目は、前述の3.3 レシピデータ「(1)求めたいパターン変形量」に従い選択される。
【0272】
4.11 第2のエッジ検出
検査部12は、検査対象パターン画像から再度エッジ(第2のエッジ)を検出する(ステップS334)。第2のエッジは、検査対象パターン画像から得られたプロファイルから検出される。第2の基準パターンとしては、図76の点Qがエッジになる基準パターンを用いる。これに対し、前述の4.1.2 第1のエッジ検出方法2で説明したエッジが明るく検査対象パターン内部と下地との間にコントラストがない画像の場合、第1の基準パターンとしては、点Pがエッジになる基準パターンが用いられる。したがって、第2の基準パターンと第1の基準パターンは一般に異なる。
【0273】
検査対象パターン画像の第2のエッジ検出を行う前に、前述のシフト量S1+S2の分だけ第2の基準パターンをシフトさせる。以後の処理は、このシフトを行った状態で行う。
【0274】
プロファイルからエッジ位置を検出するには、しきい値法、直線近似法など各種開示されているが、本実施形態では、その中のしきい値法を用いて、CD−SEMで行っている線幅測定を2次元パターン画像(検査対象パターン画像)に応用している。ただし、しきい値法を、直線近似法など別の方法に置き換えても同様に処理が可能である。ここで、直線近似法とは、プロファイルを直線で近似し、交点を使ってエッジを検出する方法である。
【0275】
図72は、プロファイル取得区間の例を示す模式図である。図72で示すように、プロファイル取得区間は、第2の基準パターンを中点として、第2の基準パターンのエッジの垂直方向に設定される(二重線で示された線分)。プロファイル取得区間の長さは、前述の3.3 レシピデータ「(6)プロファイル取得区間の長さ」であり、プロファイル取得区間の間隔は、前述の3.3 レシピデータ「(6)プロファイル取得区間の間隔」である。
【0276】
なお、前述の第2の基準パタ−ンの代わりに、図73に示すように、リソグラフィ・シミュレータで得られた露光パターンの外形を(図中実線)を使用しても良い。
【0277】
プロファイル取得区間に対応する検査対象パターン画像の区間から、前述の3.3 レシピデータ「(6)プロファイル取得区間内のサンプリングポイントの間隔」である間隔で、プロファイルのデータを取得する。プロファイル取得区間の長さは許容パターン変形量より長くする。またサンプリングポイントの間隔は通常ピクセル間隔以下の値とする。プロファイルのデータの作成には、双一次補間、スプライン補間、フーリエ級数などの方法を用いる。
【0278】
図74は図72の一部(Bの部分)を拡大した模式図であり、図75は図74の一部(Cの部分)を拡大した模式図である。図74もしくは図74の二重線は図72のプロファイル取得区間と同じである。図75の格子の交点はピクセルの位置を、プロファイル取得区間上の黒点はプロファイル取得区間上の輝度値を取得する位置を示している。
【0279】
双一次補間法とは、(0,0)(0,1)(1,0)(1,1)で示されたピクセルの輝度値I(0,0)、I(0,1)、I(1,0)、I(1,1)を使って、位置(x,y)、(0<x≦1,0<y≦1)にある点の輝度値I(x,y)を次の計算式で計算するものである。
【数14】

【0280】
この式を使って得られたプロファイルから、しきい値法を使って第2のエッジ位置を検出する。図76に示すように、得られたプロファイルの中の最大輝度値Vとその位置Pを求める。その最大輝度値Vに予め指定された係数kをかけた数値をしきい値Tとし、輝度値=しきい値Tの直線とプロファイル曲線との交点を求める。これらの交点で、点Pから検査対象パターンの外側方向にあり、最も点Pに近い交点Qを求める。すべてのプロファイルから交点Qを計算して第2のエッジを検出する。
【0281】
ウェーハに形成された検査対象パターンの断面形状は台形状をなす。測定を、この断面形状の上辺で行うのか、下辺で行うのか、あるいは中間部で行うかを係数kで設定することができる。
【0282】
例えば、図76に示す係数kとして0.5を使用すれば、検出されたエッジは、理想的なエッジ位置から検査対象パターンの外側方向に電子線のビーム径の半分の量だけ移動した位置になる。電子線のビーム径とは区間の幅であって、その区間内の輝度値が、輝度値の最大値の半分以上を持っている。
【0283】
第2のエッジを検出したら、検出された第2のエッジを使って曲線近似(多角形近似を含む)を行い、検出された第2のエッジを連結する。最も単純な方法は、検出されたエッジを単に折れ線(多角形形状の線)で連結する方法である。例えば、以下の分割融合法を用いると、最小自乗法による多角形近似で検出された第2のエッジをスムーズに連結できる。T. Pavlidis and S. L. Horowitz : “Segmentation of plane curves”, IEEE Trans. On Computers,vol. C-23, no.8 Aug., 1974。図77(a)は、この方法の例を示す模式図である。
【0284】
これ以外にも、図77(b)に示すような最小自乗法と2次元スプライン関数を使った平面データの平滑化による曲線近似を用いることもできる。前者は、高速に処理できるが丸まった形状を多く含む曲線には柔軟性がない。一方、後者は、高速性を満たし且つ柔軟性をもつ特性がある。これら以外にも、フーリエ記述子による方法など各種の方法が開示されており、これらでも置き換え可能である。
なお、以上のような曲線近似は、第1のエッジ検出を行った後に行っても良い。
【0285】
プロファイル取得区間を設定する方法として次の2つの方法が使用できる。その1つは、前述の方法であって、プロファイルを取得する方向および位置を第2の基準パターンを使って予め設定する方法である。この方法は、前述の3.3 レシピデータ「(6)プロファイル取得区間をレシピデータ設定時に設定するか第1のエッジを検出してから設定するかのフラグ」がレシピデータ設定時のときに使用される。この方法では、プロファイル取得区間が、第2の基準パターンを使って一意的に設定される。
【0286】
プロファイル取得区間を設定する別の方法として、プロファイル取得区間を第1のエッジを検出してから適応的に設定する方法が使用できる。前述の3.3 レシピデータ「(6)プロファイル取得区間をレシピデータ設定時に設定するか第1のエッジを検出してから設定するかのフラグ」が、「第1のエッジを検出してから」の場合に使用される。
【0287】
この方法は、図78(a)に示すように、検出された検査対象パターン画像の第1のエッジの垂直方向にプロファイル取得区間を設定する方法である。この方法によれば、図78(b)に示すように、検出された検査対象パターン画像の第1のエッジ(実線)が前述の第2の基準パターン(点線)からずれていたとしても、プロファイル取得区間を前述の方法より短くできる。また、この方法は、前述の方法に比べ、パターンの変形に追従しやすい。プロファイル取得区間の設定後は、前述の方法と同様の処理を行う。
【0288】
4.12 第2の検査
第2のエッジ検出の後、検査部12は、第2の検査を行う(ステップS336)。この検査は、4.6 前述の第1の検査のS320からS332と同じ処理であるが第1のエッジのかわりに第2のエッジを使用することが異なっている。ステップS318では、検査対象パターン画像のエッジと基準パターンのエッジとの対応づけを行うが、第2の検査ではプロファイル取得区間によって対応づけられている。
【0289】
第2の検査で欠陥検出を行い、パターン変形量を求める。ここで求められる画像全体に関するシフト量S3は、前述の4.8 検査単位領域全体から得られるパターン変形量で説明したシフト量S2に対応する。ここで求めたシフト量S3に、前述のシフト量S1およびシフト量S2を加えたものが、第2の基準パターンと検査対象パターン画像のパターンとの間の全シフト量となる。
【0290】
第2の検査では、前述の4.6.1 異常パターン変形量を持った欠陥の認識方法と前述の4.6.2 ピクセルの輝度分布を使う欠陥の認識方法を以下の方法にする。
【0291】
第1の検査の4.6.1 異常パターン変形量を持った欠陥の認識方法では、基準パターンのエッジと対応づけができなかった検査対象パターン画像のエッジのピクセルは、欠陥として認識される。しかし、第2の検査では、前述の3.3 レシピデータ「(2)許容パターン変形量の−側の限界値および+側の限界値」の範囲にエッジが存在しないプロファイル取得区間を欠陥として扱う。
【0292】
第1の検査の4.6.2 ピクセルの輝度分布を使う欠陥の認識方法では、基準パターンのエッジと対応づけが行われた検査対象パターン画像のエッジを連結して領域を求める。しかし、第2の検査では、基準パターンのエッジを連結して領域を求める。
【0293】
以上の基本検査処理をすべての検査単位領域について行った場合には検査処理を終了し、そうでない場合にはステップS308に戻る(ステップS340)。
【0294】
5.応用検査処理
以上は図25に示されたフローチャートに基づく基本検査処理の説明である。この章では、この基本検査処理を発展させた応用検査処理を説明する。
5.1 繰り返し発生する欠陥の認識方法
前述の4.基本処理で説明したように、繰り返し発生する欠陥を認識する場合の検査処理の例が図27に示されている。この検査処理は図25に示された検査処理を拡張したものである。
【0295】
5.1.1 第1の繰り返し発生する欠陥の認識方法
第1の繰り返し発生する欠陥の認識方法として、以下の手順を実行する。
まず検査の前に準備する工程を示すブロックAが実行される。次に、各半導体デバイスの検査領域の検査の工程であるブロックBで欠陥を検出した後に、検出された欠陥を融合する(ステップS402)。図27のブロックAおよびブロックBは、それぞれ図26のブロックAおよびブロックBと同一である。ブロックAにおけるステップS302からS306は、図25におけるステップS302からS306とそれぞれ同一である。またブロックBにおけるステップS308からS336はそれぞれ図25のステップS308からS336と同一である。
【0296】
ブロックBにおいては、欠陥情報を欠陥情報記憶部24に出力するステップS338が追加されていることが、図25と異なっている。ブロックBにおけるステップS340は図25のステップS340と同一である。ステップS340における検査単位領域は、設計データで使われている座標系で表現された検査領域を分割して得られたものであり、各半導体デバイスの検査単位領域が検査される。
【0297】
