説明

パチンコ釘用伸線材の製造方法

【課題】 従来のパチンコ釘以上に折れにくく耐久性に優れたパチンコ釘及びそれに適した銅基合金からなる伸線材の提供を目的とする。
【解決手段】質量%で、Cu:63.0〜67.0%、Pb:0.05%以下、Fe:0.05%以下及び残部がZnと不純物からなる銅基合金を用いた伸線材であって、平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする。
この伸線材を加工してパチンコ釘を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機に用いられる釘及びこのパチンコ釘の製造に適した伸線材に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機に用いられるパチンコ台の盤面には多数の釘が打たれている。
このパチンコ釘に小さな鋼球であるパチンコ玉が繰り返し当たり、これに耐えられるだけの耐久性が要求される。
近年、パチンコ台の高機能化に伴い、従来以上の耐久性がパチンコ釘にも要求されている。
現在、パチンコ台の盤としては、主にベニア合板製のパネルと樹脂製のパネルの二種類があり、これに合せて釘も長さが約33mmのものと約26mmのもの二種類が一般的に用いられている。
【0003】
特許文献1に、パチンコ台用の釘(部品)に使用できる銅合金を開示するが、必ずしもパチンコ釘に適したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3303301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のパチンコ釘以上に折れにくく、耐久性に優れたパチンコ釘及びそれに適した銅基合金からなる伸線材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパチンコ釘用伸線材は、質量%で、Cu:63.0〜67.0%、Pb:0.05%以下、Fe:0.05%以下及び残部がZnと不純物からなる銅基合金を用いた伸線材であって、平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする。
従来、一般的に使用されている黄銅製パチンコ釘の金属組織の平均結晶粒径は20〜30μmであったのに対して、本発明に係る伸線材の平均結晶粒径は10μm以下であり、好ましくは5μm以下にすることで、この伸線材を用いて製造されたパチンコ釘は、弾かれながら落ちるパチンコ玉に対して長期間折れにくくなり、耐久性が向上する。
【0007】
このようなパチンコ釘用伸線材の製造方法としては、質量%で、Cu:63.0〜67.0%、Pb:0.05%以下、Fe:0.05%以下及び残部がZnと不純物からなる銅基合金を用いて、直径6〜8mmの押出線を押出加工し、当該押出線を直径2.0〜2.5mmの伸線に伸線加工し、次に350〜450℃の温度で焼鈍し、次に直径1.8〜1.9mmの伸線に伸線加工する方法が適している。
伸線材の製造条件から説明すると、押出線を減面率84〜94%(好ましくは88〜92%)の範囲になるように引き抜き伸線加工し、その後に350〜450℃の温度で焼鈍し、さらに減面率37〜43%の範囲に入るように引き抜き伸線加工すると平均結晶粒径の大きさが10μm以下になる。
上記の方法で製造された伸線材は所定の長さに切断され、直径約4mmの頭部及び先端部を鍛造及び転造加工することでパチンコ釘となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るパチンコ釘は、従来のパチンコ釘と比較し、耐力値が向上し、繰り返し曲げ試験及びパチンコ玉当て試験においても優れた耐久性を有する。
従って、パチンコ台の使用期間の長寿命化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】伸線材の機械的特性の評価結果を示す。
【図2】伸線材の断面硬度測定結果を示す。
【図3】伸線材の金属組織写真を示し、(a)は本発明伸線材、(b)は従来材の比較材の顕微鏡写真を示す。
【図4】本発明に係るパチンコ釘の外観写真を示し、(a)は釘長さ33mmの例で(b)は釘長さ26mmの例である。
【図5】15°両振り繰返し曲げ試験結果を示す。
【図6】30°片振り繰返し曲げ試験結果を示す。
【図7】玉当て試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る伸線材の製造例とその材料特性及び試作したパチンコ釘の評価結果について説明する。
Cu:63.0〜67.0%(以下全て質量%)、Pb:0.05%以下、Fe:0.05%以下で残部がZnと不純物になるように黄銅合金の溶湯を調整し、黄銅材を鋳造した。
次に、φ7mmの丸線に押出加工し、この押出線をφ2.20mm伸線に伸線加工した。
このときの減面率は約90%である。
次に400℃の雰囲炉で連続焼鈍(2.3m/min)した。
さらに、φ1.835mm伸線に伸線加工(減面率約40%)し、本発明に係るパチンコ釘用伸線材を得た。
