説明

パネルへのキャビネットの取付構造

【課題】キャビネットを、パネル前面の左右方向における所望の位置に、簡単かつ確実に取り付け得るようにする。
【解決手段】キャビネット本体1aの後部に、取付部材2を取り付ける。取付部材2は、キャビネット本体1aの上下後端部に設けた上向き凸条1bと下向き凸条1cとを、取付部材2の前側上下端に設けた受け溝23に係合させて取り付ける。取付部材2の後側上下端に設けた係止突片15を、パネル3側に設けた上下2条の左右方向に延びるレール10に、左右方向に移動可能に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間を間仕切りする間仕切パネルの前面にキャビネットを取り付けるための、パネルへのキャビネットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス等においては、ワーカーが働きやすい環境を提供するため、間仕切パネルを使用して執務空間を形成する場合が多く見られる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような執務空間では、ワーカーが執務に使用する物品を載置、収納しておくための、物品収納棚としてのキャビネットが設けられているのが望ましい。こうした要望に応えるため、従来では、執務空間の上方にキャビネットが配置されるようにして、間仕切パネルの前面にキャビネットを取り付けたものが見られ、その取付構造としては特許文献2のようなものが知られている。
【0004】
特許文献2で知られるキャビネットの取付構造は、上下に離間して複数の下向き係止爪が設けられているブラケットを、キャビネット本体後部に固着し、そのブラケットの係止爪を、間仕切パネルに設けている、上下の係止孔に各々係止させるとともに、別途用意される抜け止め手段により脱落を防止する構成となっている。
【特許文献1】特開平9−195549号公報
【特許文献2】特開平7−259220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されているキャビネットの取付構造は、キャビネットの取付位置を、上下方向には比較的自由に調整することができるが、左右方向には取付位置が指定されて、自由に取付位置を調整することができないという問題点があった。また、例え、脱落を防止する抜け止め手段を取り付けるのを忘れていても、キャビネットはパネルに取り付けられた状態になるので、抜け止め手段の取り付け忘れによる作業ミスに気づきにくく、安全性の面での問題点もあった。
【0006】
本発明は、上述のような従来の課題を解決するためになされたものであって、キャビネットを、パネル前面の左右方向における所望の位置に簡単、かつ確実に取り付けることが可能なパネルへのキャビネットの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)床面より立設された平板状の間仕切パネルの前面に、前面に開口を設けた箱状のキャビネットを取り付ける構造において、間仕切パネルの前面側に、内方に向かって凹入し、開口部下縁より上方を向く係止突片を設けてなる係止溝を有し、左右方向に延びるようにして平行に設けられている上下2条のレールと、キャビネット本体の後部における上下の端部に、それぞれ左右方向に延びるようにして形成されている上向き凸条及び下向き凸条と、キャビネット本体の後部と連結されて、キャビネットと共に2条のレールに跨って取り付けられる取付部材とを備え、前記取付部材が、前記上下2条のレールの各係止溝にそれぞれ対応して、上下の端部からそれぞれ裏面側後方に向かって下向きL字状に形成された上下1対の左右方向に延びる係止突片と、下端部から前面側前方に向かって上向きL字状に形成され、前記キャビネット本体後部の下向き凸条と係合して前記キャビネットの後部下端を保持する下側キャビネット受け溝とを有するフラップ取付材と、このフラップ取付材の上部に取り付けられ、フラップ取付材の上部から前面側前方に向かって下向きL字状に形成され、前記キャビネット本体後部の上向き凸条と係合されてキャビネットの後部上端を保持する上側キャビネット受け溝を有する押さえ金具とよりなり、前記取付部材の前記上下1対の係止突片を、前記係止溝の係止突片に、左右方向へ移動可能にかぎ止め係合させて、キャビネットを間仕切パネルに、取付部材と共に取り付ける。
【0008】
(2)上記(1)項において、フラップ取付材と押さえ金具とを、ボルト・ナットで着脱自在に固定する。
【0009】