図23に示す検査単位領域より広範囲の検査領域を検査する場合は、複数の検査単位領域に存在する欠陥が複数箇所に分断されて検出されることがある。これらの複数箇所に分断された欠陥を融合することにより、検査単位領域の間にある境界による欠陥の分割を解消することができる。
【0298】
図79は検査領域が4つの検査単位領域に分割されている場合を示す模式図である。欠陥Aは、右上側の検査単位領域と右下側の検査単位領域にまたがって存在している。まず、右上側の検査単位領域に存在する欠陥Aの部分の外接長方形31と右下側の検査単位領域に存在する欠陥Aの部分の外接長方形32が求められる。外接長方形31、外接長方形32は、4.6.1 異常パターン変形量を持った欠陥の認識方法で説明した手順で求められたものである。
【0299】
次に、検査領域を構成する全ての検査単位領域内に含まれる外接長方形について重なり検査をする。もし重なっている場合は、上記の重なり合った外接長方形全てを含む最小の外接長方形が融合された外接長方形とされる。本例では、外接長方形31と外接長方形32から融合された外接長方形Mが得られる。なお、外接長方形M(点線で示す)と、外接長方形31および外接長方形32とは、一部の線が重なっているべきであるが、図示上の便宜上、外接長方形Mの方が若干大きく描かれている。
【0300】
同様に4つの検査単位領域にまたがって存在している欠陥Bも融合される。この場合は4つの外接長方形が融合して1つの融合された外接長方形が得られる(ステップS402)。得られた外接長方形の内に存在する欠陥情報を融合し、融合された欠陥情報を欠陥情報記憶部24に記憶させる(ステップS403)。
【0301】
検査対象半導体デバイスの全ての検査を行ったか否かのチェックをしたのちに(ステップS404)、全ての検査が終了したと判断された場合には、繰り返し発生する欠陥を認識する(ステップS406)。これらの欠陥情報は同一の設計データに基づいて製造された各半導体デバイスの同じ検査領域から得られたものであり、設計データで使われている座標系で表現されており、ステップS338によって欠陥情報記憶部24に記憶されている。
【0302】
図80は、第1の半導体デバイスと第2の半導体デバイスから得られた欠陥情報を示す模式図である。第1の半導体デバイスから得られた欠陥情報と第2の半導体デバイスから得られた欠陥情報を重ねると、外接長方形33Aと外接長方形33Bが外接長方形34と重なると判定される。この処理は図形の論理演算として広く知られている。これら3つの外接長方形を含む最小の外接長方形として共通外接長方形35を得る。この共通外接長方形35内に存在する欠陥(図示されていない)を、複数の半導体デバイスに共通に存在する欠陥、すなわち繰り返し発生する欠陥として認識する。
【0303】
この場合は、共通外接長方形35の内部に繰り返し発生する欠陥が存在し、第1の半導体デバイスの欠陥検出時にはノイズなどの要因で外接長方形33Aと外接長方形33Bとに分断されて検出され、第2の半導体デバイスの欠陥検出時には一塊の外接長方形34として検出されたことを意味する。外接長方形33Aと外接長方形33Bと、外接長方形34がずれているのは、欠陥がわずかにずれた位置で検出されたことを意味する。
【0304】
以上の処理は、3つ以上の数であるN個の半導体デバイスから得られた欠陥情報を使用する方法でも同様に実行できる。この場合は、M個以上の半導体デバイスから得られた外接長方形が重なり合うときに、繰り返し発生する欠陥が認識される。数Mは2からNまでの数値で、大きいほどより厳密に繰り返し発生する欠陥を取得できる。
【0305】
以上の検査で得られた繰り返し発生する欠陥の欠陥情報を欠陥情報記憶部24に出力する(ステップS408)。この欠陥情報記憶部24の欠陥情報は、出力部13を介して表示装置5および印刷装置6に出力される(ステップS410)。
【0306】
本実施例によれば、オペレータの大量の単純労働を不要にし、オペレータのミスによる欠陥認識低下を防ぐことが可能になる。また、試料が汚染された場合でも、汚染物が異なるダイの同一箇所に存在することがほとんど無いので、汚染物を繰り返し発生する欠陥として認識することがない。
【0307】
5.1.2 第2の繰り返し発生する欠陥の認識方法
第2の繰り返し発生する欠陥の認識方法として、複数の半導体デバイスから得られた欠陥情報のうち、少なくとも一つの半導体デバイスについては検査領域の全体から欠陥情報を得て、それ以外の半導体デバイスについては前記欠陥情報中の欠陥位置の近傍に対応する部分のみを検査して欠陥情報を得ることにより、繰り返し発生する欠陥として認識する。
【0308】
本実施例では第1の半導体デバイスの検査領域の全ての場所から欠陥情報を得て第2の半導体デバイスについては前記欠陥情報中の欠陥位置の近傍に対応する部分のみを検査して欠陥情報を得る方法について説明する。
【0309】
第1段階として、第1の半導体デバイスについて、ブロックA、ブロックB、ステップS402、ステップS403を実行する。図81の左側ではステップS403を経て得られた第1の半導体デバイスの欠陥情報が模式的に示されている。第1の半導体デバイスから得られた外接長方形41の近傍に対応する画像を第2の半導体デバイスから取得して欠陥を検査する。図81の右側ではこのように限定的に検査された結果が第2の半導体デバイスから得られた欠陥情報として模式的に示されている。
【0310】
第2段階として、第1の半導体デバイスから得られた欠陥情報を第2の半導体デバイスから得られた欠陥情報と重ねる。図81では、外接長方形41が外接長方形42Aと外接長方形42Bと重なる。次にこれら3つの外接長方形を含む最小の外接長方形として共通外接長方形43を得る。この共通外接長方形43に存在する欠陥(図示されていない)を両半導体デバイスに共通に存在する欠陥、すなわち繰り返し発生する欠陥として認識する。同様の処理を外接長方形51に対して実施する。
【0311】
本実施例では、第1の半導体デバイスから得られた欠陥情報に含まれる全ての欠陥に関して第2の半導体デバイスの限定的な領域が検査される。よって、第1の半導体デバイスから得られた欠陥情報に含まれる欠陥の数が少ない場合は、この方法は、前述の5.1.1 第1の繰り返し発生する欠陥の認識方法に比べて高速に実行する。
【0312】
5.1.3 第3の繰り返し発生する欠陥の認識方法
第3の繰り返し発生する欠陥の認識方法として、一つの半導体デバイス全体から欠陥情報を得てOPCパターンが起因して発生する繰り返し発生する欠陥を認識する方法が使用できる。この方法は、同じOPCパターンをもったマスクデータに関連する基準パターンを、設計データのセル名を使って分類できる場合に使用できる。
【0313】
例えば、図82において、設計データの形状として、セル名CellAを持つ設計データのパターンとセル名CellBを持つ設計データのパターンは同じ形状であるが、異なったOPCパターンを持っているのでこれらの設計データのパターンは異なったセル名を持つ必要がある。もし、これらの設計データのパターンが同じセル名を持つ場合は、セル名と欠陥を検出するときに使用したセルの線分番号の組み合わせを使用する。この場合は厳密に基準パターンを分類できない。ここで設計データのセル名とは設計データを構成する固有幾何学情報のひとつである。他の設計データを構成する固有幾何学情報として設計データに対応するマスクデータのセル名を使用することができる。
【0314】
本実施例では、第1段階として、1つの半導体デバイスについて、ブロックA、ブロックB、ステップS402、ステップS403を実行する。図81の左側ではステップS403を経て得られた1つの半導体デバイスの欠陥情報が模式的に示されている。1つの半導体デバイスから得られた外接長方形41に対応する設計データのセル名を取得する。同様の処理を外接長方形51に対して実施する。
【0315】
第2段階として、欠陥情報を取得されたセル名によって分類する。もし、同一のセル名に属する欠陥の数が複数あれば、OPCパターンが起因して発生する繰り返し発生する欠陥として認識する。そうでなければ、前述の5.1.2 第2の繰り返し発生する欠陥の認識方法を使用して、欠陥が繰り返し発生する欠陥かどうか認識される。
【0316】
本実施例によれば、設計データのセル名により同じOPCパターンをもったマスクデータと関連する基準パターンを分類できる場合は、1つの半導体デバイスを検査することによりOPCパターンに起因する繰り返し発生する欠陥を認識することができる。この結果、検査時間を短縮することが可能になる。
【0317】
5.1.4 第4の繰り返し発生する欠陥の認識方法
図83は、設計データに基づいて製造された同じホトマスクパターンを複数もつホトマスクから製造された半導体デバイスの例を示す模式図である。この場合は、ホトマスクを使った一度の露光で同時に複数の半導体デバイスが製造される。図83に示されるように、設計データのエラーは全ての半導体デバイスに繰返し発生する欠陥を発生させるが、ホトマスク上の欠陥はホトマスク座標で記述された同じ位置に繰返し発生する欠陥を発生させる。このような半導体デバイスには、第4の繰り返し発生する欠陥の認識方法として、以下の手順が使用できる。
【0318】
本実施例では、第1段階として、ホトマスクを使った一度の露光で同時に製造された複数の半導体デバイスについて、前述の5.1.1 第1の繰り返し発生する欠陥の認識方法を使用して欠陥情報を得て、繰り返し発生する欠陥を認識する。得られた繰り返し発生する欠陥は設計データのエラーに起因する繰り返し発生する欠陥と認識される。次に、複数の半導体デバイスから得られた全ての欠陥情報から繰り返し発生する欠陥を除いた欠陥を繰り返し発生しない欠陥と認識する。
【0319】
第2段階として、ホトマスクを使った別の一度の露光で製造された半導体デバイスに対して、得られた繰り返し発生しない欠陥が存在するホトマスク座標で記述された位置の近傍を検査して欠陥情報を得ることにより、繰り返し発生する欠陥として認識する。上記の処理のために前述の5.1.2 第2の繰り返し発生する欠陥の認識方法が使用される。この場合は、少なくとも一つの半導体デバイスの検査領域の全体から検出された欠陥を使用する代わりに、前述の繰り返し発生しない欠陥を使用する。この変形された5.1.2 第2の繰り返し発生する欠陥の認識方法で得られた繰り返し発生する欠陥はマスク上の欠陥に起因する繰り返し発生する欠陥と認識される。繰り返し発生する欠陥以外の欠陥は、半導体デバイスの粒子などのランダム欠陥と認識される。
【0320】