【0011】
一方、比較伸線材として上記鋳造材をφ8mmの押出線に押出加工し、この押出線をφ2.43mmの伸線に伸線加工し、雰囲炉620℃にてスピード2.3m/minで連続焼鈍し、次にφ1.835mmの伸線に伸線加工し比較伸線材を得た。
【0012】
伸線材の機械特性の評価結果を図1の表に示す。
これより、発明伸線材は比較伸線材と比べて引張り強さ、伸び表面硬度は同等だが、0.2%耐力が10N/mm程度高めになっており、図3に金属組織の写真例を示すように、(a)に示した発明伸線の平均結晶粒径は4〜5μmと(b)に示した従来の比較伸線材の平均結晶粒径20〜25μmより小さくなっていることが分かる。
なお、平均結晶粒径は、ランダムに10カ所測定し、その平均値とした。
また、伸線材の断面を中心から外周に向けて0.2mm刻みでビッカース硬度を測定した結果を図2のグラフに示す。この結果、発明伸線材は従来の比較伸線材と同等の結果であった。
尚、発明伸線材の表面状態は良好であり比較伸線材と差異は認められなかった。
【0013】
次に、上記の伸線材を用いて釘長さ約26mm頭径約φ4mm[図4(b)]のパチンコ釘を製造し、繰返し曲げ試験と玉当て試験を実施し、その結果を図5〜図7に示す。
<試験条件>
(1)15°両振り繰返し曲げ試験
釘の先をバイスに挟み、垂直状態に固定し、一方に15°折り曲げ、それから反対側に15°折り曲げる工程を1回として繰り返し折り曲げ試験を実施し、破断するまでの折り曲げ回数をカウントする。
(2)30°片振り繰返し曲げ試験
釘の先をバイスに挟み、垂直状態に固定し、一方に30°折り曲げ、それから垂直に戻す工程を1回として繰り返し折り曲げ試験を実施し、破断するまでの折り曲げ回数をカウントする。
(3)玉当て試験
予備的に、釘の先を固定し、垂直状態から10°(保持時間1秒)の曲げを2000回繰り返した(高越鋼業株式会社製 釘屈曲試験機)後に、パチンコ玉を発射圧0.28MPa、発射速度100発/minの条件で玉当て試験(高越鋼業株式会社製 釘耐久試験機)を実施し、釘が折れるまでの発射回数をカウントする。
(なお、玉当てには厚み10mmの樹脂製パネルに内径1.85mmの下穴を明け、これに長さ26mmの釘を打ち付け試験に供した。)
これより、15°両振り繰返し曲げ試験では発明釘は平均値942回での破断に対し、比較釘は平均値773回での破断と、発明釘の方が比較釘に比べて平均約22%耐久性が優れていることが確認できた(試験N数5回)。
また、30°片振り繰返し曲げ試験では発明釘は平均値394回での破断に対し、比較釘は平均値305回での破断と、発明釘の方が比較釘に比べて平均約29%耐久性が優れていることが確認できた(試験N数5回)。
玉当て試験は、試験N数10個の平均で発明釘が約5900回の発射回数で折れたのに対し、比較釘は約2360回で折れたことから2倍以上も寿命が延びたことになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Cu:63.0〜67.0%、Pb:0.05%以下、Fe:0.05%以下及び残部がZnと不純物からなる銅基合金を用いた伸線材であって、平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とするパチンコ釘用伸線材。
【請求項2】
質量%で、Cu:63.0〜67.0%、Pb:0.05%以下、Fe:0.05%以下及び残部がZnと不純物からなる銅基合金を用いた伸線材であって、平均結晶粒径が10μm以下である伸線材を加工して得られたことを特徴とするパチンコ釘。
【請求項3】
請求項2記載のパチンコ釘を用いたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項4】
質量%で、Cu:63.0〜67.0%、Pb:0.05%以下、Fe:0.05%以下及び残部がZnと不純物からなる銅基合金を用いて、直径6〜8mmの押出線を押出加工し、当該押出線を直径2.0〜2.5mmの伸線に伸線加工し、次に350〜450℃の温度で焼鈍し、次に直径1.8〜1.9mmの伸線に伸線加工することを特徴とするパチンコ釘用伸線材の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の製造方法にて得られた伸線材を用いて頭部直径約4mmの釘を製造することを特徴とするパチンコ釘の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−158780(P2012−158780A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17320(P2011−17320)
【出願日】平成23年1月29日(2011.1.29)
【特許番号】特許第4913910号(P4913910)
【特許公報発行日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(301073392)サンエツ金属株式会社 (9)
【出願人】(594063979)東永製鋲株式会社 (3)
【Fターム(参考)】