(3)上記(1)または(2)項において、押さえ金具に、係止溝内に差し込み配置された状態において、フラップ取付材に取り付けられる取付片部を設け、押さえ金具をフラップ取付材に取り付けると、取付片部上端と係止溝開口部上縁との間の寸法が、フラップ取付材の取り外しに必要な幅よりも小さくなるように設定する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、間仕切パネルの前面に、左右方向に延びるようにして平行に設けられている上下2条のレールの各係止溝に、キャビネットを前方に向けて支持する取付部材の係止突片を、それぞれ着脱可能で、かつ、左右方向に移動可能に係合させて取り付けてあるため、レイアウト変更等による割付が変更になった際に、取付部材と共にキャビネットを左右方向に移動させて、左右の位置を自由に変更することができる。また、上下2箇所で支持するので、取付部材を強固に間仕切パネルに取り付けることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、フラップ取付材と押さえ金具とを、ボルトとナットで着脱自在に固定してあるため、着脱作業を簡単、かつ確実に行うことができ、作業性の向上が図ることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によると、押さえ金具をフラップ取付材に取り付けると、係止溝の上下方向の幅が取付部材の取り外しに必要な幅よりも小さくなり、抜け止め状態になるので、別途抜け止め部材の取り付けが不要になり、また抜け止め手段の取り付け忘れをなくして安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を実施して間仕切パネルにキャビネットを取り付けた状態を示す側面図である。図2は、図1におけるキャビネットの取付状態を、一部破断して示す上部拡大側面図、図3は、同じく一部破断して示す下部拡大側面図である。
【0014】
図1〜図3において、キャビネット(1)は、取付部材(2)を介して、間仕切パネル(3)の前面に、前方に突出した状態で取り付けられている。なお、取付部材(2)は、キャビネット(1)の大きさ、あるいは取付部材(2)の大きさに応じて、2つ以上、左右方向に並列させて用いる場合もある。
【0015】
また、キャビネット(1)は、前面に開口を設けた箱状のものであって、本体(1a)の上下面には、取付部材(2)との連結を予定する部分に凹所(D)を各々設け、この凹所(D)の形成により、本体(1a)の後部に左右方向に延びる上向き凸条(1b)と下向き凸条(1c)とが形成されている。
【0016】
間仕切パネル(3)は、上間仕切壁(4a)、中間仕切壁(4b)、下間仕切壁(4c)の、3枚のボード状をした間仕切壁を有する。各間仕切壁(4a)〜(4c)は、中間仕切壁(4b)の上下端に取り付けられている左右方向に沿って延びる上下1対の中間横フレーム(5)(5)により、上部間仕切壁(4a)及び下部間仕切壁(4c)を連結して1枚のパネル体として形成され、これが床面より立設された状態に配置されている。また、上部間仕切壁(4a)の上部と下部間仕切壁(4c)の下部には、それぞれ上横フレーム(6)と下横フレーム(7)が取り付けられている。
【0017】
図2,図3に示すように、上横フレーム(6)と中間横フレーム(5)には、前面側から内方に向かって凹入し、開口の縁部より上方に向って延びる下側係止突片(8a)と、同じく開口の縁部より下方に向って延びる上側係止突片(8b)とが設けられ、断面がほぼT字状をした係止溝(9)を有するレール(10)が、各フレーム(5)、(6)の左右両端間にわたって形成されている。
【0018】
取付部材(2)は、図4,図5に示すように、フラップ取付材(11)と、このフラップ取付材(11)と連結される押さえ金具(12)とで構成されている。なお、本例では、取付部材(2)を、上横フレーム(6)のレール(10)と中間横フレーム(5)のレール(10)とに跨らせて装着し、上部間仕切壁(4a)の前面にキャビネット(1)を取り付けた場合を一例として示しているが、これ以外にも、例えば、上下の中間横フレーム(5)(5)の各レール(10)間に跨らせて装着し、中間間仕切壁(4b)の前面に取り付けることもできる。
【0019】
フラップ取付材(11)は、図5に示すように、金属板をプレス成形して、本体部(13)と、本体部(13)の左右両側を裏面側後方へほぼ直角に折り曲げてなる左右の側壁部(14)(14)と、本体部(13)の上端側を裏面側後方に折り曲げ、かつ、図2に示すように、先端にレール(10)の下側係止突片(8a)とかぎ止め係合可能な下向きL字形の上側係止突片(15)を設けてなる上壁部(16)とを一体に設けて、後面と下面がそれぞれ開口された薄形トレー状に形成されている。また、上壁部(16)には、図5に示すように、左右に離れて複数の取付孔(17)が設けられている。本体部(13)の下端側には、一部を前面側前方に折り曲げ、上向きに開口している下側キャビネット受け溝(18)を形成してなる、上向きL字形の下側キャビネット受け片(19)が設けられている。左右の側壁部(14)(14)の下端側には、裏面側後方に向かって突出し、かつ、先端にレール(10)の下側係止突片(8a)とかぎ止め係合可能な下向きL字状形の下側係止突片(20)が設けられている。