一般に設計データのエラーに起因する繰り返し発生する欠陥の数は、マスク上の欠陥に起因する繰り返し発生する欠陥の数より非常に多い。従って、本実施例によれば、前述の5.1.1 第1の繰り返し発生する欠陥の認識方法5.1.2 第2の繰り返し発生する欠陥の認識方法より検査時間を短縮することが可能になる。また、欠陥を、設計データのエラーに起因する繰り返し発生する欠陥、マスク上の欠陥に起因する繰り返し発生する欠陥と、ランダム欠陥に分類できる。
【0321】
5.2 領域検査方法
前述の4.6 第1の検査4.12 第2の検査では設計データを単純に基準パターンに変換している。他の検査方法として、領域検査方法に適した基準パターンを、設計データを成す線分の幾何学情報もしくは接するか近接する設計データを成す線分同士の関係を使用して抽出する検査方法が使用できる。領域検査方法とは対向するエッジを使用する検査方法を意味している。
【0322】
領域検査方法として、直線形状パターンの線幅検査方法、平均線幅検査方法、スペース幅検査方法、平均スペース幅検査方法、曲線形状パターンの線幅検査方法、平均線幅検査方法、スペース幅検査方法、平均スペース幅検査方法、切断もしくは短絡しやすい部分の検査方法、および、ゲート線幅検査方法が使用できる。
【0323】
5.2.1 直線形状パターンの線幅検査方法、平均線幅検査方法、スペース幅検査方法、および平均スペース幅検査方法
線幅、平均線幅、スペース幅、および平均スペース幅のモニタリングによって半導体デバイスのプロセスを管理する方法がある。本実施例によれば、線幅、平均線幅、スペース幅、もしくは平均スペース幅の検査に適した基準パターンを、設計データから抽出し、抽出された基準パターンごとに、線幅、平均線幅、スペース幅、もしくは平均スペース幅の許容パターン変形量を設定する検査方法が実現できる。これらの検査方法は以下の手順で実施される。
【0324】
図84では、線幅検査用に適した基準パターンを設計データから自動的に抽出する規則を模式的に示している。設計データの直線形状パターンであって、指定された最大線幅Lwより細く、かつ、指定された最小線長Lmより長い直線形状パターンが線幅検査用に適した基準パターンが対象になる。図84の左側で示すように、設計データには3つの直線形状パターンがある。左の直線形状パターンは処理の対象になるが、中の直線形状パターンは最大線幅Lw以上なので、処理の対象にならない。また右の直線形状パターンは最小線長Lm以下なので処理の対象にならない。
【0325】
次に、図84の右側の部分で示すように、選別された直線形状パターンを、その終端から指定された終端非使用長Lo分内側に縮める。この直線形状パターンを区間長Liの長方形に分割し、分割された長方形が線幅検査用基準パターンA(実線で示されている)として登録される。また、ここで得られた線幅検査用基準パターンAの境界が中心にくる基準パターンB(二重線で示されている)を線幅検査用基準パターンBとして追加しても良い。
【0326】
基準パターンBを付加することによって、基準パターンAの境界およびその近傍に存在している欠陥の検出能力が向上する。基準パターンの大きさに対する欠陥の大きさの割合が高いほど、欠陥の検出能力は高い。欠陥が一つの基準パターンに存在している場合の基準パターンの大きさに対する欠陥の大きさの割合をRとする。同じ大きさの欠陥が二つの基準パターンに分割されて存在している場合の基準パターンの大きさに対する欠陥の大きさの各割合はRより小さくなる。従って、欠陥が一つの基準パターンに存在する場合の方が欠陥の検出能力が高くなる。
【0327】
図85に示すように、少なくとも1つのコーナーを持つ設計データの直線形状パターンに対しては、コーナー部分で長方形に分離してから処理を施す。図85の点線で示すコーナーを有したL字状多角形が実線で示す2つの長方形に分離されることになる。
【0328】
スペース幅検査は反転された設計データを使って上記と同様の処理を施すことで実現できる。反転された設計データとは、設計データの中のパターンの内部を外部に、外部を内部に反転したものである。図86では、スペース幅検査用に適した基準パターンを設計データから自動的に抽出する規則を模式的に示している。図86で示すように、Lm’、Lw’、Li’、Lo’はLm、Lw、Li、Loと意味は同じだが、一般に異なる値を使用する。これらの値を用いて、図84で説明した方法と同じ方法によりスペース幅検査を行えば良い。以上で使用したLm、Lw、Li、Lo、Lm’、Lw’、Li’とLo’の値は前述の3.3 レシピデータ「(5)線幅検査用に適した基準パターンの最大線幅、最小線長、終端非使用長、スペース検査用に適した基準パターンの最大線幅、最小線長、終端非使用長」として管理される。
【0329】
線幅検査用に適した基準パターンとスペース幅検査用に適した基準パターンを使う検査方法は、次の手順で実施される。
得られた基準パターンの線分であって設計データに存在していた線分に対応する検査対象パターン画像のエッジの平均エッジ位置を計算する。この平均エッジ位置間の距離を計算し、得られた距離と設計データの線幅もしくはスペース幅Wとの差が3.3 レシピデータ「(2)線幅の許容パターン変形量」もしくは「(2)スペース幅の許容パターン変形量」を超えた場合にこの基準パターンに対応する部分が欠陥をもつと認識する。
【0330】
図87に線幅検査用に適した基準パターンとスペース幅検査用に適した基準パターンを使う検査方法が模式的に示されている。基準パターンには設計データに存在していた二重線で示された線分Ldと長方形に分離したときに付加された線分Leがある。図72に示すように、線分Ldに対して垂直方向にプロファイルを取得し、図76に示すようにそのプロファイルからエッジを求める。これらの求めたエッジ位置の平均を取り平均エッジ位置を求める。
【0331】
図87では左側の平均エッジ位置Aと右側の平均エッジ位置Bが得られる。次に左側の平均エッジ位置Aと右側の平均エッジ位置Bの距離W’を求め、この距離W’と設計データの線幅Wとの差を求める。この差が許容パターン変形量以上なら、基準パタ−ンに対応する部分に欠陥があると認識する。
別の方法として、線分Ld上の各プロファイルを取得してこれらのプロファイルを平均して平均エッジ位置を求める方法が使用できる。
【0332】
以上では平均線幅検査もしくは平均スペース幅検査の方法を示したが、平均値を使用せずに各々の線幅もしくはスペース幅を検査する方法を使用しても良い。
なお、後述するように、5.3.1 ゲート線幅検査方法は直線形状パターンの線幅検査方法と直線形状パターンの平均線幅検査方法の一種である。5.3.1 ゲート線幅検査方法では、線幅検査に適した基準パターンとしてゲートパターンを抽出する方法が追加されている。
【0333】
5.2.2 曲線形状パターンの線幅検査方法、平均線幅検査方法、スペース幅検査方法、および平均スペース幅検査方法
前述の領域検査方法では実施できない曲線形状パターンの線幅、平均線幅、スペース幅、および、平均スペース幅検査方法が使用できる。曲線形状パターンとして設計データのコーナー部分が典型である。曲線形状パターン検査方法には複雑な計算を必要とするが、直線形状パターンと同様にこれらの検査方法が半導体デバイスのプロセスを管理する方法として重要である。
【0334】
図88は、設計データのコーナー部分から線幅検査に適した基準パターンを得る手順を模式的に示す図であり、図89は、設計データのコーナー部分である曲線形状パターンの最小線幅検査の手順を模式的に示す図である。
【0335】
図88に示すように、設計データから得られた基準パターン(点線で示されたL字状多角形)から直線形状パターンの線幅検査に適した基準パターン(実線で示された二つの長方形)を削除して得られた多角形CP1,CP2,CP3を得る。得られた多角形であって終端を含むパターンではない多角形CP2が設計データのコーナー部分の線幅検査に適した基準パターンとして選ばれる。
【0336】
検査の対象となる線幅とは、設計データに存在していた線分に対応する曲線(図89の太い実線で示され、図18に示すように曲線で補正されたコーナー部分を有するL字状の線分に相当する曲線)間の最小距離である。まず、これらの曲線に対応する第2のエッジを検出する(図72から図76参照)。図89で図示の二重線はプロファイル取得区間を表し、黒丸(●)は検出された第2のエッジを表している。
【0337】
以下の処理を左下側の曲線に対応する全ての検出された第2のエッジについて実行する。
(1)左下側の曲線に対応する1つの検出された第2のエッジと右上側の曲線に対応する全ての検出された第2のエッジとの距離を求める。
(2)得られた距離の中で最小のものを得る。
得られたそれぞれの距離の最小値が前述の3.3 レシピデータ「(2)許容される最小線幅」未満なら、この基準パターンに対応する部分に欠陥が存在していると判断する。ここで、最小距離の代わりに、平均線幅を計算して、平均線幅を検査する方法を実行しても良い。
【0338】
曲線形状パターンは一般に線幅の異なる複数の直線形状パターンからなっている。また、曲線形状パターンは回路の接続に使用される。以上の理由から許容パターン変形量を使用する線幅検査方法よりも最小線幅検査方法が適している。
【0339】
他の方法として、Erosion演算を使用する方法が使用できる。Erosion演算は、前述の4.6.1 異常パターン変形量を持った欠陥の認識方法で説明した。図90は、Erosion演算を使用して設計データのコーナー部分である曲線形状パターンの最小線幅検査の手順を模式的に示す図である。Erosion演算を使用する最小線幅検査方法は以下の手順で実行される。
【0340】
(1)左下側の検出された第2のエッジと右上側の検出された第2のエッジを時計回り又は反時計回りに連続的に連結して多角形を作る。図90においては、全ての検出された第2のエッジは、矢印CW1−CW5で示すように、線分によって時計回りに連続的に接続されている。
(2)得られた多角形を2値化ビットマップに変換する。(図90の格子状の部分)
(3)多角形CP2を作成したときに付加された線分Lcに、Erosion演算で使用される構造要素の半径の幅を持った長方形を付加する。(図90のドットで示す2つの長方形部分)
【0341】
(4)得られた2値化ビットマップのErosion演算の結果を求める(図90の太線で囲まれた2つの領域Me)。Erosion演算で使用する構造要素は、前述の3.3 レシピデータ「(2)線幅の許容パターン変形量の−側の限界値」の絶対値を直径とする円を使用する。
(5)もし線分Lcに対応するビットマップの部分ILcが上記の領域Meで連結していれば、この基準パターンに対応する部分に欠陥がないと判断される。しかしこの場合、線分Lcに対応するビットマップの部分ILcが上記の領域Meで連結していないので、この部分に欠陥が存在すると判断される。
【0342】
前述の方法の(1)から(5)の等価な処理として、矢印CW1−CW5で示された多角形をサイズ処理しても良い。この場合は、2本の線分Lcはサイズ処理を実施しない。それ以外の多角形の線分は、前述の3.3 レシピデータ「(2)線幅の許容パターン変形量の−側の限界値」の絶対値の半分の量のサイズ処理を実施し多角形を縮める。サイズ処理後の多角形が2本の線分Lcそれぞれに対応する線分を含んでいれば、この基準パターンに対応する部分に欠陥がないと判断される。そうでなければこの部分に欠陥が存在すると判断される。
以上の処理は線幅検査であったが、スペース幅についても同様に検査される。
【0343】
以上の領域検査に関わる本実施例を使用すれば、これらの領域検査が複数のエッジの情報を使用しているので、欠陥検出能力、および欠陥認識精度が向上する。
【0344】
5.2.3 切断もしくは短絡しやすい部分の検査方法
前述の5.2.2 直線形状パターンの線幅もしくはスペース幅検査方法の一種に、切断もしくは短絡しやすい部分の検査方法が使用できる。図91は、切断もしくは短絡しやすい部分の抽出方法を模式的に示す図である。図91の左側に示すように、線幅が前述の3.3 レシピデータ「(5)切断しやすい部分の最大線幅Bw」より狭く、かつ、前述の3.3 レシピデータ「(5)切断しやすい部分の最大線長Bl」より短い、設計データの直線形状パターンの部分である長方形γによって示される部分が抽出される。
【0345】
この抽出された部分である長方形γが切断されやすい部分に該当し基準パターンとして登録される。長方形γの両側である線分αと線分βに対して図87で示した第2のエッジ検出を行うことで検査を行う。線分βはコーナーの丸みがあるので平均線幅を試用せずに各々の線幅が検査される。
【0346】
同様に、短絡しやすい部分については、図91の右側に示すように、前述の3.3 レシピデータ「(5)短絡しやすい部分の最大スペース幅Sw」,前述の3.3 レシピデータ「(5)短絡しやすい部分の最大スペース長Sl」を使って得られた長方形ζが短絡しやすい部分として登録され、スペース幅が検査される。
【0347】
切断もしくは短絡しやすい部分の別の検査方法は、図92に示すように以下の手順で行われる。
図92の左側は切断しやすい部分の検査方法を模式的に示しており、図92の右側は短絡しやすい部分の検査方法を模式的に示している。図92の太い黒枠で示された長方形パターンは、図91の長方形γ,長方形ζと同じである。また、図92の格子状の部分に対応する画像部分には明確に下地とコントラストがあるが、ドットで示す部分に対応する画像部分には下地に薄いコントラストがある。図92の左側のドットで示す部分は、切断している状態が示されている。また、図92の右側のドットで示す部分は、短絡している状態が示されている。
【0348】
このような場合には3種類のエッジが存在している。1つは下地と格子状の部分の境界に存在するエッジであり、もう1つは下地とドットで示す部分の境界に存在するエッジである。最後は格子状の部分とドットで示す部分の境界に存在するエッジである。図92の左側に示すような切断の場合は、下地とドットで示す部分の境界に存在するエッジが検出されてしまい、欠陥が検出されない。また図92の右側に示すような短絡の場合は格子状の部分とドットで示す部分の境界に存在するエッジを検出してしまい、欠陥が検出されない。このような場合でもドットで示す部分に存在する欠陥を以下の方法で検出できる。
【0349】
Gで示された長方形γおよび長方形ζが含まれる8つの区間について図示の矢印方向に第2のエッジが存在するか検査する。これら8つの区間には、切断もしくは短絡しやすい部分ともに第2のエッジが存在してはならない。よって、これらの8つの区間に第2のエッジが検出された場合には、長方形γもしくは長方形ζは欠陥と認識されることになる。
本実施例によれば、薄いコントラストで観察される切断もしくは短絡した欠陥を検出できる。また、切断もしくは短絡したという情報を持つ欠陥種を設定できる。
【0350】
以上のこれらの領域検査に関わる本実施例によれば、オペレータの検査では不可能な広い範囲の検査が可能になる。
【0351】
5.3 基準パターンの論理演算の結果を使用する検査方法
前述の4.6 第1の検査4.12 第2の検査では検査時の工程に関する基準パターンを使って検査される。しかし、検査時の工程に関する基準パターンと検査時の工程に関連する工程に関する基準パターンとの論理演算の結果を使用する検査方法によって、より高度な検査が実現可能である。
【0352】
5.3.1 ゲート線幅検査方法
基準パターンの論理演算の結果を使用する検査方法の第1の方法として、論理演算を使用して領域検査に適した基準パターンを抽出して検査する方法が使用できる。この方法としてゲート線幅検査方法とエンドキャップ検査方法が実施される。
【0353】
半導体デバイスの検査にトランジスタのゲート幅検査がある。ゲート幅検査の対象はポリシリコン工程とアクティブ工程(ポリシリコン工程の前工程)の重なった部分である。図93は、検査時の工程(ポリシリコン工程)に関する基準パターンとその前後する工程(アクティブ工程)に関する基準パターンとの論理積演算で得られた基準パターンを使用する検査方法を示す図である。
【0354】
ポリシリコン工程に関する基準パターンとアクティブ工程に関する基準パターンの論理積演算で基準パターンC(実線で示された長方形)を得る。ここで使用している論理積演算は、計算幾何学で使用されている方法を用いている。検査は基準パターンCを使って前述の5.2.1 直線形状パターンの線幅検査方法、平均線幅検査方法と同様に実行する。
【0355】
本実施例によれば、ゲート部分を自動的に抽出できる。この結果、半導体デバイス全体の全てのゲート線幅の自動的検査が可能になり、半導体デバイスの性能向上に大きく貢献することができる。
【0356】
5.3.2 エンドキャップ検査方法
終端の検査方法として、ゲート部分のエンドキャップの検査がある。まず、エンドキャップの認識方法を説明する。図93のポリシリコン工程に関する基準パターンから基準パターンCを取り除いてできる多角形を求める。図93のポリゴンFとポリゴンGがこれにあたる。これらのパターンであって以下の条件を満たすものをエンドキャップと認識する。
(1)線幅W(図93)が指定値以下の長方形であること
(2)終端である線分と相対する線分までの長さD(図93)が指定値以下であること
【0357】
これらの条件を満たすものはポリゴンFとなる。次に、ポリゴンFの中の終端を、図69(a)および図69(b)と同様に検査する。ゲートのエンドキャップの縮み管理のための許容パタ−ン変形量は単純な終端の縮み管理のための許容パターン変形量より小さい。これは、有効なゲート長を確保する必要があるからである。
本実施例を用いれば、ゲートのエンドキャップに単純な終端より小さい許容パターン変形量を自動的に設定することができるので、ゲートのエンドキャップをより厳密に検査することが可能になる。
【0358】
5.3.3 コンタクトホール/ビアホールに接する配線パターンの終端に対する許容パターン変形量の適応設定方法
基準パターンの論理演算の結果を使用する検査方法の第2の方法として、コンタクトホール/ビアホールに接する配線パターンの終端に対する許容パターン変形量の適応設定方法が使用できる。この方法では、コンタクトホール/ビアホールとの接続に使用する終端で一定値以上のマージンが無いものを識別して、認識された終端に許容パターン変形量を適応的に設定して終端を検査する。図94では、この方法が模式的に示されている。
【0359】
配線パターンの終端とコンタクトホール/ビアホールの接触面積が検査されている。同じような形状の終端であっても、コンタクトホール/ビアホールとの接続に使用する終端の終端の縮み管理のための許容パタ−ン変形量は、単純な終端の終端の縮み管理のための許容パタ−ン変形量より小さい。これは、接触面積を確保する必要があるからである。
【0360】
コンタクトホール/ビアホールに接する配線パターンの終端に対する許容パターン変形量は、配線工程とコンタクトホール/ビアホール工程のオーバーレイエラーと終端のマージンを考慮して決められる。ほとんど全ての終端のマージンは一定値以上を確保している。しかし、込み入った配線の場合は終端のマージンが一定値以上を確保できない場合がある。
【0361】
コンタクトホール/ビアホールとの接続に使用する終端で一定値以上のマージンが無いものを識別する方法は以下の手順で実施される。
(1)配線パターンの終端である線分Leaを含み、配線パターンの内側方向に許容パターン変形量の長さをもつ図94の左上の枠内の実線で示す長方形を作る。以降、これらの長方形を終端近傍パターンと呼ぶ。
【0362】
(2)終端近傍パターンとコンタクトホール/ビアホール工程に関する基準パターンとの論理積の結果が領域として得られる。この領域はドットで示された長方形領域である。一定値以上のマージンがない終端が、論理積演算で得られる領域を発生させる。
【0363】
この領域の発生に関係した配線パターンの終端の縮みの許容パターン変形量を、他の終端に対する終端の縮みの許容パターン変形量より小さくする。小さくする量は図94における長さΔである。認識された終端に長さΔを反映した許容パターン変形量を適応的に設定して、この終端を検査する。
【0364】
本実施例によれば、コンタクトホール/ビアホールとの接続に使用する終端のマージンによって、終端の縮みの許容パターン変形量を適応的に設定することができる。
【0365】
5.3.4 接触面積の検査方法
基準パターンの論理演算の結果を使用する検査方法の第3の方法として、コンタクトホール/ビアホールと配線パタ-ンの終端との接触面積を検査する方法が使用できる。図95(a)および図95(b)はこの方法を示す図である。
【0366】
まず、図93で示した方法と同じ方法で配線工程の基準パターンとコンタクトホール/ビアホール工程の基準パターンの論理積演算によって基準パターンRcaを得る。論理積演算は、5.3.1 ゲート線幅検査方法で説明している。
【0367】
次に、図87と同じ方法で設計データに存在していた二重線で示された線分Ldに対するエッジを検出する。この検出されたエッジをつなげて多角形Pcaを得る。図87の点線で示された各線分は、線分Ldの1つに対する検出されたエッジの終端を他の線分Ldに対する検出されたエッジと接続する。