【0020】
押さえ金具(12)は、図4に示すように、金属板をプレス成形して、押さえ片部(21)と、この押さえ片部(21)の前端から下方に向かってほぼ直角に折り曲げられた係止突片部(22)と、この押さえ片部(21)の後端から下方に向かってほぼ直角に折り曲げられ、下向きに開口している上側キャビネット受け溝(23)を係止突片部(22)と共に形成してなる後壁片部(24)と、この後壁片部(24)の下端から後方に向かってほぼ直角に折り曲げられた取付片部(25)とよりなる。また、取付片部(25)には、フラップ取付材(11)の上壁部(16)に設けられている取付孔(17)(17)と対応して、複数の取付孔(26)が左右に離れて設けられている。
【0021】
次に、このように構成された取付部材(2)を用いて、間仕切パネル(3)の前面にキャビネット(1)を取り付ける動作を説明する。
まず、取付部材(2)を、キャビネット(1)の本体(1a)の後端部に取り付ける。取付部材(2)の取り付けでは、図3に示すように、押さえ金具(12)と連結されていないフラップ取付材(11)を用意し、フラップ取付材(11)の下側キャビネット受け溝(18)に、キャビネット(1)の下向き凸条(1c)を挿入係合させ、本体(1a)の後面にフラップ取付材(11)を、上下方向に向かって這わせた状態で配置する。
【0022】
続いて、押さえ金具(12)を用意し、図2に示すように、押さえ金具(12)の上側キャビネット受け溝(23)に、キャビネット(1)の上向き凸条(1b)を挿入係合させ、かつ、取付片部(25)をフラップ取付材(11)の上壁部(16)に密着当接させる。
【0023】
次いで、押さえ金具(12)における取付片部(25)の取付孔(26)とフラップ取付材(11)における上壁部(16)の取付孔(17)に、押さえ金具(12)の上側からボルト(27)を通し、さらに上壁部(14)の下側からボルト(27)にナット(28)を締め付ける。このボルト(27)とナット(28)とで、フラップ取付材(11)と押さえ金具(12)とが強固に連結され、上下のキャビネット受け溝(23)(18)内に上下の凸条(1b)(1c)が係合された状態で、取付部材(2)がキャビネット(1)の後端部に固定して取り付けられ、取付部材(2)とキャビネット(1)とが一体化される。
【0024】
次いで、キャビネット(1)を取付部材(2)と共に持ち上げ、間仕切パネル(3)の右または左方向の一端側から、上側係止突片(15)を上横フレーム(6)の係止溝(9)に係合させるとともに、下側係止突片(20)を中間横フレーム(5)の係止溝(9)に係合させる。係合後、取付部材(2)をキャビネット(1)と共に左右方向に所定の位置までスライドさせると、キャビネット(1)を間仕切パネル(3)の左右方向の所望の位置に、間仕切パネル(3)の前面より前方に突出した状態で配置することができる。なお、上側係止突片(15)を上横フレーム(6)の係止溝(9)に係合させると、押さえ金具(12)の取付片部(25)も係止溝(9)内に配置された形態になる。下側係止突片(8a)の上側への突出量を、図3に示す寸法(B)とし、取付片部(25)の上面と上側係止突片(8b)の下端との隙間を、図2に示す寸法(A)とすると、寸法(A)を寸法(B)よりも小さくなるように設定し、これにより抜け止め機能をもたせてある。このため、取付部材(2)は、上横フレーム(6)と中間横フレーム(5)に対して、左右方向のスライドは可能であるが、上下方向に移動させても外れることがないようになっている。
なお、間仕切パネル(3)にキャビネット(1)を取り付ける手順は、適宜一部変更してもよい。たとえば、フラップ取付材(11)を間仕切パネル(3)に取り付けた後、キャビネット(1)をフラップ取付材(11)上に載置しつつ、押さえ金具(12)を上方から取り付けるという組立手順を採用することも好ましい。
【0025】