【0368】
最後に多角形Pcaの面積と基準パターンRcaの面積の比が計算される。得られた比が前述の3.3 レシピデータ「(2)許容される接触面積検査比」より小さければ、基準パターンRcaに対応する部分に欠陥が存在していると判断される。
【0369】
5.4 検査対象パターンの線幅の測定値から得られた統計量を使ったプロセス条件の管理方法
CD―SEMを使って得られたウェーハ上の数ショットの数ヶ所の検査対象パターンの線幅の測定値を使った、プロセス条件を管理する方法が使用されている。図96は、CD―SEMを使って検査対象パターンの線幅の測定値を得る位置の例を示す模式図である。図96の黒丸(●)は、検査対象パターンの線幅の測定値を得る位置を示している。各検査対象パターンの線幅の測定値を得る位置は、平均エッジ位置を求めるために使用するプロファイル取得区間の中心位置である。プロファイル取得区間は、長方形を成し、この長方形の各辺の長さは、検査対象パターンの線幅程度である。各位置から検査対象パターンの線幅の1つの測定値が得られる。図96で示された例では、5ショットの5箇所の位置から25個の検査対象パターンの線幅の測定値を得てプロセス条件を管理している。
【0370】
しかしながら、検査対象パターンの微細化により、CD―SEMを使って得られたウェーハ上の数ショットの数ヶ所の検査対象パターンの線幅の測定値の精度が、プロセス条件を管理する管理値として不十分になってきた。以下の項目が理由としてあげられる。
【0371】
(1)検査対象パターンの線幅の1つの測定値の誤差が、プロセス条件の管理値の許容誤差に近づいてきた。検査対象パターンの線幅の測定値の平均値を使って、検査対象パターンの線幅の測定値の精度を向上する必要がある。
【0372】
この問題を解決するためには、一辺が1μm以上の検査領域に存在する検査対象パターンから検査対象パターンの線幅の測定値を得て、得られた検査対象パターンの線幅の測定値の平均値を使う方法が使用できる。図97は、検査対象パターンの線幅の測定値を得る検査領域の例を示す模式図である。図97(a)は、図96に示したショットと同じである。図97(b)の正方形は、一辺が1μm以上の検査領域を示している。図示上の便宜上、検査領域を示すために使った正方形は大きいが、ショットの大きさに比べて検査領域の大きさは非常に小さい。
【0373】
これ以降、検査対象パターンの線幅の測定値として前述の5.3.1 ゲート線幅検査方法を使って得られたゲート線幅を使う方法を説明する。この方法を使用すれば、自動的に検査領域からゲート部分を抽出して、抽出されたゲート部分が、検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所として設定できる。ゲートの線幅が45nm程度で検査領域の一辺が1μm以上なので、検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所が非常に多い。本実施例を現実に実行するためには、検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所を自動的に設定しなければならない。
【0374】
(2)プロセス条件の変動が引き起こすウェーハの位置に依存する検査対象パターンの線幅の変動がより大きくなってきた。ウェーハ上の数ショットの数ヶ所の検査対象パターンの線幅の測定値では、前記の変動を管理するには不十分であり、数多くの検査領域に存在する検査対象パターンから検査対象パターンの線幅の測定値を得る必要がある。
【0375】
この問題を解決するためには、一辺が1μm以上の検査領域をショットごとに配置して、ショットごとに配置された検査領域をウェーハ内のショットを設定して、これらの検査領域から検査対象パターンの線幅の測定値を得る。図97(c)の正方形は、ショット内に配置された一辺が1μm以上の検査領域の例を示している。図示上の便宜上、検査領域を示すために使った正方形は大きいが、ショットの大きさに比べて検査領域の大きさは非常に小さい。
【0376】
検査領域は、必ずしもショット内で一定の間隔で配置する必要はなく、プロセス条件の変動を受けやすい部分に配置することが望ましい。ウェーハ内の全てのショットに、ショットごとに配置された検査領域を設定してもよいし、間引かれたショットに設定しても良い。
【0377】
次に、以下の方法で検査対象パターンの線幅の測定値から、統計量が得られる。
(A)全ての検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る。図98(a)は、全ての検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る例を示す模式図である。
(B)各ショット内の検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る。図98(b)は、各ショット内の検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る例を示す模式図である。
(C)各検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る。図98(c)は、各検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値を使って統計量を得る例を示す模式図である。
前記の(B)の方法を使えばウェーハ内での線幅変動の傾向が解析できる。(C)の方法を使えば各ショット内での線幅変動の傾向が解析できる。
【0378】
(3)プロセス条件の変動が引き起こす検査対象パターンの線幅の設計値に依存する検査対象パターンの線幅の変動がより大きくなってきた。ウェーハ上の数ショットの数ヶ所から得られるショットの数ヶ所から得られる検査対象パターンの線幅の測定値では前記の変動を管理するには不十分であり、数多くの異なる検査対象パターンの線幅の設計値をもつ検査対象パターンから検査対象パターンの線幅の測定値を得る必要がある。検査対象パターンの線幅設計値以外で検査対象パターンの線幅の変動に関係する項目は、検査対象パターンに対応する設計データのパターンの方向、検査対象パターンに対応する設計データのパターンの種類、検査対象パターンと近接するパターン間のスペ−ス幅の設計値もしくは、前記検査対象パターンに対応する設計データのパターンの近傍に存在するパターンの密度などである。
【0379】
この問題を解決するために、以下のように、前述の検査対象パターンの線幅の変動に関係する項目を使って検査対象パターンの線幅の測定値を分類する。
【0380】
(A)検査対象パターンの線幅の設計値として、前述の5.3.1 ゲート線幅検査方法で説明した基準パターンCに対応する設計データのパターンの線幅を使用する。全ての線幅の設計値を使用せずに、線幅の設計値の範囲を使ってもよい。線幅の設計値の範囲の例として、30nm以上32nm未満の範囲、32nm以上34nm未満の範囲などが使用できる。線幅の設計値の範囲に対応する測定値から得られた統計量を使えば、より少ない統計量でプロセス条件の変動の管理が出来るようになる。
【0381】
検査対象パターンの線幅の設計値の範囲に対応する測定値から統計量を得ると、異なる検査対象パターンの線幅の設計値に対応する分布が融合するので統計量の精度が低下する。この対策として、検査対象パターンの線幅の測定値と前記測定値に対応する設計値の差を使用すれば、設計値の違いが補正されるので統計量の精度が低下しない。
【0382】
(B)検査対象パターンに対応する設計データのパターンの方向として、前述の5.3.1 ゲート線幅検査方法で説明した基準パターンCに対応する設計データのパターンの方向を使用する。多くのゲートは、縦方向もしくは横方向であるので、縦方向、横方向、および、それ以外で分離すればよい。45度の倍数の角度を用いてもよい。
【0383】
(C)前述の5.3.1 ゲート線幅検査方法で説明したアクティブ工程に関する基準パターンに対応する設計データが、P型半導体、N型半導体に区別できる場合は、検査対象パターンに対応する設計データのパターンの種類として、P型半導体、N型半導体が使用できる。
【0384】
(D)検査対象パターンと近接するパターン間のスペ−ス幅の設計値として、前述の5.3.1 ゲート線幅検査方法で説明した基準パターンCに対応する設計データのパターンの両脇のスペース幅を使用する。図99は、ゲートの両脇のスペース幅の例を示す模式図である。図99(a)の中央のゲートと図99(b)の中央のゲートは、同じ線幅であるが、スペース幅が異なる。図99(a)の中央のゲートは、スペース幅S11とS12を持っている。図99(b)の中央のゲートは、スペース幅S21とS22を持っている。スペース幅S11、S12、S21とS22は、それぞれ異なる。この場合は、これらのゲートは違うゲートの型として分類される。前記(A)の線幅の範囲と同じ方法で、スペース幅の範囲を使用してもよい。
【0385】
(E)検査対象パターンに対応する設計データの近傍に存在するパターンの密度として、ゲートの近傍に存在するパターンの密度を使用する。ゲートの両脇のスペース幅を使用した分類では、スペース幅が2つあり方向もあるので、細かく分類される。しかし、本方法では、1つの数値で分類するので緩やかに分類される。検査対象パターンの近傍に存在するパターンの密度は、以下の式で求める。
(近傍領域内のパターンの面積)/(近傍領域面積)
【0386】
図100は、検査対象パターンの近傍に存在するパターンの密度の例を示す模式図である。図100の太線で内部がハッチングされていないパターンはゲートを示し、破線は前記ゲートの近傍領域を示し、実線で内部がハッチングされたパターンは、近傍領域内のパターンを示している。図100(a)のゲートの近傍に存在するパターンの密度は、図100(b)のゲートの近傍に存在するパターンの密度より大きい。線幅と同様にパターンの密度の範囲を使用してもよい。
【0387】
以上では、一つの測定値と比較するために、平均値を統計量として使用している。検査領域から得られる測定値を使う場合は、標準偏差、最大値、最小値などが他の統計量として使用できる。前述の統計量は、一つの測定値から得られないので、前述の統計量は、CD―SEMを使って得られたウェーハ上の数ショットの数ヶ所の検査対象パターンの線幅の測定値から得られない。あるプロセス条件の変動が線幅の平均値の大きな変動を引き起こし、小さな線幅の標準偏差の小さな変動を引き起こすことがある。一方、他のプロセス条件の変動が線幅の平均値の小さな変動を引き起こし、小さな線幅の標準偏差の大きな変動を引き起こすことがある。このような場合は、平均値と標準偏差を使えば、プロセス条件の原因が特定できる。
【0388】
本実施例では、ショットを使って説明したが、ショットの中のダイを使ってもよい。また、5.3.1 ゲート線幅検査方法の代わりに、5.2.1 直線形状パターンの線幅検査方法、平均線幅検査方法、スペース幅検査方法、および平均スペース幅検査方法など、他の方法を使用して測定値を得てもよい。スペース幅を検査対象パターンの測定値にする場合は、以上の手順で使用した線幅とスペース幅を入れ替えて実施する。
【0389】
図101は、検査対象パターンの線幅の測定値の分布を示す模式図である。図101(a)は、一辺が6μmの検査領域の一つの例を示している。検査領域の中には、線幅が70nmの検査対象パターンが存在している。図101(a)の正方形は、1つの検査対象パターンの線幅を得る領域であって検査領域の中心位置に存在する領域を示している。検査対象パターンのスペース幅は、120nm,110nm,100nm,90nm,80nm,70nm,60nmである。
【0390】
図101(b)は、スペース幅ごとに、検査対象パターンの線幅の測定値の分布の正規確率プロットを示している。図101(b)の横軸は、検査対象パターンの線幅の測定値を示し、縦軸は、標準偏差を示している。表示された分布は、左側から右側に、120nm,110nm,100nm,90nm,80nm,70nm,60nmのスペース幅に対応する検査対象パターンの線幅の測定値の分布である。標準偏差は、それぞれ、0.59nm,0.61nm,0.60nm,0.65nm,0.75nm,0.94nm,1.31nmである。
【0391】
図101(c)は、スペース幅ごとに、検査領域の中心位置から得られた検査対象パターンの線幅の測定値と検査対象パターンの線幅の測定値の分布の平均値の差の絶対値を示している。差の絶対値は、スペース幅とは無相関でばらついている。検査領域の中心位置から得られた検査対象パターンの線幅は、検査対象パターンの線幅の測定値の分布の平均値に比べて誤差が大きい。
【0392】
図102は、同じ半導体デバイスの位置であるが異なったショットの検査対象パターンの線幅の測定値の分布を示す模式図である。図102(a)は、検査対象とするショットを示している。点でハッチングされたショットを中央のショット、格子でハッチングされたショットを上のショットと呼ぶ。これらのショットは、同じ条件で製造されたショットである。
【0393】
図102(b)の各正方形は、同じ半導体デバイスの位置の検査対象パターンの組を意味し、横軸の値が、中央のショットの検査対象パターンの線幅の測定値を示し、縦軸の値が、上のショットの検査対象パターンの線幅の測定値を示している。検査対象パターンの線幅は70nmで、スペース幅は60nmである。
【0394】
図102(b)から、中央のショットの検査対象パターンの線幅の測定値と、上のショットの検査対象パターンの線幅の測定値に相関関係はなく、分布の標準偏差が大きいことが分かる。このような場合に、1点の検査対象パターンの線幅の測定値を比較では、2つのショットが同じ品質で形成されているかどうか判断できない。また、図102(b)の検査対象パターンの線幅の測定値の平均値の差は、個々の検査対象パターンの線幅の測定値の差に比べて非常に小さい。
【0395】
図103(a)は、ショットごとの検査対象パターンの線幅の測定値の平均値の分布を示す模式図である。図103(b)は、ショットごとの検査対象パターンの線幅の測定値の標準偏差の分布を示す模式図である。図103(a)と図103(b)は同じ検査対象パターンの線幅の測定値を使用して表示されている。図103(a)と図103(b)で図示されたショットは、横方向にドーズを、縦方向にフォーカスを条件を変化させて、露光されている。
【0396】
図103(a)のショットAの検査対象パターンの線幅の測定値の平均値は、ショットBの検査対象パターンの線幅の測定値の平均値とあまり違わない。しかし、図103(b)のショットAの検査対象パターンの線幅の測定値の標準偏差は、ショットBの検査対象パターンの線幅の測定値の標準偏差とは大きく異なる。このような場合に、検査対象パターンの線幅の測定値の平均値を使ってプロセス条件を決めると、検査対象パターンの線幅の標準偏差が大きな半導体デバイスが製造され、製造された半導体デバイスが不良となる可能性がある。
【0397】
本実施例によれば、以下の効果が得られる。
(1)一辺が1μm以上の検査領域に存在する検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所が自動的に設定できる。検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所が非常に多いので、本実施例を現実に実行するためには、検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所を自動的に設定しなければならない。検査領域から得られた検査対象パターンの線幅の測定値の平均値は、一ヶ所から得られる1つの検査対象パターンの線幅の測定値より高い精度である。得られた検査対象パターンの線幅の測定値の平均値は、より精度のよいプロセス条件の管理値になる。さらに、検査対象パターンの線幅の測定値の標準偏差、最大値、最小値を使えば、プロセス条件の原因がより特定しやすくなる。
【0398】
(2)ショット内に配置された数多くの検査領域に存在する検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所が自動的に設定できる。検査領域が増えるにつれて検査対象パターンの線幅の測定値を得る場所は、更に多量になるので、自動設定の必要性がより高くなる。ショット内に配置された数多くの検査領域に存在する検査対象パターンから得られた検査対象パターンの線幅の測定値の統計量を使用すれば、プロセス条件の変動が引き起こすウェーハの位置に依存する検査対象パターンの線幅の変動がより精度よく解析できる。
【0399】
(3)検査対象パターンの線幅の変動に関係する項目ごとに検査対象パターンの線幅を分類して統計量を得る。プロセス条件の変動によって、前記の統計量の変動が異なる場合は、前記の統計量の変動からプロセス条件の変動の原因の特定が可能になる。
【0400】
5.5 検査対象パターンの個々の線幅の変化の管理方法
エッチングプロセス前に半導体デバイスから得られた測定値から統計量を得て、エッチングプロセス後に同じ半導体デバイスから得られた測定値から統計量を得て、得られた統計量を使って、エッチングプロセスが管理される。統計量は、前述の5.4 検査対象パターンの線幅の測定値から得られた統計量を使ったプロセス条件の管理方法で説明した方法で得られる。
【0401】
しかしながら、エッチングプロセス後の半導体デバイスから得られた測定値から得た統計量は、半導体デバイスの性能を管理する数値である。エッチングプロセス後の半導体デバイスから得られた測定値から得た統計量の成分には、エッチングプロセスの前の半導体デバイスが持つ成分とエッチングプロセスの効果の成分を含んでいる。より精度が高くエッチングプロセスを管理するには、エッチングプロセス前の半導体デバイスが持つ成分を除くことが望ましい。
【0402】
この問題を解決するために、検査対象パターンの個々の線幅の変化の管理方法が使用できる。この方法は以下の手順で実施される。
【0403】
(1)前述の5.4 検査対象パターンの線幅の測定値から得られた統計量を使ったプロセス条件の管理方法で説明した方法を用いて、エッチングプロセス前の半導体デバイスから検査対象パターンの線幅の測定値WRiを取得する。添え字iは、場所を特定する記号である。
【0404】
(2)前述の(1)と同様に、エッチングプロセス後の同じ半導体デバイスから検査対象パターンの線幅の測定値WEiを取得する。
【0405】
(3)同じ検査対象パターンの線幅の測定値の差WRi-WEiを取得する。エッチングプロセス後の同じ半導体デバイスから検査対象パターンの線幅の測定値WEiの分布は、エッチングプロセス前の半導体デバイスから検査対象パターンの線幅の測定値WRiの分布と、エッチングプロセスの効果による分布の変化を含んでいる。しかし、線幅の測定値の差WRi-WEiの分布は、エッチングプロセスの効果による分布の変化のみがある。
【0406】
線幅の測定値の差WRi-WEiを使って5.5 検査対象パターンの個々の線幅の変化の管理方法と同じ手順でエッチングプロセスの効果に関する統計量を得る。得られた統計量を使ってエッチングプロセスを管理する。
【0407】
他の方法として、良品と判断された半導体デバイスから得られた検査対象パターンの線幅の測定値を得る方法が使用できる。前記の測定値をWGiで表わす。前記の検査対象パターンの製造のプロセスと同じプロセスで製造された半導体デバイスから得られた検査対象パターンの線幅の測定値WAiを得る。同じ場所に存在する検査対象パターンの線幅の測定値の差WGi-WAiを得る。この場合は、同じ場所は、ショットもしくはウェーハ上の同じ場所を意味している。得られた線幅の測定値の差WG-WAiを使い前述の方法で、このプロセスの管理ができる。
【0408】
幅の広い配線パターンである検査対象パターンが、検査対象パターンの線幅の設計値とはかなり違った線幅で形成されても、この検査対象パターンを含む半導体デバイスが正常に動作することがある。測定値WGiが得られた半導体デバイスと測定値WAiが得られた半導体デバイスが、このような状態で製造された場合に、測定値WGiとWAiが検査対象パターンの線幅の変形量の許容値を超えることがあるので、欠陥が検出されることがある。しかし、線幅の測定値の差WGi-WAiを使うことにより、欠陥を認識しないようにできる。
【0409】
本実施例によれば、エッチングプロセス前の半導体デバイスから得られる検査対象パターンの線幅の分布を含まないエッチングプロセスによる分布の変化が得られるので厳密にエッチングプロセスの管理ができる。さらに、欠陥として認識する必要がない線幅の違いを無視できるので、欠陥数を低減できる。
【0410】
5.6 プロセス条件の管理に使用する孤立パターンから得られる測定値
前述の4.10.4 孤立パターンの他の欠陥では、孤立パターンから得られる特徴量として、直径、面積、周囲長、円形度、モーメントなどを説明した。これら以外の特徴量として、孤立パターンから得られた外形から得られる最大空円の測定値と最小包含長方形の測定値が使用できる。これらの測定値は、プロセス条件の管理に使用する測定値に適している。