本発明によれば、間仕切パネル(3)の前面に左右方向に延びるように形成された上下2条の係止溝(9)、すなわち、上横フレーム(6)におけるレール(10)の係合溝(9)と、中間横フレーム(5)におけるレール(10)の係合溝(9)とに跨らせて、取付部材(2)を、キャビネット(1)と共に、上横フレーム(6)のレール(10)と中間横フレーム(5)のレール(10)にスライド係合させて取り付けることにより、キャビネット(1)を、間仕切パネル(1)の前面に突き出した状態にして簡単に取り付けることができる。また、係合させるフレーム(5)〜(7)を変えることにより、上下方向の位置も変更することができる。したがって、レイアウト変更等による割付が変更になった際においても、キャビネット(1)の取付位置を所望の位置に変更して対応することができる。また、上下2条のレール(10)(10)により、取付部材(2)の上下2箇所を支持するので、取付部材(2)を間仕切パネル(3)に、キャビネット(1)と共に強固に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施して、間仕切パネルにキャビネットを取り付けた状態を示す側面図である。
【図2】図1におけるキャビネットの取付状態を、一部破断して示す上部拡大側面図である。
【図3】同じく、キャビネットの取付状態を、一部破断して示す下部拡大側面図である。
【図4】取付部材における押さえ金具の斜視図である。
【図5】取付部材におけるフラップ取付材の斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
(1)キャビネット
(1a)本体
(1b)上向き凸条
(1c)下向き凸条
(2)取付部材
(3)間仕切パネル
(4a)上部間仕切壁
(4b)中間間仕切壁
(4c)下部部間仕切壁
(5)中間横フレーム
(6)上横フレーム
(7)下横フレーム
(8a)下側係止突片
(8b)上側係止突片
(9)係止溝
(10)レール
(11)フラップ取付材
(12)押さえ金具
(13)本体部
(14)側壁部
(15)上側係止突片
(16)上壁部
(17)取付孔
(18)下側キャビネット受け溝
(19)下側キャビネット受け片
(20)下側係止突片
(21)押さえ片部
(22)係止突片部
(23)上側キャビネット受け溝
(24)後壁部
(25)取付片部
(26)取付孔
(D)凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面より立設された平板状の間仕切パネルの前面に、前面に開口を設けた箱状のキャビネットを取り付ける構造において、
間仕切パネルの前面側に、内方に向かって凹入し、開口部下縁より上方を向く係止突片を設けてなる係止溝を有し、左右方向に延びるようにして平行に設けられている上下2条のレールと、
キャビネット本体の後部における上下の端部に、それぞれ左右方向に延びるようにして形成されている上向き凸条及び下向き凸条と、
キャビネット本体の後部と連結されて、キャビネットと共に2条のレールに跨って取り付けられる取付部材とを備え、
前記取付部材が、前記上下2条のレールの各係止溝にそれぞれ対応して、上下の端部からそれぞれ裏面側後方に向かって下向きL字状に形成された上下1対の左右方向に延びる係止突片と、下端部から前面側前方に向かって上向きL字状に形成され、前記キャビネット本体後部の下向き凸条と係合して前記キャビネットの後部下端を保持する下側キャビネット受け溝とを有するフラップ取付材と、このフラップ取付材の上部に取り付けられ、フラップ取付材の上部から前面側前方に向かって下向きL字状に形成され、前記キャビネット本体後部の上向き凸条と係合されてキャビネットの後部上端を保持する上側キャビネット受け溝を有する押さえ金具とよりなり、
前記取付部材の前記上下1対の係止突片を、前記係止溝の係止突片に、左右方向へ移動可能にかぎ止め係合させて、キャビネットを間仕切パネルに、取付部材と共に取り付けたことを特徴とするパネルへのキャビネットの取付構造。
【請求項2】
フラップ取付材と押さえ金具とを、ボルトとナットで着脱自在に固定してなることを特徴とする請求項1記載のパネルへのキャビネットの取付構造。
【請求項3】
押さえ金具に、係止溝内に差し込み配置された状態において、フラップ取付材に取り付けられる取付片部を設け、押さえ金具をフラップ取付材に取り付けると、取付片部上端と係止溝開口部上縁との間の寸法が、フラップ取付材の取り外しに必要な幅よりも小さくなって抜け止めされるように設定してなることを特徴とする請求項1または2記載のパネルへのキャビネットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−186935(P2007−186935A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6695(P2006−6695)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】