【0411】
これ以降、孤立パターンとして、コンタクトホールを使った例を説明する。コンタクトホール製造用のプロセス条件の管理に使用する最も単純な測定値として、コンタクトホールの幅と高さの測定値を使う方法が使われてきた。しかし、近年、円形ではないコンタクトホールで使用されるようになったので、コンタクトホールの幅と高さの測定値は、プロセス条件の管理に使用する測定値として精度不足になってきている。
【0412】
この対策として、コンタクトホールから得られる外形から得られる最大空円の測定値と、最小包含長方形の測定値を、コンタクトホール製造用のプロセス条件の管理に使用する方法が使用できる。図104は、コンタクトホールから得られる外形から得られる最大空円の測定値と、最小包含長方形の測定値を得る方法を示す模式図である。
【0413】
図104(a)と図104(b)の点線は、コンタクトホールから得られる外形を示し、黒丸(●)は、検出された第2のエッジを示している。検出された第2のエッジを順につなげて得られた多角形が、コンタクトホールから得られた外形である。
【0414】
図104(b)の円は外形から得られた最大空円を示している。図104(b)の長方形は外形から得られた最小包含長方形を示している。外形の内部にあり、外形の頂点を含まない最大の円が最大空円である。また、外形の外部にあり、外形の頂点を含まない最小の面積の長方形が最小包含長方形である。最大空円、最小包含長方形は、計算幾何学でよく知られた方法で得ることができる。
【0415】
コンタクトホールから得られた外形が円形状で近似できる場合は、最大空円と最小包含長方形の測定値は、幅と高さの測定値と同等の情報を持つ。しかし、図104(b)で示すように、コンタクトホールから得られた外形が円形状で近似できない外形の場合は、最大空円と最小包含長方形の測定値は、幅と高さより、プロセス条件の管理に使用する測定値として適している。最小包含長方形の面積は、コンタクトホールが傾斜している場合でもより正確にコンタクトホールの大きさを管理できる。最大空円の半径は、コンタクトホールのCVD(Chemical vapor deposition)工程に関する管理に使用できる。
【0416】
図105は、コンタクトホールのCVD工程で生じた欠陥の例を示す模式図である。図105(b)と図105(c)は、図105(a)の点線で示した線分に対応する断面図である。点線で示した線分は、最大空円の直径上にある。図105(b)と図105(c)のコンタクトホールの幅は、最大空円の半径RMECの2倍である。図105(b)は、CVD工程で形成した半径RMEC以下の膜の例を示し、図105(c)は、CVD工程で形成した半径RMEC以上の膜の例を示している。
【0417】
CVD工程で形成する膜の厚さより広い最大空円の半径RMECを持つコンタクトホールに膜を形成すると、コンタクトホール内に埋め込み不良が発生する可能性がある。このようなコンタクトホールを検出することによりCVD工程の管理がしやすくなる。
【0418】
前述の5.4 検査対象パターンの線幅の測定値から得られた統計量を使ったプロセス条件の管理方法と同じ方法を使い、ゲートの線幅の測定値の代わりに、前記の測定値を使用して、コンタクトホール製造用のプロセス条件を管理する。
【0419】
本実施例によれば、コンタクトホールから得られた外形が円形状で近似できない場合に、コンタクトホール製造用のプロセス条件の管理により適した測定値が得られる。
【0420】
5.7 設計データの類似度を使って検査結果を分類する方法
前述の5.4 検査対象パターンの線幅の測定値から得られた統計量を使ったプロセス条件の管理方法では、検査対象パターンの線幅の測定値を、検査対象パターンの線幅、方向、種類、検査対象パターンと近接するパターン間のスペ−スもしくは、前記検査対象パターンの近傍に存在するパターンの密度の少なくとも一つを使って分類している。
【0421】
しかし、前述の方法では、設計データの形状に起因する検査結果を解析するためには、分類が粗い。検査結果とは欠陥や異常な検査対象パターンの線幅の測定値などを含む。この問題を解決するために、設計データの類似度を使って検査結果を分類する方法が使用できる。本実施例では、設計データの類似度として、マッチング後のクリッピングされた設計データ間の距離を使った方法を説明する。マッチング後のクリッピングされた設計データ間の距離が短いほど、設計データの類似度が高いと判断される。設計データの類似度を使って検査結果を分類する方法は、以下の手順で実施される。
【0422】
(1)検査結果が得られる位置を得る。得られた位置が中心で、指定された大きさの長方形で設計データをクリッピングする。クリッピングで使用される長方形は、長方形の中心に影響を与えるパターンを含んでいる。図106は、欠陥の位置、クリッピングで使用される長方形、クリッピングされた設計データの例を示す模式図である。図106の黒丸(●)の位置は欠陥の位置を示し、点線はクリッピングで使用される長方形を示し、実線はクリッピングされた設計データを示している。図106の左側のクリッピングされた設計データは、長方形であり、左側の欠陥に対応している。図106の右側のクリッピングされた設計データは、頂点を8つ持つ多角形であり、右側の欠陥に対応している。以降、説明を簡単にするためにこの多角形を八角形と表現する。
【0423】
(2)欠陥に対応したクリッピングされた設計データをマッチングして、クリッピングされた設計データ間の距離を求める。図107は、クリッピングされた設計データのマッチングの例を示す模式図である。図107の長方形は、図106の左側のクリッピングされた設計データと同じであり、図107の八角形は、図106の右側のクリッピングされた設計データと同じである。マッチングに適したシフト量の一つとして、図107の長方形の頂点の一つと八角形の頂点の一つが一致するシフト量が使われる。マッチングに適したシフト量ごとに図107の八角形を移動して、長方形と八角形の間の距離を求める。
【0424】
図108は、クリッピングされた設計データ間の距離の例を示す模式図である。図108の長方形と八角形は、図107の長方形と八角形と同じである。本実施例では、以下の方法で距離を得る。
【0425】
(A)図108の長方形の一辺から八角形の他の辺までの距離の中の最小距離を得る。この最小距離をすべての長方形の辺から得る。
(B)図108の八角形の一辺から長方形の全ての辺までの距離の中の最小距離を得る。この最小距離をすべての八角形の辺から得る。
(C)前述の(A)(B)で得られた最小距離の中の最大距離を、クリッピングされた設計データ間の距離として得る。
【0426】
図108の矢印が、前述の(A)(B)で得られた最小距離を表わしている。長方形と八角形の左上の頂点は、一致しているので、長方形の上辺と左辺の最小距離は0である。
【0427】
前述の(C)で使用した最大距離の代わりに平均距離などをクリッピングされた設計データ間の距離として使ってもよい。また、クリッピングされた設計データの和演算(OR)で得られた多角形PORの面積と積演算(AND)で得られた多角形PANDの面積の比RO/Aを設計データ間の距離として使ってもよい。比RO/Aの代わりに、多角形POR、PANDから得られる値を使ってもよい。さらに、クリッピングされた設計データを画像に変換して、画像のマッチングから得られる値を使ってもよい。しかし、最小距離を使えば、前述の(A)(B)で得られた最小距離の一つが、クリッピングされた設計データ間の距離の許容距離を越したときに計算を打ち切れるので計算が最も速い。
【0428】
マッチングに適したシフト量ごとに、クリッピングされた設計データ間の距離を得る。得られた距離の中の最小距離を、マッチング後のクリッピングされた設計データ間の距離とする。
【0429】
(3)前述の(2)の処理を、全ての欠陥のペアごとに実施して、マッチング後のクリッピングされた設計データ間の距離のテーブルを作成する。図109は、マッチング後のクリッピングされた設計データ間の距離のテーブルの例を示す模式図である。図109の、D1からD5は、5つの欠陥を識別するシンボルである。縦方向の欠陥D1からD5と、横方向の欠陥D1からD5の交点上の数値は、マッチング後のクリッピングされた設計データ間の距離である。使用される設計データは、縦方向の欠陥のシンボルに対応する設計データと横方向の欠陥のシンボルに対応する設計データである。
【0430】
得られたマッチング後のクリッピングされた設計データ間の距離の一覧を使ったクラスター分析の方法を使って欠陥をクラスターに分類する。クリッピングされた設計データ間の距離の許容距離を15とした場合には、図109の欠陥D1、D2と、D3が一つのクラスターに、欠陥D4とD5が別のクラスターに分類される。
【0431】
本実施例では、設計データを使用しているが、設計データに対応するマスクデータや、リソグラフィ・シミュレータで得られたシミュレーションパターンの外形を使ってもよい。また、設計データを用いた方法、設計データに対応するマスクデータを用いた方法、リソグラフィ・シミュレータで得られたシミュレーションパターンの外形を用いた方法を組み合わせて使ってもよい。
【0432】
本実施例によれば、検査結果を、設計データの形状によって自動的に分類することができる。分類した結果から、検査結果に関係する検査対象パターンの形状の特定ができる。
【符号の説明】
【0433】
1 主制御部
2 記憶装置
3 入出力制御部
4 入力装置
5 表示装置
6 印刷装置
7 画像生成装置
11 基準パターン生成部
12 検査部
13 出力部
14 欠陥種認識部
21 基幹データベース
22 レシピデータベース
23 欠陥種参照データベース
24 欠陥情報記憶部
25 欠陥認識部
33A、33B、41、42 外接長方形
34 外接長方形
35、43 共通外接長方形
61〜70、75、81〜84 エッジ
101〜103 部分
111、113 線幅
112、114 スペース幅
121〜126 直線形状パターン
157 区間
159、163、165 検査対象パターン画像のエッジ
160、166 基準パターンのエッジ
164 基準パターンの終端を構成するエッジ
161 検査対象パターン画像のエッジの重心
162 基準パターンのエッジの重心
171 直線部分
172 コーナー
173 終端
174 孤立パターン
181 検査対象パターン画像のパターン
182、183 位置
184、185 高倍画像
186 検査対象パターン画像のパターンの幅
187 低倍画像
201 破線
202、203 実線
204 下地
205 パターン内部
206、207 ピクセルの固まり
251〜255 ピクセル
261 ピクセルの中心
262 ピクセルの中心に最も近い基準パターン上の点
263 接線
301〜304 検査単位領域
310 照射系装置
311 電子銃
312 集束レンズ
313 X偏向器
314 Y偏向器
315 対物レンズ
316 レンズ制御装置
317 画像取得装置
318 偏向制御装置
320 試料室
321 XYステージ
322 XYステージ制御装置
330 2次電子検出器
340 ウェーハ搬送装置
350 制御コンピュータ
360 操作コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象パターン画像と前記検査対象パターンを製造するために使用するデータを用いて検査するパターン検査装置であって、
前記データから線分もしくは曲線で表現された基準パターンを生成する生成手段と、
前記検査対象パターン画像を生成する生成手段と、
前記検査対象パターン画像のエッジを検出する手段と、
前記検査対象パターン画像のエッジと前記線分もしくは曲線で表現された基準パターンとを比較することにより、前記検査対象パターンを検査する検査手段とを備え、
前記検査対象パターンを検査する検査手段は、指定された領域に存在する検査対象パターンから得られた測定値から得られる統計量を使って検査することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン検査装置において、前記得られた統計量を使って、前記検査対象パターンを製造するときに使用する条件を最適化することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載のパターン検査装置において、前記測定値として、検査対象パターンの線幅もしくはスペース幅の測定値、検査対象パターンから得られる最大空円の測定値、最小包含長方形の測定値うち、少なくとも一つを使うことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載のパターン検査装置において、前記測定値と前記測定値に対応する前記データから得られる値の差を使って統計量を得ることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載のパターン検査装置において、前記得られた統計量として、平均値、標準偏差、最大値と、最小値のうち少なくとも一つを使うことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項6】
請求項1に記載のパターン検査装置において、前記指定された領域として、ウェーハ上のショット、前記ウェーハ上のダイ、前記ショットの一部分もしくは、前記ダイの一部分のうち少なくとも一つを使うことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン検査装置において、前記指定された領域として、一辺が1μm以上の領域を使うことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項8】
請求項1に記載のパターン検査装置において、前記測定値を、前記検査対象パターンに関する情報を使って分類し、前記分類した測定値から統計量を得ることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載のパターン検査装置において、前記検査対象パターンに関する前記情報として、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの線幅もしくはスペース幅、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの方向、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの種類、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの近傍に存在するパターンから得られる情報のうち少なくとも一つを使うことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載のパターン検査装置において、前記検査対象パターンに対応する前記データのパターンの近傍に存在するパターンから得られる情報として、前記近傍から得られるスペ−ス幅もしくは線幅、前記近傍に存在するパターンの密度のうち少なくとも一つを使うことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項11】
請求項1に記載のパターン検査装置において、前記検査手段は、前記検査対象パターンを製造するプロセスの前後で前記検査対象パターンから測定値を得て、同じ検査対象パターンから得られた測定値の差分値を得て、前記得られた差分値から統計量を得ることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項12】
請求項1に記載のパターン検査装置において、前記検査手段は、前記データを用いて製造された複数のダイもしくはショットの検査対象パターンから得られた測定値を得て、ダイもしくはショットの同じ場所に存在する検査対象パターンから得られた測定値の差分値を得て、前記得られた差分値から統計量を得ることを特徴とするパターン検査装置。
【請求項13】
検査対象パターン画像と前記検査対象パターンを製造するために使用するデータを用いて検査するパターン検査装置であって、
前記データから線分もしくは曲線で表現された基準パターンを生成する生成手段と、
前記検査対象パターン画像を生成する生成手段と、
前記検査対象パターン画像のエッジを検出する手段と、
前記検査対象パターン画像のエッジと前記線分もしくは曲線で表現された基準パターンとを比較することにより、前記検査対象パターンを検査する検査手段とを備え、
前記検査対象パターンを検査する検査手段は、検査対象パターンの最大空円の測定値、最小包含長方形の測定値のうち少なくとも一つを使用して検査することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項14】
検査対象パターン画像と前記検査対象パターンを製造するために使用するデータを用いて検査するパターン検査装置であって、
前記データから線分もしくは曲線で表現された基準パターンを生成する生成手段と、
前記検査対象パターン画像を生成する生成手段と、
前記検査対象パターン画像のエッジを検出する手段と、
前記検査対象パターン画像のエッジと前記線分もしくは曲線で表現された基準パターンとを比較することにより、前記検査対象パターンを検査する検査手段とを備え、
前記検査対象パターンを検査する検査手段は、前記検査手段で得られた結果に対応する前記データ、もしくは前記結果に対応する前記データを使って得られたシミュレーションパターンのうち少なくとも一つを使って得られた類似度を使って前記結果を分類することを特徴とするパターン検査装置。
【請求項15】
検査対象パターン画像を用いて検査するパターン検査方法であって、
前記検査対象パターン画像を生成し、
指定された領域に存在する検査対象パターンから測定値を得て、
前記得られた測定値を前記検査対象パターンに関する情報を使って分類し、
前記分類された測定値から統計量を得て検査することを特徴とするパターン検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92】
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【図93】
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【図94】
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【図95】
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【図96】
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【図97】
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【図98】
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【図99】
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【図100】
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【図101】
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【図102】
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【図103】
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【図104】
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【図105】
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【図106】
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【図107】
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【図108】
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【図109】
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【公開番号】特開2010−169661(P2010−169661A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268243(P2009−268243)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(301014904)株式会社ナノジオメトリ研究所 (15)
【Fターム(参考)】